. 若き知
2019年1月24日「米中の貿易協議に過度な期待も禁物か」

 英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は22日、米中両政府が月末に開く閣僚級の貿易協議をめぐり、トランプ米政権が予備協議の開催を拒否したと伝えた。中国は次官級を今週米国に派遣し、閣僚協議に向けた準備会合の開催を提案していた。技術移転の強要など中国の構造問題で意見が対立していることが背景にあるという(日経新聞電子版)。

 これに対して米国家経済会議(NEC)のクドロー委員長は22日、CNBCとのインタビューで、今月末のワシントンでの劉鶴副首相との会合が「非常に重要」であり、「決定的」なものになるだろうと発言した。

 これによりクドロー委員長は貿易準備会合が中止されたとの報道を否定した格好ながら、協議の難しさも示したような格好となった。

 ちなみに米国家経済会議(NEC)のクドロー委員長は、ムニューシン財務長官などと同様に、中国との関係も対話を進めることで解決への糸口を探ろうとしている、いわゆる穏健派である。ただし、トランプ政権内にあっては少数派とされる。

 技術移転の強要など中国の構造問題で意見が対立していることは確かとみられ、これはトランプ政権内での強行派とされるロス商務長官やライトハイザーUSTR代表などが、強硬姿勢を見せているためではなかろうか。

 トランプ大統領は株式市場への影響も意識して、中国との対話を進める姿勢は見せているものの、中国側が余程妥協しない限り、関税などを巡り強硬姿勢を崩すことも考えづらい。

 中国政府は米国に対して6年間かけて輸入を増やす計画を提案したとされる。しかし、1月30〜31日に閣僚級協議では、貿易不均衡の是正だけでなく、中国の知的財産侵害や不適切な産業補助金など構造問題についても中国側に対応を求めるとみられ、今回のトランプ米政権が予備協議の開催を拒否との報道も、中国側に対するプレッシャーの一環ではないかとも推測される。

 米中が3月1日までに合意できなければ、米国は2千億ドル分の中国製品に対する関税の税率を10%から25%に引き上げる予定となっている。もし関税引き上げが実施されるとなれば、米中の貿易摩擦がさらに強まることが予想され、結果として世界経済の減速傾向を強めることになろう。これは米国株式市場ではリスク要因となる。米株の大幅な下落もトランプ大統領は嫌がっているようだが、中国への強硬姿勢を崩さない限り、市場でのリスクが後退するようなこともないとみられる。


2019年1月23日「日銀は物価の見通しを下方修正する模様」

 16日にロイターは、「複数の関係筋によると、日銀は22、23日に開く金融政策決定会合で、原油価格の下落などを踏まえて2019、20年度の消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)見通しの下方修正を議論する」と伝えた。ブルームバーグや産経新聞も同様の記事を報じていた。

 1月23日の決定会合後に日銀は、経済・物価情勢の展望、いわゆる「展望リポート」を公表する。昨年10月の前回の同リポートでは、コアCPIの前年比上昇率(政策委員の大勢見通し)の消費税率引き上げの影響を除くケースで2019年度が1.4%、2020年度が1.5%となっていた。

 念のため、直近のコアCPIについて確認してみると、2018年度は4月が前年比0.7%、5月が同0.7%、6月が同0.8%、7月が同0.8%、8月が同0.9%、9月が同1.0%、10月が同1.0%、11月が同0.9%、12月が同0.7%となっていた。

 ここにきてのトレンドも前年比の上昇幅が減少傾向となっている。その要因としては、日銀の買い入れる資産の量が減っているから、ではなく原油価格の下落がある。前回リポート時にWTI先物は1バレル70ドル程度だったが、足元で50ドル台となっている。消費者物価指数は日銀の資産買入の量とかではなく、マイナス金利でもなく、原油価格の動向や為替の動向に影響を受けやすい。

 日銀内では、2019年度の物価見通しについて1.4%を下回る、1%前半への下振れの可能性を指摘する見方が出ている(ロイター)。

 現実を見据えるのであれば、せいぜい1%あたりではないかとも思われる。2%という物価目標に固執するあまり、どうしても上振れの数字が出やすいような気がする。

 2020年度についても、原油を含めて2019年度の一時的な下押し要因が剥落するものの、米中貿易摩擦などを背景に世界経済は、緩やかな減速が見込まれることで、若干の下方修正の必要性が議論されるもようだ(ロイター)。

 2019年度に実施される予定の幼児教育の無償化に伴って、内閣府によると同年度の消費者物価を0.3ポイント押し下げるという試算結果が出ているそうだが、政府が物価上昇の足を引っ張る格好となっているようである。

 そもそも論として物価目標2%に無理があったことを日銀としては認めることも必要ではなかろうか。物価を2%まで金融政策だけによって引き上げるという考え方に間違いがあったことを素直に認め、現実に即した目標に修正し、景気や物価動向、さらには金融市場動向に応じた柔軟な政策となるよう修正すべきだと思われる。


2019年1月22日「金融政策はあくまで環境作り、能動的に物価や雇用は動かせない」

 1998年4月に施行された日銀法の第2条に「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする」とある。日銀の金融政策決定会合での決定に基づいて行われる金融政策の目的は「物価の安定」となる。

 目的は物価の安定となるが、そのための政策手段は金融市場を通じて行われる。物価が下がったからといって、日銀が直接モノを購入して価格を吊り上げるといったことはしていない。「家計や企業などが物価水準の変動に煩わされることなく、経済活動にかかる意思決定を行うことができる状況」が物価の安定であり、言い換えれば「通貨価値の安定」とも言える。

 通貨価値の上げ下げ、つまり物価における過度なインフレーションやデフレーションは、安定した経済成長にとっての阻害要因となる。金利はお金の価値を示すひとつの尺度となる。この金利を操作することによって、通貨価値を安定させ、物価に働きかけて、安定した経済活動を促すというのが、金融政策の大きな目的となる。

 大胆な金融緩和で物価を「能動的」に上げるという政策には無理がある。中央銀行の金融政策は直接物価を上げたり、下げたりすることが目的ではない。あくまでそれに働きかける環境作りが目的となる。政策金利の上げ下げだけで、それに応じて物価が動くほど経済は単純ではない。

 米国の中央銀行であるFRBの使命(目的)はデュアル・マンデートと呼ばれ、物価の安定(stable prices)と雇用の最大化(maximum employment)となっている。デュアル・マンデートがFRBの使命となったのは、1977年の連邦準備改正法の成立によるものだが、その源流には1946年の雇用法があるとされている。

 このため、日銀も雇用の回復も目的に上げるべきとの意見もある。しかし、物価と同様に金融政策によって雇用に直接働きかけができるわけではない。そもそも金融市場を通じてどのようにして雇用に働きかけができるというのか。

 あくまで金融政策は景気の悪化や過熱を緩和させる程度の効果でしかなく、絶対的な政策ではない。それが結局、日銀の異次元緩和によってあらためて明らかとなった。


2019年1月21日「米政府機関閉鎖の解決の糸口が見えず」

 2018年12月22日から続く米国連邦政府機関の一部閉鎖は、1月20日で30日目に入った。これまでの連邦政府機関閉鎖の最長はクリントン政権時の21日間で、今回は最長期間を更新し続けている。

 米国での予算が成立しないことによる政府機関の閉鎖は過去何度か起きていた。直近では2013年10月にオバマ前政権の医療保険制度改革法(オバマケア)向け支出を巡り、ねじれ状態となっている米国議会で次年度予算が成立せず、与野党の対立が解けないまま、およそ18年ぶりとなる政府機関の一部が閉鎖される事態が発生した。

 この際の16日に及ぶ米政府機関の一部閉鎖による経済への影響については、第4四半期の成長率に対し0.2%から0.8%の影響が及ぶとの予測数値が金融機関などから出ていたが、実際にはそれほどの影響はなかったとの見方もあった。

 とはいえ、今回の政府機関の閉鎖の継続にあたって、全く影響が出ないということも当然ながら考えにくい。長引けば長引くほどそれによる影響が拡大する恐れがある。ひとつの例として、各地の空港でセキュリティーチェックを受ける乗客の列が日に日に長くなっていることが挙げられている。

 トランプ大統領としては、公約でもあった壁の建設に固執せざるを得ない面もあろうし、それが2020年の大統領選挙の行方にも影響してくるのではとの危惧もあるかもしれない。しかし、メキシコとの国境の壁建設予算をめぐってのトランプ大統領と民主党の対立は妥協点を見いだすのが困難とみられる。

 トランプ大統領は19日にホワイトハウスで演説し、過去最長となっている政府機関の一部閉鎖を解消するため、移民規制を緩和する代わりに、メキシコ国境での壁建設予算57億ドルを野党・民主党に認めるよう求める妥協案を示した(読売新聞)。しかし、民主党は難色を示し、閉鎖は継続されている。

 英国のEU離脱の行方についても不透明が強いが、米国の壁問題も解決の糸口が見いだせない。トランプ大統領と民主党のどちらも妥協しないとなれば、最終的には大統領選挙も睨んだ世論が解決策を導くかもしれない。しかし、それにも時間が掛かることは確かである。

 いまのところ米中の貿易交渉などが市場では大きく材料視されていることで、政府機関の一部閉鎖による影響はそれほど材料視されていないように思われる。しかし、これにより少しずつリスクが増幅されているようにも思われるため、今後の市場の動向にも注意が必要となろう。


2019年1月18日「英国のEU離脱問題で英国債はどちらに向かうのか」

 英国の議会下院は日本時間16日早朝に欧州連合(EU)と合意したEU離脱案を採決し、投票結果は賛成202票、反対432票となり、政府の離脱案は歴史的大差で否決された。野党労働党のコービン党首はメイ政権に対して内閣不信任案を提出したが、こちらも否決された。メイ首相は、期間が限られるなかあらためて合意なき離脱に向けた道筋を探ることになる。

 英国がどのようなかたちでEUを離脱するのか。3月29日の離脱期日までに議会での承認を得られるのか、それとも離脱期日の延期を探るのか、場合によると合意なき離脱となってしまう可能性もありうる。

 このような英国のEU離脱を巡る不透明感が強まるなか、英国債は果たしてどのような動きを示すのか。

 EU離脱案は否決されるであろうとみられていた15日の英国の10年債利回りは1.25%と前日の1.29%から低下していた。実際に否決されたことを確認しての16日の英国の10年債利回りは1.31%と前日の1.25%から今度は上昇していた。

 市場では合意なき離脱の可能性が後退したことで、外為市場ではポンドが買い戻されていた。このポンド高によって16日のロンドン株式市場は輸出関連株主体に下落していた。16日には同時に英国債も売られた格好ながら、動きはややチグハグにみえる。

 英国債そのものは米国やドイツなどの国債と同様に信用度は高い。このため、自国のリスクが増大しても、リスク回避の動きにより買われやすい。この動きは日本国債も同様にあった。英国そのものの信用が大きく毀損されない限り、英国債は基本的にはリスク時に買われやすいものといえる。また、同様の理由から米国債の動きに連動しやすい面もある。

 とはいえ、一時的にせよ英国売りが生じた際には状況が変わる可能性はある。1992年のヘッジファンドが大量のポンド売りマルク買いを仕掛けた、いわゆるポンド危機の際には、イングランド銀行は日中に当時の政策金利であった公定歩合を2度引き上げるなどの対抗手段を取っていた。当時のような状況に陥る可能性は低いとみられるものの、状況次第では英国債が一時的に大きく売られるという事態もないとは限らない。


2019年1月17日「毎月勤労統計の不適切調査問題で、日本の統計への信頼が揺らぐ事態に」

 厚生労働省が賃金や労働時間を示す毎月勤労統計調査で不適切な調査を続けていたことが発覚した(16日付日経新聞)。

 厚生労働省の毎月勤労統計調査で賃金上昇率が高めに出ている問題はすでに昨年夏あたりにエコノミストなどから指摘されていた。

 9月29日付けの西日本新聞によると、「1月に統計の作成手法を変更した影響で数値が高めに出ていることや、公式統計値より実勢に近い「参考値」を十分に周知できていない現状を踏まえ、公表資料の拡充や発表手法の改善を検討する。公式統計値の補整はしない方向。有識者らが公的統計の在り方を検討する政府の統計委員会(委員長・西村清彦政策研究大学院大学特別教授)に同日報告、了承された。」とある。

 ところが、その後も同統計の正確性を疑問視する声が根強かったため、総務省は独自の分析作業を継続。調査対象としている事業所の従業員規模ごとの数値を精査したところ、500人以上の大規模な事業所群で不自然な数値の上振れが見つかり、同12月10日に厚労省側に照会した。厚労省側は同13日、統計委の西村清彦委員長(政策研究大学院大学特別教授)も交えた非公式会合で、東京都の500人以上の事業所で抽出調査をしていたと「告白」した(1月15日付西日本新聞)。

 毎月勤労統計調査では、500人未満の事業所については対象事業所を厚生労働省がサンプリング(抽出)して実施しているが、500人以上の事業所は「全数」調査することになっていた。しかし「実は、全数調査じゃない」ことが判明した。  「東京都で調査対象となる約1400のうち、3分の1しか調べていなかった。中小企業に比べれば賃金の高い大企業が抜けていたため、04〜17年は実際よりも統計結果の賃金が低くなっていた。(日経新聞)」

 厚労省が本来の調査方法に近づけるための数値補正を昨年1月に始め、事業所数が少ない前年の数値とそのまま比較した同月以降の賃金上昇率が過大になっていたと考えられる(西日本新聞)。

 つまり、2018年分から本来の結果に近づける加工を施したことになる。これは国が発表する統計への信頼が揺らぐ事態といえよう。さらにこの統計は雇用保険や労災保険の給付額計算の根拠となっていたことから、雇用保険などの差額をさかのぼって支給することによる追加の支給額に加え、その事務にかかる費用なども含め全体の費用は合わせて795億円に上るとされている。また、GDP統計などにも影響が及ぶ可能性がある。

 これは氷山の一角なのか。「実は、全数調査じゃない」との厚生労働省からの説明を受けて、元日銀の副総裁でもある西村清彦教授が「重大なルール違反だ」と批判したことが、今回の問題発覚に至ったとされている。日本の統計の信頼が大きく揺らぐ前に、西村教授が進めている抜本的な公的統計改革を行う必要があろう。

 西村教授は今回の件に関するNHKのインタビューで、「政府の統計調査全体に対する信頼が落ちることを最も心配している。統計調査は政策の基本だから、きちんとした調査をしないかぎり、きちんとした政策はできない」と指摘している。


2019年1月16日「英議会はEU離脱案を否決、金融市場への影響は」

 英議会下院は日本時間16日早朝に欧州連合(EU)と合意したEU離脱案を採決、投票結果は賛成202票、反対432票となり、政府の離脱案は歴史的大差で否決された。労働党のコービン党首はメイ政権に対して内閣不信任案を提出すると表明したが、こちらも否決されるとみられる。

 これにより英政局の混迷がさらに深まることになるものの、最悪の事態となりうる合意なき離脱については、以前に比べて可能性は後退しているとみなされているようである。それでは今回の英国議会で離脱案が否決された場合に、3月29日とされている離脱期日までにどのような手段が残されているのであろうか。

 ここにきての複数の世論調査で、残留を求める声が離脱論よりも多くなってきていることから、2度目の国民投票を求める声が強まっている。しかし、3月末までに国民投票を行うにはスケジュール的に無理がある。離脱期日の延期についても、よほどの事態とならない限りはEU側が認めないと思われる。

 しかしながら、混乱を避けるために多少ながらEU側が譲歩するかたちで、議会での2回目の採決に向かう可能性も指摘されている。英国がEU予算を分担することで単一市場へのアクセスを保てる欧州経済領域(EEA)加盟という手段の可能性もありうるか。しかし、これも英国議会が承認するかとなれば疑問は残る。

 いずれにしても英国市場は比較的冷静となっている。英国債も多少買われたがそれほど大きな動きはない。ポンドも現状は比較的しっかりしている。また欧州市場や米国市場も同様で、今回の英議会でのEU離脱案の否決は織り込み済みか。今後はメイ首相の次の一手に注目が集まるのできないか。ただし、合意なき離脱の可能性が強まることになれば、金融市場ではリスク回避の動きを強める可能性はある。


2019年1月15日「昨年末の株式市場の調整のきっかけは何であったのか」

 米国株式市場を中心とした昨年末の株価の調整局面は何がきっかけであったのか。今年の市場の行方を見るためにも確認してみたい。

 今回の米株を中心とした下げの要因として指摘されているのが、米中貿易摩擦問題などを発端とした米国を主体とした景気減速懸念であった。それを確認する上で、景気の動向に左右されやすい原油先物価格と米国経済を牽引していたハイテク株のなかからアップルの株価の動向をチャートから確認してみた。

 WTI原油先物とアップル株のチャートの変異点は両者ともに10月3日か4日あたりにあったことが窺える。当時の状況を確認してみると、10月3日にダウ平均は過去最高値を更新していたが、この日の26966ドルが現在のところ最高値となった。

 ダウ平均はアップルなどハイテク株などを主体に過去最高値を更新し続けていたが、その流れが止まったのが10月3日あたりといえる。そのタイミングで原油先物もピークアウトしていた。

 ドル円の動きを確認してみたところ、こちらも10月3日につけた114円台半ばをピークに下落していたが、ダウ平均や原油先物に比較すると下落ピッチは緩やかなものとなっていた。

 10月4日にピークアウトしていたものがもうひとつあった。米10年債利回り(米長期金利)である。この日に一時、3.23%と2011年5月以来の水準に上昇した。ただし、その後10月下旬に3.07%あたりまで低下したあと11月7日に再び3.23%に上昇していた。この背景にはFRBが利上げを継続するとの見方があったとみられる。米長期金利の上昇でドル円も底堅い動きとなっていた

 米長期金利も11月7日以降は下落トレンド入りする。ダウ平均やアップル株、原油先物、そして長期金利が揃って下落し、年末年始の波乱相場となった。このあと下落が止まり戻りを試すような展開となっている。

 もうひとつ別な指標も確認してみたい。上海株価指数である。こちらは2016年に大きく落ち込んだ後、じりじりと切り返していたが2018年に入ってからは低下トレンド入りしていた。

 中国を主体に景気減速懸念は出ていたものの、米中間選挙などもあった10月までは米株や米長期金利、そして原油先物は上昇傾向にあった。その流れが断ち切られたのが10月初旬となり、これは東京株式市場も同様であった。

 あくまでチャート上ではあるものの、10月以降の調整はトレンドの変化を伺わせるものとなり、ここから再び昨年10月の水準に戻ることは考えづらい。注意すべきは低下トレンドが継続している中国の株価指数かもしれない。こちらが回復基調とならない以上は、米中の通商交渉が多少なり改善したととても、米国株の戻りには限界があるように思われる。


2019年1月12日「2019年はQRコード決済、スマホ決済元年となりうるのか」

 昨年12月のQRコード決済「PayPay」の「100億円あげちゃうキャンペーン」が大きな話題となったが、ここにきてQRコード決済に関する新たな取り組みもいくつか始まっている。

 NHKのサイトでの特集「スマホ決済は地方を救う?」によるとスマホ決済は、地方では「活性化の切り札」として独自の広がりを見せているとして、その例として岐阜市のショッピングセンターにおける動きを報じていた。

 サイトで調べたところ、このショッピングセンターとは「マーサ21」というところのようである。去年10月から館内まるごとでスマホ決済を導入。100余りのテナントのほとんどでスマホ決済が可能となっているそうである。

 仕掛けたのは地方銀行の「大垣共立銀行」でQRコードによるスマホ決済アプリを展開するベンチャー企業「Origami」と業務提携し、このアプリの導入を一気に進めたそうである。

 銀行職員がお店に出向いて、スマホ決済アプリの登録方法や使い方などを伝授したとか。ショッピングセンターの運営会社も、タブレット端末を各テナントに無料で貸し出すなどキャッシュレス化を後押し。キャッシュレス化を導入したことで、客数が伸び、前の年と比べて館内全体の売り上げが10%ほど増加したとNHKは報じている。

 また、楽天は自社が運営する2つのスタジアム内での買い物について、現金での支払いの受け付けをやめスマートフォンなどで支払いをするキャッシュレス決済を原則とすることになったと、こちらもNHKが報じた。

 利用できるのはクレジットカードのほか、楽天が事業化している電子マネーとQRコード決済。スタジアム内のおよそ150の店舗すべてに専用端末を置くほか、100人を超える観客席の売り子にも端末を用意するとか。

 中国のキャッシュレス化を推し進めたQRコード決済も当初は乱立していたものが、「WeChat Pay」「Alipay」に絞られたように、日本でも多くのQRコード決済が出てきているが、いずれ使い勝手のようものに集約されていくのであろうか。

 今年は日本でのQRコード決済元年というかスマホ決済元年になるかもしれない。しかし、日本はキャッシュレス化が遅れているわけではない。既存のキャッシュレスの仕組みのなかでどれだけQRコード決済が組み込めるかが試されることになるのではなかろうか。

 中国のキャッシュレス化はパソコン利用の普及が進むのが遅れた分、スマホの普及が進み、スマホでのネット利用が爆発的に普及したことも要因とされている。

 日本ではネットといえばパソコン利用が先行しており、個人的な見方かもしれないが、スマホのアプリでのゲームなど以外の現金などの利用はやや躊躇されているのではなかろうか。このあたりの認識が変われば、金銭取引などでもスマホ利用が多くなってくるのかもしれない。


2019年1月11日「ドル円は再び105円割れの可能性も」

 米連邦準備理事会(FRB)は9日、2018年12月18日〜19日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公表した。参加者の多くが株価下落を懸念して「インフレ圧力も落ち着いており、追加の政策判断を様子見できる」と表明していた(日経新聞電子版)。

 12月20日の米国株式市場は、FOMC後の声明で緩やかな利上げを続ける姿勢を維持したことなどから下落していたが、議事要旨にあったニュアンスが含まれていれば、市場はそれを好感していた可能性がある。パウエル議長はもう少し市場のセンチメントを意識していれば、反応は異なっていたはずである。ただし、これはトランプ大統領の利上げ批判に対抗する為に意識的に行ったとの見方もあったようである。

 それはさておき、FOMC議事要旨の内容からは、先行きの景気不安が拭えなければ、2015年末に始まった利上げサイクルを打ち切る可能性もにじませるものとなっている(日経新聞電子版)。

 このあたりは市場と共通認識であるように思われる。今年に入り、金融市場ではFRBの利上げ継続は難しいとの認識もあらためて強まり、1月3日に米10年債利回りは2.55%に低下していた。

 日本時間の3日の朝7時半過ぎに開いていたシドニー市場の時間帯にドル円が急落し、一時104台まで急落した。

 米10年債利回りと急激な円高の背景にはアップルショックがあったが、これも世界的な景気減速を意識させるものであり、それによる米利上げ観測の後退による動きとも捉えることができる。

 米10年債利回りの低下も年始ということで参加者の薄いところに米債が買い上げられた面もあったかもしれない。ドル円の104円台もいわゆるアルゴリズム取引とも呼ばれているコンピューターシステムを使ったプログラム売買やロスカットにより、動きが加速された面もあろう。

 しかし今回のように一時的なエラーのような動きで付けた水準は、トレンドに変化が生じない限りは、あらためてひとつの目処ともなる。つまり再度つけてくる可能性は高いのではなかろうか。

 米10年債利回りの2.55%とドル円の104円台をいずれ付けにくる可能性が高いとなれば、日本の10年債利回りが再度マイナスとなる可能性も意識され、そして、東京株式市場にとってはマイナス要因ともなりうるのではなかろうか。


2019年1月10日「今年の米国の金融政策を決めるメンバー達」

 米国の金融政策を決定するFOMCでは、7名の理事と5名の地区連銀総裁の計12名が投票権を持っている。このうち理事とニューヨーク地区連銀総裁は常任メンバーとなり、投票権を持つ地区連銀総裁の4名は毎年入れ替わる。

 2019年となりこのメンバーが入れ替わる。現在の議長はジェローム・パウエル氏。副議長はリチャード・クラリダ氏(金融政策担当副議長)とランダル・クオールズ氏(銀行監督担当副議長)。

 理事は議長と二人の副議長に加え、ラエル・ブレイナード氏、ミシェル・ボウマン氏の二人の女性が理事に就任している。指名されていた元FRBエコノミストのネリー・リャン氏は理事の就任を辞退したと伝えられた。同様に2017年11月にFRB理事に指名されたマービン・グッドフレンド氏についても就任に向けたプロセスは滞っているとブルームバーグが伝えている。いまのところ理事は2つ空席となっている。

 常任メンバーであるところのニューヨーク連銀のジョン・ウィリアムズ総裁(前サンフランシスコ連銀総裁)に加え、クリーブランド連銀のロレッタ・メスター総裁、リッチモンド連銀のトーマス・バーキン総裁、サンフランシスコ連銀のメアリー・デイリー総裁、そしてアトランタ連銀のラファエル・ボスティック総裁が加わる。

 それぞれハト派、タカ派といった区別もされているが、金融政策の行方については、パウエル議長が先導し、クラリダ副議長や副議長的な立場とされるニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁がそれを補佐するような形になると思われる。

 ハト派とタカ派の勢力図というよりも、利上げが継続できる環境にあるのかどうかに掛かっているといるのではなかろうか。12月に開催されたFOMCの議事要旨によると、多くの参加者が、追加利上げを我慢強く判断できると表明するなど、利上げ見送りの姿勢も示している。今年のメンバーは若干替わるものの、このスタンスが継続されるとみている。そうなると年内は現状維持か、場合によっては1回程度の利上げがあるかどうかとなるのではなかろうか。利下げについてはさすがにないとみている。


2019年1月9日「リスク回避の動きが強まるなか、米国での今年の利上げはあるのか」

 FRBのパウエル議長は4日、全米の経済学者が集まった会合の講演において、「市場は中国経済を中心に世界景気の下振れを不安視している。金融政策はリスク管理だ。迅速かつ柔軟に政策を見直す用意がある」と述べた。

 3日の米国市場ではアップル製品の中華圏の販売低迷を受けて大幅安となり、ダウ平均は660ドルの下落となっていた。米10年債利回りは12月28日が2.72%、31日が2.69%、2日が2.62%、3日が2.55%と大きく低下しており。これは景気の後退を織り込み、リスク回避による米国債買いも示していたとみられる。

 このリスク回避の動きに対し、パウエル議長は自らの発言によって緩和させようとしたものとみられる。昨年12月のFOMCでの利上げは市場は織り込んでいたものの、今年の利上げペースも維持させるような発言に対して市場は疑念を抱いていた。このためパウエル議長は発言の修正を行ってきたともいえる。

 2016年の年初と同様に市場はやや景気減速に対して過敏になっている。たしかに原油価格が当時と同様に下落するなど景気減速の兆しが出ている。今回は中国など新興国だけでなく、世界経済を牽引してきた米国景気の減速懸念も出ている。このためアップルの業績などについて過敏になっているとみられる。現実に世界景気が減速傾向を示す可能性は高いとみている。

 その原因のひとつともなっているトランプ政権が、今後、頑なな姿勢を崩すことは考えづらい。さすがに自らの言動が株価に影響していることにも気がついたのか、過激な言動はいまのところ控えられているが、米中貿易摩擦が完全に解消するようなことも考えづらい。壁建設の問題も長引けば米国債への信認などにも影響を与えかねない。

 英国のEU離脱問題もある。日本では改元や来年のオリンピック開催など控えてお祭りムードも高まりそうだが、世界経済の減速傾向が顕在化すれば、日本経済にも影響を与えることになる。

 金融市場はここにきて目先はやや動揺は収まったかにみえるが、予断は許さない。FRBの金融政策については、これまでのロードマップに即したような政策から、パウエル議長の発言にもあったように柔軟な政策に移行すると予想される。このため景気の回復基調が再び顕著となり、金融市場でのリスク回避の動きが後退するのを見定めない限りは、今後のFRBの利上げは当面、停止される可能性がある。場合によると年内利上げが見送られることも予想される。


2019年1月8日「再び日本の長期金利がマイナスに、これでどのような効果が得られると言うのか」

 今年の金融市場は波乱の幕開けとなった。年末年始での米株やドル円の下落を受けて、大発会となった4日の東京株式市場は売りが先行し、日経平均は一時700円を超す下げとなった。

 世界的な景気減速懸念などから、年末年始に米債は買い進まれたことから、4日の日本の債券市場では10年債利回り(以下、長期金利)は一時マイナス0.050%に低下した。

 4日の米雇用統計で非農業雇用者数が予想を大きく上回った上に、FRBのパウエル議長が、正常化について大幅に変更することをためらわないと述べたことが好感されて、4日の米国株式市場は大幅に反発。米債はリスク回避の巻き戻しから売られた。

 7日の日本の債券市場も米債安から売りが先行したが、地合が大きく改善することは考えにくく、このまま長期金利のマイナス化が定着する恐れがある。

 FRBの利上げペースが後退というか、今年の利上げ見送りあたりまでは市場でもある程度は想定できていた。それがFRBのパウエル議長の発言で裏付けられた格好となった。それはつまり世界的な景気減速への懸念は引き続き強まっているということにもなる。

 米中の通商問題の行方も混沌としている。トランプ大統領そのものが市場でのリスク要因となっているが、壁の建設を巡っての民主党との対立も解決の糸口も見えていない。

 世界的な景気減速への懸念や米国を主体としたリスクの高まり、そのリスク回避による米債高や円高の動きは、日本の国債にとっては買い要因となる。さらに日銀のマイナス金利政策と長期金利コントロールによって、長期金利のある程度(マイナス0.2%?)あたりまでのマイナス化は容認される格好となり、これらの金利低下要因が長期金利のマイナスを深掘りさせる可能性も出てきている。

 この長期金利のマイナス化でいったい誰が喜ぶと言うか、得をするというのであろうか。しかも背景が景気後退を意識したリスク回避ということであれば、株式市場は下落傾向となり、円高が進行することにもなりかねない。これにより企業の借り入れ需要が後退する可能性がある。

 そもそも長期金利がマイナスとなっても貸出金利がマイナスになることは考えづらく、少なくとも企業や個人にとっての恩恵はなく、むしろ滞留している資金への利子が付かない、もしくは国債での運用時(個人向け国債は除く)ではマイナスとなってしまう事態ともなる。それは見えないところでの我々の損失とも言えよう。

 むろん長期金利のマイナス化によって助かっているところはある。それが大きな債務を抱えた国となる。財政悪化を見えにくくさせている。国債を大量に保有している日銀も評価上は助かるかも知れないが、ここから株式市場が下落すると、保有するETFなどが評価上はマイナスとなる可能性もある。

 マイナス金利政策とはいったい何であったのか。それを行っても、いっこうに物価は上がってこないどころか、日銀は物価の予想を下方修正するとの観測も出ている。マイナス金利政策により負担を負っているのは我々である。それによる効果は出てこないのであれば、マイナス金利政策そのものを止めてしかるべきではないか。しかし、リスク回避の動きを強めるような状況下、それも困難になりつつあることも確かである。


2019年1月5日「アップルショックによる急激な円高と株安は一時的なものなのか」

 日本では正月三が日で休みの3日の朝7時半過ぎ、開いていたシドニー市場の時間帯にドル円が急落し、一時104台まで急落した。1時間前には109円台をつけていた。このタイミングで何かしらの材料が出ていたわけではない。薄商いのなか値段だけが大きく飛んでいた。105円割れを付けた後は急速に値を戻して107円台まで回復した。

 新年明けで東京市場は休場となっているなか参加者が極端に薄いところに、いわゆるアルゴリズム取引とも呼ばれているコンピューターシステムを使ったプログラム売買により動きが加速されたとみられる。

 さらに円高に振れやすいという地合も影響していた。そのひとつの要因として米長期金利の低下がある。世界的な景気減速の懸念やFRBの利上げ停止観測などもあり、米長期金利は28日が2.72%、31日が2.69%、2日が2.62%と低下していた。ドル円はこの米長期金利の動向に影響を受けやすい。

 そして世界経済の減速を示すような発表があったことも、不安心理を増長させた。アップルが2日に発表した2018年10〜12月期の売上高の見通しにおいて、当初見通しから大きくに引き下げたのである。この要因として売上高の2割を占める中国を中心にスマートフォンの販売が不振だったことが挙げられていた。

 中国の景気そのものの減速に加え、その要因ともなっている米中貿易摩擦による影響も大きかったとみられる。アップルのクックCEOは「中国経済は2018年後半から明確に減速し始めている。貿易摩擦がそれに拍車をかけている」と述べていた(3日付日経新聞)。

 新型iPhoneの売り上げ不振が、米中貿易摩擦なども影響としての世界経済の減速の兆候とも捉えられ、懸念を強めさせた。それに米長期金利の低下も加わり、ドル円の下落が起き、プログラム売買やストップロスを巻き込んでのドル円の急落となったとみられる。

 3日の米国株式市場でダウ平均は660ドル安、ナスダックも202ポイントの下落となった。年明け4日の東京株式市場も大きく下落してのスタートとなった。ただし、ドル円はひとまず107円台で落ち着いた雨後はとなり、その後108円台を回復した。4日のニューヨーク株式市場は好調な雇用統計や利上げの一時停止を示唆した格好のパウエルFRB議長の発言を好感し、ダウ平均は746ドル高となり、3日の下げをカバーした格好となっている。しかし、経験則から言えば、エラーのように見えても、ドル円はいったんつけた104円台をいずれ再度試しにくる可能性は高いとみている。


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