2017年5月27日「メンバーが大きく入れ替わったG7サミット」

 イタリアのタオルミナで26日から27日にかけて先進7か国(G7)首脳会議(サミット)が開催されている。

 石油ショックで世界経済が混乱した1973年にその対応を巡って日本、米国、英国、フランス、西ドイツの各財務相が集まった。これがG5の枠組みの始まりとなった。1975年にはこのG5にイタリアが加わっての首脳会議(サミット)がスタートする。1976年にカナダが、1998年にロシアが加わりG8となった。しかしクリミア侵攻をしたロシアが排除されて、その後はG7に戻っている。

 今回参加するのは日本、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダの首相となる。このうち前回の伊勢志摩サミットからは今回の主催国のイタリアと、米国、英国、フランスの首脳が変わった。つまりドイツのメルケル首相と日本の安倍首相、カナダのトルドー首相以外の4首脳が初参加となる。

 昨年6月に英国は国民投票の結果、EU離脱が決定されてキャメロン英首相は辞意を表明し、保守党党首選挙の結果メイ首相が就任した。11月の米国の大統領選挙では予想外のトランプ氏の勝利となった。12月のイタリアの改憲を問う国民投票で大敗したレンツィ首相は辞任し、次期首相にジェンティローニ外相が指名された。注目の今年4月、5月に実施されたフランス大統領選挙では親EU派のマクロン氏が勝利した。

 反グローバル派筆頭ともいえる米国のトランプ大統領ではあるが、形骸化が指摘されるG7の改革を提起するとの観測も出ている。G7の会議そのものにも懐疑的になる懸念がある。それに対してユーロ離脱を決定した英国のメイ首相がどう対応するのか。ドイツのメルケル首相とトランプ大統領の対立も予想され、ぎくしゃくしそうな首脳同士の橋渡しとして期待されているのがG7のベテランともいえる日本の安倍首相のようである。フランスのマクロン大統領にとってはいきなりの本格デビュー戦となるが、こちらの対応も気になるところ。

 いずれにしても昨年の伊勢志摩サミットから世界の政治情勢は大きく変化してきている。中東や北朝鮮などの地政学的リスクも懸念材料となる。世界経済そのものはFRBが正常化路線を進められるほどには回復基調となっている。しかし、経済はさておき政治リスクが増加していることは確かであり、今回のG7はその政治リスクが試される場となりそうである。これまでのG7同士の関係とは大きく変化してくることも予想され、タオルミナのG7は要注目となりそうである。


2017年5月26日「中国国債の格下げによる市場への影響は軽微か」

 格付会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは24日に中国の人民元建てと外貨建ての国債格付けをAa3からA1に1段階引き下げたと発表した。中国は潜在的な成長力の鈍化に伴い、政府の債務負担が増加し、財政の健全性が損なわれるとの見通しを反映した(日経QUICKニュース(NQN))。

 同社による中国格下げは1989年以来となるそうである。また、A1との格付けは日本国債と同じである。

 ムーディーズの格下げ発表を受け、中国人民元は売られ、中国株も一時的に下げた。東京株式市場もやや上げ幅を縮小させる場面もあったが、影響は限られた。

 格付会社による格下げが市場に大きなインパクトを与えた例としては、2010年のギリシャの財政問題が表面化した際の格下げがある。格下げによって市場の動揺が増幅されることになり、問題がアイルランドやスペイン、イタリアなどにも飛び火した。

 また、2011年8月に格付会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、米国の長期格付けを最上位のAAAからAA+に1段階引き下げた。同社が米国債を格下げするのは1941年の現行制度開始以来初めてとなったが、これによる市場への影響は限られた。米国債は質への逃避の動きから買い進まれたぐらいであった。

 これは、民間格付会社が格付けを1ノッチ引き下げたからといって、投資家が保有する大量の米国債をいきなり売却することは考えづらく、金融市場における信用度、そして流動性などを見ても、ほかに代替資産が見当たらないためである。 ただし、米国の格付会社が自国の国債の格付けを引き下げということはある意味ショッキングな出来事でもあり、マスコミでも大きく取り上げられた。

 民間格付け会社によるソブリンの勝手格付け(依頼されたものではない格付け)は、たしかに警告として受け止める必要はある。しかし、だからといって、これを受けて市場参加者が動揺する必要はない。当時のバーナンキFRB議長は下記のような発言をしていた。

 「ある意味で、S&Pの米格付け見通し引き下げがわれわれに伝えることは何もない。新聞を読む人なら誰でも米国が非常に深刻な長期的財政問題を抱えていることは知っている」

 これは日本国債の格付け変更時にもいえることで、日本国債は格付会社の格下げがあってもほとんど動揺していないというか、材料視すらしていない場合が多い。

 今回の中国の国債格下げについても、なぜこのタイミングで1989年以来の格下げを発表したのかという意外性はあったかもしれない。しかし欧州の信用不安時のように市場の動揺をさらに加速させるようなきっかけにでもならない限り、それによる影響は限られたものになると予想される。


2017年5月25日「注目される今週末イタリアで開催のG7、その歴史を振り返る」

 イタリアのタオルミナで26日から27日にかけて先進7か国(G7)首脳会議(サミット)が開催される。前回の伊勢志摩サミットからは今回の主催国のイタリアと、米国、英国、フランスの首脳が変わった。つまりドイツのメルケル首相と日本の安倍首相、カナダのトルドー首相以外の4首脳が初参加となる。

 石油ショックによる世界経済の混乱を受けて1973年に、その対応を巡って日本、米国、英国、フランス、西ドイツの各財務相が集まった。これが先進5か国蔵相・中央銀行総裁会議(G5)と呼ばれるG(Group)がつく国際会議のスタートとなった。

先進5か国蔵相・中央銀行総裁会議 (G5) で最も有名となったのが、1985年9月22日にG5による為替レート安定化に関する合意、通称プラザ合意であろう。このG5は秘密裏に行われ、当時の蔵相の竹下登は、千葉にゴルフに出かけ1ラウンド、プレーした後、成田空港に向かった。澄田日銀総裁は風邪を理由に予定をキャンセルしマスク姿で駆けつけたそうである。当時のG5は存在自体も認められていなかったようだが、プラザ合意は市場に影響を及ぼすためにあえてG5の存在を明かにさせたとされる。

 最初の主要国首脳会議(サミット)は、1975年の日、米、英、仏、西独、伊の6か国によるフランスでのランブイエサミットであった。翌1976年にカナダが加わりG7となる。1998年にロシアが加わりG8となった。

 財務相・中央銀行総裁会議については1986年の東京サミットで先進7か国財務相・中央銀行総裁会議、つまりG7がスタートする。1999年にはG7にロシア、中国、韓国、インド、インドネシア、オーストラリア、トルコ、サウジアラビア、南アフリカ、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、EU(欧州連合)を加えた財務相・中央銀行総裁会議、G20がスタートした。

 2008年にはリーマン・ショックを受けてG20での首脳会議がワシントンで開かれ、サミットの20か国版がスタートする。2014年にはクリミア侵攻をしたロシアがG8から排除されて再びG7に戻る。

 かなりややっこしいが首脳会議にはG7とG20があり毎年開催されている。財務相・中央銀行総裁会議にもG7とG20が存在する。首脳会議には首脳のほか財務大臣及び外務大臣などが出席する。1998年からは財務大臣会合及び外務大臣会合などが首脳会合の前に別途開催されるようになった。

 世界経済及び為替に関する議論をする財務相・中央銀行総裁会議にはユーログループに属する3か国(独、仏、伊)の中央銀行総裁の代わりに欧州中央銀行(ECB)総裁が出席している。また、欧州委員会代表、EU議長国、IMF専務理事、世界銀行総裁なども参加している。


2017年5月24日「ドイツのメルケル首相がECBの緩和策を遠回しに批判」

 ドイツのメルケル首相は22日、ベルリンの学校で開かれたイベントで学生たちに「ユーロは弱過ぎる。これは欧州中央銀行(ECB)の政策が理由だ。これによってドイツ製品が相対的に安くなっている。従って、ドイツ製品はよく売れている」と語ったそうである(ブルームバーグ)。

 また原油安も輸入価格の低下を通じてドイツ貿易黒字の一因になっているとして、原油価格が今の1.5倍ならドイツの輸入額は増えると指摘。「ではどうしたらよいのか。我々にできるのは国内で投資を増やすことだ」と語った。

 中央銀行の金融緩和によって通貨安にし、通貨安によって国内製品の輸出を促進させて国内景気を回復させ、ついでに物価も上昇させるというのは、我が国ではアベノミクスと呼ばれている。ところが今回のメルケル首相の発言はメルケルミクスを意識した発言などではない。

 むしろドイツの貿易黒字の拡大が米国などから批判されており、そのドイツの貿易黒字問題についてメルケル首相はユーロ相場と原油価格の2つが押し上げ要因となっており、これらはいずれも政府の管轄外だとも指摘したのである。

 今週開催される主要7か国首脳会議(G7)で、米国政府がドイツの貿易黒字問題について一段の対処を求めることが予想され、それに対して予防線を張ったとも言えよう。また、こういった批判の矛先をECBに向けさせようとしているようにも見受けられる。今回のメルケル発言を受けて、市場ではドイツが欧州中央銀行(ECB)に対し緩和解除への圧力を強めるのではないかとの観測も広がっていた。

 そもそもドイツ関係者はECBの緩和政策に対して批判的な見方をしてきた。ドイツの中央銀行(ブンデスバンク)は過去の教訓から金融緩和による国債買入等に対して反対の立場を取ってきた。それは下記のような歴史の教訓によるものである。

 第一次世界大戦の敗戦により、ドイツは天文学的な賠償金を背負わされ、財政支出の切り札になったのが、国債を大量発行しライヒスバンクに買い取らせるという手法であった。その結果、ドイツはハイパーインフレに見舞われ、ライヒスバンクの後継者であるブンデスバンク(連邦銀行)は、インフレに対して極度に神経質となり、その要因となった中央銀行による国債買入に対して警戒感というか嫌悪感を強めることになる。


2017年5月23日「4月の債券市場では銀行系が売り越しに」

 5月22日に日本証券業協会は4月の公社債投資家別売買高を発表した。公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

公社債投資家別差し引き売買高
注意、マイナスが買い越し
単位・億円
()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 13436(5374、-4561、12299)
地方銀行 5061(229、3474、1157)
信託銀行 3620(-1058、6015、-656)
農林系金融機関 7363(390、5968、162)
第二地銀協加盟行 17(170、90、260)
信用金庫 3172(1308、1890、286)
その他金融機関 1871(-679、2650、284)
生保・損保 -1019(-775、458、261)
投資信託 -345(702、-228、-399)
官公庁共済組合 284(206、7、0)
事業法人 -323(-25、-6、0)
その他法人 -562(46、6、-285)
外国人 -21075(-3562、-4623、-11957)
個人 169(2、27、3)
その他 28729(8964、3741、19539)
債券ディーラー -589(-253、119、-444)

 4月の国債の投資家別売買高をみると都銀は1兆3436億円の売り越しとなった。3か月連続の売り越し。売りは中期と超長期で長期債は買い越しに。4月ということで期初の益出し売りの可能性があり、地銀や信託なども総じて売り越しとなっていた。地銀は5061億円の売り越し。信託銀行が3620億円の売り越し、農林系が7363億円の売り越しとなった。  ただし、売り越し金額でのトップは「その他」の2兆8729億円となっており、中期と超長期主体に売り越しとなった。3月も大量に売り越しており、引き続きゆうちょ銀行の売りであろうか。

 買い越し額のトップは海外投資家で、中期債主体に2兆1075億円の買い越しとなっていた。

 4月の日本の債券市場は北朝鮮などの地政学リスクやフランス大統領選挙を控えて欧州政治の不透明感の高まりから質への逃避の買いが入り、米10年債利回りは2.10%台に低下し、4月19日の日本の10年債利回りもゼロ%まで低下した。ただし、23日のフランスの大統領選挙では、マクロン前経済相と国民戦線のルペン党首の2人が決選投票に進んだ。急進左派・左翼党のメランション氏とルペン氏の最悪の組み合わせは回避されたことで、リスク回避の反動が起き、次第に上値が重くなった。

海外投資家の売買状況
月 売り越し買い越し(マイナスは買い越し)、(超長期、長期、中期)、国債売買高、うち中期

2016年
4月-36565(328、-9142、-27271)、294983、62513
5月-16775(1347、-6186、-10933)、246889、34315
6月-36565(328、-9142、-27271)、344055、65055
7月-16693(1860、-4453、-13200)、275366、61036
8月-16838(-1108、-5390、-9702)、302397、65718
9月-27674(-3320、-4283、-19310)、380542、102124
10月-5717(1051、-5636、166)、264616、62534
11月-11672(2275、-2448、-10674)、302551、48912
12月-26198(-970、2054、-26261)、317612、57609

2017年
1月-23784(-1153、-504、-19500)、294839、61994
2月-11210(-2687、3009、-10323)、292813、51127
3月-17190(-4603、1222、-12886)、312730、58810
4月-21075(-3562、-4623、-11957)、321272、43951


2017年5月22日「米国債保有高では3月現在で日本がトップ、4月に中国に逆転される可能性も」

 米財務省が発表している米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES)によると、今年3月の国別の米国債保有高のトップは引き続き日本で1兆1185億ドルとなった。2位は中国(China、Mainland)で1兆876億ドルの保有高となった。上位10か国は次の通り(単位、10億ドル)
日本(Japan)  1118.5
中国(China, Mainland)  1087.6
アイルランド(Ireland)  315.1
ブラジル(Brazil)  259.5
ケイマン諸島(Cayman Islands )249.9
スイス(Switzerland)  234.5
英国(United Kingdom) 227.9
ルクセンブルグ(Luxembourg )217.1
香港(Hong Kong)  201.9
台湾(Taiwan) 185.2

 1位の日本については、4月の対外対内証券投資売買契約の状況によると、居住者による対外債券(中長期債)投資は4兆2559億円の処分超となり、月次の売り越し額としては過去最大規模となっていた。このため、米国債の保有額が大きく減少してくる可能性がある。ただし、この数字が直接、この米財務省が発表している米国債国別保有残高に反映されない可能性もある。こちらも4月の数字が要チェックとなりそう。

 2位中国の外貨準備は2017年1月に3兆ドルを下回っていたが、2月にはかろうじて3兆ドルを回復しており、米国債保有高もここにきてやや増加傾向にある。4月に順位が入れ替わるのかどうか確認したい。

 3位にアイルランドが入っているのは低い法人税により、アップルやグーグル、フェイスブックを含め米企業700社以上がアイルランドに子会社を置いており、そこで得た利益がアイルランドの銀行にプールされ、それを米国債で運用しているためとの指摘もある。たしかにユーロ危機の際にはアイルランドも財政危機に陥ったように、国そのものには余裕なくこの金額の米国債を保有しているというのは米国企業などに依存している面は大きそうである。


2017年5月21日「日本の通貨単位を「円」とした意外な人物とは」

 金融取引に使われるのはお金であり、我々が使っているそのお金の単位は言うまでもなく「円」である。その円が生まれたのは明治時代であった。明治政権が目指したのは、西洋諸国に対抗するため、産業や資本主義の育成を行い国家の近代化を進めることであった。この積極的な殖産興業政策を行うため、さらに日本が独立国家として世界から認知されるためにも、統一した貨幣制度は必要不可欠なものとなる。

 明治政府は1868年に純正画一な貨幣を製造することを決定し、1969年に大隈重信の建議により、新貨幣は十進法によるものとし、その価名を「円」とすることを決定した。大隈重信はその建議の中で、「第一に外国貨幣が円形で携帯に便利であり、この際旧来の方形を円形に改むべきである、第二に両分朱は四進法のため計算上非常に不便であるから、各国にならって十進法とすべきである」としたそうである。(早稲田大学のホームページより)。

 現在の1万円札には、大隈の設立した早稲田大学のライバルとも言える慶応義塾の創始者である福沢諭吉の肖像が使われているのも何か「円」ではなく「縁」も感じる。

 1871年には、最初の貨幣法である新貨幣条例が公布され、日本の貨幣の単位として円が正式に採用された、これによって近代的な貨幣の枠組みは整ったのである。

 しかし、新貨幣の鋳造は進まず、明治政府は緊急の必要に応じるため「太政官札」、「民部省札」などと呼ばれた、いわゆる不換紙幣を発行した。金銀貨による幣制の統一を目指していたものの、貨幣素材の不足や造幣能力の不十分さもあって、金銀貨の鋳造はなかなか進まなかったのである。この金銀貨に代わる支払手段として、このような不換紙幣の発行に依存せざるを得なかった。これが結果として日本での中央銀行である日本銀行の設立の要因となった。

 円は上記のように明治政府により1871年に定められた。英米人の影響で「en」ではなく「yen」と綴られることとなった円を、ドルの習慣に合わせてその頭文字Yに同様の二重線を入れたものが円マークの「¥」となり、JPYとも表記される。「円」の名前の由来としては、新貨のかたちが円形に統一されたためとか、洋銀の中国別称である「洋円」を継承したため、さらに香港銀貨と同品位、同重量の銀貨を製造することとした関係から香港銀貨の「壱圓」(洋円1個の意味)にちなむといった説がある。また、人々がお金を表すときに人差し指と親指で円を作ったところから、この名がついたという説もあります。

 なお、中国では本来の通貨単位である「圓」を「元」に代替したが記号は日本の円記号と同じである。 韓国・北朝鮮の「ウォン」も「円」の朝鮮語読みである。


2017年5月20日「日本の弥生時代に貨幣が存在していた?」

 神戸新聞によると、紀元14〜40年にかけて中国古代国家の「新」「後漢」で鋳造されたとされる貨幣「貨泉」3枚が、兵庫県南あわじ市八木入田の入田稲荷前遺跡で見つかったそうである。弥生時代に日本へ流入したとみられ、一度に出土した数量としては全国で3番目の規模となるとか。

 弥生時代にすでに中国の通貨が日本に存在していたという事実にまず驚いた。この記事によると貨泉は九州や近畿、瀬戸内海沿岸などの遺跡ですでに計約180枚が見つかっていたそうである。今回の発見で神戸市の市教委は「海上交通の要衝だった淡路島が弥生時代の流通で果たした役割を考える上で重要な史料」とコメントしている。弥生時代にはすでに中国との交易が盛んであったとか。ただし、弥生時代は物品貨幣の社会で、実用の貨幣だったとは考えがたく、交易拠点にもたらされた小型青銅器の一つではないかとの専門家のコメントも記事に掲載されていた。

 しかし、貨幣という存在そのものがすでに弥生時代に中国からもたらされていたことには驚きであった。ただし、世界史を見るとその時代には各地で貨幣は流通していたことも事実である。

 世界における最初の鋳造貨幣は、紀元前7世紀ごろに現在のトルコ西部に位置するリディアで発行されたエレクトロン貨とされている。紀元前6世紀頃のギリシア期において、貨幣使用を中心とした貨幣経済化が進む。ローマでは紀元前46年頃にカエサルのもとで行なわれた鋳造策などによって、貨幣体制は整ってきた。

 中国の最初の鋳造貨幣は、春秋戦国時代に作られた貝貨のような形をした蟻鼻銭(ぎびせん)と言われている。紀元前221年に中国を統一した秦の始皇帝は、秦で用いられていた環銭の形に銭貨を統一し、すでに発行されていた「半両銭」という円形方孔貨に統一された。

 そして貨泉は前漢と後漢の間にあった新(紀元8年〜23年)の時代の貨幣であり、鋳造期間が短かったこともあり、一緒に出土した土器などの年代をはかるキーとなっているそうである。

 たしかに出土された貨泉の枚数は少なく、貨泉が通貨として使われた可能性は少ないかもしれない。しかし、通貨という認識はすでに当時からあった可能性がある。どうも我々というか私が勝手に抱いていた弥生時代のイメージと実際とはかなりギャップがあるような気がする。ちなみに日本で貨幣が生まれたのは下記のような経緯からとされている。

 金銀などの貴金属を貨幣として利用するに際には、地金などよりも一定の重量に鋳られた固まりのほうが便利となる。飛鳥板蓋宮伝承地など7世紀後半の飛鳥時代を代表する遺跡のなかから「無文銀銭」と称される小孔が穿たれただけの銀製の小円板が出土している。この無文銀銭も和同開珎の銀銭1枚と同等の価値を有する「貨幣」ではないかとみられている。

 708年の和銅元年に日本最初の「公鋳貨幣」として「和同開珎」が律令制府により鋳造された。701年に「大宝律令」が完成し、平城京への遷都の準備中でもあった矢先、現在の関東地方の武蔵国秩父郡で和銅が発見された。遷都などで大量の資金が必要としていた政府は、中国などに習って貨幣発行の準備していたところでもあり、政府は年号まで「和銅」と改元して、わが国最初の公鋳貨幣を発行したのである。和同開珎は唐の時代に発行された「開元通宝」がモデルとされているが「開元通宝」は、始皇帝が銭貨を統一する際から中国で用いられた円形方孔貨となっていた。

 和同銅銭には1個1文の価値が付され、江戸時代末までの約1200年間にわたってわが国貨幣制度のなかで重要な役割を果たした銭貨の基礎がこれによって構築された。

 和同開珎以前に存在した貨幣として上記の「無文銀銭」と共に「富本銭」が知られているが、「和同開珎」が広範囲に貨幣として流通した日本最古の貨幣として認識されている。「和同開珎」は畿内とその周辺では貨幣として使われたようだが、地方では富と権力を象徴する宝物としてしか使われなかったとされている。


2017年5月19日「何故、このタイミングで首相と日銀総裁が会談したのか」

 日銀の黒田東彦総裁は17日に首相官邸で安倍晋三首相と会談した。黒田総裁が首相官邸に首相を訪ねるのは1月11日以来、4か月ぶりとなる。黒田総裁は会談後、記者団に「金融緩和をしっかり続けていくとだけ申し上げた」と明らかにした。「首相から特別の注文はなかった」とも述べた(日経新聞電子版)。

 5月には金融政策決定会合の予定はない。首相から何かしら要請されるような状況でもない。今回は前回の会談から4か月経っており、首相のスケジュールと黒田総裁のスケジュールが空いたところで定例とも言える会談が設定されたと思われる。黒田総裁も首相との会談について「定例的なもの」とあえて強調していた。

 官邸側としても日銀の金融政策で物価目標が達成されておらずとも、今年1〜3月期のGDPが年率プラス2.2%の成長率と5期連続でプラスになるなどしており、あえて追加緩和を要求するようなことは考えづらい。むしろ物価が上昇しない、つまり金利も超低位のなかでの経済成長は政権にとっても好都合のはずである。ここで物価が2%に向けて急上昇し、長期金利も上昇するようなことになると、財政面への影響が出てくることも予想される。その意味ではいまの環境は政権にとっては好環境とも言えよう。

 しかし、そうはいっても日銀が政権の意向を汲んで、異次元緩和を行っているという事実は残る。しかもそれで物価は上がってこないということも露見した。そもそもアベノミクスと称された政策の根底、つまり異次元緩和で物価を上げてデフレ解消との前提に大きな間違いがあったものの、いわば結果オーライといった事態となっている。

 それでもいまの日本が危機的な状況にあるわけでもなく、景気が落ち込んでいるわけでもないにも関わらず、非常時の以上金融政策を長らく続けてしまっているということも事実である。それはそれで潜在的なリスクが膨らんできていると見ざるを得ない。本来であれば、ステルステーパリングとかではなく、妙なかたちで積み上げてしまった金融緩和政策の修正を図り、将来のリスクを取り除くことが求められてしかるべきであろう。

 しかし、異次元緩を押しつけたのが現政権であり、自らの政策の根底が間違っていたことを認めるようなことも現在の日銀はしづらいというか、できないであろう。少なくとも政権が代わり、リフレ政策に疑問を持つ首相でも就任しない限り、現在の状況は継続することが予想される。そのあたりを暗黙のあちに確認したのかもしれない。

 ただし、日銀が国債を持てばその分の政府債務はカウントされない、などとの考え方がいかに危険なものであるのか。その危険性が試される日が将来、来ないとは言い切れないことも確かである。そのあたりのリスクを日銀と官邸が共有しているようには見えないことも確かではなかろうか。


2017年5月18日「ロシアゲート問題でトランプリスクが再浮上し、市場が動揺」

 トランプ大統領は、ロシア側に機密性の高い情報を漏らしたと報じられた。トランプ大統領は「テロなどに関する事実を共有したかった。私にはそうする権限がある」と主張していたが、野党だけでなく与党からも問題視する意見が出ており、新たな火種となりつつある。

 トランプ大統領を巡るロシアに関する問題は「ロシアゲート」とも呼ばれているようで、これは1972年6月にワシントンの民主党本部で起きた盗聴侵入事件に始まり、現職大統領が辞任に追い込まれたという政治スキャンダル、「ウォーターゲート事件」を意識したものか。

 トランプ大統領とロシアとの関係への疑惑は、FBIのジェームズ・コミー長官を解任したことでも強まっていた。外交や安全保障に直結する幹部を全て交代させたトランプ大統領だが、FBI長官だけは残留させていた。そのコミー長官を何故、このタイミングで解任したのか。解任前にトランプ大統領は自らがロシア関係の問題で捜査の対象になっていないと確認したことを明かしている。すでにトランプ政権のマイケル・フリン安全保障補佐官はロシアを巡る疑惑で辞任しているが、この問題もトランプ大統領はまったく関わっていないと見る方が不自然に見える。

 実際にトランプ大統領は解任したコミー長官の在任中、同氏にフリン前大統領補佐官とロシアとの関係を巡る捜査を打ち切るよう求めていたとも報じられた。トランプ氏には捜査を妨害しようとしたとの疑いが浮上しており、大統領罷免などの可能性まで取り沙汰され始めた(ロイター)。

 このロシアゲート問題という新たな火種をトランプ政権は消し去ることができるのか。それともこれをきっかけにウォーターゲート事件によるニクソン大統領の辞任と同様の事態に発展するのかは読み切れないところがある。しかし、市場はこの問題を完全に無視できなくなりつつある。

 フランスの大統領選挙でのマクロン氏の勝利、ドイツ最大州のノルトラインウェストファーレン州の議会選挙でメルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)が勝利したことにより、欧州の政治リスクは大きく後退した。そのタイミングでの米国の政治リスクの高まりにより、16日にはユーロドルは1.1ドル台に乗せ、ユーロ円は一時125円台に乗せてきた。

 そして17日の欧米市場では、ロシアの米大統領選関与疑惑を巡りトランプ大統領に対する弾劾裁判の可能性も出てきたことで急速にリスク回避の動きを強めた。ドル円は一時110円台にまで急落(ドルに対して円高が進行)、125円台に乗せていたユーロ円も123円台となり、リスクオフの際の円の強さを意識させる動きとなった。

 16日の欧米の株式市場はさほど動揺を見せておらず、ナスダックやロンドンの株価指数は過去最高値を更新中となっていた。しかし、17日のダウ平均は372ドル安となり、高値を更新していたナスダックも利益確定売りから158ポイントもの下げとなっていた。米10年債利回りは2.22%に低下し、前日の2.32%から0.1%もの利回り低下となっていた。今後のロシアゲート問題の行方次第では、さらにリスク回避の動きを強める可能性があり、その動向にも注意を払う必要はありそうである。


2017年5月17日「ゆうちょ銀行が日銀の国債売買オペに参加、それぞれの思惑も」

 日本郵政グループのゆうちょ銀行が、日本銀行が運営している国債売買オペに4月以降、参加しているようである。

 4月19日にゆうちょ銀行は電子メールで、「当行は、民営化以降、運用の高度化・多様化を進めており、その一環として、本件日銀オペの参加を申請し、この度日銀より承認されたもの」とコメントしていた(ブルームバーグ)。

 私はてっきり、日銀の売買オペには、ゆうちょ銀行も参加していたと勝手に思い込んでいた。しかし、確かに下記の日銀が公表した「国債売買オペの2016年度対象先公募(定例選定)の結果について」には、ゆうちょ銀行は入っていない。

「国債売買オペの2016年度対象先公募(定例選定)の結果について
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel161014a.pdf

 ゆうちょ銀行が保有する国債額は73.5兆円規模となり日銀に次ぐ大きさである。ただし、運用等に制限もあったことで、日銀の国債売買オペには参加していなかったとみられる。

 日銀にとってもすでに年間発行額規模の国債を購入しており、金融機関保有の国債の引き剥がしをしていかないと、この規模の買入はステルステーパリングをしているといえ、いずれ限界も来てしまう。そのような環境下、70兆円規模の国債を保有するゆうちょ銀行による国債売買オペへの参加は日銀にとっても願ったり叶ったりとなるのか。

 しかし、ゆうちょ銀行にとって資産であるところの保有国債を日銀に売却してしまうとその資金の運用に困ることとなる。ただし、今後は資産運用の多極化も図るようで、それも今回の動きの背景にあるのかもしれない。ただし、証券会社などのように日銀トレードで鞘を取るといった運用が果たして可能なのであろうか。ちなみに、ゆうちょ銀行は国債入札参加者に含まれている。

財務省「国債に係る入札参加者一覧」
http://www.mof.go.jp/jgbs/topics/bond/bidders/index.htm

 今回のゆうちょ銀行が日銀の国債売買オペに参加したことは、ゆうちょ銀行と日銀それぞれの思惑が働いているようにも思われる。


2017年5月16日「4月に地銀などが米国やフランスの国債等を過去最大規模で売り越しか」

 5月11日に公表された4月の対外対内証券投資売買契約の状況によると、居住者による対外債券(中長期債)投資は4兆2559億円の処分超となり、月次の売り越し額としては過去最大規模となったようである。

「4月の対外対内証券投資売買契約の状況」財務省
http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/itn_transactions_in_securities/month.pdf

 11日の発表には国別の状況は記載されておらず、これは6月に公表される国際収支の付表で確認するほかない。

国際収支の付表がアップされるサイト
http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/balance_of_payments/release_date.htm

 上記のサイトでは3月の数字まで確認できるが、対外証券投資(中長期債)に関しては、昨年11月までは買い越しが続いていたのが、12月に2兆1136億円の売り越しとなり、今年1月も1兆2593億円の売り越し、2月が2兆1164億円の売り越しと大量の売り越しが続いていた。3月は3727億円の売り越しとなり、売り越し額は減少していた。

 昨年12月からの売り越しの内訳を「主要国・地域ソブリン債への対外証券投資」で確認してみると12月は米債を2兆3894億円、フランスの債券を1483億円売り越していた。1月は米債を1兆6298億円、フランス国債を1894億円売り越し、2月は米債を1326億円、フランス国債を1兆5180億円売り越し。3月は米債は1兆398億円の買い越しとなっていたが、フランス国債を9428億円売り越していた。

 フランスの10年債利回りの推移をみると、昨年11月の米大統領選挙を受けての米10年債利回りと連動するかのようにフランスの10年債利回りも上昇してきた。米大統領選挙前に0.5%割れとなっていたフランスの10年債利回りは、今年1月末に1%台に乗せてきた。米10年債利回りが12月のFOMCでの利上げ決定を受けていったんピークアウトしていたにもかかわらず、フランスの10年債利回りは3月半ばあたりまで上昇を続けた。この背景にあったのは今年4月、5月のフランス大統領選挙に向けた思惑であった。

 国内投資家による12月以降の米国債の売却の要因のひとつとしては、米大統領選挙の結果を受けたトランプ政権の経済政策への思惑やFRBによる昨年12月と今年の3月の利上げにみられる正常化を睨んだものであったとみられる。

 またフランス国債についてはフランスの大統領選挙を睨んだものであったとみられ、4月と5月の大統領選挙を前にして、4月もフランス国債を大量に売り越していた可能性はある。また売り越し規模からみて米国債も売り越していた可能性がある。そうであればこちらは年内3回とされる米利上げを織り込んでの動きか。いずれにしても来月発表される国際収支の付表にて確認してみたい。

 さらに別の要因が影響していた可能性がある。5月16日の日経新聞の記事によると、昨年12月以降のフランス国債の売却は地銀などの売りではないかとの指摘があった。地銀などは日銀のマイナス金利政策の影響で日本国債出張周りが稼げず、外債投資を増加させていた。しかし、上記のような政治絡みによる利回りの上昇に加え、金融庁は外債運用を拡大させている一部の地域金融機関を対象に米国債の価格下落が経営に与える影響などの立ち入り検査を実施することになり、特に4月に地銀などが保有する米国債やフランス債のポジションを大きく削減させていた可能性もある。


2017年5月15日「6月の米利上げの行方」

 5月2日と3日に開催されたFOMCでは金融政策の現状維持を決定した。声明文では、「第1四半期の経済成長の減速は一時的である可能性が高い」とし「経済活動が緩やかなペースで拡大し、労働市場の状況はさらにいくらか力強さを増し」、その上で「インフレ率は中期的に2%近辺で安定すると予測している」としていた。

 この声明文の内容からみて6月のFOMCでの利上げの確率は高いとみられる。利上げに向けた環境が整っているのであれば、何故5月のFOMCでは現状維持であったのか。これはFRBは公には認めてはいないものの、ある程度のルートマップが存在し、3月、6月そして9月のFOMCで利上げを行った上で12月のFOMCで保有資産の再投資を止めることで、膨らんだバランスシートの縮小に着手するのではとみられているためである。

 3月、6月そして9月のFOMCで利上げを行うとの予想の背景には、年3回の利上げとしてバランスを配慮した面もあるかもしれないが、いずれも議長会見が予定されたFOMCであるということも絡んでいよう。ちなみに2013年12月のテーパリングの決定、2015年12月の政策金利の0.25%〜0.50%への引き上げ。2016年12月0.50%〜0.75%への引き上げ、2017年3月の0.75〜1.00%の引き上げのいずれも、議長会見の予定されていたFOMCで決定された。

 6月の利上げについて懸念材料となっていたのが、欧州の政治リスクであった。フランス大統領選挙でマクロン氏が勝利したことでユーロ分裂の危機は後退し、これもFRBの利上げの阻害要因とはならなくなった。

 5日に発表された4月の米雇用統計では非農業雇用者数が21.1万人増と予想を上回った上に失業率は4.4%と約10年ぶりの水準に低下した。平均時給が前年同月比で2.5%増と前月から減速したものの、これも利上げにはフォローの要因となろう。

 米議会の与野党は連邦政府の9月末までの支出をまかなう暫定予算案の内容で合意しており、政府機関閉鎖リスクも後退している。

 12日に発表された4月の米消費者物価指数は前月比0.2%の上昇となり予想を下回ったが、これも6月の利上げの阻害要因とはならないとみられる。ちなみに前年比では2.2%の上昇。食品とエネルギーを除いたコア指数は前月比0.1%上昇。前年比では1.9%上昇となっていた。

 米10年債の利回りの推移を見る限り、6月の利上げをそれほど織り込んでいるようには見えない。これは今回に限らずではあるが、欧州の政治リスク等もあったことでリスク回避から利回り上昇が抑えられていた面もある。FRBの正常化に向けた政策に対し過度な反応は避けているようにも見える。

 いずれにしても現在の環境に大きな変化がない限り、6月のFOMCでの利上げ決定の可能性は高いと見ている。


2017年5月12日「英国のEU離脱による混乱のリスク」

 5月11日のイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)では、7対1の賛成多数で金融政策の現状維持を決定した。フォーブス委員が即時の利上げを主張した。残りの委員らも上向きのニュースがあれば、利上げ支持に回るのはそう難しくないとの姿勢を示した。そしてスムーズな離脱を想定した経済予測の通りに景気が拡大すれば、市場が示唆しているよりも速いペースでの利上げが必要となる可能性があるとの認識を示した(ブルームバーグ)。

 イングランド銀行の政策委員は定員が9名だが、シャーロット・ホッグ委員の辞任によって現在は8人となっている。

 同時に経済予測も発表したが、これはEUとの交渉がこじれないことを想定した予測だそうである。カーニー総裁も「これとは別に、無秩序な交渉プロセスになる場合の予測も準備しなければならないだろうが、まだ行っていない」と会見でコメントした。

 カーニー総裁の発言を受け、外為市場ではポンドが下落した。EU離脱の際の混乱の可能性、それによる英国経済への影響、さらにはイングランド銀行が利上げではなく、さらなる金融緩和を迫られる可能性などが意識されたものとみられる。

 しかし、このポンド安が英国経済にはプラスとなるとの見方で、英国の株式市場はしっかりするなど一概にリスク回避の動きばかりとはなっていない面もある。イングランド銀行は2017年のインフレ予想は2.7%と従来の2.4%から引き上げたが、これはポンド安の影響も加味されているとみられる。

 フランスの大統領選挙でのマクロン氏の勝利でひとまずユーロ圏の政治リスクは大きく後退した。しかし、英国はEU離脱をすでに決定してしまっており、今後どのようなかたちでEUを離脱し、それが英国経済や金融市場にどのような影響を及ぼすのかは不透明要因となる。グローバルに展開している金融機関などにとってもロンドン市場の今後を考慮すれば不安要因となろうが、いまのところ金融市場が英国リスクで動揺するようなことはない。しかしこれについても潜在的な不安要素となっていることも確かであろう。


2017年5月12日「円安の背景に欧州の政治リスク後退と6月の米利上げ観測」

 外為市場でドル円は4月17日の108円台前半を目先の底として上昇基調となり、ここにきて114円台を回復してきた。108円台まで下落していたのは3月上旬の115円台をつけたあたりからとなり、チャート上としては115円台がひとつの目安となりそうである。

 このドル円の上昇のきっかけは、ムニューシン米財務長官が4月17日のFTとのインタビューで、トランプ大統領は短期的なドルの強さについて事実に基づく発言を行ったと述べ、長期的に見て強いドルは良いことだと指摘したことがある。しかし、ドル円の上昇のタイミングで米債が下落基調となっていたことで、米長期金利の上昇を受けてのドル買いの側面もあったとみられる。

 また、フランス大統領選挙を控えた世論調査でマクロン氏の支持率が上昇したことで、欧州の政治リスクへの警戒感が後退し、FRBの利上げに対する支障が除かれると観測も米長期金利の押し上げ要因になった。

 4月23日のフランスの大統領選挙では、予想されたようにマクロン前経済相と国民戦線のルペン党首の2人が決選投票に進むことになった。この二人が決選投票となればマクロン氏優位との見方が強かった。これを受けてドル円も111円台に上昇してきた。

 5月2日、3日に開催されたFOMCでは金融政策の現状維持を決定した。声明文では、第1四半期の経済成長の減速は一時的である可能性が高いとし、経済活動が緩やかなペースで拡大し、労働市場の状況はさらにいくらか力強さを増していると指摘した。FRBの年内3回(あと2回)というペースに変化はないと認識され、これは米長期金利の上昇要因となり、ドル高要因となった。

 5月7日に行われたフランス大統領選の決選投票の結果は、事前の予想通りに中道で無所属のマクロン候補が「極右政党」のルペン候補を破り勝利した。これで欧州の政治リスクは大きく後退し、リスク回避の反動からドルが買われやすくなり、米債には下落要因となった。

 ただし、米債は売られたとは言ってもいまだ3月につけていた2.6%にも届かず、利上げを織り込んでいるにしては下落ペースは極めて緩やかなものとなっている。これは物価等も意識してのものとも思われるが、FRBにとっては過剰反応していない分、利上げをしやすくなるとも言える。

 今後の動きについては、フランス大統領選挙という大きなイベントが無事通過し、一時緊張が高まっていた北朝鮮も、いまのところ大きな動きが出る様子もない。トランプ政権はやや不安定に見えるものの、FRBの利上げを阻むような要因も見えない。

 今後は6月のFOMCでの利上げの行方が焦点となろうが、市場では利上げをかなり織り込んできていることも確かである。ECBの政策転換も注目材料となろうが、大きく舵を取ることはむずかしい。ましてや日銀は動くに動けない。これをみる限り、米国と日欧の金融政のスタンスの違いは明らかで、これもドルが買われやすい要因となる。


2017年5月11日「北朝鮮の地政学的リスクを市場はどう見ているのか」

 北朝鮮の駐英大使は9日、英スカイニュースのインタビューで6回目の核実験を計画していると明らかにした(日経新聞電子版)。

 原子力空母カール・ヴィンソンを中心とする空母打撃群は朝鮮半島周辺の海上に展開しているとみられ、北朝鮮に圧力をかけており、今回の北朝鮮の駐英大使のコメントはそのような圧力には屈しないとの姿勢を示したかったのではなかろうか。

 北朝鮮の駐英大使からの核実験の計画示唆に対して、9日の米国株式市場はわずかながら反応を示し、ダウ平均の上値を抑えた。しかし、ナスダックは最高値を更新し、米債はリスク回避による買いは入らず、むしろ社債発行等が意識されて売られていた。

 10日の東京株式市場は円安などを受けてむしろ買いが先行した。外為市場で円が売られ、株が買われるということは当然ながらリスク回避とは反対の動きであり、地理的にも近い日本の市場でも北朝鮮の駐英大使の発言はほとんど材料視されていないことが伺える。

 北朝鮮外務省で対米交渉や核問題を担当する崔善姫北米局長と米国の元政府高官らは8日、ノルウェーのオスロで非公式接触を始めたもようだと韓国の聯合ニュースが報じた(日経新聞)。トランプ政権が北朝鮮に最大限の圧力を加える一方、対話にも「オープンだ」として硬軟両面で揺さぶりをかけており、北朝鮮側も米側の出方を探ろうとしているようである。

 そして9日の韓国の大統領選挙ではムン・ジェイン(文在寅)候補が勝利し、第19代大統領に就任する。文氏は北朝鮮には融和姿勢を示しており、対北朝鮮政策は朴政権の強硬路線から「対話」へとカジを切ると予想されている。米軍による地上配備型ミサイル迎撃システムのTHAADの韓国配備にも慎重な立場を取っている。このため文氏の大統領就任により、北朝鮮側の動きも変化してくる可能性があり、これは一触即発の事態を回避させる方向に向かう可能性もある。

 それでも米側の今後の動向が読みにくい事も確かである。空母ロナルド・レーガンが5月7日、1月に始まったメンテナンス期間の最終段階として、海上試運転のため母港である米海軍横須賀基地を出港した(在日米軍司令部のツイッターより)。

 この空母ロナルド・レーガンのメンテナンス明けにどのような動きを見せるのかもひとつの焦点となるかもしれない。しかし、米側も緊張をさらに高める政策は手控えてくる可能性もある。いまのところ北朝鮮の地政学的リスクに対し市場の反応をみる限り、それほど懸念しているようには見えないことも確かである。


2017年5月10日「異常な金融政策が異常に見えなくなる怖さ、なぜ正常化が必要なのか」

 フランス大統領選挙でのマクロン氏の勝利により、欧州の政治リスクが後退した。投資家の不安心理の度合いを示すシカゴ・オプション取引所のボラティリティー・インデックス(VIX指数)は20年超ぶりの低水準となったそうである(ロイター)。

 米国の中央銀行にあたるFRBは2014年1月からテーパリング(毎月の米国債とMBSの買入額の縮小)を開始し、10月にテーパリングを終了させ(新規の買入停止)、2015年12月には利上げを決定した(政策金利の0.00%〜0.25%から0.25%〜0.50%へ引き上げ)。これらはいわゆる正常化に向けての動きとなる。2016年12月(0.50%〜0.75%に)、2017年3月に追加利上げを決定し(0.75〜1.00%に)、6月も利上げするとの予想となっている。その後、9月にも利上げを決定し、12月からは膨らんだバランスシートの縮小を償還分を再投資しないかたちで実施するのではとの観測となっている。

 この正常化に向けた動きに対して、何故このタイミングで金融引き締めをしなければならないのか、バランスシートの縮小は必要なのかという声もある。北朝鮮などの地政学的リスクはまだまだ存在する。景気も雇用はさておき、それほど高い成長率ではなく、物価も日本はさておき欧米もFRBやECBの目標値に届いていないではないかとの理由によるものとみられる。

 そもそも正常化をするということは、それまでの政策が「異常」であったと言う事実を忘れてはいけない。何故、異常な政策を行わなければならなかったのか。それは米国の金融機関を直撃したリーマン・ショックに代表される金融危機とギリシャの財政問題がきっかけとなったユーロシステム崩壊の懸念による世界的規模の金融危機への対処であったはずである。財政政策に限界が見えたことで金融政策に頼らざるを得なくなり、いわゆる非伝統的な政策を試すことになった。非常時の金融緩和による実質的な効果のほどはさておき、金融市場での不安感は後退したことは確かである。それが2012年の年末にかけてであった。

 このタイミングで日本ではアベノミクスと呼ばれた政策が急浮上した。デフレ解消を旗印にリフレ政策というその効果への疑問があるとともに副作用が懸念された政策を日本の中央銀行は取らざるを得なくなった。

 また、ECBやイングランド銀行は英国のユーロ圏離脱問題等も生じ、こちらもさらに深入りせざるをえなくなった。しかし、ユーロを巡る危機は今回のフランス大統領選挙の結果からみても後退するとみられ、ECBはあらためて緩和に向けた姿勢からのスタンスの変化を今後試してくる可能性が出ている。

 それに対して日銀は2%という物価の絶対目標を掲げてしまった。しかしリフレ政策では効果が出ず、マイナス金利政策も取り入れたものの金融業界などの反発もあり、長短金利操作付き量的質的緩和という異質な政策となってしまった。すでに後戻りできず、物価目標の2%が見えるまで異常な政策を続けざるを得ない状況に陥ってしまっている。

 これに対して米国では特に雇用面での回復が著しく、原油価格も回復したことで物価も上昇してきたことから、正常化を進めることができた。異常な政策はその対価として将来的なリスクが存在する。そのリスクを軽減させるためにも正常化は必要となる。しかし、金融市場は大きな危機が繰り返されてかなり過敏になっており、FRBの正常化も時間を掛けて行わざるを得なかった。金融緩和は簡単だが引き締めの格好となる正常化を、景気に加熱感のないタイミングで行うことはかなり神経を使わざるを得ない。しかし、将来的なリスクは摘み取っておく必要があることも確かである。

 その将来的なリスクとは何か。たぶんそれはいずれ日本で試されることになるのではないかと思う。いまの日本の債券市場がいかに機能不全に陥っているのかは最近の債券市場の動きを見てもあきらかである。国債の買い手が日銀と海外投資家だけのような状況となっている。そして日銀はすでにGDP規模の国債を買い入れている。政府はGDPの2倍以上の債務を負っている。いままでそれで国債が急落することはなかったので、それを懸念するのはおかしいとの見方もある。しかし、ダムは水が溜まり続けても崩壊するまで危機とは認識されないように、見えないリスクが膨らんでいることも確かではなかろうか。


2017年5月9日「フランス大統領選挙でのマクロン氏勝利で市場はひと安心、今後はECBの動向も焦点に」

 5月7日に行われたフランス大統領選の決選投票の結果は、事前の予想通りに中道で無所属のマクロン候補が「極右政党」のルペン候補を破り、勝利した。すでに5日の欧米市場ではマクロン氏勝利を織り込んで株式市場は上昇していたが、8日の東京株式市場も買いが先行し、日経平均は年初来高値を更新した。

 ここで注意すべきポイントはふたつある。ひとつは「事前の予想通り」であったということである。昨年の英国の国民投票の結果によるEU離脱の決定や米国大統領選挙の結果は、事前予想を裏切るものとなり、事前予想そのものに対して疑念が生じた。さらに予想外のことが起きやすいのではとの見方が拡がった。その予想外の出来事の主因として「自国優先主義」の台頭があった。予想以上の人達がポピュリズムや自国優先主義の考え方に共感し、その流れの行き着く先がルペン氏の勝利の可能性となっていたのである。

 それらの流れに対して、とりあえず壁となったのが3月15日のオランダ総選挙の結果であった。ルッテ首相率いる与党・自由民主党がウィルダース党首の自由党を大差で破った。反移民や反欧州連合(EU)を掲げる極右の自由党は伸び悩んだものの、議席そのものは増やした格好となった。ポピュリズムの流れはあるものの、米国のように政権が変わるような事態にまでは発展するような動きとはならなかった(自由党が勝っても政権につく可能性は低かったが)。

 そして今回のフランス大統領選挙の結果も「自国優先主義」を掲げたルペン氏は敗退した。ルペン氏が決選投票まで残ったことそのものはフランスでのポピュリズムの流れの強まりを示すものとの見方もあろう。しかし、ルペン氏の父親のジャンマリ・ルペン氏も2002年の大統領選挙でシラク大統領との決選投票に進んで、やはり敗退している。これを見る限り、フランスではポピュリズムに対しする一定の支持はあるものの、その流れを阻む勢力のほうが依然として大きいとの見方ができるかと思う。

 9月にはドイツ連邦議会選挙が予定されている。オランダの総選挙やフランスの大統領選挙の行方次第では、ドイツの選挙でも反ユーロの勢力が強まる懸念もあった。警戒は必要ながらもユーロが内部から崩壊するような事態は避けられよう。

 金融市場では今回のフランス大統領選の決選投票の結果をみて、ひと安心となった。「もしも」が警戒されていたが、それが払拭されてリスクオンの動きを強めた。株式投資家の不安心理の度合いを示すシカゴ・オプション取引所のボラティリティー・インデックス(VIX指数)は20年超ぶりの低水準となったそうである(ロイター)

 ここからはユーロというシステムの行方に対する不透明感はある程度払拭され、今後はそれほど材料視はされなくなるとみられる。欧州の政治リスクの後退を受けて、市場の視線はあらためて、欧米の景気や物価動向を睨みながらのFRBの正常化に向けた動きや、ECBの政策転換の可能性など、欧米の中央銀行の政策の行方などが焦点になると予想される。


2017年5月3日「長期金利が1日半も値がつかず、国債市場は大丈夫か」

 5月1日の日本の債券市場はまれに見る閑散相場となった。ベンチマートともいえる大阪取引所に上場している長期国債先物(債券先物)は、日中(ナイトセッション除く)で1.3兆円弱と、少ないながらも極端に少ないわけではなかった。しかし、問題は現物債であった。

 日本の長期金利は10年国債の新発債の利回りとなっている。債券市場での現物債の取引は店頭取引と呼ばれる相対取引となっている。このため投資家と業者がいくらでどれだけ売買したのかは当事者以外にはわからない(当然ながら守秘義務も発生する)。このため現物債の動きをみるために使われているのが主に日本相互証券(BB)での売買となる。

 日本相互証券とは証券会社が出資をして証券会社同士の国債を主体とした債券の売買をするために設立されたものである。ここは業者と呼ばれる証券会社などが自分のポジションの調整のために売買を行う。取引相手はわからないようにしながら、BBの専用画面で株式市場のような板を見る事ができる。もちろん商いの動向も端末を持っていれば把握できる。

 この日本相互証券会社での10年国債の新発債(カレント物とも呼ばれる)で出合った利回りが、現物債の利回りとして市場で把握されることとなる。つまり日本の「長期金利」とは、日本相互証券会社で出合った10年国債の新発債の利回りとなっている。

 そのBBでの10年カレントが5月1日にまったく出合いがなかったのである。しかも2日の前場も出合いなく、日本の長期金利は1日半も値がつかない状態となっていた。ただし、1日出合いなしというのは初めてのケースではない。5月2日の日経新聞の記事によると異次元緩和導入でみると、これまで計4回発生している。

 ただし、1日は10年債のカレントの売買がなかっただけでなく、2年、5年、20年、30年、40年のカレントが先物の大引けとなる15時までに一本しか値がついていなかった。しかも、15時現在で、2年カレントが10億円だけ、5年カレントは20億円だけ、10年カレントは出合いなく、20年カレントは10億円だけ、30年カレントと40年カレントはそれぞれ5億円しか出合っていなかった。これはまさに異様に少ないと言わざるを得ない。

 債券市場が冬眠状態となってしまった要因としては、5月1日は大型連休の狭間にあたったためということがある。また2日からのFOMC、5日に米用統計発表、7日にフランス大統領選挙の決選投票を控えて動きづらかった面もある。

 しかし、そもそも日銀が異常な額の国債を市場から買い上げている上に、イールドカーブコントロール政策まで取り入れて、市場機能が失われつつあることが大きく影響していよう。日銀は物価目標を達成するまでこの異常ともいえる政策を続けるようであるが、それはつまり今後さらに債券市場の機能が失われる懸念は強まる。日銀の国債買入額は2017年度が前年度よりも国債発行額が減少することもあって、少しずつ減らしてはいるものの(ステルステーパリング)、それでも大量の国債買入が続いているのも確かである。

 日本の国債市場は発行残高が膨大であることもあり、米国に次ぐ大きさとなっている。その機能が失われつつあるということは、経済や物価の動向を映す鏡が曇ってしまうだけでなく、人的資源の損失にも繋がりかねない。市場参加者そのものが減少するだけでなく、ファンダメンタルズなどに即して長期金利が動くことを経験する機会も失われることになる。果たしてこれで本当に良いのであろうか。


2017年5月2日「欧米の物価動向とFRBやECBの対応」

 28日に米商務省が発表した第1四半期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み、年率)速報値は前期比年率0.7%増となった。2014年の第1四半期以来3年ぶりの弱い伸びにとどまった。GDP全体の約7割を占める個人消費が成長鈍化の主因になったが、これは2016年10〜12月期の個人消費の伸び率が3.5%となったことによる反動もあり、また暖冬による消費減少が主な背景ともされている。

 28日に米労働省が発表した1〜3月期の雇用コスト指数は、季節調整済みの前期比で0.8%上昇となった。これは2007年10〜12月期以来の大きな伸びとなり、市場予想も上回った。賃金・給与は0.8%上昇(前期0.5%上昇)。諸手当は0.7%上昇(前期0.5%上昇)。通年(昨年4月〜今年3月)では前年比2.4%の上昇となった。

 1日に発表された3月のPCE物価指数は0.2%の下落となり、2016年2月以来のマイナスとなった。前年同月比では1.8%の上昇に。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は前月比0.1%下落と2001年9月以来のマイナスとなった。前年比では1.6%の上昇。

 GDPの弱い伸びが一時的な要因によるものかどうかは、今後の改定値等も確認する必要はあるが、雇用コスト指数を見る限りFRBの年内の3回程度の利上げの可能性は維持されよう。PCE物価指数は前月比でマイナスとなったものの、物価の基調に大きな変化はないとみられる。今週2日、3日にFOMCが開かれる。今回は利上げは見送られ、現状維持が予想されている。しかし、議長会見が予定されている6月のFOMCにおいて、利上げを決定する可能性は高いとみている。その後の9月のFOMCでも利上げを決定した上で、12月のFOMCでは保有国債の償還分の再投資の停止を決定するのではと予想されている。

 28日に欧州連合(EU)統計局が発表した4月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)速報値は、前年同月比1.9%の上昇となり、予想も上回った。エネルギー価格の上昇などが寄与した。欧州中央銀行(ECB)は中期的なインフレ率目標を2%をやや下回る水準に設定しており、ほぼその水準にある。また、食品とエネルギーを除くコアインフレ率は1.2%の上昇と2013年9月以来の高水準となった。3月の0.8%を上回り、こちらも市場予想を上回った。

 4月27日のECB政策理事会では金融政策の現状維持を決定した。会見でドラギ総裁は景気の下振れリスクは一段と後退したとの認識を示したが、インフレに関しては慎重な姿勢を崩さなかった。しかし、4月のCPIを見る限り、それほど懸念する必要はなさそうである。ECBは6月の政策理事会で、金融緩和策の解除に向け文言の変更を検討していると報じられていた。5月7日のフランス大統領選の決選投票の結果次第の面もあるものの、今回のCPIを見る限りにおいて、その可能性もないとは言えない。


2017年5月1日「国債の入札結果の見方」

 ここであらためて国債の入札結果をどうみるのかを確認しておきたい。国債入札日の当日10時30分に利率や回号、発行日、償還日、利払い日などの条件が財務省から発表される。これは財務省のホームページからも確認できる。

 国債入札の参加者は、債券相場の状況や投資家のニーズや他社の動向を見極めて入札の価格や金額を決定する。10年債は1銭刻みで入札されるが、1銭違いで落としたい金額が落とせない事態もあり得る。2年以上の利付国債入札の締め切り時間は、当日12時ちょうど。国債の入札には日銀ネットというオンライン端末が使われているが、この時間を過ぎるとシステム上、入札できない。

 国債を発行するのは財務省だが、その事務手続きや決済などは日銀が行っている。日銀ネットとは「日本銀行金融ネットワークシステム」のことであり、日銀と市中金融機関との間をオンライン化し、各種事務手続の効率化、ペーパーレス化を図ることを目的として開発されたものである。営業系と国債系の 2 つのシステムから成り立っているが、このうち、国債系においては、国債の入札発行の各手続・振替決済が行われている。

 利付国債の入札の結果発表は12時45分。入札結果は発表と同時刻に財務省のホームページに掲載される。コンベンショナル方式での国債入札では、入札参加者に購入希望価格と金額を提示させ、価格の高いところから発行予定額に見合う金額分になるまで順次割り当ててゆく。そして最低落札価格では入札された金額分に応じて比例配分される。

 入札結果の発表の際には、応札額、落札額、平均落札価格、最低落札価格、そして最低落札価格の案文比率などが発表される。案文比率とは、最低落札価格で落札できた割合である。

 入札結果の良し悪しは、まず最低落札価格が事前予想に比べて高いか低いかがひとつの目安となる。ただし、事前の市場予想は、入札に参加した業者などが、投資家の動向や入札に参加する同業他社の動向を掴んでコンセンサスが形作られてくるものであるため、掴みづらい。

 最低落札価格と平均落札価格の価格差をテールと呼ぶ。テールが短ければ短いほど、人気が高いといえる。テールが伸びることを業界では流れるとも表現される。

 応札額を落札額で割った応札倍率(基本は少数第三位以下切り捨て)は、その入札の人気度を示すバロメーターのひとつと言える。応札倍率が低いほど入札は低調と見られる。ただし、テールも応札倍率もあくまで人気を測るバロメーターのひとつであり、絶対的なものではない。


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