. 若き知
2021年4月14日「桜井前審議委員は本当にリフレ派だったのか、量的緩和の物価に対する効果に懐疑的だったと」

 3月末まで日本銀行の審議委員を務めた桜井真氏は12日のインタビューで、日銀は3月の金融政策決定会合で利下げの機動性を高めたと説明した(13日付ブルームバーグ)。

 桜井前日銀審議委員は、いわゆるリフレ枠として送り込まれたとされていたが、どうもそのリフレ色は審議委員となってから次第に薄れていったようである。今回のインタビューでも現在の日銀の姿勢を日銀サイドから説明するような格好となった。

 桜井真氏は、歴史的な経済危機が発生しない限り、日銀はマイナス金利の深掘りなど追加金融緩和を控えるとの見解を示した。今回の日銀の点検でも追加緩和ありきではなく、もしものときに追加緩和で動けることを示した格好。

 利下げの際の金融仲介機能に対する副作用軽減策として導入した「貸出促進付利制度」については、利下げの必要性が差し迫っていることを示唆したものではないとも桜井氏は指摘した。

 さらに、金融機関は多角化やデジタル化といった企業の取り組みを支援するべきであり、日銀が構造変化への対応や脱炭素化などを同制度で後押ししていくことを「期待したい」と語ったそうである。

 日銀が現実に経済に対して本来できることは金融市場を通じた「後押し」であり、自ら積極的に物価を動かすといったものではない。それを理解した発言のように思われる。

 桜井氏は日銀のETFの買入について「基本的に金融市場が荒れている時だけ買えばいい」とも指摘した。荒れている時とはボラタイルな相場が起きたとき、日銀の買入でそれを少しでも沈めさせるというものであろう。相場急落時との表現を使っていないことは好感できる。日銀は株価下落時の救世主などではない。

 今後の政策議論に関しては、裏付けとなるデータが不確実な「期待」を過大に評価せず、もっと実体経済をみて判断を行うべきだと主張。就任当初から量的緩和の物価に対する効果に懐疑的だったとし、現行のイールドカーブコントロール政策の下で粘り強く金融緩和を続けていくことが重要と語った(13日付ブルームバーグ)。

 「期待」をコントロールして物価目標を達成させるというのはリフレ派だけでなく、日銀も主張していたはずであるが、「裏付けとなるデータが不確実な」としてそれをやんわりと否定している。これは非常に共感できる。桜井氏はリフレ派だといわれていたが、むしろこの発言は現在の日銀以上に現実派のように思われる。ただし、本当に就任当初から量的緩和の物価に対する効果に懐疑的だったのであろうか。


2021年4月13日「中国デジタル人民元を脅威とする米国、しかし、中央銀行デジタル通貨の普及はあまり現実的ではない理由」

 中国のデジタル通貨計画が勢いを増していることから、米国では財務省と国務省、国防総省、国家安全保障会議(NSC)の当局者が潜在的影響を理解する取り組みを一段と強めているという。米政府当局者は国際金融システムの現体制への差し迫った挑戦についてはあまり懸念していないものの、デジタル人民元の流通方法や、米国の制裁を回避して使用できるかどうかについて理解したい考え。関係者が匿名を条件に語った(12日付ブルームバーグ)。

 中国は昨年10月にハイテク都市の深センを皮切りにデジタル人民元の大規模な実証実験をスタートさせた。デジタル人民元とは、中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency、CBDC)と呼ばれるものとなり、それ自体が法定通貨となる。中国は電子決済の割合が高い国であるとともに、現金そのもの使用度は比較的低く、デジタル通貨の発行に積極的と言われる。

 デジタル人民元の普及はその利便性だけでなく、中国の国家としての国際的な位置づけも重要なのであろうとの指摘もあり、デジタル人民元は基軸通貨のドルへの対抗策、新興国の取り込みといったことが想定されているとみられる。中国は、中央銀行が発行するデジタル通貨をめぐり国境をまたぐ決済システムの研究を加速するとも報じられた。

 日銀による中央銀行デジタル通貨の実証実験も今月開始された。この日本銀行のCBDCに関して、一般リテールは日本銀行に口座を設けるのではなく、民間金融機関に口座を持って、その口座でCBDCを利用することが想定される。

 個人が日本銀行に口座を持ち、それを日銀が管理運用するというのは現実的ではない。あくまで発行体は日銀ながらも、その管理運用については既存の金融機関が行うことを想定されていよう。

 ただし、日本では民間のデジタル通貨のみならず、CBDCについても現実にはそれほどのニーズはないと思われる。

 これは基軸通貨ドルを持つ米国でも同様であろう。米国の中央銀行であるFRBのパウエル議長は中銀デジタル通貨(CBDC)を「最先端で研究していく」と表明していたが、これはブルームバーグの記事にもあるように中国を意識したものであろう。

 ただし、中国もそのものも、中国全土でデジタル人民元を普及させることは考えていないのではないかとの指摘がある。

 「ディエム」などのデジタル通貨は金融の根本から変革させるような潜在力を持つ。しかし、民間企業が発行するデジタル通貨や決済システムなどへの各国政府による危惧は強い。だからといってCBDCならば問題なく普及するかといえば、それはその国の事情によって異なるであろう。現金の流通量が大きく減少したスウェーデンではデジタル通貨導入を進めているとされるが、これに対して日本などは極めて慎重になっている。

 CBDCは匿名性を失わせることで、特に政治家などはこの普及を嫌がるのではないかとも思われる。そのシステムの構築そのものも膨大なものになりかねない。人口がそれほど多くない国では可能かもしれないが、億を超える国民のひとつひとつの決済をすべて管理できるシステムそのものも現実的ではないのではなかろうか。


2021年4月12日「日銀の黒田総裁の在任期間が歴代2位とのNHKニュースの良い意味での違和感」

 日銀の黒田総裁は、6日で在任期間が2940日となり、歴代2位に並びましたと6日にNHKニュースで報じられた。昭和30年代に日銀総裁を務めた山際正道に並んで歴代2位の長さとなったそうである。

 そうなのか、程度のニュースではあったが、ところどころに気になる箇所があり、それを感じたのは私だけではなく、市場参加者も話題にしていた。

 日銀の黒田総裁は、2013年3月に就任。2%の物価上昇率の目標を2年程度で実現すると宣言して、就任直後に大規模な金融緩和策を打ち出し、「黒田バズーカ」とも評された。その後も、市場の意表を突く「サプライズ」の追加緩和を実施し、2016年1月には日銀史上初めてとなる「マイナス金利政策」の導入を決めるなど、積極的な金融緩和を続けてきましたが、この間、物価目標は一度も達成できていませんと、記事にはある。

 ここで物価目標の未達成を強調していた。その理由も日銀は点検などで示していたものの、特にNHKはそれについてはコメントはしていない。

 その点検について、日銀は先月、金融緩和策の「点検」を行い、大規模緩和の長期化に備えて各種の施策の見直しを決めましたが、金融政策は一段と複雑化したという指摘も出ていますとコメントしていたのである。

 点検の内容はさておき、結果として金融緩和の深掘りを副作用を控えた上で行えるようにするため、「一段と複雑化」させたのは確かだが、「複雑化」を強調して報じたものはあまり見たことはない。

 そして、この記事では次のような表現もあった。

 「感染症の影響が長期化するなか、日本経済を下支えしながら物価目標を実現できるかに加え、金融政策の正常化に向けた道筋をどう示すのかが、引き続き課題になります。」  「金融政策の正常化に向けた道筋をどう示すのか」というところは実は大きなポイントになる。しかし、現在の日銀は金融政策の正常化に向けた姿勢などは一切示しておらず、むしろ追加緩和が可能であることを強調しているかにみえる。

 何故、物価目標は達成できなかったのか。その理由は言うまでもなく、物価を自由にコントロールなどできないという現実が見えただけである。

 その時々の経済物価情勢に応じ、柔軟に金融政策を変更し、特に金融市場に対し大きな変動をできるだけ抑えることが本来、日銀の金融政策には求められる。

 つまり現在日銀が行うべきは「一段と複雑化」させることではない。必要とされるのは「金融政策の正常化に向けた道筋をどう示すのか」ということである。これを表立って日銀は表明できないものの、NHKがまったくの取材なしに記事を書いたとは思えないこともあり、それを手探りしているのではとも思わせるような記事であった。


2021年4月11日「ビットコインは6万ドルを突破、17世紀のチューリップバブルを彷彿とさせるビットコイン相場」

 2017年12月に、当時の欧州中央銀行(ECB)のコンスタンシオ副総裁(ポルトガル出身)は、2017年17世紀に発生したチューリップバブルを引き合いに出し、「ビットコインはチューリップのようなものだと言える。数日間で40%、50%上げ下げするものに賭けたい人のための投機手段だが、通貨でないことは確実だ。中央銀行や金融政策への脅威になるとは見ていないことは確かだ」と述べた。

 その後もビットコインは途中の上げ下げはあったものの、結果として値上がりを続けることになり、6万ドルを超えてきた。

 ビットコインはコインという名称は付いているものの、通貨としての利用というよりは、一部の人達による投機的な利用が主体のように思われる。以前、ビットコインなどは仮想通貨と呼ばれていたが、現在は呼び名を暗号資産とあらためられている。

 以前にも指摘したが、このビットコインは17正規で起きたチューリップバブルを彷彿させるものである。それでは17世紀にオランダで起きたチューリップバブルとはどのようなものであったのか、振り返ってみたい。

 17世紀はじめのオランダは、商人が世界各地に進出し、ヨーロッパで最も経済が発達した国となった。所得水準がヨーロッパで最高となり、消費や投資が活発化した。株式会社に加え、銀行、複式簿記、為替手形、そして証券市場などが発達し商業資本主義の基礎を築き上げた。

 世界最初の中央銀行はスウェーデンのリクスバンクと言われているが、1609年に市の条例で設立されたアムステルダム振替銀行ではないかとの見方もある。預金には金利はつかず、保有する金の範囲でしか紙幣を発行せず、融資はほとんど行わなかった。こうしたアムステルダム振替銀行の高い信用などを背景に外国為替の割引が活発に行われ、これによりアムステルダムが国際的な取引で支配的な地位を確立したのである。

 1530年に設立されたアムステルダム取引所では商品、為替、株式、債券そして海上保険などあらゆる種類の金融商品や金融サービスが売買されていた。取引の主流は先物取引となり、穀物や香料、砂糖や銅、硝石などの先物取引が行われていた。

 ヨーロッパで最も経済が発達した国となったオランダは、所得水準がヨーロッパで最高となり、消費や投資が活発化して行く。オランダのその地形や気候により花の栽培に適しており、特に好まれたのがチューリップ栽培であった。オスマン・トルコからチューリップが持ち込まれた当初は、貴族や商人など一部の収集家だけで取引されていたが、1634年あたりから一般個人も値上がり益を狙って、チューリップ市場に参入するようになったのである。チューリップ球根の先物取引も行われていた。

 珍しい品種が高値で取引されるようになり、1636年から1637年にかけて投機熱は最高潮に達した。居酒屋などで行われた先物取引などが主体となり、次第に実態のない取引が行われるようになる。珍しい球根は家一件分といったように、すでに価格は現実からかけ離れたものとなり、貴重品種以外の品種も高値で取引されるようになった。

 1637年2月にチューリップ市場は突然暴落した。暴落の理由らしい理由はなかったものの、春になると受け渡しの期日が来ることで、その前に売ろうとしたところ、買いが入らず、売りが売りを呼ぶ展開となったのではないかといわれる。先物の決済が行われず、債務不履行が次々に起こる。混乱が収まったのはやっと政府が乗り出した1638年5月である。

 数千人規模で支払いきれない債務者がいたといわれたオランダのチューリップバブルであるが(バブルという言葉そのものは、のちの南海バブルから使われる)、そのバブル崩壊による実態経済への影響はほとんどなかったといわれている。このためチューリップの熱狂が本当にあったのかどうか疑問視する見方もあるが、これをきっかけにオランダのチューリップが世界的に広く認識され、オランダでの花き産業が発達していったことも事実である。

 このチューリップ・バブルを彷彿させたのが、ビットコイン・バブルとなる。その値上がりペースはチューリップ・バブルをも超えたとされる。

 チューリップバブルほどの混乱はいまのところ起きていない。しかし、結果としてはビットコインの価格変動はバブルであったともみなされよう。その結果はどうなるのかは、やはり過去の歴史が示しているのではないかとも思われるのである。


2021年4月10日「今はバブルなのか、2000年のITバブルの崩壊事例との比較」

 2002年に元FRB議長のグリーンスパン氏は「バブルは崩壊して、初めてバブルと分かる」という言葉を残している。これは2000年における米国のITバブルの崩壊をみてのものであった。

 グリーンスパン氏がFRB議長として在任中にITバブルが発生した。グリーンスパン氏は1996年の講演で、米国株式の上昇に対し、「根拠なき熱狂が資産価格を不当につり上げている」とリスクを指摘したものの、ITバブル発生を防ぐことはできなかった。 

 2000年の春以降、IT関連企業の収益に改善の兆しがみられなかったことなどから、IT関連企業に対する期待は急速に縮小した。1999年6月から2000年5月にかけて、FRBは政策金利を4.75%から 6.5%へと引き上げていた。このFRBの利上げも重なったことから、株価は急速に下落し、ITバブルは崩壊した。

 1995年に米マイクロソフトのウインドウズ95が発売され、ブラウザ・ソフトのネットスケープが新規公開を果たした。このあたりからインターネット株ブームが始まった。1998年から1999年にかけては、ベンチャーの創業資金や株式への投資資金の調達が容易であったことなどを受け、IT関連企業の株価は急速に上昇。その後も過度な投資が行われたことから、IT関連企業の株価は急騰し、バブルへと発展していったのである。

 実は現在もバブルを匂わす兆候があちらこちらでみられている。投資家は株式を購入するために巨額の資金を借り入れていることが指摘されていたが、ニューヨーク証券取引所証拠金債務、つまりポートフォリオに対する借入金は前年同期を49%も上回り、これほど増加したのはITバブル崩壊前の1999年以来だとか。

 今回の米国を主体とする株式市場の上昇の根拠としては、政府の大規模な財政政策と中央銀行による大胆な金融政策がある。根拠はあるものの、その資金が資産価格を不当につり上げている可能性は十分にあり、その結果、アルケゴスの巨大損失を招いた。

 ここにきて長期金利の上昇はいったん落ち着いてはいるが、いずれ2%を超えて上昇してくる可能性も十分にあり、この金利上昇が、バブル崩壊のきっかけになる可能性もある。

 ただし、FRBのパウエル議長は8日、景気回復は不均一で不完全なままだと述べ、金融緩和の縮小には米国経済の一段の改善が必要との見方を示したように、大胆な金融政策が今後も続き、バブルがさらに膨らむ可能性もある。

 日本のバブル崩壊前(1989年)もすでに長期金利は上昇基調となっていた。そこからタイムラグがあってのバブル崩壊となった。

 グリーンスパン氏の言にもあったが、バブルは崩壊して、初めてバブルと分かるため、現在がバブルと認定はできない。また、それが崩壊すると指摘しても、オオカミ少年としてみられる可能性も高い。それでも、そのリスクは意識しておくべきで、細かい兆候も見逃すべきではない。


2021年4月8日「大手銀行はコンビニATMの手数料を改定、最高で一回あたり330円となるケースも」

 4月1日から消費税の総額表示が義務化された。これとは別に4月は価格が改定されるものもある。そのうちのひとつが、コンビニのATM利用手数料である。

 三菱UFJ銀行と三井住友銀行は、これまでローソンのATMで平日の日中に現金を引き出した場合、手数料は110円だったが、これが220円に。三菱UFJは、セブンイレブンのATMではすでに220円だったが、ローソンでも同じ手数料に合わせる格好になる。両行ともに平日の日中以外と土日・祝日については、220円から330円に値上げされる(3月31日付東海テレビ)。

 注意すべきは、三菱UFJ銀行では毎月25日と月末日の8:45〜18:00はこれまでの110円から無料、それ以外の時間は220円から110円となることである。それ以外の平日の8:45〜18:00が110円から220円に、それ以外の時間は220円から330円となる。使用頻度の高い日は値下げする反面、それ以外の日の日中を除くと330円に値上げされる。

 三井住友銀行は毎月25日と26日の8:45〜18:00がこれまでの110円から無料に。上記以外の時間帯は220円から110円に。25日と26日を除く、それ以外の平日の8:45〜18:00は110円から220円に。上記以外は220円から330円に値上げされる。

 コンビニによって手数料が変化するので注意も必要だが、日にちと時間帯によるが、最大の330円というのは大きな負担となりうる。

 金融機関によって手数料は異なることで、手数料をなるべく抑えようとすればそれは可能となる。三菱UFJ銀行では25日と月末、三井住友銀行では毎月25日と26日になるべくコンビニATMで現金を下ろすようにすれば負担は軽減される。

 しかし、それでもどうしても現金が必要なときは、一回あたり220円なり330円の手数料が掛かってしまうこともありうる。

 都会に住んでいると、その銀行のATMで下ろせば問題ない、となるかもしれないが、郊外や地方在住者は、自分の銀行の支店なりATMがある場所まで距離がある人が多いはず。

 4月2日に発表されたOffice Withによるアンケート調査によると、過去1か月以内に81%の人がコンビニATMを利用したことがあるとの結果が出ている。その多くの人は当然ながら、手数料の存在は認識している。

 しかし、日本では便利さ、災害時のことなどを考慮して、どうしても現金至上主義のところがあり、銀行の支店が減少するなか、コンビニのATMに頼らざるを得ない側面もあろう。

 この対応策の一環として、各銀行はデビットカードを普及させようとしているが、なかなか普及が進まないのが現実である。デビットカードとは、ショッピングや飲食時の支払などに利用できるカードで、クレジットカードとは異なり、口座から即時引き落としされる。現金を使わなくて済むものではあるが、災害時を考えると現金が優先されてしまう面もあるのかもしれない。

 いずれにしても、日本でもキャッシュレス化は進んでいるものの、一定の現金需要はどうしても残り、銀行の支店などに行くのではなく、近くのコンビニATMの利用が多くなってしまう。在宅勤務が拡がれば、コンビニATMの利用がさらに広がることも想定される。

 コンビニATMがある意味、金融のひとつのインフラともなっていることで、費用負担等はあるのかもしれないが、この手数料についてはできれば値上げは避けてほしいと思う。


2021年4月8日「IMFは1980年以降で最大規模の世界経済の回復を予測」

 国際通貨基金(IMF)は、6日に改定した世界経済見通しを発表し、このなかで2021年の世界の経済成長率見通しを6.0%とした。1月に今年の世界成長率予測を5.5%に引き上げており、そこから0.5%の上方修正となる。

「IMF世界経済見通し」IMFの日本語サイトより https://www.imf.org/ja/Publications/WEO/Issues/2021/03/23/world-economic-outlook-april-2021

 もし6%の経済成長が実現すれば現行のIMF統計で遡れる1980年以降で最高となる。

 IMFのレポートの見通しによると、「この上方修正は、一部の経済大国における追加の財政支援や、年後半にワクチン接種効果による景気回復が期待されること、移動量の低迷への適応が続くことを反映したものです。」とある。

 一部の経済大国とは、特に米国のバイデン政権を意識したものであろう。ワクチン接種に関しては、日本はさておき、米政権は19日までに全成人をワクチン接種対象にするよう州政府に要請するなど、国によってはかなり普及が進み、それが経済活動の再開に直結しつつある。

 国別でみると、先進国ではトータルで5.1%。国別で、米国とスペインが6.4%と高い。スペインのサンチェス首相は8月末までに人口の約70%がワクチン接種を完了するとの見通しを表明している。

 続いてフランスの5.8%、英国の5.3%、カナダの5.0%と続く。日本は3.3%と先進国のなかでは最下位となり、次はドイツの3.6%となっている。

 日本での感染率等は他の国と比べ低いものの、ワクチン接種は進まず、景気そのものの回復も鈍い。ドイツでは、ワクチン接種が英国やイスラエル、米国に遅れを取っていることに加え、数か月に及ぶ規制にもかかわらず新型コロナウイルスの感染が拡大している。これが経済回復の重しとなっているようである。

 新興国と発展途上国では、トータルで6.7%と先進国より高い。国別ではインドの12.5%、中国の8.4%が目立つ。インド政府は夏までに3億人にワクチンを接種する計画となっている。中国もワクチンの接種を強化している。

 IMFのレポートでは、「パンデミックの今後の展開や、ワクチンが牽引する経済活動の正常化が進むまでのつなぎとなる政策支援の有効性、金融環境の動向に関連して、予測を取り巻く不確実性は大きなものとなっています」ともある。

 しかし、大規模な経済対策や非常時対応の中央銀行による金融政策は、経済が正常化に向かえば、より強力に経済に作用する可能性がある。経済の正常化が当然、優先され、経済政策や金融政策の「正常化」は遅れる可能性も高い。その分、経済成長は記録的なものとなる可能性もあり、それは物価にも影響を与えよう。それに応じて長期金利には上昇余地が生まれることになる。


2021年4月7日「政府が進めている給与のデジタル払い(スマホ決済への直接入金)は止めるべき」

 内閣府は5日、規制改革推進会議の作業部会を開き、給与をスマートフォンの決済アプリに直接入金する「デジタル払い」について議論した。厚生労働省は会合で、2021年度のできるだけ早期に制度化を目指すと表明。この問題を議論している労働政策審議会分科会の次回会合で具体的な制度案を示す方針を明らかにした(5日付時事通信)。

 銀行口座を介さない給与のデジタル払いは、政府の成長戦略で2020年度中の実現を目指すとしていた。この政府の方針に則り、「デジタル払い」具体化しようとしているが、本当にそれは望まれているのであろうか。

 時事によると、連合など労働界は、スマホ決済の安全性に対する懸念から、解禁を急ぐ政府方針に反発している。当然であろう。スマホ決済は乱立し、その一部では、不正利用された事件などが発生している。連合は決済事業者が経営破綻した場合の顧客保護なども問題視している。

 問題となるのはそれだけではあるまい。

 たしかにスマホ決済に直接、入金されるのはありがたい人はいよう。さらにコロナ禍にあってできるだけ現金に触れたくない人も多いかもしれない。

 しかし、給与をすべてスマホ決済に入金してほしいというニーズはどれだけあろうか。スマホ決済の安全性を考慮すれば、現状は銀行口座の方が安心できるはずで、それなりの額の金額をそのままスマホ決済に置きたい人はどれだけいるのか。

 そもそも銀行口座に給与が振り込まれることで、公共料金や携帯の料金、クレジットカードや住宅ローンなどの引き落としをその口座で行っている人は多いはずである。コロナ禍でカード引き落としはますます増えている。

 給与を現金で受け取っている人は限られていると思われ、銀行口座を持たない人に向けた措置であることも当然考えづらい。

 全部ではなく給与の一部、たとえば毎月5万円をスマホ決済に振り込み、残りは銀行口座で、などという選択肢もあるかもしれない。しかしそれは企業の人事などの担当者からすれば、それぞれで勝手にやってくれとなろう。社員それぞれが使うスマホ決済はまちまちであろうし、口座を確認し入金手続きをするだけでもかなりの手間となる。

 給与を振り込むのではなく、もっと容易に安く、銀行口座にある資金を決済アプリに入金できるような仕組みを整える方が先決ではなかろうか。

 政府は果たしてデジタル払いを使う側の利便性やメリット、その反対側にある煩雑性やデメリットをしっかり意識して、これを提言しているのであろうか。

 デジタル化やキャッシュレス化を進めたいとの政府の意向もわからないではないが、もっと現場の声を聞いた上でこういったものは進めるべきである。振込先の選択肢を増やすという意図もあるのかもしれないが、この「デジタル払い」についてはデメリットがメリットを上回ると思われ、促進すべきとは思えない。


2021年4月6日「好調な米雇用統計を受けての米債の動きは利上げを意識か」

 2日に発表された3月の米雇用統計では、非農業雇用者数が前月比91.6万人増となり、市場予想の65万人増程度を大きく上回り、昨年8月以来の大幅な増加となった。2月の雇用者数は37.9万人増から46.8万人増に上方修正され、1月分も16.6万人増から23.3万人増へ上方修正された。

 3月は全ての業種で雇用者数が増加したほか、労働参加率も上昇した。失業率は6.0%と、2月の6.2%から低下。しかし、コロナ禍に伴う「雇用されているが休職中」の人の扱いが引き続きデータのゆがみとなっている。こうした影響を除くと失業率は6.4%だった(2日付ロイター)。

 米国のバイデン大統領は、好調な内容となった雇用統計を称賛すると同時に、新型コロナワクチンの普及など「これまでに遂げた進展が反転する恐れがある」と気を緩めないよう釘を刺した。また、米国はインフレリスクに直面していないとの見方も示した。

 たしかに現状、米国ではインフレリスクに直面しているわけではない。しかし、物価が今後上がるであろうとの兆しはあちらこちらで出てきている。

 2日の米国市場は、グッドフライデー(聖金曜日)の祝日のため、株式市場や商品の立ち会い取引は休場となった。債券市場は東部時間正午までの短縮取引、いわゆる半ドンとなった。

 その米国債券市場では、期間の短い国債主体に利回りが上昇した。長い期間の国債の利回りも上昇したのだが、上げ幅は短い方が大きい。短い金利のほうが中央銀行であるFRBの動きに影響受けやすく、これはFRBが想定しているよりも早い時期に行動に出る可能性も意識した動きといえる。

 すぐに利上げがあると予想したわけではないが、年内に緩和縮小を巡る討議を始めガイダンスを修正する可能性があるとの見方が出るなど、利上げ時期が想定以上に前倒しされる可能性を意識した米長期金利の動きといえた。

 市場参加者の思惑、もしくはそれをリスクと捉えて先んじて動いたことではあるが、それだけ米長期金利には上方圧力が掛かりやすい地合であるということも言える。2日の米10年債利回りは1.73%に上昇したが、1.9%もいずれ視野に入ってこよう。


2021年4月5日「日銀はいよいよデジタル通貨の実証実験を開始、デジタル通貨時代到来というよりも念の為の準備という様相も」

 本日5日、日銀は「中央銀行デジタル通貨に関する実証実験の開始について」をサイトにアップし、デジタル通貨の実証実験を開始したこと表明した。

 これによると、今般、必要な準備が整い、本日より実証実験(概念実証フェーズ1)を開始しましたので、お知らせしますとあり、概念実証フェーズ1においては、システム的な実験環境を構築し、決済手段としてのCBDCの中核をなす発行、送金、還収等の基本機能に関する検証を行う予定。実施期間は、2022年3月までの1年を想定している。

 日銀の黒田総裁は3月16日のFIN/SUM(フィンサム)2021における挨拶のなかで、中央銀行デジタル通貨(CBDC)についても言及した。

 「最後に、中央銀行デジタル通貨(CBDC)について、一言触れておきたいと思います。日本銀行では、昨年10月に中央銀行デジタル通貨に関する取り組み方針を公表したあと、この方針に沿って、実証実験に向けた準備を進めてきました。この春からはいよいよ実験を開始する予定です」(日銀のサイトにアップされた挨拶文より)

 日銀による中央銀行デジタル通貨の実証実験は、3段階に分けて行われる。令和3年度の早い時期に始めるとしている第1段階の実験では、発行や流通といったCBDCの基本機能に関する検証を行う。

 これが今回開始される第一段階となる。第1段階の実験を1年程度行った上で行われる第2段階では、保有金額に上限を設定できたり、通信障害といった環境下でも利用できたりするかなど、通貨に求められる機能を試す。第2段階の具体的な期間については明らかにしていない。第3段階では実際に民間事業者や消費者が参加して、実用に向け実験を行う計画となる。

 黒田総裁は、日本銀行として、現時点でCBDCを発行する計画はないとの考え方に変わりはないとしている。しかし、決済システム全体の安定性と効率性を確保する観点から、今後の様々な環境変化に的確に対応できるよう、しっかり準備しておくことが重要であると考えているとも指摘した。


2021年4月5日「日本の長期金利の調整が大幅に遅れる懸念も」

 金利は本来、経済実態に応じて動くものとなる。もちろん、それだけでなく需給やテクニカルに応じて動く。

 教科書的には景気が回復し、物価が上昇するとなれば、金利は上昇する。これが普通の姿であり、金利が上昇することで、設備投資のオーバーヒートなどを抑えることになる。それによって景気の過熱を抑えるような仕組みとなっている。景気が悪化し、物価が下落基調となれば、金利は低下する。これによって設備投資などを後押しするような格好となる。

 たとえば、2日に発表された米国の3月の米雇用統計では、非農業雇用者数が前月比91.6万人増と市場予想の65万人増程度を大きく上回り、昨年8月以来の大幅な増加となった。これを受けて米国の景気の回復が意識され、米長期金利は上昇した。

 長期金利はこのようなファンダメンタルズと呼ばれるものによって市場参加者の思惑も加わり、先んじて動く習性を本来持っている。米雇用統計を受けてFRB予想よりも早期に利上げに動く可能性があるとの観測も背景にあった。

 短期金利は中央銀行が物価の安定のために操作して誘導するが、長期金利は市場参加者の思惑によって市場で形成され、揺れ動くことにより、より適正な水準を模索することになる。

 長期金利(10年国債の利回り)に影響を与えるものとしてのひとつに国債の需給がある。国債の需要側としては本来、国内の金融機関などがどれだけ国債へのニーズがあるのかに応じて計られる。これに対して供給側としては国がどの程度、国債を発行するのかによって左右される。

 本来、長期金利は株式や外為などと同様に市場で形成され、参加者の思惑で値が動く。その市場心理は債券先物のチャートなどで示されることで、テクニカル分析も可能となる。つまり先行き予測に応じて、市場参加者が動きやすくなる。

 以上がある意味、教科書的な見方であるが、現在はこれらがすべて日銀の大規模な金融緩和政策、「長短金利操作付き量的・質的緩和」と呼ばれるものによって抑えられてしまい、市場参加者は身動きができない状態にある。性格には日銀が身動きが取れなくなり、米国のような中央銀行の金融政策の先行きを読んだ動きが日本では起きにくくなってしまっている面もある。

 世界的なリスクが蔓延している最中であれば、リスク回避による国債買いという動きによって長期金利が抑えられる。この状況であれば、一見、長期金利が押さえ付けられているという債券市場の異常さは感じられないかもしれない。

 しかし、リスクが回避され、あらためて景気が回復し、物価が上昇する兆しが出て、そのなかにあって国債の巨額の発行が続くという状況は、本来であれば、長期金利の上昇によってそれらが調整されるべきものである。

 長期金利の上昇を無理矢理に押さえ込んでしまうと、その反動がいずれ大きく出てくる可能性を強めることにもなりかねない。ファンダメンタルズや需給に応じた長期金利の調整が遅れればおくれるほど、跳ね上がるエネルギーが蓄積されることもありうるのである。


2021年4月4日「ミャンマーの紙幣発行を困難にさせたドイツのギーゼッケ・アンド・デブリエントという会社とは」

 ドイツの総合印刷企業「ギーゼッケ・アンド・デブリエント」(G+D)は3日までに、ミャンマー政府への紙幣の印刷システム技術や原材料の供与を停止したと発表した。ミャンマー通貨チャットの紙幣発行が困難になる見通しで、国軍がデモや少数民族武装勢力を抑え込んでも、経済への打撃が続きそうだ(3日付共同通信)。

 あまり耳慣れない企業であった「ギーゼッケ・アンド・デブリエント」とはどういう企業なのか。

 ギーゼッケ・アンド・デブリエントは1852年に創設された欧州有数の紙幣印刷会社であり、ユーロ紙幣の印刷を行い欧州中央銀行に供給している欧州有数の紙幣印刷会社であるとか。

 日本でいうところの「独立行政法人国立印刷局」である。お札、つまり日銀券の「発行」は日銀が行っているが、日銀券の「製造」は独立行政法人国立印刷局が担当している。製造された紙幣は日銀がその費用を支払って引き取る格好となっている。独立行政法人国立印刷局は、紙幣・切手・旅券・郵便貯金通帳・証券類・政府刊行物等の印刷を主に行う日本の独立行政法人である。

 ギーゼッケ・アンド・デブリエントも紙幣以外にも様々な有価証券やチケットなどの印刷も行っており、さらにユーロ紙幣以外にも自国で紙幣を印刷できない発展途上国などに対しても紙幣の印刷を請け負っている。そのひとつがミャンマーであった。

 共同通信によると、同社はミャンマーの惨事に深い懸念と悲しみを表明し「(紙幣を印刷する)国営企業と全ての取引を即時に中止する」と発表した。

 紙幣が印刷できないとなれば、じわりじわりと経済にも影響与えよう。他の国でギーゼッケ・アンド・デブリエント社の代わりに印刷を請け負うとしても、それなりの時間も掛かるはずである。紙幣を使った経済制裁といった格好となる。

 ちなみに、ギーゼッケ・アンド・デブリエントは、欧米では「世界で初めてSIMカードを発売した企業」としても知られているそうである。


2021年4月3日「日本はさておき欧米では景況感が急回復、物価にも反映か」

 1日に発表された日銀短観では、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はプラス5と前回の2020年12月調査から15ポイント上昇した。これは事前予想を上回る数字でもあった。大企業製造業DIのトレンドは株式市場のトレンドとも重なることも多く、ここにきての東京株式市場の上昇基調と整合性がある。

 1日に米国の供給管理協会(ISM)が発表した3月の製造業景気指数は64.7と、1983年12月以来、37年超ぶりの高水準を付けていた。新規受注と生産がそれぞれ17年ぶりの高水準となり、全体の指数を押し上げた。

 さらに、IHSマークイットが発表した3月のユーロ圏の製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値は62.5となり、1997年6月の調査開始以降で最高となった。

 上記の経済指数はいずれも景況感をヒアリングして結果をまとめたものであるが、日銀短観はそれほどではなかったものの、米国や欧州では景況感が急速に改善していることがうかがえる。

 ただし、欧州では新型コロナウイルスの感染の再拡大を受けて、フランスなどでは3度目となる全土でのロックダウンが開始されている。このためサービス業などでの悪化は予想されるが、それ以上に製造業の回復度合いも大きいようである。

 100年前のスペイン風邪の際も景気そのものの落ち込みはそれほど大きくはなく、むしろ実体経済はしっかりしていた。日銀短観をみても業種によって回復しているところと落ち込んでいるところがはっきり分かれてはいるものの、総じて観れば景気は回復基調にあるといえる。

 それが欧米では景況感そのものが急回復しているところにも注意する必要がある。これが物価指数に反映されるまでタイムラグがあるかもしれないが、いずれ物価にも反映されることが予想され、それを読んで長期金利がさらに上昇してくることも予想される。


2021年4月2日「日銀短観にみるコロナ禍の日本経済の姿」

 1日に日銀が発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の 景況感を示す業況判断指数(DI)はプラス5と前回の2020年12月調査から15ポイント上昇した。 改善は3期連続となり、プラス5という水準は2019年9月のコロナ前のプラス5と同水準となる。

 今回の調査は、首都圏の1都3県に緊急事態宣言が出されていた2月下旬から3月31日にかけて行われた。

 大企業製造業の主要16業種のうち13業種で前回12月調査から改善を示した。 悪化と答えたのは、「繊維」、「食料品」、「造船・重機等」。

 反対に大きく改善をみせたのが、「石油・石炭製品」、「生産用機械」、「非鉄金属」、 「自動車」、「鉄鋼」など。

 大企業製造業の景況感からみると、コロナ禍にあって個人消費が抑えられていたものの、 米中を中心とした世界経済の持ち直しを背景に、海外向けの設備投資需要などが回復した。 円安進行も輸出企業には追い風となった。また、原油価格の上昇なども寄与か。

 これに対し、大企業非製造業は、マイナス1ポイントと、前回調査のマイナス5ポイントから 小幅な改善にとどまった。

 大企業非製造業の主要12業種のうち7業種が改善を示し、4業種が悪化と答えた。 悪化と答えたのは、「小売」、「電気ガス」、「対個人サービス」、「宿泊・飲食サービス」となり、 コロナ禍による人の往来の制限などの影響を引き続き受けている。

 これに対して、「対事業所サービス」、「不動産」、「物品賃貸」、「情報サービス」 などが改善を見せていた。引き続きコロナ禍による影響は受けつつも、経済そのものは 回復基調に転じていることをうかがわせるものとなった。


2021年4月1日「バイデン米政権の大型の経済政策による米長期金利の上昇」

 3月30日の東京時間に米10年債利回り(米長期金利)はじりじりと上昇し、1.75%あたりまで上昇した。米国時間の早朝には1.77%に上昇した。

 3月19日にFRBは銀行の自己資本比率に影響する補完的レバレッジ比率(SLR)の特例措置を延長しないと発表、銀行による国債の売りが出るとの懸念から、この日の米10年債利回りは一時1.74%に上昇した。

 このあたりがいったんピークとなり、米10年債利回りは1.6%近くまで低下した。米債に押し目買いが入った格好ながら、四半期末のアセットアロケーションに伴う買いなども指摘されていた。株式と債券の運用比率が決められているところでは、米株価指数が最高値を更新するなどしたことで株式の時価総額が膨れ上がる反面、米債は売られ(利回りは上昇)していたことで、株価の比率が予想以上に大きくなり、債券は縮小することに。それを予定した比率に戻すため、米債を買い増すことになり、それによる買いも影響した。

 そういった買いが一巡後は、あらためて新型コロナウイルスのワクチン普及とバイデン政権の大型の経済政策による経済の正常化への期待、そして世界的なインフレへの懸念が強まりつつあることなどから、再び米10年債利回りは上昇圧力を強めたのである。

 さらにバイデン政権は最大330兆円の長期経済プログラム検討中とも報じられたことにより、米国債の増発への懸念が強まったことも米10年債利回りの上昇要因となった。

 米10年債利回りのチャートをみると、2018年10月の3%台から低下基調となり、2020年3月に一時、0.3%近くまで低下した。その後、もみ合いとなったが、7月の0.5%あたりから上昇トレンドを形成し、3月30日に1.77%まで上昇したのである。

 次の大きな節目は、FRBの物価目標でもある2%であるのは確かだが、その前に1.9%も節目となっている。ひとまず1.9%あたりまで上昇したのち、物価動向などを確認しながら2%を伺うといったことがチャートからは予想できる。

 特に物価に関しては、30日に発表されたドイツの3月の消費者物価指数の上昇率は前年同月比2%となった。一時的な要因もあったようだが、燃料価格の急騰も影響した。昨年4月には原油先物価格はマイナスになるなどしており、前年比での物価は上昇しやすい環境にある。

 一時的な要因もあるものの、原材料価格が上昇しつつあり、新型コロナウイルス感染が、ワクチン普及が次第に収まるようであれば、急速に需要が回復するペントアップディマンドが発生する可能性もある。

 デフレだ、デフレだと騒ぐのも良いが、それによるリスクを想定するよりも、現在の状況でむしろ心配すべきは、このような急激な需要回復などによる思わぬ物価の戻りとそれによる長期金利への影響ではないかと思われる。


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