現在、複雑系という言葉を良く耳にするようになった。書店によっては 専用コーナー(八重洲ブックセンターなど)を設けている。自分自身でも相場を分析 する上で、相場感の違う個々が集まって何故、どのように相場というものが形成され ているのか解き明かす事が大きな課題となっていた。このためには、この複雑系とい う分析手法がたいへん有効ではないかと思われ、多少文献等あさってみた。さすがに 奥深く、自分の知識では歯がたたないとは思われたが久しぶりに勉強意欲もかきたて られた事もあり、考えをまとめる上でこのコーナーを作ってみた。非常にまとまりの ないものとなるかもしれないが、もしここをご覧いただいた方が一人でも興味をもっ ていただけたらと思う。
先日「カオスで挑む金融市場 」の著者、倉都康行さんとお会いしました。まだまだ 相場を複雑系で分析してみようとの動きは少ないそうです。是非、大手の研究機関で も本格的な調査・研究をすすめていただければと思います。倉都さんは、新しい著書 を出版される予定もあるそうです。その際はこのページで御紹介したいと思います。 倉都さんのホームページはこちらです
○複雑系とは たとえば、細胞個々ではどのような機能をもちうるかわからないが、それが集まる と一定の機能をもつようになる。鳥は、それぞればらばらな動きをしているようだが 一斉に飛び立つと、まるで一つの生き物のように群れをなして飛ぶ。債券相場も個々 の考え方は異なるものの、相場はまるでひとつの生き物のような動きをする。埼玉大 学の西山教授は日経に掲載された複雑系からみた経済のなかで「たくさんの要素がつ ながりあっていて思いがけないことが起こるのが複雑系」と延べている。 ○マーケットにおける複雑系 株式や為替そして債券市場の値動きというのは予測が難しい。また、予測がなりた たないからこそ市場が成立しているとも言える。もし、なんらかの方程式が見出され たとすればそこに思惑が入り込む余地はなくなる。不確実性が存在するからこそ人は 取引に参加するのである。とはいえ、その市場参加者は自分だけでも儲けようと努力 する。また、儲けてこそ存在意義のあるディーラーという職業もある。確かにそこに は確率の問題も存在すると思われる。すべてを的中させる必要はなく、6割程度の勝 率を挙げればそこそこの収益を得る事ができると言われる。 現在、物理や生物、また経済学に対して複雑系という考え方がブームとなりつつあ る。これまで、物事を把握するために単純化して分析するという方法が取られていた 。しかし、その単純化は実際上はほとんどありえない。例えば高いところから物を落 としたとき、地面につくまでの時間は計算できると物理で教わったと思う。しかし、 これはあくまで真空中での場合である。実際には風とかの影響を受けるため、結果は 微妙に異なるはずである。世の中すべてにおいていろいろな要素が複雑にからみあっ ており、一次方程式ではとけないものがほとんどである。その複雑に絡み合った動き をとらえようとするのが複雑系という考え方なのである。 例えば鳥の群れについてみてみると、鳥はその近くの鳥の動きに影響されるといわ れる。なにかしらの影響で一羽の鳥が動きを示すと連鎖反応のように群れ全体に影響 し、あたかも一つの生物のような動きをするというのである。これはコンピュータの シミュレーションによっても明らかにされている。というより、こういった事がシミ ュレートできることによって新たな見方が生まれたともいえる。複雑系という考え方 はこのようにコンピューターの普及によって生まれてきたともいえる。 ○用語 非線形 カオス、決定論によって支配されているはずの系での動きが予測できない ○参考文献等(現在、自分の手元にあるものです) 複雑系からみた経済(日経新聞朝刊、やさしい経済学) 埼玉大学 西山賢一教授 1.いま、なぜ注目 2.生物のようなふるまい 3.認知科学から経済へ 4.技術を進化させる世界像 5.自己組織化システム 6.計算機のなかの経済 7.自然と社会の出合い 8.経済と色気 複雑系("Complexity:the emerging science at the edge of order and chaos") ミッチェル・ワールドロッブ、(新潮社、3400円) カオスで挑む金融市場 倉都康行(講談社ブルーバックス、760円) 免疫ネットワークの時代 西山賢一(NHK出版、850円) 企業の適応戦略 西山賢一(中公新書、680円) 生命命としての場の論理 清水博(中公新書、760円) マザーネイチャーズ・トーク 立花隆ほか(新潮文庫、520円) カオスー新しい科学をつくる ジェイムズ・グリック(新潮文庫、760円)
○複雑系のリンク
サンタフェ研究所 (米、ニューメキシコ州)