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日銀が「基調的な物価上昇率」について、2%程度に到達したと判断する方向で検討に入ることが分かったと5日に時事通信が報じた。
7月30、31日に開催された日銀の金融政策決定会合の議事要旨ではある委員から次のような発言があった。
「この委員は、2024年と2025年は、わが国と海外の金融政策の方向性が異なる中、 本行の利上げペースは年2回と緩やかであったが、足もとではグローバルな利上げ局面に転じる中、一定の利上げペースにとらわれず、海外の金融環境の転換にも応じた機動的対応や利上げ幅の議論が必要となる新たな局面に転換したとの認識を示した」
海外、特に欧米の中央銀行は2022年の世界的な物価上昇を受けていち早く、さらにスピード感ある利上げを行っていた。
日本の消費者物価指数(除く生鮮)は2022年4月から前年同月2%を超えてきた。それにもかかわらず日銀はすぐには動かなかった。
やっと動いたのが2024年3月の金融政策決定会合で、無担保コール翌日物の金利に戻しそれをゼロから0.1%としマイナス金利を解除。長期金利コントロールを含めたイールドカーブコントロールを廃止した。
2024年7月に政策金利を0.25%に引き上げた。2025年1月に0.50%に、2025年12月に0.75%に、2026年6月に1.00%にに引き上げた。
そして、日銀は9月17、18日の金融政策決定会合で政策金利を1.25%引き上げた。
植田総裁は会見で「政策の局面が変化したと考えています」と発言していたが、この発言は7月の決定会合での委員の発言に沿ったものであったともいえる。
政策の局面が変化とはどういうことなのか。
植田総裁は金融政策の狙いに関して「これまでは基調物価を引き上げるのが目標だった」とした上で、現在は「2%程度で安定させていく観点が重要になっている」と語り、上振れを防ぐ考えを明らかにしていた。
10月の金融政策決定会合では「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で2%到達の認識を示す可能性が高いとされる。その上で、2%程度での定着に向け、引き続き短い間隔で利上げを進めていく方針も示すと予想される。
そもそも基調的な物価とは何かについて日銀は具体的に示していない。日銀の物価目標は消費者物価指数(除く生鮮)の2%であったはずである。それは2022年4月からすでにクリアされている。
日銀の正常化は遅れ、欧米が2022年から積極的な利上げに転じても動かなかった。その後の利上げも慎重過ぎた。それを少しでも取り返し、想定外の円安や長期金利の上昇を抑えるべきだが、遅きに失した感もある。
10月に募集される個人向け国債の条件等(募集期間10月8日から30日)が発表された。
9月1日に10年国債の利回り(長期金利)が3.000%を付けてきた。これは1996年9月以来、30年ぶりとなる。その後、10年国債の利回りは一時3.115%に上昇してきた。6日に入札された10年国債の利率は3.1%と1996年8月以来の水準となった。
この10年国債の入札結果を受けて、変動10年国債の初期利子は2.05%(税引き前)となった。これは9月募集(10月発行)の1.95%を上回って過去最高利率となった。
固定5年の利率は2.39%(税引き前)となり、こちらも8月募集の2.24%を上回り、過去最高利率となった。
固定3年の利率は2.07%(税引き前)となった。9月募集の1.96%を上回って過去最高利率となった。
これによりいずれのタイプの個人向け国債の利子が2%を超えてきた。個人が食指を動かしそうな2.0%を超えてきたことで、さらに個人向け国債の需要は高まりそうである。。
個人向け国債の利率が上昇してきたのは、日銀が金融政策の正常化に乗り出し、政策金利を引き上げたこと。物価の上昇や欧米の長期金利の上昇も手伝って日本の国債利回りも上昇してきたことによる。
9月17、18日の日銀の金融政策決定会合では政策金利を1.25%まで引き上げた。今後も物価上昇を受けて、10月、もしくは12月の決定会合での追加利上げの可能性も出てきている。
日本では消費者物価はいったん2%を割り込んでいるものの、今後は上昇が加速する可能性が高い。実際に9月の東京都区部消費者物価指数(除く生鮮)は前年同月比2.7%となり、8カ月ぶり2%超えとなっている。
欧米の長期金利が上昇し日本の長期金利も3%台に上昇するなど、この金利上昇が個人向け国債の利回りに反映されている。
3年固定の利子が2.07%となっているのに対して、8月の全国消費者物価指数は生鮮食品を除く総合で前年同月比1.9%となっている。
預貯金金利などはまだ低位となっているが、個人向け国債については物価上昇に耐えうる水準となっている(ただしエネルギー関連の政府補助もあり消費者物価指数が低めになっている事にも注意)。
特に将来必要とされる資金の運用先は安全性を優先すべきであり、1年経過後の途中売却でも財務省が元本で買い取ってくれる個人向け国債は個人における資金運用において大きな選択肢となりうる。
国債の利回りはまだ上昇途中とみていることもあり、個人的には10年変動を引き続き推している。ただし、2%台に乗せた3年、5年の固定も魅力的ではある。
7日に英国30年債の利回りが6.036%と1998年1月以来の水準まで上昇した。英20年債の利回りは過去最高水準に迫り、英10年債利回りは5.48%に上昇した。
英国のヒーリー財務相は10月28日に初の予算案を発表するが、公的借り入れが増加するとの懸念があり、それも英国債の売り要因となっている。
フランスの10年債利回りも4.8%台後半に上昇し、イタリアの10年債利回りも大きく上昇していた。
ギリシャの10年債利回りも上昇するなど、それぞれの国の債務悪化を意識した動きというよりも、債務悪化が懸念される国を中心に国債利回りの上昇圧力を強めた格好となった。
原油などエネルギーの価格が高止まりするとの見方も背景にあるが、7日のWTI先物に関してはIEAが石油備蓄の放出を加速させる意向を示し売りが優勢となっていた。
むろん中東情勢は晴れず、原油の輸送量は回復しつつあるようだが、運賃などのコストが大きく上昇しており、これによる物価上昇懸念も強い。
欧州だけでなく米国の国債利回りも上昇している。7日の米10年債利回りは一時5.36%と2002年4月以来の高水準を付けた。
こちらはスペースXによる資金調達観測もあり、大型の社債発行も懸念材料とされていた。
日本の10年国債の利回りもすでに3%台に上昇している。
日米欧の国債利回りの上昇は、たまたま同時に起きているわけではない。その背景のひとつに原油などエネルギー価格の高止まりもある。
そして金利が失われた30年の間に膨れ上がった政府債務も国債利回りの上昇を促している。
過去にこれだけ膨れ上がった債務のなかでの金利上昇はほとんど経験がない。しいて探せば第二次大戦後の状況に近いのかもしれない。
いずれにしても、ここ30年間みられなかった金利上昇という未知との遭遇に対して、はたしてどれだけの準備が出来ているのか。
どうもそういったリスク管理どころか、金利無き時代のやり方を推し進めているようにしか見えず、これはこれで大きなリスクとなっていると思うのだが。
日本銀行の佐藤綾野審議委員が朝日新聞の単独インタビューに応じ、「様々なデータに基づき、景気を殺さないような利上げのタイミングがいいのではないか」と述べた。
7日付の共同通信のインタビューで「現在の金融環境は緩和的だ」とし、政策金利を「段階的に調整していくという方針には賛成している」と述べた。
日銀は9月17、18日の金融政策決定会合で政策金利である無担保コール翌日物の金利を0.25%引き上げ1.25%とした。
賛成7反対2の多数決で決定した。反対したのは浅田委員、佐藤委員。
「浅田委員は、足もとの消費者物価(除く生鮮食品)の上昇率が2%を下回るなか、経済の状況も必ずしも強いとはいえない点を踏まえると、金融市場調節方針を据え置くことが望ましいとして、佐藤委員は、経済・物価情勢が、現時点ではこれまでと比べて大きく加速している状態にあるわけではないと考えられるもとで、このタイミングでの利上げは適切ではないとして、反対した」
浅田氏、佐藤氏とも、市場では財政出動と金融緩和に積極的な「リフレ派」とみられている。
7月上旬。金融機関幹部らが集まった都内の会合で、城内実経済財政担当大臣の両脇にいたのが日銀審議委員の浅田統一郎氏と佐藤綾野氏だった。
城内経済財政担当大臣もリフレ派であり、「責任ある積極財政」りという言葉を作り、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の原案を作った人物とされる。浅田氏、佐藤氏の日銀審議委員人事も城内氏が主導した可能性がある。
いわばリフレ派として送り込まれた佐藤氏であり、9月の決定会合ではその役割を果たした格好ながら、いつの間にか意見を変えてきたようである。これは佐藤氏ばかりでなく、選んだとみられる城内氏も実は同様に意見を修正していた。
9月の決定会合主な意見で政府側からの出席者から下記の意見が出ていた。
「日本銀行には、今回の決定につき説明責任を果たすとともに、既往の利上げが累積的に与える影響について十分点検していただきたい。今後は、日本銀行が推計した中立金利も踏まえて検討していく必要があるのではないかと考えている。景気や市場に過度な変動が生じた場合は日本銀行の主体的かつ適切な対応が重要である」
前回の利上げにも「説明責任」を求める意見が出ていた。発言者は同じ城内氏とみられる。
ところが城内氏は25日の閣議後の記者会見で、高市政権の経済財政運営について「リフレ政策ではない」との見方を示した。「金融を緩和し、財政も機動的に取り組むアベノミクス的なリフレ政策の局面は終わっている」と述べていたのである。
2日に片山財務相は日本経済新聞の単独インタビューに答え、高市政権の経済政策の発信について「これから政府はワンボイスだ」と語っていた。
これは裏を返すと高市首相や城内氏などからの金融財政に関わるリフレ的な発言を抑えることが目的のように思われた。
米国のベッセント財務長官が「今はリフレ政策をやめるべきだ」と語っていたように、外圧によってリフレを封じ込めているかにみえる。しかし、そもそも高市氏そのものがリフレ派に担ぎ出されていたはずであり、リフレ派の意見を尊重していた節がある。
それがどうしてリフレ封じに転じたのか。
円安や長期金利の上昇に対して政府がかなり危機意識を持ってきたことも大きな要因なのかもしれない。それはそれで良い事かと思うが、本当にそれを首相が納得しているのかも甚だ疑問なのだが。
フランスの10年債利回りは一時4.9%台と2002年以来の高い水準をつけた。同国財政の持続可能性に懸念が強いことが要因となっている。
フランス政府は10月1日、財政赤字削減に向けて緊縮の色合いが濃い2027年度予算案を議会に提出。
大統領選を来年4〜5月に控え与野党は対立を深めており、審議の難航は必至とされる。過去に複数の首相が辞任に追い込まれる中、ルコルニュ首相も難しい議会運営を迫られそうだ。赤字削減の実現に懐疑的な受け止めが投資家に広がったことがフランス国債の売り要因とされる。
ユーロ圏の9月消費者物価指数は前年同月比3.8%上昇と、3年ぶりの高水準となっていた。それに対してフランスの9月の消費者物価指数は同3.0%とそこまでは高くはない。それでも物価高もフランス国債の売り要因のひとつとなっていよう。
スペインのサンチェス首相は11月29日に総選挙を実施すると発表した。住宅価格の高騰に伴う大規模な抗議デモを受け「必要な改革をするため国民の支持を広げる必要がある」と表明した。
スペインの10年債利回りは6日に4.12%に上昇していた。しかし2013年頃に付けた欧州の信用不安時の水準までは達していないものの、そこに迫りつつある。
欧州の信用不安が再びぶり返すことは現状考えづらいものの、物価上昇圧力が強まるなかにあって国債を取り巻く地合はかなり悪化しつつある。
ヘッジファンドなどは隙あらばそこを付いてくることが考えられる。2010年台初頭の欧州の信用不安はギリシャが発端となり、格付け会社の格下げなどによって国債売りに拍車が掛けられた。
コロナ禍とその後のロシアによるウクライナ侵攻、米国とイランと対立などによって特にエネルギー価格が上昇し、その影響を欧州はもろに受けている。当面、物価が沈静化することは考えづらく、状況は悪化するばかりとなる。
これは欧州だけの話ではない。日本ではエネルギー価格の上昇は政府補助によって見えなくされているだけである。
9月の東京都区部消費者物価指数(除く生鮮)は2.7%に上昇している。それまで都が物価高対策として4カ月間、水道の基本料金を無償にしていたことなどにより抑えられていたものが、9月に終了し跳ね上がった格好となった。
これは全国消費者物価指数も同様であり、2%以下だから利上げすべきではないどころの話ではない。物価の実態をしっかり確認すべきで、それへの対応も間違えるべきでない。
食料品の消費税減税はこちらも一見、物価を抑えるようにみえるが、その効果は限定的であろう。むろしその財源などが危惧されると国債売りを招きかねない。
日本でもすでに10年国債の利回りが3%台に上昇しているように国債を取り巻く地合は決して良くはない。日本でも隙をみせるべきではない。
フィデリティ・インターナショナルの債券部門最高投資責任者のマリオン・ルモルデック氏は2日、最近のフランス国債売りについて、欧州国債市場で存在感を増しているヘッジファンドが大きな要因になっているとの認識を示した(5日付ロイター)。
2日に私は「フランス国債の利回りが急上昇中、仕掛的な動きにも注意」というコラムを書いていたが、この仕掛的な動きがまさにヘッジファンドであったとみられる。
10月1日の欧州の債券市場ではドイツの10年債利回りは3.51%と前営業日の3.58%から低下し、オランダの10年債利回りも3.62%と前営業日の3.68%から低下していた。
これに対してフランスの10年債利回りは4.92%と前営業日の4.85%から上昇し、イタリアの10年債利回りは4.69%と前営業日の4.61%から上昇していた。
それぞれ何かしら金利を動かすニュースとかが出ていたわけではないため、これは仕掛的な動きであったと見て良いのではなかろうか。
2日の欧州の国債は原油安を好感してドイツ、フランス、イタリアの国債など総じて買われていた(利回りは低下)。これがこれまでの普通の動きであった。
国債利回りが大きく動き出しており、ボラタイルな相場となっている市場は投機的なヘッジファンドなどにとってはまさに稼ぎ時となろう。隙あらば狙ってくるとみておいた方が良い。
ヘッジファンドは近年、欧州の国債市場で主要なプレーヤーとなっているとロイターの記事にあったが、これは日本の債券市場でも同様であろう。
海外勢による日本国債の保有割合は今年の6月末で7.9%しかないが、債券先物の売買高などはその多くが海外投資家による委託取引となっているぐらいである。
海外投資家による現物債の保有については海外年金など長期保有目的のものもそれなりに多いとみられ、すべてがヘッジファンドなど比較的足の速い投資家によるものではない。それでもこちらも隙あらば動くこともたしかであろう。
9月30日と10月1日の債券先物のナイトセッションでの売買高が2兆円(2万枚)を超えていた。2日は1.7兆円程度と2兆円にしは届かなかったがそれでも多い。
ナイトセッションで売買高が1兆円を超えるとヘッジファンドが動いていたと私は勝手に連想していたが、たぶん今回もヘッジファンド主体の動きが強まったとみている。
ヘッジファンドだから外国人が売買しているとは限らない。私のような日本国債売買経験者の年配者が昔取った杵柄とばかりに頑張っているのかもしれないし、若手があらたな時代を意識して動き始めているのかもしれない。
いずれにしても市場が活況を呈すことそのものは良いとは思う。気を付けるべきは隙あらばそれを付いてくることにある。
それも意識してか、片山さつき財務相は日本経済新聞の単独インタビューに答え、高市早苗政権の経済政策の発信について「これから政府はワンボイスだ」と語ったそうである。
ベッセント米財務長官が9月の記者会見で「やめるべきだ」とした日本のリフレ政策に関しては、高市政権としていまはとるべき段階ではないとの認識を表明した。片山氏は「私の口から言っただけではダメで、政府全体として言うようになった」と説明した(2日付日本経済新聞)。
問題はそれについて高市首相や城内大臣がちゃんと理解をしているかどうかとなる。それとともに今後の日銀人事についても、それを理解した上で行ってくるかどうかという点となる。
7月30、31日に開催された日銀の金融政策決定会合の議事要旨が公表された。この会合では現状維持を決定していたのだが、ある委員から次のような発言があった。
「ある委員は、今回の会合で、政策金利を 1.25%程度に引き上げることが望ましいとの見解を示した」
この会合では高田審議委員が無担保コールレート(オーバーナイト物)を、1.25%程度で推移するよう促すという議案提示をし、反対多数で否決されていた。つまりこれは利上げを主張していた高田委員の発言となる。
「この委員は、2024年と2025年は、わが国と海外の金融政策 の方向性が異なる中、 本行の利上げペースは年2回と緩やかであったが、足もとではグローバルな利上げ局面に転じる中、一定の利上げペースにとらわれず、海外の金融環境の転換にも応じた機動的対応や利上げ幅の議論が必要となる新たな局面に転換したとの認識を示した」
海外、特に欧米の中央銀行は2022年の世界的な物価上昇を受けていち早く、さらにスピード感ある利上げを行っていた。
日本の消費者物価指数(除く生鮮)は2022年4月から前年同月2%を超えてきた。それにもかかわらず日銀はすぐには動かなかった。
政府関係者などから日銀の金融政策の方向転換は「拙速」といわれたが、欧米はまさに「兵は拙速を尊ぶ」という格好となり、物価上昇にブレーキを掛けることを優先していたのである。
「そのうえで、この委員は、実体経済の下振れ不安が後退し、夏場以降、インフレ圧力が顕在化し得る状況下、従来の基調的物価の上昇を促すスタンスから一転し、海外発のディマンドショックによる物価の上振れを防ぐ意志を明確に市場に示す必要があると述べた」
結果として欧米の中央銀行の利上げが経済そのものに大きなブレーキを掛けることはなかった。一気に引き上げたあと物価がいったん落ち着いたところで、政策金利を引き下げてきていた。
ところが中東情勢は改善どころかさらに悪化する懸念も強まったこともあり、欧米の中央銀行は再び利上げに転じることとなる。
世界的なインフレ圧力はそれほど後退はしていないところに、あらためて原油価格などの上昇圧力が加わってきたためである。
これまでの日銀は慎重に正常化を進めていたが、従来の基調的物価の上昇を促すスタンスではなく、物価の上振れを防ぐ意志を明確に市場に示す必要が出てきたと高田委員は指摘していた。
日銀は9月17、18日の金融政策決定会合で政策金利を0.25%引き上げた。植田総裁は会見で「政策の局面が変化したと考えています」と発言していたが、この発言は7月の決定会合での高田委員の発言に沿ったものであったともいえる。
2010年から2012年あたりに欧州の信用不安が吹き荒れた。それから少し遅れて2017年あたりから欧州の国債利回りを毎営業日確認してメルマガに記載するようになった。
欧州の国債は次第に方向性が同一となり、利回りの動きの幅が多少違うぐらいとなってきた。各国の利回りを比較する意味はあるのかなと思いながら惰性(?)でチェックを続けていたが、ここにきておかしな動きをし始めた。
10月1日の欧州の国債だが、ドイツの10年債利回りは3.51%と前営業日の3.58%から低下し、オランダの10年債利回りも3.62%と前営業日の3.68%から低下していた。
これに対して、フランスの10年債利回りは4.92%と前営業日の4.85%から上昇し、イタリアの10年債利回りは4.69%と前営業日の4.61%から上昇していたのである。
たぶんこれほどの2極化の動きは久しぶりではなかろうか。
ドイツやオランダの国債利回りの低下は米国債が買われていたことなどが影響したと思われる。これに対してのフランスやイタリアの国債売りはリスク回避のように思われた。
フランスの10年債利回りは4.9%台と2002年以来の高い水準をつけている。同国財政の持続可能性に懸念が強いことが要因となっている。
イタリアも同様の理由で売られた可能性はあるが、イタリアは2023年あたりに付けた水準には届いていないのに対して、フランスはそれどころか2002年の水準に達している。水準そのものもイタリアの10年債利回りを上回っている。
今回のフランス国債の売りについてロイターは下記のように伝えていた。
「フランス政府は1日、財政赤字削減に向けて緊縮の色合いが濃い2027年度予算案を議会に提出した。大統領選を来年4〜5月に控えて与野党は対立を深めており、審議の難航は必至だ。過去に複数の首相が辞任に追い込まれる中、ルコルニュ首相も難しい議会運営を迫られそうだ。赤字削減の実現に懐疑的な受け止めが投資家に広がった」
政治的な不安定さも大きく影響しているようである。
そしてもうひとつ気になる動きがある。日本の長期国債先物のナイトセッション(夜間取引)である。
9月30日の夜間(1日朝6時まで)と10月1日の夜間(2日朝6時まで)の取引で、売買高がそれぞれ2兆円(2万枚)を超えていたのである。おそらくヘッジファンドなどによる動きが入ったとみられるが、1万枚を超えても多いぐらいに思っていたのが2万枚であった。
2日のナイトセッションで債券先物は124円13銭を安値に124円94銭まで買い戻されていたのである。
日本の債務状態も決してよくはないし、積極財政を政府は打ち出しているが、ヘッジファンドなどは政治の安定性を重視しての日本の債券先物の買いを仕掛けていたのであろうか。
いずれにしても仕掛的な動きが出てきたことは確かであり、今後の欧米そして日本の国債の動きに注意する必要がある。
9月17、18日の日銀金融政策決定会合では、政策金利を0.25%引き上げ1.25%とすることを7対2の賛成多数で決定した。この会合の「主な意見」が1日、日銀のサイトにアップされた。
このなかの「金融政策運営に関する意見」のなかの、特に反対者の意見をみてみたい。
「消費者物価の前年比が2%を下回っており、足もとの経済の状況も、必ずしも強いとはいえない状況にあることを踏まえると、今回の決定会合では政策金利を据え置くことが望ましいと考える」
「経済・物価情勢が、現時点ではこれまでと比べて大きく加速している状態にはないと考えられるもとで、このタイミングでの利上げは適切ではないと考える。」
8月の消費者物価指数消費者物価の前年同月比は確かに1.7%と伸び率は8カ月連続で2%を下回っていた。しかし、日銀が公表している様々な一時的要因や特殊要因の影響を取り除いた「コア指標」でみると2.6%となっていた。
さらに10月1日に日銀が発表した日銀短観では大企業製造業の景況感が6四半期連続改善となっていた。足もとの経済の状況は、必ずしも弱いとはいえない状況にある。
日銀は現在、金融政策の正常化を進めている段階にあり、その意味では経済・物価情勢が、現時点ではこれまでと比べて大きく加速しているから利上げをするということではなく、物価に応じた金利に戻そうとしているはずである。これについては下記の意見があった。
「今後の金融政策運営については、基調的な物価上昇率が2%に近づいている中、現在の金融環境が緩和的であることを踏まえると、経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが適当である」
この意見についても「基調的な物価上昇率が2%に近づいている」という点が甚だ疑問ではあるものの、金融環境が緩和的であることを踏まえるとまだまだ金融緩和の度合いを調整していく必要がある。
しかも正常化に止まらず、今後の物価の上昇が懸念されるなか、正常化から物価抑制に転じる必要が出てきている。これは下記発言にあった。
「これまでは、基調的な物価上昇率が2%より低いとみられる中で、それを上昇させることが政策の狙いだったが、現在は、基調的な物価上昇率が2%に接近しつつあるため、それが2%の「物価安定の目標」を超えて上振れていくリスクが顕在化し、その後の経済に悪影響を及ぼすことがないよう、基調的な物価上昇率を2%程度の水準で安定させていくという観点が重要になっている。その意味で、政策の局面が変化したと考えている」
政策の局面が変化してきたことは確かではなかろうか。これは18日の植田総裁の発言にも使われていた表現である。
そしてもうひとつ問題があった。政府からの参加者の下記意見である。
「日本銀行には、今回の決定につき説明責任を果たすとともに、既往の利上げが累積的に与える影響について十分点検していただきたい。今後は、日本銀行が推計した中立金利も踏まえて検討していく必要があるのではないかと考えている。景気や市場に過度な変動が生じた場合は日本銀行の主体的かつ適切な対応が重要である」
前回の利上げにも「説明責任」を求める意見が出ていた。発言者は同じであろう。
城内実経済財政相は25日の閣議後の記者会見で、高市早苗政権の経済財政運営について「リフレ政策ではない」との見方を示した。「金融を緩和し、財政も機動的に取り組むアベノミクス的なリフレ政策の局面は終わっている」と述べていた。
ところが主な意見を見る限り、金融を緩和し、財政も機動的に取り組むアベノミクス的なリフレ政策をいまだ取り入れようとしているようにしかみえない。18日から25日の間に何があったのかはわからないが、ひとまず「リフレ派」ではない宣言をする必要性があったのだろう。リフレ派でなくても積極的な財政政策と金融緩和を求める人達には変わりはないと思われる。
29日の米10年債利回りは一時、5.29%と2007年6月以来の水準に上昇した。米30年債利回りは一時5.62%に上昇し、02年6月以来の高水準を付けた。
ただし、原油先物の下落もあって結局、10年債利回りは前日比変わらずの5.23%となっていた。
29日のWTI先物11月限は3.22ドル安の1バレル89.38ドルと大きく下落していた。
先週時点でペルシャ湾岸地域からの原油輸送量が米国とイランの戦闘開始前の8割弱まで回復し、サウジアラビアやイラク、アラブ首長国連邦(UAE)を含む中東産油国による原油輸出量は2月以来の高水準になっていると報じられた。
原油先物が大きく下落した割には、これによる米債の反応がそれほど大きくはなかった。
欧州の国債をみてみるとドイツや英国の10年債利回りが低下していたものの、フランスやイタリアの10年債利回りは上昇していた。
これらからみて、どうやら原油価格の高止まりが欧米の長期金利を押し上げていたわけではなさそうである。むろん押し上げ要因のひとつとなっていたことは確かだが、他の要因も影響していたということになるのではなかろうか。
29日に米債が一時売られていた要因に、メディア大手パラマウント・スカイダンスがワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーの買収資金を調達するために320億ドルの投資適格社債の発行手続きを進めていると伝わったことがあった。
今回はハイパースケーラーに絡んだ資金調達ではないが、国債市場を脅かすほどの大口の資金調達が多少なり影響を与えていることも確かではある。
しかし、今回の動きは金利を巡る局面そのものが変化していることが要因だとみている。
金利が低く抑えられていた時代から金利が存在する時代に移行しつつある。金利が1%や2%というのが歴史からみて異常であった。これが正常の状態に戻りつつあるということである。
問題は以前の正常化時代と政府債務の大きさなど状況が異なっていることにある。さらに低金利に慣れすぎてしまった弊害も存在する。
低金利であったならば当然のことが金利が付くと当然ではなくなる。キャリートレードの反動といったことも当然起こりうる。
しかし、それを理解せずに低金利時代のやり方を続けると、金利の上昇速度を早めかねない。そのリスクも意識した動きではなかろうか。