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2026年7月4日「どうして長期金利が上昇しているのか」

 7月3日の日本の債券市場では、日本相互証券で10年新発国債(2日入札、383回、利率2.7% )の利回り(単利)が、2.810%を付けた。

 5月18、19、20日に10年国債の利回りは2.800%まで上昇していたが、ここを抜いてきた。正確にはそれを抜けて付けに来たといって良い動きか。

 10年国債の利回りが2.810%を付けてきたのは、1996年10月以来およそ30年ぶりの水準となる。

 1996年当時の10年国債の銘柄のなかで最も売買高が多かったものは指標銘柄と呼ばれていた。比較的発行額が多いものが市場で選ばれていた。

 現在では一銘柄あたりの発行額が巨額となったこともあり、新発債が当時の指標銘柄のような役割を担っている。そしてこの利回りが長期金利と呼ばれている。

 ここを突破したから何かが変わるのか。

 特に大きな変化はないとみられる。国債利回りの上昇トレンドは続いており、あくまでその過程にある。

 それではどうして日本の国債利回りが上昇しているのか。

 それには大きな要因が二つある。2022年4月から消費者物価指数(除く生鮮)の前年比が2%を超えてきた。すでにこのタイミングでデフレからインフレへと変わっていた。

 物価動向に合わせて金利が上昇。日銀も慎重ながら政策金利を引き上げて正常化に戻そうとしている。

 しかし、あまりに慎重すぎる面もあるところに、市場では日銀の金融政策が政府の意向に左右されやすくなるとの思惑が強まった。この場合の政府の意向とは、高市首相や城内経済財政担当相などのリフレ派の意向ということになる。

 ただし、これによって「ビハインド・ザ・カーブ」に陥るリスクが意識された。いや正確にはすでに「ビハインド・ザ・カーブ」に陥っているのに、さらに遅れるリスクが意識された。

 その分、物価上昇圧力が掛かるとともに、円安を招くことでこちらも輸入物価を通じて物価の上昇圧力となる。それが長期金利の上昇を促している。

 もうひとつ長期金利上昇要因がある。

 政府は6月30日にまとめた「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案のなかで前年には明記されていた「財政健全化」の文言も消えた。高市政権が掲げる積極財政に伴い、財政規律が悪化するとの懸念も増した。

 表面上の赤字国債のカレンダーベースの発行額をみえなくさせても、消費税減税を含めた財政拡大は当然財源が必要となる。結果として財政は悪化する。

 少なくともこの大きなふたつの懸念材料が払拭されない限り、長期金利には上昇圧力が掛かり続けることになる。

 加えて、米国とイランによる軍事衝突とそれによるホルムズ海峡の閉鎖をきっかけに物価には上昇圧力が掛かっている。

 原油先物価格そのものは、WTI原油先物で6月初めに100ドル近くに上昇していたものが、ここにきて70ドル割れとなっている。

 イラン産原油なども流通する可能性もあり、原油価格そのものは落ち着いても、一時期の混乱による影響は後を引く可能性がある。

 これを受けて、FRBのスタンスが今後は利上げに向いていることも気掛かり材料となる。こちらは円安ドル高要因ともなる。

 そのほかにも要因はあり、日本の10年債利回りについてはいずれ3%を超えてくると予想している。1994年代には5%近くまで上昇していたこともあり、4%や5%に上昇したとしても何らおかしくはない。

 念の為、1994年の消費者物価指数(除く生鮮)は年で前年比0.8%の上昇、年度で0.6%の上昇に過ぎなかった。2025年は年で3.1%、年度で2.7%の上昇となっていた。物価の数値だけで見る限り、1994年からさらに2%程度上乗せされてもおかしくはない。こんな状況下でさらに物価上昇、財政拡大を促す政策を進めることそのものが非常に危険であろう。


2026年7月3日「ドル円は最終防衛ラインを突破」

ドル円は最終防衛ラインを突破

 ドル円は162円台に上昇し、2024年7月に付けた161円96銭の「防衛ライン」を突破した。

 ここがどうして最終防衛ラインなのかといえば、前回162円を付けていたのは1987年あたりであった。

 1985年のプラザ合意の時点でドル円は240円だったが、その、わずか1年半後の1987年春には150円台まで下落しており、ルーブル合意があった時代の水準となったためである。

 つまり、次のチャート上の目途は170円、200円といった大台を除くとプラザ合意の時点の240円あたりとなる。当時の様子を確認してみたい。

 ニクソン・ショック

 1969年1月に成立したニクソン政権は大幅な財政拡大政策を取り、連邦予算は1969年の30億ドルの黒字から、1971年には230億ドルの赤字を出すまでに膨張した。

 1971年春には猛烈な投機により外国中央銀行にはドルが溢れ、アメリカの金準備は大量に外国に流出した。  その年の8月15日、リチャード・ニクソン大統領は、テレビとラジオで全米に向けて声明を発表した。主な要点は、税と歳出削減、雇用促進策、価格政策の発動、金ドル交換停止、10%の輸入課徴金の導入などであった。

 この中で特に注目されたのが「金とドルの交換停止」。これによって第二次大戦後の通貨の枠組みであったブレトン・ウッズ体制が崩壊し、為替市場は新たな展開を迎えた。

 これにより人類の歴史上、長く続いた金を中心とした貴金属と通貨の関係が完全に切り離され、通貨は通貨間の相対価値が基準になるという現在に続く変動相場制へと移行することになる。このニクソン大統領による声明は世界に大きなショックを与え、ニクソン・ショックやドル・ショックと呼ばれた。

 スミソニアン合意

 ニクソン・ショックの同年12月に、ワシントンのスミソニアン博物館で開かれた10か国蔵相会議では、ニクソン大統領が発表した米国の新経済政策をうけて、通貨に関するいくつかの措置が合意された。これがスミソニアン合意である。

 ドルを切り下げ、為替の変動幅を従来の上下1%から暫定的に2.25%に拡大された。円レートは16.88%切り上げられて308円に変更された。

 しかし、スミソニアン体制でも為替相場は安定せず、ドル売りは止まらず、さらに1973年には第4次中東戦争の勃発による原油価格の急騰によるいわゆるオイル・ショックによるインフレ圧力も追い討ちをかける格好となった。

 米国や英国の国際収支は改善されず、英国をはじめ各国がスミソニアン体制を放棄したことにより、1973年に主要先進国は変動相場制に移行し、スミソニアン体制はわずか2年で崩壊となった。

キングストン合意

 1975年にジャマイカのキングストンでIMFの暫定委員会が開かれ、通貨制度の改革が協議された。1976年に、変動相場制の正式承認を含むIMF協定の第2次改正が決定した。

 これにより加盟国はどのような為替制度をとることも自由となり、正式に変動相場制への移行することになった。これにより金の廃貨も正式に決まった。この制度は1978年4月1日に発効となり、これをキングストン合意と呼ぶ。

プラザ合意

 1985年9月ニューヨークのプラザホテルで秘密裏に開かれた。

 G5と呼ばれた国(日本、米国、英国、フランス、西ドイツ)の蔵相会議において、米国の貿易赤字と財政赤字の「双子の赤字」問題による対外不均衡を、先進各国は為替相場の調整でこれを是正することとし、ドルを引き下げる方向で合意した。

 いわゆるプラザ合意である。プラザ合意前の為替市場においては、1ドルは242円近辺であったが、プラザ合意後の11月末には202円近辺まで円高ドル安が進行した。

ルーブル合意

 プラザ合意後、ドル安はさらに進み円相場は1987年2月には1ドル140円に到達した。

 1987年2月にパリのルーブル宮殿で先進7カ国蔵相・中央銀行総裁会議(G7)が開催され、今度はプラザ合意後の行き過ぎたドル安にストップをかけることが検討された。

 日本の内需拡大や米国の財政赤字圧縮などが合意され、為替相場についても、当面の水準に安定させる旨の声明を発表し、これはルーブル合意と呼ばれた。しかし、市場では、日米の協調介入があったにもかかわらず、円高ドル安の流れは続くことになった。

 こういった時代の水準にもどってきたわけだが、すでに国際決済銀行(BIS)によると通貨としての総合的な実力を示す「実質実効為替レート」でみると今年3月時点で統計が始まった56年前の水準を下回っていた。

 統計が始まった56年前というのは1970年となる。つまり、1ドル360円の固定相場制の時代(1971年まで続いた)となる。

 200円や240円も通過点となり、360円に戻る可能性すらありうるのか。

 私が小学校時代のなぞなぞに「ハンドルはいくら?」というものがあった。その答えは1ドル360円の半分の180円だった。まさかそんな時代に戻りつつあるというのか。


2026年7月2日「高市政権の政策は円安と物価上昇、金利上昇の引き金に」

 ドル円は2024年7月に付けた161円96銭の「防衛ライン」を突破した。

 木原稔官房長官は30日の閣議後会見で、足元で進む円安について「必要に応じ、いつでも適切に対応していく」と語ったが、いまのところ適切な対応はみえない。

 米国のベッセント財務長官とどのようなやり取りを行っていたのかは当事者以外にわからない。

 ただし、このタイミングで介入を行っても効果は一時的となり、むしろヘッジファンドなどの仕掛のタイミングにされてしまうことぐらいは、ソロスファンドで百戦錬磨のベッセント氏はわかっているはずである。

 ドル円が「防衛ライン」を突破したが、今度は円債も目先の防衛ラインがみえてきた。

 債券先物は中心限月が異なることなどから、過去の水準そのものと照らし合わせることに意味はないとの見方はあるかもしれない。

 それでも中心限月で見る限り、目先の底値は日中ベース(ナイトセッション除く)で6月22、23日の127円46銭、5月18日の127円40銭となる。

 ざっと手元のデータをみたところ、これらの水準を下回ると1997年9月16日の127円37銭以来のものとなる。

 10年国債の利回りは5月18、19、20日に一時2.800%と1996年10月以来およそ29年6か月ぶりの水準に上昇していた。

 債券先物もあらためて当時の水準に近くなり、さらなる下値模索の展開が予想される。

 政府が7月に策定する経済財政運営の指針「骨太方針」に経済成長の実現に向け「適切な金融政策運営が行われることも非常に重要だ」と明記する方針を固めたことが27日分かったと報じられた。

 これらも今後の日銀の追加利上げに対する牽制球ともいえる。

 高市政権が進める予算編成改革の絵姿が見えてきた。危機管理や成長についての投資は予算要求の上限を撤廃する「積極財政」の面を色濃く打ち出した。

 首相は4月の成長戦略会議で「リミッターを外して必要な施策をやり抜く」と語っていた。

 物価対策に最も効果的とされる日銀の利上げを封印させ、物価上昇を促すことになるリミッターを外した積極財政を進める。

 これが何を引き起こすのか。

 日銀はすでにビハイドザカーブに陥っていると私はみているが、日銀のインフレへの政策対応が後手に回るとの懸念がさらに強まりかねない。

 財政政策は表面上は赤字国債を増発しなくても費用が掛かれば当然、その分の財政負担が必要となる。

 予想以上の税収とかで賄えればそれほど問題とはならないかもしれないが、消費税減税分だけで2年10兆円はどこから賄うのか。

 むろんそれだけではない。リミッターなき政策が目白押しともなりかねない。

 すでに外為市場では円安が進行している。

 ドル高との見方もあろうが、やっとドル円の実力が今後、はっきりと示されることも予想される。ドル円が200円や300円になっても何らおかしくはない。

 国際決済銀行(BIS)によると通貨としての総合的な実力を示す「実質実効為替レート」でみると今年3月時点で統計が始まった56年前の水準を下回っていた。

 統計が始まった56年前というのは1970年となる。つまり、1ドル360円の固定相場制の時代となる。

 円安はさらなる物価上昇(火力増加)を招くが、財政政策でそれに油を注ぎ、消防車(日銀)の出動に対してはブレーキを掛けている状態にある。

 百歩譲って積極財政が必要なほど日本のファンタメンタルズが悪化しているというのであれば、景気回復が優先との見方も出るかもしれない。

 7月1日に発表された6月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感が5四半期連続で改善しているのだが。


2026年7月1日「政府がすべきことは積極財政ではなく物価対策なのでは」

 高市早苗政権が進める予算編成改革の絵姿が見えてきた。危機管理や成長についての投資は予算要求の上限を撤廃する「積極財政」の面を色濃く打ち出した(29日付日本経済新聞)。

 首相は4月の成長戦略会議で「リミッターを外して必要な施策をやり抜く」と語っていた。

 リミッターを外すというのは、危機管理や成長向けの予算である「新たな投資枠」については各省庁からの概算要求では上限を設けないことを示す。要求段階では事実上の青天井となる。

 「責任ある積極財政」の「積極財政」部分を推し進めようとしている。「責任ある」の部分は年度途中で赤字国債を増発しないようにするといったことを想定しているようである。

 ただし、現実に数兆円単位の予算が必要となれば、表面上は赤字国債の増発はなくてもその分、財政そのものは悪化することは確かである。それが見える数値で示されなければむしろ、潜在的なリスクを強める格好となりかねない。

 この「責任ある積極財政」の命名者は城内実経済財政政策担当大臣だとか。

 「今回の利上げにつき説明責任を果たすとともに、過度な景気変 動が生じた場合には主体的かつ適切な対応が重要である。今後 の成長型経済への変化が重要であり、マクロの需給動向と物価 の関係の慎重な確認が必要である」

 これは6月16日の金融政策決定会合で利上げを決定した際の、内閣府による意見である。この日の内閣府からの出席者は城内実経済財政政策担当大臣であり、内閣府というより城内大臣の意向が強く反映されたもので、追加利上げへの牽制球といえる。

 政府が7月に策定する経済財政運営の指針「骨太方針」に、経済成長の実現に向け「適切な金融政策運営が行われることも非常に重要だ」と明記する方針を固めたことが27日分かったと報じられた。

 これらも今後の日銀の追加利上げに対する牽制球ともいえる。

 そもそも現在の経済実態で積極財政は必要なのか。しかも政府主導で経済を活性化できる保証はあるのか。

 ここでの財政拡大はインフレへの圧力ともなりかねない。加えて日銀の正常化に政府が釘を刺すようなことをすれば日米の金利の方向性の違い等も意識されて、さらに物価上昇圧力ともなる円安を招きかねない。

 すでにドル円は162円台を付けてきた。

 介入警戒もあろうが、そもそも政府が財政悪化、日銀の正常化を牽制している以上、円安圧力はさらに強まりかねない。

 結果として物価上昇圧力を強めることとなる。いま政府に求められているのは積極財政よりもインフレにブレーキを掛けることではないのか。


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