. 若き知
2026年7月10日「長期金利の3%は通過点か」

 これを書いている9日の10時過ぎ現在、10年国債の利回りは一時、2.885%まで上昇した。1996年9月以来30年ぶりの水準となる。

 1996年といえば、私はまだ現役の債券ディーラーであり、「債券ディーリングルーム」というサイトを立ち上げたころにあたる。

 当時の長期金利はバブル崩壊後、政策金利は6%からの低下傾向にあった。長期金利も同様に8%を超える水準にあったものが徐々に低下し3%近辺となっていた時代である。

 当時は金利の低下局面となっており、現在の上昇局面とは反対方向となっていた。このため、どこまで当時のことが参考になるのかはわからない。

 ただし、2.880%まで上昇した1996年9月頃の政策金利は0.5%であった。現在は6月の利上げによって1.0%となっている。

 当時の政策金利の1%の頃(1995年4月から8月)の長期金利は3%近辺にあったため、意外に整合性はある。

 日銀はさらなる利上げを模索していると思われ、ターミナルレートはどのあたりに置いているのか。このあたりは推測に頼るほかはないが、私は1.75%を予想している。

 物価水準等からみて、本来2%以上としたいところではあるが。国債の残高、政治からのプレッシャーなど諸々の状況からは2%を大きく超えるのは難しいかと。

 前回の政策金利1.75%の時代は1993年9月から1995年3月までとなっており、その間の長期金利は3%台から5%近くでの推移となっていた。

 当時、国債を売買していた経験からは、いまほど日銀の金融政策の行方に固執していなかったと思うのだが、結果として政策金利と長期金利にある種の連動性はあったように思う。

 政策金利は1.00%からは引き上げられないとみるのも自由だが、私はそうは思わない。仮に1.75%あたりまでの引き上げがあれば、長期金利の4%、5%への上昇は当然ありうる。

 それとともに注意すべきは消費者物価指数である。1995年当時は年平均で0.6%とか0.8%と1%を下回っていたが、現在は足元は2%割れでも年平均だと2%を超えている。

 また国債残高は1995年当時の200兆円台から現在は1100兆円を超えているという違いもある。

 為替の居所などを含めて分析する必要はあるかもしれないが、少なくとも長期金利の3%は通過点となりそうなことは確かであろう。


2026年7月9日「消費税減税などはやるべきタイミングではない」

 フィンランドは2007年から5年間、減税の物価への効果を実証するため、美容室にかかる付加価値税を22%から8%に引き下げた。

 欧州連合(EU)が減税の実証実験を認めたことで、実証実験を行ったそうである(8日付日本経済新聞より)。

 その結果は、美容室の物価指数は減税開始前と比べて開始直後に6.2ポイント下落した。その後は上昇傾向に転じ、減税期間の5年間で同比9.5ポイント増加したそうである。

 また、減税終了直後に料金が跳ね上がり、美容室の物価指数は終了直前に比べて11.5ポイント上昇した。5年前に比べれば21ポイント増となったとか。

 むろんいろいろな条件の違い、原油価格動向等の外部環境の違いなどもあり、減税のみの効果を摘出する難しさはあろうが、結果そのものは興味深いものとなる。

 日本では2年間限定の食料品の消費税減税を政府は勧めようとしている。

 そもそも消費税そのものに対して攻撃的な人達がいて、消費税さえなくしたり引き下げれば、デフレだろうがインフレだろうが解決するといった短絡的な見方が存在する。

 しかし現実にはフィンランドの実証実験の結果などからも、減税が決して物価を引き下げるという結果とはならず、むしろ引き上げる可能性もある。

 これはこの実証結果を受けずとも指摘されていたことでもあった。特に2年間という期限を設けたことで、再び消費税を元に戻した際の物価上昇への影響は大きいとの見方があった。

 そもそも増税という格好となるため、本当に戻せるのかという疑問は残ろう。

 消費税そのものの増税は必要とされると認識されてはいたものの、実際の増税にはかなりの苦労もあった。

 さらに消費税減税を行った場合に、減税分をどこから補充するのかかが大きな課題となる。

 10%の食料品の消費税をなくすと5兆円規模の補充が必要となる。その分、予算をスリムにするのであればそうしてほしいが、できないであろう。もし仮に国債発行が補おうとすれば、それはそれで大きな問題となりかねない。

 すでに日本の長期金利は3%に近づいている。私は3%などでは収まらず4%、5%、6%あたりに上昇しても何らおかしくはないとみている。

 今年度の予算上の長期金利の想定金利は3%となっている。年度平均の3%ではあるが、長期金利が4%、5%に上昇すれば、想定金利を年度平均で上回る可能性が出てくる。

 つまり国債の利払い費が想定を超えてくる可能性が出てくる。長期金利の上昇がすぐに利払い費に影響するわけではないが、じわりじわりと効いてこよう。

 来年度以降の予算編成についてもこの国債費の増加懸念も認識しておく必要がある。そういった意味でも消費税減税などはやるべきタイミングではないと主張しておきたい。


2026年7月8日「7日に長期金利は1996年10月以来の2.850%に上昇、8日はさらに上昇中」

 7日に日本の新発10年国債利回り(長期金利と呼ばれる)は一時、2.850%と1996年10月以来の水準に上昇した。これは1996年10月以来約30年ぶりの水準となる。8日の9時40分現在は2.860%まで上昇しており、約30年振りの水準を更新中となっている。

 私がホームページと呼ばれたものを始めたのも1996年であった。前年にWindows 95が発売され、インターネットが一般に普及しはじめたタイミングでもあった。

 そのホームページの「債券ディーリングルーム」の過去ログに1996年10月当時のものも残してあるので、それを少し振り返ってみたい。

 どうやら当時のドル円は112円あたり、債券先物は122円あたりであった。

 直近の債券先物は126円台となっており意外と近くなっている。

 ちなみに額面100円のはずのものが126円となっているのは債券先物の標準物と呼ばれるものの利率が6.0%となっているためである。

 1985年10月に東京証券取引所に上昇した頃の10年国債の利率は6.0%でも全然おかしくはなかった。

 これから10年国債の利回りは6%に上昇すると言ったら驚くかもしれないが、当時を知る人間にとって別にそんな高いものとの認識はない。

 むしろその後、政策金利が2.5%に低下してきたきたことで、この2.5%が低すぎるぐらいに感じていた。

 当時の10年国債の指標銘柄は190回あたりであった。現在は新発債がリオープンなども利用して同銘柄の発行量が巨額となることで新発国債がベンチマークとなっている。これに対して当時は指標銘柄という言葉を使い、発行された銘柄のなかで最も発行額が大きいものが市場によって自動的な指標銘柄としてベンチマークとなっていた。

 そんな昔話が出るぐらいの時代の国債利回りとなっている。

 2000年あたりから2021年あたりまではほほ利回りが付かない時代が長らく続いた。私にとってはこちらの国債利回りがやや異常であったと思っている。

 現在は物価高とともに日銀の正常化もなんとか進んでいることもあり、形成される国債の利回りが目に見えるものとなっきた。

 注意すべきは日本の国債市場が本格的に稼働しはじめたのが1985年あたりであったことである。

 そこから利回りの付かない暗黒時代にいたるまで15年足らずしかなかった。しかもその1985年から2000年に至る期間はバブルとそのに崩壊過程も絡んでいたことで、こちらもやや例外的な動きともみえなくはない。

 国債発行残高が決定的に違う側面もある。さらに1980年代から1990年代にかけての国債の利回り形成についてもあくまで参考にはなるが、同じような利回り形成がいまの状況で起きるのかは定かではない。

 国債発行残高の違いとともに、当時の消費者物価が意外に低かった面もあり、これらがどのように国債利回りに反映されるのかも今後の動向次第である。

 少なくともかなり神経質な展開が予想される。そのなかにあって、物価に応じた適切な政策金利形成を阻害したり、財政規律をおざなりにするようなことになれば、国債利回りの急速な上昇を招きかねないことも肝に銘じるべきである。別に緊縮にしろとか大幅利上げをすべきといわけではない。身の丈に合った財政政策と金融政策を行うべきと主張しているだけである。


2026年7月7日「6月募集の個人向け国債の条件、5年固定の利率は1.95%と過去最高水準」

 3日に7月に募集される個人向け国債の条件等が発表された(募集期間7月6日から31日)。

「個人向け国債の発行条件等(財務省)」 https://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/houdouhappyou/p20260703.pdf

 長期金利は5月18日、19日、20日に2.800%まで上昇したあとは、米長期金利の低下に合わせるようにいったん低下基調となっていた。しかし、6月に入ってからは再び上昇基調となった。6月16日の金融政策決定会合で日銀は0.25%の利上げを決定した。

 FRBは17日まで開いたFOMCで政策金利を3.50〜3.75%で据え置くことを決めたが、次の一手は利上げの可能性を示した。

 今回の10年変動の条件を決める基準値となった7月2日の10年国債の入札は低調な結果となっていた。3日に10年国債の利回りは2.810%と5月18日につけた2.810%を上回り、1996年10月以来およそ30年ぶりの高さをつけていた。

 変動10年国債の初期利子は1.80%(税引き前)となった。これは6月募集の1.74%を上回って過去最高利率となった。

 固定5年の利率は1.95%(税引き前)となり、過去最高利率となった。

 固定3年の利率は1.56%(税引き前)となった。こちら5月募集の1.57%が現状は過去最高利率となっている。

参考、「個人向け国債の発行額の推移」財務省 https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/appendix/kojin_suii.xls

 5年固定と10年変動の初期利子はあらためて過去最高を更新した。特に5年固定は個人がさらに食指を動かしそうな2.0%も見えてきた。

 個人向け国債の利率が上昇してきたのは、日銀が金融政策の正常化に乗り出し、政策金利を引き上げ、物価の上昇や欧米の長期金利の上昇も手伝って、日本の国債利回りも上昇してきたことによる。

 4月の金融政策決定会合では中東情勢の緊迫化などを理由に利上げは見送られたが、6月15、16日の金融政策決定会合ではさらに1.00%まで引き上げた。

 日本では消費者物価はいったん2%を割り込んでいるものの、今後は上昇が加速する恐れがある。

 欧米の長期金利が上昇し、日本の長期金利も2.8%台に上昇するなど、この金利上昇が個人向け国債の利回りに反映されている。

 5年固定の利子が1.95%となっているのに対して、5月の全国消費者物価指数は生鮮食品を除く総合で前年同月比1.4%となっている。

 預貯金金利などはまだ低位となっているが、個人向け国債については物価上昇に耐えうる水準となっている。

 特に将来必要とされる資金は安全性を優先すべきであり、1年経過後の途中売却でも財務省が元本で買い取ってくれる個人向け国債は、個人における資金運用において大きな選択肢となりうる。

 個人的には10年変動を引き続き推している。

 いずれあらたな個人向け国債の発行も検討されるとみられる。


2026年7月6日「あらためて日本版トラスショックへの懸念」

 6月30日にドル円は162円台を付けてきた。1986年12月以来およそ39年半ぶりの円安ドル水準となる。

 2024年7月に付けた161円96銭は日本の当局にとって「防衛ライン」とされていたがここを突破してきた。

 国際決済銀行(BIS)によると通貨としての総合的な実力を示す「実質実効為替レート」でみると今年3月時点で統計が始まった56年前の水準を下回っていた。

 統計が始まった56年前というのは1970年となる。つまり、1ドル360円の固定相場制の時代(1971年まで続いた)となる。

 単純にドル円の実力は360円を上回っているということではないにしても、ドル円の162円台はまだ円ベースでみると割高にみえる。  この円安ドル高はドル買い圧力というよりも円売り圧力の方が強まった結果の162円台だと考えられる。

 政府が7月に策定する経済財政運営の指針「骨太方針」に、経済成長の実現に向け「適切な金融政策運営が行われることも非常に重要だ」と明記する方針を固めたと報じられた。

 これは今後の日銀の追加利上げに対する牽制球ともいえる。6月16日の金融政策決定会合で利上げを決定した際の内閣府による意見でも同様に利上げ牽制が示されていた。

 この日の内閣府からの出席者は城内実経済財政政策担当大臣であり、内閣府というよりリフレ派の城内大臣の意向が強く反映されたもので、追加利上げへの牽制球といえる。

 日銀の金融政策の正常化に政府がブレーキを掛けるということも当然、円安要因となる。

 加えて政府の「リミッターを外して必要な施策をやり抜く」という姿勢そのものが、財政拡大を意識させている。

 「責任ある積極財政」の「積極財政」部分を推し進めようとしている。「責任ある」の部分は年度途中で赤字国債を増発しないようにするといったことを想定しているようである。

 ただし、現実に数兆円単位の予算が必要となれば、表面上は赤字国債の増発はなくてもその分、財政そのものは悪化することは確かである。それが見える数値で示されなければむしろ、潜在的なリスクを強める格好となりかねない。

 食料品の消費税減税もしかりである。2年で10兆円規模の財源をどうするのか。そもそも2年後に復活できる保証もない。

 円安は介入によって一時的に修正が入ってもトレンドを変えることはできず、むしろドル買いのチャンスと捉えられる可能性は高い。

 162円を超えると165円どころか200円あたりまで上昇してしまうリスクすらありうる。

 国債売りも招くリスクがあり、長期金利が3%を超えて5%や6%に跳ね上がることも予想される。

 いわば日本版トラスショックが起きる懸念があらためて強まりつつある。


2026年7月4日「あらためて日本版トラスショックへの懸念」

 6月30日にドル円は162円台を付けてきた。1986年12月以来およそ39年半ぶりの円安ドル水準となる。

 2024年7月に付けた161円96銭は日本の当局にとって「防衛ライン」とされていたがここを突破してきた。

 国際決済銀行(BIS)によると通貨としての総合的な実力を示す「実質実効為替レート」でみると今年3月時点で統計が始まった56年前の水準を下回っていた。

 統計が始まった56年前というのは1970年となる。つまり、1ドル360円の固定相場制の時代(1971年まで続いた)となる。

 単純にドル円の実力は360円を上回っているということではないにしても、ドル円の162円台はまだ円ベースでみると割高にみえる。

 この円安ドル高はドル買い圧力というよりも円売り圧力の方が強まった結果の162円台だと考えられる。

 政府が7月に策定する経済財政運営の指針「骨太方針」に、経済成長の実現に向け「適切な金融政策運営が行われることも非常に重要だ」と明記する方針を固めたと報じられた。

 これは今後の日銀の追加利上げに対する牽制球ともいえる。6月16日の金融政策決定会合で利上げを決定した際の内閣府による意見でも同様に利上げ牽制が示されていた。

 この日の内閣府からの出席者は城内実経済財政政策担当大臣であり、内閣府というよりリフレ派の城内大臣の意向が強く反映されたもので、追加利上げへの牽制球といえる。

 日銀の金融政策の正常化に政府がブレーキを掛けるということも当然、円安要因となる。

 加えて政府の「リミッターを外して必要な施策をやり抜く」という姿勢そのものが、財政拡大を意識させている。

 「責任ある積極財政」の「積極財政」部分を推し進めようとしている。「責任ある」の部分は年度途中で赤字国債を増発しないようにするといったことを想定しているようである。

 ただし、現実に数兆円単位の予算が必要となれば、表面上は赤字国債の増発はなくてもその分、財政そのものは悪化することは確かである。それが見える数値で示されなければむしろ、潜在的なリスクを強める格好となりかねない。

 食料品の消費税減税もしかりである。2年で10兆円規模の財源をどうするのか。そもそも2年後に復活できる保証もない。

 円安は介入によって一時的に修正が入ってもトレンドを変えることはできず、むしろドル買いのチャンスと捉えられる可能性は高い。

 162円を超えると165円どころか200円あたりまで上昇してしまうリスクすらありうる。

 国債売りも招くリスクがあり、長期金利が3%を超えて5%や6%に跳ね上がることも予想される。

 いわば日本版トラスショックが起きる懸念があらためて強まりつつある。


2026年7月4日「どうして長期金利が上昇しているのか」

 7月3日の日本の債券市場では、日本相互証券で10年新発国債(2日入札、383回、利率2.7% )の利回り(単利)が、2.810%を付けた。

 5月18、19、20日に10年国債の利回りは2.800%まで上昇していたが、ここを抜いてきた。正確にはそれを抜けて付けに来たといって良い動きか。

 10年国債の利回りが2.810%を付けてきたのは、1996年10月以来およそ30年ぶりの水準となる。

 1996年当時の10年国債の銘柄のなかで最も売買高が多かったものは指標銘柄と呼ばれていた。比較的発行額が多いものが市場で選ばれていた。

 現在では一銘柄あたりの発行額が巨額となったこともあり、新発債が当時の指標銘柄のような役割を担っている。そしてこの利回りが長期金利と呼ばれている。

 ここを突破したから何かが変わるのか。

 特に大きな変化はないとみられる。国債利回りの上昇トレンドは続いており、あくまでその過程にある。

 それではどうして日本の国債利回りが上昇しているのか。

 それには大きな要因が二つある。2022年4月から消費者物価指数(除く生鮮)の前年比が2%を超えてきた。すでにこのタイミングでデフレからインフレへと変わっていた。

 物価動向に合わせて金利が上昇。日銀も慎重ながら政策金利を引き上げて正常化に戻そうとしている。

 しかし、あまりに慎重すぎる面もあるところに、市場では日銀の金融政策が政府の意向に左右されやすくなるとの思惑が強まった。この場合の政府の意向とは、高市首相や城内経済財政担当相などのリフレ派の意向ということになる。

 ただし、これによって「ビハインド・ザ・カーブ」に陥るリスクが意識された。いや正確にはすでに「ビハインド・ザ・カーブ」に陥っているのに、さらに遅れるリスクが意識された。

 その分、物価上昇圧力が掛かるとともに、円安を招くことでこちらも輸入物価を通じて物価の上昇圧力となる。それが長期金利の上昇を促している。

 もうひとつ長期金利上昇要因がある。

 政府は6月30日にまとめた「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案のなかで前年には明記されていた「財政健全化」の文言も消えた。高市政権が掲げる積極財政に伴い、財政規律が悪化するとの懸念も増した。

 表面上の赤字国債のカレンダーベースの発行額をみえなくさせても、消費税減税を含めた財政拡大は当然財源が必要となる。結果として財政は悪化する。

 少なくともこの大きなふたつの懸念材料が払拭されない限り、長期金利には上昇圧力が掛かり続けることになる。

 加えて、米国とイランによる軍事衝突とそれによるホルムズ海峡の閉鎖をきっかけに物価には上昇圧力が掛かっている。

 原油先物価格そのものは、WTI原油先物で6月初めに100ドル近くに上昇していたものが、ここにきて70ドル割れとなっている。

 イラン産原油なども流通する可能性もあり、原油価格そのものは落ち着いても、一時期の混乱による影響は後を引く可能性がある。

 これを受けて、FRBのスタンスが今後は利上げに向いていることも気掛かり材料となる。こちらは円安ドル高要因ともなる。

 そのほかにも要因はあり、日本の10年債利回りについてはいずれ3%を超えてくると予想している。1994年代には5%近くまで上昇していたこともあり、4%や5%に上昇したとしても何らおかしくはない。

 念の為、1994年の消費者物価指数(除く生鮮)は年で前年比0.8%の上昇、年度で0.6%の上昇に過ぎなかった。2025年は年で3.1%、年度で2.7%の上昇となっていた。物価の数値だけで見る限り、1994年からさらに2%程度上乗せされてもおかしくはない。こんな状況下でさらに物価上昇、財政拡大を促す政策を進めることそのものが非常に危険であろう。


2026年7月3日「ドル円は最終防衛ラインを突破」

ドル円は最終防衛ラインを突破

 ドル円は162円台に上昇し、2024年7月に付けた161円96銭の「防衛ライン」を突破した。

 ここがどうして最終防衛ラインなのかといえば、前回162円を付けていたのは1987年あたりであった。

 1985年のプラザ合意の時点でドル円は240円だったが、その、わずか1年半後の1987年春には150円台まで下落しており、ルーブル合意があった時代の水準となったためである。

 つまり、次のチャート上の目途は170円、200円といった大台を除くとプラザ合意の時点の240円あたりとなる。当時の様子を確認してみたい。

 ニクソン・ショック

 1969年1月に成立したニクソン政権は大幅な財政拡大政策を取り、連邦予算は1969年の30億ドルの黒字から、1971年には230億ドルの赤字を出すまでに膨張した。

 1971年春には猛烈な投機により外国中央銀行にはドルが溢れ、アメリカの金準備は大量に外国に流出した。  その年の8月15日、リチャード・ニクソン大統領は、テレビとラジオで全米に向けて声明を発表した。主な要点は、税と歳出削減、雇用促進策、価格政策の発動、金ドル交換停止、10%の輸入課徴金の導入などであった。

 この中で特に注目されたのが「金とドルの交換停止」。これによって第二次大戦後の通貨の枠組みであったブレトン・ウッズ体制が崩壊し、為替市場は新たな展開を迎えた。

 これにより人類の歴史上、長く続いた金を中心とした貴金属と通貨の関係が完全に切り離され、通貨は通貨間の相対価値が基準になるという現在に続く変動相場制へと移行することになる。このニクソン大統領による声明は世界に大きなショックを与え、ニクソン・ショックやドル・ショックと呼ばれた。

 スミソニアン合意

 ニクソン・ショックの同年12月に、ワシントンのスミソニアン博物館で開かれた10か国蔵相会議では、ニクソン大統領が発表した米国の新経済政策をうけて、通貨に関するいくつかの措置が合意された。これがスミソニアン合意である。

 ドルを切り下げ、為替の変動幅を従来の上下1%から暫定的に2.25%に拡大された。円レートは16.88%切り上げられて308円に変更された。

 しかし、スミソニアン体制でも為替相場は安定せず、ドル売りは止まらず、さらに1973年には第4次中東戦争の勃発による原油価格の急騰によるいわゆるオイル・ショックによるインフレ圧力も追い討ちをかける格好となった。

 米国や英国の国際収支は改善されず、英国をはじめ各国がスミソニアン体制を放棄したことにより、1973年に主要先進国は変動相場制に移行し、スミソニアン体制はわずか2年で崩壊となった。

キングストン合意

 1975年にジャマイカのキングストンでIMFの暫定委員会が開かれ、通貨制度の改革が協議された。1976年に、変動相場制の正式承認を含むIMF協定の第2次改正が決定した。

 これにより加盟国はどのような為替制度をとることも自由となり、正式に変動相場制への移行することになった。これにより金の廃貨も正式に決まった。この制度は1978年4月1日に発効となり、これをキングストン合意と呼ぶ。

プラザ合意

 1985年9月ニューヨークのプラザホテルで秘密裏に開かれた。

 G5と呼ばれた国(日本、米国、英国、フランス、西ドイツ)の蔵相会議において、米国の貿易赤字と財政赤字の「双子の赤字」問題による対外不均衡を、先進各国は為替相場の調整でこれを是正することとし、ドルを引き下げる方向で合意した。

 いわゆるプラザ合意である。プラザ合意前の為替市場においては、1ドルは242円近辺であったが、プラザ合意後の11月末には202円近辺まで円高ドル安が進行した。

ルーブル合意

 プラザ合意後、ドル安はさらに進み円相場は1987年2月には1ドル140円に到達した。

 1987年2月にパリのルーブル宮殿で先進7カ国蔵相・中央銀行総裁会議(G7)が開催され、今度はプラザ合意後の行き過ぎたドル安にストップをかけることが検討された。

 日本の内需拡大や米国の財政赤字圧縮などが合意され、為替相場についても、当面の水準に安定させる旨の声明を発表し、これはルーブル合意と呼ばれた。しかし、市場では、日米の協調介入があったにもかかわらず、円高ドル安の流れは続くことになった。

 こういった時代の水準にもどってきたわけだが、すでに国際決済銀行(BIS)によると通貨としての総合的な実力を示す「実質実効為替レート」でみると今年3月時点で統計が始まった56年前の水準を下回っていた。

 統計が始まった56年前というのは1970年となる。つまり、1ドル360円の固定相場制の時代(1971年まで続いた)となる。

 200円や240円も通過点となり、360円に戻る可能性すらありうるのか。

 私が小学校時代のなぞなぞに「ハンドルはいくら?」というものがあった。その答えは1ドル360円の半分の180円だった。まさかそんな時代に戻りつつあるというのか。


2026年7月2日「高市政権の政策は円安と物価上昇、金利上昇の引き金に」

 ドル円は2024年7月に付けた161円96銭の「防衛ライン」を突破した。

 木原稔官房長官は30日の閣議後会見で、足元で進む円安について「必要に応じ、いつでも適切に対応していく」と語ったが、いまのところ適切な対応はみえない。

 米国のベッセント財務長官とどのようなやり取りを行っていたのかは当事者以外にわからない。

 ただし、このタイミングで介入を行っても効果は一時的となり、むしろヘッジファンドなどの仕掛のタイミングにされてしまうことぐらいは、ソロスファンドで百戦錬磨のベッセント氏はわかっているはずである。

 ドル円が「防衛ライン」を突破したが、今度は円債も目先の防衛ラインがみえてきた。

 債券先物は中心限月が異なることなどから、過去の水準そのものと照らし合わせることに意味はないとの見方はあるかもしれない。

 それでも中心限月で見る限り、目先の底値は日中ベース(ナイトセッション除く)で6月22、23日の127円46銭、5月18日の127円40銭となる。

 ざっと手元のデータをみたところ、これらの水準を下回ると1997年9月16日の127円37銭以来のものとなる。

 10年国債の利回りは5月18、19、20日に一時2.800%と1996年10月以来およそ29年6か月ぶりの水準に上昇していた。

 債券先物もあらためて当時の水準に近くなり、さらなる下値模索の展開が予想される。

 政府が7月に策定する経済財政運営の指針「骨太方針」に経済成長の実現に向け「適切な金融政策運営が行われることも非常に重要だ」と明記する方針を固めたことが27日分かったと報じられた。

 これらも今後の日銀の追加利上げに対する牽制球ともいえる。

 高市政権が進める予算編成改革の絵姿が見えてきた。危機管理や成長についての投資は予算要求の上限を撤廃する「積極財政」の面を色濃く打ち出した。

 首相は4月の成長戦略会議で「リミッターを外して必要な施策をやり抜く」と語っていた。

 物価対策に最も効果的とされる日銀の利上げを封印させ、物価上昇を促すことになるリミッターを外した積極財政を進める。

 これが何を引き起こすのか。

 日銀はすでにビハイドザカーブに陥っていると私はみているが、日銀のインフレへの政策対応が後手に回るとの懸念がさらに強まりかねない。

 財政政策は表面上は赤字国債を増発しなくても費用が掛かれば当然、その分の財政負担が必要となる。

 予想以上の税収とかで賄えればそれほど問題とはならないかもしれないが、消費税減税分だけで2年10兆円はどこから賄うのか。

 むろんそれだけではない。リミッターなき政策が目白押しともなりかねない。

 すでに外為市場では円安が進行している。

 ドル高との見方もあろうが、やっとドル円の実力が今後、はっきりと示されることも予想される。ドル円が200円や300円になっても何らおかしくはない。

 国際決済銀行(BIS)によると通貨としての総合的な実力を示す「実質実効為替レート」でみると今年3月時点で統計が始まった56年前の水準を下回っていた。

 統計が始まった56年前というのは1970年となる。つまり、1ドル360円の固定相場制の時代となる。

 円安はさらなる物価上昇(火力増加)を招くが、財政政策でそれに油を注ぎ、消防車(日銀)の出動に対してはブレーキを掛けている状態にある。

 百歩譲って積極財政が必要なほど日本のファンタメンタルズが悪化しているというのであれば、景気回復が優先との見方も出るかもしれない。

 7月1日に発表された6月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感が5四半期連続で改善しているのだが。


2026年7月1日「政府がすべきことは積極財政ではなく物価対策なのでは」

 高市早苗政権が進める予算編成改革の絵姿が見えてきた。危機管理や成長についての投資は予算要求の上限を撤廃する「積極財政」の面を色濃く打ち出した(29日付日本経済新聞)。

 首相は4月の成長戦略会議で「リミッターを外して必要な施策をやり抜く」と語っていた。

 リミッターを外すというのは、危機管理や成長向けの予算である「新たな投資枠」については各省庁からの概算要求では上限を設けないことを示す。要求段階では事実上の青天井となる。

 「責任ある積極財政」の「積極財政」部分を推し進めようとしている。「責任ある」の部分は年度途中で赤字国債を増発しないようにするといったことを想定しているようである。

 ただし、現実に数兆円単位の予算が必要となれば、表面上は赤字国債の増発はなくてもその分、財政そのものは悪化することは確かである。それが見える数値で示されなければむしろ、潜在的なリスクを強める格好となりかねない。

 この「責任ある積極財政」の命名者は城内実経済財政政策担当大臣だとか。

 「今回の利上げにつき説明責任を果たすとともに、過度な景気変 動が生じた場合には主体的かつ適切な対応が重要である。今後 の成長型経済への変化が重要であり、マクロの需給動向と物価 の関係の慎重な確認が必要である」

 これは6月16日の金融政策決定会合で利上げを決定した際の、内閣府による意見である。この日の内閣府からの出席者は城内実経済財政政策担当大臣であり、内閣府というより城内大臣の意向が強く反映されたもので、追加利上げへの牽制球といえる。

 政府が7月に策定する経済財政運営の指針「骨太方針」に、経済成長の実現に向け「適切な金融政策運営が行われることも非常に重要だ」と明記する方針を固めたことが27日分かったと報じられた。

 これらも今後の日銀の追加利上げに対する牽制球ともいえる。

 そもそも現在の経済実態で積極財政は必要なのか。しかも政府主導で経済を活性化できる保証はあるのか。

 ここでの財政拡大はインフレへの圧力ともなりかねない。加えて日銀の正常化に政府が釘を刺すようなことをすれば日米の金利の方向性の違い等も意識されて、さらに物価上昇圧力ともなる円安を招きかねない。

 すでにドル円は162円台を付けてきた。

 介入警戒もあろうが、そもそも政府が財政悪化、日銀の正常化を牽制している以上、円安圧力はさらに強まりかねない。

 結果として物価上昇圧力を強めることとなる。いま政府に求められているのは積極財政よりもインフレにブレーキを掛けることではないのか。


Copyright 牛熊 1996-2021