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2021年11月30日「オミクロン・ショックで金融市場はリスク回避の動きに」

 南アフリカなどで見つかった新型コロナウイルスの変異株について、世界保健機関(WHO)は11月26日、警戒レベルが最も高い「懸念される変異株」に指定し、ギリシャ文字のアルファベットからオミクロン株と名付けたと発表した。

 28日までに英国、ドイツ、イタリア、オランダなどで新たに感染者が確認された。米国政府とカナダ政府は26日、アフリカ南部からの渡航者の入国を制限する方針を発表した。

 26日の東京市場では南アフリカで新型コロナウイルスの新たな変異株確認との報を受け、リスクオフの動きが強まり、東京株式市場は大幅安となった。日経平均の引けは747円安。

 東京時間の米10年債利回りは1.54%に低下。その後、米国市場ではリスク回避の動きから、さらに米債は買い進まれ、米10年債利回りは1.48%に低下した。

 米国株式市場ではクレジットカードのアメリカン・エキスプレスやボーイング、さらに建機のキャタピラーなど売られた。また米長期金利の急低下を受け、利ざや悪化につながる金融株なども売られた。

 その結果、26日のダウ工業株30種平均は大幅続落となり、905ドル04セント安の34899ドル34セントで引けた。下げ幅、下落率ともに今年最大となった。

 注目すべきは原油先物の動きか。新型コロナウイルスの変異株が見つかったことで、ロックダウンの観測などが拡がり、原油の需要が後退するのではとの警戒感から原油先物は大きく下落した。ニューヨーク商業取引所のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物1月限は10.24ドル安の1バレル=68.15ドルと2020年4月以来の大幅安となった。

 米国の主導のもと中国や日本の備蓄原油を放出するという動きが出ていたが、それによる反応は限定的だった。しかし、オミクロン・ショックがそこに重なったことで原油先物の下げを加速した面もあったとみられる。

 外為市場では条件反射的にリスク回避による円買いが入った。ドル円はここにきて一時115円台を回復するなど円売り圧力が強まっていただけに、その反動も入ったものとみられる。

 オミクロン・ショックは、突発的な材料によって金融市場におけるポジション調整の動きを強めた格好となった。しかし、このリスク回避の動きは一時的なものに止まる可能性もある。これは今後入るオミクロン株の情報次第ではあるが、感染率は高くとも重症化のリスクがそれほど高くなければ、これまでの経験も生かせるはずである。


2021年11月27日「原油価格の上昇を消費国が抑えることができるのか」

 萩生田光一経済産業相は16日、「ガソリンなどの価格が一定の水準を超えた場合に元売り事業者に価格抑制の原資を支給する時限措置を考えている」と表明した。

 石炭や天然ガスなどのエネルギー価格が上昇し、それが原油価格にも波及してきている。エネルギー価格の上昇にはいろいろな要因が組み合わさっているものの、経済の正常化による影響が大きい。また、日本では円安による影響も受けやすい。円安によって原油などの輸入価格が上昇する懸念がある。

 政府は直接、OPECプラスなどに掛け合って原油価格の上昇抑制を図ることはしなかった。その代わり、原油価格は市場動向に任せるものの、ガソリン価格に170円という防衛ラインを設けた。そこを上回った際に170円を超えた部分を石油の元売り各社に補助金を出して、価格の上昇を抑制しようとするものである。

 しかし、原油価格上昇抑制のために元売り事業者に補助金を出すというのは世界的にみても極めて異例となる。元売りで価格を抑えても小売りとなるガソリンスタンドなどでの価格設定に強制力はない。

 補助金によって一時的に小売価格を抑えることはできたとしても、原油価格や円安の動向次第では、ガソリン価格が5円を超す上昇となる可能性もある。それにも対応するとなれば、バラマキ政策にもなりかねない。

 そして、今度は米国の主導のもと中国や日本の備蓄原油を放出させて価格を下落させようとの動きも出てきている。

 日本ではどうして原油を備蓄しているのか。それは非常時対応のためである。日本沈没までは想定はしていないと思うが、もし中東などからの原油輸入が一時的に止まっても、その備蓄で原油供給を補うものであり、非常時のために行っているものである。

 非常時対応のために備蓄したものを一時的にせよ放出して良いものなのか。さらにはその備蓄放出で一時的に原油価格を下落させても、それがどこまで続けられるかとの疑問も当然残る。放出できる量は限られている。原油備蓄の放出は産油国の増産意欲を削ってむしろ価格の一段の上昇につながるとの見方すらある。

 実際に米国やその他消費国が戦略石油備蓄(SPR)放出で協調した場合、石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産油国で構成する「OPECプラス」は先に計画したほど供給を増やさないのではとの観測が出ていた。

 原油価格上昇の背景には需要側としては経済正常化に伴うエネルギー需要の拡大がある。供給側としてはOPECプラスが増産に躊躇していることがある。

 現実にはこの需要を抑制させるか、原油増産を促すかする他はないのではなかろか。価格上昇だけを抑制しようとしても、その価格上昇の根本原因を後退させなければ抑制そのものが無理となろう。


2021年11月27日「金融緩和を粘り強く続けていくことが重要なのか」

 日本銀行の中川順子審議委員は、6月30日の就任後初のインタビューで、海外のインフレ高進が今後、日本の物価にも影響を及ぼす可能性に言及した。足元の消費者物価は原油価格の上昇や円安の進行などを背景に上昇圧力が強まっているとし、物価動向を注視しつつ、金融政策運営は現行の金融緩和を粘り強く続けていく考えを示した(26日付ブルームバーグ)。

 中川順子氏の前職は野村アセットマネジメント会長。。証券会社の一般職から、国内有数の資産運用会社トップになった異例の経歴を持つ。その経験をもとに日銀の政策決定に新風を吹き込む存在となるか注目されている(7月2日付朝日新聞)。

 欧米の消費者物価が前年比で大きく上昇しているのに対して、日本のコア消費者物価は10月に前年比0.1%上昇にとどまっている。26日に発表された東京都の11月の消費者物価指数は前年比0.3%の上昇となっていた。

 中川氏は日本の物価動向について「ずっとゼロ%近辺という感じではなく、少し上昇圧力が強まっている」と指摘していた。たしかにその傾向が出てきたものの、そもそも消費者物価指数ではなく企業物価指数でみてみると前年比で8%もの上昇となっており、決して日本の物価が低迷しているといえるのかも疑問である。それが消費者物価には反映されていないだけではなかろうか。

 何故そうなっているのかを突き詰めるのが現在の日銀にとっては必要なことではなかろうか。その原因が仮に日銀の金融政策の及ぶ範囲を超えているものであれば、果たして「イールドカーブ・コントロールの下で、副作用にも十分配慮しながら強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが重要」となるのであろうか。

 金融市場動向にも詳しい中川氏であり、日銀が強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが本当に必要なのかを再確認していただきたいようにも思う。


2021年11月26日「国債の3つの役割、国の債務と金融資産と長期金利」

 ここにきて国債は国の債務、借金ではないとの意見を聞くことがある。国債などの債券は借用証書に例えられるように、発行体からすれば当然ながら債務となる。企業が発行している社債も債券である。もしそれが債務ではなく返済しなくても良いとなれば、どのような企業も債券を発行すればいくらでも資金が調達できてしまうことになるが、そのようなことは当然ながらできない。

 国債のうち建設国債と赤字国債、つまり新規財源債についていえば、60年償還ルールがあり、借換債を発行するかたちで60年かけて償還する仕組みとなっている。それは将来の税収を担保に議会が承認して発行するシステムとなっている。財投債は財投機関が将来、返済義務を負う格好となっている。

 そして国債など債券は購入者側からすれば金融資産となる。つまり資産運用として債券で運用している。なかでも国債は、通常はその国で発行される債券のなかで最も安全性の高い債券となり、ベンチマーク(指標)となっている。

 そして国債の利回りは、特に10年債の利回りは長期金利とも呼ばれ、金利のひとつの指標として存在している。

 安全性の高い国債といえどもリスクは存在する。国債などの債券のリスクとしては価格変動リスク、流動性リスク、信用リスクが存在する。

 債券は金融商品であり、価格が変動する。このため当然ながら利益が出たり、損失が発生したりする。償還まで持てば元本が戻ってくることで株式などに比べて安全性が高いとされる。ただし、近年は日銀の長期金利コントロールによってこの国債の価格変動幅が抑えられてしまっている。

 流動性リスクとは、いつでも適切な値段で売り買いができることである。国債についてはこの流動性が高い。しかし、現物債の売買高などみると日銀の長期金利コントロールによって流動性というか、商いそのものが薄くなるような事態が出てきているのも事実である。

 信用リスクについては、国債についても格付け会社が格付けを行っている。ただし、日本や米国などは格付け会社の格下げがあろうと、国債そのものの値が大きく崩れることはなかった。

 それは国債は償還などしなくても良いほど安全性が高いものだからではなく、財務省の国債管理政策などによって国債の信認が維持されているためである。国債が金融商品だからといっても、いや金融商品だからこそ、その信認が崩れれば、いくら日銀が買い支えをしようとも国債の暴落は避けられないことも確かである。


2021年11月25日「FRBのパウエル議長の再任で米長期金利は上昇、ECBの正常化も意識」

 バイデン米大統領は22日、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長を再任する方針を決めた。ホワイトハウスが発表した。パウエル議長は2022年2月に4年の任期が切れる。同時に、ホワイトハウスはバイデン大統領の意向として次期議長の有力候補だったブレイナード理事を副議長に指名する方針を表明した(22日付日本経済新聞)。

 これを受けて22日の米国債券市場では米10年債利回りが1.62%と前日の1.55%から大きく上昇した。

 バイデン大統領は次期議長候補としてパウエル議長とブレイナード理事を挙げていた。ハト派筆頭ともされるブレイナード理事が議長になった場合には、正常化のスピードがダウンするのではとの観測も市場参加者の一部にはあったとみられる。

 現実にはブレイナード理事が議長になってもFRBの正常化に向けたスタンスに変更はないと思われた。しかし、パウエル議長の再任によってあらためてテーパリング後の利上げが再認識され、それが米債の買い戻しに繋がったとみられる。

 23日の米債も同様の理由で売られ、米10年債利回りは1.67%に上昇していた。24日は1.69%まで上昇したが、その後1.63%に低下した

 こで注意すべきは欧州の国債の動きか。22日から23日にかけて欧州の国債も総じて大きく売られていたのである。FRBのパウエル議長の再任を受けた米債安の影響を受けたことも確かであるが、特に23日にはECB関係者の発言も意識されていた。

 ECBのシュナーベル専務理事はブルームバーグのインタビューで、ユーロ圏のインフレ率は来年、従来の想定から上振れると見込まれ、中期的にも、ECBの目標を上回る水準にとどまる可能性があるとの見方を示した。

 さらにクノット・オランダ中銀総裁もユーロ圏のインフレ率は新型コロナウイルスのパンデミック前でなく、ECBの目標である2%に近づくと見込まれ、金融緩和の縮小を正当化すると主張した。マクルーフ・アイルランド中銀総裁は現行のインフレ傾向が持続すればECBが金融政策を変更する可能性が高まると述べた(23日付ロイター)。

 ドイツ連邦銀行のワイトマン総裁は12月31日付で退任すると発表している。ECBのタカ派筆頭とされるワイトマン総裁の退任で、ECBは正常化に向けて余計に慎重になるとの見方も強まり、ドイツなど欧州の国債利回りは低下基調に転じるなどしていた。

 しかし、そういった市場の見方に修正を加えるような動きがここにきて出てきたのである。それだけ欧州での物価上昇も危惧しているとの見方もある。FRBの正常化路線に修正がないことを確認し、ECBも動ける状態にしておきたいとの意向の現れなのかもしれない。


2021年11月24日「石油備蓄放出発表でも原油価格は下落どころか上昇したのは何故か」

 バイデン米政権は23日、今後数か月かけて戦略石油備蓄(SPR)を5000万バレル放出すると発表した。日本や中国、インド、韓国、英国と協調して備蓄を放出する。日本の国家備蓄の放出は初めて。原油価格の高騰を受けたガソリン高を抑制するための異例の措置となる(24日付日本経済新聞)。

 これを受けて23日の原油先物価格は下落せずにむしろ上昇した。その理由として指摘されたのは、今回、米国の放出量は5000万バレルと6億バレルの備蓄の約8%に相当するものの、予想よりも少なかったためとの指摘があった。

 事前にどの程度の放出が予想されていたのかは確認できないものの、5000万バレルでは少なすぎるとの見方が出たようだ。ちなみに、日中韓など他国の放出量は明らかになっていない。

 さらに米国では大部分が将来SPRに戻すことを前提に放出されるため、需給は先行き引き締まるとの見方が浮上したとの指摘もあった。日本などは危機対応のために石油を備蓄しており、それを全部放出することなどはできないし、いずれ備蓄量を元に戻すことも十分に考えられる。

 しかし、それよりもやっかいな理由が存在した。原油供給の鍵を握る産油国の動きである。産油国にとり原油価格の下落により、政府の歳入や国内経済にとって負の影響が当然出てくることが予想されるためである。

 原油備蓄の放出は産油国の増産意欲を削ってむしろ価格の一段の上昇につながるとの見方も出ていた。OPECプラスが12月以降に増産停止や減産復帰に転じるとの見方もある。

 米中は安全保障や経済で激しく対立するが、今回の戦略石油備蓄の放出では協調するなど意外性の部分がある。それだけ原油消費国は価格上昇を危惧しているという表れだが、消費国側が原油価格の上昇を抑えることは容易ではないことも確かであろう。

 24日の午前に岸田首相は、米国と協調し、石油の国家備蓄の一部を放出することを決めたと明らかにした。

 24日朝の東京商品取引所では、石油備蓄放出に踏み切る米国などと主要産油国が対決姿勢を強めるとの見方から、中東産原油の先物が大幅反発していた(24日付共同通信)。


2021年11月23日「オーストリアのロックダウンによるリスク回避の動きは一時的なものか」

 欧州で再び新型コロナウイルスの感染が拡大している。オーストリアでは18日の新規感染者が1万5000人を超えて1日の感染者としてはこれまでで最も多くなった。

 オーストリア政府は19日、新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するため、完全なロックダウン(都市封鎖)を再導入することを明らかにした。

 西欧で今秋、ロックダウンが再導入されるのは初めてとなる。政府はまた来年2月日までのワクチン接種を全国民に義務付けるとした。オーストリアのワクチン接種率は66%程度。

 WHOのハンス・クルーゲ欧州地域事務局長は、欧州の新型コロナウイルスの感染が拡大していることに対し、季節が冬になったことや、ワクチン接種率が十分なレベルに達していないこと、より感染力が強いデルタ変異株が広がっている地域があることなどが背景にあるとしている。

 オーストリアのロックダウンの再導入を受けて、19日の欧米市場はリスク回避の動きを強めた。

 19日の欧米の国債は売られ、国債の利回りが上昇した。米国株式市場では米長期金利の低下からハイテク株は買われたものの、ボーイングなどは売られてダウ平均は下落した。欧州の株式市場も総じて下落。原油先物も下落し、外為市場ではユーロが売られ、ユーロ円も大きく下落した。

 金融市場ではあらためて新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受け始めている。日本では落ち着いているが、ワクチン接種率が高い国でも感染が拡大しているところもあり、油断はできない状態にある。

 今回の欧米を主体とした新型コロナウイルスの感染拡大によるリスク回避の動きは一時的なものとなる可能性はある。しかし、欧米の株式市場ではここにきて株価指数が過去最高値を更新するなどしていたことで、オーストリアのロックダウンをきっかけに調整局面入りする可能性もないとはいえないか。


2021年11月20日「テスラへの世紀の空売りは失敗か、イケル・バーリ氏はテスラの空売りを解消」

 マイケル・ルイス氏のベストセラー「世紀の空売り」(原題:ザ・ビッグ・ショート)で有名な投資家、マイケル・バーリ氏が最大のショートポジションの一部を少なくとも一時的に解消した可能性があると16日にブルームバーグが報じた。

 閉じたとされるショートポジションには、キャシー・ウッド氏率いるアーク・インベストメント・マネジメントの最大ファンドであるアーク・イノベーションETFや、イーロン・マスク氏のテスラ、最大の米国債ETFであるiシェアーズ米国債20年超ETFが含まれるとされる。

 マイケル・ルイス氏のベストセラー「世紀の空売り」では、バーリ氏が2007〜2009年の金融危機の際にサブプライムローンを空売りし、大もうけしたことで知られる。つまり空売り界の帝王といったところだが、今回はその空売りに失敗したようである。

 アーク・イノベーションETFや米国債20年超ETFについては価格は低迷しており、バーリ氏がプットオプションを買ったタイミングは不明ながら、それほどの損失を出したとは考えづらい。今回のポジション調整の主因はテスラにあった。

 米10年債利回りは10月21日に1.7%まで上昇したが、その後低下基調となり、9日には米10年債利回りは1.41%に低下した。この背景にあったのは欧米の主要中銀が利上げに慎重姿勢を示したことにある。長期金利の低下も手伝い、テスラやビットコインなどの価格を押し上げ、それぞれ過去最高値を更新していた。

 このテスラの株価を押し上げた要因のひとつが、マイケル・バーリ氏によるプットオプションの解消、つまり世紀の空売りのショートカバーであった可能性がある。

 そのショートカバーが一巡し、そこにイーロン・マスク氏が保有株の売却を行ったことで、その後のテスラの株価の下落が加速した。

 テスラの株価がコロナ禍にあっての金融緩和による流動性相場におけるバブルの象徴的な存在であったと思う。それを空売りするというのは理にかなっていたはずであった。しかし、今回のバブルはいったん弾けたようにみせて再度復活していた。マイケル・バーリ氏にとって想定外の事態が起きたといえたのではなかろうか。

 世紀の空売りのバーリ氏も撤退したとなれば、バブル相場の再燃によって市場のセンチメントは総強気になったとの見方もある。しかし、それはそれでバブル崩壊のリスクを高めることになりかねない。

 さらに欧米の中央銀行はいったん進めるかに見えた利上げを躊躇しつつある。物価の高騰は一時的との見方、コロナ禍の先行きも見通せないなどの理由はあるのかもしれないが、結果としてこれがバブルを助長するようなことにならなければ良いのだが。


2021年11月20日「ファミチキが品薄、チキンショックにみる物価上昇の兆し」

 19日に10月の全国消費者物価指数が発表された。総合指数は前年同月比でプラス0.1%、日銀の物価目標となっている生鮮食品を除く総合指数は前年同月比でプラス0.1%、 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は前年同月比でマイナス0.7%となった。

 生鮮食品を除く総合指数は2か月連続で前年比でプラスとなったものの、引き続き消費者物価指数そのものは低迷したままとなっている。

 エネルギー価格は11.3%上昇と伸び率が拡大。このうちガソリンは21.4%上昇して2008年8月以来の上昇率となった。灯油は25.9%上昇して2017年11月以来の上昇率に。しかし、通信料(携帯電話)などが引き続き下落要因となっている。

 根本的な下落要素としては賃金の低迷なのかもしれないが、10月の企業物価指数が前年比プラス8.0%となっているのに比べて乖離幅が大きい。

 とはいえ、ガソリンや灯油価格の上昇は企業のみならず家計も圧迫しよう。さらに食料品などの価格がここにきて上昇してきていることも懸念材料となろう。

 18日に夕方のニュース番組をみていて気になるワードが出ていた。それは「チキンショック」というワードであった。

 コロナの感染拡大などにより、鶏肉の主要な産地であるタイの工場などが閉鎖されている。その影響を受けて日本への供給量が減少、一部コンビニやファミレスなどで、「チキン」商品が品薄になるなどの現象が起きているとTBSニュースが伝えていた。

 近くのファミリーマートに買い物に行った際、レジのところにファミチキが品薄だと知らせる貼り紙が出ていた。いったい何だろうとその時思ったのだが、夕方のニュースをみてその要因が新型コロナウイルスの感染拡大にともない、タイの工場の人手不足や原材料の不足が続いているためだと知った。

 これもひとつのサプライチェーンの問題ともいえよう。日本のプリンター製造大手のキヤノンのプリンターの主力工場がベトナムにあり、ベトナムでの新型コロナウイルスの感染拡大によってプリンター製造に影響が出ていた。

 品薄となっているのはプリンターだけではない。温水洗浄便座や給湯器などにも影響が出ていた。またベトナムやタイでの感染拡大などにより、冷凍エビなど冷凍食品にも影響が出ていた。

 それに加えて、チキンにも影響が出ていたのである。

 また、新型コロナウイルスの影響の長期化に伴う船のコンテナ不足で、米国からのワインの輸入が滞っているとして、ワインメーカー国内大手の「メルシャン」は、ことし9月から一部の商品の販売を休止していると、こちらはNHKが報じていた。

 コンテナ不足も一時的なものではあると思うが、物流に影響を与えており、米国ではクリスマスプレゼント不足まで懸念されている。

 世界的な物価の上昇は明らかなものの、日本では消費者物価指数そのものの低迷によって物価は上がっていないとの認識となっているようだが、サプライチェーンなどの問題による品不足、エネルギー価格の上昇による輸送燃料費の高騰、原材料価格の上昇なども加わり、現実にはじわりじわりと家計などにも影響を与えつつあるように思われる。


2021年11月19日「海外投資家の米国債保有高は6か月ぶりに減少」

 米財務省が11月16日に発表した9月の国際資本収支統計における米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES)によると、海外投資家による米国債の保有高は7兆5491億ドルとなり、6か月ぶりに減少した。9月は過去最高を記録していた。

MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES https://ticdata.treasury.gov/Publish/mfh.txt

 3月18日に米10年債利回りは1.75%近辺まで上昇した。ここが目先のピークとなり、その後、1.7%近辺で推移後、米10年債利回りはダウントレンド入りした。8月に入り、1.2%を割れたあたりから利回りの低下トレンドがストップし、今度は上昇トレンドとなってきた。9月末には1.5%台を回復し、10月21日に1.7%まで上昇していた。ただし、ここでいったんピークアウトして、11月にかけて1.4%台に低下した。

 あらためて国別の米国債保有残高を確認すると、日本の米国債保有額は1兆2996億ドルとなり、前月比202億ドルの減少となったものの、引き続きトップは維持した。

 2位の中国は1兆476億ドルとなり、前月比で6億ドルの増加となっていた。参考までに9月末の中国の外貨準備高は前月末より315億ドル少ない3兆2006億ドルだった。

 増加した国はルクセンブルク、ケイマン諸島、フランスなど。減少額は日本やアイルランドが大きかった。

 上位10か国の米国債保有額は下記の通り。

国、米国債保有額、前月比(単位、10億ドル)
日本(Japan)、1299.6、-20.2
中国(China, Mainland)、 1047.6、+0.6
英国(United Kingdom) 、566.5、-2.5
ルクセンブルク(Luxembourg) 311.8 +17.9
アイルランド(Ireland) 、309.4 -16.7
スイス(Switzerland)、296.5、+1.8
ケイマン諸島(Cayman Islands )、252.7、+3.5
ブラジル(Brazil)、249.0、+0.1
フランス(France)、242.4、+3.8
台湾(Taiwan)、239.5、+2.3


2021年11月18日「英国でVISAカードがアマゾンで使えなくなる?」

 17日の米国株式市場は下落し、ダウ工業株30種平均は前日比211ドル17セント安となったが、その下落要因のひとつがクレジットカードのビザ(VISA)が大幅安となったことによる。VISAだけでダウ平均を70ドル近く押し下げた格好となった。いったいVISAに何かあったのか。

 米アマゾン・ドット・コムは17日、英国のサービスで米VISAのクレジットカードでの支払いをできなくすると明らかにした。英国の利用者に対して2022年1月19日に取り扱いを停止すると通知した。理由について「VISAのクレジット決済手数料が高いため」と説明している(18日付日経新聞電子版)。

 アマゾンでの決済は、通常はクレジットカードが使われているが、その大手であるVISAに対して、アマゾンが挑戦状を叩きつけた格好ながら、特にVISAカードを利用している英国在住者にとっては困った事態ともなりかねない。

 取り扱い停止の対象はあくまで英国内で発行されたVISAのクレジットカードとなる。マスターカードなど他社のクレジットカードや、VISAを含むデビットカードは引き続き利用できる。アマゾンは該当する顧客には支払手段の登録情報を変更するよう呼びかけたそうである。

 クレジットカードは複数持っている人も多いが、管理上、ひとつに絞っている人も多いはず。アマゾンでの購入にはそのメインのカードを使っていることが多いとみられ、今回の措置は混乱を招きかねない。

 小売業の決済助言会社CMSイメンツ・インテリジェンスと英国小売協会(BRC)によれば、英国が欧州連合(EU)を離脱したことにより双方間で取り決められていた手数料上限が撤廃され、カード会社は国境を越えた取引の手数料を引き上げられるようになった(18日付ブルームバーグ)。

 アマゾンの広報担当者は「最高の価格を顧客に提供しようと努力している企業にとって、カード決済のコストは障害であり続けている。技術の進歩につれて下がるべきなのに高止まりし、上がってさえいる」と述べていたが、英国ではVISAのクレジット決済手数料が引き上げられていた可能性もあり、それがアマゾンとの衝突を招いた可能性がある。

 いまのところ、これが日本にも波及するようなことはないと思われるが、今後の動向にも注意する必要はある。VISAの広報担当は「当社はアマゾンと長年の関係があり、解決に向けた努力を続けていく」とコメントしている。


2021年11月18日「ガソリン価格を政府の補助金で上昇を抑制することへの疑問点」

 萩生田光一経済産業相は16日、「ガソリンなどの価格が一定の水準を超えた場合に元売り事業者に価格抑制の原資を支給する時限措置を考えている」と表明した。ガソリン価格が全国平均で1リットルあたり170円を超えた際に補助金を出し、同5円を上限に支給する案がある(16日付日本経済新聞)。

 石炭や天然ガスなどのエネルギー価格が上昇し、それが原油価格にも波及してきている。エネルギー価格の上昇にはいろいろな要因が組み合わさっているものの、経済の正常化による影響が大きい。ここにきて原油先物価格はピークアウト感も出ているものの、今後さらに原油価格が上昇するという懸念も強いことも確かである。

 日本では円安による影響も受けやすい。17日にドル円は一時115円に接近してきた。円安によって原油などの輸入価格が上昇する懸念がある。

 ただし、補助金で上昇を抑制する対策には疑問が残る。

 政府は直接、OPECプラスなどに掛け合って原油価格の上昇抑制を図ることはしなかった。その代わり、原油価格は市場動向に任せるものの、ガソリン価格に170円という防衛ラインを設けた。そこを上回った際に170円を超えた部分を石油の元売り各社に補助金を出して、価格の上昇を抑制しようとするものである。

 原油価格の上昇により影響を受けるのは個人も企業も同様である。できれば石油関連商品の価格の急騰は避けたいことは確かである。経済回復の足かせになる可能性もある。

 しかし、原油価格上昇抑制のため、元売り事業者に補助金を出すというのは世界的にみても極めて異例となる。元売りで価格を抑えても小売りとなるガソリンスタンドなどでの価格設定に強制力はない。強制すれば度独禁法にも抵触しかねない。

 また、補助金によって一時的に小売価格を抑えることはできたとしても、原油価格や円安の動向次第では、ガソリン価格が5円を超す上昇となる可能性もある。それにも対応するとなれば、バラマキ政策にもなりかねない。

 為替が大きく動くと為替介入という手段があるが、それが効果的とは思えない。日銀は長期金利をコントロールしているが、その効果と副作用を考慮するとそれが適切な手段とも思えない。政府などが価格統制に乗り出すと市場の価格形成をゆがめるなど副反応も気になるところではある。


2021年11月17日「40兆円規模もの経済対策なのに、どうして国債の増発が抑えられるのか」

 政府・与党が新型コロナウイルス対応や格差是正を含む追加経済対策の財政支出を「35兆円」前後とする方向で検討していることが分かったと11月5日に産経新聞が報じた。

 政府が19日にまとめる経済対策が財政支出ベースで「40兆円超」に膨らむ見通しになったと、こちらは13日の日本経済新聞が報じた。

 政府は一部を国債の増発でまかなうとしているが、その増発はそれほど多くはないというのが債券市場参加者の見立てとなっている。

 その経済対策の内容についてはここではさておき、どうして40兆円もの規模の経済対策にもかかわらず、国債の増発は限定的との見方となっているのか。その理由を探ってみたい。

 産経新聞は経済対策の財源について、2020年度決算の剰余金(約4兆5000億円)や2020年度から2021年度に繰り越された予算の一部(十数兆円)を充て、不足分は赤字国債の発行も検討と報じている。

 2020年度予算は新型コロナウイルスの感染拡大による経済への打撃を受けて補正予算を含め、異例ともいえる巨額なものになった。まさに非常時対応となっていたが、そこでの使い残しも巨額なものとなっていた。

 新型コロナウイルス問題によって経済は悪化したが、税収は60.8兆円と予想外にも過去最高を記録していた。その予想外の部分も財源となる。

 2021年度財投計画の進捗の遅れに伴う財投債の減額分も同様に財源として活用できる。

 借換債の前倒し発行分はだいぶ使ってしまってはいるものの、予算編成時の長期金利の予想と実際の長期金利の乖離分が存在しており、その分を含め前倒し発行として利用が可能となる。

 このあたりで補正予算が35兆円規模であれば、国債の増発は抑えられるとの見立てとなっていた。仮に国債増発が必要となっても短期国債の発行でカバーされ、長期国債の増発はあっても限定的との見方となっている。

 日経新聞の報道で規模が35兆円ではなく40兆円と膨らんでいるが、ここには16か月予算というものが絡んでくるとみられる。

 政府が近く決定する「新たな経済対策」の原案が判明し、財源の裏付けとなる2021年度補正予算については「16か月予算」として次年度予算と一体編成するとロイターが報じていた。

 産経新聞と日経新聞の数字の差額分の5兆円が、2022年度予算に組み込まれる新型コロナウイルスの対策費用などであるとするならば、その分は今年度補正の費用負担とはならず、来年度予算に組み込まれる可能性がある。

 以上の理由によって、40兆円規模の経済対策が講じられても国債の増発は極力抑えられるというのが債券市場関係者の見立てとなっているようである。


2021年11月16日「日本のGDPは2四半期ぶりにマイナス成長、緊急事態宣言とサプライチェーンの問題などが影響か」

 内閣府が15日に発表した2021年7〜9月期の国内総生産(GDP)速報値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.8%減、年率換算で3.0%減となった。

 マイナス成長は2四半期ぶりとなる。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、4度目の緊急事態宣言が東京都では7月12日から9月30日にかけて発令されていた。この影響でGDPの半分以上を占める個人消費が大きく落ち込んだことも要因となっていた。

 個人消費は前期比1.1%減と2四半期ぶりに減少した。半導体不足や東南アジアの感染拡大に伴う部品の供給制約で自動車の生産が滞ったことが響いた。パソコン需要が一服したことや、半導体不足もあって家電も落ち込み、耐久財は13.1%減と2四半期ぶりに減少した。衣服などの半耐久財も5.0%減となった。

 内需のもう一つの柱である設備投資も3.8%減で、こちらも2四半期ぶりのマイナスとなった。部品の供給制約などで自動車の生産ができず、一般企業が事業用の車を購入できなかったことが影響したとの指摘がある。

 個人消費も設備投資も緊急事態宣言による需要の落ち込みに加えて、サプライチェーンの問題とともに新型コロナウイルリスの感染が拡大していた東南アジアなどに主力工場がある企業の生産が落ちるなどの影響も大きかったものと思われる。

 輸出は前期比2.1%のマイナス。自動車の生産調整などの影響で5四半期ぶりの減少となった。輸入は同2.7%のマイナスに。

 10〜12月期については今のところプラス成長になるとの予想となっている。緊急事態宣言の全面解除を受け、経済の正常化を睨んだ動きからGDPを引き上げることが予想される。ただし、エネルギーや原材料などの価格上昇による影響も出てくることが予想され、企業の設備投資や人件費が抑制される懸念もあるようだ。


2021年11月15日「“日本沈没”が刊行された年と現在の類似性、キーワードは“インフレ”」

 小栗旬が主演を務めるTBS系日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』が高視聴率を得ているようである。私も録画して観ているが、確かに引き込まれる内容となっている。14日の放映の予告編をみると、第6話からは第2章日本沈没篇がスタートする。関東沈没だけでなく、原作通りに日本が沈没するようである。

 その日本沈没の原作を書いたのが日本のSF界の巨匠、小松左京氏である。1964年から執筆が開始され、9年がかりで完成。当初は複数巻となる予定だった長編を出版社の要請で短縮し上下巻とした。1973年3月20日に光文社カッパ・ノベルスより書き下ろしで上下2巻が同時刊行された。すぐに人気に火が付き「空前の大ベストセラー」とも評された。当日、学生だった私も必死で手に入れた記憶がある。

 50年近く前に書かれた本を原作として、ドラマ化して果たして見る人がいるのかとの疑問もあったかもしれないが、小栗旬などの好演などもあって高視聴率を稼いでいる。CGについては賛否両論あるようだが、以前に映画化されたものよりも視覚で訴えているように思う。

 ただし、このドラマのヒットはそれだけではないのではないか。原作が出された年と現在に類似性があり、当時の読者や現在の視聴者が先行きの不安感を強めていたからとの見方はできないだろうか。その不安とは「インフレ」である。

 1972年7月、田中角栄が総理大臣に就任。田中首相は「工業の全国的な再配置と知識集約化、全国新幹線と高速道路の建設、情報通信網のネットワークの形成」などを謳いあげ、日本列島改造論を提唱。加えて積極的な財政金融政策を提唱し、国債発行額は増加した。

 この年に組まれた当初予算は伸び率が25%という空前の大型予算となったた。また「福祉元年」と言われ、年金や健康保険給付の画期的な拡充も計られ、財政・金融面における極端な拡張策は結果として国内の景気の過熱、物価の高騰、土地の価格の上昇を招くことになったのである。

 これが下地となっていたところに、原作が発行された1973年の10月に第一次オイルショックが発生した。

 1973年10月に第4次中東戦争が始まった。アラブ諸国は禁輸措置を実施し、石油輸出国機構(OPEC)は原油価格の引き上げを実施。この結果、石油価格は一気に4倍となり、卸売物価が前年比30%、消費者物価指数は前年比25%も上昇した。

 給油所は相次いで休業、買い占めや売り惜しみ、便乗値上げなどが相次ぐ。トイレットペーパーや洗剤、砂糖などが不足するとの思惑から、各地で買占めが起きた。しかし、この物価上昇は海外要因だけによるものではなかった。すでに日本の高度成長は限界に達し、国内需給が逼迫しており、それに石油価格の高騰がまさに火に油を注いだ。

 この異常事態に対して財政・金融両面においてきわめて強力な総需要抑制策が実施された。公定歩合は1973年中に4.25%から9.00%に引き上げられた。1974年度も総需要抑制策は実施され、この結果、需給ギャップ(経済の供給の伸び率と現実の需要の伸び率との乖離のことを)は拡大し、戦後初のマイナス成長となり、いわゆるスタグフレーション(景気停滞と物価上昇が同時に進行すること)に陥った。

 現在はどうであろう。

 コロナ禍による経済の悪化を受けて積極的な財政金融政策が実施されていた。その後の経済の正常化に向けて、サプライチェーン問題やエネルギー価格の急騰、人手不足なども絡んで、現在も世界的に物価が上昇し、インフレ懸念が強まりつつある。その一因に当時のような原油高もある。日本の消費者物価はさておき、企業物価は前年比8%の上昇となり、欧米などては消費者物価も前年比で高い水準が続いている。

 漠然としたインフレへの不安感などもあって、現在も当時のように日本列島を襲う危機に関心が集まっているとの解釈は無謀と言えるであろうか。


2021年11月13日「次期FRB議長候補のブレイナード氏とはどういう人物か」

 FRBのブレイナード理事は先週ホワイトハウスを訪れた際に、FRB議長の職について聞き取りを受けたと、事情に詳しい関係者が明らかにした。バイデン大統領が次期FRB議長の人選を進める中で、パウエル現議長と共にブレイナード氏が真剣に検討されている(9日付ブルームバーグ)。

 パウエル議長の任期は来年2月に終了する。バイデン大統領は次期議長について、迅速に決定を下すつもりだと述べていた。

 現在のFRBでの毎年投票権を持つ常任メンバーは、パウエル議長、クラリダ副議長、クオールズ理事(前銀行監督担当副議長)、ブレナード理事、ボウマン理事、ウォラー理事となっており、一人の理事が空席となっている。

 クオールズ理事は12月最終週をもって退任することを明らかにした。クラリダ副議長の任期は来年1月末となり、パウエル議長の任期は来年2月となっている。

 空席の理事を含めた人事を早急に行う必要が出てきた。そのためには軸となる議長人事も優先すべき課題となる。

 そのFRB議長候補となっているラエル・ブレイナード氏は、クリントン政権では大統領副補佐官およびG7、G8の首脳個人代表を務めた。 2001年から2008年までブルッキングス研究所副所長、2010年から2013年までオバマ政権で国際担当財務次官となっていた。2014年6月16日からFRBの理事を務める。任期は2026年1月31日まで

 ブレイナード氏は以前に日本の為替政策にも大きな影響を与えていた人物とされている。

 たとえば、2013年2月12日のG7による緊急共同声明について、円の過度な動きに懸念を表明することがG7の目的だったとの匿名のG7筋による発言があった。この匿名のG7高官とはブレイナード財務次官(当時)である可能性が高いとされた。

 ブレイナード財務次官(当時)はご主人が、親日家のカート・キャンベル元東アジア・太平洋担当国務次官補であるが、こと為替政策についてブレイナード氏は安倍政権(当時)の動きを牽制していたとされる。

 ブレイナード理事のFRB内での位置としてはハト派筆頭とされる。要するに金融引き締めより金融緩和を好むということだが、あまりそういった区分けは適切ではないと考えている。むしろ、セントラルバンカーとしての良識を持った判断をする人物かどうかという視点で見る必要がある。その意味ではセントラルバンカーとしての良識を持った人物だといえよう。

 このため、もしブレイナード氏がFRB議長に就任したとしても、現在のスタンスから大きな修正はしてこないものと予想される。


2021年11月13日「日銀も金融政策の正常化の準備が必要に」

 米労働省が10日に発表した10月の米消費者物価指数の上昇率は前年同月比6.2%と9月の5.4%から加速した。上昇幅は1990年11月以来約31年ぶりに6%台に達し、6か月連続で5%以上の伸びが続いた。中古車価格は26%、ガソリン価格が50%近く上昇し、食品も5%台の値上がりとなった。変動の激しい食料品とエネルギーを除いたコア指数も前年同月比4.6%増と、1991年8月以来30年ぶりの上昇となった。

 そして11日に日銀が発表した10月の国内企業物価指数は前年同月比8.0%の上昇となり、1981年1月以来、40年ぶりの伸び率となった。

 日銀の金融政策における物価目標は消費者物価指数である。その消費者物価指数は前年比でプラス0.1%増とやっとプラスに転じた程度で、物価目標の2%にはかなりの距離がある。

 「金融政策の正常化とは、他国の政策動向にかかわらず、わが国での物価安定の目標を安定的に達成することであり、目標に達していないもとでは金融緩和を修正する理由は全くない。この点は、対外的に丁寧に説明すべきである。」との意見が日銀の金融政策決定会合における主な意見(2021年10月27、28日開催分)にあった。

 本当にそれで良いのであろうか。

 企業物価と消費者物価との間に乖離が出ているのは、消費の低迷で企業の価格転嫁が容易でないとの指摘があったが、ここにきて値上げラッシュが続いている。

 それよりもサービス価格の低迷、その大部分の賃金が消費者物価指数の低迷に影響しているのであれば、賃金そのものを上げる必要がある。

 ところが、企業物価指数が原材料価格やエネルギー価格の高騰やサプライチェーン問題に加え「円安」によって8%もの上昇となっていることは、当然ながら企業には悪影響を及ぼしている。

 円安による影響についても、ロイターの企業調査で円安は減益要因としたのが33%、増益要因とした回答は23%となっていたように、以前のように日本企業を潤す要因とはなっていない。

 中央銀行は物価の番人ではあるが、その物価は当然ながら、消費者物価指数に限られるわけではない。そもそも消費者物価指数を発表しているのは総務省だが、企業物価指数を発表しているのは日銀である。

 日銀はむろん企業物価指数にも目を配る必要がある。特にそれが日本経済に悪影響を与えるのであれはなおさらである。さらに企業物価指数の上昇による収益悪化で賃金が抑えられ、これが消費者物価の抑制要因となるのあればなおさらのこと。

 少なくとも2%の消費者物価指数の目標が達成されないからといって金融緩和を修正する理由は全くないとは言い切れない。むしろ柔軟性を持たせるためにも、目標そのものにある程度のレンジを持たせるなりすることも必要となろう。

 欧米の中央銀行が正常化を進めるのであれば、ここからの急速な円安を防ぐためにも、異次元の緩和を通常次元に戻すことも考える必要があるのではなかろうか。


2021年11月12日「米国でサンタクロースの時給が数万円にまで急騰した理由とは」

 9日付のウォール・ストリート・ジャーナルによると、米国では新型コロナウイルスの影響を大きく受けた去年に比べ、今年は対面でのクリスマスイベントが増える予定となっているのに対し、髭を蓄えたサンタ役の男性が不足していて、大都市では時給が数万円にまで上昇しているそうである(11日付テレビ朝日)

 ここにきての物価上昇のひとつの要因としては、人手不足のよる賃金の上昇も背景にある。さらにサプライチェーンの目詰まりによる影響などもあるが、このサンタクロースの時給高騰の背景にも同様の問題が見え隠れしている。

 経済の正常化に伴い、各所で人手不足が発生している。日本でも人手が足りずに営業を再開できない飲食店などが発生しているとニュースに取り上げられていた。感染対策で対人サービス業を中心に生産性の低下が発生しその影響から人手不足が発生しているとの指摘もある。

 さらに今回のサンタクロースの時給高騰については、対象のなるサンタクロース役がある程度の年配者であり、その仕事の相手先が子供達であるということも影響していたようである。サンタクロースとなっていた高齢の男性たちが、小さな子どもへのワクチン接種が進んでいないため、新型コロナウイルスの感染リスクを懸念しているとか。また、コロナ禍も合ってか高齢者のリタイアそのものが進んでいるとの指摘もあった。

 これはひとつの特殊な例のようにみえるものの、コロナ禍の影響による人手不足を示す事例ともいえるものではなかろうか。それにしても時給が数万円にまで上昇しているというのも驚かされる。米消費者物価は6.2%と31年ぶりの高水準となっているが、サンタクロースの時給からみても「さもありなん」という状況のようである。


2021年11月12日「インフレが来た! 米消費者物価は6.2%となり31年ぶりの高水準、日本の企業物価は8%と40年ぶりの高水準に」

 米労働省が10日に発表した10月の米消費者物価指数の上昇率は前年同月比6.2%と9月の5.4%から加速した。上昇幅は1990年11月以来約31年ぶりに6%台に達し、6か月連続で5%以上の伸びが続いた。中古車価格は26%、ガソリン価格が50%近く上昇し、食品も5%台の値上がりとなった。変動の激しい食料品とエネルギーを除いたコア指数は前年同月比4.6%増で、1991年8月以来30年ぶりの上昇となった。

 そして11日に日銀が発表した10月の国内企業物価指数は前年同月比8.0%の上昇となり、1981年1月以来、40年ぶりの伸び率となった。

 サプライチェーン(供給網)の目詰まりによる影響や人手不足、原材料価格の上昇、原油価格などエネルギー価格の上昇が影響し、これらが構造的に物価を押し上げてくる恐れも出てきた。そうなると物価上昇が一時的とはならない可能性がある。

 そもそも一時的というのは1か月から3か月程度を指すとみられ、たとえば日本での消費者物価指数は2008年の7月から9月にかけて瞬間的に2%台に乗せていたことがあるが、これがまさに一時的との表現が当てはまる。

 米国の消費者物価指数はすでに6か月、つまり半年もの間、5%を超える伸びが継続しており、一時的との表現は使えないと思われる。

 これはFRBにとっても想定外であったと思われる。一時的とは言いながら1年程度は物価の高止まりは継続するとの認識も示していたが、5%以上が半年も続くとは想定外であったはずである。

 いったん欧米の主要中銀は利上げに関して慎重姿勢を示す格好となったが、このような物価の高騰が続くとなれば、早めな対処が必要となる。

 金融政策の「正常化」との表現が使われるが、裏を返せば物価高にあっても異常な非常時の金融緩和策が現在取られているということにもなる。それがそもそも物価上昇の温床となってしまっている可能性も当然あろう。

 FRBなど欧米の中央銀行に限らず、日銀も含めて金融政策の「正常化」は急ぐべきと思われる。金融市場が多少動揺しようとも異常な政策は修正すべきであろう。


2021年11月11日「バブルが再燃しあらめて崩壊のリスクも、注目すべきは金利と原油価格、そしてテスラの株価か」

 いったん沈静化していたかにみえたバブルが再燃し、ここにきてその崩壊の兆しが見えてきている。。

 米国株式市場では8日まで連続で主要三指数が過去最高値を更新していた。ナスダックに至っては11営業日続伸となっていた。欧州株式市場でもストックス欧州600種指数は8日まで8営業日続伸となっていた。

 そして今回のバブルにあたって象徴的なものにテスラの株価がある。1989年の株価上昇の象徴は個人の資金が流入していたNTTであった。今回はビットコインなど絡んで、テスラ社の株価の動きがバブルの動きをみるひとつの指針ともなっている。

 そのテスラの株価は、11月4日に1243.49ドルまで上昇し過去最高値を更新した。時価総額も1兆ドルの大台に乗せていた。

 そしてビットコインは8日に初めて6万7000ドルを超え、こちらも過去最高値を更新している。

 米10年債利回りは10月21日に1.7%まで上昇したが、その後低下基調となり、9日には米10年債利回りは一時1.41%に低下した。

 この背景にあったのは欧米の主要中銀が利上げに慎重姿勢を示したことにある。過去のバブルの温床にはこの低金利政策も絡んでいた。

 物価動向としても注目すべき原油価格については、WTI先物は85ドル近くに上昇しており、いずれ100ドルを伺う可能性もある。欧米の物価は高止まりが続いている。

 金利は低迷し、それがバブルの温床ともなり、テスラやビットコインなどの価格を押し上げた格好となっている。原油を含めてエネルギー価格が上昇し、原材料価格も上昇していることで物価は高止まりが継続している。

 ただし株式市場でみるとテスラの株価がここにきて急落した。

 9日の米株式市場で、テスラの株価が12%安と大幅続落となった。マスク氏は保有するテスラ株の10%売却の賛否を先週末にツイッターで問い、参加したユーザーの賛成多数で支持された。それに伴う株式放出への懸念に加え、取締役会メンバーの弟キンバル・マスク氏が投票直前の5日にテスラ株を一部売却していたことも株価に影響した(10日付ブルームバーグ)。

 テスラの株価急落がバブル崩壊のきっかけになるかどうかはわからないが、この値動きからもここにきてバブルが再燃し、その後の崩壊リスクが出てきたことは確かではなかろうか。

 10日に発表された米消費者物価指数は31年ぶりの上昇幅になるなど、サプライチェーンの問題とともに、原油価格の上昇などにより、このまま物価の高止まりが続くと欧米の主要中銀の利上げ観測が再び強まることも予想される。米長期金利などの金利動向も今後の波乱要因ともなりかねない。

 FRBについては来年にも利上を開始かとみられているが、こちらはFRB議長人事が微妙に影響してくる可能性がある。バイデン米大統領がパウエル議長の再任ではなく、ブレイナード理事を議長に指名した場合に市場は、バイデン大統領はFRBの利上げを牽制しているのでは、と受け止める可能性もありうる。


2021年11月10日「欧米の金融政策の正常化にブレーキを掛けた理由」

 FRBのクラリダ副議長は8日、政策金利を引き上げる必要条件が恐らく来年末までに満たされるだろうと述べた。セントルイス連銀のブラード総裁は、来年2回の利上げを予想していると述べた。フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は講演で、「テーパリング完了前にFF金利誘導目標を引き上げることはないだろう。しかし、われわれはインフレ動向を非常に注意深く監視しており、適切な状況となれば行動を取る用意がある」と発言した

 イングランド銀行は今月4日の金融政策委員会(MPC)で市場が予想していた利上げを見送った。

 3日にFRBがテーパリングを決定した際、パウエル議長が現在は利上げに適した時期とは考えていないと繰り返していた。

 3日にはECBのラガルド総裁も来年利上げする可能性は非常に低いとの認識を表明していた。

 イングランド銀行が今回利上げを見送ったのは、成長減速への懸念をインフレ見通しより重視したともされたが、FRBやECBの動向も確認しながら適切なタイミングを計っているとの見方もできるのではなかろうか。

 また、利上げを意識して欧米の長期金利が上昇していたこともあり、これにブレーキを掛けることも念頭にあったのかもしれない。市場との対話に失敗したとの見方もあったが、長期金利に関してはブレーキが掛かったことは確かである。

 FRBによる前回のテーパリングはかなりこの長期金利の動向も意識されていたように思われる。ただし、今後の利上げを織り込ませる必要もあるため、上記のクラリダ副議長らの発言があったと思われる。

 以前にも指摘したが前回テーパリング時の状況は下記となる。今回のFRBの正常化については、この経験を踏まえた上で、少しスピードを早める格好になると予想される。

 2013年5月22日にバーナンキFRB議長(当時)は、上下両院合同経済委員会で証言を行い、証言後の質疑応答で、景気指標の改善が続けば債券購入のペースを減速させる可能性があると指摘した。これを受けて米債は下落し10年債利回りは2.02%と2%台に乗せた。

 同年12月18日のFOMCで量的緩和政策の縮小、テーパリングの開始を賛成多数で決定した。米10年債利回りは2.9%台に上昇したものの、3%を抜けることはなかった。

 テーパリングは2014年1月29日のFOMCでさらなる縮小を決定、この日の米10年債利回りは2.70%。3月19日のFOMCでも縮小、米10年債利回りは2.77%。4月30日のFOMCでも縮小、米10年債利回りは2.67%。6月18日のFOMCでも縮小、米10年債利回りは2.6%割れ。7月30日のFOMCでも縮小、米10年債利回りは2.55%。9月17日のFOMCでも縮小、米10年債利回りは2.62%。

 10月29日のFOMCでも縮小を決定し、これにてテーパリングは終了した。この日の米10年債利回りは2.32%。

 2015年に入り、年内の利上げ観測は継続したが、9月のFOMCでは見送られ、12月16日のFOMCで政策金利を年0〜0.25%から0.25〜0.50%に引き上げた。利上げは2006年6月以来。この日の10年債利回りは米10年債利回りは2.30%となっていた。


2021年11月9日「物価が上昇に転じなかった背景は2007年も今も変わらず、金融緩和を修正する必要はないと言い切ることに正当性はあるのか」

 原油価格や輸入原材料が高騰しており、企業はコスト増に直面している。企業間取引の段階では、コスト高を販売価格へ転嫁する動きがみられる。一方、最終消費段階の財にまでは転嫁はされてこなかった。

 この記述は最近のものではない。2007年に内閣府が出したレポートから抜粋したものである。

「日本経済2007 第1節 物価が上昇に転じなかった背景」 https://www5.cao.go.jp/keizai3/2007/1214nk/07-00301.html

 企業物価指数をみると、素原材料、中間財は中期的に大幅な上昇傾向にある一方、最終財では上昇がみられない。原油高等のコスト増は、川上、川中の生産財(素原材料+中間財)の価格にまでは転嫁されているが、川下の最終財にまでは転嫁が進んでいない。最終財は、品質向上が著しく下落基調にある電気機器のウェイトが大きい面もあるが、それらを考慮しても生産財と最終財の間の物価上昇率の差は大きい(内閣府の日本経済2007より)。

 直近の企業物価指数は前年比でプラス6.3%となり、伸び率は2008年9月の6.9%上昇以来、13年ぶりの高さとなっていた。ちなみに2008年9月の消費者物価指数は前年比プラス2.3%となっていた。

 この際の物価上昇の背景には原油高があったことで、消費者物価指数も一時的に2%を超えていたが、企業物価との乖離は大きい。その背景の説明が上記であり、これは現在でも変わっていない。

 この内閣府のレポートでは、原油価格や素原材料価格が高騰する中、企業取引段階では転嫁がある程度進んでいる一方で最終消費段階への転嫁が進まないことは、国内で生み出す名目付加価値の縮小につながっているとの指摘もあった。

 そして物価が上昇に転じないことや、個人消費が弱いことの背景として、賃金が伸び悩んでいることが挙げられるとの指摘もあった。

 8日に発表された日銀の金融政策決定会合における主な意見(2021年10月27、28日開催分)では、次のようなコメントがあった。

 「日米インフレ率の差は主にサービス価格であり、その大部分は賃金である。賃金引き上げには労働市場が更に引き締まることが必要である。家計・企業の待機資金の支出を後押しするためにも、所得と賃金の引き上げを目指すことが望ましい。」

 どうして賃金の引き上げが困難なのか。賃金を引き上げれば物価が上がるとすれば、大胆な金融緩和策によって能動的に賃金を引き上げることは可能なのか。すでに異次元緩和と呼ばれた日銀の量的質的金融緩和策を決定してから8年半が過ぎたが、物価を取り巻く環境は2007年時点となんら変わることはない。

 「金融政策の正常化とは、他国の政策動向にかかわらず、わが国での物価安定の目標を安定的に達成することであり、目標に達していないもとでは金融緩和を修正する理由は全くない。この点は、対外的に丁寧に説明すべきである。」との意見が「主な意見」にあった。

 そもそも2%という物価目標が適正なのか。どんな金融緩和策をとっても物価を取り巻く環境に変化はなく、目標に達していないもとでは、金融緩和を修正する必要はないと言い切ることに正当性があるとは思えない。

 異次元緩和の副作用、債券市場の機能不全、金融機関の収益性への問題、そして日本の財政悪化を見にくくさせるなどの副作用も考えれば、少なくとも極端な緩和策から柔軟な対応に戻す格好の金融政策の正常化はむしろ必要とされるものと思われる。


2021年11月6日「新しい500円硬貨が21年ぶりに発行された」

 11月1日に新しい500円硬貨が発行された。新しい500円硬貨の発行は2000年以来21年ぶりで、今年度中に2億枚発行される予定。当初は今年9月ごろまでに発行される予定だったが、新型コロナウイルスの影響で銀行のATMなどの改修作業が遅れたことをにより発行がずれこんだ。

 新しい硬貨の大きさや基本的なデザインはこれまでの500円硬貨と大きく変わらないが、偽造防止のため、ニッケルなど3種類の金属を使い、中心は銀色、外側を金色のリングで囲む構造になっているほか、これまで等間隔に刻まれていた側面の溝について一部の幅や形を変えるなど、より複雑な造りとなっている(11月1日付NHK)。

 このような硬貨など貨幣の発行とはどういう仕組みとなるのか。

 通貨法ともよばれる「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」の第四条にある貨幣の製造及び発行について見てみると、「貨幣の製造及び発行の権能は、政府に属する」とあり、貨幣は政府が製造して発行している。

 さらに財務大臣は、貨幣の製造に関する事務を独立行政法人造幣局に行わせるとあり、製造は造幣局というところが担当している。

 紙幣を製造している印刷局も通貨を製造している造幣局も、現在は独立行政法人と呼ばれる機関となっている。それぞれの正式名称は、独立行政法人国立印刷局と独立行政法人造幣局。造幣局では貨幣の製造のほか勲章・褒章及び金属工芸品等の製造、地金・鉱物の分析及び試験、貴金属地金の精製、貴金属製品の品位証明などの事業も行っている。

 貨幣の発行は財務大臣の定めるところにより、日本銀行に製造済の貨幣を交付することにより行うとされている。そして、日銀の本支店から金融機関への払い出しによって流通することになる。

 実際の民間銀行の窓口での取り扱いは各金融機関によって対応が異なるが、三菱UFJ銀行など大手銀行では4日以降、両替できるところが多いと報じられている。

 これまでの500円硬貨は50億枚程度流通しているとされるが、新硬貨の発行後も引き続き利用できる。

 これは500円硬貨に限らず、少なくとも円単位で表示されているものは紙幣なり、硬貨なり、利用が可能となっている。新しい貨幣が出るとこれまでのお金は使えなくなるということは少なくとも日本ではない。

 極端な事例でいえば、明治18年発行開始の大黒像が描かれた1円札も利用できる。もちろん希少価値があり、1円で使うことなどはしないとは思うが。


2021年11月6日「インフレトレードに急ブレーキ、欧米の利上げ観測が後退し、原油価格が急落」

 イングランド銀行は4日、金融政策委員会(MPC)で政策金利を0.1%で据え置くことを7対2で決定した。成長減速への懸念をインフレ高進見通しより重視した格好に。

 イングランド銀行のベイリー総裁は、政策発表後の記者会見で、市場予想について明確に言及し、「インフレ率を将来的に目標以下に押し下げる公算が大きいであろう規模の利上げ予想に対しては警告する」と述べた(5日付ブルームバーグ)。

 ベイリー総裁は先月、インフレリスクの高まりに対し躊躇なく利上げすると発言していた。英国の9月の消費者物価指数は前年同月比3.1%の上昇と、8月の3.2%上昇から伸びは鈍化していたものの、高止まりとなっており、市場では今回のMPCでの利上げ観測が強まっていた。

 3日にFRBがテーパリングを決定した際、パウエル議長が現在は利上げに適した時期とは考えていないと繰り返していた。

 3日にはECBのラガルド総裁も来年利上げする可能性は非常に低いとの認識を表明していた。これらを受けてイングランド銀行の利上げについて不透明感が強まった。

 それぞれ自国の経済や物価動向をみながら金融政策を決定しているものの、当然ながら中銀同士で連絡も取り合っており、現在の物価の情勢についても議論しているとみられる。結果として利上げについてはFRBとECB、そしてイングランド銀行は歩調を合わせた格好となった。

 イングランド銀行は景気が想定通りに推移すれば「向こう数カ月」で利上げが必要になると表明し、12月に利上げをするとの見方も強いが、こちらも不透明感は払拭できない。

 イングランド銀行が利上げを見送ったことから、英国債を含め欧州の国債は総じて買い戻され、米10年債利回りも前日の1.60%から一時1.50%に低下した。

 さらに4日は原油先物価格が大きく動いていた。

 OPECプラスはこの日、閣僚級会合を開催し、12月以降の生産方針について協議。日米などの大幅増産要請には応じないとの観測から、WTI先物は一時83.42ドルまで上昇した(3日の引けは80.86ドル)。

 ところが、サウジアラビア国営テレビが同国の産油量について、12月に新型コロナ流行以来初めて日量1000万バレルを超える見通しと報じられた。それに加え、米国が戦略石油備蓄を放出するとの観測が強まったことで原油先物は急反落となり、WTI先物12月限の引けは2.05ドル安の78.81ドルとなった。

 この原油価格の急落は物価の上昇にブレーキを掛ける可能性もある。大きく相場が動いたとなればそこがいったん転換点となることもありうる。

 物価上昇と金利上昇を見込んだインフレトレードはひとまずブレーキが掛かった格好となった。


2021年11月5日「FRB流の正常化のやり方」

 米連邦準備理事会(FRB)は3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、米国債などの資産を購入する量的緩和縮小(テーパリング)を11月から始めると決めた(4日付日本経済新聞)。

 事前に広報活動(?)を行っていたこともあり、これはまさに予想通りの結果となった。

 FRBは2020年3月に量的緩和を再開し、米国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を同400億ドル購入している。これを11月から購入月額を米国債100億ドル、MBS50億ドルの計150億ドルずつ減らしていく。

 FOMCの声明では「毎月同様に縮小することが適切と判断しているが、経済情勢の変化により調整する用意がある」とした。順調に減額が進めば、8か月で購入額はゼロになり、2022年6月でテーパリングは終了する。

 市場が注目する利上げについてパウエル議長は、現在は利上げに適した時期とは考えていない、労働市場の一段の回復を目にしたいからだと述べていた。利上げをしないとは言っておらず、利上げに適した時期ではないとしている。これはつまり、いまはテーパリングを優先し、その終了後に利上げに向けて準備を進めるということを示唆したものといえる。

 これは今回、前回の正常化に向けたロードマップをなぞっているためとみている。前回、テーパリングは2013年12月のFOMCで決定、その後8回のFOMCを経て2014年10月にテーパリングは終了。その後、利上げ(正常化)を決定したのは、2015年12月のFOMCにおいてであった。

 ただし、前回に比べ、正常化のスピードはアップしているように思われる。9月のFOMCでは参加者18人のうちの半数の9人が22年の利上げを見込んでいた。

 今回のFOMCの声明において、インフレの認識を「従来の一時的な要因を広く反映」から「一時的と見込まれる要因を広く反映」に微修正した。一時的とのタームを少し長めにしたようにも見受けられるが、物価上昇は来年に掛けても続く可能性があり、それも前回の正常化よりもペースを速める理由となりそうである。


2021年11月3日「大手証券会社に「相場操縦」疑惑で強制捜査、個人投資家には“氷山の一角”とみえるワケ」

 市場において相場を意識的、人為的に変動させ、その相場をあたかも自然の需給によって形成されたものであるかのように装い、他人を誤認させ、その相場の変動を利用して自己の利益を図ろうとする行為は「相場操縦取引」と呼ばれ、日本では金融商品取引法で禁止されている。

 大手証券会社の社員が株価を操作したとされる疑惑が2日浮上したと日経新聞が報じた。

 証券取引等監視委員会は立会時間外での売買を巡り、SMBC日興証券社内で市場の公正を害する取引が繰り返されたとみて強制調査、社員らは「不正取引の認識はなかった」と説明している(3日付日本経済新聞)。

 今回、相場操縦が疑われたのは「ブロックオファー」と呼ばれる取引である。上場企業の大株主やオイルマネーなどの大株主が、その保有株を手放す際などに証券会社が株式を引き取り、時間外の相対取引を通じて特定の投資家に転売する取引となる。

 株価への影響を最小限に抑えられる利点があり、証券会社を通じて日常的に行われている。似たような取引である「立会外分売」との違いは、取引所外であり、特定の顧客にしか知らされないことなどがある。売却先の投資家は証券会社が募り、買い取り額と売却額の差額が証券会社の利益になる。

 買い取り額と投資家への売却額は一般的に同種の取引を持ち掛けられた日の終値を基準に算定することが多い。ブロックオファーの取引は公開されていないものの、市場の噂といったかたちで大口売却の情報が広がり、その結果、ブロックオファーの対象銘柄の株価が下落する恐れがある。

 今回、SMBC日興の社員らは相対で決まるブロックオファーの買い取り額が下がらないように、市場で対象銘柄の買い支えを図ったのではないかとされている。

 今年1月に米国で、SNS(交流サイト)「レディット」のチャットルーム「WallStreetBets」などで個人投資家に米ビデオゲーム販売、ゲームストップ株の購入を促す呼び掛けが広がり、同株が急騰したことが問題視されたことがある。

 こういったこともあり、株式市場における相場操縦は日常的に行われていると思う人も多いようだが、大昔に仕手戦など仕掛けられていた時代とは異なり、現在はかなり規制強化されている。

 金商法では、市場の公平性を阻害する最も重大な違反行為と規定されている。法定刑は10年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金または併科。法人を罰する両罰規定もある(3日付日本経済新聞)。

 それでも2018年に証券取引等監視委員会が、日本国債の先物取引で相場操縦をしていたとして、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対し2億1837万円の課徴金納付を命じるよう金融庁に勧告した事例などもあった。この際には実際には成約させる意思がないにもかかわらず大量の売りと買いの注文を出す「見せ玉」と呼ぶ手口で不正に価格を操作した疑いが掛かっていた。

 私の債券ディーラー時代もこういった見せ玉は日常茶飯事であった。その後、規制は強化されているものの、見せ玉を含めた相場操縦と疑わしき行為は現在も行われている可能性は否定できない。このため、個人投資家にとって今回の相場操縦の疑いも氷山の一角とみられているのかもしれない。

 相場の世界にあっては勝つか負けるかの世界でもあるため、価格そのものが変な動きをするだけで疑惑も出てしまうこともあろう。思惑的な動きであったものが多いとは思うが、今回のように作為的な動きが事実であるならば当然ながら罰せられるものとなろう。


2021年11月3日「債券先物オプションの刻み変更で売買高は増加」

 次期デリバティブ売買システム(J-GATE3.0)が9月21日に稼働した。この稼働に合わせて、大阪取引所及び東京商品取引所の取引制度の見直しが行われた。債券市場絡みでは、債券先物オプションの権利行使価格の刻みが変更された。

 債券先物オプション取引の権利行使価格の刻みについて、それまでの「50銭刻み」から「25銭刻み」に変更された。

 債券先物の値幅は限られ、水準も151円台から152円台の非常に狭いレンジ内で動いており、50銭刻みの権利行使価格の刻みでは商いそのものも限られてしまう。これが25銭刻みとなればよりオプション取引の取引機会も増えることは確かであろう。

 では実際に「50銭刻み」から「25銭刻み」に変更されてどうなったのか。

 大阪取引所のデータによると、長期国債先物オプションの月間取引高は9月が12434枚、10月が18306枚となり、明らかに増加していた。

 さらに50銭刻みの売買高は、9月が11055枚、10月が9957枚となっていたのに対し、25銭刻みの売買高は9月の1379枚から10月は8349枚となっており、25銭刻みにしたことで売買高が増加したことがわかる。

 債券先物に絡んだ制度変更は過去何回かあった。長期先物だけでなく、中期や超長期の先物、さらにミニ長期国債先物など新設されるなどしたが、なかなか取引高が伸びることはなかった。

 今回の制度変更はオプションの刻み幅の変更ではあったものの、うまく機能した制度変更となった。


2021年11月2日「予想以上の物価の高止まりにより、欧米の中央銀行は利上げを模索する動きに」

 29日に発表された米国のコアPCEデフレーターは前年同月比で4か連続で3.6%の上昇となった。個人消費支出のうち、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアPCEデフレーターはFRBの物価目標となっている。

 29日に発表された10月のユーロ圏消費者物価指数速報値は前年比4.1%の上昇となり、13年ぶりの高い伸びを記録した。

 ECBのラガルド総裁は28日の理事会後の記者会見で、来年には物価圧力は緩和するとの考えを表明したものの、来年に2回の利上げを実施するとの市場の観測を強く否定することはなかった。

 これを受けて、29日の欧州の国債はイタリアなど周辺国を主体に大きく売られた。これに対して29日の米債は月末要因もあってか買われていた。

 急激な物価上昇は一時的と各国の中央銀行関係者が発言していたが、ここにきて欧米の物価は高止まりが続いている。一時的というタームが次第に長くなりつつあるようにも思われる。

 原油を含めたエネルギー価格の上昇は止まる気配はない。WTI先物のチャートからは100ドルも視野に入りつつある。29日のWTI先物12月限は83.57ドルとなっていた。

 今週は2日から3日にかけてFOMCが開催される。ここでのテーパリングの開始決定はほぼ織り込み済み。市場は利上げの時期を探ろうとしているが、パウエル議長はこのタイミングでは言質を与えることはしないのではないかとみられる。それでも来年の利上げについては強固に否定するようなこともないとみられる。

 そして、注目すべきは3日、4日に開催されるイングランド銀行のMPCとなる。こちらは利上げが検討されると予想されている。イングランド銀行が利上げとなればECBも、との連想が働きやすくなろう


2021年11月1日「今後の日本の消費者物価指数への原油価格や円安による影響も無視できず」

 22日に9月の全国消費者物価指数が発表された。日銀の物価目標となっている生鮮食品を除く総合指数は前年同月比でプラス0.1%となり、1年6か月ぶりに上昇に転じた。原油価格の上昇を背景にガソリンや灯油などが値上がりし、「Go To トラベル」の反動で宿泊料が上昇して全体を押し上げた。下落要因としては通信料(携帯電話)が大きく、消費者物価を1%程度押し下げる要因となっていた。

 これに対して9月の企業物価指数は前年同月比6.3%上昇していた。欧米の物価指数と比較して企業物価指数の上昇幅は納得できるが、消費者物価の前年比上昇率は低すぎる。

 それでも今後、日本の消費者物価指数の前年比が次第に上昇してくることが予想される。その原動力となりそうなのが、原油高と円安である。

 WTIの原油先物価格は100ドルを目指すような動きとなっているが、前回100ドルを超えたのは2014年であった。

 日本の消費者物価指数(除く生鮮)も2014年4月に前年比プラス1.5%まで上昇した。これには原油価格の上昇も寄与していた。また、急激な円安も輸入物価の押し上げ要因となった。

 2013年4月末でWTI先物は92ドル台、ドル円は97円台となっていた。これに対し1年後の2014年4月はWTI各は102ドル台、ドル円は102円台となっていた。

 原油先物については高止まりといったところだが、円安が進んでいたことは確かである。ここに2014年4月からの消費増税に向けた駆け込み需要なども物価を押し上げたと思われる。

 それ以前に消費者物価指数(除く生鮮)が前年比で2%を超えて推移した時期がある。2008年7月と8月で、そのときの前年同月比はプラス2.3%となっていた。

 1年前の2007年7月末ではWTI先物は74ドル台、ドル円は119円台。そして2008年7月末のWTI先物は133ドル台、ドル円は108円台となっていた。

 この際にドル円は下落していたものの、原油価格の急騰が物価を引き上げたといえる。

 当然ながら原油価格と円安だけが物価上昇要因ではないが、消費者物価へのインパクトは大きい。

 昨年10月末のWTI先物は35ドル台、ドル円は104円台。10月26日現在でのWTI先物は83ドル台、ドル円は113円台となっていた。

 原油価格とドル円の前年比からみると、消費者物価指数はもう少し上昇してもおかしくはない。携帯電話料金が1%程度の引き下げ要因となっているとすれば、それがなかったとすれば少なくともすでに1%台にあり、2%が見えてきていたともいえるのではなかろうか 。それでもまだ日本の消費者物価指数は低すぎるようにみえるのだが。携帯電話料金引き下げによる影響は来年3月まで続く。


2021年11月1日「日銀の金融政策の正常化に向けたロードマップが必要に」

 28日の日銀の金融政策決定会合では長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)を賛成8反対1で、資産買入れ方針を全員一致で決定した。

 現在の日銀の金融政策の操作対象は短期金利と長期金利となっている。短期金利は日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用。長期金利は10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行うとしている。

 そして、日銀行、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続 するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の 実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続するとしている。

 すでに量的・質的緩和を2013年4月に決定してから8年もの年月が経過している。その間、異次元緩和と呼ばれたものを拡大するなりしてきたが、いっこうに物価目標は達成できていない。

 ここにきて企業物価は前年比6.3%もの上昇となっているが消費者物価指数は前年比0.1%の上昇でしかない。これは日本の消費者物価指数は金融政策で動かすことが困難であったというよりも、グローバルスタンダードとされた2%という数字そのものにも問題があったことも考えられる。

 その2%の物価目標に縛られるあまり、現在の日銀は身動きが取りづらくなっている。特にここにきて世界的な物価の上昇を受け、各国の中央銀行が正常化に向けた動きを取り始めている。そんななかにあって、日銀は身動きが取れない。そのため円安が進行しやすくなるなどの弊害も出始めている。

 日銀の金融政策にとって必要なのは、2%の物価目標や政府の共同文書などに縛られることなく柔軟な対応となる。現時点ではすぐに柔軟性を取り戻すのは難しいかもしれないが、それが必要になりつつある。

 首相が岸田氏に変わったことで、これまでのしがらみから脱するチャンスともいえる。ただし、日銀総裁が変わらないと難しい面もあり、次の日銀総裁はそれを探ることになろう。

 金融政策は物価を操作するのではなく、それを金融市場を通じて環境を作ることが本来の目的である。しかも、経済・物価の情勢変化に応じて柔軟な対応が求められる。そのためには物価目標に縛られることなく、さらには非常時対応のマイナス金利政策そのものを平時の大胆な緩和環を形成するゼロ金利政策に戻す必要がある。

 さらに本来は市場で形成される長期金利に対するコントロールも柔軟にする必要がある。経済や物価などファンダメンタルズに即し、国債需給や海外金利などにも反応するなど市場での金利形成メカニズムを元に戻さなければ、債券市場そのものが機能不全になりかねない。市場参加者の市場の値動きに対する経験不足によって、大きな変動に耐えられなくなる恐れもある。

 これらが今後の日銀の課題となる。欧米を主体に世界的に金融政策の正常化が進むなか、トルコのように金融引き締めは悪のような対応をとり続けてしまうと、本来の金融政策に求められる機能そのものが失われてしまうことにもなりかねない。


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