. 若き知
2021年9月25日「自民党総裁選と日銀の出口戦略」

 自民党総裁選9月17日に告示された。岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、河野太郎規制改革担当相、野田聖子幹事長代行の4名での争いとなった。29日が投開票となる。

 総裁選の行方については不透明である。通常の選挙と違って投票率が100%に近い。そのなかでいろいろな思惑が重なり合うことで、結果を見えにくくさせている。

 最大の争点はコロナ対策とされるが、ここにきて新型コロナウイルスの感染者が急減している。これで感染拡大が止まるとは断言できず、第六波が来るとの予想もある。しかし、戦前のスペイン風邪などと同様にいずれ終息するであろうことも確かではなかろうか。

 コロナ対策というよりも、コロナ禍後の経済財政運営なども実は議論が必要と思われるが、やや先走り過ぎと捉えられるか。

 他の争点として外交・安全保障や原発を含めたエネルギー政策などについても論戦が繰り広げられている。しかし、元々自民党内でのことであり、それほど意見に隔たりがあるようには思えない。

 個人的に注目しているのは日銀への対応である。こちらには温度差が感じられる。問題となるのは、日銀との距離感であろう。

 アベノミクスと呼ばれた安倍政権による経済政策については、いわゆるリフレ派と呼ばれる人達の意見を組み入れたものである。内閣官房参与や日銀の政策委員にも安倍政権や菅政権はリフレ派を任命している。

 しかし、結果としてリフレ派の主張した2%の物価目標は異次元緩和でも達成されていない。それだけでなく、2%の物価目標にとらわれるあまり、日銀の金融政策の自由度を奪った格好となっている。

 FRBやECB、イングランド銀行が正常化に向けて舵をとりつつあるなか、日銀は大胆な金融緩和政策からの出口に向けた修正がしづらい状況にある。

 このように日銀の金融政策の縛りを少しでも緩められる政策を打てる自民党総裁が出てくるのかを注目している。

 安倍元首相が推している高市早苗前総務相もいわゆるリフレ派であり、2%の物価目標が達成できるまでプライマリーバランス目標は凍結すると主張している。日銀がダメなら財政という発想ではあるが、もし高市が勝てばリフレ的な政策を一段と進めてくることが予想される。

 しかし、ほかの3氏が勝利すると、これまでの安倍政権から菅政権にかけてのリフレ的な思想が後退してくる可能性がある。それによっては日銀への対応が変化してくる可能性もあるかもしれない。脱コロナ禍となれば、当然ながら日銀の緩和政策の出口政策も必要になってくるはずである。


2021年9月25日「金融政策の正常化に乗り遅れるな?」

 22日のFOMC後のパウエル議長の会見で、11月にも資産購入縮小を開始し、2022年半ばまでにそのプロセスを完了させる可能性を示唆した。公表された金利予測分布図(ドット・プロット)では、当局者の18人のうちの半数の9人が2022年の利上げを見込んでいることが示され、6月時点の7人から増加した。

 英国のイングランド銀行は23日のMPCにおいて、政策金利を過去最低の水準となる0.1%で据え置くとともに、量的緩和の規模を維持することを決めた。年末時点のインフレ率が4%を超え、目標の2%を大きく上回る見通しで、金利上昇の根拠が「強まったもよう」という見解を示した。資産買い入れ枠維持については、ラムスデン副総裁とソーンダーズ委員の2人が国債買い入れ枠の縮小を主張した。

ノルウェー中央銀行は23日、政策金利をこれまでのゼロから0.25%に引き上げると発表した。オルセン総裁は声明文で「経済の正常化は、政策金利の漸進的な正常化を始めることが適切だと示している」と指摘した。

 23日の米国債券市場では、米10年債利回りは1.43%と前日の1.30%から急上昇し、欧州の債券市場でもドイツの10年債利回りは-0.26%と前日の-0.33%から上昇し、英国の10年債利回りは0.91%と前日の0.80%から急上昇した。

 中国恒大集団の債務問題への警戒感がひとまず和らぎ、リスク回避の巻き戻しの動きが強まったようで、23日の米国株式市場ではダウ平均は506ドル高、ナスダックは155ポイントの上昇となり、原油先物も大きく買われた。

 米債もリスク回避の巻き戻しの動きではあったかもしれないが、ノルウェー中央銀行の利上げやイングランド銀行のMPCの動向から早期の利上げもありうるとの見方、さらにはFRBも想定より早く来年の利上げの可能性などが意識されての米債売りであった可能性がある。

 つまり、ノルウェー中央銀行のオルセン総裁の発言にあったように、経済の正常化によって、金融政策の正常化を始めることが適切だとの認識が強まった可能性がある。

 ちなみに24日に発表された8月の全国消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合で前年同月比で0.0%となった。12か月ぶりに下げ止まった格好ながら、日銀の物価目標2%にはかなりの距離がある。現在の日銀の金融政策の枠組みでは、とてもじゃないが正常化に転身するのは無理、という状況が続いている。


2021年9月23日「大阪取引所に上場した原油先物取引への期待」

 日本取引所グループ(JPX)傘下の大阪取引所(OSE)で21日、米指標原油などに連動する指数の先物取引が新たに上場した。

 新たに上場したのは「CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)原油等指数先物」である。

 これはCMEグループの中核をなすニューヨーク・マーカンタイル取引所市場において取引されている3つのエネルギー先物(WTI先物(原油)、RBOB先物(ガソリン)、ULSD先物(ヒーティングオイル))から構成される指数であるCME原油等指数を対象とする先物取引となる(日本取引所グループのサイトより)。

 日本取引所グループのサイトによると、世界の原油価格の代表的な指標であるWTI先物価格が主要な構成要素であり、同先物に近い値動きをする。2020年8月から2021年8月末までのWTI先物価格とCME原油等指数の値動きの相関係数は0.99以上となっている。

 つまり、原油価格の動向を見る上でのベンチマークとなっているWTI先物にほぼ連動する先物が、東京時間で、しかも大阪取引所で売買ができることになる。

 ちなみにWTI原油先物とは、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で取引されているWTI(West Texas Intermediate)という米国の代表的な原油の先物商品のことである。

 21日に新たに上場したCME原油等指数先物の売買高は439枚。「初日で400枚を超えるとは想定していなかった。上出来だと思う」とOSEの岩永守幸社長は語った(22日付日本経済新聞)。

 原油価格は日米などでは物価にも影響を与える。また、原油価格の動向によって欧米市場ではエネルギー関連株などにも影響を与える。また、今回の中国の恒大ショックによってリスク回避の動きが強まったが、その際には原油先物価格にも影響を与え、原油先物は大きく下落していた。

 株や債券だけでなく原油先物もリスク回避などで動きをみせるとなれば、ヘッジ手段としてだけでなく、投資先として活用できる。分散投資というよりも、あらたな投資手段として活用が可能になるのではなかろうか。

 岩永社長からは参加者の裾野がまだ広がっていないとの指摘もあったようだが、原油価格の動向については関心も高いとみられ、円建てで取引できる上、指数先物であり現金決済型のため現物の受渡しリスクがない。このため、個人を含めてむしろ参入しやすいデリバティブ商品ではないかと思われる。


2021年9月22日「市場を揺るがす中国の恒大集団の問題とは何か」

 20日の欧米市場ではリスク回避のような動きとなり、株価は下落し国債は買われた。このきっかけとされたのが、中国の不動産開発大手、恒大集団(Evergrande Group)が、巨額の債務を抱えて経営破綻の瀬戸際に追い込まれているとの観測からである。

 ただし、突発的に経営破綻の話が出てきたわけではない。21日、22日のFOMCを控え、テーパリング観測も出ていることで神経質ともなっていた。そして、米国株式市場ではここにきてやや調整局面ともなり、上値が重くなっていた。ダウ平均の日足チャートをみても下に抜ける懸念があり、恒大集団の経営破綻の懸念でアジア株が下落し、欧州市場も動揺を見せたことで、米国市場も大幅な下落となったとみられる。

 そのきっかけとなった中国の不動産開発大手、恒大集団であるが、何が問題となったのであろう。

 恒大集団とは中国国内での最大級の民間複合企業である。280以上の都市で事業を展開し、20万人の直接雇用と380万人の間接雇用を創出しているとされる(20日付けAFPBB News)。

 中核は不動産業だが、近年は多角化を進めサッカークラブの広州FCの運営母体でもある。ミネラルウオーターや食品の販売も手掛け、観光業、インターネット関連サービス、保険、ヘルスケアにも投資し、テーマパークも建設しているとか。

 恒大集団は中国国内の不動産バブルを追い風に買収を積極的に行ってきたが、9月に入ってから、負債総額が1兆9700億元(約33兆5000億円)に膨れ上がり、デフォルト(債務不履行)に陥るリスクがあると警告した。

 異業種進出が次第に足かせとなっていたところに、コロナ禍が不動産業界を直撃、そして最も影響があったとみられるのが、習近平政権の動きであったように思われる。

 中国はコロナ禍によって経済格差がますます拡大し、カネ余り現象が大都市圏の不動産価格の高騰を生んでいた。このため、中国政府は昨年、「三道紅線(3本のレッドライン)」政策によって、不動産開発業界への締め付けを決定した。今年1月からは、住宅ローンや不動産企業への融資に総量規制を設けるなど規制を強化させたのである。

 恒大は資金繰りが回らなくなり、大きな負債を抱えていたところ、大型マンション開発プロジェクトやテーマパークの工事がストップする事態となった。請負業者に対し、現金ではなく未完のマンションで支払い始めたともされた。

 8月10日に恒大は資産売却計画を発表したが、いざとなれば資産を売れることを示し、市場の不安を払拭しようとしたが、むしろ不安を煽ったような格好となった。

 8月17日には、グループの総帥として君臨してきた許家印董事長が辞職。19日に恒大集団は、中国人民銀行、中国銀行保険監督管理委員会との面談を受け入れた。それでも恒大関連株の株価は下落し続けた。

 中国恒大が抱える3000億ドル(約33兆円)もの債務履行を巡る不安が市場を揺るがしたのである。

 中国住宅都市農村建設省は先週、中国恒大の主要債権金融機関に対し、同社が20日に融資の利払いを行えない見通しだと伝えた。

 中国恒大の発行済みドル建て債13本のうち1本は、世界で最も広く取引されている銘柄の一つとされる。

 ただし、海外投資家への影響は限られたものとなりそうである。あくまで中国国内での影響が極めて大きい。それでもそれが中国国内の金融危機を誘発すると海外市場、つまり欧米や日本の市場にもインパクトを与えかねない。

 これには中国政府がどのように対応するのかが最大の注目点となる。大きすぎて潰せないとするのか、それとも、のし上がってきた民間企業に対しては冷めた対応をしてくるのか。アリババなどへの中国政府の対応をみると、後者になる可能性もないとはいえないかもしれない。


2021年9月18日「日経平均株価が31年ぶりの高値を付けた理由」

 9月14日の東京株式市場では、前日比222円73銭高の3万0670円10銭となり、2月につけた年初来高値を上回り、1990年8月以来約31年ぶりの高値をつけた。

 日経平均株価の推移をみると、8月20日あたりまでやや下降トレンドを描いていた。しかし、8月23日あたりから上昇トレンドに変わり、8月31日から上昇ピッチが加速するような格好となった。

 この間の米国株式市場は上値の重い展開となっており、例えば米国のダウ平均と日経平均の日足チャートを見比べると全く違ったものとなっていた。これはドル円と日経平均のチャートを比べても同様であった。

 これをどのように解釈すべきであろうか。東京株式市場は比較的、米国株式市場やドル円の動きに影響を受けやすかったはずである。しかし、ここにきてはその関連性が薄れている。つまり、東京株式市場は米国株式市場やドル円とは別な要因で動いているということが言える。

 今回の東京株式市場の上昇については、欧米の株価に比較し、割安感があり、それが修正されてきたとの見方がある。欧米の株価指数先物を売って日経平均先物を買うといった手口が入っていた可能性は確かにあったかもしれない。しかし、むしろ単独で日経平均先物を買い進めたような動きに見えた。

 新型コロナウイルスの感染が減少傾向にあることが材料視されたとの見方もあるが、後講釈のように思える。

 最も材料として考えられるのは、菅首相の辞任表明によるものではないかと思われる。トレンドが変化した8月20日から23日の間には横浜市長選挙があった。このあたりから菅首相を取り巻く様相が変化しつつあった。

 上昇ピッチが加速した8月31日には、 菅首相が9月中にも自民党役員人事を行い、二階幹事長ら幹部を交代させる方針を固めたと報じられていた。これを受けて菅首相が孤立しかねないとみて、株式市場で買い仕掛けが入ったとは考えられないだろうか。

 菅首相が辞任を表明したのが9月3日、そこからさらに日経平均は上昇基調を強めたが、その前にすでにトレンドは形成されていた。

 菅内閣の支持率は低迷し、菅首相では衆院選では自民党が敗北する可能性が強まった。政局の不透明感が強まりかねない。ところが菅首相が辞任し、あらためて自民党総裁選となればあらたな首相が誕生することで、少なくとも最悪の状況からは脱出できる。これにより閉塞感を打ち破れるとの期待が出たのではなかろうか。首相に誰になろうと閉塞感は打ち破れる。大型の景気対策などへの期待も出よう。これは2012年末のアベノミクス登場時の相場状況とも似ていると思われる。


2021年9月17日「6月末の個人の金融資産額は過去最高に、国債残高では公的年金や海外が増加」

 日銀は9月17日に資金循環統計(2021年4〜6月期速報値)を発表した。これによると個人の金融資産は6月末時点で約1992兆円となり、過去最高を更新した。

 個人の金融資産の内訳は、現金・預金が前年比で4.0%増の約1072兆円。株式等は同30.0%増の約210兆円、投資信託は同28.7%増の約89兆円となっていた。前年同期に比べての株価の上昇も個人の金融資産の増加に寄与した格好に。

 この資金循環統計を基に国債(短期債除く)の保有者別の内訳を算出してみた。

 残高トップの日銀の国債保有残高は509兆386億円、48.2%のシェアとなった。前期比(速報値)からは3兆8151億円の増加となった。残高2位の保険・年金基金は248兆3398億円(23.5%)、927億円増。残高3位は預金取扱機関(都銀や地銀など)で124兆8947億円(11.8%)、5兆8323億円減。残高4位が海外投資家で76兆3776億円(7.2%)、4兆7200億円増。残高5位が公的年金の42兆7489億円(4.0%)、6兆2901億円増。残高6位が家計の13兆1312億円(1.2%)、1245億円減。その他が41兆8833億円(4.0%)、3兆1536億円増となっていた。

 2021年3月末に比べ国債(短期債除く)の残高は12兆1147億円増の1056兆4141億円となった。(こちらの国債残高は時価ベース)。

 3月末に比べて公的年金、そして海外と日銀が大きく残高を増加させたが、預金取扱機関、つまり銀行などが大きく残高を減らしていた。

 短期債を含めた国債全体の数字でみると6月末の残高は約1224兆円。このうち日銀が約540兆円で44.1%のシェアに。海外勢の残高は約162兆円と短期債を含めると国債全体の13.2%のシェアとなっていた。


2021年9月17日「現金はゴミなのか、分散投資にもリスクは存在する」

 米ヘッジファンド運営会社ブリッジウォーター・アソシエーツの創業者レイ・ダリオ氏は15日、CNBCに対し「まず知っておいてほしいのは、現金はゴミであり、資産を現金で持つなということだ」と語った(16日付ブルームバーグ)。

 現金はゴミなのか。ゴミという表現は極端だが、ダリオ氏が言いたかったのは、投資家は現金に頼りすぎないようにするべきだということであったようだ。つまり現金はそのままにするのではなく働かせるべきだと言いたいのであろう。

 現金を働かせるというのは、それをリスク資産に投じろということになる。リスク資産といってもそのリスクの大きさは投資先資産によって異なってくる。

 株式の運用、ダリオ氏が保有しているとする金への投資、さらにはビットコインなど暗号資産にいたるまで、現金ではなく分散して投資すべきとの主張であろう。

 特に現金保有が多い日本人にとってはこれは違和感があるかもしれない。それでも若い年代を中心ではビットコインへの投資も躊躇なく行っている人もいるようで、世代間によってのリスクの許容度は異なっているようである。

 注意すべきはこのリスクに対する認識である。その資産のリスクの度合いがわからなければ、その投資は当然すべきではない。そのリスクの大きさと自分の許容できるリスクの度合いを測りながら、投資をすべきである。

 分配投資をすればリスクが低減するわけでもない点に注意すべきである。それぞれの投資先資産のリスクの許容度を理解しなければ分散投資をしてもリスクの度合いは測れない。

 ダリオ氏は暗号資産(仮想通貨)ビットコインを保有しているとしながらも、同市場は政府に破壊される恐れがあると警告した。このようにそのリスクを認識しながら投資は行うべきである。

 そして分散投資の際にも、リスクがそれで軽減されることではない点にも注意すべきである。リスク資産である限り、あらたなリスクが加えられるという認識も必要ではなかろうか。

 このため、場合によっては自分でリスクの度合いが認識できるものに、リスク資産については集中投資するというのもひとつの手段ともなろう。その際にも現金比率や国債など安全資産への投資はゼロにすべきではないと思う。


2021年9月16日「米消費者物価指数を受けて米債は買われる」

14日に発表された8月の米消費者物価指数は食品とエネルギーを除いたコア指数で前年同月比4.0%の上昇となった。市場予想をやや下回ったことや、前月比での0.1%の上昇というのは2月以来の低い伸びとなったことで、14日の米債は買われた。しかし、物価水準そのものはまだ高い状態になっていることも確かである。

 コア指数は6月に4.5%と約30年ぶりの伸び率を記録したが、その後は2か月連続で上昇率を縮めている。全年に大きく落ち込んだ反動という側面もあり、6月の水準が維持、もしくはそれを上回る伸びとなることは考えづらく、ある意味想定の範囲内でもあったはず。

 FRBの物価の目安は2.0%であることを考えると依然としして高い位置にいる。FRBの物価の目安はPCEデフレーターではあるが、消費者物価の動向も当然ながら注視していよう。

 今回の8月の米消費者物価指数の前月比の伸びが低迷していようとも水準そのものからみて、FRBによる年内のテーパリング開始の可能性が後退したとは思えない。早ければ来週のFOMCでテーパリングが議論され、スタートする可能性もありうる。

 ただし、利上げについてはかなり慎重行うことも予想されており、こちらの見方にも変化はないはず。それでも米債が買われていたのは、米長期金利そのものが上がりづらいということを示したものかもしれない。

 前回のテーパリングの際も米長期金利は上昇するというよりも、落ち着いた動きを示していた。もしテーパリングが決定されると米債は売られるというよりも、噂で売って事実で買うといった動きをみせる可能性もありうるか。


2021年9月15日「大阪取引所におけるデリバティブ市場での制度変更にも注意」

 投資家や取引参加者をはじめとした市場利用者にとっての信頼性・利便性をより向上し、流動性の向上を図る観点から、次期デリバティブ売買システム(J-GATE3.0)が9月21日に稼働する。

 この稼働に合わせて、大阪取引所及び東京商品取引所の取引制度の見直しが行われるようである。

 まず、取引時間の拡大が実施される。大阪取引所に上場している長期国債先物(以下、債券先物)や日経平均先物などは現在、ナイトセッションで朝の5時半まで取引されているが、それが6時まで延長される。これによってニューヨーク市場は冬時間の場合、東京時間で朝6時まで開いていることでそれがカバーされることになる。

 ちなみにJ-GATE3.0への移行作業のため、9月17日のナイトセッションにおける取引は停止される。また、J-NET (立会外)取引がいつもよりも数分早く終了する。債券先物のJ-NETは通常、15時15までだがこれが、15時13頃までの前倒しとなる点にも注意する必要がある。

 株式関係では、指数オプション取引の日中立会開始も午前8時45分に前倒しされる(現在は午前9時)。

 ほかにもいくつか変更点があるが、債券市場絡みでは、債券先物オプションの権利行使価格の刻みが変更されることにも注意したい。

 債券先物オプション取引の権利行使価格の刻みについて、現在の「50銭刻み」から「25銭刻み」に変更される(こちらは21日の夕方に設定されて22日からとなる)。

 ここにきての債券先物の値幅は10銭に満たない日も多く、水準も151円台から152円台の非常に狭いレンジ内で動いており、50銭刻みの権利行使価格の刻みでは商いそのものも限られてしまう。これが25銭刻みとなればよりオプション取引の取引機会も増えることも確かであろう。

 また、新規設定や追加設定の権利行使価格の本数については、権利行使対象先物限月取引の清算値段に最も近接する権利行使価格を中心として「上下10種類ずつの合計21種類」から「上下20種類ずつの合計41種類」に変更される。

 日経平均オプション(Weeklyオプション)取引に係る権利行使価格の数の見直しも行われ、日経平均の最終の数値に最も近接する権利行使価格を中心として「上下8種類ずつの合計17種類」から「上下24種類ずつの合計49種類」に変更される。

 取引所では超長期国債先物取引における取引単位及び即時約定可能値幅の見直しについても検討されているようである。

 日本初の金融デリバティブ商品となった債券先物取引は、以前に比べて取引が閑散になったとはいえ、一定量の商いがある。これは海外投資家などによるトレードが入っているためと思われる。それに対して超長期国債先物の商いは、ない状態が続いている。

 日本の債券先物は1つの中心限月に商いが集中するという、ある意味、珍しい性質を持っている。これによって中期や超長期の先物が上場されてもなかなか取引が増加してこなかった。これが取引単位の見直しなどで少しでも参入者が増えるのかどうかも確認したいところか。

 今回のJ-GATE3.0の稼働によって債券先物などの商いそのものに大きな影響はないと思われる。しかし、今後はいずれ国債の価格が再び大きく動く日がやってこないとも限らない。そのための壁は厚いものがある。それでも日銀の金融政策に多少なり修正が入るなり、国債の信認に対し動揺が走るといった可能性は完全には否定もできない。いったん走り出すと止まらないのも相場であり、動きだした際にはこれらデリバティブの働きも大きくなる。このため、J-GATE3.0についても念の為、確認しておいた方が良いかと思われる。


2021年9月14日「米卸売物価は2010年11月以降で最大の伸びに、世界的にも物価の上昇圧力は継続」

 米労働省が10日に発表した8月の卸売物価指数は前年同月比8.3%上昇となった。前年比の伸び率は比較可能な2010年11月以降で最大の伸びとなった。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数も6.7%の上昇となった。

 日銀が13日に発表した8月の国内企業物価指数は前年同月比で5.5%上昇となった。前月比で横ばいだったが高止まりの状態が続いている。

 米国では食品価格が2.9%値上がりし全体を押し上げた格好だが、国内企業物価指数では木材・木製品や鉄鋼の寄与度が高かった。

 米国の物価指数は今年4月あたりから前年比が大きく伸びており、これが一時的なものとなるのかどうかが注目されているが、少なくとも現状は高止まりが継続している。FRBは高止まりが1年程度継続する可能性も示していた。

 13日のNHKニュースでは、大手ガラスメーカーの間では原材料や燃料価格の高止まりなどを背景に、来月から建築向けのガラス製品を値上げする動きが相次いでいると報じていた。

 最大手のAGCは国内の住宅やビルなどに使われるガラス製品の販売価格について、一般的な板ガラスと鏡を15%から20%、防火用の網入りの板ガラスなどを30%、断熱性能の高い複層ガラスなどを10%から20%、それぞれ来月1日の納品分から値上げする(13日付NHK)。

 また、いわゆるウッドショックと呼ばれた木材価格の急激な上昇は緩和されたが、国内では輸入製材に頼る日本国内の家具製造や住宅建設などの業界にその影響がまだ残っており、それが日銀の企業物価指数にも現れているようだ。

 米国でも需要拡大の一方で、物流の乱れや人手不足といった供給制約が依然解消されず、強い価格上昇圧力が続いている(10日付日経新聞)。

 国内の消費者物価指数は低迷が続いているものの、国内の企業物価指数は上昇している。世界的にも物価の上昇圧力は続いている。

 それに対し、日本の消費者物価指数が前年比でマイナスとなっているのは違和感がある。これは日本はデフレ圧力が強いためとか、デフレマインドが払拭されないためとの説明がなされているが、本当にそうであろうか。


2021年9月11日「日本のお札の偽札防止技術は世界最高水準、だから現金が使われる」

 2024年度から流通が始まる新しい1万円札の印刷が9月1日に始まった。新一万円札の肖像画には「近代日本経済の父」と呼ばれ、現在のNHKの大河ドラマの主人公でもある渋沢栄一が描かれている。

 そして、5千円札には津田塾大学の創始者である津田梅子、千円札には近代日本医学の父といわれる北里柴三郎が採用され、いずれも2024年度の上半期から流通する予定となっている。

 前回の1万円札の新札の発行は2004年11月にE号券と呼ばれる福澤諭吉の肖像画の第二弾であった。福澤諭吉の肖像画の第一弾となるD号券は1984年11月に発行が開始された。それ以前は聖徳太子が肖像画となっているものでC号券と呼ばれるものが1958年12月に発行されている。

 初代1万円札の聖徳太子の時期は26年となっていたが、福澤諭吉の肖像画の第一弾となるD号券からは20年おきに新札が発行されている。これは肖像などを彫り込む技術を次世代に継承させる必要があることや、あらたな偽造防止技術を組み入れるためとされている。

 8月に都内のコンビニエンスストアなどで聖徳太子の肖像画が描かれた偽の旧1万円札がおよそ50枚使われたという事件が起きた。これは聖徳太子の1万円札のほうが偽札が作りやすい面があったと思われる。

 2024年度から流通が始まる新1万円札の偽造防止のための最先端の技術とは、たとえば世界で初めてとなる最先端のホログラム技術がある。紙幣を斜めに傾けると肖像が立体的に動いて見える。

 紙の厚さを変えることによって表現する偽造防止技術、いわゆる「すかし」では、これまでのように肖像を映し出すだけではなく、紙の厚みを微細に変えて高精細なもようも施している。

 長らく親しんだお札がなくなるのは寂しい限りだが、偽札を防ぐためには致し方がない。この日本の偽札防止技術は世界最高水準を誇っている。

 これが日本でのお札への信用度を高めているともいえる。中国でのスマホ決済が広まった背景には、お札への信用度の低下、中国からの現金持ち出しに対する規制など使い勝手の悪さ、お札の汚れ等も影響している。これに対して日本では特に国内で使用する際には、特に不便は感じない。

 コロナ禍にあって他人が触れたお札を使うのをためらう人もいるかもしれないが、それでも使い勝手がよく、災害時にも使えるお札は今後も使われ続けることが予想される。

 もし日本国内でお札に取って変わるものが現れるとすれば、よほど使い勝手の良いもので、電気や電波が届かずとも一定時間は利用でき、セキュリティがしっかりしたものとならざるを得ないのではなかろうか。


2021年9月11日「ECBは正常化に向けて一歩進める」

9日のECB理事会では、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の購入ペースを10〜12月(第4四半期)に減速させることを決定した。

 ECBは第2、3四半期は月額約800億ユーロの購入を続けていた。ロイター通信によると、新たな購入目標は月額600億〜700億ユーロに設定されたとか。

 ラガルド総裁は会見で、購入減速について「テーパリングではない」と言明した。「PEPPを向こう3か月について微調整する」という決定だと説明した(10日付ブルームバーグ)。

 ECB理事会では、予想通りというか、ホルツマン・オーストリア中銀総裁が以前に第4四半期に縮小を開始する計画について9月8、9日の理事会で「確実に」討議されると語ったとおりとなった。

 ドイツやオーストリアなどの出身者、いわゆるタカ派と呼ばれる人達はECB内では少数派に属しているため、この発言についてどれほどの信頼性があるのかとの疑問はあった。しかし、「確実に」という表現があり、それによって減額の可能性が意識され、欧州の国債の利回りは上昇基調となっていた。

 ただし、ECBが購入減速を決定した10日の欧州の国債は総じて買い進まれた。ラガルド総裁の「テーパリングではない」との発言を鵜呑みにした訳ではないと思うものの、その発言に秘められた慎重な姿勢とともに、噂で売って事実で買うといった動きが出たものと思われる。

 ECBの今回の決定は、いくらラガルド総裁が「テーパリングではない」と言明しようが、正常化に向けた大きな一歩との見方は出来よう。今後はFRBやイングランド銀行も追随してくるとみられる。どこか取り残されそうなところもあるが。


2021年9月10日「イングランド銀行総裁は利上げの可能性を示す」

 英国の中央銀行であるイングランド銀行のベイリー総裁は8日、8月の金融政策委員会(MPC)で、利上げ検討に向けて最低条件が整ったと考えるメンバーと回復の力強さが十分ではないと考えるメンバーとで半々に分かれたと述べた(8日付ロイター)。

 8月8日から9日にかけて開催さけたMPCでは、政策金利を過去最低の0.1%に据え置くことを全会一致で決定した。量的緩和(QE)についても、英国債買い入れ枠8750億ポンドおよび投資適格社債買い入れ枠200億ポンドの総額8950億ポンドの資産買い入れ枠を維持することを決めたが、ソーンダーズ委員が減額を主張した。

 結果だけみると特に正常化に向けた動きは感じられなかったものの、実際には利上げ検討に向けて最低条件が整ったと考えるメンバーが半数程度いた模様(8月のMPCの出席者は8人、通常は9人)。

 何故、このタイミングでベイリー総裁はこのような発言をしたのであろうか。タイミングからは9日のECB理事会を意識したのかもしれない。

 9日のECB理事会では、新型コロナウイルス対応で実施している債券購入のペースの縮小を議論するとされていた(実際に緊急購入のペース減速を決定)。

 FRBのパウエル議長が量的緩和の縮小を年内に始める意向を示すなどしており、ECBやFRBが正常化に向けた動きを見せ始めている。これに対しイングランド銀行も同様の動きとなっていることを示したかったのではないかと思われる。

 ただし、FRBやECBは利上げそのものにはかなり慎重姿勢をみせており、イングランド銀行は正常化に向けて、利上げの準備の可能性を示すことで、むしろFRBやECBの先を行っていることを暗に示したかったのかもしれない。


2021年9月9日「コロナ禍による経済への影響は一時的で部分的なものに」

 内閣府が8日に発表した4〜6月期の実質国内総生産改定値は、前期比0.5%増、年率1.9%増となった。速報値の前期比0.3%増、年率1.3%増から上方修正された。

 1年前の2020年4〜6月期の実質国内総生産改定値は、前期比マイナス7.9%、年率換算でマイナス28.1%となっていた。リーマンショック後の2009年1月〜3月の年率マイナス17.8%を超えて戦後最大の落ち込みとなった。

 昨年4月7日に政府は新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため、緊急事態宣言を出した。これが解除されたのが5月25日。この間、人や物の移動が制限され、この結果、個人消費を中心に幅広い経済活動が滞り、その結果、GDPは統計を遡れる1955年以降で最大の落ち込みとなった。

 このときのGDPの落ち込みは日本だけではなかった。米国の4〜6月期GDPも年率換算で前期比32.9%のマイナスとやはり過去最悪の下落率となっていた。ユーロ圏19か国の2020年4〜6月期のGDP速報値も前期比で12.1%減、年率換算では40.3%減となっており、こちらも過去最大の落ち込みとなっていた。

  米商務省が今年7月29日に発表した2021年4〜6月期GDP速報値は、年率換算で前期比6.5%増加し、規模としては新型コロナウイルス禍前の2019年10〜12月期を上回った。また、2021年4〜6月のユーロ圏の域内総生産(GDP)は速報値で前期比2.0%増となっていた。

 新型コロナウイルスの世界的な感染はデルタ株によって再び拡がりつつある。それにも関わらず、景気そのものは回復してきているのはどうしてなのであろうか。

 日欧米ともに政府が大規模な経済対策を打ったからと単純に結論づけることは当然できない。むしろ昨年4〜6月期がややパニック的な動きとなり、次第に冷静になるにつれ通常の経済活動が続いていたから、ということではなかろうか。

 コロナ禍は確かに飲食業、旅行業などに大きな打撃を与えている。ここは政府などが救済する必要はある。しかし、ほとんど影響を受けてない業種の方が多いのではなかろうか。今年4〜6月期を見る限り、個人消費も落ち込んでいない。

 コロナ禍は戦前のスペイン風邪流行時と同様に景気そのものへの影響はむしろ限定的で部分的であったように思われる。もちろんサプライ・チェーンへの影響等も考慮しなければならないが、今回のGDPの数値を見る限り、景気を悪化させるほどにはなっていない。

 自民党総裁選に向けて候補者、もしくは候補予定者などから、いろいろと政策提言が出ている。なかには2%の物価目標を達成するまで、プライマリーバランスを巡る規律の凍結を主張するという、まったく訳がわからないものも出ている。

 また、数十兆円の大型財政政策が必要と唱える人もいる。今年の4〜6月期のGDPをみて、それが本当に必要なのか考える必要があろう。むろん、コロナ禍の影響を受けたところには必要だが、そのために予備費があるのではなかろうか。

 野党の一部からは、再度、国民一人あたり10万円の支給を訴えている人もいたが、こちらも費用対効果などを考えると人気取り目的以外に考えられない。


2021年9月8日「日経平均3万円台回復の背景は、閉塞感の打破を期待した仕掛け的な動きか」

 9月6日の夕方、ナイトセッションでの日経平均先物は3万円台を回復した。中心限月としては4月9日以来、約5か月ぶりの水準となる。そして翌7日、日経平均株価も3万円の大台を回復した。

 ちなみに9月6日米国株式市場はレーバーデーで休場となっていた。

 6日の夕方に何かしら材料が出たわけでもない。米国株式市場が休場となれば、通常は動きづらいはずである。閑散で様子見気分も強い中、するすると日経平均先物が上昇した。これはいわゆる仕掛け的な動きである。

 先物を使った仕掛け的な動きで、時間帯なども考慮すれば、海外ヘッジファンドの買い仕掛けとみて良いのではなかろうか。

 現政権が停滞し、支持率も低下、低迷していた状況化において、新たなトップが選ばれる。それに対する期待感の強まりによる株高は、それは2012年末にも起きていた。野田政権から安倍政権への移行時である。

 また米国でもトランプ大統領誕生時にも似たような動きがあったし、バイデン政権誕生の際にも同様の動きがあった。

 閉塞感を打破することへの期待がこれらの背景にあったとみられる。また、タイミングの問題もあったと思われる。アベノミクスなどその典型であろう。

 日本株は欧米の株価に対して割安ともされ、その修正との見方もある。割安かどうかを判断するのも難しいし、割安だったとしたらそれなりの理由もあったはずである。新政権がその割安を修正するような手段を打てるのかどうかはわからない。

 それでもトップが変わることによって、現状の良くない状況が改善されるとの期待感は当然出てこよう。それを狙ったかのような買い仕掛けであったと思われる。これが継続するかどうかは、新政権の政策次第、もしくはタイミングの問題となろう。


2021年9月7日「政権支持率と株価の関係」

 2020年9月14日、両院議員総会による自由民主党総裁選挙が執行され、岸田文雄、石破茂を破り、菅義偉が選出された。9月16日に第99代内閣総理大臣に就任し、菅義偉内閣が発足した。

 2021年9月3日に菅首相は自民党総裁選に立候補せず、9月末の総裁任期満了とともに首相を退任する意向を示した。

 菅義偉内閣が発足時と首相辞任を表明した日の日経平均株価は以下の通り。

 2020年09月16日の日経平均の引け値は23475円53銭。
 2021年09月03日の日経平均の引け値は29128円11銭。

 日経平均を見る限りにおいては、就任時よりも上昇しており、経済政策はうまくいったかにみえる。しかし、単純に株価を比較すべきものではない。現に9月3日の日経平均は584円高と大幅高となっていたが、これは菅首相の辞任をむしろ歓迎したかのような買いであった。

 株価で引き出されるのが、いわゆるアベノミクスと呼ばれた2012年12月の政権交代によるアベノミクスの登場かもしれない。株価の上昇がアベノミクスの成功を示したものであり、それが支持率上昇と長期政権に繋がったとの見方がある。

 しかし、株価が政権支持率を上げるとか長期政権の要となっているわけではないし、そもそもこれはタイミングの問題でもある。

 2012年12月の安倍政権の登場時、安倍氏がリフレ的な発言をしたことで、急激な円高修正と株高が進んだとされる。円安株高が進んだのは確かであるが、それは欧州の信用不安が後退しつつあり、いわゆるリスク回避の巻き戻しが入りつつあったところに、日銀に大胆な金融緩和を押しつけるとして、それがひとつのきっかけとなって円売り、株の買い戻しといったアンワインドの動きを「加速」させたに過ぎない。

 このタイミングで米国株式市場もすでに上昇に転じていた。もしこの米株の上昇がアベノミクスによるものであるのならば、その成果と言えるかもしれないが、そんなことはないのは当然である。こちらもリスク回避の巻き戻しがすでに入っていたためである。

 ということで株価と政権支持率についてはあまり比較しても意味はない。

 昨年9月に菅政権が誕生したが、結果としてタイミングが悪かったとしかいいようもない。コロナ禍という戦後に経験したことのない事態にどう対処したのか。大胆に経済対策がすでに講じられていたが、それをうまくコロナ対策に生かせるのか。

 コロナ禍でもあったが昨年4〜6月期を底に景気は回復基調にあった。中国や米国の景気回復によるものも大きいが、コロナ禍であっても、景気は回復してくることを示したものともいえる。このあたりは、戦前のスペイン風邪の際も同様であった。

 菅政権の経済政策はリフレ色の強いアベノミクスを継承していた。これは内閣官房人事などをみても明らかであろう。結果として日銀の金融政策を縛り付け自由度を失わせた。さらに過去最大で異常な規模の財政政策を打ち出し、こちらも極端な規模の国債増発を行っていた。それらが国民にとって安心材料と言えたであろうか。

 どうやら後継者となりそうな方々も、補正予算の真水とかニューアベノミクスとかとにかく財政拡大、真水数十兆円ありきの考え方をしている人が多い。これは野党の同様のようである。すでに2020年度で過去最大級の財政政策を行って真水は100兆円を超えているはず。国債残高はさらに急増している。こちらを不安がっている国民も当然かなりの割合で存在していることも念頭に置く必要があるのではなかろうか。


2021年9月4日「中国政府によるハイテク企業の締め付けは金融市場に影響を与えるか」

 大手配車サービスの「滴滴出行(DiDi)」は6月末にニューヨーク証券取引所でIPOを果たしたが、上場からわずか2日後の7月2日に、中国のサイバースペース管理局は中国全土において、DiDiの新規会員登録の停止、4日には同社のアプリケーションの削除、さらに9日には同社系列のアプリ25件全体の削除を命じた。

 アリババ傘下の電子決済サービス「アリペイ」を運営するアント・グループは昨年11月の中国本土・香港上場に向けIPO計画を進めていたが、当局からの指摘を受け、上場直前で中止となった。

 8月には港株式市場で、テンセント・ホールディングス(騰訊)株が一時11%近く急落した。国営新華社通信系の国営紙・経済参考報はゲームを「精神的アヘン」「電子薬物」だと批判し、テンセントはその後、12歳未満の子供に対する全面的なゲーム禁止に踏み切る可能性を示した

 これらの動きを受け、株式市場から1兆ドル以上の時価総額を失わせたとしているが、中国政府によるハイテク企業への締め付けは始まったばかりとの見方も出ている。

 中国政府は8月30日に18歳未満の未成年がオンラインゲームをプレイできる時間を金曜日、週末、祝日の現地時間午後8時から午後9時に制限した。ゲーム依存症に対する懸念に対応したものとされるが、大手ハイテク企業の取り締まりを強化する動きにともなったものとして投資家は警戒している。

 中国の習近平指導部は、貧富の差を是正しすべての人が豊かになる「共同富裕」を目指すとして、所得の高い人や企業に寄付などを促す方針を示した(31日NHK)。

 これは明らかな格差是正の動きといえる。テンセントが、所得の低い人を支援するため日本円で8500億円を拠出すると発表したほか、ネット通販大手の「ピン多多」が農家を支援するために1700億円を拠出すると発表した。これは引き締めを少しでも緩和させようとの動きにもみえなくもない。

 中国におけるハイテク企業が急速に成長し、一部の起業家が膨大な資産を持つようになった。その典型が、アリババ創業者のジャック・マー氏であろう。ジャック・マー氏は一時行方がわからなくなったが、中国政府への批判がきっかけともされた。資本主義社会の典型のような資産家を中国政府が許せなくなってきているとも思える。

 中国政府は経済成長を促したハイテク企業に対し、対応を変化させてきたことは確かである。経済成長に犠牲を払っても今後さらに締め付けを強化してくることも予想される。いまのところネット企業がターゲットになっているが、これが製造業などに及ぶとさらに株式市場などに影響が出る恐れもある。


2021年9月4日「米アマゾンのクラウドの障害により金融取引にも不具合が生じる」

 データなどを外部サーバーで管理する「クラウドサービス」の最大手、米アマゾン・ウェブ・サービスは2日午後、日本で発生した障害が復旧したと明らかにした。回復までに約6時間かかり、メガバンクやインターネット証券、通信、運輸、小売業界でシステムに不具合が生じるなど、影響は広範囲に及んだ(2日付共同通信)。

 障害は2日午前7時半に発生し、午後1時42分まで続いた。スマートフォンで住所変更などを行う三菱UFJ銀行のアプリ、みずほ銀行のスマートフォン向けネットバンキングのアプリ、松井証券やSBI証券などネット証券のサイトを閲覧したりするのに支障が出たようである。

 クラウド(クラウド・コンピューティング)とは、コンピューターの利用形態のひとつ。インターネットなどのネットワークに接続されたコンピューター(サーバー)が提供するサービスである。これを利用者はネットワーク経由で手元のパソコンやスマートフォンで使用する(NECのサイトより)。

 米アマゾン・ドット・コムは通販会社と思っている人も多いかもしれないが、その収益源はむしろクラウドサービスにある。日本企業もアマゾンのクラウドサービスを利用しているところが多いことを今回の障害で知った人も多いかもしれない。

 今回は金融だけでなく、NTTドコモや日本航空、全日本空輸の一部サービスやシステムにも不具合があった。

 金融については基幹インフラとして日銀と取引金融機関を繋ぐ日銀ネットがある。金融機関同士は全国銀行資金決済ネットワーク(全銀システム)があり、銀行毎にシステムを構築している。

 しかし、スマートフォン向けのアプリなどでは、このようにクラウドサービスが使われているようである。

 今回、SBI証券では、顧客が取引画面にログインしづらくなるなどの問題が起きた。楽天証券や松井証券、マネックス証券などでも株価情報の表示に不具合が発生。三菱UFJ銀行やみずほ銀行では、アプリがつながりにくい状態となった。

 私はパソコンを使うことが多いが、若い人達はスマートフォンで金融取引を行っている人が多いと思われる。銀行のシステムに問題がせなくても、クラウドサービスの障害によって金融取引に支障が出る可能性があることを今回のアマゾンのクラウドの障害によって明らかとなった。


2021年9月3日「菅首相が辞任の意向、総裁選も不出馬による金融市場への影響」

 菅首相は自民党の臨時の役員会で、今月行われる自民党総裁選挙に立候補せず、辞任する意向を表明した。官邸筋は3日、菅義偉首相の自民党総裁選不出馬について「6日に予定していた党役員人事に行き詰まっていた」と指摘したそうである。いわば四面楚歌に置かれたものと思われる。

 これを受けての金融市場の反応は株高・円安・債券安となった。ここにきて日経平均は強含みの地合が続いていたが、米国株式市場の上昇を受けてという面もあったが、菅総理を見限った動きであったのかもしれりない。政権の支持率が低下し、衆院選挙を菅首相で行った場合には、自民党の議席が大きく減少することも予想され、政局の不透明感が強まりかねない。菅首相以外であれば、少なくとも菅首相よりもましな選挙となるのではとの期待も出てこよう。

 現在、自民党総裁選に出馬を表明しているのは岸田文雄前政調会長だけとなり、もし岸田氏が総裁となれば、大規模な経済対策を打ち出してくる可能性がある。29日、記者団に対し「来年の春までしっかりと見通せるような数十兆円規模の経済対策を早急に取りまとめて、打ち出すべきだ」と述べていた。

 株式市場では不透明感がやや後退したことに加え、大規模な経済対策への期待による買いも入ったのかもしれない。また、国債増発が意識されて国債が少し売られたとも思われる。円高や長期金利の低下が起きなかったということは、少なくともリスクオフではなく、リスクオンの動きであったともいえる。最低最悪の事態は回避されるとの期待もその背景にあったのかもしれない。

 ただし、菅首相の総裁選も不出馬により、あらたな候補者も出てくることが予想され、岸田氏が有利かどうかは今後の候補者次第との面もある。衆院選挙を控え、国民からの期待を集めるためにも、人気面なども重視されるかもしれない。今後の金融市場の動向は自民党総裁選の動向に大きく影響を受けると思われる。しかし、総裁選と衆院選のスケジュールにも注目したい。


2021年9月3日「何故、いまごろになって聖徳太子の偽1万円札が出てきたのか」

 2024年度上半期に発行する予定の新しいデザインの1万円札の印刷が1日から始まった。都内の国立印刷局の工場で記念式典が行われ、出席した麻生副総理兼財務大臣などがボタンを押し、新紙幣の印刷が始まったそうである(2日付NHKニュース)

 印刷が始まったのは新しいデザインの1万円札で、肖像には「近代日本経済の父」と呼ばれ、明治から昭和にかけて産業界をリードした渋沢栄一が使われ、裏には東京駅の駅舎が描かれている。

 1万円札といえば先日、偽札が発見されてニュースになっていた。

 8月に都内のコンビニエンスストアなどで聖徳太子の肖像画が描かれた偽の旧1万円札がおよそ50枚使われていたことが分かり、警視庁は偽造通貨行使の疑いで捜査している(8月30日付NHKニュース)。

 この1万円札の偽札は、昭和30年代から発行されていた聖徳太子の肖像画が描かれたもので、すかしが入るなど精巧に作られていたが、アルファベットの「PS」で始まる実在しない記番号が印刷されていたとか。

 1885年に日銀が初めて銀行券(お札)を発行してから、現在までに53種類の銀行券を発行している。このうち現在、日本で使うことのできるお金は22種類ある。

 私は子供の頃に父親から「銭」という表示のお札を貰ったことがあった。これは現在では利用することはできない。日銀がこれまで発行した53種類のお札のうち、このように現在使うことのできないお札が31種類ある。

 この31種類とは、関東大震災後の焼失兌換券の整理にともなうものや、終戦直後のインフレ進行を阻止するため行われたいわゆる新円切替にともなってのもの、さらに私が貰った「銭」表示のような1円未満の小額通貨である。これらは3回にわたっての回収・廃棄が行われ、その結果この31種類のお札は現在、通用力を失っている。

 ただし、使えるお金の中には、明治18年発行開始の大黒像が描かれた1円札など現在ではたいへん貴重なものもある。財務省のサイトには、現在、発行されていないお金で、現在も使用できるもの一覧があった。

「昔のお金は使えますか」 https://www.mof.go.jp/faq/currency/07ad.htm

 ここにもあるように、一万円券(聖徳太子:昭和33年発行)も利用できる。タンス預金なのか、ゴミ捨て場からよく見つかる1万円札には聖徳太子のものが多いように思われる。

 それではなぜ今頃、聖徳太子の偽札が出てきたのか。すかしが入るなど精巧に作られていたとはいえ、現在の1万円札のほうが当然ながら偽札防止技術が向上しており、偽札製造が難しいためともいえるのではなかろうか。

 いずれにしても、もし聖徳太子の1万円札を見つけた際には、記番号などを念の為確認しておいた方が良さそうである。


2021年9月3日「1万円札が変わると日本経済も大きく変わる?、渋沢栄一の新1万円札の印刷が開始」

 2024年度から流通が始まる新しい1万円札の印刷が1日に始まった。肖像画には「近代日本経済の父」と呼ばれ、いまNHKの大河ドラマの主人公でもある渋沢栄一が描かれている。5千円札には津田塾大学の創始者である津田梅子、千円札には近代日本医学の父」といわれる北里柴三郎が採用され、いずれも2024年度の上半期から流通する予定となっている(TBS NEWS)

 前回の1万円札の新札の発行は2004年11月にE号券と呼ばれる福澤諭吉の肖像画の第二弾であった。福澤諭吉の肖像画の第一弾となるD号券は1984年11月に発行が開始された。それ以前は聖徳太子が肖像画となっているものでC号券と呼ばれるものが1958年12月に発行されている。

 1万円札そのものが発行されたのが1958年であった。個人的なことだが、この年に私は生まれている。当時の1万円はかなりの高額紙幣であり、父親が給与に1万円札が入っていたのを珍しがっていたような記憶がある。

 その初代1万円札の聖徳太子の時期は26年となっていたが、福澤諭吉の肖像画の第一弾となるD号券からは20年おきに新札が発行されている。これは肖像などを彫り込む技術を次世代に継承させる必要があることや、あらたな偽造防止技術を組み入れるためとされている。また、新札の印刷開始から発行までの期間を設けているのは、ATMや自動券売機などお札を使う機械で対応できるようにするためとされている。

 1958年頃はまさに高度成長期。国際通貨基金や国際復興開発銀行などの組織を中心したブレトン・ウッズ体制のもと、1955年あたりから日本経済は高度経済成長の波に乗り、好景気が1964年まで続いた。その期間の中でも、1955年から1957年にかけて、日本は神武景気と呼ばれた大型景気を迎えたのである。その後、なべ底景気と言われる景気減速を経て、1959年あたりから再び景気が上向き、今度は岩戸景気と呼ばれた好景気が続いた。投資が投資を呼ぶとも言われ、設備投資が景気を引っ張り上げていったのである。

 そして福澤諭吉に肖像画が変わった1984年以降、金融市場に動きがあった。1985年のプラザ合意などをきっかけに、急激な円高とともにバブルが発生する。1985年の銀行によるフルディーリングの開始や同年10月の債券先物の上場をきっかけに、デリバティブ取引も盛んになり、金融新時代を迎えることになる。まさに1万円札があちらこちらに飛び交う時代となった。

 しかし、そのバブルも崩壊し、宴は終了する。2004年11月にE号券と呼ばれる福澤諭吉の肖像画の第二弾が発行されたが、その後、世界の危機に日本も翻弄されることになる。サブプライム・ショック、リーマン・ショック、欧州の信用不安、そして新型コロナウイルスの世界的な感染拡大と。

 2024年からの世界はどう変わるのかは予想が付かない。新札をきっかけに経済が変わるというよりも、新札が出たあたりから経済を取り巻く状況が変化してきていることは確かであろう。「近代日本経済の父」と呼ばれた渋沢栄一だけに、日本経済に新風を起こしてくれるかもしれない。


2021年9月2日「ECBもテーパリングを模索か、欧州の国債がやや動揺」

 欧州中央銀行(ECB)の政策委員会メンバーであるホルツマン・オーストリア中銀総裁は、ユーロ圏経済がおおむね予想通りに回復しつつある中で、当局者らはパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の債券購入ペース減速を検討することができるとインタビューで語った(31日付ブルームバーグ)。

 これを受けて31日の欧州の国債は総じて売られ、それが米債にも波及し米債も下落した。ECBによるテーパリング観測はまさに寝耳に水であり、欧米の国債市場がやや動揺した格好に。

 ホルツマン・オーストリア中銀総裁は、「PEPPをどのように縮小するか、検討できる状況になっている。こうした見解は共有されていると考えている」と述べ、第4四半期に縮小を開始する計画について、9月8、9日の理事会で「確実に」討議されると語った(31日付ロイター)。

 やはりECB理事会メンバーであるワイトマン独連銀総裁も1日、ユーロ圏の物価情勢について、このところ物価を押し上げている一時要因が基調的なものになる可能性があり、ユーロ圏のインフレ率がECB予想を上回るリスクがあるとの見方を示した(1日付ロイター)。

 来週開く9月のECB理事会でテーパリングについて議論を開始するのか。現状、ドイツやオーストリアなどの出身者、いわゆるタカ派と呼ばれる人達はECB内では少数派に属している。ラガルド総裁など主流派は、正常化に対してはかなり慎重な姿勢を維持していたが、その状況に変化が生まれるのかも注意する必要がある。

 そのラガルド総裁は1日に、ユーロ圏経済は新型コロナウイルスの世界的大流行から回復しつつあり、なお苦境に立たされている一部のセクターに標的を絞った「外科的」な支援のみが必要になっているといったなかなか微妙な発言をしていた模様。

 今回の欧州の国債の反応をみても、テーパリングを予想より早く開始される可能性は完全には捨てきれない。31日に8月のユーロ圏消費者物価指数速報値が発表され、前年比3.0%上昇と、10年ぶりの大幅な伸びを記録した。

 FRBのパウエル議長は年内のテーパリング開始の可能性を示唆している。利上げはさておき、テーパリング着手に向けて舵を切っていることは確かであり、ECBとしても物価や経済動向などを確認しながら、テーパリングの議論を始める可能性はありうるか。

 日銀に関しては、金融政策の軸足を金利に戻すかたちで、すでにテーパリングは進められているとの認識で良いかと思う。


2021年9月1日「日本の政府債務の半分が実際には存在しないという説のおかしさ」

 日本の政府債務の半分かそれ以上の部分が実際には存在しないとの説を唱えてる人達がいる。政府債務の半分ということは、それは日銀が保有する国債のことではないかと推測される。日銀は国の一部機関であるため、日銀が保有する国債は相殺できるという説であろうか。もしくは日銀が保有する国債については、国が借り換えを繰り返せば永遠に償還せずに済むという考え方を示す人もいる。

 仮に自国通貨建ての政府債務はいくらでも積み上げられるとするのであれば、国は税収などを取らずとも財政はすべて国債発行で行えば良いことになる。どうしてそれをしないのか。それは当然、そのような財政政策はありえないためである。

 どうして中央銀行制度ができたのか。世界で最初の中央銀行は1668年に設立されたスウェーデンの国立銀行、通称リクスバンクとされている。

 1897年のリクスバンク法により、リクスバンクには独占的に通貨の発行権が付与された。銀行券の発行ができなくなったほかの銀行は、リクスバンクから優遇金利で資金を借り入れることができるようになった。リクスバンクは「銀行の銀行」としての機能を果たすことになる。

 リクスバンクは国王ではなく議会の監督下に置かれるなど、現在の多くの中央銀行と同じように「政府などからの独立性」という特色も持っている。また、民間の資金によって設立されたことなどはイングランド銀行などと同様となっている。

 つまり中央銀行は国王といった国のトップではなく、議会の監督下に置かれている。ちなみに国債も永久機関である議会が承認し、徴税権を担保に政府が発行するものである。

 そして、日米欧とも中央銀行による国債の引き受けを禁じている。これは中央銀行による国債引き受けがハイパーインフレを引き起こしたためとされる。いやいや、デフレ下の日本がインフレなど起きるはずがないと指摘する向きもあろう。ここは言葉を換える必要がある。ハイパーインフレというより国債への信用失墜が起きたためである。

 国債の発行は規律を持って行わなければならないというのが常識的な見方であるが、そのように主張している人たちこそ、国債の信認を維持しようと必死になっている。

 国債はいつかは暴落するかもしれないとオオカミ少年のように唱える人達こそが、信認を維持しようとしているともいえる。

 そのような信認維持などおかまいなく、国債は暴落などしないからもっと増発しろといっている人たちこそ、国債の信認などは考えていないのではなかろうか。そしてもし国債の信認が失墜した際には責任を取るようなこともないであろう。


2021年9月1日「選挙を見据えた経済対策は財政状況も意識し、メリハリをつけることも大事か」

 菅義偉首相の自民党総裁任期満了に伴う自民党総裁選挙は9月17日に告示、9月29日に投開票が予定されていると報じられた(ただしまだ流動的?)。「出馬は当然」と続投に意欲を燃やす菅義偉首相に対し、岸田文雄前政調会長が立候補を表明している。

 菅義偉首相は党刷新をアピールするため、衆院選前に二階俊博幹事長の交代を柱とする党役員人事を行う方向で調整に入ったと伝えられた。自民党総裁選挙の行方にも絡んで二階幹事長の処遇が注目されたが、どうやら交代するようである。

 現時点で自民党総裁選挙の行方には不透明感が漂う。支持率や横浜市長選挙の結果などからみても菅首相には非常に厳しい情勢となっている。しかし、岸田氏に指示が集まるのかも不透明。別なダークホースが登場してくるかもしれない。

 しかし、いずれにしても自民党総裁選挙、さらには衆院選も控えて、大型の経済政策が打ち出される可能性が出てきている。

 野党側が求めている9月上旬からの臨時国会について、政府・与党は、召集を見送る方向となった。これにより補正予算案の編成も選挙後となることが予想される。

 しかし、菅首相は、自民党の二階幹事長らと会談し、感染対策と並行して経済対策にも取り組みたいとして、党として追加の経済対策を取りまとめるよう要請した。

 自民党の岸田文雄前政調会長も29日、記者団に「来年の春までしっかりと見通せるような数十兆円規模の経済対策を早急に取りまとめて、打ち出すべきだ」と述べていた。

 コロナ対策とともに経済対策で有権者にアピールするつもりかと思われる。むろん、コロナ禍にあって苦しんでいる人達がいることは確かであり、その対策は必要であろう。

 しかし、GDPも回復しつつあるなか、総じて経済は回復基調にあることも確かで、メリハリをつけることは大事であり、規模ありきの対策となってしまうのは避けてほしいところである。

 首相との会談後に二階氏は記者団に対し「経済対策を打つなら思い切ったものをやらなければならないが、財政との問題もある。財政が極めて厳しい状況の中で、どういう経済対策を打っていくか両立していかなければならず、しっかり対応したい」と述べた(NHK)。

 昨年度の新規国債の発行額は、大規模な補正予算を経て、112兆5539億円という異常とも言える規模に膨らんだ。これは国債発行によって補われることになり、来年度の概算要求における国債の償還や利払いに充てる「国債費」は、今年度の当初予算より6兆円余り増えて、30兆2362億円に膨らむ。

 国債相場そのものはしっかりしている。しかし、債務の増加はじわりじわりと予算編成等にも影響を与える。国債利回りが低位というかゼロ%近くでは、利払い負担は見えにくい。しかし、国債利回りが多少なり跳ね上がると一気に負担が増加しかねないことも念頭に置く必要があろう。


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