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2020年1月21日「日銀の金融政策は現状維持との予想」

 20日から21日にかけて、今年初の日銀の金融政策決定会合が開催される。米中の関税戦争は休戦となり、英国の合意なきEU離脱のリスクも後退した。大きなリスクはひとまず後退しつつある。米中の関税合戦により、中国の景気が減速し、世界経済に与える影響も危惧はされるが、いくまところ国内経済が大きく落ち込むような気配はない。物価についても低位ながらも、こちらも前年比でマイナスに落ち込む様子もない。

 国内景気については昨年末にかけて減速していることが窺える。今月15日に日銀が発表した1月の地域経済報告では、北陸、東海、中国の3地域について、景気の判断を引き下げたが、これも想定の範囲内か。

 今年に入り、外部環境、つまり米中の貿易摩擦激化の回避などもあり、景気は次第に回復してくると日銀は判断しているとみられる。21日に発表される展望レポートでは、2020年度の実質成長率見通しを引き上げるとの観測も出ている。

 今回日銀は金融政策の現状維持を決定してくることが予想される。よほどのことがない限りは、追加緩和の必要性は認められない。金融市場も金融緩和に対してそれほど期待感を強めているわけでもなく、現状維持としても市場に影響を与えることはないとみられる。

 FRB関係者からは年内に特に政策変更は必要ないのではとの見方も出ているが、日銀も同様に、少なくとも年内は政策変更の必要性は認められないとの認識も強めてくるのではなかろうか。個人的には追加緩和にむけた姿勢をできたら中立に戻すような工夫を期待しているのだが。


2020年1月20日「日本の10年債利回りはゼロ%近傍のレンジ相場に」

 日本の10年債利回りは14日にプラス0.010%まで上昇しも再びプラス圏に入ってきた。そもそも日本の10年債利回りが昨年9月にマイナス0.3%まで低下していたことが、やや異常事態となっていたと思われる。

 マイナス0.3%まで低下したのには理由があり、これは米国やドイツ、英国といった欧米の10年債利回りの低下に連動していたものである。米中の関税合戦や英国のEU離脱といったリスク要因を受けてのリスク回避の動きと、景気そのものの減速懸念、それに対応したFRBの利下げやECBの追加緩和期待などによるものであった。

 昨年9月初めがボトムとなって、日本、米国、ドイツ、英国の10年債利回りは反発してきた。その利回り上昇は比較的緩やかなものとなっていたが、戻りのペースとしては日本の10年債利回りの上昇ピッチが比較的速かった。

 水準だけからみると、日本の10年債利回りは2019年1月あたりの水準に戻している。それに対して、米国やドイツ、英国の10年債利回りは2019年7月あたりまでの戻りに過ぎない。

 これには日銀による長短金利操作付き量的・質的緩和政策が影響している。日銀は長期金利の操作を行っており、そのレンジはプラスマイナス0.2%が下限・上限と認識されている。

 マイナス0.3%近くというのはややオーバーシュート気味であったともみられることで、日銀が本来目指しているとみられるゼロ近傍あたりが居所が良いはずである。このため、日本の10年債利回りの戻りが早かったともいえる。

 米国やドイツの10年債利回りが今後も上昇していくとしても、日本の10年債利回りはプラス0.1%あたりでブレーキが掛かると予想される。

 日本の10年債利回りが大きくマイナスとなる必然性はないものの、足元の物価水準や今後の景気動向などみても、大きく上昇することも考えづらい。そもそも日銀には指し値オペといった天下の宝刀もあり、ピッチの速い10年債利回り上昇は抑え込んでくるものと予想される。

 昨年9月あたりまでの日米欧の長期金利の低下は同じようなかたちとなったが、そこからの戻りはそれぞれかたちが違ってきている。イングランド銀行の利下げ観測も出ているが、EU離脱にも絡んで英国の10年債利回りの動きも今後は異なってくることも予想される。

 これからの日米欧の長期金利は次第に連動性が薄れ、それぞれの国の事情を背景に動いてくることが予想される。もちろん何かしらのテールリスクが表面化して、あらためて世界的なリスク回避の動きを強める可能性もないわけではないが、現状、その可能性は薄いのではなかろうか。


2020年1月18日「11月の米国債保有額、日本はトップを維持、中国はさらに減少」

 米財務省が1月16日に発表した11月の国際資本収支統計における米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES)によると、日本は前月から減少させたものの、引き続きトップを維持した。

MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES https://ticdata.treasury.gov/Publish/mfh.txt

 日本の10月における米国債保有額は1兆1608億ドルとなり、前月比で72億ドル減少した。これに対して中国は1兆892億ドルとなり、前月比で124億ドルの減少となった。日本と中国の米国債残高の差は再び拡大し、日本のトップは6か月連続となった。

国、米国債保有額、前月比(単位、10億ドル)
日本(Japan) 1160.8 -7.2
中国(China, Mainland) 1089.2 -12.4
英国(United Kingdom) 328.6 -5.5
ブラジル(Brazil) 293.4 -5.2
アイルランド(Ireland) 290.0 +3.4
ルクセンブルク(Luxembourg) 262.1 -1.2
スイス(Switzerland) 233.4 0.0
香港(Hong Kong) 223.9 +1.3
ケイマン諸島(Cayman Islands) 222.4 -2.8
ベルギー(Belgium) 205.1 -3.2

 米10年債利回りは9月半ばに利回りは1.9%近くまで上昇した後、10月上旬に向けて再び1.5%台に低下した。その後はじりじりと上昇基調となり、11月上旬には一時2%に接近した。

 チャートからみると、2018年11月あたりから続いた米10年債利回りの低下トレンドはいったん終了した格好となってきている。このため、利益確定売りも入りやすい状況にあったともいえる。中国はやや意図的に残高を落としている可能性はあるものの、中国の11月末の外貨準備は前月より95億ドル減の3兆955億ドルとなっていたことで、それに応じて米国債が減少していた可能性もある。


2020年1月17日「トランプ大統領が再度FRBを批判、米中協議内容に不満でも?」

  トランプ米大統領は15日、「第1段階」の米中通商合意の署名式で、連邦準備理事会(FRB)に対する不満を改めて表明した。これまでもFRBやパウエル議長に対して、トランプ大統領は批判を繰り返してきた。政策金利はマイナスにすべきとするなど、通貨安政策も意識した大胆な緩和策を打ち出すべきとしているのが、トランプ大統領である。

 トランプ大統領が批判の矛先をFRBに向ける際には、なにか別のことがうまくいっていないときが多いともされる。今回の第1段階の米中通商合意の署名式というタイミングを考えると、思ったほど中国側が折れてこなかったのではないかとの思惑も出てきそうである。それでも大統領選を睨んで、ここで第一弾の合意の必要性は認識していたことで、合意書に著名はせざるを得なかったのではなかろうか。

 その後、「第1段階」の米中通商合意の署名式の前にトランプ大統領は50分に及ぶ演説を行ったとも伝わった。その話の内容は多岐にわたり、まるで大統領選挙時における演説のようだったとも報じられた。そのなかでFRBのことについても触れたようである。

 さらにトランプ大統領は、FRB議長にウォーシュ元FRB理事を指名しておけばよかったとも発言した。その会場にウォーシュ元FRB理事がいたのに気がついて話しを振ったとも考えられる。そのウォーシュ元FRB理事はイエレン前議長の後任として名前が挙がっており、議長の後任候補としてトランプ大統領が面会していた。

 それではウォーシュ元FRB理事はいわゆるリフレ派に近いような人物かといえば、当然ながらまったくそんなことはない。

 ウォーシュ元FRB理事は、WSJへの寄稿でFRBのインフレ目標を現在の2%から、1〜2%のレンジに引き下げるよう提案したこともある。また、QEと呼ばれた量的緩和策についても批判的な発言もしていた。利下げについても積極的ではないとされている。ハト派というよりタカ派のイメージである。

 ウォーシュ氏が議長となっていれば、日銀やECBなどのように闇雲な、いや積極的な金融緩和政策を取っていたのかといえば、それはなかったと思われる。トランプ大統領にとって、さらなる利下げをためらう現在のFRBとそれを引っ張っているパウエル議長がお気に召さなかっただけで、パウエル氏にしなければ良かったということなのであろう。

 このトランプ大統領の発言に対して、この日講演したFRB当局者は、金利が適正水準にあり、経済成長の維持とインフレ率の押し上げにつながるとの見解を相次いで示したようである。

 とりあえず米国では中央銀行の独立性は維持されている。ちなみにウォーシュ元FRB理事はFRBはもっと謙虚な姿勢で議会やホワイトハウスに対応すべきとの考えも示していたそうである。この意見にはあまり賛同できない。


2020年1月16日「米中の関税合戦はひとまず休戦、関税合戦のこれまでの経緯」

 トランプ米政権は13日、中国の「為替操作国」への指定を解除した。中国が「通貨切り下げを自制する」と約束したためのようで、米中両国は15日にホワイトハウスで貿易交渉の「第1段階の合意」に正式署名するが、貿易戦争とともに通貨摩擦も「休戦」に入った格好となった(14日の日経新聞の記事より引用)。

 ただし、ブルームバーグによると、米国が中国からの輸入品に現在課している制裁関税のうち、昨年9月発動分は第1段階の貿易合意で予定通り引き下げられる見通しだが、それ以外については11月3日の米大統領選挙が終わるまで維持される可能性が高いそうである。

 この結果、大統領選終了後まで温存されるのは、第1段階合意の発効を受けて15%から7.5%に半減される中国製品約1200億ドル相当に対する追加関税と、約2500億ドル相当に対する25%の追加関税となる(ブルームバーグ)。

 14日付けの日経新聞の『通貨摩擦、「適温相場」で休戦 米が中国の「為替操作国」解除』とタイトルされた記事では、中国元の動きを通じてのこれまでの米中交渉の動向を追っていた。さらに「米中関税合戦 18年7月から1年超続く」との記事もあり、これらを元に、これまでの米中の通商摩擦の流れを確認してみたい。

 トランプ政権は2018年7月に、中国による知的財産侵害を理由として、818品目、約340億ドル相当の中国製品に25%の追加関税を課す制裁を発動した。これに対し、中国は即座に同規模の報復関税を実施した。これが米中関税合戦の始まりとなった。

 同年8月には中国からの輸入品160億ドル、279品目に25%の追加関税を課すと発表した。中国の知的財産侵害に対する制裁関税の第2弾となる。

 9月には中国からの輸入品2千億ドルを対象に第3弾の制裁関税を発動した。

 そして、2019年9月に1100億ドル分の中国製品を対象に制裁関税第4弾を発動した。家電や衣料品など消費財を中心に15%を上乗せした。この際には当初想定した品目すべてではなく、その一部が対象となった。

 その後、米国は2019年12月15日に予定していた1560億ドルの追加関税の発動を見送った。1月15日の米中の「第1段階の合意」を経て、2019年9月に発動した対中追加関税の追加関税率を15%から7.5%に引き下げる見通しとなっている。

 さらなる引き下げの有無は中国による第1段階合意の順守状況次第だとされている。

 このように米中の関税合戦はひとまず休戦状態となり、その一環として米国が中国の為替操作国を解除したものと思われる。トランプ政権としては、関税合戦の結果として国内経済の悪化も招きかねないことや、株価の動向など睨み、さらには米大統領選挙の行く末などもみての動きとみられる。今後も予断は許さないものの、米中の関係がさらに悪化するような事態はいったん回避されそうである。


2020年1月15日「イングランド銀行の利下げ観測、英国のEU離脱などに備えた予防的措置か」

 イングランド銀行金融政策委員会のブリハ委員は12日付の英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで、国内の成長に関するデータに「早期かつ著しい改善」が見られない限り今月の政策会合で利下げに票を投じるとの考えを示した(朝日新聞)。

 12月19日のイングランド銀行の金融政策を決める金融政策委員会(MPC)では、金融政策の現状維持を決定した。この際に、ソーンダース、ハスケル両委員が見通し悪化の恐れと労働市場に転換の兆しが見られることを理由に0.25%の利下げを求めていた。

 ここにあらためて利下げを主張したブリハ委員も加わることになるが、どうやら利下げの流れが形作られてきたようにも思える。

 それを示すものといえたのが、イングランド銀行のカーニー総裁の発言であった。カーニー総裁は9日、ロンドンでの講演で、英国経済の弱さが続けば金融緩和に踏み切る可能性を示唆していたのである。

 さらに10日にはテンレイロ委員が、景気が加速しないなら利下げを支持する可能性があると発言していた。

 英国は月次でGDPを発表しているが、英国の11月のGDPは前月比0.3%の減少となり、変わらずとの予想を下回っていた。

 英国のEU離脱についてはやっと道筋が見えてきた。合意なき離脱というリスクは後退した。イングランド銀行にとり、仮に合意なき離脱となれば、その衝撃に備える必要がまずあった。このリスクは後退したが、今度はあらためてEUを離脱することによる英国への経済的な影響も考慮する必要も出てきたといえる。むろん足元経済の減速にも備える意味もあろう。

 次回のイングランド銀行のMPCは1月30日に開催される。政策金利は現在、0.75%となっているが、ここで予防的な0.25%の利下げが決定される可能性は高いとみられる。


2020年1月14日「米主要株価指数が最高値を更新、日経平均も24000円台回復、株価は景気よりもリスクを映す鏡となったのか」

 米中貿易協議の第1段階の合意文書について、中国の劉鶴副首相が渡米し、15日にも署名すると中国商務省の報道官が発表した。中東情勢を巡る懸念の後退に加え、米中の貿易協議の進展期待も加わり、9日の米国株式市場では、主要3指数が過去最高値を更新した。13日もトランプ政権が中国に対する為替操作国の認定を解除するとの報道など好感し、ナスダックとS&P500種は過去最高値を更新。14日のドル円は110円台を回復したこともあり、日経平均も24000円台を回復した。

 経済実態と株価が乖離していることは確かである。株価が最高値を更新するほど景気が過熱しているようなことはない。この株価の押し上げ要因としては、日米欧の中央銀行による過剰な金融緩和策による、いわゆる過剰流動性相場が継続し、買われやすい状況が続いているためといえる。

 本来株価は企業の収益動向などを通じて景気実体を反映する鏡となるはずである。たしかに景気そのものは落ち込んではいない。しかし、低空飛行の状態にある。個別はさておき、全体でみれば企業収益が株価の水準に見合うほど改善しているようにはみえない。

 現実の株価は下がりづらい状況のあるなか、米中の貿易摩擦、英国のEU離脱、さらには中東情勢といったリスク要因のリスク度の変化に応じて動いていると見ざるを得ない。だからこそ米中の貿易摩擦と中東情勢の緊迫化というふたつの大きなリスクが後退したことによって、米国や日本の株式市場は買い進まれたといえる。

 株価は企業収益や経済実態だけで動くものでもないことも確かである。また、ドル円なども米雇用統計などの経済指標だけで動くわけでもない。これは国債の利回りも同様である。日本を含め国債利回りは中央銀行の金融政策によって経済実体以上に抑え込まれている。こちらも財政状態を映す鏡の役割は放棄してしまった格好となっている。

 ここにきて日米欧の中央銀行による金融緩和策も限界に近いとの認識も強め、外為市場や国債市場も株式市場と同様にリスクによって動きやすくなってきた。これは8日に一時急落した東京株式市場などをみればその様子が窺える。

 金融市場はその時々で動くテーマのようなものがあることも確かである。そのテーマは現状は世界を取り巻くリスクということになっているのであろうか。ただし、このテーマは絶対的なものでなく、どちらかといえば移ろいやすいものでもある。それが変化してきた際には、あらたな注意も必要になる。


2020年1月13日「2020年の金融市場を占う、金融市場のお祭りムードもそろそろ終焉に向かうタイミングか」

 2020年の金融市場は波乱の幕開けとなった。年末にかけて中東や北朝鮮情勢がややきな臭くなっていたが、年初にあらたな展開が待っていた。米国防総省は2日、イラン革命防衛隊の精鋭組織コッズ部隊のカセム・ソレイマニ司令官を空爆で殺害したと発表した。これを受けてイランと米国の対立姿勢が強まり中東の地政学的リスクが高まった。

 これについて、米国が何かしらイランからの攻撃を事前に阻止するため、とかというよりも、イランに対する制裁の選択肢からトランプ大統領が最悪の選択をしたためとの見方がある。

 そうであれば、当然のごとく今回の米国のイランに対する行動の背景には、トランプ大統領の意志が少なからず働いていたと見ざるを得ない。つまり、今年の米大統領選挙を見据えた行動であり、米下院が「ウクライナ疑惑」でトランプ氏を弾劾訴追したことなども絡んでいた可能性がある。

 米国は本格的にイランとの軍事衝突を意識して行動したとは思えない。戦争にはいたらないぎりぎりのところで、米国内の世論を味方に付けられるであろうことを意識して行った可能性がある。

 これが米国の大統領選挙にどのような影響を与えるのかは読みづらい。ただし、再選を目指すトランプ大統領が与党・共和党の候補者に選ばれるのは確実な情勢の一方、野党・民主党は依然として14人が党の指名を争う異例の混戦となっていることをみても、トランプ再選という可能性が現状は高いと見ざるを得ない。

 中東や北朝鮮などの地政学的リスクは無視できないものの、世界経済は思いのほか底堅い動きを2020年もするのではないかと予想している。中東情勢の緊迫化を受けて3日の原油先物は急騰したが、これは昨年10月以降の原油先物の上昇トレンドが続いていたため、地合の良さも背景とみることもできる。

 ここにきての原油先物の上昇は、原油の供給リスクというよりは、景気拡大による需要増も意識されているのではなかろうか。リスク回避によって金(ゴールド)が買われているが、これは日米欧の中央銀行の緩和的な政策による金余りも背景にあろう。

 2020年は米国を中心に株価はしっかりとなり、ドル円も大きく崩れることは考えづらい。そして、長期金利は日米欧ともに上昇基調になると予想している。

 ただし、いつまでもこのような都合の良い相場が続くとも考えづらい。日本では今年、オリンピック・パラリンピックが開催されるが、中央銀行による麻酔が切れつつあることもあり、金融市場のお祭りムードもそろそろ終焉に向かうタイミングではないかと思われる。今後の市場の動きについても慎重に見る必要もあろう。


2020年1月10日「中東情勢緊迫化にみるSNSによる金融市場への影響度」

 1月8日の東京市場はイランと米国との対立緊張によって波乱の展開となったが、その市場の反応がいまの時代を映すようなものであったことも興味深い。

 株式市場、債券市場、外為市場、さらには金や原油などの商品市場は需給バランスや景気・物価動向だけでなく、戦争などの大きな出来事に対しても敏感に反応する。

 その反応の仕方は状況によって異なるが、8日の東京市場はいまの金融市場の反応がまさに試されたような動きとなっていた。

 8日の東京市場の開始前にイランがイラクの駐留米軍基地に十数発以上の弾道ミサイルを発射したとの情報が飛び込んできた。イランがソレイマニ司令官の復讐を行うことは予想はされていたが、米軍基地へのミサイルによる直接攻撃はさすがに市場を動揺させた。

 これを受けて東京市場ではいわゆるリスク回避の動きを強め、株式市場は大幅安となり、国債は買い進まれた。外為市場では円高が進行し、中東ということから原油先物も跳ね上がった。

 しかし、このあとの情勢をみると、どうも様相がおかしいというか、米国側からの反応がいまひとつ乏しかった。これは米国側を被害等を見極めていたとみられる。UAEからF35が飛び立ったとか、トランプ大統領が執務室で演説をするとの観測も流れてはいた。

 しかし、米軍に動きが出た様子はなく、これはどうも戦争という状態に追い込まれているようなにはみえない。どこかおかしいとの認識も出てきたとみられ、実は私も今回の状況はもう少し冷静にみる必要があると感じていた。

 いろいろと憶測含めたニュースも出ていたが、結果として市場が最も注目し、それによってある程度の状況を掴めたといえるのが、ニュースそのものではなく、当事者のツイートであった。

 イランのザリフ外相はツイッターで、「我々は事態のエスカレートや戦争を求めてはいない。ただ侵略から自分たちを守るつもりだ」と投稿した。

 さらにトランプ大統領も得意のツイッターで、イラク内の米軍基地内にミサイルが着弾したが、いまのところ特に大きなダメージはなく、問題はないとツイートしたのである。

 イラン国営テレビは8日、同国がイラク国内の米関連施設に15発のミサイルを発射し、少なくとも80人の「米国のテロリスト」が死亡したと報じた。

 仮にそれが本当であったとすれば、このようなツイートをトランプ大統領がするわけはない。このイラン国営テレビのニュースはいわゆる大本営発表ということになるのではなかろうか。

 市場でもトランプ大統領とザリフ外相のツイートの内容から、今回の米軍基地へのミサイル攻撃については人的被害はなく、それぞれが自制していた状況が窺えたとの認識を強めたのではなかろうか。

 そのため、8日の東京市場はリスク回避の動きから一転し、リスク回避の反動の動きとなった。それには上記のツイッターが大きな影響を与えていたことは確かではなかろうか。

 メディアを通じずに当事者が直接、SNSで表明することには大きなリスクも伴うものではあるものの、今回のように何が起きているのか明らかでない場合には、この当事者の書き込みをみて、それに反応するようなことが今回だけでなく今後も起きてくることは十分にありうる。

 しかし、その発言内容をどのように見極めるかというあらたな問題も生じる。メディアを通せば、たとえばフェイクニュースなどはある程度は排除できようが、そのようなフィルターがないと我々が直接その判断を下さなければいけなくなる。情報をどのように選択するのか。情報機器が発達すれば、情報は身近になるものの、選択をどうするのかが難しくなってくることも確かであろう。


2020年1月9日「イランの報復措置に至るまでの経緯、8日の東京市場は一時リスク回避の動きを強める」

 米国はイラクの首都バグダッドで行った空爆で、イラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のガセム・ソレイマニ司令官を殺害した。また、親イラン派民兵「人民動員隊」のアブ・マフディ・ムハンディス副司令官も殺害された。攻撃には無人機が使用されたと報道されている。

 ソレイマニ司令官率いるコッズ部隊はイラン革命防衛隊の特殊工作部隊で、主に海外での破壊工作を担当している。ムハンディス副司令官は「人民動員隊」の中でも最強硬派の「カタイブ・ヒズボラ」の司令官だとか。

 そのカタイブ・ヒズボラは昨年12月27日にイラク北部・キルクークの米軍基地をロケット砲で攻撃して軍属の米国人1人を殺害。米軍は報復手段を訴え、翌28日にカタイブ・ヒズボラの拠点を空爆した。それに対し、31日からはバグダッド米国大使館へのデモが発生し、大使館の壁を放火するなど激化したが、これには「人民動員隊」が絡んでいたとされる。

 これに対しホワイトハウスでは対策が検討され、トランプ大統領にエスパー国防長官らから複数のプランが提示された。そのなかでもある意味最悪ともいえる選択をトランプ大統領はしたようである。最終的に1月2日、ソレイマニ司令官殺害の命令を下した。

 ソレイマニ司令官は中東でイランの影響力を広げたカリスマ的な存在であり、イランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師に次ぐ影響力を持つとされる。ソレイマニ司令官は米国やイスラエルにとっても脅威であったことで、これまでも暗殺計画はあったようだが、そのイランにおける影響力の大きさもあって、これまで実行に移されることはなかった。

 今回何故、トランプ大統領がその決断を下したのか。今年11月の米大統領選挙や大統領への弾劾裁判なども影響していた可能性もあったが、これで中東情勢が一気に悪化するリスクも孕んでいたことはたしかである。

 イランは3日間の喪に服した後、ソレイマニ司令官の復讐を行うと宣言していたが、それを実行に移した。東京時間での8日朝、イランがイラクの駐留米軍基地に十数発以上の弾道ミサイルを発射した。これを受けて中東情勢がさらに緊迫化の様相を強めた。

 8日の東京市場ではイランの報復措置を受けて、リスク回避の動きを急速に強め、日経平均は一時600円を超す下げとなり23000円割れ、ドル円は108円割れ、債券先物や金、そして原油先物は買い進まれたのである。


2020年1月9日「米国とイランに翻弄された東京市場、トランプ大統領にとってはシナリオ通りなのか」

 トランプ大統領はツイッターで、イラク内の米軍基地内にミサイルが着弾したが、いまのところ特に大きなダメージはなく、問題はないとツイートした。

 これは報道とかではなく、世界最強の軍隊と最先端の情報収集能力を持っている米国の大統領のツイートである。

 また、イラン国営テレビは8日、同国がイラク国内の米関連施設に15発のミサイルを発射し、少なくとも80人の「米国のテロリスト」が死亡したと報じた。

 もしこの報道が本当であれば、あのトランプ大統領が問題はないとのツイートをすることは考えづらい。もちろん全く被害はなかったとも考えづらいことも確かである。

 イランのザリフ外相もツイッターで、「我々は事態のエスカレートや戦争を求めてはいない。ただ侵略から自分たちを守るつもりだ」と投稿しており、今回の攻撃について、米国の反撃を受ける懸念のある米国軍の人的被害まで意識したものではないことをうかがわせる。

 トランプ大統領としてもイランの当局者にしても、直接の軍事衝突は望んではいないところであろう。それは関係諸国も同様であり、なんとしても両国の軍事衝突は避けたいところであったはずである。

 しかし、米国がソレイマニ司令官を殺害するというある意味、最悪の選択肢をとってしまったことで、それに対するイランとしては、国内世論にも答える必要があり、また政権内の強硬派にも配慮する必要があった。

 このため、米軍基地へのミサイル攻撃という手段をイランは取ったものとみられる。しかし、実際の被害はトランプ大統領のツイートを読む限り、ほとんどなかったようにみえる。まさか世界最強とされる米軍の情報収集能力がたいしたことはないとは思えないし、そもそも自国軍の被害状況は当然、逐一ホワイトハウスに報告されていたはずである。

 今回のこの米国とイラクの対立について、シナリオが最初から出来ていたのではないかとの憶測もある。だからトランプ政権はある意味、強硬手段に出られたとの見方もできなくはない。

 もちろんまだまだ不透明なところも多く、事態が今後急変する可能性は否定できない。トランプ大統領のツイートにもあったが、トランプ大統領が発表する声明の内容も確認する必要はある。

 そもそも今回の出来事については、米国の大統領選挙を控え、弾劾裁判から国民の目をそらすためにトランプ政権がイランの動向も睨んで仕掛けてきたものとの見方もできる。結果として、これに翻弄されてしまったのが取引時間中と重なった本日の東京市場ということになってしまった。


2020年1月8日「米国とイランの対立による世界経済などへの影響、最悪の事態は避けられるか」

 この時点で、米国とイランの対立がどのような影響を及ぼすのかを予測するには、あまりに不透明要素が多いものの、ここまでの経緯から状況を確認してみたい。

 米国はイラクの首都バグダッドで行った空爆で、イラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のガセム・ソレイマニ司令官を殺害した。

 イランは3日間の喪に服した後、ソレイマニ司令官の復讐を行うと宣言していたが、それを実行に移した。東京時間での8日朝、イランがイラクの駐留米軍基地に十数発以上の弾道ミサイルを発射した。

 これを受けての米国の対応が注目された。直接の軍事衝突の可能性もあったことから、8日の東京株式市場で日経平均は一時600円を超す下げとなり、ドル円は一時107円65銭まで下落した(円高進行)。

 米国のトランプ大統領は大統領執務室にてテレビ演説を行うとのCNNなどの報道があり、重要な決定後になされることが多い執務室からの演説ということで、イラクとの交戦が発表されるのではとの懸念が一時強まった。しかし、このテレビ演説はないと報じられた。

 演説はなくてもトランプ大統領のツイートはあったようで、これによると、どうやらイランのミサイル攻撃による人的被害は抑えられていた模様。さらにイランは、アメリカがさらなる報復をしなければ攻撃を停止する、と表明したとされる(NBC)。

 これらの経緯をみると、米国政府はイランのミサイル攻撃による被害を確認し、その被害が抑えられていることも確認した上で、トランプ大統領の執務室からの演説はいったん中止したのではなかろうか。被害状況が確認できたため、トランプ氏はツイッターで、現状問題はないと投稿したとみられる。トランプ大統領は8日夜に声明を発表すると発表された。

 イランは3日間の喪に服した後、ソレイマニ司令官の復讐を行うと宣言し、実際にイラクの駐留米軍基地へのミサイル攻撃を行った。しかし、ここで米国での人的被害が発生すれば、イランと米国の全面対決の様相を強めることになる。このため、攻撃したという事実を重視し、最悪の事態は避けたとみることもできよう。

 現状わかっているのは以上のこととなり、中東の地政学的リスクはかなり大きくなったものの、最悪の軍事衝突はお互い避けようとしているように思われる。ここで対決色を強めると、イスラエルも絡む上に、イランを支持するロシアや中国の動向にも影響を与えかねない。

 今回のリスク回避の動きは、ひとまず一時的なものとみられる。不測の事態が発生しない限り、これにより原油価格が急騰したり、株価が急落したり、金利が大きく低下することは考えづらいのではなかろうか。次市場も第に落ち着きを取り戻してくるとみられ、これにより世界経済に与える影響も限られたものになるのではなかろうか。


2020年1月8日「今回の原油価格の上昇要因は中東情勢の影響だけではない」

 米国防総省は2日、イラン革命防衛隊の精鋭組織コッズ部隊のカセム・ソレイマニ司令官を空爆で殺害したと発表。これを受けてイランと米国の対立姿勢が強まり中東の地政学的リスクが高まった。

 これを受けて3日のニューヨーク原油先物市場では、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物2月限が1.87ドル高の63.05ドルと急騰していた。

 3日の米国株式市場は下落し、米債は買われ、外為市場では円高となり、金も買われた。これはいわゆるリスク回避の動きともいえた。

 ただし、リスク回避で原油先物が買われたわけではない。中東情勢の緊迫化で原油の供給に支障が生じる可能性があり、供給不足による原油価格の上昇が意識された面はあったかもしれない。

 しかし、それよりも中東情勢の緊迫化はあらたなリスク要因となり、世界経済に対しては負の影響を与える可能性がある。そうであれば、原油先物には売り要因となったとしてもおかしくはない。

 それに対して今回の原油先物価格の上昇については、たしかに中東情勢も影響したであろうことは確かながら、きっかけ次第では上昇しやすい地合にあったためともいえた。

 WTIの日足チャートをみると50ドル近辺をボトムに昨年10月あたりから上昇基調となり、チャート上では節目ともみえる65ドル近辺に接近していた。このため買い方が仕掛けやすい状況、もしくはここを突破されるとさらに上昇圧力が掛かるとの見方から買い戻しも入りやすかったともいえるのではなかろうか。

 原油価格は2008年に100ドル台に急騰したことがある。これはやや仕掛け的な動きではあったが、その背景には中国など新興国の景気拡大などによる原油への需要が存在した。しかし、現在はOPECなどの協調減産によって、なんとか価格を維持させている状況にあり、需給面では当時とは大きく異なる。

 それでもじりじりと原油価格が上昇してきているのは、中東情勢の緊迫化以前に世界景気そのものの拡大基調が維持されているためとの見方もできるのではなかろうか。その背景のひとつとなっているのが、日欧米の中央銀行の金融緩和政策とすれば、金(ゴールド)についても、インフレ圧力がほとんど強まっていないなかでのここまでの上昇は、いわゆる金余り現象によるところも大きいといえる。


2020年1月7日「米国とイランの対立で年初の金融市場は動揺」

 12月29日に米国のオブライエン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は北朝鮮が長距離弾道ミサイルや核ミサイルの実験を行えば、米国は適切に対処するとの考えを示した。

 米国防総省は12月29日に、イラクとシリアで、イランを後ろ盾とするイスラム教シーア派組織「カタイブ・ヒズボラ」の拠点5か所を空爆したと発表した。

 これらを受けて昨年末の大納会となる12月30日の東京市場はリスク回避の動きから株安、債券高となっていた。

 しかし、日本が年末年始の休みの最中にさらに衝撃的な出来事が起きていた。米国防総省は1月2日、イラン革命防衛隊の精鋭組織コッズ部隊のカセム・ソレイマニ司令官を空爆で殺害したと発表したのである。

 カセム・ソレイマニ司令官の暗殺によって、イランと米国の関係は、1979年に始まった米大使館人質事件以来の深刻な対立状態に陥ったとBBCが伝えたように、これはかなり深刻な事態となった。

 トランプ大統領は4日、「イランが報復攻撃する場合、イランの52か所を攻撃目標地点とすることにした」と追加の攻撃を示唆した。

 今回、何故トランプ政権がこのような強行手段に出たのか。何かしら米国への攻撃などの情報を得ていたのかどうかは不透明。今年の米大統領選挙や大統領への弾劾訴追などが影響していたのではとの憶測もあるが、実際のところは明らかではない。

 トランプ大統領は1月5日に北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長に関し「私との約束を破るとは思わないが、破るかもしれない」と述べたとも伝わった。

 韓国政府当局者は5日、「米国はソレイマニ司令官除去を通じて、外交的に解決しなければ軍事的オプションを使用する可能性があることを明確に示した」ともコメントした。

 あらためて中東の地政学的リスクが意識され、北朝鮮問題も絡んでくるような事態となってきたのである。

 中東の地政学的リスクが意識されたことで原油価格は大きく上昇し、リスク回避の動きから円高が進行、株式市場は下落し、国債は買われている。

 昨年まで注目されていた米中の貿易摩擦や英国のEU離脱については不透明感はやや後退してきていたが、今年は早々に新たなリスクが表面化し、これによって金融市場が動揺する事態となってきた。


2020年1月6日「過度な金融緩和策の修正が可能なのかが今年の課題に」

 2019年の日本と米国、ドイツの10年債利回りの動きをみると、9月上旬にむけて低下基調であったのが、そこからトレンドが変わり、上昇基調に転じていた。

 米10年債利回りは9月3日に一時1.42%まで低下し、過去最低の1.31%に接近した。日本の10年債利回りは9月4日にマイナス0.295%とマイナス0.3%に迫った。ドイツの10年債利回りも9月3日にマイナス0.71%をつけていた。

 なぜ米欧の利回りが低下していたのか。この背景にリスク回避の動きがあった。米中の関税合戦が繰り返され、これによる世界経済の減速懸念が強まった。英国のEU離脱の行方が不透明となり、これもリスク回避となり、安全資産である国債が買い進まれた。

 日米欧の中央銀行による金融緩和策への期待も加わっていた。FRBは1月に利上げ停止を示唆し、7月と9月、そして10月のFOMCで予防的な利下げを行った。9月のECB理事会でドラギ総裁はドイツなどの反対を押し切って、マイナス金利の深掘りを含む包括的な金融緩和策を決定した。日銀もマイナス金利の深掘りの可能性を示唆していたが、金融市場がしっかりしていたこともあり、限られた切り札を切ることはなかった。

 ところが、金融市場では次第に中央銀行の金融緩和策の限界が意識され始めた。マイナス金利の副作用なども懸念されるようになった。市場から中央銀行に対する過剰な緩和期待が後退し、日米欧の中央銀行の取り巻く環境が9月上旬あたりから変化してきたのである。

 日米欧の長期金利は次第に反発基調となり、米10年債利回りは1.9%、ドイツの10年債利回りはマイナス0.2%近くまで、日本の10年債利回りは12月に入りプラスに転じてきた。

 米国とドイツ、そして日本の10年債利回りのチャートを確認すると、2018年10月あたりからの低下トレンドがこれによって終了し、あらたなトレンド、この場合は上昇トレンドが形成されつつある。

 この上昇トレンドの要因としては米中の通商交渉が進む兆しがみえたこと、英国の総選挙の結果、保守党が勝利して不透明感が後退したこと、これらによる景気後退リスクも緩和され、過度に低下してしまった長期金利に調整圧力が加わったともいえる。

 中央銀行のマイナス金利などによる副作用が意識され、緩和策が修正されるのできと観測も出てきた。スウェーデン中銀のリクスバンクによるマイナス金利政策の解除なども影響していよう。しかし、新たに中東の地政学的リスクも発生している。果たして日米欧の中央銀行は異次元緩和の修正ができるのか。これが2020年の長期金利の動向を決定する大きな要因のひとつになるとみられる。


2020年1月6日「2019年を振り返る」

 私の「債券ディーリングルーム」というサイトには、「日本国債の歴史年表」というページがある。ここには明治から現在にいたる国債を中心とした金融市場の歴史をアップしている。2019年分の12月までも追加したこともあり、この年表の2019年の項目をみながら、この1年間に何が起きていたのかを振り返ってみたい。

「日本国債の歴史年表」 http://fp.st23.arena.ne.jp/history2010S.htm

 1月には「再び日本の長期金利がマイナスに」とある。世界的な長期金利の下方トレンドが継続していたことから、円債の利回りも低下し、再び日本の10年債利回りもマイナスとなった。この背景には米中の関税合戦と、それによる世界経済の減速懸念があった。1月には「毎月勤労統計の不適切調査問題」もあった。

 2月に「1万円札流通高が初めて100兆円を突破」とある。キャッシュレス化が日本では遅れているとの認識も強いが、これには個人的には疑問である。ただし、現金が多く使われていることもたしかである。

 4月に「ギリシャの長期金利が2006年1月以来の水準に低下」とある。あれだけ騒がれた欧州信用不安は後退したことの現れとともに、世界的な金利低下の影響もあった。

 4月に財務省は9日、千円、5千円、1万円の紙幣(日本銀行券)を2024年度上半期に一新すると発表した。

 5月に年号が平成から令和に変わった。また、10年債利回りは2016年8月以来のマイナス0.100%に低下した。6月には債券先物が過去最高値を更新した。7月には欧州の国債利回りが軒並み過去最低を更新するなど、長期金利の低下が止まらないような状態に。

 7月のFOMCでは政策金利を年2.25〜2.50%から2.00〜2.25%に引き下げた。予防的利下げだそうだが、9月と11月のFOMCでも0.25%ずつ引き下げた。

 9月に日本の長期金利がマイナス0.295%と過去最低に接近したが、ここがボトムとなった。同じようなタイミングで、欧米の長期金利もボトムアウトし、トレンドが変化して利回りは上昇基調となる。

 10月に日本では消費税が8%から10%に2%引き上げられた。10月のECB政策理事会では包括的な緩和策を決定したが、10月末で退任するドラギ総裁の置き土産となった。これにはドイツなどの参加者が反対し、ECB内に亀裂が発生。11月からは新総裁にラガルド氏が就任した、

 12月のFOMCでは金融政策の現状維持を決定し、利下げを停止した。

 日銀に関しては4月に「フォワードガイダンスを変更し明確化した(政策変更ではない)」。しかし、1年を通じて金融政策の変更はなかった。来年は変更が果たしてあるのであろうか。


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