.
片山さつき財務相は原油先物市場の投機的動きが為替に影響を与えていると述べた。
関係者によると財務省は原油先物市場への介入を視野に大手金融機関などに聞き取り調査を行っており「全方位」には原油先物市場も含まれているとみられているとも報じられた。
外為市場の介入そのものも効果は一時的であり、よほどうまくタイミングを取らなければ意味はないと私は思っている。日銀による国債や株式市場の介入についても反対であり、市場機能を乱すだけだと考えている。
原油先物への政府よる介入は、そもそも現実的ではないというか無謀である。
原油先物の代表的なものにWTI先物がある。原油先物取引でのWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)とは、その名の通りの西テキサス地方の中質原油を原資産とする先物取引となる。
この原油は含有硫黄分が少なく軽質でガソリンや軽油が多く採れるといった特徴を持っている。取引量と市場参加者が多く、原油価格の代表的な指標となっている。
WTI先物にも精算日が存在する。たとえば2020年5月限(ぎり)の精算日は4月25日となり、3営業日前となる日が取引最終日となる。
ただし、前月25日が営業日でなければ、25日の前営業日から3営業日前となる日に取引が終了する。つまり、WTI先物5月限の取引最終日は4月21日となる。
どうして2020年のWTI先物を取り上げたかといえば、この先物であろうことかマイナスが生じたためである。その要因は決済手段にあった。
原油先物取引で注意すべきはその決済の方法にある。長期国債先物取引や原油先物取引には「現引き・現渡し」という手段が存在する。
最終取引日の最終取引までに反対売買を行うことで差金決済はできる。しかし、取引最終日に反対売買を行わなければ、買いと売りの建玉(たてぎょく)が残る。それは原油や国債現物の「現引き・現渡し」によって決済されるのである。
今回の想定される介入とは原油価格を引き下げるための空売り(ショート)となろう。もし売り玉を最終取引日までに反対売買を行わなければ、西テキサス地方の中質原油を買い方に引き渡す必要がある。
日本の原油の備蓄にどれだけ西テキサス地方の中質原油があるというのであろうか。つまり決済リスクが存在する。
市場規模や参加者が外為市場や東京株式市場などと異なるなど、かなり未知の世界であるため、素人がいきなりプロの投資家と取引するようなことにもなりかねず、結果も見えているのではなかろうか。
政府による介入によって市場で形成される価格を何とかできるという発想そのものもいかがなものか。
今回の原油先物価格の上昇は投機的なものではない。米国のトランプ大統領がイランへの戦闘継続を示唆したことで、中東情勢のさらなる緊迫化が意識され、ホルムズ海峡の閉鎖は続く。原油の供給懸念が強まったことで、原油価格は上昇した。つまり現実と整合的な動きをしているので投機的という言葉はおかしい。ここで原油価格を介入というかたちで抑えても、むしろ投機筋の絶好の買い場を形成してしまうだけとなりかねない。
政府がすべきことは原油市場への介入などではなく、一刻も早く中東の戦闘を中止させるように働きかけることである。また今後の原油の供給だけでなく、ホルムズ海峡閉鎖がサプライチェーンにどのような影響を与え、何が不足する懸念があるのかを突き止めることである。別な入手先を求め、外交による働きかけを行うことなどが優先事項ではないのか。
2日に実施された10年国債(183回)の入札は最低落札価格が100円04銭となり、市場予想の100円44銭を大きく下回った。
平均落札価格は100円40銭となり、最低落札価格との差は36銭と、2024年8月の50銭以来の大きさとなった。
予想されていた水準よりかなり低い価格での落札となり、テールと呼ばれる平均落札価格と最低落札価格の差が大きくなった。これは低調な結果といえる。
2024年8月6日の10年国債が低調な結果となったのは、市場の動揺が影響していた。前日5日に東京株式市場で日経平均の引けは4451円安となり、ブラックマンデーの下げ幅を上回ったことが影響したとみられる。
4日の米国株式市場でインテルが大きく下落しインテルショックといえる状況に。他の半導体株も大幅に下落した。複数のヘッジファンドが大量のポジション解消に動いたことが影響し、5日の東京株式市場が急落。市場参加者が動揺していたことで、6日の10年国債の入札に影響を与えていた可能性がある。
今回については、まず利率に注意する必要がある。4月の入札ということで、今回の10年国債はリ・オープンではなく新発債となる。
その利率は2.4%と前回債の2.1%から引き上げられた。ここにきての欧米の長期金利の上昇や日銀の早期追加利上げ観測などから、利回り水準が上昇しており、それが反映された格好としなった。
4月ということで新年度入りしたこともあり、利率も2.4%と21997年7月の2.5%以来の高さとなったことも好感され、無難な結果となる予想が多かった。
ただし日銀の早期追加利上げ観測とともに米国のトランプ大統領の演説も予定されていたことで、それなりの警戒感もあった。
そのトランプ大統領の演説では、早期の停戦が示唆されるという期待感も出ていた。しかし実際には、トランプ大統領は今後2〜3週間はイランを激しく攻撃すると発言したのである。これを受けて原油価格は上昇し、インフレ懸念を強める格好となった。2日の債券先物は大幅安となり、10年国債の利回りは2.390%と3月30日に付けた直近の最高利回りに並んだ。日経平均株価も午後に入って下げ幅は一時1300円超に拡大する場面があった。
2024年8月のときと状況はやや異なるものの、いずれも市場に動揺が走り、業者も投資家も慎重姿勢とならざるを得なくなったことが、10年国債の落札結果に反映されたとみられる。
政府が原油先物取引に介入するのではないかとの観測が出ているが、現物市場ではなく先物市場への介入については、決済の問題などが発生する。そもそも先物取引とはいかなるものなのか、その誕生の歴史から振り返ってみたい。
デリバティブ取引のルーツは紀元前600年前ごろのアリストテレスの時代に存在していたとも言われているが、世界最初の取引所といわれている16世紀のアントウェルペン取引所では、すでにオプション取引や先渡し取引が行われていた。
しかし、本格的な金融派生商品が登場したのは米国シカゴの取引所となる。そのシカゴの取引所が参考にしたのが、実は日本の江戸時代に大阪堂島で行われた米の先物取引だった。
大坂には諸藩が設けた蔵屋敷に年貢米が送られていた。米の売却は蔵屋敷での競争入札で行っていた。落札した業者は代金の一分を支払い、蔵屋敷発行の米切手(米手形)を受け取り、一定期日以内に米切手と残銀を持参して蔵屋敷から米を受け取る仕組みとなっていた。
この取引が時代とともに少しずつ変わり、米切手が転売されていくようになり、米切手そのものが米現物の需給に関係なく売買の対象となっていった。
大坂の北浜に淀屋の米市と呼ばれる米市場があったが、のちに淀屋市が堂島に移る。堂島米市場で売買されていたのは落札された米切手。米の売買に際し現物の代わりに1枚10石単位の米切手という倉荷証券が授受され、米切手は米の保管証明書から一定量の米に対する請求権を表した商品切手に変わり、有価証券化していった。つまり堂島米市場は東京証券取引所のように有価証券取引が行われた証券市場であった。
堂島米市場では着地取引として、米の廻着を待たずに米切手が先売りされるようになる。米切手の保有している商人は米の価格変動リスクにさらされることとなり、この米価の価格変動リスクのヘッジを目的として「売買つなぎ商い」という先物取引が考案された。この「つなぎ商い」が1730年に徳川幕府により公認され、堂島米会所が成立した。
堂島米会所では、米切手を売買するいわゆる現物取引の「正米商い」に加えて、米の先物取引である「帳合米商い」が行われた。
帳合米商いとは1年を春夏冬の三期にわけてそれぞれ4月28日、10月9日、12月24日を精算日とし、各期に筑前・広島・中国・加賀米などのうちから1つを建物(標準米)として売買し、反対売買による差金決済を原則とする取引となる。
正米商いと帳合米商いともに消合場と呼ばれた株仲間組織による清算機関(クリアリングハウス)が存在していた。不正を行った株仲間を取引停止にするといった処置も講じられ、市場秩序が維持されていた。
こうして帳合米商いは、現在の先物取引と同様にヘッジ目的だけでなく投機目的でも積極的に商人が参加し、世界に先駆けた先物市場が発展していった。
そして話は米国に移る。
米国では19世紀に中西部の開拓が進み、穀物の取引が盛んになる。ミシガン湖畔で海上交通上の主要地であったシカゴに穀物は集められ、この穀の季節的な価格変動リスクを避けるために、収穫前に値段を決め収穫時に現物を受け渡すといった取引が盛んになり、1848年に世界初の先物取引所といわれるシカゴ商品取引所(CBT)が設立された。ここではまず穀物に対する先物取引が行われ始められた。
1971年のニクソン・ショックにより、通貨は固定相場から変動相場へと移り、価格変動リスクに晒されることとなりました。このリスクを回避するため、通貨を先物市場へ上場することがアメリカで検討され、1972年5月にシカゴにあるもうひとつの大きな取引所のシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で、通貨先物取引が開始された。
1975年にはシカゴ商品取引所(CBT)で初めて政府機関債の先物と金先物が上場され、1977年にアメリカ長期国債先物の取引が開始された。
そして日本でも1985年に戦後初めてとなる金融先物、長期国債先物が東京証券取引所に上場されたのである。
日銀が1日発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は前回2025年12月調査から1ポイント改善し、プラス17となった。4四半期連続の改善となる。ただし、先行きはプラス14と悪化が見込まれている。
業種別では生産用機械の景況感が改善したほか、窯業・土石製品や非鉄金属なども改善した。先行きでは紙・パルプや窯業・土石製品などの悪化が見込まれている。
日銀短観は3月、6月、9月、12月に調査が実施され、その結果は4月、7月、10月は上旬に、そして12月は年末ということもあり、12月中旬に発表される。
業況感に関しての調査表を直接企業の経営者に送り、それを記入してもらい、回収して経済観測をまとめたものです。短観は、サンプル数も多い上、日銀が相手ということもあって回収率も高く、数多くある経済指標の中でも注目されている統計となっている。
短観の中で、最も注目されているのが「大企業製造業の業況判断DI」と呼ばれるものとなる。前回のDIと比較することで足元の景気判断が良くなっているのか、悪くなっているのかを比較できる。
D.I. (Diffusion Index)とは、企業の業況感や設備、雇用人員の過不足などの判断を「指数化」したもの。
大企業非製造業の業況判断DIはプラス36となり前回調査から横ばい。先行きはプラス29と悪化の見通しとなっている。
ロイターによると調査期間は2月26日から3月31日。回収基準日の3月12日までに約7割程度が回答した。
米国とイスラエルがイランを攻撃したのは2月28日であり、日銀の担当者は「多くの調査先が中東情勢の悪化以降に回答してきたが、それが完全に織り込まれていることを意味するものではない」と述べたとか。
中東情勢の悪化とそれによる原油価格の上昇というか、ホルムズ海峡の実質的な封鎖状態を意識すれば、先行き見通しはさらに悪化を見込む可能性もあったか。
日銀はどうやら現在の高市政権の意向よりも、実態経済・物価情勢をより意識して動こうとしている可能性がある
16日の夕方に高市首相は首相官邸で日銀の植田総裁と15分ほど会った。会談後に利上げ姿勢について首相の理解を得られたか記者団に問われ、植田日銀総裁は「具体的なことについては特にお話しできることはない」と答えた。首相から要望があったかどうかに関しては「特にない」と述べていた。
毎日新聞が報じたところによれば、複数の関係者によると首相は追加利上げに難色を示した。具体的な発言内容は不明だが、「(2025年11月の)前回の会談の時より厳しい態度だった」という。
注目されていた日銀審議委員人事案では、中央大学名誉教授の浅田統一郎氏と青山学院大学教授の佐藤綾野氏を充てるとした。あろうことか両氏とも金融緩和と積極財政を重視するリフレ派であった。
高市首相のブレーンというか取り巻きはリフレ派とされている。首相就任後は日銀の正常化にも理解を示しているとの見方もあったが、衆院選を経て自らの考え方が正しいとの認識を強めていた可能性があった。
日銀審議委員についても財務省や日銀などの意見に耳を貸さずに自らというか、リフレ派ブレーンの意見を聞いた上で決めていた可能性がある。
今後の政策委員人事でも、リフレ派が次々に放り込まれる懸念する出るなか、日銀は高市政権の意向をそのまま反映するのではなく、あらためて利上げを進める意思を強めてきたように思われる。
1月22、23日に開催された日銀金融政策決定会合の議事要旨をみると、追加利上げに向けて多くの委員から利上げに向けて積極的な発言が出ていた。
1月会合後、2月末から米国とイスラエルによるイランへの軍事行動によって状況は大きく変わってきた。原油価格の上昇などによる経済への影響とともに、これはさららなる物価上昇圧力になりかねない。
欧米の中央銀行も利下げではなく利上げを模索しようとしているなかにあり、日銀の動向も注目された。
その意味でも3月18、19日に開催した金融政策決定会合の主な意見が注目材料となったが、ここでは1月会合より踏み込んだ利上げ姿勢が示されていた。
加えて、日銀は、各種の制度変更に起因する「特殊要因」を除いた消費者物価上昇率の試算を発表、需給ギャップが2025年7〜9月期にプラス0.45%となり、2022年1〜3月期以降、15四半期連続でプラスとなっていると発表、自然利子率の動向と金融緩和度合いの評価など、利上げに向けた姿勢を補完するようなものを発表してきている。
4月1日には日銀短観の発表もあり、こちらも念の為確認する必要はあるが、4月27、28火の金融政策決定会合における利上げ検討の可能性は高いとみざるを得ない。
利上げ幅も0.25%ではなく0.50%の可能性もなくはないが、むしろ時間を掛けずにさらなる追加利上げも検討する姿勢を示してくる可能性が高いか。