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18日、19日に日銀は金融政策決定会合を開く。今回はあらためて日銀の金融政策決定会合とは何かを確認してみたい。
日銀の最高意思決定機関として政策委員会が置かれている。政策委員会は金融政策決定会合において通貨および金融の調節に関する方針を決定するほか、その他の業務の執行の基本方針を定め、役員の職務の執行を監督する権限なども有している。
日銀の金融政策を決める金融政策決定会合は、2015年までは年14回開催されていたが、2016年からは年8回となった。
金融政策決定会合は主に2日の日程で開催され、1日目は午後に開会し金融や経済情勢に関して、日銀の執行部が報告を行う。2日目は午前中に会合を再開して委員の討議、そして議案に関する採決が行われる。
政策委員会のメンバーは総裁1人、副総裁2人、そして審議委員6人で構成されている。この9人を総称して政策委員と呼ぶ。
金融政策を決定する際の議決は、9名の政策委員による多数決によって行う。日銀総裁といえどもここでは9票のうちの1票にすぎない。
金融政策決定会合には財務大臣および経済財政政策担当大臣、もくしはその代わりとなる政府代表がオブザーバーとして出席している。実際には大臣が直接参加することはそれほど多くはない。
決定会合に参加する政府出席者に議決権はない。ただし、議決の延期を求める議決延期請求権を持っている。
金融政策決定会合における決定事項については、会合終了後直ちに内容を公表することになっている。
2001年に金融政策決定会合の運営方法の見直しが行われ、会合における審議時間が十分に確保されるとともに、決定内容について金融市場の取引が活発に行われている時間帯に公表されるようになった。
会合の際の決定内容は、2日目の昼頃に発表されることが多い。
決定内容は日銀のサイトにアップされる公表文に記されており、通信社の端末などを通じても内容が即時に伝えられる。
政策変更がない場合も「現状維持」としてその旨が公表される。現状維持の際の公表文のタイトルは「当面の金融政策運営について」となる。
政策変更があった場合には、このタイトルが変わる。今年1月の0.25%の利上げを決定した際のタイトルは「金融市場調節方針の変更について」となっていた。
全員一致の決定であったのか、賛成多数であったのか、多数決の場合には賛成者と反対者の数、さらに反対者の委員の名前も発表される。
金融政策決定会合終了後、15時半あたりから日銀総裁の記者会見が行われる。
金融市場関係者は金融政策そのものの結果とともに日銀総裁の会見内容にも注目している。
決定会合終了後1週間を目途に決定会合における「主な意見」を作成し公表される。
金融政策決定会合の議事要旨は、次回または次々回の会合の3営業日後(概ね1か月程度後)に公表される。
議事録については10年後に公開される。
議事要旨には大まかな審議の内容が書かれているが、発言した政策委員の具体的な名前までは明らかにはされない。
現実にどのような意見が交わされていたのかを具体的に知るためには、10年後に発表される議事録を待つ必要がある。
自民党の河野太郎前デジタル相は9日、インフレの抑制には円安の是正が不可欠だとし、政策金利の引き上が必要だとの見解を示した。ブルームバーグテレビジョンのインタビューに英語で応じた(9日付ブルームバーグ)。
これを受けて、9日の債券市場では米債高で買われていた債券先物が戻り売りに押された。
これによって9月18、19日の利上げ観測が出てきたわけではなく、そういえば日銀の利上げの可能性もあったなと市場参加者があらためて認識したためとみられる。
5日の8月の米雇用統計などを受けて、9月16、17日のFOMCでの利下げが意識されており、これを受けて米長期金利が大きく低下した。
7日に石破茂首相が退陣を表明したことで、リフレ派の意向を強く意識している高市氏が意識され、日銀の利上げが先送りされるとの観測や財政拡張観測も出てきた。
これを受けて8日の中長期債は買われた半面、超長期債が売られた。
9日の河野太郎氏の発言内容が報じられると、8日のトレードのアンワインドのような動きとなり、中長期債は戻り売りに押され、超長期債は買い戻されていた。
河野氏は日銀の利上げ先送りは「インフレが続くことを意味する。輸入するもの全ての価格が今より上がることになる」と指摘。円相場の安定の重要性を強調した上で、「そのためには、日銀が金利を引き上げる必要がある」と語った。
至極真っ当な発言ながら、これに市場が反応してしまうぐらいに、現在の日本の政治家からの発言としては例外的な発言ともいえる。
8月の参院選でも消費税減税や給付金などが物価高対策として各党の公約に組みこまれていた。
しかし、本来の物価対策はまずは日銀による金融政策によるものであろう。つまり利上げとなる。これらよって過度な円安にもブレーキが掛けられる。
それに対して、日銀の金融政策は緩和策、財政は拡大策が良いというリフレ派的発想が選挙に向けて有利という風潮が強まっていた。
アベノミクスの罠から抜け出せずにいることで、今回のような政治家による政策金利の引き上が必要だとの見解は貴重である。
利上げといっても3%を超える物価に対してみると、1%から1.5%あたりまでの引き上げは、あくまで政策金利を正常な状態に戻す正常化に過ぎない。
そこから先は慎重であっても、そこまではむしろタイミングを見計らって大胆に機敏に動く必要があると思う。
総裁選のスケジュールからみても9月は現状維持だとしても、10月29、30日の決定会合での利上げに期待したいところである。
11日の米国株式市場でダウ工業株30種平均は大幅反発となり、前日比617ドル08セント高の4万6108ドル00セント(速報値)で引けた。9日に付けた最高値を上回り、初の4万6000ドル台に乗せた。
この日発表された8月の米消費者物価指数は前年同月比の上昇率が2.9%とほぼ市場予想に一致した。
また、週間の米新規失業保険申請件数が26万3000件と2021年10月以来の高い水準になった。失業保険の申請件数の増加はつまり、労働市場の減速が懸念される
これらは16、17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ観測を後退させるほどの内容ではないと受け止められた。
この利下げ期待が今回の株価上昇の大きな要因のひとつとなっている。
市場では0.25%の利下げは織り込み済みで、経済指標など次第では0.5%の利下げの可能性をも期待しているようである。
ダウ平均が大幅に上昇したのは、AI関連株の上昇も大きく影響している。
10日には決算で受注残の急増が明らかになったオラクルが急伸した。これを受けて11日の東京株式市場ではソフトバンクグループの株価が過去最高値を更新した。
オラクルはソフトバンクグループとともに米国のAIインフラに巨額を投じる「スターゲート」計画の一員で、ソフトバンクグループにも連想買いが波及した格好となった。
11日には半導体メモリーのマイクロン・テクノロジーが大きく上昇し、米国株式市場をけん引した。
米関税策によってインフレと景気停滞が並立する、スタグフレーションに米景気が陥る可能性が懸念されている。
それがいまのところ米国の経済指標に顕著には表れてはいない。しかし、その兆候も見える分、今度は利下げ期待が強まることになる。
なるべく見たくないものはみないで、見たいものだけみている格好にもみえるが、これも相場であることも確かである。
11日の米国株式市場の勢いをみて、12日の東京株式市場でも日経平均の引けは395円高となり、引け値でも最高値を更新した。
債券相場の居所を見る上で欠かせないものとなっているのが、東京取引所に上場されている長期国債先物取引(債券先物取引)である。
債券先物取引は標準物とよばれる架空の債券を取引する形式となっており、店頭取引ではなく取引所取引になじみやすい。
この債券先物は大手証券や銀行によるヘッジ目的等による売買だけでなく、海外投資家による売買も活発化しており流動性は非常に高いものとなっている。
先物取引とは、将来の一定期日に、今の時点で取り決めた価格で、特定の数量の、特定の債券(原商品)の受渡をする契約のことである。多くの参加者が一堂に会して取引できるよう、これらの項目を定型化し取引所で取引している。
本格的な金融派生商品が登場したのは米国シカゴの取引所である。そのシカゴの取引所が参考にしたのが、江戸時代の大阪堂島で行われた米(コメ)の先物取引である。
債券先物の受渡日は、3月、6月、9月、12月の20日(休業日にあたるときは順次繰り下げ)と決められており、この取引期限を限月(げんげつ)と呼んでいる。
取引限月が3か月刻みである理由として、日本の国債の利払いが半年ごとであったこと、そもそも世界的に金融先物の限月は3か月刻みが標準となっていたことなどが挙げられる。
受渡日の近い先物限月のことを期近物もしくは当限(とうぎり)と呼ぶ。また、受渡日が期近物よりも遠いものは期先物と呼んでいる。
出来高が最も多い限月を中心限月と呼ぶ。
日本の債券先物については、海外の債券取引などに比べて、取引最終日近くまで最も取引期間の短い期近物が中心限月となり、売買がこれに集中しているという特性がある。
取引最終日が近づくと中心限月が期近物から期先物に移行する。
ということで、9月12日の債券先物の取引最終日を控え、10日の債券先物の12月限の出来高が9月限を上回った。
正式にはナイトセッションを含めた約定日の出来高トータルが逆転したことを確認した上で、中心限月の移行となる、
しかし、債券先物はいったん逆転した出来高が再逆転することはほぼないことで、出来高が逆転した段階で実質的な中心限月移行とみなされる。
9月2日の日銀の氷見野副総裁の講演では、これまでの主張がくり返される格好となり、早期の利上げに向けての踏み込んだ姿勢は示さなかった。
もし9月18、19日の金融政策決定会合で利上げが検討されるのであれば、何かしらの示唆があるかもしれないとみていたが、これを受けて自分のなかでの9月の利上げの可能性は後退した。
ただし、市場では10月29、30日の決定会合での利上げの可能性をみていた。
5日あたりで翌日物金利スワップ(OIS)市場が織り込む10月会合での利上げ確率は50%程度となっていた。
ところが、7日に石破茂首相が退陣を表明したことで、状況が変化した。
石破首相の辞任に伴って実施される自民党の総裁選挙では、高市早苗前経済安全保障担当相などが有力候補になるのではとの観測も出てきた。
高市氏は以前、日銀の金融政策運営を巡り「金利を今、上げるのはあほやと思う」とけん制しいた経緯があった。
このため、OIS市場が織り込む10月会合での利上げ確率は20%程度に急低下した。米債高もあって債券先物も買い戻されて138円台を回復。3日に1.640%まで上昇していた10年国債の利回りは9日に1.540%に低下した。
この間に気になる報道もあった。
8日に三菱UFJ銀行副頭取が次の利上げ時期は早ければ10月との見通しを示した。
9日には自民党の河野太郎前デジタル相がインフレの抑制には円安の是正が不可欠だとし、政策金利の引き上が必要だとの見解を示していた。
そして9日の夕方にブルームバーグとロイターで、日銀の「事情に詳しい複数の関係者」が登場したのである。
経済・物価情勢は7月の最新シナリオに沿った動きと判断しており、年内に環境が整う可能性も引き続き視野に入れている(9日付ブルームバーグ)。
米関税を踏まえた企業行動や新政権の政策など金融政策判断に重要な材料が、今秋以降にはそろってくる可能性が大きいとの指摘もあった。
10月1日には日銀短観が発表される。6日には支店長会議が予定されており、さくらレポートなどの発表がある。
自民党は総裁選の投開票を10月4日に行う方針を決めた。その後の首相指名選挙などを経て10月中旬以降に新政権が始動する。
新米も出回り、コメの価格動向も確認できる。
これらを念頭に置いた上か、注目すべき予定も入っていた。
日銀サイトの「公表予定」によると、10月2日に日銀の内田副総裁が全国証券大会で講演する。翌3日には植田総裁が大阪で講演する。
この講演において、国内政治情勢が混乱する中でも、年内利上げの可能性を排除しない姿勢をあらためて示し、10月の決定会合での利上げを検討する可能性が示されることが予想されるのである。
前回利上げが今年1月であり、すでに半年以上経過している。
タイミングからみて7月や9月の可能性もあってしかるべきと個人的にみていたが、日銀はしっかりと準備を整え、市場に経済指標なども確認した上、市場に利上げの可能性を浸透させた上で、ゴーサインを出すように思われるのである。
9日の東京株式市場で日経平均株価は続伸となり、取引時間中として初めて4万4000円を上回った。
石破首相が退陣表明し、次期政権が大規模な経済対策を打つとの思惑から、海外投資家の買いが入った。
次期首相がだれになるのかは現状、見定めにくい。いわゆる高市トレードであったのかもしれないが、高市氏が首相になるとの保証は当然ない。
大規模な経済対策を打つという期待についても、それが本当に可能なのかという疑問も残る。
日銀の金融政策についても、より利上げが慎重になるとの見方が強まったのかもしれないが、さすがに現在の経済や物価の動向からみて今後も利上げを進めるべきであろう。
外為市場での円安ドル高も好感されていた可能性がある。ただし、本格的な円売りを招くリスクもありうる。
今回の東京株式市場の上昇の背景として、米国株式の上昇も追い風となっていたことは確かである。
ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数が約1カ月ぶりに最高値を更新し、9日の東京株式市場も主力株といえる半導体関連銘柄などに買いが入った。
次期政権による防衛費増額の期待から三菱重工業など防衛関連株も8日に続いて買われていた。
これらの動きの背景に確たる株価上昇要因はない。
地合の良いところに期待感による買いが入って予想以上の買い圧力(買い戻し圧力)が強まっていたとみられる。
流れに逆らう必要はないし、この水準がおかしいというつもりもない。
ただ、現在の少数与党となっている自民党のトップが誰に変わっても政策運営は難しいものとなる。
野党の主張する消費税減税などを含めた、大規模な経済対策を打つとなれば、炭鉱のカナリアが歌を止めて危機を伝える可能性もある(国債利回りの上昇)。
デフレ下であれば日銀は長期金利も抑え込んでいたかにみえたが、物価が上昇しているなかにあって、日銀が国債利回りを抑えることは実質的に困難となろう。
7日に石破茂首相が退陣を表明した。これを受けての8日金融市場の反応を確認したい。
外為市場では、ドル円が148円台を回復してきた。
5日に発表された8月の雇用統計では非農業雇用者数が前月比2.2万人増と市場予想を下回ったことで、米10年債利回りは4.07%と前営業日の4.16%から低下した。
これもあり、ドル円は一時146円台に下落(ドル安円高)となっていた。
ところが石破首相の退陣表明を受けて、国内政治の不透明感を意識した円売りドル買いが優勢となり、ドル円は148円台を回復した。
総裁選のスケジュール等は今後発表されるが、次の首相が指名されるまで政治的な空白が生じるのは避けられない。
市場では次期首相次第ではより拡張的な財政政策に傾くとのではとの思惑や、野党との協議において消費税減税などを進める懸念も出てくる可能性も否定はできない。
8日の東京株式市場では、次期政権で積極的な財政政策が進められるとの期待感から8日の東京株式市場では、日経平均の上げ幅は800円を超えて一時、43800円台まで上昇し、8月18日に付けた史上最高値の43714円を上回った。
朝方に発表された4〜6月期のGDP改定値が年率2.2%増に上方修正されたことも好感されたとみられる。
債券市場では、5日の米雇用統計を受けて米債が買われたことから、ナイトセッションで債券先物は138円37銭まで買い戻され、26銭高の138円22銭で引けていた。
8日の債券先物の寄り付きは9銭高の138円05銭。寄り付き後に付けた138円12銭が当日高値となり、次第に上値の重い展開となった。現物債は日銀早期利上げ観測後退で中期債は買われるが、債務悪化懸念で超長期債は売られた。
米債高を素直に反映した側面もあるが、株高とその背景にあるとされる積極的な財政政策が進められるとの期待は円債にとっては売り要因となる。
ドル円が回復、つまり円安ドル高となってきたことは、物価の上昇圧力が継続することになる。
政局が不透明となることで、少なくとも9月18、19日の利上げは難しくなるし、スケジュール次第では10月の決定会合での利上げも不透明感が強まることも予想される。
ただし、3日の首相と日銀総裁の会談も気になるところとなる。
日銀が利上げに慎重になっているのは「不確実性」も大きいとしているが、タイミングをうまく見計らわないと、あらたな「不確実性」が出てくることで、さらに期を逃してしまう可能性がある。
下記は9月2日の道東地域金融経済懇談会における氷見野日銀副総裁の挨拶で物価に関する発言である。
『現時点でメイン・シナリオと考えているのは、「現実のインフレ率はお米の値上がりとその波及を主因に物価安定目標の2%を大きく上回っているが、いずれ落ち着いていく。他方、基調的なインフレ率は2%より低いが、賃金と物価の相互参照のメカニズムが働いて2%にかなり近づきつつあり、足踏みはあっても、いずれ2%に達する』
インフレ率は物価安定目標の2%を大きく上回っているが「基調的なインフレ率」は2%より低いとしている。
2012年2月に発表された「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(政府・日本銀行の共同声明)」では次のようにある。
『日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする。日本銀行は、上記の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す』
日銀が金融政策の目標としているのはあくまで、消費者物価の前年比上昇率で2%であったはずである。
氷見野日銀副総裁は下記のように続けている。
『「基調的なインフレ率はまだ2%を下回っている」という見方については、現実のインフレ率が既に3年余りの間2%を上回っており、しかも3%を上回る期間が多くなっていることから、分かりにくいといったご意見や、その適切性についてのご疑問をいただくことが少なくありません。』
基調的なインフレ率とは具体的に何を示すのか、どうして消費者物価できなく基調的なインフレ率に目標がすり換えられているのか。
『基調的なインフレ率というのは、一時的な変動を除いたインフレ率のことです。一時的なショックの影響がなくなった後の落ち着き先のインフレ率、ということもできます。』
2022年4月から続く消費者物価指数(除く生鮮)の2%超えは、それから1年後も2%台を維持していたことで少なくとも一時的なものではなかった。
一時的なショックが3年も続いたということなのか、それは一時的とは言えないであろう。
『これについても、米価格の急上昇が起点となって起きた一時的な変動の面がかなりある、とみることができます』
コメの価格がほかの食品価格の上昇に、さや寄せしてきたとの見方もできるのではなかろうか。コメの価格上昇が一時的でないことは、今年の新米価格をみれば一目瞭然であろう。
『実際には、何が一時的で何が基調的な変化か、何を除いて何を含めて考えたらよいか、の判断は簡単ではありません。』
当初の予定通り、消費者物価指数(除く生鮮)で見たら良いのではないのか。
9月に募集される個人向け国債の10年変動利付の利率が1.06%(税込み)と7月発行以来の1%台となった。
固定5年の利率は1.12%(税込み)となり、2008年7月発行の1.22%以来の高い水準となった。
固定3年の利率は0.93%(税込み)と、2010年7月の発行開始以来、最も高い水準を更新してきた。
個人向け国債の利率が上昇してきたのは、日銀が金融政策の正常化に乗り出し、政策金利を引き上げ、それとともに国債利回りも上昇してきたことによる。
ここにきて欧米の国債利回りが超長期債主体に上昇してきたことで、日本の国債利回りに上昇圧力が掛かっていた。
消費者物価指数は2%を超える状態が続き、実質金利はマイナスの状態となるなか、日銀の利上げは継続すると予想されており、年内にも政策金利をどこかのタイミングで0.75%に引き上げると予想されている。
個人向け国債には1年経てば財務省が額面で買い取るなど、国債にもかかわらず流動性リスクや価格変動リスクがない。
その分、一般の国債に比べて金利はやや抑えられるが、さすがに1%台となれば、個人投資家の食指も動いてくるのではなかろうか。
今後も金利は上がり続けると予想するのであれば、10年変動がお薦めか。
ただし、今回の募集においては、1%に接近した期間の短い3年固定、利率は10年変動よりも高い5年国定に資金が向かう可能性がある。
今年4月発行分の5年固定の利率が1%となったあとは、募集額は5年固定が10年変動を上回った状態が続いている。
個人の場合、絶対的に利子が高い方に資金が向かいやすい側面はある。さらに期間の短い方が好まれる。
個人向け国債は投資商品のひとつではあるが、その商品性は極めて預貯金に近いものとなる。
個人向け国債は元本は保証されている希有な投資商品でもある。
個人向け国債は流動性リスク、価格変動リスクのない投資商品でもある。信用リスクについては国なので国内金融商品としては最も安全性は高いものとなる。
その上、利子は貯金に比べて有利となる。退職金などの運用先のひとつとして選択するのもありなのではなかろうか。
欧米の債券市場で超長期国債の利回り上昇が勢いづいている。
2日に英30年債の利回りが1998年以来27年ぶりの高水準を付、フランスの30年債利回りは16年超ぶりの水準を付けてきた。米国でも5%の大台に再接近した。
3日の日本の債券市場でも新発30年物国債利回りが上昇(債券価格は下落)し、一時、3.285%を付けた。1999年の発行開始以降の最高水準を更新した。
世界的に財政規律の緩みが意識されやすく、日本でも国債利回りに上昇圧力が加わっている。
英国債利回り上昇のきっかけのひとつは英国のスターマー首相が公表した経済チームの再編とされる。財政規律を重視してきたリーブス財務相を蔑ろにしたかの人事であった。
フランスでは8日に国民議会(下院)で内閣の信任投票を実施する。現状では不信任となり、マクロン大統領が新首相を選ぶ必要に迫られる可能性が高い。右派や左派が力をつければ財政再建の道筋は一段と不透明になる。
これは日本でも同様であり、少数与党という現状への警戒感も強い。もし石破首相が退陣といったことになれば、消費税減税などの可能性が強まりかねないとの思惑も出ている。
3日の引けあとに10年国債の利回りが1.640%まで上昇した。これは2008年7月以来の水準となる。
日本では政局への不安といった要素もなくはないが、超長期国債の利回りは素直に物価動向を反映しているとの見方もある。
2022年4月から3年以上も消費者物価指数が2%を超えているにもかかわらず、政策金利が0.5%に止まっていること自体がおかしい。
おかしいものの、中期ゾーンの国債利回りは政策金利の影響を受けやすい。
さらに長期金利コントロールを長きにわたり経験してきたことで、長期金利、つまり10年国債の利回りも上昇しにくい状態となってしまっている。
これらに比べ、超長期債の売買高で主軸となりつつある海外投資家は、日本の国債利回りが抑えられ過ぎているとの認識もあってか、超長期国債の利回りが物価に応じた水準に上昇してきたともいえる。
このため日本の国債のイールドカーブも期間15年あたりを挟んで歪みが生じている。
これが解消されるとすれば超長期国債の利回り低下といいうよりも、中長期国債の利回りの上昇によるものとなろう。
日銀も少なくとも利上げに向けた姿勢は崩していない。あとはタイミングを見計らっているのであろう。
できれば市場にせかされる前に動いた方か良いのではないかと思われる。
英語に「炭鉱の中のカナリア」(like a canary in a coal mine)という表現がある。
有毒ガスが発生するといち早く鳴き声がやむ習性を生かして、炭鉱労働者が坑道にカナリアを持ち込んで危険の察知に使ったためだとされる。
金融市場でも「炭鉱の中のカナリア」という表現が使われるものがある。それは金利である。
政治的な不安定さや債務拡大による財政不安などを受けて「炭鉱のカナリア」とされる国債の利回りが反応するケースなどである。
2日の欧州の債券市場ではフランスの30年債利回りは16年超ぶりの水準を付けてきた。
バイル首相は夏季休暇明けの議会の再開に合わせて、9月8日に議会で施政方針演説を行い、その後に憲法49条1項に基づく内閣信任投票を行う方針を表明した。信任投票次第では、さらに状況が悪化してくる可能性がある。
そして、2日には英国の30年債利回りが5.72%と27年ぶりの水準を付けてきた。
夏季の休会に入っていた英国議会が今週再開し、英国財政の先行き不透明感があらためて意識された。
スターマー首相率いる政府に対して、市場の信認を取り戻すための対策を講じるよう一層の圧力がかかった格好でもある。
フランスや英国の国債利回りが上昇し、ドイツ国債利回りなどにも上昇圧力がかかった。
そして米国債の利回りも上昇していた。こちらはトランプリスクがじわりじわりと顕在化してきたものである。
クック理事の解任など、FOMCの投票権を持つの理事だけでなく連銀総裁を含め、トランプ支持者で固めようとの動きが出てきている。FRBの独立性が危ぶまれている。
トランプ氏は利下げ圧力を強めるだけでなく、以前の日銀が行っていたような大量の国債買入や長期金利コントロールまで視野に入れている可能性すらある。
デフレ下であればそれが効果的と見えていた可能性はある。しかし、物価がある程度上昇していた場合には長期金利コントロールが可能とは思えない。
これを受けて米国でも「炭鉱のカナリア」が反応してきている可能性がある。
これは当然ながら巨額債務を抱える日本でも他人事ではない。しかも物価に応じた金利形成が少なくとも政策金利ではできていない。
これは円安なども通じた物価上昇圧力に繋がりかねず、それを先読みした国債利回りの上昇にも繋がることになる。
市場が動揺を示す前に日銀は少なくとも金利の正常化は急ぐべきだと思う。
フランスの政治危機が欧州の債券市場を動揺させている。
フランスの財政再建や政権運営に疑念の目が向けられており、10年国債の利回りは、財政不安を抱えるイタリアに接近しつつある。
9月1日の10年国債の利回り(長期金利)はイタリアが3.61%、フランスが3.53%となっていた。
フランスの2024年の財政赤字は国内総生産(GDP)比5.8%に達し、欧州連合(EU)基準を大幅に超えている。
バイル首相は7月に秋の議会で審議される2026年予算案に、438億ユーロ規模の財政健全化策を盛り込むと表明。
バイル首相は「重大な危機」と警告。2026年に4.6%に引き下げるため、社会保障費の抑制や公務員削減、優遇税制の見直しに取り組むと訴えた。
また、年間11日ある祝日のうち2日を廃止し、生産性を高めて税収増につなげる方針などを示した。野党各党は「完全なナンセンス」「恥だ」と一斉に批判していた。
そのバイル首相であるが、夏季休暇明けの議会の再開に合わせて、9月8日に議会で施政方針演説を行い、その後に憲法49条1項に基づく内閣信任投票を行う方針を表明した。
政府が7月に発表した来年度の予算案に対しては、野党勢が揃って反発しており、秋に本格化する予算協議は難航が予想されている。
首相は予算協議に先駆けて政府予算案に対する賛成の是非を内閣信任投票で問うことを決めた格好となった。
このバイル首相の信任投票で、主要野党3党が政府打倒に動こうとしている。国民議会(下院)の主要野党の極右・国民連合(RN)と急進左派政党「不屈のフランス」、中道左派の社会党が不信任投票の意向を示している。
フランス政治の不安定化は、同国の経済回復を危険にさらす可能性がある。
仮にバイル氏が退陣に追い込まれた場合、マクロン大統領は新たな首相を任命し、政権を維持する可能性はある。
議会を解散して再び選挙を行うことも可能だが、それでも政権の弱体化は防ぎようがない。
9月8日のバイル首相の信任投票次第では、さらに状況が悪化してくる可能性もあり、長期金利の行方を見る上でも、今後のフランスの政治の動向が注目される。
2日のフランスの30年債利回りは16年超ぶりの水準を付けてきた。
ゆうちょ銀行がデジタル通貨を2026年度に貯金者向けに発行すると8月31日に日本経済新聞が報じた。
インターネットイニシアティブ(IIJ)グループのディーカレットDCP(東京・千代田)が開発するデジタル通貨「DCJPY」を導入する。
DCJPYは預金と紐づくものであり、法定通貨などの価値を追跡するステーブルコインとは異なる。
ステーブルコインとは、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を基盤とし、ドルや円などの法定通貨や、金(ゴールド)等のコモディティ(商品)価格と連動するように設計された暗号資産のことである。
フィンテック企業のJPYC(東京・千代田)を資金移動業に登録。JPYCが発行するステーブルコインの名称は「JPYC」。1JPYC=1円に価値が保たれるよう、預金や国債といった流動性の高い資産を価値の裏付けとして保有する。
これに対して、ゆうちょ銀の利用者は自身の貯金口座に、IIJグループのディーカレットDCPが開発するデジタル通貨「DCJPY」用の口座をひも付けるられる。
貯金口座の残高のうち希望する金額を、1円が1DCJPYとして発行し、入金する仕組みだ。DCJPYから円に戻すこともアプリ上でできる。
郵政民営化法でゆうちょ銀行への預け入れは普通貯金、定期貯金合わせて2600万円の上限規制が定められている。DCJPYは規制のない振替貯金と同じ扱いになり、上限がない半面、利息がつかなくなる。
このため貯金者は、DCJPYを使ってデジタル証券を購入することで利息が得られる。
デジタル証券とはセキュリティー・トークン(ST)とも呼ばれ、ブロックチェーンを使って、電子的に発行された有価証券のことである。
デジタル証券とは不動産や社債などの資産を小口化したものとなり、少額から投資できる。
一般的な社債の販売価格は、1口100万円など大口になることが多いが、例えば丸井グループのデジタル社債は1口1万円、SBI証券も1口10万円となっていた。
デジタルでも中身は社債なので期限まで保有すれば元本は保証され、利率も預貯金よりも高い
これはキャッシュレス取引に慣れつつある若者にはさほどハードルは高くないかもしれないが、ゆうちょ銀行利用者は比較的年配者が多いと思われるため、年配者にはハードルが高すぎるのではなかろうかん。
事例としては面白いかもしれないが、利用者が増加するかという点では疑問が残る。
自治体による補助金や給付金をDCJPYで支給することも構想しているそうである。受給要件を満たしていれば自動入金するといった仕組みを構築でき、自治体業務をデジタル化できる。
8月22日の債券市場で30年国債の利回りは3.210%に上昇し、7月15日に記録した1999年の30年債発行開始以来の最高水準3.2%を上回った。つまり過去最高水準に上昇してきた。
10年国債の利回りも1.615%と2008年10月以来の水準をつけてきたが、利回りの上昇ピッチは30年国債の方が大きい格好となっている。
これはどうしてなのか。
これについては、参院選の結果を受けて、給付金や消費税減税などの可能性も出てきたことから日本の財政悪化が懸念されたためとの説明がされている。
ただし、財政悪化による国債増発があったとしても、増発は中長期債主体となり、超長期債が増発されることは現状は考えづらい。
というのも4月のトランプ関税ショックによる超長期債の急落(利回り急騰)を受けて、今年度の国債発行計画が見直されることになり、超長期債は減額されていた。
そもそもどうして4月以降の超長期国債が大きな価格変動を起こしていたのであろうか。
ひとつの要因として指摘されるのが、超長期国債の保有者と売買をしている参加者の変化である。
これまで超長期国債の保有者としては生保がかなりのシェアを占めていた。
日銀による国債買入の減額もあり、国債の保有者の日銀からの移転も生じることになった。
生保は2025年からの新しい資本規制で、財務の健全性を高めるべく負債にあたる保険契約の年限と保有資産の償還期間の差を縮めるよう求められた。
この動きが一巡してきたことで、生保に代わって海外投資家が超長期国債の保有者として存在感を強めてきたのである。
超長期国債の売買シェアも海外投資家が大きな割合を示すようになってきた。
特に4月から6月に掛けて、新規参入を含めた海外投資家が比較的短期の売買をくり返していた可能性がある。
7月決算が多いとされるヘッジファンドなどを主体に6月には投げ踏みのような動きが起きていた。つまり悪材料が出たときには大きく売り込まれ、好材料が出たときは急騰するなどしていたのである。
これは超長期債の板の薄さも要因であったかもしれないが、ロスカットによるポジション調整の動きであった可能性が高い。
それが7月に入り収まってきた。ある程度、投機的なポジションは解消されたものとみている。
ここにきて超長期債と中長期債が反対方向に動くようなこともなくなったが、利回りそのもののの居所は相対的に高い。
これは日本の財政悪化を見越してというよりも、日本の財政状態や物価水準を見越して、それに必要な利回り水準と海外投資家は認識しているためとの見方もできるのではないか。
世界で二番目に古い中央銀行であるイングランド銀行が設立されたのが、1694年となる。
第二次大戦後にイングランド銀行は、「1946年イングランド銀行法」によって国有化され政策運営の独立性を失う。
政策金利である公定歩合と外国為替政策の決定権隈は事実上大蔵大臣に属し、イングランド銀行はその執行機関としての役割を担っているにすぎなかった。
1992年6月に英国ポンドがジョージ・ソロスらの投機筋により売り叩かれ、この結果、イギリスは1992年9月16日にEMRから離脱させられることになる。
いわゆるブラック・ウェンズデー(暗黒の水曜日)とも呼ばれたポンド危機である。ジョージ・ソロスはこれにより「イングランド銀行を破産させた男」とも呼ばれた。これには現在の米財務長官であるベッセント氏が大きく関わっていた。
ERM離脱により英国ポンドは変動相場制に移行し、ドイツマルクという大きなアンカーを失う。
さらに金融政策面ではインフレファイターとも呼ばれたブンデスバンクに追随することで間接的に得ていた物価安定の道標を失うことになった。
これはブンデスバンクからの楔から解き放たれたという見方もできる。このため新しい拠り所を探る動きが英国の財務省とイングランド銀行に出てきた。
当時、イングランド銀行のチーフエコノミストとなっていたのが、マービン・キング氏(のちのイングランド銀行総裁)であり、キング氏はもともとインフレ・ターゲッティングに意欲的で、ニュージーランドの事例を研究していた。
ブラック・ウェンズデーから一週間もたたないうちに、導入の基本路線が固まり、時間を置かずに新政策が生まれた。1992年10月29日に当時のラモント財務相がインフレ・ターゲッティング導入に伴う新政策の内容を発表した。
このラモント氏に直接インタビューした記事がある(2012年11月23日の毎日新聞のコラム、発信箱:二つの「インフレ目標」)。
これによると「ただ、目標だけではうまくいかない。当時イギリスでは、蔵相に金利決定権があった。都合よく金利を操りたがるのが政治家。だから目標を決めたら、あとは中央銀行のプロたちに任せよう。インフレ目標と中央銀行の独立性はセットだったのだ」とある。
当時まったくと言ってよいほど独立性がなかったイングランド銀行にとり、インフレターゲットを導入することで、少なくとも金融政策そのものはイングランド銀行に任せるという仕組みを取り入れた。しかもそれを主導したのが政治家であった。
1997年5月6日、18年ぶりに労働党が勝利した総選挙から6日目に開かれたゴードン・ブラウン新財務相(のちに首相)の初会見では、記者が皆、利上げの発表と予想していたが(当時の金融政策の決定権は財務相)、利上げとともに発表されたのが金融政策決定権を財務相からイングランド銀行に移譲するというものであった。これは記者達も度肝を抜かれたとか。
当時のブラウン財務相は就任わずか4日目に金融政策の大転換を行い、財務省から中央銀行であるイングランド銀行に金融政策の決定権を移し、独立性を高めるという大胆な改革に踏み切った。
この際に、あらためてインフレ・ターゲッティングの土台も築かれた。物価の目標は政府が設定し、イングランド銀行はこれを達成するために必要な政策手段を決定するという役割となった。
イングランド銀行は、このようにして独立性を強化させて、インフレターゲット政策もその手段となった。
この世紀の大改革のシナリオはすでに5年前に書かれていたそうで、その著者は当時25歳の若さでブラウン氏から顧問に起用された「フィナンシャル・タイムズ」の記者、エド・ボールズであった。
「万年野党に甘んじていた労働党が政権党として信頼を得るには、経済界、特に金融市場の信用が不可欠だとボールズ氏は考えていた。金融政策を政治から切り離し、イングランド銀行に任せることで、労働党は独自の経済政策に専念できると訴えていた。訴えは、そのままブラウン氏の政策方針となった」(2005年5/3・10週刊エコノミスト「ロンドンで見たイングランド銀行 華麗なる改革史」より)
これが1997年のイングランド銀行における改革が行われた背景であった。この改革のシナリオを若干25歳の若者が作り上げたのは驚きであった。エド・ボールズ氏はのち議員となり、影の財務相となっている。