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2022年5月24日「世界恐慌時と同様の今回の米株の下落、当時は何が起きていたのか」

 米国の株式相場が歴史的な下げに見舞われている。ダウ工業株30種平均は90年ぶりに8週続けて下落した。ダウ平均は20日までの1週間で、前の週から934ドル(2.9%)下落した。8週間の下げ幅の合計は約3600ドルに達した。金融情報会社リフィニティブによると、8週連続の下げは世界恐慌のさなかにあった1932年以来、90年ぶりとなる(22日付日本経済新聞)。

 世界恐慌のさなかにあった1932年には何か起きていたのか。少し遡って確認してみたい。

米国の投機ブーム

 米国では1913年にFRBが設立されたことで金融システムへの安定とともに、好不況の波が抑えられるとの安心感も高まった。第一次大戦後の国際金融市場は、シティに変わり、ウォール・ストリートが次第に地位を高めて行く。ニュー・エコノミーへの期待も手伝って米国の好景気は1929年まで継続し、ウォール街は次第に過熱感を強めて行ったのである。

 金本位制に復帰した英国が金(ゴールド)の流出に苦しんでいたことに対応し、イングランド銀行への支援を目的として米国ではFRBが公定歩合を引き下げたことにより、米国の株式市場の投機ブームに拍車をかけるかたちとなってしまった。

 株式市場の過熱を防ぐためFRBは1928年1月から1929年5月にかけて公定歩合を3.5%から5%に引き上げた。しかし、株式市場への投機熱は収まらず、また1920年代に米国では会社型投資信託がブームになり、この投資信託を経由して個人資金が株式市場に流れこんだのである。

暗黒の木曜日

1929年6月に米国では鉱工業生産指数がピークを打ち、景気が後退局面に入っており、9月3日に米株式市場はピークを迎えた。1929年10月24日の「暗黒の木曜日」と呼ばれたニューヨーク株式市場の急落をきっかけに発生したのが大恐慌である。

 1930年以降、大恐慌による通貨危機金が流出し、再び金本位制が機能しなくなり、英国は1931年に再び金本位制を離脱した。この結果、今度は米国から金が流出したことに対処するため、恐慌時にもかかわらずFRBは公定歩合の引き上げを実施した。

 これをきっかけに金融機関の破綻が相次ぎ、再び金融危機が発生した。1932年にFRBは一時的に10億ドル近い政府証券の買いオペレーションを実施した。

 米国をはじめ各国で銀行の倒産が相次ぐ。「図説 銀行の歴史」によると、1929年に営業していた25000行あまりのアメリカの銀行のうち、少なくとも1350行が1930年に閉鎖に追い込まれ、1931年にはさらに2293行が、そして1932年には1453行が破産した。

 米国の失業率は1929年の3.2%から1933年には24.9%に拡大し、鉱工業生産もピーク時の5割程度に落ち込むなどマイナス成長が続き、デフレが深刻化した。

現在の姿

 当時と今回の株式市場を取り巻く状況は、時代背景等は異なるものの、FRBの金融政策が絡んでくるあたり、似通ったところがある。同じ事が起きるとは限らないが、当時のことを学んで、1932年のような危機的状況を招かないようにすることも必要かと思われる。


2022年5月21日「飼料や肥料などの値上がりは一時的とは言えない。物価高は続く」

 16日に日銀が発表した国内企業物価指数は、前月比プラス1.2%、前年比プラス10.0%となった。1980年12月のプラス10.4%以来約41年ぶりに2ケタの伸びを記録した。

 ロシアによるウクライナ侵攻などの影響で、石油・石炭製品などエネルギー価格が上昇し、鉄鋼や非鉄金属の価格が上昇したことなどが主な要因となった。しかし、この数値にははっきり表れていないが、肥料や飼料の値上がりが畜産農家に大きな影響を与えている。

 畜産農家や業者が飼料の高騰に苦しんでいる。中国での需要増加や新型コロナウイルス感染拡大と原油高騰などによる輸送コスト増、さらにはロシアのウクライナ侵攻の影響から原材料のトウモロコシなどの価格が値上がりしている(4月18日付福島民友新聞)。

 この時点で飼料価格は数年前の1.5倍ほどになっているようである。農林水産省によると配合飼料価格は2020年4月に1トン当たり6万円台後半だったものが、昨年12月には8万円を超えた。

 中国などで畜産物・油脂類の消費が拡大することに伴い、とうもろこし等の飼料となる穀物や、油糧原料となる大豆やなたね等の需要が増加した。

 原油価格の高騰と国際的な環境への関心の高まりのなかで、石油代替燃料としてバイオ燃料の生産が拡大することに伴い、原料となるとうもろこしや大豆等の需要が世界的に増加し、食料需要との競合が起こっている、というのは2007年度の農林水産省の白書での指摘である。

 これは原油価格などが上昇している現在でも同様の事態が起きている。経済の正常化に伴うエネルギーの需要増に加え、ロシアのウクライナ侵攻がさらに追い打ちをかけている。ウクライナは小麦など穀物の世界的な生産国でもある。

 日本の飼料は輸入に依存し、原油価格高騰や円安の影響を受けやすい。輸送費の値上がりなどに円安による影響も大きくなる。

 日銀は現在のコストプッシュ型とみられる物価の上昇は一時的とみているようだが、欧米は一時的という認識を変えつつある。

 日本でもこの飼料や肥料の価格の動きだけをみても、原油価格が多少下がったとしても、急激に飼料や肥料の価格が下がるような展開は見えにくい。

 日銀は物価上昇は一時的との認識で、金融政策の正常化どころか、緩和強化にもみえかねない毎営業日の指し値オペまで実施している。これによって日米の金融政策方向性の違いにより、円安が放置されている。

 果たして畜産農家などに対して、物価上昇は一時的だから問題ないと日銀は言えるのであろうか。


2022年5月21日「ビットコインの急落で、エルサルバドルがデフォルト危機に」

 ビットコインの価格はここにきてで3万ドル程度で推移し、2021年11月の過去最高値の半値以下となっている。欧米の中央銀行が金融引き締めに転じ、過剰流動性相場が後退するとの見方に加え、ドルなどの法定通貨と価値が連動するように設計されたステーブルコインの「テラUSD」が急落したことなども影響した。

 ビットコインの急落は、世界中の仮想通貨投資家に打撃を与えているとともに。中米エルサルバドルにも大きな影響を与えつつある。

 エルサルバドルは21年9月7日にビットコインを世界で初めて法定通貨に採用した。このため、大統領が何億ドルもの公的資金を使ってビットコインを購入していた。

 エルサルバドルの政府高官によると、同国がビットコインの値上がりに賭けて計画していた10億ドル規模のエキゾチックボンドの発行は行き詰まり、保有する1億ドル相当のビットコインの市場価値は約3分の2に落ち込んだ。これにより同国の財政は一段と逼迫し、エコノミストによれば、240億ドルを超える公的債務がデフォルト(債務不履行)に陥る可能性が高まった(16日付WSJ)。

 米国の格付会社大手のムーディーズ・インベスターズ・サービスは今月、エルサルバドルの格付けを「ジャンク」に引き下げた。これは事実上のデフォルト(債務不履行)の一歩手前の水準といえる。

 これらを受けて2023年1月に償還を迎えるエルサルバドルは国債の利回りは足元で60%程度まで上昇している模様。

 債務危機にある国にとって最後の貸し手ともなる国際通貨基金(IMF)は、エルサルバドルに法定通貨の見直しを求めていた。ビットコインを法定通貨のままとするうちは、今後の債務再編の行方は見通しにくいとともに、IMFの支援も受けにくくなる。

 暗号資産を法定通貨にするエルサルバドルの壮大な実験は、世界中の仮想通貨投資家にとっては大きな支援材料であったかもしれない。しかし、そもそもその価値を裏付けるものが存在しないネット上の計算だけに頼るところのものに、国の存亡を賭けた結果がどうなるのか。エルサルバドルの行方にも注目したい。


2022年5月21日「日銀の2%物価目標達成、正常化は?」

 20日に4月の全国消費者物価指数が発表された。総合指数は前年同月比でプラス2.5%、日銀の物価目標となっている生鮮食品を除く総合指数は前年同月比でプラス2.1%、 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は前年同月比でプラス0.8%となった。

 日銀の物価目標となっている生鮮食品を除く総合指数は、その物価目標の2%を超えてきた。2%超えは消費増税の影響があった2015年3月の2.2%以来、消費税の影響のあった年を除くと2008年10月の2.3%以来となる。

 エネルギー全体で前年同月比19.1%の上昇となり、1981年1月以来41年1か月ぶりの上昇幅となった3月の20.8%の上昇ほどではなかったものの延びに大きく寄与していた。電気代が21.0%上昇と高い伸びとなった。エネルギー品目の上昇分だけで全体の総合指数を1.38ポイント押し上げた。

 ガソリンは15.7%と前月の19.4%の上昇から伸び率が鈍化した。前年同月に伸びていた反動とともに、政府の補助金の影響が出ていたとみられる。

 生鮮食品を除く食料は前年同月比2.6%の上昇となり、3月の2.0%の上昇から上昇幅が拡大した。全体の総合指数を0.58%押し上げた。食料品は4月からは値上げラッシュとなっていた。

 3月までは携帯電話の通信料は、大手各社が2021年春から格安プランを導入した影響で、この下落分だけで総合指数を1.42ポイント押し下げていた。4月からこの分の影響が剥落することで、コアCPIを3月の0.8%から大きく押し上げた格好となった。

 ロシアによるウクライナ侵攻もあり、4月以降もエネルギー価格の上昇や食料品などの値上げの影響は拡大すると予想される。

 なにはともあれ、結果として日銀の物価目標の2%を達成した。しかし、日銀はこれはエネルギー価格や原材料価格の上昇による影響が大きく一時的だとして、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数のほうを重視しているかにみえる。

 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は前年同月比でプラス0.8%と2%には届かないが、いつ日銀は目標を変えたのであろうか。

 世界的な物価上昇の動きは一時的でないとの見方も欧米などでは強まっている。ロシアによるウクライナ侵攻によって、ロシアからの石油や天然ガス、石炭などのエネルギー価格が上昇している。またウクライナは穀倉地帯を抱え、穀物への影響も今後出てくるものと予想される。

 そこにアフターコロナによる経済の正常化の動きが加わることで、エネルギーや原材料価格が高値で維持されることが予想される。

 身近なものの値上げラッシュにともない我々の物価感そのものが変化してくることが予想される。物価高への不安を軽減させるためにも、異次元の緩和を継続すべきかとの疑問は当然出てこよう。

 物価感の変化は賃金上昇などにも影響する期待も出てくるとともに、物価に連動した金利が形成されないことへの不満が出てくる可能性がある。


2022年5月20日「円安進行で大規模緩和修正が必要との声が強まる」

 5月のロイター企業調査では、円安が進む中、日銀による大規模な金融緩和政策を修正するべきとの回答が6割に達した。今すぐ出口に向かうべきとする企業も24%となった(19日付ロイター)。

 やっと企業関係者もわかってくれはじめたようである。円安の進行とそれにもかかわらず、緩和強化にみえる政策を打ち出した日銀に、企業も違和感を覚えてきたと思われる。

 昨年7月の調査では、超低金利の長期化はプラスに作用するとの声が72%にのぼり、今すぐやめるべきとの回答はわずか6%だった。それが円安によって認識が変わったといえる。

 何がきっかけにせよ、現在の日銀の政策がおかしいとみる向きが増えてきたのは喜ばしいところである。

 今回の調査期間は4月26日から5月13日。発送社数は499、回答社数は230だった。どのような修正が必要かとの質問に対しては、マイナス金利撤廃が58%と最も多く、利上げが35%、2%のインフレ目標の修正・撤廃が25%と続いた。(19日付ロイター)。

 やっとわかってくれはじめたか、という感想ながら、個人的には日銀が最後に手がけた長期金利コントロールを真っ先に撤廃してほしい。できうることなら、マイナス金利の撤廃、2%のインフレ目標の撤廃も同時に行ってほしい。

 しかし、さすがに一気に正常化に向かうと市場への影響も大きいというのであれば、徐々に進める手もある。しかし、そっちの方向に一切いきたくはないのが、現在の黒田総裁の姿勢である。

 結果として「展望レポート・ハイライト(2022年4月)」をみるまでもなく、矛盾だらけの金融政策となっている。日本経済は回復に向かうとしているのに、強力な金融緩和を継続するというのはどういうわけであろう。しかも2%の「物価安定の目標」もまもなく達成する可能性が高いにもかかわらずである。

 大規模金融緩和をいつまで続けるべきかについては、今すぐ出口に向かうべきが24%、今年度前半までが23%で合わせて約半数となったそうだ。黒田東彦総裁の任期となる来年4月まででは計84%に上ったそうだが、たぶんそんな悠長なことは言っていられなくなると思う。


2022年5月19日「金融政策の方向性の違いもあり、海外機関投資家による中国国債への投資意欲が後退、明日は我が身か」

 中国当局は、債券取引に関する日次データについて、国内機関投資家のみに公表し、海外機関投資家への公表を停止した。事情に詳しい6人の関係者が17日に明らかにした(18日付ロイター)。

 ある関係筋は、5月12日の海外機関投資家向けのデータが見られなくなっていると述べ、急激な人民元安と大規模資本流出が背景にあるとの見方を示したそうである。

 どうして海外機関投資家への公表を停止したのかは定かではなく、これが一時的なものかどうかも不明ながら、ある関係筋の指摘は気になるところとなる。

 3月の中国証券市場からの資金の純流出額は175億ドル(株式63億ドル、債券112億ドル)と、統計開始の2015年以降で最大となった。

 中国では上海のロックダウンなどで経済が減速するなか、利上げ局面に入った米国と中国の金融政策の相違が際立っている。

 米国の中央銀行にあたるFRBは利上げを開始し、今後も会合毎に0.5%の利上げが予想されている。

 これに対して中国は、生産者物価は前年比8%台と高い水準ながら(3月は8.3%、4月は8.0%)、消費者物価指数は4月が前年同月比2.1%の上昇に止まっている。

 これを受けて、物価上昇抑止より景気回復を優先し、中国人民銀行(中央銀行)は利下げを行ってきた。金融引き締めのFRBと緩和の中国ということで、方向性が真逆になっている。

 金利の方向性の違いによって、結果として急激な人民元安を招いた。

 また、中国の10年債の利回りは、2021年末時点では米10年債利回りを上回っていたが、現在は下回っている。

 利回りの面からも中国国債の魅力が薄れ、中国国債への海外からの投資意欲が後退した。その結果が債券取引に関する日次データの海外機関投資家への公表停止となったとみられる。

 ちなみに、欧米との中央銀行の方向性の違いは中国だけの現象ではない。

 日本も同様で企業物価が前年比10%増となっているにもかかわらず、日銀の物価目標の消費者物価指数(除く生鮮)は3月がプラス0.8%(20日発表の4月分予想は2%程度)となっている。

 日本銀行は緩和の手を緩めないどころか、10年債利回りをこれでもかと抑えにかかっている。

 それが結果として中国と同様に海外投資家からの投資意欲を後退させかねない。金融政策の方向性の違いは円安を招く。

 どうやら中国でおきていることは日本でも起こりかねないのではなかろうか。


2022年5月18日「米政府がロシアをデフォルトに追い込む可能性が出てきた」

 米国の金融機関や個人がロシア国債の利払いを受けることを可能にしているライセンスは今月25日に失効する。米国のイエレン財務長官は10日、延長の是非について「積極的な検討」が行われていると発言。決定は近く下されるとした(12日付ブルームバーグ)。

 この制裁免除措置は、ウクライナ侵攻を巡り2月に米国が対ロシア制裁を科した後に講じられたもので、これによりロシアに投資家への支払いを継続する余地を与え、同国のデフォルト回避を後押した。

 ロシア財務省は先月29日、今月4日に期限を迎えたドル建て国債の利払いと元本償還について、約6.5億ドル(約840億円)をドルで支払ったと発表。支払いの猶予期限の5月4日までに国債保有者に届き、ロシアの債務不履行(デフォルト)は回避されたのである。

 ロシア財務省は先月6日に、支払いを仲介する米金融機関に「ドル払いが拒否された」として、利払いと元本償還を自国通貨ルーブルで送金したと発表していた。しかし、ロシア債を購入している米投資家へなどの影響も懸念されたことで、米当局が米金融機関の関与を認めた、これによりドルによる支払いが可能になった。

 しかし、米財務省外国資産管理局(OFAC)は、債務返済を認める一般許可が25日の期限で失効するのを容認すると見込まれている。財務省内では許可を延長して支払いを容認し、ロシアの軍事資金低減を図るべきだとの声もあったが、ロシアに対する金融面の圧力を維持するため延長しないことが決まったと、複数の関係者が語った(18日付ブルームバーグ)。

 財務省では最終的な決定を下していないとの見方もあり、ホワイトハウスやOFACの報道官はコメントを出しておらず、決定の有無ははっきりしない。

 ロシアの戦争継続能力に打撃を与える上では、債券利払いで資金を減少させるよりもデフォルトに追い込む方が効果的だと指摘する専門家の声も出ていた。これはまさに政治的な判断となり、いかにしてロシアを資金的に追い込めるのかが、検討されて、その結論がロシアをデフォルトに追い込むという可能性が出てきた。


2022年5月18日「海外投資家の米国債保有額は減少」

 米財務省が5月16日に発表した3月の国際資本収支統計における米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES)によると、海外投資家による米国債の保有高は7兆6136億ドルとなった。前月の7兆7109億ドルから減少した。

MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES https://ticdata.treasury.gov/Publish/mfh.txt

 3月の米10年債利回りは1%台の後半から2.5%近くまで上昇した。FRBが利上げを急ぐ姿勢を鮮明にしてきたことによる。

 あらためて国別の米国債保有残高を確認すると、日本の米国債保有額は1兆2324億ドルとなり、前月比739億ドルの減少となったが、引き続きトップは維持した。

 2位の中国は1兆396億ドルとなり、前月比で152億ドルの減少となっていた。参考までに3月末の外貨準備は前月末より258億ドル少ない3兆1880億ドルだった。

 増加した国は英国、ベルギーなど。減少した国はスイスや中国など。

 上位10か国の米国債保有額は下記の通り。

国、米国債保有額、前月比(単位、10億ドル)
日本(Japan)、1232.4、-73.9
中国(China, Mainland)、 1039.6、-15.2
英国(United Kingdom) 、634.9、+9.7
アイルランド(Ireland) 、315.9 +1.1
ルクセンブルク(Luxembourg) 300.8 -13.2
ケイマン諸島(Cayman Islands )、292.9、18.0
スイス(Switzerland)、274.1、-7.6
ベルギー(Belgium )、264.6、+6.2
フランス(France)、247.0、+7.4
台湾(Taiwan)、238.4、-10.1


2022年5月17日「国内企業物価指数は前年比プラス10.0%、統計開始以降で最も高い水準に」

 16日に日銀が発表した国内企業物価指数は、前月比プラス1.2%、前年比プラス10.0%となった。前年の水準を上回るのは14か月連続。

 第二次石油危機の影響が残る1980年12月のプラス10.4%以来約41年ぶりに2ケタの伸びを記録した。指数の水準としては1960年の統計開始以降で最も高い水準となった。(16日付日本経済新聞)。

 ちなみに指数は113.5となり、1980年9月と1982年9月に記録した112.5を上回り、過去最高となった。

 ロシアによるウクライナ侵攻などの影響で、石油・石炭製品などエネルギー価格が上昇し、鉄鋼や非鉄金属の価格が上昇したことなどが主な要因となった。

 石油・石炭製品の寄与度は0.37%、鉄鋼の寄与度は0.24%となっていた。

 NHKによると、先行きについて日銀は「外国為替市場で円安が進んだ影響も出ている。ウクライナ情勢が引き続き国際商品市況に与える影響を注意してみていきたい」と話していたそうである。

 企業間の取引で価格転嫁の動きが広がっている格好ながら、これが23日に発表される4月の消費者物価指数にどの程度影響しているのかも注目されよう。日銀は2%が近づいた「除く生鮮」から、「除く生鮮食品・エネルギー」に目標をシフトするかの動きとなっているが、日銀が発表している企業物価指数はとんでもない数値となっているのだが。

 これはインフレということではないのだろうか。デフレなので非常時対応の金融緩和を続けなければならないという状況にあるのであろうか。


2022年5月14日「財政ファイナンスに踏み込んだウクライナの中央銀行、どうして財政ファイナンスは名本を含む主要国で禁じられているのか」

 ウクライナ国立銀行(NBU)のシェフチェンコ総裁が、朝日新聞のオンラインインタビューに応じ、ロシアによる侵攻を受け、NBUは、戦費調達のため政府が発行する国債を直接引き受け、財政赤字の穴埋めをする「財政ファイナンス」に踏み込んだ(11日付)。

 ロシアによる進行を受け、止むにやまれず、ウクライナ国立銀行は「財政ファイナンス」に踏み込まざるを得なかったのであろう。しかし、財政ファイナンス、つまり中央銀行による国債の直接引き受けは、通貨の信認などを損なうおそれが指摘され、欧米の主要国では禁じ手となっている。日本でも財政法で禁じられている。

 しかし、現在、日銀が行っている毎営業日の10年国債カレントの無制限買い入れは、いったん市場を通した格好ながらも、10年国債の入札日にもオファーされたことで、日銀による国債引き受けに限りなく近い状況になりつつある。ウクライナと日本の状況は当然異なる。日銀は意地になって「財政ファイナンス」に近いことをやっているようにしか見えない。

 どうして財政法で日銀の国債引き受けを禁じたのか、その経緯を確認してみたい。

 大蔵省財務協会から出版されている「高橋是清暗殺後の日本」という本がある。太平洋戦争が如何なるものであったのかを財政面から見たものであるが、この本に戦後のインフレーションに関しての記述があった。

 「公債残高は敗戦時に1408億円、政府保証等の残高は960億円に上がっていた。その一方で、主要都市を焼け野原と化した無差別攻撃で生産設備が壊滅し我が国の生産力は大幅に低下していた。このようにして生じた大幅な需給関係のアンパランスは、当然のこととして激しいハイパー・インフレーションをもたらすことになったのである」

 日本での太平洋戦争での被害総額は653億円との記述もあり、それに比べて政府負債の大きさは約3倍以上もあった。その政府債務はハイパー・インフレにより帳消しとなった。 卸売物価は昭和9年から11年に比べ、昭和24年には220倍になり、まさに国債は紙くずと化してしまったのである。

 日露戦争では高橋是清日銀副総裁の努力により外貨建て国債の発行で戦費を調達した。これに対し、太平洋戦争では海外からの資金調達は困難であり、発行される国債は内国債であり資金のほとんどを国内から調達していた。その90%程度が国内資金で賄われているという現在置かれている日本国債を取り巻く状況に非常に似ている。

 1946年2月に政府はインフレの進行に歯止めをかけることを目指し、金融緊急措置令および日本銀行券預入令を公布した。5円以上の日本銀行券を預金、あるいは貯金、金銭信託として強制的に金融機関に預入させ、既存の預金とともに封鎖のうえ、生活費や事業費などに限って新銀行券による払い出しを認める、いわゆる「新円切り替え」が実施されたのである。

 1947年に制定された財政法では、「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」(第四条)として国債の発行を制限するとともに、「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。」(第5条)として日銀による国債の直接引き受けを禁じたのである。

 これは、戦前において日銀による国債引受などを通じ、安易に公債の発行による財政運営を許したことが戦争の遂行・拡大を支える一因となったことを反省するという趣旨に由来するものとされている。


2022年5月14日「指し値オペ強化の意味」

 12日に日銀が公表した「金融政策決定会合における主な意見」では最後に内閣府の出席者から次のような意見が出されていた。

 「日本銀行においては、今回の指値オペの運用明確化の趣旨について対外的に丁寧に説明いただくとともに、引き続き、経済・物価・金融情勢を踏まえ、適切な金融政策運営を期待する。」

 日銀は28日の金融政策決定非会合において、10年物国債金利について 0.25%の利回りでの指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施することとした。

 これについて主な意見では、次のような発言があった。

 「0.25%を上回る長期金利の上昇を容認しないとのこれまでの姿勢を明確にして、日々のオペが無用に材料視される事態を避ける観点から、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、0.25%での指値オペを実施することを予め宣言しておくことが適当である」

 0.25%を上回る長期金利の上昇を容認しないことによって、何に影響を与え、その結果とのような経路を辿って、賃金上昇を伴う物価の上昇にたどり着くのか。そういった丁寧な説明はない。

 「長期金利操作目標に沿った金融市場調節の継続姿勢を改めて示すことは、適切なイールドカーブ形成や緩和姿勢の明確化に資すると考えられる」

 10年債利回りを0.25%に抑えることのどこが、適切なイールドカーブ形成となるのか。欧米の長期金利の上昇にもかかわらず、日本の長期金利を押さえ付けて、ファンダメンタルズや外部環境を一切無視したイールドカーブを形成させて何をしたいのか。

 そもそも0.25%という水準にどのような意味があるのか。10年国債の入札日や発行日に無制限で10年国債を買い入れる指し値オペをして、財政ファイナンスになりかねないという認識は委員のなかでなかったのか。

 一人でも反対者が出ると市場は政策修正の可能性をみて動きかねないから、反対者を抑えたのか。それとも本当に政策委員9名全員が指し値オペ強化に賛成していたのであろうか。


2022年5月13日「国の長期債務残高が3月末時点で1017兆円に」

 財務省は10日、税収で返済しなければいけない国の長期債務残高が3月末時点で1017兆1072億円になったと発表した(10日付日本経済新聞)。

 これは10日に財務省が発表した「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」によるものである。

「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」 https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/gbb/202203.html

 「日本の公債残高」とは「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」の集計の中で内国債のうちの「普通国債(2022年3月末991.4兆円)」がそれにあたる。ちなみに現在、外貨建ての日本国債は発行されておらず、また残高もないためすべて内国債となっている

 この「普通国債」とは建設公債と特例公債(赤字国債)の残高である。借換債は元々、60年償還ルールによる建設公債と特例公債の借換であるため、ここでは借換債という区分はない。

 財政投融資特別会計国債(財投債)は償還が主として税財源により賄われる債務ではない。財投債はその償還や利払が財政融資資金による独立行政法人などへの貸付回収金により行われていることから、将来の租税を償還財源とする建設国債・特例国債とは異なる性質を持っている。

 交付国債とは、債券の発行による発行収入金を伴わず、出資金の払込、弔慰金の支払及び損失補償金等、国が金銭の給付に代えて交付するために発行する債券のことである。このため、債券の発行による発行収入金が発生しない。原則として利子が付けられず、かつ分割払いとなっている特殊な国債である。

 出資・拠出国債は、交付国債の一種で、わが国が国際機関へ加盟する際に、出資又は拠出する現金に代えて、その全部又は一部を払い込むために発行される国債である。

 政府短期証券は、財政法や特別会計に関する法律等に基づいて、国庫や特別会計などの一時的な資金不足を補うために発行されている。


2022年5月12日「ドルに連動するはずの暗号資産(仮想通貨)の急落をきっかけに、仮想通貨が総崩れ、金融市場も動揺か」

 暗号資産(仮想通貨)市場で、ドルなどの法定通貨と価値が連動するように設計されたステーブルコインの「テラUSD」が一時8割近く下落した。仮想通貨市場からの資金流出を背景に、価値を保つためのアルゴリズムが機能しなくなったためだ(12日付日本経済新聞)

 ステーブルコインとは価格の安定性を実現するように設計された暗号資産(仮想通貨)。裏付け資産がないため価格変動が激しく、決済手段としての活用が進んでいないビットコインなどの暗号資産の普及を促し、実用性を高めるために設計された。

 価格を安定させる仕組みの違いから、ステーブルコインは主に4つの種類に分けられる。米ドルなどの法定通貨を担保にコインを発行し、その法定通貨との交換比率を固定する「法定通貨担保型」、特定の暗号資産を担保にコインを発行し、価格を連動させる「暗号資産担保型(仮想通貨担保型)」、金や原油などの商品(コモディティ)価格の値動きに連動させる「コモディティ型」、アルゴリズムによってコインの流通量を調整する「無担保型」がある(野村證券のサイトの証券用語解説集より)。

 テラUSDはこの4つの種類のうちのアルゴリズムによってコインの流通量を調整する「無担保型」であったようである。発行主体が需給の状況を常にチェックしながら供給量を調節する。テラUSDは価格が1ドルを上回っている場合は供給量を増やして価値を低下させ、逆に下回っている場合には消却などで供給量を減らして価値を上昇させる。

 ところがビットコインなど仮想通貨市場の急落によりアルゴリズムが機能しなくなった。預ければ高い利回りつくことで資金を集めていた分散型金融(DeFi)プロジェクトが取り付け騒ぎに近い資金流出に見舞われたことが不具合の引き金になったとみられている。

 FRBは9日、金融安定性に関する最新報告書の中で、ステーブルコインの構造的な脆弱性により、取り付け騒ぎが発生するリスクがあると警告した。FRB)は9日、金融安定性に関する最新報告書の中で、ステーブルコインの構造的な脆弱性により、取り付け騒ぎが発生するリスクがあると警告したが、そのリスクが顕在化したようである。

 ステーブルコインのテラUSD(UST)の急落がビットコインを含め主要仮想通貨のさらなる価格下落を招き、下落スパイラルとなりつつある。

 法定通貨担保型のステーブルコインを発行する企業は裏付け資産をコマーシャルペーパーや譲渡性預金で運用するケースが多いとされ、もし取り付け騒ぎが起きれば、米国の短期金融市場などへに影響が及ぶ可能性がある。

 暗号資産(仮想通貨)のレバレッジ取引の証拠金要件を満たすために、ステーブルコインを利用するケースが増加しているとFRBは指摘しており、どこまで影響が及ぶかは予想できない。

 暗号資産(仮想通貨)の急落がリスク資産の下落を促す恐れもあり、また暗号資産(仮想通貨)に関連する企業の株価の下落要因ともなり、金融市場にとっても無視できない状況となりつつある。


2022年5月12日「日本の外貨準備高が統計開始以降最大の減少、為替介入の原資が減少」

 財務省が11日発表した4月末時点の外貨準備高は3月末に比べて2.5%減の1兆3221億9300万ドル(約172兆円)だった。単月で約339億ドルの減少幅は2000年4月の統計開始以降で最も大きかった。3月に続き、単月として最大の減少を2カ月続けて更新した(11日付日本経済新聞)。

「外貨準備等の状況(令和4年4月末現在)」 https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/official_reserve_assets/data/0404.html

 外貨準備とは、通貨当局が為替介入に使用する資金であるほか、通貨危機等により、他国に対して外貨建て債務の返済が困難になった場合等に使用する準備資産。財務省(外国為替資金特別会計)と日本銀行が外貨準備を保有している(日銀のサイトより)。

 この場合の通貨当局による為替介入とは、外貨を売って円を買うことを想定したものとなる。つまり円安ドル高が急激に進行した際に、外貨準備で保有しているドルを売って円を買うことになる。

 日本の外貨準備は主にドルと予想されている。そのドルの多くは証券に投資されている。証券つまり米国債が主体となり、その金額は約1兆ドルとなっている。

 今回、日本の外貨準備高が急減したのは、米国を主体に欧米の国債が売られ、米国債など保有資産の時価評価が目減りしたことが要因となった。さらにユーロの対ドル相場が下がり、保有するユーロ建て資産のドル換算額も減少した格好に。

 これによって円買い介入の原資がさらに少なくなったともいえるが、ドル売り介入そのものがあまり現実的でない上、介入の効果については特に流れと反対方向である場合には、あまり期待できるものではない。


2022年5月11日「いま日銀がやっていることは限りなく財政ファイナンスに近いものではないのか」

 日銀は10日に国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下)をオファーした。この日が10年国債の入札日であるにもかかわらずである。

 日銀のサイトには「日本銀行が国債の引受けを行わないのはなぜですか?」という問いに答える格好で次のような記述がある。

 日本銀行における国債の引受けは、財政法第5条により、原則として禁止されています(これを「国債の市中消化の原則」と言います)。

 これは、中央銀行がいったん国債の引受けによって政府への資金供与を始めると、その国の政府の財政節度を失わせ、ひいては中央銀行通貨の増発に歯止めが掛からなくなり、悪性のインフレーションを引き起こすおそれがあるからです。そうなると、その国の通貨や経済運営そのものに対する国内外からの信頼も失われてしまいます。これは長い歴史から得られた貴重な経験であり、わが国だけでなく先進各国で中央銀行による国債引受けが制度的に禁止されているのもこのためです。

 ただし、日本銀行では、金融調節の結果として保有している国債のうち、償還期限が到来したものについては、財政法第5条ただし書きの規定に基づいて、国会の議決を経た金額の範囲内に限って、国による借換えに応じています。こうした国による借換えのための国債の引受けは、予め年度ごとに政策委員会の決定を経て行っています。

財政法第5条:  すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。

 日銀は現在、10年物国債のカレント3銘柄を対象とする指値オペ(10年債指値オペ)を実施している。5月2日(月)以降、明らかに応札が見込まれない場合を除き、指値オペ を毎営業日オファーするとしている。そうであれば、国債の入札日であろうと指値オペをオファーしたのは当然かもしれない。

 しかし、もし国債の利回りが上昇しかねない状況となり、10年債カレントが0.25%に上昇した場合には、日銀は無制限で10年債カレントを買い上げる。11日にはあらたに10年債の366回が2兆7000億円供給されるが、入札した業者はそれをすべて日銀の買い入れに応じる可能性がある。

 昨日の米10年債利回りは3.2%まで上昇しており、そのまま帰ってきた場合には、日本の10年債利回りは昨日の0.245%から0.250%に上昇してきてもおかしくはなかった。たまたま、その後の米債が買われていたことで、そういった事態は回避されるかもしれない。

 しかし、いったん発行されたものを日銀が買い上げるかたちとはいえ、これは財政法第5条で禁じられている日銀による国債の直接引き受けに限りなく近づくことになる。つまり財政ファイナンスを行っているかに映りかねない。

 日銀が強固に金融緩和策を進めるため10年国債の連続での無制限買い入れまで実施した。これによって日米の金融政策の方向性の違いによって円安が進みやすくなる。さらに財政ファイナンスと認識されると国債への信認を毀損しかねず、それもまた円安要因となりかねない。

 もしかすると円安によってさらなる物価上昇を目指しているのかもしれないが、それにしても非常にリスクのある政策を行っていると指摘せざるを得ない。


2022年5月9日「金利1%上昇による効果は国民全員に毎年10万円支給と同等か」

 以前に政府が経済の緊急対策で国民一人あたり10万円を支給したことがあった。日本の人口が1億2500万人程度であり、単純にかけ算をすると11兆円程度を配った格好となる。もちろん支給のための多額の費用も必要となるが、その費用も必要なく、この11兆円程度の支給を簡単に毎年捻出する方法が存在する。

 日銀の資金循環統計によると3月末時点での家計の現金・預金は1092兆円程度存在する。

 つまり現在ほぼゼロ%の金利を1%上昇させることで11兆円規模の利子が生まれる計算になる(現金も預金入りするという仮定)。

 米国の中央銀行にあたるFRBは、5月4日のFOMCで政策金利のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標について、0.25%〜0.50%から0.75%〜1.00%へ引き上げることを決定した。

 イングランド銀行は5日の金融政策委員会で政策金利の1%への利上げを決定している。

 ドイツの10年債利回りは3月あたりまでマイナスとなる場面があったが、ここにきて1%台に上昇している。

 このように金利の1%というのは欧米ではめずらしいものではなくなっている。日銀がよく使うグローバルスタンダードが1%といえる(ECBは出遅れているが)。米国の10年債利回りは3%台に上昇しているぐらいである。

 日本では消費者物価指数が低迷しているため、強力な金融緩和を続ける必要があるとして、日銀は無理矢理に長期金利を0.25%に押さえ込んでいる。短期金利はマイナスだ。

 しかし、その消費者物価(除く生鮮)が4月分で日銀が目標とする2%に達する可能性が出てきた。コストプッシュだろうがなんだろうが、物価は上がってきているのであり、それに見合った金利を本来、我々は得られなければならないはずである。

 日本では家計の現金・預金が1092兆円程度も存在することで、金利上昇による効果は大きい。たしかに、金利が1%上昇して得られるはずの11兆円相当がそのまま個人消費に繋がるというわけではない。これは多額の費用をかけて10万円を配った際にも明らかである。

 しかし、費用を掛けずに同様の金額効果を引き出すことが可能となるのも事実である(ただし、預金が偏在しているので必ずしも同等の効果とはならないかもしれないが)。

 1万円札の流通量は100兆円を超えているとされる。そのなかにはタンス預金が多く含まれている。しかし、金利が動けば、こういったタンス預金が本当の預金に加わる可能性も出てこよう。

 金利がいざ上がるとなると金利が低いうちに設備投資などを行うとの企業も出てくると予想される。これにより、景気への良い刺激になることも予想される。

 もちろん債務の多い企業や住宅ローンを抱えた個人などへの負の影響もあろう。しかし、0%あたりから1%あたりへの金利上昇はプラス効果のほうが大きいのではなかろうか。これによって金融機関の動きも活性化し、機能不全と化した債券市場も息を吹き返す。

 最もネガティブな影響を受けるのは巨額債務を抱える政府である。しかし、実は予算を計上するにあたり、長期金利の予想水準を1%あたりに置いている(多少の余裕を持つためでもあるが)。国債費の試算のベースとなる2022年度の予算積算金利は「1.1%」となっている。つまり1%あたりまでの金利上昇であれば大きな影響は出てこないはずである。

 ということを書いたが、現在の日銀のスタンスを見る限りにおいて、「金融緩和は止めるな」状態にあり、1%の金利上昇すら夢物語である。その分、我々は本来得られるものを失っているとも言えるのではあるが。


2022年5月9日「イングランド銀行は4会合連続で利上げを決定」

 英国の中央銀行のイングランド銀行は5日、政策金利を0.25%引き上げて年1%にすると発表した。利上げは4会合連続で、米金融危機時の2009年3月以来約13年ぶりの高さになった。金融政策委員9人のうち6人の賛成多数で1%への利上げを決定した。マン委員、ハスケル委員、ソーンダーズ委員の3人が1.25%への引き上げを提唱した。

 中銀は保有資産の圧縮に向けた方針も表明。保有国債の売却計画の策定に着手し、8月の会合で示した上で、その後の会合で売却を開始するか決定するとした。

 いったん利上げにブレーキが掛かるかともみられていたイングランド銀行は、むしろ金融引き締めに積極的となりつつある。

 英国の3月の消費者物価指数が前年比7.0%上昇と、1992年3月以来30年ぶりの高い伸びとなったことも要因か。

 2四半期連続のマイナス成長という定義上のリセッション(景気後退)を年内は回避できるとみているものの、家計のひっ迫が響き、10〜12月(第4四半期)は1%近いマイナス成長に陥ると予想。10月にインフレ率が10%を超えるとみている。22年の賃金上昇率見通しは5.75%と、2月時点の予想から大幅に引き上げた。


2022年5月7日「2%の物価上昇を追い求めていたはずの日銀が、いざ2%が達成しそうになると今度は物価の目標先を変更するつもりなのか」

 総務省が6日発表した4月の東京都区部の消費者物価指数(CPI)は、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が101.3となり、前年同月比1.9%の上昇となった。

 プラスは8か月連続、伸び率は消費増税の影響があった2015年3月以来、7年1か月ぶりの大きさとなった。消費増税の影響がないときでは、1992年12月の1.9%の上昇以来となる。

 昨年4月から携帯電話通信料が大幅に引き下げられた影響がはく落し、前年同月比での上昇率は3月の同0.8%から一気に加速した。

 携帯電話通信料の指数への寄与度はマイナス0.29と3月のマイナス1.08に縮小した。この縮小分相当(0.79)が携帯電話通信料が大幅に引き下げられた影響分となる。4月は全国ではこの影響分は1.1%程度との見方となっている。

 エネルギー関連が24.6%と3月の26.1%ほどではなかったが高い上昇幅となっていた。電気代は25.8%、都市ガス代は27.6%、ガソリンは14.3%それぞれ上がった。エネルギー品目の上昇分だけで、寄与度は1.13ポイントとなった。

 また、生鮮食品以外の食料は2.3%上がり、上げ幅は3月の1.6%を上回った。こちらの寄与度は0.5ポイント。エネルギー関連と生鮮食品以外の食料によって1.63ポイント押し上げられた格好となった。

 5月20日に発表される4月の全国消費者物価指数(除く生鮮)は、携帯電話通信料が大幅に引き下げられた影響がはく落し、エネルギー関連と生鮮食品以外の食料品価格の上昇の影響もあり、日銀が目標としている2%近辺となりそうである。

 日銀も経済・物価情勢の展望(2022年4月)において、2022年度の消費者物価指数(除く生鮮)の予測(中央値)を前年同月比プラス1.9%としている。何故か切りの良い2%にしないで1.9%にするあたり作為すら感じるものとなっていた。

 ご存じのように日銀の物価目標は消費者物価指数(除く生鮮)であり、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数ではない。いやいや物価目標の作った際の目標は、生鮮食品を除く総合指数ではなく、「総合指数」そのものであった。4月の東京都区部の消費者物価指数の総合は前年同月比プラス2.5%となっていた。2016年9月の長短金利操作付き量的・質的金融緩和の決定時に、物価目標は総合から、生鮮食品を除く総合指数に置き換えた。

 その後、日銀が物価目標を生鮮食品を除く総合指数から、たとえば 「生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数ヶに置き換えたという話は伝わってこない。

 黒田総裁は4月28日の決定会合後の会見で次のように発言していた。

「(物価の)先行きについては、生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、携帯電話通信料下落の影響が剥落する2022年度には、エネルギー価格の大幅な上昇の影響により、いったん2%程度まで上昇率を高めますが、その後は、エネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想しています。この間、変動の大きいエネルギーも除いた消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、食料品を中心とした原材料コスト上昇の価格転嫁の動きもあって、プラス幅を緩やかに拡大していくとみています。」

 いつの間にか「変動の大きいエネルギーも除いた消費者物価の前年比」が物価目標のごとくなってしまっているが、いつ変更を行ったのであろうか。もちろん総裁の言いたいこともわかる。マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まった上での物価上昇が望ましい。

 しかし、そもそもいったん2%程度まで上昇したものがそのまま高止まりする可能性は本当にないのか。米国でもFRBは物価上昇は一時的と言っていたがその発言を取り消している。さらにマクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まった上での物価上昇のために、長期金利を抑えてそれが達成できるというのであろうか。

 我々が本来受け取れるはずの金利をなくすことで、マクロ的な需給ギャップ改善とか賃金上昇率が高まる保証はあるのか。助かるのは債務者つまり、住宅ローンを組んでいる人達もそうかもしれないが、最大の恩恵を受けるのは巨額債務を抱える政府となる。これはむしろ政府の財政規律を緩ませかねないものでもある。

 2%の物価目標が達成できるのであれば、むしろ正常化に向けて舵を切り、本来の金利の機能を復活させるべきである。しかし、どうやらそれはどうしてもやりたくはないようだ。しかし、すでに欧米では正常化に向きを変えてきていることで、日本の金融政策の異質性を浮き彫りにしかねない。これは海外投資家も当然理解しており、弱いところには付け込むチャンスとみている可能性も当然あろう。


2022年5月6日「トルコは通貨安で物価高騰、中国人民元は急落、いずれも金融緩和を行っている国なのだが」

 トルコ統計局が5日発表した4月の消費者物価指数(CPI)前年同月比上昇率は69.97%と、2002年2月以来約20年ぶりの高い伸びを記録した。昨年の通貨危機をきっかけに始まったインフレが、ロシアのウクライナ侵攻の影響による食品とエネルギーの価格上昇加速で一段と高まった(6日付ロイター)。

 昨年、トルコの中央銀行は物価が上昇しているにもかかわらず、大規模金融緩和を実施した。これによって通貨リラの急落を招き、輸入物価上昇を通じたインフレにつながった。トルコのエルドアン大統領は金融緩和策によって生産と輸出を促進し、経常黒字化を目指すとしており、物価高にも関わらず金融緩和を実施させて通貨安を招き、物価をさらに上昇させるという悪循環に至っている。

 そしてコントでは、6日午前の取引で、中国の人民元が急落した。オンショアとオフショアがともに対ドルで2020年11月4日以来の安値水準に落ち込んだ。ここにきて中国の人民元は下落傾向にあった、。その要因のひとつは新型コロナウイルスの感染拡大を止めるための上海などでのロックダウンがある。これによって中国経済の成長率の低下が懸念されているため、人民元が売られた側面がある。

 中国の3月の工業品卸売物価指数は前年同月比で8.3%上昇と大きく上昇しているが、3月の消費者物価指数が前年同月比で1.5%の上昇にとどまっている。とどまっているとはいっても上昇率は前月から0.6ポイント上がっている。これは国際的な原材料価格の上昇の影響などを受けたとみられ、今後はインフレが加速する懸念も出ている。

 消費者物価指数が低位で推移していたこともあり、中国人民銀行は景気対策として預金準備率引き下げなど金融緩和策を行ってきた。これも人民元の下落要因となり、通貨安によって物価をさらに上昇させるという悪循環に陥る可能性もある。

 トルコや中国以外にも強力な金融緩和を継続している国がある。この国も通貨安が進むリスクがあるとともに、4月の消費者物価指数は2%を超える可能性がある。そうなると消費増税の影響を除くと30年ぶりとなる。果たして世界的物価上昇圧力が強まっているなかにあって、金融緩和策を継続するというのはなかなかのリスクを抱えているように思われるのであるが


2022年5月6日「インフレ懸念が再燃、5日の米国株式市場でダウは1000ドルを超す下げとなり、前日の上げ幅を帳消しに」

 パウエルFRB議長の会見でFRBが今後、0.75%ではなく0.5%の利上げを継続するとの見方から、大幅な利上げはないとみて市場参加者は安堵。4日の米国株式市場は大きく値を戻し、ダウ平均は932ドル高となり、上昇幅、上昇率とも今年最大となった。

。しかし、昨日発表された1〜3月期の米労働生産性指数(速報値)で、賃金指標となる単位労働コストが1982年以来の大きな伸びになったことに加え、OPECプラスで大幅増産が見送られWTI原油先物が一時111ドル台に上昇したことから、あらためてインフレ懸念が強まった。イングランド銀行が5日に10〜12月期の物価上昇率が10%を超えるとの見通しを示したことなども影響か。

 米長期金利は一時3.10%と2018年11月以来の水準に上昇。米国株式市場では割高感が意識されやすいハイテク株などが売られて急反落となり、ダウ平均は大幅反落し1063ドル安と下落幅は2020年6月以来ほぼ2年ぶりの大きさ。結局、4日の上げ幅以上の下落幅となって前日の上げ幅を帳消しした格好に。

 FRBが0.5%の利上げ継続を打ち出したことでむしろ金融当局に対して、物価急騰に歯止めをかけられるか懐疑的な見方も出ていたようである。昨日の米短期金利先物市場では6月の0.75%の利上げ確率を約75%織り込んだ格好となるなど、大幅利上げを再度織り込みつつある。


2022年5月5日「パウエルFRB議長の発言を受けて米国株式市場、ダウ平均は今年最大の上げ幅に」

 4日のFOMCでは0.5%の利上げを決定した。0.5%の利上げは2000年以来となる。これについてパウエル議長は「インフレは進みすぎており、抑制は不可欠だ」と説明した。

 また、約9兆ドルに膨れ上がっているバランスシートについては、6月、7月、8月に毎月475億ドル圧縮し、9月から最大950億ドル圧縮すると表明した。いわゆるQTも同時に決定した。

 注目は今後の利上げのペースとなっていたが、これについてパウエル議長は会見で、0.75%の利上げを委員会は積極的には考えていないと発言。さらに「委員会では次の2会合において0.5ポイントの追加利上げを議題にすべきだとの認識が広く見られる」とした。つまり、6月と7月のFOMCにおいて0.5%ずつの利上げを示唆した格好となった。次回以降の利上げ幅を示唆することは極めて異例。

 金融市場では6月以降は0.75%以上の利上げを織り込みつつあった。このため、0.5%利上げが示唆されたことは、良い意味でのサプライズとなった。「米経済は非常に強く、金融引き締めに対応できる」とパウエル議長が強調したことも好感した。

 その結果、130円台をつけていたドル円は127円台に急落(円高ドル安)。米国株式市場で4日のダウ平均は932ドル高となり、上昇幅、上昇率とも今年最大となった。結果から見る限り、積極利上げへの懸念を強めていたマーケットに対して、その懸念をやや後退させ、株価の急落を防いだ格好となった。


2022年5月3日「米国の長期金利が3%台に上昇、日本の長期金利の約12倍の大きさに。利上げを急ぐ米国、緩和強化の日銀との金利の認識が正反対に」

 2日の米国債券市場では長期金利の指標になる10年国債利回りが上昇し(価格は下落)、一時3.01%を付け、2018年12月以来3年5か月ぶりの水準に上昇した。日本の長期金利となる10年国債の利回りは日銀によって0.25%に押さえ付けられており、米国の長期金利3%というのは日本と比べて約12倍の大きさとなる。

 5月3日、4日にFOMCが開催される。FOMCとは、Federal Open Market Committee(連邦公開市場委員会)の略であり、米国の金融政策を決定する会合のことである。ここで米国の中央銀行にあたるFRB、The Federal Reserve Board(連邦準備制度理事会)が、利上げを決定するであろうと予想されている。

 FRBは今年3月15、16日のFOMCで、政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を0.00〜0.25%から0.25%引き上げ、0.25〜0.50%とすることを決定した。いわばゼロ金利解除ともなり、2018年12月以来の利上げとなった。

 その後の米国の物価指数は上昇、もしくは高止まりしている。

 米労働省が4月12日に発表した3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.5%の上昇となり、変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は同6.5%上昇となった。

 米商務省が4月29日に発表した3月の個人消費支出(PCE)価格指数は前年同月比6.6%上昇と、前月の6.3%から加速し、1982年1月以降で最も高い伸びを記録した。FRBが物価の目安とする変動の大きい食品とエネルギーを除くコアPCE指数も前年同月比5.2%の上昇。2月は5.3%の上昇となっていた。

 ロシアによるウクライナ侵攻を受けての原油や天然ガス、石炭といったエネルギー価格が高止まりすることが予想され、穀物価格などが今後さらに上昇してくることも予想されている。

 FRBは物価上昇は一時的との認識をすでに後退させており、今後も物価の上昇を受けて、金融引き締めを急ぐ姿勢を明確化している。

 4日のFOMCでは0.5%の利上げとQTと呼ばれるFRBの資産縮小を決定すると予想されている。利上げ幅は0.5%以上となる可能性もなくはないが、それは次回以降かとの見方も強い。いずれにしても今後のFOMCでは連続して大幅な利上げが決定される可能性が高い。

 それを見越しての米国の長期金利の3%超えであった。

 これに対して日銀は戦時下のような金利抑制策を強化している。金利に対する認識がここまで極端に違うことで、それが外為市場などにも当然ながら影響を与えている。


2022年5月2日「ロシアのデフォルトは回避の見通しに。米当局がロシア保有のドルを枯渇させることが目的か」

 ロシア財務省は29日、今月4日に期限を迎えたドル建て国債の利払いと元本償還について、約6.5億ドル(約840億円)をドルで支払ったと発表した。支払いの猶予期限の5月4日までに国債保有者に届けば、ロシアの債務不履行(デフォルト)は回避される見通しとなる(30日付読売新聞)

 4月20日に世界の主要な金融機関の代表などでつくるクレジットデリバティブ決定委員会は、ロシアが3月4日に期限を迎えたドル建て国債の利払いなどを自国通貨のルーブルで実施したことについて、潜在的なデフォルト=債務不履行にあたると判断した。ロシアのドル建て国債がデフォルトと判断された格好となっていた。

 EU=ヨーロッパ連合の要請に応じて、4月15日までに主要格付会社はいずれも、ロシアの格付け業務を停止してしまった。通常、主要格付会社がデフォルトの格付けをすることで、デフォルトが正式に認定されるが、それができなくなってしまった。

 これによってクレジットデリバティブ決定委員会(以前はISDAの元にある委員会であったが、2018年からISDAは事務局の役割をおりていて現在は関わっていない)の判断が待たれたわけだが、具体的には「クレジットデリバティブの世界におけるクレジットイベント」が正式に認定されていたわけではなく、あくまで「潜在的(Potential)」との表記があり、近い将来に「クレジットデリバティブの世界におけるクレジットイベント」が認定されるであろうとの認識であった。

 このようにロシアのデフォルトは避けられないとの見通しが強まっていたが、ロシア財務省は利払いと元本償還のドル資金の約6.5億ドルを調達。その資金は米国の制裁対象外のロシアの銀行から送金され、中継銀行の米銀を経て、支払い役の米シティグループに届いたそうである。

 ロシア財務省は先月6日に、支払いを仲介する米金融機関に「ドル払いが拒否された」として、利払いと元本償還を自国通貨ルーブルで送金したと発表していた。しかし、米当局が米金融機関の関与を認めたことによって、今回、ドルによる支払いが可能になったものとみられる。

 クレジットデリバティブ決定委員会はドル決済でなければデフォルトになる可能性が高いとの判断を下していたが、ドルによる支払いがなされるとなれば、ロシアのデフォルトは回避の見通しとなる。

 ではどうして米当局が米金融機関の関与を認めたのか。これにはロシア国内のドル資金を枯渇させ、ウクライナ侵攻の戦費調達を防ぐ狙いがあるそうである。なるほどという展開となった。


2022年5月1日「消費者物価は4月にも前年比2%台に。消費者物価が2.0%台にあったのは、消費増税の影響を除くと30年前に遡る」

 4月の消費者物価指数(除く生鮮)は携帯電話料金の引き下げによる影響が1.1%程度なくなると予想されており、4月からは食品などの値上げも相次いでおり、原油価格も高止まりしていることなどから、前年同月比プラス2%という日銀の目標をクリアする可能性が高い。

 2%を超えてくるとなれば2008年9月以来となる。2008年7月から9月にかけて中国など新興国経済の急成長を受けて原油先物が大きく上昇しており、これにより消費者物価も一時的に2%台に上昇していた。

 この際には2008年9月にリーマン・ショックが起きている。金融市場では欧州のサブプライムローン問題などが発生し、原油価格の上昇はそれらを無視した投機的な動きのように見えていた。

 今回もロシアによるウクライナ侵攻という問題が起きていたが、これはむしろエネルギー価格や穀物価格の上昇を加速させる懸念がある。物価については押し上げ要因が多い。

 日本ではここに円安の動きが加わってくる。日銀と欧米の中央銀銀行の方向性の違いが円安の動きを加速させかねない。

 それでは2008年以前の全国消費者物価指数(除く生鮮)が2%台に乗せていたのはいつになるのか。

 総務省の消費者物価指数のデータによると2014年4月から2015年3月まで、そして1997年4月から1998年1月までも2%を超えていた。しかし、いずれも消費税の引き上げによる影響によるもので、これは参考にしかならない。

報道資料 https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf

 1989年4月に消費税がスタートしたが、この影響がなくなる1年後の1990年4月以降も消費者物価指数(除く生鮮)は2%台となっており、それが1992年12月まで続いた。

 消費税の影響がない年となれば1992年あたりに遡り、30年ぶりの2%台ということになる(筆者調べ)。

 当時の日銀の政策金利は公定歩合であったが、1992年4月にはその公定歩合を0.75%引下げ3.75%としていた。つまり短期金利ですら4%近辺にあった。1992年の長期金利は5%あたりにあった。

 日銀は物価目標を2%としているが、日本では消費税要因を除くと2008年の一時期か、バブル崩壊後の1992年あたりまで遡らざるを得ないことになる。

 今回の物価上昇が2008年のように一時的なものとなるのか。日銀はそのように考えているようだが、そうではなく2%の水準が続く可能性はないと言えるのか。

 日銀が発表している3月の企業物価指数が前年同月比で9.5%となり、比較が可能な1981年1月以降で最大の上昇率となったことも考えると、むしろ高水準が持続する可能性もありうるのではなかろうか。


2022年5月1日「偽札が出回っているので現金を確認させてとの犯罪被害で、2000万円ものの現金がだまし取られる。どうして2000万円の現金があったのか」

 「兵庫県警は、神戸市と兵庫県伊丹市の高齢男性2人が、警察をかたる人物らから「偽札が出回っているので、現金を確認させて」とうそを言われ、計4300万円をだまし取られる被害に遭ったと発表した。県警は詐欺容疑で捜査している」(27日付読売新聞)

 警察が現金を確認するようなことはないので、ご注意いただきたい。家族内で注意を喚起しておくことも必要かもしれない。

 神戸市長田区の男性(82)は計2300万円、伊丹市の男性(95)は約2000万円とキャッシュカード5枚を渡し、だまし取られたとか。それほどの大金を現金で保有しているということ自体が驚きであった。

 日本ではタンス預金が多いと言われるが、本当の意味で、家に大金を保管している高齢者はそれほどまでに多いのであろうか。

 日銀の資金循環統計によると3月末時点での家計の現金・預金は1092兆円程度ある。そして1万円札の流通量は100兆円を超えているとされる。そのなかにはこういった本当の意味でのタンス預金が多く含まれるのであろうか。

 今回の警察官を装った特殊詐欺犯たちは、一部の高齢者が大金を現金で持っているということを知った上で、このような犯罪を繰り返していたともみられる。

 何故、高齢者は多額の現金を自宅で保有しているのか。銀行など金融機関に預けたくないのは、心配だからという面はあるのかもしれない。太平洋戦争後に起きた預金封鎖などを子供ながらも直接見ていた世代、もしくはそれを親などから聞かされていた世代でもある。

 さらに現金の匿名性を意識していた可能性もある。しかし、いずれにしても多額の現金保有は今回のような詐欺被害に遭うリスクが高いこともたしかである。

 日本ではキャッシュレス化が進んでいないとされるが、こういった多額の現金保有もその遠因なのかもしれない。


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