「中学生のための個人向け国債の賢い買い方」

これから1か月程度の期間をかけて12月に募集が開始される新型の固定利付タイプの個人向け国債の発行を控えて、金融にあまり詳しくない方々にも理解可能なかたちでの個人向け国債の解説をしてみたいと思う。目標は我が家の長女(中学2年生)にも「わかった」と言ってもらうこと。がんばってみたい。国債の関係者や金融投資のプロの方々からの助言などもいただければ幸いである。それでは第一回は「お金を見てみよう」


第1話「お金を見てみよう」

「起立、礼、よろしくお願いいたします。着席!」

このたびこの2年B組で臨時の授業を受け持つこととなりました牛熊(うしくま)です、よろしくお願いいたします。これから君たちにお話をするのは国債のことです。なんかかなり難しそうなことと思われるかもしれませんが、その通りです。なかなかとっつきにくいものでもあって、間違ってもアニメの題材なんかにはされそうもありません。でも国債というものは君たちにとっても直接関係があるものでもあるのです。できるだけわかりやすく面白くお話していくつもりですので、できたら寝ないで聞いてくださいね。

私の中学生の頃は親から毎月千円とかの「お小遣い」を貰っていましたが、君たちもやはり小遣い制なのかな。そうか、それは今でもあまり変っていないようだね。それではその小遣いを貰ったらどうするのかな。財布に入れて使う。そうだね、ほかには。貯金する、偉いぞ。貯金とは読んで字のごとく、お金を貯めることだね。昔はブタの貯金箱なんていうのもあったけど、今は百円ショップでもいろいろなものが売っているね。

その百円ショップで貯金箱を買うにはお小遣いの一部を使うこととなるけど、物を買うということは、たとえば百円という価値をもっている百円硬貨と貯金箱を交換するということにもなるよね。

それでは誰が百円硬貨に百円という価値を与えているのかな。お金を漠然と使っているとあまりそんなことは考えたことないよね。誰かがお金にそこに表示された価値があることを認めていることで、その表示された金額のものと交換ができる。これがお金の持つ大きな役割でもあるんだよ。お金の役割とは、このように交換でできることや、その価値をたとえば貯金箱などで簡単に貯めておけること、それに加えて物の価値を測ることができることなどがあるんだ。

物の価値が変化することはわかるよね。中学生ともなるともう卒業したかもしれないけど、アニメとかのキャラクターカードなどで、なかなか手に入らないものは価値が高くなるよね。反対にみんな持っているようなカードは価値はあまりないので低くなる。そのカードの価値を具体的に比べようとしたらどうしたら良いだろう。まあカードの売り買いはあまりお勧めできないが、お金に換算することで評価できることも確かだね。

お金の役割といったことは理解できたかな。それでは話を戻して、誰がそのお金の価値を保障しているのだろうか考えてみよう。もし誰かがその価値を保障してくれないと君たちの持っているお金はただの金属や紙に過ぎなくなってしまう。

百円硬貨を見てほしい。そこに「日本国」という表示がある。そう、これは国がその価値を保障していることになるね。そして、お金にはお札もある。お札と百円硬貨などの貨幣との違いってわかるかな。お札を良く見てほしい。お札には「日本国」ではなくて今度は「日本銀行」とか「日本銀行券」と書いてあるよね。ということはお札の価値を保障しているのは国ではなくて日本銀行という銀行ということになる。

お札をもっと良く見てみると「財務省造幣局製造」とも書いてあるね。小さくて私のような老眼ではとても見づらいんだが。それはさておき、それでは日本銀行と財務省、そして貨幣の日本国とはどのような関係にあるのだろう。答えを言ってしまうと、まず貨幣の日本国は日本国政府のことであり、これを発行しているのは政府の機関でもある財務省なんだ。そしてお札を印刷して作っているのも財務省の造幣局だね。ところが。お札を造幣局から受け取って発行する権限を持っているのは日本銀行という政府とは異なった組織なんだ。では何故、日本のお金のほとんどを占めるお札は財務省が発行しないで日本銀行が発行するのだろう。このことは国債というものにも関わってくる大事なポイントでもあるので、少し考えてみてほしい。

どうだろう、何か思いついたかな。日本の政府の役割といったものもすでにある程度は勉強していると思うけど、政府はいろいろな役割を持っていることは知っているよね。君たちの教育といったことも文部科学省というところが担当しているんだよね。道路を整備したり、外国と交渉したり、とにかくいろいろな仕事があって、それにはとても大きなお金が必要になる。今では年間80兆円とかの規模の予算を財務省が組んでいるんだ。

もし国が自分でお金を印刷して発行できるとしたら、あれも必要、これも必要ときりがなくなって、お金がどんどんと増えていってしまう危険があると思わないかい。お金がなくなったら刷ればいいじゃん、なーんてことはあまりに魅力的だけど危険もはらんでしまうだな。

ということでちょっと歴史を遡っての明治時代、このころはまだ政府がお金を発行していたんだ。1877年に上野の銅像でも有名な西郷さんたちと政府が戦った西南戦争が起きた。政府は戦争のための費用を調達するために政府紙幣を増発したんだ。そのために貨幣の価値が急落してしまった。いわゆるインフレという現象が起きてしまったんだ。そのため、紙幣の乱発を防いで通貨価値の安定を図るという目的のもと1882年に日本の中央銀行として日本銀行が設立されることになったわけだ。

日本銀行法という法律があるのだけれど、その第1条に「日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。」とあり、また第2条には「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。」ううむ、言いたいことはわかる。法律の文章ってちょっとわかりづらいよなあ。できたらもっとわかりやすい文章にしてもらうともっと読んでもらえるんじゃないかとも思うよ。それはさておき、物価の安定を図るとは貨幣の価値を安定させるということにもなり、それが日本銀行の大きな目的となっていることが、なんとなくわかるよね。

それでは、君たちはこのお金を貯めておくのに財布や貯金箱を使うと思うけど、ご両親たちはどうしているのだろうか。なになに、タンスの奥にある本のページの間に貯めているって、それはちょっと特殊な貯め方じゃないかと思う。普段は銀行や郵便局に預けているよね。そういえば貯金と預金の違いってわかるかな。郵便局に預けるのが貯金で、銀行に預けることを預金と言うんだ。おっと、チャイムが鳴ってしまった。では次回はこの我々がお金を預けるということと、国債を買うといったことの違いを次の時間でお話したいと思う。それでは、本日はこれまで。

「起立、礼、ありがとうございました。着席!」


第2話「郵便局の役割」

「起立、礼、よろしくお願いいたします。着席!」

さて、今日は郵便局のお話をしよう。小泉首相が「郵政民営化」というのをすすめようとしていたことは知っているよね。ところが参議院で郵政民営化関連法案が否決されてしまったために、衆議院を解散して国民に是非を問おうとしたんだ。えっ、難しすぎるって。うーん、たとえば生徒会長に立候補したK君がいたとしよう。毎年富士箱根方面に行っていたのだけれど近隣の中学校はみんな関西方面に行っている。そこで、K君は生徒会長への立候補に当たり、修学旅行を関西方面とすることを公約としたんだ。そして見事生徒会長に当選を果たしたのだが、あっさり職員会議でそれは否決されてしまった。そこでK君は、全校生徒集会を開いて生徒に「関西旅行に行きたいか!!」と聞いたところ、大多数の生徒が「行きたい!!」と答え、結局、職員会議でも再度検討された結果、関西旅行が決定したというわけだ。(一部脚色あれどこれはほぼ実話、私は中学生時代、生徒会の会長を務めておりました。関西には行けなかったけど、翌年からは・・・)

ということで関西旅行と郵便局の民営化にはほとんど共通点はないものの、国民の多くが郵政を民営化すべきと思っているということが、選挙結果とした現れたことは確かだね。それではなぜ郵政は、いや郵便局という便利なものを民営化しなくてはいけないのだろうか。

前回、郵便局にお金を預けることが貯金で、銀行に預けることは預金だと言ったのを覚えているのかな。正確に言うと農協(JAバンク)、漁協(JFマリンバンク)に預ける際にも預金ではなく貯金と言っているそうだよ。貯金はあくまでお金、特に小銭を貯めるといった感じだよね。預金はお金をまさに預けておくこと。預けるとなればそれなりにまとまった額がイメージされるんじゃないかな。

つまり郵便局の郵便貯金は、わたしたち庶民が少しずつお金を貯めていくためにできたものともいえるんだ。宵越しの金は持たねえ、なんて江戸っ子を気取ってないで、もしもの病気とかなったことも考えて、節約に努めて、少しでもお金が余ったら郵便局に預けなさいということなんだ(郵便貯金開設当時の広告などに掲載)。国が作ったものなんだから、安心して預けられるという利点もあったのじゃないかな。そもそも銀行ができた当初は大口のお金しか預かってくれなかったらしいんだ。そのうち小口のお金も預かるようになったものの、庶民の金融機関としては郵便局が便利で身近で安心だったのだろうね。

身近で便利で安心、その上利子もそこそこ高いとくれば、みんな郵便局にお金を預けるよね。それがたまりにたまって200兆円以上にもなってしまったんだ。想像もできないよね。日本人の貯蓄好きがそうさせたなんて解説もあるけど、もともと日本人ってそんなに貯蓄好きではなかったはずなんだ。先ほどの江戸っ子の話はどうも本当のようなんだ。ところが、明治時代以降、国が産業を育成するために、庶民には倹約してお金を貯めることを勧めた結果、いつのまにか貯蓄好きな国民となってしまったようなんだ。

国民みな貯蓄に励み、銀行にお金が溜まると、銀行はそのお金で事業会社などにお金を貸していったんだ。会社は資金を借りて設備投資などを増やす。つまり工場を増やしたり、そのための必要な土地を買ったり機材を買ったりするんだ。そうやって日本は戦後も大きく経済成長を遂げたというわけさ。これがいわゆる間接金融と呼ばれるものなんだ。わたしたち庶民が直接お金を企業に貸すのではなくて、間に銀行が入ってちゃっかり鞘を抜いているわけだ。

そもそも、わたしたちはお金を銀行に預けていると思っているけど、よく考えると、本当は銀行にお金を貸してあげているいるんだよ。もちろん家に置いておくと、奥さんに見つかってしまう、じゃなくて、盗難の危険とかもあるし、金庫に置いておくのもいいけどそれでは利子も付かない。誰かに貸して利息をもらうにも返してもらう保障もないし、どこに貸せばいいかわからない。それならば預けてもらいましょうと銀行があるわけなんだ。

銀行にすれば預かってやっているし、利子まであげるんだ、文句あっかというわけで、昔の銀行窓口では場合によってはかなり待たされた上で事務的な対応で銀行にお金を預かってもらったんだ。今ではATMができて便利になってはいるけど、お金を貸しているのに機械に「ありがとうございました」といわれるだけで利子もほとんどついてない。えっ、何か銀行に恨みでもあるのかって。いや特にそんなことはないのだけれど。

でもなんか変だよね。しかも銀行はわたしたちのお金を今度はしっかり企業に「貸して」あげるんだ。しかもしっかり利息を取って。企業も銀行が貸してくれないと資金繰りがたいへんだから、銀行様様になる。銀行が儲かる仕組みがこれでわかったかな。えっ、やっぱり銀行に恨みか何かあるんじゃないかって。だからそんなんじゃなくて、そういえばそもそも郵便局の話じゃないか。そうだった。話を今度は郵便局に戻そう。

それでは郵便貯金に集まったお金はどうなっているのだろうか。これがまさに複雑怪奇なんだ。というか、政治家にとってたいへん都合の良いシステムが構築されてしまって、ここにあまーい蜜のにおいがしたわけだ。やや複雑なシステムだけど、寝ないで聞いてほしい。

郵便貯金で集められた資金は、年金の積立金といったものと一緒に、大蔵省の資金運用部というところに集められていた。えっ、今は大蔵省じゃなくて財務省じゃないかって。まあまあ、それはあとで説明するって。その資金運用部というところに集められたお金は預託という形で統合して運用され、その資金を国債とか、国や地方公共団体、そして「特殊法人」などの事業の原資として貸し付けることで運用されていたんだ。だから眠らないでくれ、こんなわかりにくさが、既得権益を握っていた人たちには都合が良く、だから郵政改革が必要だと小泉さんはがんばったわけなんだ。そして今度は特殊法人改革も不可避とみられている。この特殊法人については国債にも関わっていることもあり、今度あらためて解説したい。

そして「この資金運用部の資金に簡保の資金などを加えた財政投融資といわれたものが、社会資本の整備事業や民間金融機関では供給困難な融資事業に政策的に必要な資金を供給してきました」と解説されていた。

さあて、賢明な諸君ならば、この解説に何か矛盾点を見出せないかな。「社会資本の整備事業」とはこれまで小泉首相が問題視してきた道路や新幹線や空港整備などのことを示すと思われる。これは確かに国がやるべき事業かもしれないけど(とはいっても民間でもできる部分も相当あるはず)、あくまで資金運用部を通じて「貸してもらっているんだ。しかも、民間金融機関では「供給困難な融資事業」ということは、銀行などが、返してもらえる保障もないような危ないところにお金を貸しているということにもならないかなあ。これって、返済の可能性という意味ではそんなに高くはないようにも思えるんだけど。

つまり、本来ならばお金がなくて、なかなか建てたりすることができないものも、こういった資金を使うことで可能となる。建設業界なんかにとってはお仕事くれるんだから、こりゃいい制度だよね。地元の人も、おおっ、高速道路ができたとか、新幹線が来たぞなんて喜んでくれる。議員さんにとっては、選挙区の人たちに喜んでもらえる上に、地元でお金を落としてもらえば、それだけで次の選挙は、うっしっしともなりそうだよね。

でも、それに待ったをかけたのが小泉さんとも言えるんだ。もう国も莫大な借金抱えて、身動きも取れなくなっているのに、そんな使える資金があるからと、自分達のために勝手に使われたらたまったもんじゃないよね。名目は地元民、いや国民のためと言うかもしれないけれど。

と、その前にこの財政投融資制度というのはすでにある程度改革されていることも言っておかなくちゃならないよね。だからさっきはわざと財務省といわずに大蔵省と言ったんだ。現在では郵便貯金のお金は郵便局、つまり現在の郵政公社が自分で運用することになった。これで少し安心したかな。それじゃあ、これまで資金運用部で借りていたところはどうしたんだろうね。自分達で借りられれば借りようと債券を発行したりしたんだけど、それも無理となったら、財投債という国債を国が発行して貸してくれているんだ。でもこの財投債というのは、結局、私たちの借金でもあったりする。そんな話はまた今度。それでは、本日はこれまで。

「起立、礼、ありがとうございました。着席!」


第3話「ペイオフ解禁」

「起立、礼、よろしくお願いいたします。着席!」

今日はペイオフ解禁についてお話しよう。「ペイオフ解禁」といってもいったい何を言っているのかさっぱりわからないよね。ペイオフはもうみんな英語習っているので、なんとなくわかると思うけど「支払い」とかの意味だよね。じゃあ、解禁ってなんだろう。何か禁止されていたことが再開できるといった意味となるよね。アユ解禁とか。アユと言っても、髪の毛を黒に戻した浜崎あゆみのことじゃないからね。

それではいったいペイオフ解禁とは何を解禁したのだろうか。解禁ということは、何か禁止されていたものがあったはずだね。この話をする前に、先日の郵便局の話の続きを少ししてみたい。なぜみんな郵便局にお金を預けるのか。その大きな理由のひとつに安全性がある。

郵便局は今度、民営化される。それならばこれまではどうだったのだろうか。昔は郵政省という国の組織があったように、まさに国の機関だったわけなんだ。1円切手の肖像にもなっている前島密という人が明治時代に日本の近代郵便制度を作ったんだね。えっも知らない?。そうか今は切手収集なんて流行っていないものなあ。昔の子供たちは、切手を集めることが大流行だったんだ。「見返り美人」とか「月に雁」とかが貴重でなあ。えっ、脱線するなって。その切手も郵便局で売っているんだぞ。

何を言いたいかといえば郵便局に預けたお金は国が保障してくれていたわけだ。これほど安心なものはない。えっ、政治家は信頼できないし国は破産するんじゃないかって。国の借金がめちゃくちゃ多いことは確かだし、政治家への信頼性の問題もあるのかもしれないけど、民間に預けるよりはずっと安全なものであるのは確かなんだ。

それじゃあ、銀行に預けるということは危険なのかって。危険という言葉が適切かどうかわからないけど、民営化される前の郵便局に比べれば、リスクは高いともいえる。でも、実は銀行に預けていた人たちは、暗黙のうちにそれは絶対安全であると思い込んでいたんだ。良く考えてごらんよ。銀行がお金を貸すときには、すごい審査が必要なんだよ。ご両親の中には住宅ローンを組んだり、ご商売しているところは銀行かせお金を借りている人も多いはずだけど、そりゃたいへんな手続きが必要になるんだ。

ところが、私たちが銀行にお金を貸す(預ける)際には、銀行の審査なんかしてないよね。その銀行が何やっているのかなんて調べもしないし、むしろ預ける方が手続きさせられるぐらいだよね。まさに貸すんじゃなくて金庫代わりに預けているという感覚が強いはずだよね。

ところがどっこい、この銀行というか金融機関も破綻するという事実が発覚してしまったんだな。1995年3月に東京協和信組と安全信組というところが解散した。原因は乱脈経営だったんだけど、これで国会は大混乱。なぜかって?、みんな金融機関は安心だと思い込んでいたところでの破綻騒ぎ。そして、金融機関の破たん処理に対しての原則すらないことが明らかになったんだ。この年の7月にはコスモ信金に対する東京都の業務停止命令があり、8月には兵庫銀行と木津信組の経営破綻が明らかになった。兵庫銀行の場合は戦後初の銀行破綻ということになってしまった。

そこで乗り出したのが国なんだ。金融機関が万が一破綻しても預金は全額守らますから!と、預金全額保護の特例措置が取られるようになった。それではそれまではどうなっていたのだろうか。1971年に預金保険法というものが制定されて、預金保険制度というものが出来た。これによって金融機関の破綻に際して、預金保険制度に基づいて、預金者には保険金として預金の一部を支払いたしますよ、ということになった。これが先ほどの「ペイオフ制度」なんだ。この制度は1971年に支払い限度額100万円でスタートし、1986年には上限額が1000万円に引き上げられていた。ところが、いざ金融機関が破綻してしまったら、みんな不安になってしまった。当時はすでに金融機関が多額の不良債権を抱えていることが知れ渡り、信用不安が広がってしまう恐れがあるとされたんだ。友達だっていったん信用できないとなったら、なかなか信用取り戻すのは難しいよね。お金の問題にはこの「信用」ということがたいへん重要な要素にもなっているんだ。

それはともかく、こりゃたいへんなことにと、国が慌てて預金全額保護の特例措置という手段に打って出た。これによって預金保険制度が凍結されてしまったんだ。これをペイオフを凍結といった表現をされたことで、これがあらためて解禁されることになったものなのでペイオフが解禁されたと言うわけなんだ。いやあ、言葉ひとつとってもなかなか奥が深いことがわかるよね。何人か、眠りが奥深い生徒もいるようだが。

1996年には、2001年3月末までの間、特例措置として預金の全額を保護することが決められたんだ。誰が保護するんだろうね。えっ、国。そうそう、でもよーく考えよう、お金は大事だよ、じゃなくてそれは政治家が身銭を張ってがんばってくれるわけじゃなく、私たちの税金が投入されることとなるわけだ。なんてことはない、私たちがお金を貸してあげている銀行を守るために、私たちの貴重な税金が使われてしまうという、なんか変な話となってくるわけだ。でも信用不安が起きたらそれどころじゃないだろうと言われれれは、そういうものかと。

さらに大きな銀行と比較して相対的に経営体力の劣る中小の地域金融機関から預金などが流出する可能性が高いと政府は判断したことで1999年末に再び2002年3月末までペイオフ凍結を延長することにした。これもなんか無理に理屈付けしたようにも思われる。そして2002年4月にペイオフの部分解禁が行われて、定期性預金は定額保護に戻ったんだ。

でも当座預金や普通預金、別段預金といわれるものの全額保護の期間は2005年3月末まで2年間延長されることとなった。そして、2005年4月にやっとペイオフが全面解禁されたというわけた。これでペイオフ解禁とは何かってこと、わかったかな。今日はペイオフ解禁の話だけでだいぶ時間を取られてしまったようだ。でもこれで多少、預金といったシステムが理解できたんじゃないかな。今度は預金や貯金と投資との違いについてお話したい。では、今日はこれまで。

「起立、礼、ありがとうございました。着席!」


第4話「投資の話」

「起立、礼、よろしくお願いいたします。着席!」

今日は、投資の話をしよう。まず君たちに問題。投資(とうし)が付く単語をいくつか上げてほしい。「投資家」、そうそういいねえ。他には。「設備投資」、さすが中学生ともなると難しい用語をしっているね。「投資信託」、おっ郵便局でも最近売り出したし中学生も知っているんだね。そして、えっ「遣唐使」?。630年に海外情勢や中国の新しい技術や仏教関係の収集などが目的とされ派遣されたものだね。さらに昨年には日本の遣唐使の墓誌が新たに発見され大きな話題を集めたりした。って、「とうし」違いだっちゅうの。

でも、せっかく遣唐使という言葉が出てきたので、少し歴史の勉強をしてみよう。同じ社会なんだから文句言わないの。

894年に遣唐使の派遣を停止するように進言した人って知っているかな。そうそう、菅原道真だね。この間およそ260年の間に遣唐使は18回計画され実際には15回程度派遣されたんだ。シルクロードなどを通じて世界各地の美術や文化がさらに遣唐使を通じて日本に伝えられ、その一部が東大寺の正倉院に残っていることも知っているよね。その東大寺といえば、ご存知「大仏」があるね。この大仏建立には莫大な費用と人手が使われ、これによって当時の国の財政はたいへん苦しくなった。これも国にとってはひとつの投資、「公共投資」と呼ばれるものでもあるよね。「遣唐使」自体も莫大な費用をかけた公共事業でもあった。結局、こういった公共事業の拡大により、庶民の生活も圧迫し、これによって「墾田永年私財法」といった法が出され、律令制の基礎である公地公民が崩されることになった。その後、荘園制度が発達し藤原氏の天下が来ることになる。以上、遣唐使に関する歴史説明終わり。って、なんの話だったっけ。

そうそう「公共投資」という投資もしっかりチェックしてほしい。それではそろそろ「投資」とは何ぞやについて調べてみよう。君たちもインターネットでいろいろなことを調べているよね。早速、ネットで調べて見ることにしよう。

「投資とは総じて将来的に増加して自らに返ってくるを期待して、現在自己が持つものを投じる行為である。」(ウィキペディアより)

現在、自分で持つものとはこの場合の多くは「資金」を指すものと思われる。「将来的に資本を増加させるために、現在の資本を投じる活動を指す」(ウィキペディアより)との意味で取られることが多いんじゃないかな。お金を増やそうと思って、何かの活動に資金を投ずることだよね。その対象が株ならば「株式投資」になるし、土地とかだったら「不動産投資」となる。事業を拡大するため機械設備などを拡張するのは「設備投資」。日本経済の発展のためと道路や空港などを作ったりするのが「公共投資」だね。

ところが投資は預貯金以上にリスクというものが付きまとう。「どのような形態の投資も、現在と将来の間におけるやり取りであることから、思い通りに増えるかどうか不確実である。そのため投資は大なり小なりリスクと常に隣り合わせである。」(ウィキペディアより)。

世の中、絶対儲かるなんてうまい話はない。ある程度のリスクといったもの、つまり投じた資金が全部は回収できない、とかのリスクがあるものに資金を投じることとなる。そのリスクに応じてリターン、つまり儲けも生まれる可能性がある。リスクとリターンが完全に一致するわけではないけどある程度の相関関係はあるとされるんだ。

ただし、株式投資などで良く使われる「ハイリスク・ハイリターン」という言葉がある。直訳すると「一か八か」ということになるかな。これは投資というよりも、どちらかといえば「投機」という言葉に近い。宝くじや競馬や競輪、パチンコといったものは資金がゼロとなってしまう可能性があるし、株式投資も現在、大流行となっている株式のデイトレードといったものも投資ではなく投機といったものになると思うんだ。「株式のデイトレード」って何?、なかなか良い質問だ。デイトレードという言葉はあとにして「株式」について考えてみよう。

そもそも株式とはいったい何だろうね。会社の株といった使われることもあるよね。もし君たちが大人になって何か会社を起してみたいと考えたとする。その際に必要なのはなんといってもお金だよね。もちろん従業員も必要だけど従業員を雇うにもお金はかかる。その際に、たとえば銀行からお金を借りるといった手段もあるけど、「株式」という制度を利用すれば巨額のお金を集めることも可能になるんだ。もちろん簡単にお金は集められるわけでもない。手続きなどいろいろ複雑な仕組みともなっているんだけど。今回は会社を設立するにはという話ではないので、「株式」ということ仕組みについて見てみよう。

株式とは「株式会社」を設立するために必要なお金、つまり資本の構成単位となっている。つまり株式というのは株を買ってお金を投じてくれた人の出資の割合を示すために用いられるものともいえるんだ。会社がうまく行って儲かるようになれば、その株の値段である株価が上昇するし、1株あたりに儲けに応じて支払われる配当といったものも受け取れる仕組みになっている。ただし、会社が倒産しちゃったりするとその株の値打ちはゼロになってしまうリスクもあるよね。だから投資と言う言い方がされるんだ。

その株は証券取引所というところで売り買いされていることも聞いたことがあるよね。もちろん日本の株式会社の全部の株が頻繁に売り買いされているわけではなくて、会社がそれなりの大きさになるといろいろな人にその会社の株を持ってもらうために、株の売買を行うところに、うちの株も売り買いさせてほしいと頼むんだ。それが許可されると、上場したとか店頭公開したなんて言われる。ちょっとこの変のことも難しいね。でも、取引所で売買されるとなると、株の買占め、つまりその会社を乗っ取ってしまおう、なんて動きも出てくる。これはみんな知っているよね。なんとかファンドによる甲子園を持っている阪神電鉄株の買いとか、楽天によるTBS株の買いといったニュースが世間を騒がせていたよね。

そして、このように上場しているような株式は頻繁に売り買いされ、値段も大きく動くんだ。ニュースでも日経平均株価が上げたとか、下げたとか騒いでいるときもあるよね。でもこの株式の値動きを予測するのはとても難しい。1株あたりの取引単価も下がっているとはいっても、なかなか高い株に個人が投資するのもむずかしい。それならば、個人からのお金をたくさん集めて、その資金の運用をプロの運用者に任せようというのが投資信託なんだ。株の場合は株式投資信託といった言い方もする。そして、投資信託には公社債型投資信託というものもある。おいおい、今日はもう少しなんだから、起きていてくれ。この公社債型投資信託というものの多くは国債を買っているんだ。やっとここにきて本題の国債が見えてきたぞ。さあて、次回はいよいよ国債とはなんだ、に迫ってみよう。今日はこれまで。

「起立、礼、ありがとうございました。着席!」


第4話「国債投資」

「起立、礼、よろしくお願いいたします。着席!」

これまで「お金」についていろいろと見てきたよね。特にお金は運用できるというポイントに注意してほしい。お金の性質のひとつに貯めることができるというものがあったね。自宅のタンスの中に貯めてもいいけど、泥棒に盗まれる危険性がある。お金には誰のお金なのかという情報は入っていない。これは匿名性といった言い方もされ、日本国内ならどこでも使えるといったように、流動性といった意味では使い勝手が良い反面、盗まれたりしてしまうとそれが自分のお金かどうかを識別する方法がなくなってしまうよね。

そこで、郵便局に貯金として預けたり、銀行に預金として預けたりするわけだ。前にも言ったけどこれは郵便局や銀行に貸したことと同じことになるので、利子が貰えるわけだね。単純に保管目的だと保管料なんて別途費用が取られてしまうことにもなる。しかし、預けているのに日曜日にコンビニから引き出そうとするときなど、別途手数料が取られてしまうというのも貸している側としてはなんか納得もいかないんだが。えっ、たいしてお金を銀行に置いてないくせに、そんなことが言えるのかって。スミマセン。

郵便局や銀行に預けることも利子を生むので、お金の運用のひとつとなる。しかし、他に株を買ったり投資信託を買ったりといったように、品物を買うのではなくて財産としての価値を有するものを買うことで、お金を運用することも可能となるんだ。これを金融資産投資といった表現をすることがある。

さあて、眠くなる前にひとつ問題を出そう。ここに金の卵を産むガチョウが2匹いる。えっ、中学生に童話の世界は似合わない?、あっそう、でも少し付き合ってほしい。一匹のガチョウは5年間毎年3個の金の卵を確実に産む。もう一匹のガチョウは5年間毎年5個の卵を確実に産む。この二匹を売りに出したいが、どちらが高く売れるかな。馬鹿にするなって?。もちろん毎年5個の卵を産むガチョウだよね。

それでは今、金の卵を産むガチョウといえば毎年3個が主流だとしよう。そこに5個の卵を産むガチョウが出てきたら、通常のガチョウよりも値段は高くなることは、えっ、あたりまえだって。

それではここに5年満期で年率1%の国債がある。えっ、いきなり、なんだよって。これはガチョウと同じ理屈なんだよ。年率1%ということは、額面100万円の国債だと年間1万円の利子がつくことになるよね。それでは、ここにまったく同じ条件で年率2%の国債もあったとしよう。みんなどうする。2%のものを買うことに決まってるじゃん?。それではもし国債が売買できるとしたらどうなるかな。

普通に買える5年の国債は年率2%だとすると、2%のものは100万円のものは100万円だよね。でも3%のものは買いたい人が多く、多少高くても買ってくるよね。そうなると値段はどんどんつりあがる。ところがある程度の値段になったところで止まるんだ。つまり2%のものと価値が等しくなったところで止まることがわかるかな。

なんか頭が混乱してるって。ここでひとつ押さえておかなければならないのは、5年満期で100万円の額面のものは、5年後にちゃんと100万円で帰ってくるということなんだ。つまり、売り買いされて価格が100万円以上となれば最後は100万円しか帰ってこないので、、買った値段と満期に受け取る金額で差し引き損失が発生してしまうよね。それを利率の違いで相殺できるところまでは、この3%の国債が買えるという計算が働いているんだよ。えっ頭良いって。うーむ、大人の世界はこんなのが一杯ある上、これは非常に簡単な例に

過ぎない。君たちも数学やら理科やらしっかり勉強しないと大人の社会で生活するのは大変なんだから。えっ、そんなみみっちい計算しなくてもいいようなリッチな生活するから良いって。勝手にしてくれ。

でもリッチなお金持ちになるほどこういう計算が得意とも言われているんだけどな。えっ、「リッチ」も「お金持ち」も同じ意味じゃないかって。さすがだな英語も当然勉強しないと、このおじさんみたいな間違いをするという実例を自ら示してあげたんだ。どうだ。は、さておいて、どうやら国債というものは売り買いするものだという感じがしてきたろう。そうなんだ、国債投資というのは国債をまさに買うことなんだ。

利付国債と呼ばれているものは毎年決まった利子が支払われ、額面金額が返ってくる。その点では預貯金にたいへん近い。でも違うところは、国債投資とは、国債という借金証書を国が発行し、それを我々投資家が買うという行動をとることなんだ。だから買いつける値段も額面の金額とは違うケースが多い。

この理由を簡単に説明すると、金の卵のガチョウのケースなどからもわかるかもしれないな。たとえば利率が1%の5年国債が出たときに、5年満期の国債の金利が1%よりもちょっと高く推移していたとしよう。そうなれば、1%の国債の発行単価は100円額面とすればそれよりも安くなることがわかるかな。 なんで100円なんだって?。世の中、これだけ100円ショップが流行っている以上、やはり100円をベースに考えたほうがわかりやすいから、じゃなくて、100円もしくは100%でも100ポイントでも単位はなんでもいいんだけど、債券というものの価値を判断する価格については、昔から100を基準にしていたんだ。何故だといわれても明確な答えはむずかしいけど・・・。えっ逃げるなって。

なにはともあれ、国債は預貯金にとても近いものであるけど、株のように売り買いされて値段が刻一刻と変ること。その値段は100を基準としていることなど覚えておいてほしい、ここは中間テストに出るぞ、たぶん。ということで、本日はここまで。

「起立、礼、ありがとうございました。着席!」


第一話「お金を見てみよう」