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米国のバイデン大統領は28日、連邦政府の債務上限引き上げをめぐり、与野党が大筋合意に達したと発表した。債務上限引き上げの法案を速やかに連邦議会に提出する方針を示した。
政府の資金繰りは6月1日にも行き詰まるとされていたが、イエレン財務長官は26日、その「Xデー」が6月5日になるという新たな試算を示した。
米国債の発行根拠法は、合衆国憲法(第1条第8項)に基づいて連邦議会が定めた第二自由公債法となる。同法において、国債残高に制限額を課して、その範囲内であれば自由に国債を発行し資金調達できる。
これはつまり、国債残高が定められた制限を超えてくる場合には、新法を制定し上限を引き上げる必要がある。債務上限の引き上げを可能にする新法への与野党合意がないままでは、6月5日も連邦政府は資金が枯渇し、史上初のデフォルト(債務不履行)に陥る可能性があった。
格付け会社フィッチ・レーティングスは24日、米国の格付けは最上位「トリプルA」に据え置いたが、米国格付けの見通しを「ネガティブ」とし今後の状況次第で格下げがあり得るとした。
これまでも米政府の債務上限を巡っては、ぎりぎりの折衝が続けられる場面は何度もあったが、これによって米国がデフォルトとなったことはなかった。このため、もしデフォルトとなった場合には世界経済に多大な影響を与えかねず、当然、日本も巻き込まれるのではとの警戒があった。
米国がデフォルトとなったとしても、過去にアルゼンチンやロシア、スリランカで発生したようなデフォルトとはまったく状況が異なる。米国はあくまで手続き上の問題にすぎない。民主党と共和党が、米政府の債務上限問題を使って、自らの政策を取り込ませようとしているだけである。
まさにチキンレースの格好となり、バイデン大統領は、この合意は妥協の産物なので、希望がすべてかなった人はいない。統治する責任とはそういうものだ」とも大統領は述べていた。
野党・共和党のマッカーシー氏は債務上限引き上げの法案にかんして、下院議員の95%が賛成する見通しだと話した。党内の強硬派が反対し債務上限引き上げの法案が通らない可能性はゼロではないものの、仮にデフォルトとなり、一時的にせよ米国の社会経済に打撃を与えたならば、政治問題となりかねず、次回の大統領選挙にも大きな影響を与えかねないものとなり、その可能性は極めて薄いといえよう。
議会を通るかどうかを、念の為、確認する必要はあるものの、米国がデフォルトとなる懸念は後退したとみて良いかと思われる。
米政府の債務上限を巡り、バイデン米政権と野党・共和党の協議が大詰めを迎えている。バイデン米大統領は26日午後、記者団に対して同日中に交渉がまとまる確証を得られるだろうと話した。合意案は固まりつつあるが、低所得層への支援を削るかでなお対立が続いている(27日付日本経済新聞)。
政府の資金繰りは6月1日にも行き詰まるとされていたが、イエレン財務長官は26日、その「Xデー」が6月5日になるという新たな試算を示した。少し時間的な余裕が生まれた分、ギリギリの交渉が続けられることが予想される。
大手格付け会社フィッチ・レーティングスは24日、米国の格付けは最上位「トリプルA」に据え置いたが、米国格付けの見通しを「ネガティブ」とし今後の状況次第で格下げがあり得るとした。
これまでも米政府の債務上限を巡っては、ぎりぎりの折衝が続けられる場面は何度もあったが、これによって米国がデフォルトとなったことはなかった。このため、もしデフォルトとなった場合には世界経済に多大な影響を与えかねず、当然、日本も巻き込まれるのではとの警戒もあろう。
ただし、仮に交渉がうまくいかず、米国がデフォルトとなったとしても、過去にアルゼンチンやロシア、スリランカが発生したようなデフォルトとはまったく状況が異なる。米国はあくまで手続き上の問題にすぎない。民主党と共和党が、米政府の債務上限問題を使って、自らの政策を取り込ませようとしているだけである。仮にデフォルトとなり、一時的にせよ米国の社会経済に打撃を与えたならば、政治問題となりかねず、次回の大統領選挙にも大きな影響を与えかねない。
あくまで米国の民主党と共和党が、いわばチキンレースをやっているに過ぎず、何らかのアクシデントでもなければ、期限までに妥協する可能性が高いと言わざるを得ない。それでも万が一はあるが、これによって米国経済がクラッシュするといった事態も考えづらい。
国際通貨基金(IMF)は26日、米国に対して政府債務の上限引き上げを巡る交渉が「米国と世界経済の両方に(危機がシステム全体に波及する)システミックリスクをもたらす可能性がある」と警鐘を鳴らした。今後は予算の承認時に自動的に上限を引き上げる仕組みを設けるべきだと提唱した(27日付日本経済新聞)。
米国債の発行根拠法は、合衆国憲法(第1条第8項)に基づいて連邦議会が定めた第二自由公債法となる。同法において、国債残高に制限額を課して、その範囲内であれば自由に国債を発行し資金調達できるとされている。IMFが提唱した仕組みを取り入れるには第二自由公債法の修正などが必要となりそうだが、それ以前にこれこそが米国の財政規律を守る仕組みでもあり、IMFの提唱については疑問を呈せざるを得ない。
欧米の長期金利が再び上昇圧力を強めつつある。米10年債利回りは3.6%あたりが目先の節目とされていたが、あっさりと3.7%台に上昇してきた。
パウエルFRB議長は19日のワシントンにおける講演において、「我々の目標達成のため、それほど政策金利を引き上げなくてもよいかもしれない」と発言し、金利の引き上げを停止する可能性を改めて示唆した格好となった。
6月のFOMCでは物価のピークアウト感も出てきていることみあり、利上げを見送ると言う見方が強まりつつある。それにもかかわらず、米10年債利回りが再び上昇してきたのはどうしてであろうか。
米国では米債務上限問題を巡り、与野党での駆け引きが続き、初のデフォルトかといった懸念も出ている。こちらはあくまで政治上の駆け引きであることで、デフォルトはさすがに回避されるであろうとの見方が強い。それよりも本来注意すべきは、米国の債務上限を引き上げる必要があるという事実そのものにある。
ここにきて欧州の国債利回りも再び上昇しつつあるが、こちらの要因として、欧州各国の財政悪化リスクへの懸念が強まっていることが指摘されている。
ECBによる利上げが進み利払い負担が拡大し、さらにエネルギーなど物価高に対する補助金で財政赤字が拡大しつつあるためである。
英国の10年債利回りは22日に4%台に上昇してきていた。英政府統計局によると3月の公的部門による借り入れが215億ポンドと3月としては遡ることができる1993年以降、過去2番目の大きさとなっていた。
欧州でもエネルギーや食品を中心にインフレが加速した、各国政府は物価高対策として巨額の補助金を投入した。ここに中央銀行の利上げによる利払い費用の増加により、欧米の財政赤字が拡大し、それによってあらためて長期金利に上昇圧力が強まっているとの見方が出てきたのである
むろん、欧米の長期金利上昇の背景には、FRBやECBが金融引き締め策を予想以上に長期化させるのではとの見方もあろう。しかし、財政への懸念もそこに徐々に含まれてきている可能性も否定はできない。
今後さらに財政悪化による欧米の長期金利の上昇が意識されると、日本の長期金利にも影響を与えかねない。
日本では日銀が大量に国債を買い入れるとともに、長期金利コントロールを行っているために、むしろ安全資産として(?)、資金が日本国債に流れるとの穿った見方も出てくるかもしれない。
しかし、より現実を見据えると、物価高なのに金融緩和を続け、日銀が大量の国債を買い入れ財政ファイナンスのような状況にあり、放漫財政を続けている日本の財政の脆弱性の方がより意識されかねない。リスクはむしろ日本にあり、との認識が強まることも十分にありうるのである。
長期金利は会議室で形成されるものではない、現場(市場)で形成されるべきものだ。
本来のあるべき水準に行こうとしている市場を無理矢理、力ずくで押さえ込んでいるのが、日銀のイールドカーブコントロール政策である。
日銀は異次元で非常時対応の金融緩和策をこの物価高にあっても維持させようとしている。そこに大きな問題が存在する。通常のノーマルな緩和策ですら、この物価水準にはそぐわないにもかかわらず、デフレを払拭するためと称して、過去にない異次元の金融緩和策を無理に継続している。
これによって本来金利の持つ機能が完全に失われている。
特に長期金利は日銀が10年新発債を発行額以上も買い入れるなど、過ぎた「工夫」の結果、流動性を喪失させた。さらに空売りをしにくくさせる「工夫」も加え、本来の機動的で柔軟に形成されるべき長期金利の形成そのものを阻害している。
日銀の元副総裁の山口廣秀氏はNHKの「変化の時代の金融政策」とのタイトルの講演において次のように発言していた。
「現在は長短金利操作の下で、本来金利に反映されるべき市場参加者の経済に関する見方が封じ込まれています。市場金利の変動は、多様な市場参加者の平均的な経済観のあらわれです。とくに経済の先行きが読みにくくなればなるほど、日銀にとっても貴重な情報源となり得るものです。変化の激しい時代こそ、日銀は市場の知恵を借りるべく、それが発するシグナルに謙虚に耳を傾けるべきではないかと考えます。」
「変化の時代の金融政策」 https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/483581.html
これは正論以外の何者でもない。
日銀は本来あるべき市場の機能を自らの意地の元に喪失させにかかっている。「市場金利の変動は、多様な市場参加者の平均的な経済観のあらわれ」と山口氏はしているが、市場はいろいろな思惑とともに、利益を追求するあまり無理な仕掛等も入りやすい面もある。しかし、無理な動きは自ずと修復されるのも市場である。日銀の無理な工夫はその柔軟な市場機能すら喪失させている。
10年370回についてはまだ日銀の毎営業日連続無制限の指値オペに引っかかってはいないが、英国債の下落などをきっかけに、370回が0.5%に張り付く可能性が出てきた。0.5%に張り付く前にイールドカーブコントロールを修正しておけば、昨年のような市場との激突は避けられるはずなのであるが、再び同様のことを繰り返すつもりなのか。日銀は長期金利をコントロールすることでいったい何をしたいのか。
25日のニューヨーク市場では円安が進み、ドル円は140円台に乗せ、2022年11月下旬以来、ほぼ半年ぶりの円安・ドル高水準を付けた。ユーロ円も150円台に乗せてきた。
6月のFOMCでの利上げについてはFOMCメンバー内でも見方は分かれているようだが、利上げの一旦停止もかなり織り込まれており、むしろ0.25%の利上げのほうがややサプライズとの認識となっている。いずれにしても利下げ観測は大きく後退している。
ECBについては利上げが継続かとの見方も強く、結果として何もしない日銀と欧米の中央銀行の金融政策の方向性の違いが再び浮き彫りになり、それが円安の大きな要因となっている。
さらにここにきて欧米の長期金利が上昇基調となっていることも、円安要因となっている。特に注意すべきが英国債の動きか。英国債といえば、トラス・ショックなどもあり、昨年の世界的な相場変動の先駆けともなっていたことを思い出す。
24日に発表されたの4月の英国の消費者物価指数は前年同月比8.7%上昇となり、伸び率は前月比1.4ポイント下がり、8カ月ぶりに1ケタ台に鈍化した。しかし、市場予想(8.2%)は上回ったことで、この日の英国債は続落となり、10年債利回りは4.20%に上昇していた。この日のギリシャの10年債利回りが3.85%なのでそれを上回っている。
欧米の長期金利の動きをみると英国の長期金利が先導して上昇してきている。米10年債利回りについては4%までまだ距離はあるが、30年債利回りをみるとこちらは節目の4%近くとなっている。
日本の10年債利回りは欧米の長期金利が落ち着いていたこともあり、期初の買いなども入ってか、一時0.4%を割れるなどしていた。しかし、欧米の長期金利の上昇を受け、再び0.5%を意識してくる可能性がある。
そもそも日本の物価指数からみた日本の国債利回りはあまりに低すぎる。むろん、物価指数だけが長期金利の変動要因ではないが、日銀の意地が長期金利の低迷に安心感を与えているかのようにもみえる。その意地の維持が果たしてマーケットにとって、いや日本経済にとって本当に良いものなのか。あらためてこれから試される可能性もあろう。25日の債券先物のナイトセッションの出来高ず1兆円を超えてきた。
2022年9月に英国でトラスショックが起きたことを覚えているであろうか。英ポンドが対ドルで過去最安値を記録し、英国債が大きく売られたという出来事である。
ジョンソンの党首辞任を受けて行われた保守党党首選挙で勝利し、2022年9月6日に首相に任命されたのがメアリー・エリザベス・トラス氏であった。英国で3人目の女性首相で、女王エリザベス2世に任命された最後の首相でもあった。
トラス英政権は1972年以来の大規模な減税を打ち出した。クワーテング英財務相は不動産購入時の印紙税を削減。個人や企業が直面する光熱費の高騰に対し、今後6カ月間で600億ポンド(約9兆5000億円)を拠出して支援することを確認。高額所得者に対する45%の所得税最高税率を廃止し、基礎税率も20%から19%に引き下げる。ロンドンの金融街シティーに対する規制自由化も約束し、バンカーの賞与制限は撤廃する。
英債務管理庁(DMO)は23日、2023会計年度(2022年4月〜2023年3月)の国債発行額が1939億ポンドに増額されると発表。4月時点では1315億ポンドを計画していた。
イングランド銀行は22日に0.5%の利上げ決定を発表し、保有する英国債の市場での売却を始めると発表した。これを受けて英国債は22日に10年債利回りは3.49%と16日の3.31%から大きく上昇していたが、トラス政権の1972年以来の大型減税と国債増発を受けて、火に油が注がれた格好となった。
23日のロンドン市場では英国債の利回りが急騰した。2年債利回りは前日より一時、0.4%あまり上昇して4%を上回り、2008年10月以来約14年ぶりの水準となった。政府債務増への懸念とともに、減税策がインフレをさらに加速させかねないとの懸念も強まったのである。
これをきっかけに英国の10年債利回りだけでなく、米国債の利回りも上昇圧力も加わった。これついて「債券自警団」が戻ってきたと表現する向きもあった。英国の10年債利回りも、一時4%を超えてきたのである。
その後、英国の10年債利回りは3%あたりまで低下したが、今年2月あたりから再び上昇基調となり、トラスショック以来の4%台に上昇してきている。23日には4.15%に上昇していた。
英政府統計局によると3月の公的部門による借り入れが215億ポンドと3月としては遡ることができる1993年以降、過去2番目の大きさとなっていた。これもひとつの要因とされたようだが、財政悪化を受けて再び「債券自警団」が戻ってきた可能性がある。これは決して他人事ではない。
5月2、3日に開催されたFOMCにおいて主要政策金利を0.25%引き上げることを決定した。会合後に発表された声明文では「委員会は入手する情報を注意深く見極め、その金融政策への含意を判断する」とし、前回の声明に盛り込まれた「いくらかの追加引き締めが適切となる可能性を見込む」との文言は削除された。
パウエル議長は声明発表後の記者会見で、今回の声明は6月の政策金利据え置きを示唆しているのかとの質問に対し、追加利上げを見込むとの文言を削除したことは「意義のある変化だ」と回答した。
パウエル議長は19日のワシントンにおける講演においても、「我々の目標達成のため、それほど政策金利を引き上げなくてもよいかもしれない」と発言し、金利の引き上げを停止する可能性を改めて示唆した格好となった。
これを受けて市場では、6月13、14日に開催されるFOMCにおいて、利上げではなく現状維持となるとの予想が強まった。
ただし、気の早い市場に対して、FRBは早期の「利下げ」観測に対しては釘を刺すような動きに出てきた。
ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が22日に、6月のFOMCでの利上げと利上げ見送りのどちらを支持するかの自身の判断を「際どいところだ」と説明した。
また、セントルイス連銀のブラード総裁はインフレ抑制のために「今年はさらに0.25%の利上げを2回実施するのが望ましい」との考えを示した。
サンフランシスコ連銀のデイリー総裁は「データが我々を導くべき」と利上げの選択肢を残す必要性を主張した。
これらはつまり、FRBの金融政策は引き続き金融引き締め方向に向いており、その向きを変えるつもりは当面ないことを示唆した格好となっている。これらの発言を受け、早い段階で利下げに転換するとの観測も一段と後退した。
利上げについては5月の0.25%の追加利上げでいったん停止される可能性が出てきた。ただし、この水準を当面維持し、物価の高騰がこれによって収まってくるのかを確認してくるものと予想される。
「日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。この認識に立って、日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする」(日本銀行と共同声明、首相官邸のサイトより)
「日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度 の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」(2016年4月の日銀金融政策決定会合)。
「日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する」(2023年1月の金融政策決定会合)。
「日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する」(2023年3月の金融政策決定会合)。
「日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく」(2023年3月の金融政策決定会合)。
2%の物価安定の目標とは何であろうか。
日銀はそれを全国消費者物価指数(生鮮食料品を除く)としていたはずである。展望レポートの物価予測も全国消費者物価指数(生鮮食料品を除く)であり、さらに全国消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー)を参考数値としていた。
5月19日に発表された4月の全国消費者物価指数(除く生鮮食料品=コア)は、前年同月比で3.4%の上昇となった。前年同月比の2%以上の上昇は2022年4月以降1年続いている。
さらに生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コアコア)は、同4.1%もの上昇となっていた。消費税導入時や増税時の伸び率を上回り、第二次石油危機の影響で物価が上昇していた1981年9月以来、41年7か月ぶりの上昇率となった。
数値上の2%の物価安定の目標は達成している。「賃金の上昇を伴う形で」と4月に急遽付け加えられたが、それは政府との共同声明には入っていない。その「賃金の上昇を伴う形で」の2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現とは、具体的にどのような物価指標で、どの程度の期間続けば良いかという明確な表現はされていない。かなり日銀の裁量に任されているかのような曖昧な表現となっている。
まあ、細かいことはさておき、すでに2%という物価目標は数値上クリアされていることはたしかである。いつまでも非常時の異次元緩和を続ける必要性は失われている。2%の物価安定の目標を持続的・安定的に実現することをどうしても待ちたいのであれば、ひとまず正常の普通の金融緩和策に戻してからというのが当然ではなかろうか。
どうして日銀は非常時緩和にしがみつきたいのか。金利がない異常な世界をこのままずっと維持させたいというのであろうか。
19日の東京株式市場は、日経平均株価は前日比234円42銭高の30808円35銭。1990年8月1日以来、約33年ぶりの水準を付け、バブル経済崩壊後の最高値を更新した。
日経平均の過去最高値といえば、1989年12月29日、年内最後の取引日「大納会」で付けていた。いわゆるバブルのピークであった。引け値では38915円87銭、取引時間中の高値は38957円44銭となっていた。
株価指数は景気を示す指標のひとつともされる。それが33年ぶりの水準に上昇してきたということはどういうことなのであろうか。
政府は5月15日午前に開いた経済財政諮問会議で、金融政策・物価等に関する集中審議を行い、政府側はデフレ脱却には物価や賃金の上昇が持続的・安定的なものとなるか関連指標をきめ細かくみることが必要との論点を示した。
このなかの「デフレ脱却」という言葉の使い方には極めて違和感がある。「デフレ」という言葉を使うことによって、日本経済の弱さを示している感もあるとともに、そもそも現在の状況を「デフレ」としていることにかなりの無理がある。
日本での物価指数をみても、デフレどころかインフレの状況となっている。さらに経済実態も日銀による異次元緩和を必要とするような事態に陥っていない。むしろ、異常な緩和が、1880年代のバブル期と同様に株価指数を異様に持ち上げている可能性すらありうるのである。
そうでなければ、この状況下で日本の株価指数が33年ぶりの水準に上昇してきたことを説明することが難しい。
米国では米債務上限問題を巡る問題やら、地銀などの経営による金融不安、さらにはその原因ともいえるFRBの積極的な利上げによるリセッション懸念などが、不安要素として取り上げられている。この不安要素があるから日銀は異次元緩和すら修正に躊躇しているような状況にある。
これはいろいろと理由をこじつけて、現在の緩和策をなるべく維持させ、これまでの緩和の付けは払いたくないというのが日銀の姿勢にも見えてしまう。これによって放漫財政も可能にさせている。
岸田文雄首相は経済財政諮問会議で「政府・日銀が密に連携を図りつつ、マクロ経済運営を行う重要性が高まっている」とも強調したが、いったいどのような連携を視野に入れているというのであろうか。
総務省が19日に発表した4月の全国消費者物価指数(除く生鮮食料品=コア)は、前年同月比で3.4%の上昇となった。伸び率は3か月ぶりに拡大した。
総合指数は前年同月比で3.5%の上昇。
そして以前に日銀はこちらを重視したいと言っていた生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コアコア)は、同4.1%もの上昇となっていた。消費税導入時や増税時の伸び率を上回り、第二次石油危機の影響で物価が上昇していた1981年9月以来、41年7か月ぶりの上昇率となった。
4月の消費者物価指数(除く生鮮食料品)は、政府による電気・ガス料金の負担軽減策の影響分が含まれ、これを除外すれば前年同月比で4%を超す上昇となっている。
米労働省が12日に発表した4月の消費者物価指数は、前年同月比5.0%の上昇と日本の消費者物価指数を上回っていたが、 上昇率は前の月の6%を下回り、9か月連続で縮小していた。
米国では消費者物価にピークアウト感がみられるのに対し、日本の場合は上昇はこれからが本番のような様相となっている。
食品や日用品といった生活必需品の値上げがまだ続いていることに加え、賃金の上昇などによる影響が今後拡がってくる事が予想されるのである。
4月の全国消費者物価指数での寄与度は食料品ばかりでなく、家電や携帯電話など多岐にわたる。値上げの動きは食料品からさらに広がりを見せつつある。
財・サービス分類指数でみると、持家の帰属家賃を除くサービスは前年同月比2.4%の上昇となっている。
日銀は賃金が伴わない物価上昇では、異次元緩和を修正する気はなさそうだが、現実には賃金上昇も伴う物価全般に上昇圧力が加わってきている。
これについて、いまだ「デフレ」との認識(経済諮問会議)というのは、現実離れし過ぎてはいまいか。しっかり現実を見据え、過去の柵などは関係のない適切な金融政策を行わなければ、相応のしっぺ返しを受ける可能性がある。
バイデン米大統領は17日、債務を巡る交渉は妥結し米国はデフォルト(債務不履行)を回避するとの見解を示した(18日付ブルームバーグ)。
一時は5月19日から5月21日に広島県広島市で開催予定の主要7か国首脳会議(G7広島サミット)の出席も危ぶまれていたバイデン大統領だが、広島サミットには出席することとなり、上記の発言は日本に向けて出発する前にホワイトハウスで記者団を前で行ったものとのこと。
自身が日本から帰国する21日までに合意が成立することはないだろうとの見方も示し、広島サミット出席後に予定していたパプアニューギニアとオーストラリア訪問をキャンセルしている。
マッカーシー下院議長はじめ交渉相手とは密接に連絡を取り合うつもりだと大統領は説明していたが、妥協点を探る動きとみられ、こちらはマッカーシー下院議長など共和党側も同様か。
少なくとも今回の米国はデフォルト懸念は、米国債の利払いや償還資金がないわけではなく、あくまで手続き上の問題であり、与野党の腹の探り合いともいえる。
ただし、仮に米国債がデフォルトとなり、米国の社会経済に打撃を与え、市場を混乱の導けば、当然ながら政治責任を問われかねない。
このあたり、妥協点を探りながら、少なくともデフォルトは回避させる方向に進むであろうことが予想される。
18日の東京市場では、リスク回避の反動もあり、円安株高が進行している。
17日の東京株式市場で日経平均株価が続伸し、節目の3万円を一時上回った。取引時間中に3万円台をつけるのは2021年9月以来、1年8か月ぶりとなる。
この前日の16日の東京株式市場では、東証株価指数(TOPIX)は3日続伸となり、12.33ポイント高の2127.18と1990年8月以来、約33年ぶりの水準を付けてきた。
2021年9月14日の東京株式市場で日経平均株価は30670円10銭に上昇し、1990年8月以来約31年ぶりの高値を付けていた。この数値にも接近しており、抜いてくる可能性も出てきた。
内閣府が17日発表した1〜3月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.4%増、年率換算で1.6%増となった。3四半期ぶりにプラスとなったとはいえ、景気が極端に良いわけではない。
米国では米債務上限問題を巡る問題やら、地銀などの経営による金融不安、さらにはその原因ともいえるFRBの積極的な利上げによるリセッション懸念などが、不安要素として取り上げられている。この不安要素があるから日銀は異次元緩和すら修正に躊躇しているような状況にある。
日銀が異次元緩あらためない姿勢そのものも株価にとっては好都合となっているようにみえる。
米国の先行きが不安定であり、日銀が下手に非常時緩和を正常化することで、株価を下落させ、景気を下振れさせるリスクを極度に意識、いや言い訳にしているかの感もある。それを国民が沈黙の了承を与えているようにもみえる。
これは現在の日本を取り巻く、大きなリスク要因ともなりかねない。株価にみるように日本の景気はそれほど悪くなく、基盤も盤石とまではいえなくても、日銀の正常化程度には当然耐えうるはずである。物価はすでに日銀の正常化どころか利上げすら待ったなしの水準にある。
これらの矛盾がどのような格好で、市場そのものや経済実態に影響を与えているのか。また、その矛盾がどのようなかたちで表面化してくるのかは予測は難しい。
国債や借入金などを合わせた政府の債務、いわゆる国の借金は、ことし3月末の時点で1270兆円あまりと過去最大を更新しているが、それも何とも思わなくなっている。いろいろと麻痺している、いや麻痺させられている日本であり、見えないリスクが積み上がりつつあることだけは認識しておく必要はあると思う。
政府は15日午前に開いた経済財政諮問会議で、金融政策・物価等に関する集中審議を行い、政府側はデフレ脱却には物価や賃金の上昇が持続的・安定的なものとなるか関連指標をきめ細かくみることが必要との論点を示した(15日付ロイター)。
政府の経済財政諮問会議にケチを付けるわけではないが、この文章そのものにおかしな点が存在する。
「政府側はデフレ脱却には物価や賃金の上昇が持続的・安定的なものとなるか関連指標をきめ細かくみることが必要との論点」
この部分の「デフレ脱却には」という点である。
私が知る限り、デフレとはデフレーション(Deflation)の略であり、デフレーションとは、物価が持続的に下落していく経済現象であると説明される。これで間違いはないであろうか。経済学の基本の基であり、中学や高校の教科書でも、持続的な物価の下落と説明されているはずである。
現在の日本の物価指数、特に日銀の物価目標となっている全国消費者物価指数(除く生鮮)の前年同月比は3月分が前年同月比3.1%の上昇となっていた。政府による支援策を除くと同4%台となる。15日に発表された4月の企業物価指数は前年比プラス5.8%となっていた。
全国消費者物価指数(除く生鮮)はここ1年の間、前年同月比2%を上回る数値が続いており、企業物価は高止まりしている。これをもって現在の物価動向を「物価が持続的に下落していく経済」などと言える状況にあるのか。
そもそも通常の物価指標を見る限り、「物価が持続的に下落していく経済」などでは当然なく、「物価が持続的に上昇していく経済」以外の何ものでもない。それにもかかわらず、経済財政諮問会議での「デフレ脱却には」とはという前提は、どういうことなのであろうか。
この部分は「実質賃金が持続的に下落していく経済現象のこと」を示したいのかもしれない。それでもかなり無理がある。
もしどうしても「デフレ脱却には」という前提を使いたければ、経済財政諮問会議で「デフレ」という解釈について、学生にもわかるような補足修正説明をする必要があるのではなかろうか。そうでないと学生がデフレやインフレとはいかなるものかという解釈に間違いを生じる可能性がある。
結局、半ば強引に金融緩和を続けたい日本銀行、それに甘んじて財政拡大を維持したい政府の思惑が、このような経済実態とは乖離した発言も生んでいるようにすらみえる。その結果、物価や経済、さらには財政状況を無視したかのような政策を行うかにみえてしまう。こんなことをいつまで続けられるのか。
中国が資源取引で人民元決済を拡大している。中国とブラジルは3月、貿易や金融取引で両国の通貨を使って直接取引できる仕組みの創設で合意したとAFP通信などが報じていた。
ブラジルの輸出における中国の存在感は2012年以降増している。2012年は輸出額全体の17.2%が中国向けだったが、2021年は31.3%と割合は1.8倍に大きく増加していた。2021年の対中輸出で最も金額の割合が大きかった品目は、鉄鉱で全体の32.3%、次いで大豆が同31%、原油が16.2%、牛肉が4.4%と続く(3月22日付JETROのレポートより)。
さらに、アルゼンチン政府は4月26日、中国からの輸入品の決済をドルから人民元に切り替えると発表した。
4月は10億4000万ドル(約1400億円)相当を、5月以降は7億9000万ドルを人民元で支払うという。中国はアルゼンチンにとって最大の輸入相手で、全体の2割強(2022年に約175億ドル)を占める(5月7日付日本経済新聞)。
アルゼンチンでは世界的なドル高と干ばつでインフレが加速し、通貨ペソの下落に歯止めがかからず、このためアルゼンチン政府はドルの流出を抑えようと、中国からの輸入に対して人民元決済を導入したとされる。
中国はドル覇権を揺さぶろうと機会があれば、人民元決済の拡大を狙っている。デジタル人民元を率先して進めようとしているのも、その狙いもあるとされている。
さらに台湾有事に備え資源調達を安定させたい思惑もありそうだともされている。
石油やガスでも元決済を拡大させようとしている。原油が輸入の5割を占めるロシアとの石油取引では元決済が浸透しているとされる。
ロシアによるウクライナ侵攻によるロシアへの経済制裁などもロシアによる人民元決済を拡大させている要因となっている。
日銀は8日に日銀金融政策決定会合議事要旨(3月9・10日開催分)を公表した。
物価面について、ある委員が、2月の東京都区部の消費者物価は、予想通り、プラス幅がしっかりと縮小したと述べていた。
この発言はおかしい。日銀の物価目標となっている全国消費者物価指数の2月分は、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数(コア)は前年同月比で3.1%の上昇となった。1月の4.2%の上昇から大きく上昇幅を縮小させた。
この点だけでみれば、「予想通り、プラス幅がしっかりと縮小した」といえる。昨年の1月以来、1年1か月ぶりの伸び率鈍化となっていた
ただし、これは「予想通り」、政府による電気・ガス料金の抑制による影響が大きかった。電気・ガス料金の抑制策と合わせた政策効果が生鮮食品を除く総合の前年同月比伸び率を1.2ポイント押し下げたからである。
ただし、単純計算すると、政策効果がなければ前年同月比4.3%の上昇となり、1月の4.2%から伸び率が加速していた計算となる。
プラス幅が数値上はしっかりと縮小していたが、政策効果がなければ伸び率がむしろ加速していた。これを考慮すると奇妙な発言にみえた。
議事要旨には「一人の委員は、企業の価格転嫁の動きが続いていることや、サービスの価格も次第に上昇ペースを高めてきており、持家の帰属家賃を除くサービスの価格は、前年比1%台後半まで上昇している点に注目している」という発言もあった。
総務省が4月28日に発表した東京都区部の4月の消費者物価指数で、賃金上昇の影響をより受けやすく、消費者の実感に近い持家の帰属家賃を除くサービスは3月の前年同月比2.3%増から4月は同2.6%の上昇となっていた。すでに2%を超えてきている。
「複数の委員は、一旦プラス幅を縮小した物価が再び2%に向けて伸びを高めるためには、粘着性の高いサービス価格の持続的な上昇が重要となるとの見方を示した」
まったく何を言っているのかわからない。2月の消費者物価は一旦プラス幅を縮小したが2%は遙かに超えている。粘着性の高いサービス価格も帰属家賃を除くサービスでみれば、2%を超えてきている。これがあと5年も10年も続くと判断しないと、このまま異次元緩和を続けるつもりなのであろうか。日銀の物価の見方が良くわからない。金融政策の現状維持ありきの見方にしか見えないのだが。
日本ではゴールデンウイーク真っ只中となっているが、この3日、4日、5日の休日に大阪取引上に上場されている日経225先物は取引されているのをご存じであろうか。大阪取引所では祝日取引を実施している。すべての祝日で取引されるわけではないが、2023年で言えば、1月2日、1月9日、11月3日以外の祝日では取引が実施される。取引の有無は下記の大阪取引所のサイトで確認ができる。
祝日取引(大阪取引所) https://www.jpx.co.jp/derivatives/rules/holidaytrading/index.html
また、祝日取引の値動きについては、下記のやはり大阪取引所のサイトで確認できる。ただし、こちらのデータ更新タイミングはリアルタイムではない点と、祝日取引はあくまで前営業日の夜間取引(ナイトセッション)との位置づけなので、値動きを確認する際はその点にも注意が必要となる。
先物価格情報(大阪取引所) http://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_night
2日の米国株式市場では、米地域銀行の破綻が連鎖しかねないとの懸念から、中堅地銀ではパックウェスト・バンコープなどの地銀株が急落。FOMCも控えて、投資家がリスク回避姿勢を強めたこともあり、昨日のダウ平均は一時、600ドルを超す下げとなり、結局、ダウ平均は続落し367ドル安で引けていた。これを受けて本日の休日取引での日経225先物も大きく下落している。
3日にはFOMCも開催され、その結果も発表される。4日にはECB理事会も開催されるなど大きなイベントも予定されており、東京時間での日経平均先物の動きも注目されるとみられ、その確認には上記サイトの先物価格情報が活用できる。
イエレン米財務長官は連邦債務を上限未満に維持するための特別会計措置について、早ければ6月初旬に使い切る可能性があると米議員らに伝えた(2日付ブルームバーグ)。
米国債の発行根拠法は、合衆国憲法(第1条第8項)に基づいて連邦議会が定めた第二自由公債法となる。同法において、国債残高に制限額を課して、その範囲内であれば自由に国債を発行し資金調達できるとされている。
米国での国債は、日本のように単年度の予算における歳入・歳出の差額を埋めるという単年度主義の観点からではなく、その時々における国庫の資金繰り上の必要性から発行される。
議会が定めた法律に基づいて発行される形式は日本も米国も同様だが、日本は年度の予算という形式をとっているのに対して、米国は連邦議会が定めた第二自由公債法において、国債残高に制限額を課して、その範囲内であれば自由に国債を発行し資金調達できる形式となっている。
これはつまり、連邦債務残高が上限を超過した場合には、限度額を引き上げない限り、新規の米国債発行ができなくなるルールとなっている。
連邦債務残高は今年1月に31兆4000億ドル(約4320兆円)の現行法定上限に到達し、財務省はそれ以降、デフォルト(債務不履行)回避のための特別措置を講じている。
バイデン大統領は複数の議会指導者に電話をし、債務上限問題を話し合う9日の会合に招いた。ホワイトハウスが1日に発表した(2日付ブルームバーグ)。
仮にデフォルトと、本当に国債の償還や利払い資金が賄えないのではなく、あくまで手続き上の問題でもある。過去にも同様の事態が起きたが米債の動揺は限られていた。
今回も同様にデフォルトとなる懸念はあるものの、どこかで折り合いを付けることも予想され、米国債がデフォルトを理由に急落することは考えづらい。しかし、解決するまでは不安定リスクとして認識されることも予想される。
三菱UFJ銀行は2023年度中にも、ATMの24時間稼働を終了する。東京や大阪、愛知など都市部を中心に全国98拠点でATMを24時間利用できるようにしているが、今後は原則として、稼働時間を最長でも午前6時から翌日の午前0時までの18時間に短縮する方針だと2日の日本経済新聞電子版が報じた。
これによると三菱UFJ銀行のATMの拠点数は21年3月時点で全国1759か所あるが、このうち全国98拠点でATMを24時間利用できるようにしている。このうち今年9月までに91拠点で、年度内には残る7拠点でも、24時間稼働を終える見通し。
キャッシュレス化が進んでいることに加え、コンビニエンスストアで24時間使えるATMが増えたこともあり、コスト削減のため、ATMの24時間稼働を終了する。いまのところほかのメガバンクはATMの24時間稼働を当面続ける方針だそうだが、いずれ三菱UFJ銀行に続いて、ATMの24時間稼働を終了するとともに、稼働時間そのものを短縮する動きが拡がる可能性がある。
24時間稼働のATMは東京や神奈川、愛知、大阪などの支店や、店舗外では駅前や空港にあるそうだが、私の住んでいるところでは、24時間稼働のATMどころか、三菱UFJ銀行などメガバンクのATMまでクルマで何十分の距離があり、主にコンビニのATMを利用せざるを得ない。
ただし、ATMの24時間稼働の割合が利用件数は全体の0.1%程度にとどまるとしても、例えば空港などではどうのであろうか。それでも深夜に現金を必要とされるケースはそれほど多くはない。買い物程度だと、クレジットカードと連動した電子マネーを使うなどすれば問題はないのではなかろうか。
いずれにしても地方都市では、すでにコンビニエンスストアのATM利用も多いとみられ、24時間稼働のATM稼働停止による影響は一部に限られることも予想される。
「24時間戦えますか」、というのが昭和の流行語にあったが、銀行のATMは24時間戦うのではなく働かなくても良くなりそうである。これから人手不足も深刻化するようになると24時間営業そのものも反収かしてくる可能性もあるのではなかろうか。
日銀は4月28日に開催された金融政策決定会合にて、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)及び、資産買入れ方針の現状維持を全員一致で決定した。
一部期待のあったイールドカーブ・コントロールの修正は見送られた。そして、フォワードガイダンスの一部を修正した。
さらに1年から1年半程度の時間をかけて、多角的にレビューを行うこととした。
植田総裁は、金融緩和策のレビューは緩和策を縮小する出口戦略と関連があるのかを問われ、「レビュー期間の1年から1年半というのは微妙な長さかと思う。その間に正常化を始める可能性もゼロではない。そういう場合にはこのレビューは、必ずしも時間的に間に合わないということだ。そもそも現時点で、そこを狙って始めるわけではない」と述べた。
その一方で、「正常化を始めるプロセスがどんどん後ろずれしていく可能性もまたゼロではない。2年後、3年後、4年後ということになる可能性も残念だがありえる。そうすると、副作用をどういうふうにして継続していくのかという点は、当然考慮しなくてはいけない点になる」と述べた。
これらを受けて、日銀による金融政策の正常化が先送りされるとの見方が強まり、債券先物は急反発し、10年370回債の利回りは0.4%を割り込み、超長期債の利回り低下幅は0.1%を超えてきた。
植田体制となっても黒田体制と変わりなしとの見方から、日銀と欧米の中央銀行のスタンスの違いが再認識され、ドル円は136円台、ユーロ円は150円台に上昇した(円安)。
日銀執行部の新体制が発表され、その顔ぶれをみて危惧されたことが、明らかとなった。
特に内田副総裁はイールドカーブ・コントロールの修正を含めた正常化について以前からかなり懐疑的というスタンスとなっていた。つまり正常化には距離を置き、副作用には工夫で乗り切るというスタンスが垣間見えた。
このあたりを市場は察してきたということであろうか。しかし、そんなスタンスで今後も乗り切れるのかは甚だ疑問である。
4月の消費者物価指数は上昇幅を拡大させてくる可能性が高く、今後は食料品の値上げとともに、賃上げによる影響も出てこよう。
日銀の言うところの2%という物価目標が何であるのかが、かなり曖昧になってきている。2%を継続して達成するなど無理があるとみられたものが、すでに1年間も2%を上回っているし、さらに今後1年も展望レポートのコアコア予測でみると2.5%と2%を上回っているのである。
米連邦預金保険公社(FDIC)は1日、米地銀ファースト・リパブリック・バンク(FRC)が経営破綻し、公的管理下に置いたと発表した。同時に米銀最大手JPモルガン・チェースがFRCの預金と資産を買収するとも発表した(5月1日付日本経済新聞)。
3月の米地銀シリコンバレーバンク(SVB)の破綻後、財務が脆弱だったファースト・リパブリック・バンク(FRC)の預金も急減。3月の預金流出の規模が1000億ドル規模に達していたことが分かり、経営不安が再燃していた。ファースト・リパブリック銀の株価も大きく下落。金融不安が起きる前と比べると株価が20分の1となっていた。
このためファースト・リパブリック銀行の救済策が検討されており、JPモルガン・チェース、PNCフィナンシャル・サービシズ、シチズンズ・ファイナンシャル・グループなどが提案を出しており、JPモルガン・チェースがFRCの預金と資産を買収することになった模様。
ファースト・リパブリック銀行の救済策の検討はすでに報じられていたこともあり、ファースト・リパブリック・バンクが経営破綻はすでに織り込み済みとみられ、これによる市場への影響は限定的となっていた。東京時間の米10年債利回りは3.46%と28日の3.43%からむしろ上昇していた。ドル円は137円が目先の心理的な壁となっているが、リスク回避の円買いとはなっていない。
コーエーテクモホールディングスの広報担当者によると、同社は2023年3月期決算でクレディ・スイスのAT1債の保有に関連して41億円の損失を計上した。余裕資金の運用などを指揮する襟川恵子会長が24日の決算説明会で明らかにしたとしている(25日付ロイター)。
クレディ・スイスのAT1債は3月、スイスの銀行大手USBグループによる同社の買収合意を受け、約160億スイス・フラン(約2兆4200億円)相当が無価値になった。
AT1債は発行体である金融機関の自己資本比率があらかじめ定められた水準を下回った場合などにおいて、元本の一部または全部が削減される、いわゆるトリガー条項を有する債券となる。
スイス政府が流動性などに関する特別な支援を可能とする措置を講じており、これがクレディ・スイスのAT1債の元本削減のトリガーとなったようである。当該支援がトリガーとなる旨はAT1債の条項にあらかじめ含まれていた。
日本経済新聞は15日、「AT1債、国内富裕層に」という記事で、「三菱UFJモルガン・スタンレー証券が経営危機で無価値となったスイス金融大手クレディ・スイス・グループの永久劣後債(AT1債)を約950億円分、国内の個人投資家などに販売していたことが14日、わかった」と伝えた。
AT1債は2008年の金融危機後、金融規制を強化する中で導入された。財務が大幅に悪化した場合などに元本が削減され、資本増強に充てられる。資本規制上、自己資本の一部に算入可能なことから発行が相次いだ。通常の社債よりも利回りが高く、投資家に人気だったという
クレディ・スイス・グループのAT1債が無価値となったあと、三井住友フィナンシャルグループ(FG)は1400億円規模のAT1債(永久劣後債)を発行すると報じられた。
それだけ発行体にとっても、投資家にとっても、ニーズのある金融商品ということであろう。むろん三井住友フィナンシャルグループのAT1債を購入する投資家は、トリガー条項などをしっかり把握して投資対象とするものとみられる。
ただし、個人がそのようなトリガー条項を把握できているのかといえば、難しい問題もあるのではなかろうか。
日本では金利がほとんど付かない状態が続いており、少しでも利回りの高い商品に飛びつく個人投資家も多いのではなかろうか。ただし、高い利回りはそれだけのリスクが内在されていることに十分注意すべきである。
ただし別途注意する必要があるのは、その利回りのベンチマークとなっている国債の利回りを日銀が強制的に押さえつけているという点である。基準がおかしいとリスクの判断もできなくなってしまう。
総務省が28日に発表した東京都区部の4月の消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が104.8となり、前年同月比3.5%上昇した。伸び率は3月の3.2%から拡大した。
東京都区部の4月の消費者物価指数 https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/kubu.pdf
総合指数も前年同月比3.5%の上昇となっていたが、生鮮食品及びエネルギーを除く総合、いわゆるコアコアは前年同月比3.8%の上昇となっていた。
政府の電気・ガス料金抑制策の影響を除けば、コア指数もかなりの高止まりとなっていることが窺える。
年度替わりとなる4月ということで食料品の値上げも影響した。生鮮食品を除く食料が前年同月比8.9%の上昇で、3月の8.1%から上昇率が拡大。これは1976年6月以来、46年10か月ぶりの上昇率となるとか。
持家の帰属家賃を除くサービスをみると3月の前年同月比2.3%増から4月は同2.6%の上昇となっている。
東京都区部の消費者物価指数は全国消費者物価指数の先行指標ともなる。このため、4月の全国消費者物価指数(除く生鮮)も3月の前年同月比3.1%から上昇幅を拡大させてくることが予想される。
ちなみに日銀の物価目標は現在、全国消費者物価指数(除く生鮮)とされている。すでに実質前年比4%物上昇となっており、目標値の2%の倍である。
しかし、日銀は賃金の上昇が伴っていないとして、異次元緩和を緩める様子すらない。それでは我々は日銀の物価目標の達成をどの指標から見いだせば良いのか。それすらも日銀は明らかにしていない。
金融政策は機械的にするものではないものの、目標値を定めていた日銀が目標そのものの存在をぼかしている。これでは市場などとの対話が成り立つとも思えない。必要ないとして物価目標そのものをなくす分には反対はしないが。