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新米の季節となってきた。スーパーなどで今年の新米の販売がスタートしているようである。
テレビ朝日系で17日に放映されたニュース番組によると、入荷されたコメの価格は1キロ1560円、1キロ1290円といずれも1000円を超えているとか。
高知県産の「よさこい美人」についた値段は、5キロにしてなんと7800円。同じ高知県産のコシヒカリは6450円と例年の1.5倍ほどの高値と伝えられた。
その年の取引価格の指標にもなるという概算金が、去年よりも高騰していることが理由とされた。
一足先にスーパーに並んだ新米の店頭価格の上昇の背景にあるのは、激化する業者の買い付け競争だとされる。
つまりそれだけ強い需要が背景にあると思われる。
コメの価格抑制を期待された備蓄米であるが、当初の販売計画が遅れるなどしていると報じられている。ただし、備蓄米放出で新米の販売価格まで抑制出来ることは考えづらい。
新米価格の高騰については、コメの価格調整が引き続き起きていると考えられる。
2022年4月から日本の消費者物価指数(除く生鮮)が前年同月比で2%超えが続くなか、抑えられていたコメの価格も上昇基調に転じていた。
備蓄米の放出で一時、上昇は抑えられても新米、特に銘柄米への需要はかなり強いことがあらためて示された。
誰かが価格を引き上げているといったことではない。この価格が異常というよりも、需給バランスの上での価格設定とみたほうが良いのではなかろうか。
日経平均が過去最高値を更新しても誰も文句は言わないかもしれないが、こちらもある意味、異常値とも思える。一部銘柄が上場来最高値を更新しているのと同じような現象か。株価も(銘柄別の)コメの価格も最終的には需給バランスによって決定されるはずである。
それにしても5キロ7800円というのはさすがに驚きを隠せない。30キロにして46800円となる。それでも値段がおかしいというよりも、そういう値が付いてしまう状況にあると思う。
海外に行くと食料品を含めた価格が日本に比べて非常に高く感じる。これは円安要因もあるが、むしろ日本の価格が低すぎる面もあるのではなかろうか。
そういった価格調整が新米にも影響しており、この価格を抑えようとしてもたぶん無理がある。
この新米価格の高騰は、当然ながら消費者物価指数に反映されることになる。ほかの食料品価格にも影響が出ることを考慮すれば、想定を超える物価上昇が継続する可能性が出てこよう。
そうであれば、日銀は利上げをあまりに慎重になりすぎると、物価上昇を加速させかねない事態となる恐れも出てくる。
総務省が22日に発表した7月の消費者物価指数(除く生鮮)は111.6となり、前年同月比3.1%の上昇となった。6月の3.3%を下回り、2か月連続で伸び率が鈍化した。
消費者物価指数(除く生鮮食料)は日銀の物価目標でもあり、その目標数字の2%を超えているのは2022年4月以来、40か月連続となる。
政府補助金の終了で前年同月に大きく値上がりした反動で電気代と都市ガス代が下落した。エネルギー全体では0.3%の低下と昨年3月以来のマイナスとなった。
生鮮食品を除く食料は8.3%の上昇と2023年9月以来の高い伸びとなった。コメは90.7%上昇と2か月連続で伸びが鈍化したが、高い水準は維持されていた。
ちなみにCPI上のコメ類には備蓄米は含まれず、コシヒカリといった銘柄米の値動きを反映している。
7月の消費者物価指数(除く生鮮食料)の伸びは鈍化したとはいえ、3%台を維持している。
今回、総合指数は前年同月比3.1%の上昇となっていた。これを各国と比較してみたい。
13日に発表の米国の7月の消費者物価指数は前年同月比で2.7%の上昇。
20日に発表の英国の7月の消費者物価指数は前年同月比で3.8%の上昇。
20日に発表のユーロ圏の7月の消費者物価指数(確定値)は前年同月比2.0%上昇。
それぞれの政策金利は日本が0.5%、米国が4.25〜4.50%、英国が4.00%、ユーロ圏が2.15%。
そして22日現在の日本の長期金利は1.615%、米国の長期金利は4.32%。英国の長期金利は4.73%、ドイツの長期金利は2.75%。
物価だけが金利決定要因ではないものの、物価に応じた金利が形成される必要があることも確かであり、日本の金利、特に政策金利がいかに低すぎるかがわかるかと思う。
FRBは20日、7月29〜30日に開いたFOMCの議事要旨を公表した。
議事要旨では米関税措置がインフレに与える影響や政策の引き締め度合いに関する活発な議論が行われたことも示された。
物価上昇は一時的にとどまるとの見方と、供給網の混乱を伴う長期的なインフレ圧力を警戒する声がせめぎ合った。
この会合では政策金利を賛成多数で据え置いたが、政策金利の据え置きか利下げかで32年ぶりの分裂劇となった。
ウォラー理事とボウマン副議長(金融監督担当)の2人が反対票を投じ(利下げを主張)た。FOMC声明によると、両氏は0.25%の利下げを主張した。
ウォラー理事とボウマン副議長はいずれもトランプ大統領が第1次政権で理事に指名した。
正副議長を含む7人の理事のうち2人が反対したのは1993年12月以来となる。このほかクグラー理事が欠席し、投票しなかった。
反対票を投じたウォラー、ボウマン両氏はいずれも雇用市場の一段の悪化を回避するため、利下げを主張した。
8月1日に発表された7月の米雇用統計は、雇用者数の伸びが予想以上に鈍化するなど、2人の懸念を裏付ける内容だった。
トランプ大統領は7月の雇用統計を受け、労働省労働統計局(BLS)のエリカ・マッケンターファー局長の解任を命じた。
トランプ大統領は、「共和党と私の評判を落とすために不正に操作された」と自身の交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。
ただし、何かしらの証拠が示されたわけでない。
クーグラー理事は任期途中で辞任すると発表。事辞任の理由については、今のところ明らかにされていないが、FRB議長人事を睨んだ動きであった可能性が高い。
そして今度は、トランプ大統領はFRBのクック理事に対して、今すぐに辞任すべきだと投稿した。
住宅ローン契約を巡って不正があったとして、トランプ氏に近い政府高官が調査を求めている。クック氏は即日、辞任を否定する声明を出した。
不正があったと訴えているのは米連邦住宅金融庁(FHFA)のパルト局長。FRB批判の急先鋒とされる。
パルト氏によると、クック氏は2021年にミシガン州とジョージア州の住宅を同時期に購入し、いずれも居住用として優遇金利で住宅ローンを契約したと。
トランプ氏のいうことを聞かないFRBいじめの一環ではなかろうか。
FOMCは合議制となっている。これまでは議長の意見が重視される傾向にあり、反対者も限られており、意見が集約されての金融政策の決定となっていた。
仮にトランプ氏の意見を重視する議長が指名されたとしても、経済環境に合わない無理矢理な政策が素直に決定されることはFRBでは考えづらい。
ただし、トルコなどの事例もあり、政治の圧力に屈することも絶対ないとはいえないかもしれないが。
7月18日に総務省が発表した6月の消費者物価指数(除く生鮮食料)は111.4となり、前年同月と比べて3.3%上昇となった。5月の3.7%を下回り、4か月ぶりに伸び率が鈍化したが、7か月連続で3%台となった。
消費者物価指数(除く生鮮食料)は日銀の物価目標でもあり、その目標数字の2%を超えているのは2022年4月以来、3年1か月続いている。 生鮮食品除く食料は8.2%の上昇となり、8.8%の上昇となっていた2023年9月以来、1年9か月ぶりの高い伸びとなった。
「コメ類」の上昇率は100.2%と、去年の同じ月の2倍を超える高い水準となっていた。
そのコメであるが、テレビ朝日系で17日に放映されたニュース番組によると、入荷されたコメの価格は1キロ1560円、1キロ1290円といずれも1000円を超えているとか。
高知県産の「よさこい美人」についた値段は、5キロにして7800円。同じ高知県産のコシヒカリは6450円と例年の1.5倍ほどの高値と伝えられた。
JAのサイトで確認してみたところ、令和6年産の「よさこい美人」は昨年8月に5キロ3960円で販売されていたところがあった。つまり約2倍になっている計算となる。
新米の販売はこれから本格化するが、6月の消費者物価指数のコメ類の上昇率と同様に2倍程度で推移してくる可能性がある。
小泉進次郎農相は20日、随意契約による政府備蓄米の販売について、8月末までとしていた期限を延長すると表明した。
2025年産の新米が出回る時期と備蓄米の販売が重なれば、価格下落の一因になるとの懸念が生産者などから出ており、随意契約の備蓄米の販売期限を8月末までに設定していた。
しかし、新米と備蓄米へのニーズは異なることが予想される。備蓄米放出によって新米の需要を低下させることは難しいのではなかろうか。
いずれにしてもコメの価格の上昇率は維持されることが予想され、それが消費者物価指数を底上げすることが予想される。
物価上昇に対し効果的なのは、給付金や消費税減税などてはなく、まずは日銀の政策金利を物価に応じたものとする正常化である。それで物価上昇要因ともなる円安にも対応できる。
伊藤忠商事とセブン銀行は18日、資本業務提携の検討を始めると発表した。伊藤忠傘下のファミリーマートの店舗に設置されている現金自動預け払い機(ATM)を、セブン銀のATMに切り替えることを検討する。
伊藤忠商事の名前が出てきたので、もしやセブンイレブンとファミマの合併かと一瞬、勘違いしそうだが、今回は伊藤忠商事とセブン銀行が資本業務提携の検討を始めるそうである。
セブン銀行はセブン&アイ・ホールディングスの子会社だったが、6月にセブン&アイは非連結化すると発表した。
セブン銀行は他企業との協業を模索し、株式譲渡先の候補として伊藤忠が浮上していた。結果として、伊藤忠商事とセブン銀行は資本業務提携の検討を始めた。
キャッシュレス化や現金離れの進展を受けATM事業の収益性は下がってきているとされる。
セブン銀行は地方銀行などを中心に運営受託を広げてきており、足元で全国の39行の計500台ほどがセブン銀のATMに置き換わっているそうである。
受け入れ増に伴う費用の吸収には規模の拡大が不可欠となる。このため、今回の伊藤忠との提携は今後の事業戦略の核となる。
ファミリーマートにはイーネットとゆうちょ銀行のATMが合計約1万6000台がある。
ファミリーマートとイーネットのATM設置契約の期限である2026年3月以降に。セブン銀の機種への切り替えをめざすとか。
今後はファミマ内を含めてセブン銀行のATMの端末がさらに増加することが予想される。
セブン銀行の担当者は「複数の企業と連携を模索したが、今後の持続的成長に向け、伊藤忠がよりATM事業を強化できる相手だった」と語った(18日付共同通信)。
今回はあくまでコンビニ内のATMについての話である。
セブン銀行はセブン&アイ・ホールディングスの子会社ではなくなっており、今回は伊藤忠商事とセブン銀行の資本業務提携の検討である。
それでもいずれセブンイレブンとファミリーマートが資本業務提携をする可能性もないとはいえないのではなかろうか。
金融庁は今秋にも法定通貨に価値が連動する円建てステーブルコインの発行を国内で初めて認めると日本経済新聞が報じた。
ステーブルコインとは、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を基盤とし、ドルや円などの法定通貨や、金(ゴールド)等のコモディティ(商品)価格と連動するように設計された暗号資産のことである。
2023年6月施行の改正資金決済法で「通貨建て資産」として仮想通貨と切り離されて定義され、銀行、信託会社、資金移動業者が発行できるようになった。
月内にフィンテック企業のJPYC(東京・千代田)を資金移動業に登録する。JPYCが発行するステーブルコインの名称は「JPYC」。1JPYC=1円に価値が保たれるよう、預金や国債といった流動性の高い資産を価値の裏付けとして保有する。
ここがひとつ注目すべきポイントになる。
米国ではステーブルコインの時価総額は2300億ドル(約33兆円)に達するとされる。
そしてステーブルコインの発行体は裏付け資産として、米国債や現金、貸借(レポ)取引により運用される短期資産などを保有している。
国際決済銀行(BIS)が5月末に公表したリポートによると、2024年にステーブルコインの発行体が購入した米短期国債は約400億ドルに上るとされる。
ステーブルコインの発行企業が、米国債の買い手として存在感を高めている。
これは日銀に代わる国債保有者を模索している日本でも、あらたな国債の保有者としての期待も出てくる。
JPYCは今後3年間で1兆円分の発行を目標とするそうである。実際に1兆円規模の発行となれば、その裏付け資産としてそれなりの規模の短期国債の保有が予想される。
米国ではステーブルコインは暗号資産(仮想通貨)取引や国際送金で主に利用が広がっている。7月にステーブルコインの規制を整備して信頼性を高める「GENIUS(ジーニアス)法」が成立した。
JPYCは海外にいる留学生への仕送りといった国際送金のほか、法人決済や分散型金融(DeFi)と呼ばれるブロックチェーン上の資産運用サービスに活用できるとされる。
ビットコインについてはあくまで投機対象とみているが、ステーブルコインについては送金や運用においての利用が見込まれる。さらに国債保有者としての期待も出てこよう。
日銀は8月8日に、7月30、31日に開催された金融政策決定会合の主な意見を公表した。
この中の経済情勢のなかで下記の発言があった。
「日米間の関税交渉の合意は、大変大きな前進であり、日本経済にとって、不確実性の低下につながる。前回の展望レポートのメインシナリオを書き換えるものではないが、これが実現する確度は高まった。」
これは2番目に書かれていたものであり、内田副総裁の発言である可能性がある。
また「物価」に関しては次のような発言があった。
「今後の財政政策が、物価押し上げに繋がらないかには、十分注意する必要がある。」 参院選の結果を踏まえた発言かと思われる。
そして注目すべき、「金融政策運営に関する意見」では下記のような発言が出ていた。
「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる。」
このスタンスに変化はないが、そのあとに「不確実性が高い状況が続いていることを踏まえ、予断を持たずに判断していくことが重要である。」との発言があった。
これは植田総裁の発言とみられるが、不確実性は低下したのか、不確実性が高い状況が続いているのか、どうやら認識の違いがみられる。
「通商政策やその影響を巡る不透明性は引き続き大きい。今は、現在の金利水準で緩和的な金融環境を維持し、経済をしっかりと支えるべきである。」
物価を無視してまで緩和環境を維持して経済を支えなくてはならないほど日本の実態経済は悪化しているのであろうか。
「もう少しデータを得たうえで政策判断すべきである。」
慎重し過ぎてもタイミングを失うリスクもあるのではなかろうか。
「日本経済への下押しの影響も軽微なものにとどまると思われる。その場合、早ければ年内にも現状の様子見モードが解除できるかもしれない。」
「早ければ年内」との見方が現状は最短なのか。
「日米関税交渉の妥結に対して株式市場がポジティブな受け止め方をしている中、過度に慎重になって、利上げのタイミングを逸することにならないよう、留意する必要もある。」
この意見に私は同意。9月の決定会合で利上げを検討すべきと考える。
「急速な利上げは日本経済に大きなダメージを与えるため、適時に利上げを進めることが、リスク・マネジメント上、重要である。」
いま利上げしてもまったく急速などとはいえないと思うのだが。前回の利上げは今年の1月であったはずである。
ベッセント米財務長官は14日、連邦準備制度理事会(FRB)に一連の利下げを要求してはいないと述べ、予測モデルが示す「中立」水準が現行金利より約1.5ポイント低いことを指摘しただけだと話した(14日付ブルームバーグ)。
何でもありのトランプ政権だけに、ベッセント米財務長官の今回の発言にさほど違和感を持たなかった。また、完全に政治に取り込まれたような中央銀行もみてきてことで、そんなものかとみていた。
しかし、財務長官がFRBに利下げを迫ることはFRBの独立性という面からは当然、すべきことではない。
ちなみにその発言とは以下のようなものであった。
ベッセント財務長官は13日、ブルームバーグのテレビインタビューで、「9月の0.5%利下げを皮切りに、そこから一連の利下げを実施できるだろうと考えている」と述べ、「どのモデルで見ても」金利は「おそらく150、175ベーシスポイント低い水準にあるべきだろう」とも語った。
そのモデルとして有名なものにテイラー・ルールがあるが、テイラー・ルールでは利下げではなく、利上げが必要と示されているとの指摘もあった。
13日のブルームバーグテレビジョンでの発言について、ベッセント長官は「FRBに指図したわけではない」とFOXビジネスとのインタビューで説明した。
そう説明せざるを得なくなったということであろう。
「私が言ったのは、金利を中立水準にするには推定150ベーシスポイントの引き下げになるということだ」とベッセント氏は語ったが、その中立金利を算出する方程式は存在しないし、人によって異なる。かなりレンジは広いものとなる。
ベッセント氏やトランプ氏の中立金利が他の人と異なっているようにも思えることで、それを基に利下げを迫るのも筋違いとなろう。
ベッセント長官は14日、弱い雇用統計と何カ月も利下げを見送っている事実を踏まえ、「9月の50bp引き下げは恐らく適切だろう」とあらためて述べた。
どうみてもFRBに0.5%の利下げを求めているような構図となっている。
7月の雇用統計を受けて、9月のFRBの利下げ観測は特に市場では強まっている。12日発表の米消費者物価指数前年同月比の上昇率が2.7%、エネルギーと食品を除くコア指数の伸びは3.1%と伸びが加速されることはなかった。
これで9月の利下げの可能性が再認識されたものの、14日発表の7月の米卸売物価指数の上昇率は前月比で0.9%と予想の0.2%を上回り、2022年6月以来、約3年ぶりの大幅な伸びとなった。
これを受けてFRBが利下げに慎重になる可能性も出てきた。
いまのところ何とかFRBの独立性は維持されており、FOMCで投票権を持つメンバーのなかのトランプ派はまだ少数となっている。
FRBは何かとトランプ氏にプレッシャーを掛けられているが、それがむしろ反発を生むことも考えられる。
「渡りに船」とは、川を渡ろうとするときに、渡し場に都合よく船がいることを指す言葉である。何か行動しようとしている時ちょうど都合よく助けがあることを示す。
米国のベッセント財務長官は13日、ブルームバーグのテレビインタビューで、「9月の0.5%利下げを皮切りに、そこから一連の利下げを実施できるだろうと考えている」と述べ、「どのモデルで見ても」金利は「おそらく150、175ベーシスポイント低い水準にあるべきだろう」とも語った。
これは米国の中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)に向けた発言である。7月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標値を4.25〜4.5%で据え置いていた。
ベッセント財務長官はここから1.5%から1.75%の引き下げを要求した格好となった。
政策金利を1%%にすべきだ。1%以下であるべきだとしたトランプ大統領ほどではないにしろ、現状の政策金利が高すぎるとベッセント財務長官は指摘していた。
12日に発表された7月の米消費者物価指数は前年同月比の上昇率が2.7%。エネルギーと食品を除くコア指数の伸びは3.1%となっており、現状の政策金利が特別高すぎるとは思えないのだが。
ベッセント財務長官はインタビューで日銀についても触れていた。為替も意識しての発言だと思われる。
「日本はインフレ問題を抱えており、確実に日本からの波及がある」と発言。日銀の植田和男総裁と話したと明らかにした上で、「これは総裁の見解ではなく、私見だが、日銀は後手に回っており、利上げするだろう」と語った。
参考までに、日本の消費者物価指数は6月が総合、コアともに前年比同月比3.3%の上昇となっており、米国よりも少し高い。
私も日銀は後手に回っている(Behind the curve)と思っているが、それだけ慎重になっていることの表れでもあり、これは現状も変わりはないのではなかろうか。特に0.75%に向けた利上げは慎重にならざるを得ないことは理解できる。
しかし、関税問題がひとまず決着し、不確実性は後退した。株価指数は過去最高値を更新した。4〜6月期の実質GDPは年率1%増となり、5四半期連続プラスとなった。この状況下、利上げしない理由がむしろみあたらない。
今回のベッセント財務長官の発言は「外圧」というよりも、利上げのタイミングを見計らっていた日銀にとっては「渡りに船」となるのではなかろうか。
結果として、植田総裁の背中を押すことになるのではないかと期待したい。
12日に発表された7月の米消費者物価指数は前年同月比の上昇率が2.7%と予想を下回った。エネルギーと食品を除くコア指数の伸びは3.1%とこちらは予想を上回っていた。
前月比でみるとエネルギーは1.1%下落した。エネルギーと食品を除くモノの価格は0.2%、エネルギーを除くサービス価格は0.4%、それぞれ上昇していた。
米国株式市場では、これを受けて9月のFOMCでの利下げ観測を強めることとなり、12日のダウ平均は反発し483ドル高。ナスダックは296ポイント高となった。
7月の米消費者物価指数の水準は決して利下げを行う必要となるものではない。それにもかかわらず、どうして12日の米国株式市場では9月の利下げ観測を強めて買われたのか。
それには8月1日に発表された米雇用統計を振り返る必要がある。
米労働省が1日に発表した7月の雇用統計によると、非農業雇用者数は前月から7万3000人増となり、10万〜11万人の増加との市場予想を下回った。
さらに5月の伸びは14万4000人から1万9000人に、6月は14万7000人から1万4000人に大きく下方修正された。
これを受けてFRBが9月の次回FOMCで利下げに追い込まれるとの見方が強まったのである。
9月の利下げ観測が強まるなか、市場参加者は12日の7月のCPIに注目していた。それはCPIが大きく低下すると期待というよりも、その観測を弱めるものであったかどうかの確認となったのである。
7月のCPIはおおむね市場の想定通りとなり、9月の利下げの可能性を後退させるほどのものではなかったとの認識を強めた。その結果、ダウ平均やナスダックは上昇していたのである。
これに対して米債は素直に売られていた。物価の高止まりを受けて、米債は売られ、米10年債利回りは4.29%と前営業日の4.28%から小幅上昇していたのである。
ただし、少し気になることがある。
トランプ大統領は1日に公表された雇用統計を不正操作と決めつけ、労働統計局長を務めていたマクエンタファー氏を解雇した。
その後任にトランプ氏はE・J・アントニ氏を指名していたのだが、労働統計局は今回の消費者物価指数も発表してるのである。
12日の東京株式市場、朝方に日経平均株価は一時、4万2700円台まで上昇した。2024年7月11日に付けた引け値での史上最高値の42224円を上回った。
また、日中の高値である4万2426円も上回って推移しており、ザラ場中の過去最高値も更新している。
米国のトランプ大統領が中国との関税休戦を90日延長したことに加え、先週末には米政権の高官が対日関税の上乗せ是正の発表に向けて最終調整を進めていると明らかにし、世界景気や企業業績への懸念が和らいだことなどが材料視されたとされる。
外為市場でドル円が再び148円台を付けてくるなど円安が進行していることも好感された模様。
しかし、関税への懸念がなくなったわけではなく、どの程度の関税が課せられるのかを探る展開となっており、今後、この関税による経済や物価などへの影響も懸念されるところとなる。
ただし、米国株式市場では7月にS&P総合500種とナスダック総合が過去最高値更新していたように、株式市場に資金が流入していることは確かである。
いったい何に期待しているのか。
日本の足元の経済についても、それほどの強さは感じられない。15日に発表される4〜6月期実質国内総生産速報値も、年率換算で0%台になるという予測が多くなっている。
かろうじてプラスかという予測にもかかわらず、株価指数が最高値というのは、バブルに近い状況ともいえるのではなかろうか。
思ったほどは悪くはないで買われる状況もわからなくはないし、これもマーケット心理ではあるが、どこか納得のいかない面もある。
むろん流れに逆らう必要はないし、むしろ流れに乗ることも大事であろう。ただし実体経済と乖離した株価にも注意する必要がある。
これは実態の物価と乖離した金利にも同様に注意しなければならないと思う。これも株価上昇を側面支援しているとなれば、なおのことになる。
日銀は8月5日に6月16、17日に開催された金融政策決定会合の議事要旨を公表した。このなかの金融政策運営に関する議論で次のようなコメントがあった。
「各国の通商政策等の今後の展開やその影響を巡る不確実性がきわめて高い状況にあることを踏まえ、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要であるとの認識で一致した」
各国の通商政策等というのは米国のトランプ政権の関税策のことであり、6月時点ではどう転ぶかわからない状況にあった。
「複数の委員は、堅調な賃金や若干上振れ気味の物価を念頭に置くと、通商問題が穏当なかたちで推移する見通しになってくれば、現在の様子見モードから脱却し、利上げプロセスの再開を考えることになるとの見方を示した」
7月22日に米国のトランプ大統領は自身のSNSで日本と関税交渉で合意したと発表。日本に対し、25%としている相互関税を15%にするとした。
15%という数字は、通商問題が穏当なかたちで決着したとの認識となるのではなかろうか。相手がトランプである以上、例えばゼロにするというのは現実的ではなかったはずである。
そうであれば、現在の様子見モードから脱却し、利上げプロセスの再開を考えることになる。
では何故、すでに15%が決定したあとの7月31日の金融政策決定会合では全員一致で現状維持となったのか。どうして、利上げプロセスの再開を考える委員は一人もいなかったのか。
「一人の委員は、不確実性の高さを踏まえると、利上げの動きは当面休止する局面と考えられるが、米国の政策動向によって再び利上げ局面へ回帰する柔軟かつ機動的な対応も求められるとの認識を示した。」
まさに7月31日にこそ利上げ局面へ回帰する柔軟かつ機動的な対応をすべきではなかったのか。
「ある委員は、インフレが想定対比、上振れて推移する中、たとえ不確実性が高い状況にあっても、金融緩和度合いの調整を果断に進めるべき局面もあり得ると述べた。」
その金融緩和度合いの調整を果断に進めるべき局面ではなかったのか。
6月の決定会合でのこれらの意見から考えると、どうして利上げを主張する反対者が一人も出なかったのかが甚だ疑問である。
三菱UFJフィナンシャル・グループの亀澤社長は、日銀が9月か10月の金融政策決定会合で次の利上げを決める可能性が「十分にある」との見解を示した。
6月の議事要旨の内容からみて、むしろ9月に利上げをしない理由がみあたらないのだが。
イングランド銀行は7日、金融政策委員会(MPC)にて政策金利を4.25%から4.00%に引き下げると発表した。
MPCメンバー9人のうち5人が利下げを支持、4人が据え置きを支持した。
1回目の投票では利下げ幅の違いで票が3通りに分かれた。外部委員のテイラー理事が0.5%の利下げを求め、据え置きと0.25%の利下げが同数となった
据え置きを主張したのは初めて少数派となったロンバルデリ副総裁のほか、チーフエコノミストのピル委員ら。ベイリー総裁は引き下げを支持した。
いずれの意見も過半数に届かなかったことから、再投票が実施された。MPCの政策決定で再投票が必要になったのは、28年間の歴史の中で初めて。
再投票の結果、0.25%の利下げが決定された。
このように金融政策決定会合は多数決、合議制によって決定される。これは米国のFOMCや日銀の決定会合でも同様である。
トランプ米大統領は7日、大統領経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長をFRBの理事にあてる人事を発表した。
クーグラー理事が任期途中で8日辞任することに対応したものであった。
ただし、今回の人事では次期FRB議長候補を理事に充てる可能性もあった。
ブルームバーグ通信は7日、米連邦準備理事会(FRB)のウォラー理事がトランプ米大統領の側近らの間で次期議長の最有力候補になっていると報じた。
現役理事が議長候補となれば、クーグラー理事の後任は議長候補を充てる必要はなくなる。
ミラン氏は本来のクーグラー理事の任期となる2026年1月末までの短期間だけで、その後はトランプ氏は別の人物を指名するという。いわゆるワンポイントリリーフか。
この人事にはよりトランプ氏の息の掛かった人物を充てることも予想される。
米国の金融政策を決定するメンバーとしては、連邦準備制度理事会の議長1名、副議長1名、理事5名の7名と、連邦準備銀行の地区連銀総裁12名中の5名に投票権がある。
ここでも合議制がとられているため、すでにトランプ氏の息の掛かったウォラー理事とボウマン副議長とミラン氏だけでは3票しかない。
このため投票に政治的な圧力を掛けようとしても無理がある。それではウォラー理事が議長となった場合はそれが可能となるのか。
少なくとも米国のFRBでは議長の意見が尊重されやすいものの、独立性が維持されている限り、議長の政治的圧力を受けた上での意見を押し通すことには無理があり、反発を招くことが予想される。
コメの価格急騰とコメ不足がどうして起きたのか。この疑問の答えは出ていないというか、いろいろな要因が指摘されている。
コメへの政策の影響、流通経路等の問題などの指摘もあるが、ここではオイルショック時のトイレットペーパー不足と比較してその要因を探ってみたい。
お米5kgの価格推移グラフなどをみると、2023年9月あたりまでは2100円割れとなっていたところ、2023年10月に2100円を超え、2024年4月に2200円台、8月に2500円台、9月に3000円台、10月に3500円近く、2025年2月に4000円台を付けていた。
2023年10月以降、何かしらのきっかけでコメの価格が急騰した。2024年8月8日に南海トラフ地震の臨時情報が発表されたことが影響したとの指摘がある。備蓄のためにコメを購入する動きだけではなく、店頭で品薄となっているという情報が拡散し、パニック買いが起きた。
このあたりオイルショックやコロナショック時のトイレットペーパー不足と似た動きともなっていた。ただし、コメとトイレットペーパーでは異なる点がある。
いずれも一時的な需要と供給のバランスが崩れたことで店頭で品薄となっていたのだが、その需給のバランスがコメは価格でさらに調整されていたことである。トイレットペーパーは不足したといっても値段を急に引き上げることはできないが、コメの価格は変動する。
さらに注意すべきことは、2022年4月から日本の消費者物価指数(除く生鮮)は前年比2%を超えてきていたことである。世界的な物価上昇が日本にも影響をあたえ、小麦などの穀物やエネルギー価格が急騰していた。
しかしコメの価格は抑えられていたというか、5kgの価格推移グラフをみると何故か2023年10月あたりまで2000円近辺で推移していた。つまり他の穀物などに対して超割安となっていたのである。これはむしろ不自然であった。物価が上がっているのに無理に長期金利を抑え込んでいたようなものとなる。
このため何かしらのきっかけ次第で、他の穀物などと同様に価格が調整されることはある意味当然の動きであった。ただし、それが一気に起きてしまったため、価格急騰とともにコメ不足が生じた。
コメの価格上昇は物価上昇に応じたものとの見方をすれば、それが大きく低下することは考えづらい。また、トイレットペーパーのように一時的な需給のバランスが崩れたことで起きたのであれば、それは備蓄米放出などでの対応は可能となる。ただし、これでコメの価格を一気に引き下げるというのは難しい。価格上昇の要因がコメ不足にあるわけではないためである。
以前に比べてコメそのものの需要が伸びているのであれば、銘柄米などの需給は今後も逼迫することも予想される。9月のコメの供給量も急に増加は困難だとすれば、物価そのものの高止まり、需給のバランスなどからコメの価格がある程度の高値で維持される可能性は高いのではなかろうか。
いずれにしてもコメの価格高騰は穀物などの価格高騰に遅れて追いついたことが主要因なのではないかと考えられる。それが一時的なコメ不足も演出した可能性があるのではなかろうか。
三菱UFJ銀行は4日、1年物の定期預金の金利を期間限定で1.0%(税引き前)に引き上げると発表した。
むろんすべての1年物の定期預金の金利を期間限定で1.0%に引き上げるわけではなく、条件付きのキャンペーンとなる。
それでも同行の1年物の金利では、2005年に三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が発足して以降で最高となる。
条件となっているのが、三菱UFJ銀行で普通預金口座を持っていること、三菱UFJ銀のスマートフォンアプリ経由などで、ウェブサイトから9月24日までに申し込むこと、10万円以上預け入れること、ただし1人あたりの預入額の上限は100万円。
100万円を預金したとして1年後に得られる利息は税引き後、7969円となる。
普通預金の金利は昨年あたりまでは、0.001%あたりとなっていたところが多い。つまり、ほとんど利息は付かない状態となっていた。1年定期でも0.005%あたりとなっていた。
それに比べれば、100万円で7969円とはいえども、とりあえず目にみえる金額となることは確かである。
今回のキャンペーンは新規顧客を得るためというよりも、既存客ながら普通預金に置きっぱなしの顧客に定期預金への呼び込みをするためのものであると考えられる。
ネット銀行などでは1%以上の定期預金金利を付けているところも出ている。
個人向け国債の金利も1%となるなどしており、1%をひとつの目安としてキャンペーンを張ったのではなかろうか。
短期金利がゼロ金利というよりもマイナス金利となっていた時代では、金利はないものとの認識は強かった。
しかし、マイナス金利政策は解除され、金利がある時代に戻ってきた。
物価と比較して1%の金利もまだまだ低い。
それでも利息が目にみえるものとなったことも確かであり。金利のある時代で自分の資金をどのように運用すべきかを我々も考える必要が出てきたことは確かではなかろうか。
FRBは1日、クーグラー理事が任期途中で8日辞任すると発表した。今秋から米ジョージタウン大学の教授に復帰する予定という。
理事辞任の理由については、今のところ明らかにされていない。
これによって来年5月に任期が終了するパウエルFRB議長の後任選出プロセスや時期に影響が及ぶ可能性が出てきた。というよりもFRB議長人事を睨んだ動きであった可能性が高い。
30日のFOMCでは金融政策の据え置きを決めた。ウォラー理事とボウマン副議長の2人が反対票を投じたが、クグラー理事が欠席し、投票しなかった。
欠席そのものも珍しいため、どうしたのだろうと思っていたが、任期途中での辞任が発表された。
この辞任そのものが、パウエル議長の後任選出プロセスや時期に影響が及ぶ可能性があることを考慮すると何かしらの政治的な圧力があった可能性も否定はできない。
ベッセント財務長官は6月30日時点で、1月に任期が終了するクーグラー氏の後任に将来的に議長に昇格させる人物を指名する案があると述べていた。
2026年5月にパウエル議長の任期が満了するのを見据え、トランプ氏と政権幹部は後任人事の検討を本格化させていると報じられた。
実際にトランプ大統領は5日、8日付で辞任するクーグラーFRBの後任に指名する人物を今週中に選ぶと語った。
トランプ氏が理事に選ぶ人物は、来年5月に任期満了となるパウエル議長の後任候補になる可能性が強くなった。
トランプ氏は次期FRB議長候補として4人を検討中だとあらためて言明していた。5日早くには、ベッセント財務長官から議長候補への指名を望まないとの考えを伝えられた。
トランプ氏は他の議長候補として、ホワイトハウスのケビン・ハセット国家経済会議(NEC)委員長やケビン・ウォーシュ元理事らも検討中だと話した。
二人のケビンほかにはウォラー理事などの名前も挙がっている。
いずれにしてもクーグラー理事の後任に、次期議長候補を押し込み、トランプ氏の影響力を強めようとの腹づもりらしい。
ただし、FOMCでの決定は多数決によるものであり、新議長の意見が素直に通るものではないというか、むしろトランプ氏の息が掛かっていない理事や投票権を持つ連銀総裁などの反発を招く可能性が高い。
三菱IFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の亀澤宏規社長は、日本銀行が9月か10月の金融政策決定会合で次の利上げを決める可能性が「十分にある」との見解を示した。(5日付日本経済新聞)
亀澤社長は足元の強い物価上昇と賃上げの持続に加え、日米関税交渉が合意に至ったことを理由に挙げていた。
至極当然の見方にみえるが、債券市場関係者の間でも、10月はさておき、9月の会合での利上げの可能性をみている者は極めて少数派である。
この発言は亀澤氏が1日、ブルームバーグとのインタビューで述べたもの。
ブルームバーグの記事にもあったが、日銀による早期追加利上げの可能性について主要金融機関トップが公に明言したのは初めてで、異例でもあるとか。
三菱UFJ銀行は4日、1年物の定期預金の金利を期間限定で1.0%(税引き前)に引き上げるキャンペーンを実施すると発表していた。
これを睨んでの利上げを日銀に催促する、というわけではないはずである。
足元の強い物価上昇と賃上げの持続に加え、日米関税交渉が合意に至ったことで利上げをしない理由がなくなったとの見方は完全に同意である。
このため7月31日の決定会合で思い切って0.75%の利上げを検討しても良いと私はみていたが、どうもその気配はなかった。
会合後の総裁会見でも、利上げをしなかったことの説明を含め、慎重さが滲み出ていた。
しかし消費者物価指数が2022年4月以来、2%超えが続き、足元では3%台となっている。
賃上げも持続している。実質賃金がマイナスというよりも、物価上昇に見合った賃上げも実施されつつあるという動きの方に注意すべきではなかろうか。
日銀は7月の決定会合では現状維持を決定する。この見方がコンセンサスであった。これは参院選があったことに加え、米国との関税交渉の結果が見えなかったためである。
しかしそれが7月決定会合前に結果が出ていた。これで不透明感は払拭されていたはずである。
不確実性は常にあり、具体的なイベントがある場合はいたしかたないが、それを利上げをしない理由にすべきではなかろう。
7月の利明け観測はさすがに時間的に無理があったかもしれない。それでも9月には検討すべきと考えるが、同様の見方をメガバンクのトップが表明していた意味は大きいと思う。
そういえば、大昔の債券ディーラー時代に、日銀の動向を見る上で、三菱銀行(当時)の動きをチェックしていた記憶がある。
1日に発表された米雇用統計を受けて米国株式市場が下落し、米長期金利の低下もあって円高となっていたことから、4日の東京株式市場では日経平均株価は一時4万円を割り込んできた。
米労働省が1日に発表した7月の雇用統計によると、非農業雇用者数は前月から7万3000人増となり、10万〜11万人の増加との市場予想を下回った。
さらに5月の伸びは14万4000人から1万9000人に、6月は14万7000人から1万4000人に大きく下方修正された。
これを受けてFRBが9月の次回FOMCで利下げに追い込まれるとの見方が強まり、米10年債利回りは4.22%と前営業日の4.37%から大きく低下した
外為市場ではドル円が150円台から147円台に急低下(ドル安円高)。米国株式市場ではダウ平均が542ドル安となるなど米雇用統計ショックといった様相となった。
トランプ大統領は7月の雇用統計を受け、労働省労働統計局(BLS)のエリカ・マッケンターファー局長の解任を命じた。
トランプ大統領は、「共和党と私の評判を落とすために不正に操作された」と自身の交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。
ただし、何かしらの証拠が示されたわけでない。
今回の過去に例をみないような前月、前々月の大幅修正はデータの回収率の低下なども指摘されている。
今回の修正には、地方政府からの就業者データ回収に問題があったという指摘や、トランプ政権による連邦組織縮小で労働統計局の人員が不足してデータ収集力が落ちているといった指摘もあった。
失業率については7月の失業率は4.2%と6月の4.1%から上昇上昇に止まっていた。若干の悪化に止まっていたのは、移民労働者が激減しているからではないかとの指摘もあった。
当然、労働省労働統計局長が悪いわけではなく、トランプ政権による政策が大きく寄与していた可能性が高い。
これによってトランプ大統領によるFRBの利下げ圧力がさらに強まりかねない。辞任を発表したクーグラー理事の公認もここ数日内に発表されるようである。
「貯蓄から投資へ」という国のスローガンが、この世にはじめて出てきたのは、2001年6月に出された小泉内閣の頃の骨太の方針からとされる。
日銀の資金循環統計をみると2025年3月末現在、家計の金融資産のうち預貯金の占める割合は51.0%と約半分となっている。
これに対して株式等は12.2%、投資信託は6.0%となっている。たしかに株式等や投資信託は2000年代に比較して増えてはいるが、現預金の割合はあまり変わっていない。
少なくとも現預金から株式や投資信託への流れといったものは、あまり起きていないことが窺える。
これは日本人がリスクを恐れる気質のためといった解釈もある。
私には投機好きの先祖がいたそうである。しかし、その事実はほとんど語られることはなく、私が大人になってから少し話しを聞くことができた。
その人はいわゆる小豆相場に手を出して大きな損失を被ったという話であった。小豆相場と聞いて危険な取引との認識を持っている昭和生まれの人は多いのではなかろうか。
「赤いダイヤ」という小説にもなったそうだが、商品先物取引である小豆市場を舞台に、政財界・マスコミを巻き込んだ壮絶な仕手戦が行われたとされる。
「仕手戦」と呼ばれるものは株式市場でも行われていたように、投資の代表となる株式市場でも投資というより投機的な動きが昔はよくみられていた。
これらから先物取引、株の取引は極めてリスクの高いものであるといった印象を昭和生まれは持っていたと思う。
ただし、1985年に東証に長期国債先物取引が上場したあとは、先物取引に対する印象は投機というよりヘッジのための手段に変わってきたのではなかろうか。
それでも一般の人には手は出しにくいものであることは確かである。
株式についてもバブル期と重なったNTT株の上場によって、株への認知度が高まったように思う。しかし、バブル崩壊による株価の下落によって、むしろ株のリスクへの認識が高まってしまった。
ただし、昭和を知らない若者達が気軽に投資を行える環境も出来ており、今後は投機との印象は薄まるかもしれない。
ひとつだけ注意したいのは「命金には手を出すな」との相場の格言となる。
生活に必要な資金はあまりリスクに晒すなというものである。これは老後の生活費も同様となる。
むろん投資を試すといったこともして良いと思うし、そこでうまく稼げるのであれば、それを続けても良いと思う。
投資が上手な人は存在する。ただし、スポーツなどと同様にうまい下手も存在する。結果が自分の資産にかかわるため、このあたりの見極めも重要となる。
日銀は30日も31日の金融政策決定会合で、政策金利となる無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促すとして、金融政策の現状維持を全員一致で決定した。
これはほぼ予想されていた通りであったものの、個人的には利上げを検討するべきと思っていた。
7月22日に米国のトランプ大統領は22日、自身のSNSで日本と関税交渉で合意したと発表。日本に対し、25%としている相互関税を15%にする。
8月1日の期限から一週間も前に決まることは時期的に想定外となった。
内田副総裁は23日の会見で、日米の関税交渉の合意について、大変、大きな前進だ。日本経済にとって関税政策をめぐる不確実性の低下につながる」と述べていた。
その上で、2%の物価安定目標の実現に向けた「確度は上がっていることに当然なる」との認識を示した。
そうであれば、利上げに向けて踏み出す姿勢をみせるかと期待していた。しかし、反対者もないなど、まったくその素振りはみせなかった。
かすかなれど今回の決定会合での利上げ、もしくは今後の利上げを示唆するのではと期待していたのだが、期待は裏切られた。
7月の参院選の結果によっては政局の行方に不透明感が出る可能性があった。しかし、ひとまずその結果は出た
政府としても物価対策として具体的な効果のある政策が打ち出せないこともあり、日銀の利上げを意識せざるを得ないのではなかろうかとみていた。
さらに31日に公表された展望レポートでは、2025年度の物価見通しを4月の2.2%から2.7%に引き上げた。2026年度、2027年度も小幅ながら4月から引き上げている。
2025年度でみれば日銀の見込みが大きく上に外れていたことになり、利上げを急ぐ理由となっていたはずである
それ以前に消費者物価が3%台となっているにもかかわらず、政策金利の0.5%はあまりに低すぎる。
今後は政局など次第では。慎重すぎるあまりに利上げタイミングを外すことも予想される。つまり不確実性や不透明感がむしろ強まる懸念すらある。
さらに円安が急激に進行するなどすれば、金融市場に促されるような利上げとなってしまう懸念も出てきたと思う。
利上げは慎重に進めることも大事かもしれないが、タイミングを見計らうことも重要であったのではなかろうか。
米連邦準備理事会(FRB)は30日開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利である指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は4.25〜4.5%のままの据え置きを決めた。
ウォラー理事とボウマン副議長(金融監督担当)の2人が反対票を投じ(利下げを主張)た。FOMC声明によると、両氏は0.25%の利下げを主張した。
ウォラー理事とボウマン副議長はいずれもトランプ大統領が第1次政権で理事に指名した。
正副議長を含む7人の理事のうち2人が反対したのは1993年12月以来となる。このほかクグラー理事が欠席し、投票しなかった。
声明文では景気について「堅調」との文言を削り、経済活動が「緩やか」になっていると修正した。
パウエル議長は記者会見で、関税による物価の押し上げが一時的にとどまることを「とても合理的な基本ケース」としつつ、長期化するリスクもあると強調した。
また、パウエル議長は、先進国は金融政策の決定を政治の支配から遠ざけていると強調した。
「それがなければ例えば選挙に影響を与えるために金利を利用したいという大きな誘惑になるだろう。それは私たちがやりたくないことだ」と述べ、中央銀行の独立性を重視すべきだと訴えた。
この先進国に日本が含まれているのかという疑問も存在する。少なくともアベノミクスには金融政策が含まれていたように思うのだが。
トランプ大統領は30日、米国の第2四半期の経済成長率が予想を上回ったことを受け、連邦準備理事会(FRB)に対し改めて利下げを要求していた。
トランプ氏は「第2四半期の国内総生産の伸びは3%と、予想をはるかに上回った!金利を引き下げなければならない。インフレは起きていない!」と自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に投稿。
2026年5月に議長としての任期を終えるパウエル氏の後任人事も進められているとみられる。
次期議長の有力候補とされているのは、米国家経済会議(NEC)のハセット委員長、ベッセント米財務長官、ウォーシュ元FRB理事のほか、現職のFRB理事のなかでは今回反対票を投じたウォラー氏などの名前が挙がっている。
ただし、仮に議長を大統領のイエスマンに置き換えたとしても、トランプ大統領が主張している政策金利を1%まで引き下げることをするとは考えづらい。少なくともFRBは昔のトルコ中銀とは違うはずである。