. 若き知
2020年5月28日「長期金利の先行き、目先は上昇圧力を強めるか」

 10年債利回りは現在、ゼロ%近辺にいる。

 4月7日からの緊急事態宣言により、市場参加者も在宅勤務を余儀なくされ、その分流動性は低下していた。市場参加者にとってテレワークでの売買はかなり困難となる。取引先との取引には守秘義務が発生する。本店のディーリングルームでなければ取引所などとの直接端末がない。入ってくる情報の絶対量がテレワークでは不足する。そもそもポジションを自宅で持つなどするとリスク管理に問題も生じる。

 ということで、ここにきて全面的に緊急事態宣言が解除され、市場参加者もそろってくることが予想される。4月以降、ほぼ横ばいとなっていた債券市場がここから動意をみせるのか。みせるとすればどちらに動くのか。

 27日に第二次補正予算が閣議決定された。それにともなってあらたな国債発行計画が発表されたが。増発額は想定以上に大きくなっていた大。それでも日銀の国債買い入れやイールドカーブ操作もあり、需給を意識したある程度りの上昇は抑えられよう。しかし、日本だけではなく世界的に国債の発行圧力が強まっているだけに、長期金利には上昇圧力が掛かりやすい。

 ここにきて株式市場は回復基調を強めていることも金利には上昇圧力となりやすい。先行きの不透明感は極めて強いものの、市場は先を読んでコロナ後の景気回復期待を織り込んだ動きとなっている。いわゆるリスクオンによって株は買われ、債券は売られやすい(長期金利は上がりやすい)。

 そしてこのリスクオンの動きや、売られすぎの反動もあって原油価格がしっかりしつつあることも、金利の抑制圧力の後退となる。原油価格は特に日本では物価の低下要因となるが、原油価格が多少なり回復すればいわゆるデフレ圧力も後退する。

 以上のことから長期金利には目先、上昇圧力が掛かりやすいとみている。それでも日銀の国債買い入れ等もあって10年債利回りでプラス0.1%あたりまでがせいぜいか。ただし、世界的に国の債務が問題視されてくるとなれば、地合が急変する恐れもあるため注意しておきたい。


2020年5月27日「第2次補正予算に伴う国債発行の行方」

 財務省のサイトに22日に開催された国債市場特別参加者会合(第88回)の議事要旨がアップされたので、こちらを確認してみたい。

 第2次補正予算に伴う国債発行計画の変更について、理財局から5月27日を目途に概算決定が予定されているとの説明があり、財投債を含めた国債の追加発行額が相応の規模となった場合を想定の上、皆様から国債発行の増額についてご意見を賜りたいとあった。

 参加者からの意見(概要)には、次のような意見があった。

 「証券会社・投資家共に今般の新型コロナウイルス感染症対応として在宅勤務と取引の取捨選択の傾向を強めた結果、特にデリバティブ市場では流動性が大幅に低下する一方で、現物市場では取引が比較的見られる状況である。今後、首都圏の緊急事態宣言が解除されれば、徐々に流動性も厚みを回復していくと考えられるが、そのスピードは当初は非常に緩慢で、引き続き流動性には不安な状況が継続することを想定している。」

 実際に25日に緊急事態宣言の全面解除が決定された。市場参加者は在宅勤務の場合は、諸々の制約があり、直接に売買を行うことは難しい。このため、これから次第に緊急事態宣言の全面解除により市場参加者が再び戻ってくることが予想される。

 今回、注目された第2次補正予算に伴う国債発行計画の変更については、全年限増加は可能との意見が多かった。理財局の説明では「財投債を含めた国債の追加発行額が相応の規模」とあり、まだ具体的な国債増発規模がはっきりしていない。しかし、10兆円を超えるような、かなりの規模の増額となる可能性もあり、参加者からもそれを想定した意見となっていた。

 超長期債については30年、40年の増額よりも、投資家層の厚いとされる20年債の増額を求める声が強いようである。

 中短期債も日銀による買入だけでなく担保需要などあり、増額は可能との意見が多く出されていた。

 大規模な財政支出に伴う国債増額懸念から生じる金利上昇圧力はそれほど強くはないと見方が多い。今回の国債の増発についても、市場で大きく警戒されているわけではない。


2020年5月26日「緊急事態宣言の全面解除を受けての株高に、日経平均は21000円台を回復」

 政府は25日、新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言で、残る東京など5都道県を解除することを決定した。

 22日の欧米市場の動きをみてみると、香港の法制度に新たな国家安全法を導入する中国政府の計画は米中の緊張を高めるとして、米中関係のさらなる悪化が懸念された。このためダウ平均は下落した。ただし、ハイテク株が買われてナスダックは上昇していた。米債はリスク回避の動きもあって買われ、原油先物は反落となっていた。

 このようななかにあって、22日のナイトセッションで、日経225先物が230円の上昇となり高値で引けていたのである。ドル円の居所は特に変わらず。海外では特に買い材料はみられないなか、200円を超す上昇となっていた。その背景にあったのが、海外要因ではなく国内要因であっとみられる。つまり国内での緊急事態宣言が全面解除される可能性が好感されていた。

 25日の東京株式市場はナイトセッションの流れを引き継ぎ、日経平均は265円高でスタートした。これをみても22日のナイトセッションで何かしらの仕掛け的な動きが入っていたというより、好材料を素直に好感して買い進まれたといえる。

 そして26日の東京株式市場では、前日に正式に緊急事態宣言が全面解除されたことを好感し、日経平均は3月6日以来となる21000円台を回復した。

 株式市場は先を読んで動く。とはいえ、新型コロナウイルスの感染は完全に押さえ込まれたわけではない。二次感染の恐れも当然ある。また、経済活動が一気に回復するわけではない。緊急事態宣言が解除されても活動は少しずつ、気をつけながら再開していくことが予想される。

 景気の急激な落ち込みがこれで一気に回復するわけではなく、当面、景気の悪化は続き、経済指標の悪化も避けられない。それでも最悪の状況は過ぎ去りつつあるとの認識も強まろう。これも相場といわざるを得ない。

 まだ解除には早いとの見方も当然あると思う。経済活動再開と新型コロナウイルスの感染拡大防止という、ある意味相反する動きに対して、どのようにバランスをとれば良いのか。これは専門家に委ねざるを得ない面もあるが、我々自身も感染を防止しながら、経済活動をしていく方法をあらためて模索していく必要はあろう。


2020年5月25日「株価や原油価格の反発はコロナ後を見据えているのか」

 米国の代表的な株価指数であるダウ平均は2月12日に29568.57ドルをつけて、ここが最高値となった。ここから下落し、3月23日に18213.65ドルという安値を付けた。ここからの半値戻しは23891.11ドルとなっていたが、これは5月5日に上回ったことで、いわゆる半値戻しを達成した。

 ナスダック総合指数のザラ場中の過去最高値は今年2月19日につけた9838.37であり、そこから下落し3月23日に6631.42まで下落した。その後、回復基調になり、5月8日に9000ポイントも抜いてきた。半値戻しは8234.89となり、これは4月14日に達成した。そこからさらに上昇基調を辿り、過去最高値も視野に入りつつある。

 4月30日の東京株式市場でも日経平均は2万円台を回復し、1月の高値から3月の安値までの下落幅の半分を戻す、いわゆる半値戻しをこちらも達成していた。

 果たして半値戻しは全値戻しとなるのか。その可能性は十分にあると思われる。とは言うものの、新型コロナウイルスの感染拡大とそれを防止するためのロックダウンなどによる経済活動の制限措置は、世界経済に大きな影響を与える。それが経済指標にも現れている。

 それでも先行きについては、景気回復の可能性もみておく必要があるのではなかろうか。そのひとつの目安に原油先物価格の動きがある。

 4月20日の原油先物市場では史上初というる事態が発生した。WTI先物5月限が一時マイナスに転じ、マイナス40.32ドルを記録したのである。これは原油の供給そのものも過多となっていたところに、新型コロナの影響で石油そのものの需要が大きく後退した。先行きの需要も見えなくなっていた。

 そのタイミングで21日がWTI5月限の取引最終日となり、貯蔵施設がほぼ満タンの状況下、原油先物の買い方が現引きを恐れて、投げ売ったことが要因とみられた。

 しかしその後、原油の減産の実施や中国での需要需要の回復もあって、原油先物は30ドル台を回復した。WTI先物6月限の取引最終日は5月19日であったが、前日18日には先月のようなパニック的な動きはないどころか、大きく上昇していた。

 今後はよほどのことがない限り、原油先物がマイナスとなる事態は避けられるのではないかとみられる。WTIのチャートからは目先40ドルあたりまでの戻りもあるか。

 この株価と原油価格の反発の動きをみる限り、市場はコロナ後を次第に見据えているともみえる。たしかに、株価は実態を反映していない、異常な過剰流動性相場だとの見方もできなくはないが、この株価の戻りも素直に見る必要があるのではないかと思われる。


2020年5月23日「日本の消費者物価指数(除く生鮮)は、3年4か月ぶりに前年比マイナスに転じる」

 総務省が22日に発表した4月の全国消費者物価指数は、総合で前年同月比プラス0.1%、生鮮食品を除く総合で同マイナス0.2%、生鮮食品及びエネルギーを除く総合で同プラス0.2%となった。

 ちなみにこれらの数値には昨年10月の消費増税引き上げの影響が加味されている。その影響を除くとさらに低い数字になると予想される。

 日銀の物価目標でもある生鮮食品を除く総合がマイナスとなったのは、2016年12月以来、3年4か月ぶりとなる。

 総合は3月のプラス0.4%からプラス0.1%に、生鮮食品を除く総合は3月のプラス0.4%からマイナス0.2%に、生鮮食品及びエネルギーを除く総合は3月のプラス0.6%から0.2%となっている。

 この落ち込みの要因としては当然ながら、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の自粛が影響している。さらにそれによる原油需要の後退から原油価格の大幅な下落も影響していた。

 生鮮食品など生活必需品は巣ごもりにより需要が強まり価格は上昇したが、ガソリン、や灯油の価格は下落したことで、生鮮食品を除く総合がマイナスに転じたといえる。

 いまさらながらではあるが、このように特に日本の消費者物価指数は原油価格の影響を大きく受けやすい。日銀が金利をマイナスに導こうが、国債を大量に購入しても、それは直接、消費者物価指数の上昇に結びつくわけではない。

 今回の生鮮食品を除く総合のマイナス化は一時的なものとなる可能性は高いとみている。実際に原油価格は落ち着きを取り戻してきており、緊急事態宣言も徐々に解除され、経済活動も少しずつながら再開しつつある。油断は禁物ながらも、消費者物価のマイナスが恒常化するとは考えづらい。

 しかし、日銀の2%という物価目標がさらに遠ざかっているのも確かである。だから追加緩和というのではなく、物価に対して金融政策は能動的には動かせないことをあらためて認識すべきではないかと思う。


2020年5月22日「リスクは国債にあり」

 20日付の日経新聞によると、インドネシアやミャンマーなどの中銀は政府が発行した国債を直接引き受ける「財政ファイナンス」を認め、政府の国債増発を下支えするそうである。

 財政ファイナンスは財政規律を失わせ、ハイパーインフレなどをもたらす恐れがあるためとして、日米欧の主な国では禁じられている。

 ユーロ圏では「欧州連合の機能に関する条約」の第123条で禁止され、 米国でも連邦準備法により連邦準備銀行は国債を市場から購入する(引受は行わない)ことが定められている。

 日本でも財政法第5条によって日本銀行における国債の引受けは、原則として禁止されている。

 これは中央銀行がいったん国債の引受けによって政府への資金供与を始めると、その国の政府の財政節度を失わせ、ひいては中央銀行通貨の増発に歯止めが掛からなくなり、悪性のインフレーションを引き起こすおそれがあるからと日銀のサイトでは説明されている。

 英国では禁じられてはいないが、イングランド銀行は国債を直接引き受けるのではなく、ECBやFRB、日銀と同様に市場から国債を買い入れている。

 これに対して、インドネシアでは中央銀行が5月までに国債計22.8兆ルピア(約1640億円)を直接購入したと表明。フィリピン中銀も3月、3カ月で政府が買い戻す条件付きで、国債直接引き受けの方針を決め、ャンマーは中銀の国債直接引き受けを拡大すると日経は報じている。

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による経済活動の停止状態により、経済は大きな打撃を被っている。これに対しては直接、財政が支援せざるを得ない。米国も英国やユーロ圏、さらには日本でも大規模な経済対策が実施され、その財源は国債の増発によって賄われている。

 確かに非常時であることに変わりなく、必要な対策ではある。しかし、このまま国債の増発が続けられ、中央銀行による買入、もしくは直接引き受けが大規模に行われ続けるとなれば、いずれ国債そのものへの信用度が低下する恐れがある。

 大規模な国債の増発に対し、日米欧の債券市場は特に動意を示すことはなく、中央銀行のゼロもしくはマイナス金利政策もあり、国債の利回りは極めて低位、もしくはマイナスの状態にある。

 しかし、このような非常時の対応が国債利回りが落ち着いているからと言って今後も永遠に続けられるわけではない。財政規律に疑問が生じれば、長らく築いてきた信用が一気に崩れる恐れがある。

 新型コロナウイルスの感染拡大とそれを阻止するための経済活動の自粛は、戦後最大規模の経済への打撃となりつつある。そのなかにあって株価は予想以上にしっかりしており、一時波乱のあった原油先物も落ち着きつつある。国債利回りも低位で安定してはいる。しかし、このなかにあって、じわりじわりと潜在リスクを高めているのは実は国債ではないかと思う。そのリスクを顕在化させないよう、財政規律もしっかり守っていくことも求められよう。


2020年5月21日「原油先物の6月限のマイナス化は回避、原油先物価格は安定を取り戻す」

 4月20日の原油先物市場では史上初となる事態が発生した。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物5月限が一時マイナス40.32ドルに下落したのである。原油先物の指標のひとつといえるWTIの先物価格が初めてマイナスとなってしまったのである。

 原油価格が下落した理由としては、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を抑制するためとしてのロックダウンなどによる経済活動の低下があった。これを受けて飛行機はそれほど飛ばない、人は移動しなくなるなどしたことで、原油そのものの需要が大きく後退した。さらに原油の供給も過多となっていたことで、需給バランスがくずれて原油先物は下落したのである。

 需要減と供給過多で原油価格の下落圧力が加わった。それでも何故、原油先物価格はマイナスにまでなってしまったのか。これには先物特有の事情が絡んでいた。

 4月に入り、米国内ではすでに原油在庫が貯蔵施設の能力の限界に達するとの見方が強まっていた。タンカーに積み込もうにも用船料が数倍に跳ね上がっていた。つまり供給過多で原油在庫が満タン近くとなっていた。

 そこにWTI先物5月限の取引最終日の4月21日が迫った。WTI先物には現引き、現渡しが存在しており、買い方はそのポシションを取引最終まで持ち続けると、現物つまり原油そのものを引き取らなくてはならない。しかし、それを貯蔵する手立てがなくなりつつあり、価格がマイナスでも投げ売る必要が生じた。そもそも原油を引き取るつもりもなにかった投資家も慌てて売りを出したとみられる。WTIの取引がマイナスでも可能ということがわかったことも買い方を慌てさせた。その結果、WTIの先物価格が初めてマイナスとなってしまったのである。

 しかし、4月21日にザラ場でマイナス40.32ドルをつけたあとは原油先物は回復基調となってきた。WTI6月限は30ドル台を回復してきた。

 5月18日は、WTI先物6月限でいえば取引最終日の前日にあたっていた。つまり4月20日と同じく取引最終日の前日であった。

 2020年6月限の精算日は5月25日となるが、この日の米国市場は休場。25日が営業日でなければ、25日の前営業日(22日)から3営業日前となる日に取引が終了する。つまり、6月限の取引最終日は5月19日であった。

 19日のWTI先物は中国の石油需要がロックダウン前の水準をほぼ回復したと関係者が明らかにしたことなどが好感されて、原油先物は大幅続伸となっていた。WTI先物6月限は2.39ドル高の31.82ドルで引けていた。

 20日のWTI先物もやや乱高下はしていたが、WTI先物6月限はしっかりで引けており、4月20日のような波乱は今回はなかった。あれだけ大騒ぎした原油先物のマイナス化であったが、6月限は一転、落ち着いた動きとなったのである。

 これは原油の減産が開始されたことや中国の原油需要の回復による需給のバランスが回復したこともあろう。原油先物に連動する大手の上場投資信託は6月限のポジションをすべて売却していていたということも安定に寄与した可能性もある。結果からみれば、WTI先物の5月限がやや異常な状況にあったといえよう。


2020年5月20日「コロナショックがリーマンショックやバブル崩壊、大恐慌などと根本的に異なる点」

 米東部ボストン郊外に拠点を置くバイオベンチャーのモダーナは18日、同社が開発した新型コロナウイルスのワクチン候補「mRNA-1273」について、少人数を対象とした初の臨床試験で有望な暫定結果が出たと発表した。同社は臨床試験第1相の暫定結果として、被験者のうち8人に新型ウイルス感染症の回復者と同様の免疫反応が見られたと説明。ワクチンは「おおむね安全で、忍容性が高い」とし、被験者には注射による赤みや痛み以外の影響はなかったと述べた(AFP)。

 もし新型コロナウイルスに対するワクチンが早期に完成することになれば、経済活動の正常化が進むことが期待される。このため、18日の欧米市場ではリスクオンの動きを強めた。

 米国株式市場でダウ平均は911ドル高、ナスダック総合株価指数は220ポイントの上昇となり、こちらは、2月21日以来ほぼ3カ月ぶりの高値で引けていた。欧州株式市場でも代表的な株価指数であるストックス欧州600種が3月24日以来の大幅上昇となった。原油先物も大幅続伸となった。これに対して米国やドイツなどの国債は下落した。

 モダーナの臨床試験はわずか8人であり、副作用についても今後、規模を大きくした臨床試験で出てくる可能性がある。それにも関わらず、これだけ大きく反応したのは、金融市場を取り巻く地合そのものがそれほど悪化しているわけではないことを示しているように思われる。

 ここにきて発表される経済指標は戦後最悪、1930年台の大恐慌以来という文字が躍るように、ある意味驚異的な数値が出ている。それにも関わらず、株価がしっかりしているのはなぜなのか。

 市場関係者は状況を把握していないのかという疑問もあるかもしれない。むしろ金融市場関係者のほうが冷静に状況を捉えている可能性もある。

 今回のコロナショックに比較されるものとして1930年台の大恐慌、2008年のリーマンショックなどがあげられよう。日本で言えば1990年台のいわゆるバブル崩壊もあげられるかもしれない。

 この大恐慌、リーマンショック、そして日本のバブル崩壊と、今回のコロナショックには根本的に異なる点がある。大恐慌、リーマンショック、そして日本のバブル崩壊は株価などの買われすぎの反動などもあって自然発生したものといえる。しかし、今回のコロナショックは人為的に経済活動を停止させた結果、生まれたものである。

 大恐慌、リーマンショック、そして日本のバブル崩壊は、衝撃の大きさそのものはコロナショックも同様であったものの、金融危機であったかどうかという点においても異なっている。大恐慌を生んだのも、リーマンショックもいわゆる金融危機が大きな要因となっていた。日本のバブル崩壊も同様であり、1997年には北海道拓殖銀行や山一證券が破綻している。

 もちろん今回のコロナショックが原因で金融危機が訪れる可能性はゼロではない。しかし、リーマンショックを経てむしろ金融機関は体力を強めている。日本企業などでは内部留保を積み上げるなど、ある意味、危機への備えもしていたことで、多少の期間であればそれほど大きな痛手とはならない。もちろん中小企業やフリーランスへの影響は大きい。大手といえど経営が悪化していた企業が、これをきっかけに破綻するようなケースも出てきている。しかし、これによって金融危機といった危機的状況が生まれるということは、むしろ考えにくい面もある。

 もし新型コロナウイルスのワクチンが開発されるようなことになれば、不安は大きく解消されることも考えられる。

 相場に絶対ということはない。それでも今回の株式市場などの動きを見る限り、経済指標の数値ほどには悲観的にはなっていないように思われる。


2020年5月19日「3月は海外投資家による米国債保有高が過去最大の減少に」

 米財務省が5月15日に発表した3月の国際資本収支統計における米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES)によると、海外投資家による米国債保有高が前月比で過去最大の減少幅となった。

 2月には海外投資家による米国債保有高が過去最高額となっていたが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、キャッシュ化の動きが強まり、米国債も売られた。米10年債利回りは3月9日に過去最低の0.31%に低下したが、その後売り圧力を強め、18日には1.2%台に上昇した。その後は低下基調となり、月末は0.6%台となっていた。

MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES https://ticdata.treasury.gov/Publish/mfh.txt

 多くの国が米国債の保有残高を落としていたなか、日本はさらに増加させていた。3月における米国債保有額は1兆2717億ドルとなり、前月比で340億ドル増加させ、引き続きトップを維持した。これに対して、2位の中国は1兆816億ドルとなり、前月比で1070億ドルもの減少となり、日本と中国の米国債残高の差はさらに拡大した。

国、米国債保有額、前月比(単位、10億ドル)
日本(Japan) 1271.7 +3.4
中国(China, Mainland) 1081.6 -10.7
英国(United Kingdom) 395.3 -7.9
アイルランド(Ireland) 271.5 -11.2
ブラジル(Brazil) 264.4 -21.5
ルクセンブルク(Luxembourg) 246.1 -14.7
香港(Hong Kong) 245.3 -4.5
スイス(Switzerland) 244.6 +0.9
ケイマン諸島(Cayman Islands) 207.2 -12.2
ベルギー(Belgium) 206.1 -11.9

 中国発の新型コロナウイルスは中国にとどまらず、日本を含めたアジアから欧米に急速に拡がり、パンデミックの様相となってきた。これを受けて2月はじめに1.65%あたりまで上昇していた米10年債利回りは、リスク回避の動きや、FRBによる利下げなどから、2月いっぱいは低下基調が続いた。つまり米国債は買い進まれ、3月9日に米10年債利回りは過去最低の0.31%まで低下した。

 その後、リスク回避によるドル需要の強まりなどによるキャッシュ化の動きが進み、金などとともに米国債も売られたのである。18日に米10年債利回りは一時1.2%台に上昇した。FRBは国債などの購入額の目安を無制限に切り替えるなど、中央銀行による積極的な資金供給策などから、次第に米債も落ち着きを取り戻し、月末には0.6%台にまで低下した。


2020年5月18日「米中の関係悪化が新たな火種になるリスク」

 米国のトランプ大統領は14日放映のFOXビジネステレビのインタビューで、新型コロナウイルスへの中国の対応について、「とても失望している」と重ねて不満を示した。同時に「私たちは多くの措置をとることができる。中国との関係を遮断することもできる」と表明した(15日付日本経済新聞)。

 さらにトランプ氏は「もし関係を途絶えさせたら、5000億ドル(約54兆円)を節約できる」とも述べ、断交とも受け取れる強い表現で中国を威嚇した。

 米国の連邦職員向けの年金基金を運営する連邦退職貯蓄投資理事会(FRTIB)は13日、中国株への投資を延期すると発表したが、これはトランプ大統領の意向に沿った動きともいえる。

 米国と中国は今年1月に「第1段階」の通商協定で署名した。金融市場はそれを好感したものの、その直後に新型コロナウイルス感染拡大により、金融市場は大荒れの動きとなった。

 トランプ大統領の支持率は株高によって支えられているとの見方もあるように、一時、ダウ平均など米国の株価指数が過去最高値を更新していたのはトランプ大統領の政策によるものと自負していた感もあった。ところが、新型コロナウイルス感染拡大により状況が一変した。

 株価そのものは戻りつつあるとはいうものの、米国での新型コロナウイルス感染による死亡者は8万5千人と国別で最多となっている。そして経済活動が停止状態となっていることで、米国内の景気も大きく落ち込んだ。これも11月の大統領選挙にむけて現役のトランプ大統領にとっては逆風となりかねず、その怒りの矛先が新型コロナウイルスの発生源ともされている中国に向けられているともいえる。

 トランプ大統領は中国との通商協定の再交渉には関心がないとも強調した。習近平国家主席についても「今は彼と話したくない」との発言もあった。

 米中の関係悪化が通商協定に止まらず、金融にも拡大してきているだけでも、中国側はかなり警戒してこよう。断交ともなれば軍事的な衝突の可能性すら出てくる。

 トランプ大統領にとっては再選しか頭にない可能性があり、そのためには手段は問わないというか、それを阻止しようとするものはなんとしても排除しようとの姿勢にもみえる。大国のトップがあせりにも似た行動に出るとなれば、非常に危機的な状況も生まれかねない。

 14日の米国株式市場は原油高などを好感して買い戻されてはいたが、今後は米中の関係悪化があらためて材料視しかねない。トランプ大統領の言動にもさらに注意する必要がある。


2020年5月15日「大恐慌以来という言葉が飛び交うが、大恐慌当時の日本は高橋財政の時代、歴史は繰り返されるのか」

 IMFは新型コロナウイルス感染防止のための大規模ロックダウン(都市封鎖)を受けて約100年で最も深刻なリセッションに陥ると予想した。感染が長引いたり再来したりすれば景気回復は予想を下回る恐れがあるとの認識を示し、今年の世界GDPを3%減と予測し、「大恐慌」以来最大の落ち込みとなる可能性が高いとした。

 このように新型コロナウイルス感染拡大とその防止のための経済活動の抑制により、世界経済は1930年台の大恐慌の頃の状況に陥るとの見方が出ている。それでは1930年台の大恐慌と呼ばれる時代に日本では何が起きていたのか。

 金解禁を行って為替相場を安定させることを望む声が上がり、1929年7月に金輸出解禁の方針を掲げた民政党の浜口雄幸内閣が成立し、蔵相に元日本銀行総裁の井上準之助を起用した。緊縮財政への転換と国民への倹約の呼びかけを行い、1930年1月に旧平価により金輸出を解禁した。

 旧平価に対し円がとくに弱かった時期に金本位制への復帰が発表されたため、物価と輸出が急速に低下し、大量の金が輸出解禁とともに海外に流出し、米国から始まった世界恐慌の影響も受けて、国際収支も悪化し、日本の景気は急速に悪化する。財政健全化の必要から緊縮財政や強力な金融引き締め策も相まって、デフレに陥った。

 1931年9月に満州事変が勃発した。また、英国は金本位制を離脱。同年12月には立憲政友会の犬養毅内閣が成立。蔵相には高橋是清が就任し、直ちに金輸出が再禁止され、ここからいわゆる高橋財政がスタートした。

 高橋是清は禁輸出再禁止後から1932年まで円安の流れを放置した。また日銀は公定歩合の引き下げを実施し、公定歩合の水準は日銀創設以来の最低となった。金本位制を離脱したことにより、金の保有量に制約されずに積極的な財政政策を行いやすくなり、大量の国債発行による公共事業や軍事への投資が可能になった。

 高橋是清は財政政策の転換と満州事変の戦費調達のため国債の日銀引受を実施した。1931年度まで抑えられていた軍事費は満州事変勃発を契機に膨張をはじめ、1933年3月の国際連盟の脱退などから国際的な孤立を深めたことで、陸・海両軍による軍備拡大要求は急激に強まった。

 1935年に入ると日本経済の拡大が顕著となり、インフレの兆候も出てきたことで、財政赤字を削減させる政策に移行する必要が出てきた。高橋蔵相は1936年度予算の編成にあたり、公債漸減方針を強調した。しかし、健全財政を堅持しようとする大蔵省と軍部との対立が頂点に達し、軍事費の膨張を抑制し財政健全化に向けた努力をしようとした高橋是清は1936年2月の二・二六事件により凶弾に倒れたのである。


2020年5月15日「FRBのマイナス金利政策は避けるべき理由」

 米国の中央銀行にあたるFRBのパウエル議長は13日、米シンクタンクのイベントにおけるオンラインセミナーで講演し、米経済が前例のない下振れリスクに直面していると指摘した。

 ただ、景気の先行きは極めて不透明だとしつつも「今後1カ月が失業率の最悪期で、その後は急回復していくだろう」との見方を示した。設備投資が落ち込んだり長期失業者が増えたりすれば、生産や所得の持ち直しが遅れて「経済の長期停滞を招く懸念がある」と述べた(14日付日経新聞電子版)。

 こうした経済の長期停滞を回避するためには、追加の政策手段が求められるだろうとも強調し、追加緩和も辞さないとの見方を示した。ただし、トランプ大統領が要求するマイナス金利政策は「現時点で魅力的な政策手段とは考えていない」と否定的な見解を改めて表明した。

 トランプ大統領は13日、ホワイトハウスで記者団に対し、「マイナス金利を導入すべきだと強く信じている」と述べていた。ECBや日銀がマイナス金利政策を導入しており、ドル高修正のため、さらにはプラス圏となっている米長期金利もマイナスに引き下げたいとの意向のようである。

 すでにマイナス金利政策の効果と副作用については、FRB内でも日欧のマイナス金利政策による影響の分析なども進められているとみられる。この結果、よほどの事態が起きなければそれを導入することは考えづらい。

 そもそもマイナス金利政策は金融機関の収益を悪化させかねない。今回の新型コロナウイルス感染拡大防止のための経済活動の自粛による影響はたしかに大きい。戦後最大級といっても過言ではなく、1930年台の大恐慌に匹敵するとIMFなどもみている。

 ただし、注意すべきは今回の経済活動の停止状態はやむを得ない面はあったが、政府自ら行ったものである。それに対して1930年台の大恐慌は、多くの金融機関が破綻するなど金融危機による側面が極めて大きかった。景気や雇用の落ち込みは同じようにみえてもその要因はまったく異なる。ここでもし金融機関の経営そのものが悪化したりすれば、金融危機による大恐慌のような事態が本当に誘発されかねない。むしろそのようなリスクはこの状況下、最も避けるべきものと思われる。


2020年5月14日「米消費者物価指数は前月比で記録的な下落幅に」

 米労働省が12日に発表した4月の消費者物価指数は前月比0.8%の下落となり、2008年12月以来の大幅な落ち込みとなった。食品・エネルギーを除くコア指数も同0.4%低下し、1957年の集計開始以来、最大の下落幅を記録した。

 新型コロナウイルスの危機による外出自粛でガソリンや空の旅などのサービスの需要が減り、買い物も手控えられたこともあって衣料品なども過去例のない大幅な値下がりとなった。

 下落にもっとも影響したのは原油価格の大幅な下落によるガソリン価格の下落。外出制限などにより、衣料関係やや航空運賃も大きく下落した。

「Consumer Price Index Summary」 https://www.bls.gov/news.release/cpi.nr0.htm

 ただし、卵が16%も値上がりするなど、供給不足の食品は反対に1970年代以来の価格上昇となっていた。

 前年比でみると米消費者物価指数の総合指数は前年比プラス0.3%、コア指数は前年比プラス1.4%となっていた。

 米労働省によると、新型コロナウイルス感染症に感染する危険があるため、対面による調査を3月16日以降停止しているそうである。また4月は「一部の機関が一時的に閉鎖もしくは稼働を縮小したことから、一時的に集計ができず補完データで算出したものが増えた」という(ロイター)。

 日本ではすでに4月の東京都の消費者物価指数が5月1日に発表されている。総合は前年同月比0.2%上昇。生鮮食品を除く総合が同0.1%低下。生鮮食品とエネルギーを除く総合は0.2%上昇となった。

 日本の全国消費者物価指数は5月22日の午前8時30分に公表される予定となっている。


2020年5月13日「1930年台の大恐慌と今回のコロナ恐慌(?)との相違点」

 IMFは新型コロナウイルス感染防止のための「大規模ロックダウン(都市封鎖)」を受けて約100年で最も深刻なリセッション(景気後退)に陥ると予想した。感染が長引いたり再来したりすれば景気回復は予想を下回る恐れがあるとの認識を示し、今年の世界GDPを3%減と予測し、大恐慌以来最大の落ち込みとなる可能性が高いとした。

 5月8日に発表された4月の米雇用統計では、景気動向を映す非農業雇用者数が前月比2050万人減少となった。1930年代の大恐慌以降で最大の落ち込みとなった。

 1929年10月24日の「暗黒の木曜日」と呼ばれたニューヨーク株式市場の急落をきっかけに発生したのが大恐慌である。ただし、当日のニューヨーク株式市場は現在のような大きな規模ではなく、国際的な影響力も現在とは大きく異なっている。この株価の急落がきっかけではあったが、恐慌そのものは金融危機が原因とされている。

 大恐慌をきっかけとした金の流出などから再び金本位制が機能しなくなり、英国など金本位制をとる国は金の流出を抑えるために金利を引き上げざるを得なかった。第一次世界大戦とその後のインフレにより金融システムが極めて脆弱な状態であったこともあり、銀行の倒産が相次いだ。

 「図説 銀行の歴史」によると、1929年に営業していた25000行あまりの米国の銀行のうち、少なくとも1350行が1930年に閉鎖に追い込まれ、1931年にはさらに2293行が、そして1932年には1453行が破産したとされる。米国の失業率は1929年の3.2%から1933年には24.9%に拡大したとされる。これによる金融危機が大恐慌と呼ばれた。

 今回の新型コロナウイルス感染拡大とそれを阻止するためのロックダウンなど経済活動を停止させるような動きは、世界経済に大きな影響を与えることになる。株価も一時大きく下落した。米株価指数が最高値を更新するなどしていたところも、「暗黒の木曜日」の下落を連想させた。  雇用をはじめとして景気の落ち込みもIMFの予想したような大恐慌以来最大の落ち込みとなっている。だとすれば1930年台の恐慌が再び訪れるのかといえば、一概にそうとはいえないのではなかろうか。

 1929年10月24日の「暗黒の木曜日」以降、米株の下落相場は11月の最初の底入れ後、5か月程度、戻す期間があったとされる。

 今回もいわゆる半値戻しを東京株式市場でも達成するなど、「偽りの夜明け」ではないかと思われるような動きとなっている。これは本当に偽りなのか、それとも本格的に回復しつつあるのか。

 1930年当時と比べて、今回大きく異なっている点がある。それはすでにリーマンショックや欧州の債務不安などを乗り越えて、金融システムはかなり盤石となっている点である。もちろんそれでも不安は残るが、金融機関が1930年台のように連鎖倒産するような状況にあるとは思えない。

 企業についても特に大企業は内部留保も大きく、一定期間であれば経済活動が停止しようとも乗り越えることはできよう。それでも内部留保当が大きくない中小企業にとって痛手は大きく、これはフリーランスなども同様であり、影響がないわけではない。それでも全体でみると1930年台とは様相が大きくことは確かではなかろうか。

 ただし、ひとつ注意すべきことがある。それはコロナ対策のための政府の財政政策の拡大と中央銀行による異次元を超えた量的規模を含めた緩和政策である。これは政府債務と中央銀行のバランスシートを巨大化させ、いわゆる財政ファイナンスと呼ばれるリスクを増加させることになる。これは若い人たちにとっては将来への不安を増加させることになりかねず、これにより経済活動を萎縮させることになりかねない。このリスクだけは認識しておく必要があると思う。ちなみに大恐慌と呼ばれた1930年台に、日本で行われた政策が高橋是清による高橋財政であったことも忘れてはいけない。


2020年5月12日「コロナ後もいま考えておく必要もあるのではないか、日銀決定会合の主な意見を読んで」

 4月27日に開催された「金融政策決定会合における主な意見」が日銀のサイトで公表された。2日間の開催予定を1日だけとし時間もかなり短縮された会合であったが、それだけ各委員の意見もかなり集約されていたとみられ、この内容は興味深いものとなっている。

 金融経済情勢に関する意見では、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響をどのようにみているのかが焦点となっていた。

 「現時点では、日本経済の中長期的な見通しは、きわめて高い不確実性のもとにあり、楽観、悲観、両方のシナリオを想定することが可能である。」との最後にあった。

 「わが国経済は、内外における感染症拡大の影響により、大変厳しい状況にある。」

 「世界的にも実体経済が深刻化するもとで、再び不安定化するおそれは大きく、引き続き警戒すべき状況である。」

 「サービス業を中心に一層の業績悪化に見舞われ、深刻さを増している。」

 このような厳しい意見が出されるなか、

 「その後、内外で感染症拡大の影響が和らいでいけば、緩和的な金融環境や政府の経済対策にも支えられて、わが国経済は改善していくと考えられるが、不確実性はきわめて高く、下振れリスクが大きい。」

 「この下押し圧力は、感染拡大防止策に伴い経済活動が制約されることによる面が大きいと考えられる。このため、短期的な経済の落ち込みが、中長期的な成長経路を規定するとは必ずしもいえない。」

 特に最後の意見はやや楽観的とみえるかもしれないが、私はこの意見に同意したい。

 物価についての意見ではもはや2%の物価目標はどこにいったのかといった意見となっていた。

 金融政策運営に関する意見では、このときも追加緩和を決定していたことで下記のような発言が多くなっていた。

 「金融緩和を一段と強化することが適当である」

 「一層の状況悪化の可能性にもしっかり備えておくことが肝要である。」

 「現行の金融緩和措置の更なる拡充・強化を図る必要がある。」

 などなどの意見に混ざり、下記のような意見も出されていた。

 「大恐慌の再来を避けるべく、政策当局は果断に対応しなければならない。大きな経済危機においては、財政・金融政策の緊密な連携・協調が必要不可欠である。インフレ率の高騰リスクは、「物価安定の目標」が堅持されている限り制御できる。ましてや現在はデフレが懸念される局面であり、さらなる財政・金融政策の連携は十分に可能である。」

 インフレ率の高騰リスクは、「物価安定の目標」が堅持されている限り制御できるとの箇所がわからない。そもそもかなり大胆な金融緩和で物価上昇にむけてコントロールできていない状況をまず説明してから、制御できる根拠を示してほしい。

 「緊急経済対策と合わせ、金利の低下を企図して積極的な国債買入れを行うことで、政府との連携強化をより明確にし、企業・家計の金利負担の軽減を図るとともに、今後のデフレ圧力を可能な限り抑制することが適当である。」

 最も金利の低下の恩恵を受けるのは政府であろう。少なくとも家計は本来えられるべき金利を犠牲にされる上、積極的な国債の発行は結果として税金でまかなわれるため、将来的な家計の負担となる。

 「経済・物価に強烈な逆風が吹き、不確実性がきわめて高い現況下では、感染症が早期に収束する、あるいは収束前後で経済に構造変化が起きない、といった前提が満たされない可能性を考慮に入れて、金融政策を運営する必要がある。」

 感染症が早期に収束するということを前提におくことは無視して良いのであろうか。収束前後で経済に構造変化が起きないという意味が少しわからない。元には戻らないということであろうか。

 たしかに今回の新型コロナウイルス感染拡大は、社会や経済構造に大きな変化をもたらすであろうことは間違いない。環境についてもよりいっそう認識があらためられることや、教育システムにも大きな変革をもたらす可能性もある。コロナ後もいま考えておく必要はあるのではないかと思う。


2020年5月10日「FRBのマイナス金利政策はありうるのか」

 ミネアポリス連銀総裁を務めたナラヤナ・コチャラコタ氏はブルームバーグのコラムにおいて、驚異的に高い失業率と急速なディスインフレの可能性は、マイナス金利を肯定する力強い論拠となっており、政策金利を少なくともマイナス0.25%に引き下げるべきだと主張した。

 7日の米短期金融市場では、フェデラルファンド(FF)金利先物がFRBによる12月のマイナス金利導入を小幅ながら織り込み始めた。

 だからといって、FRBがマイナス政策を導入することは考えづらい。日本やECBといったマイナス金利政策を導入している国をみても、むしろその副作用のほうが懸念され、 効果そのものもそれほど認められていないように思われる。パウエル議長らFRB当局者はこの状況を当然認識しているとみられ、マイナス金利導入には否定的とみられる。

 日本の場合、国債買い入れの限界も意識されて導入されたマイナス金利政策であったが、金融業界に強い反発に合い、長短金利操作付きというかたちにあらためられた。マイナス金利政策により、国債のイールドカーブを潰してしまうと金融機関には大きな打撃となることが明らかとなっている。

 同じようなことをFRBが選択するとは考えづらい。マイナス金利よりも量的緩和のさらなる拡大が今後も主眼となろうし、それをトランプ大統領も好感するであろう。ただし、こちらもやりすぎると後戻りが難しくなり、舵取りが難しいところか。


2020年5月9日「米雇用統計は戦後最悪の状況を示すものの、米株は大きく買われたのはどうしてなのか」

 8日に発表された4月の米雇用統計では、景気動向を映す非農業雇用者数が前月比2050万人減少となった。1930年代の大恐慌以降で最大の落ち込みとなった。そして、失業率は第2次世界対戦後に記録した1982年11月の10.8%を上回り、戦後最も高い数字となる14.7%となった。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、経済活動が制限されたことが影響し、雇用が急激に悪化したことが示された。にもかかわらず、この日の米国株式市場ではダウ工業株30種平均は前日比455ドル43セントもの上昇となり、24331ドル32セントで引けた。ナスダックも同様に上昇し、前日比141.66ポイント高の9121.32となった。

 どうして過去最悪ともいえる雇用の悪化を数値でみせられても、株式市場は売られるどころか大きく買われたのか。これには米中の対立姿勢が緩んだこと、さらにこの雇用統計の数字はあらかじめ予想されていたことで織り込み済みであったとの見方もできる。しかし、それ以上に米国内での経済活動の制限が緩和され始めたことなどから、米景気が最悪期を脱したとの楽観的な見方が強まり、相場そのものの地合が好転していたことが、8日の株価の上昇につながったとみられる。

 6日の米国株式市場では主要ハイテク株などを主体に買い進まれ、代表的な株価指数のひとつであるナスダック総合指数は125.274ポイント高の8979.662となり、3月4日以来2か月ぶりの高値をつけてきた。これは昨年末の引け値の8972.604を上回ってきていた。。

 ナスダック総合指数とは、全米証券業協会(NASD)が開設・運営している電子株式市場NASDAQに上場している銘柄の全てを対象に時価総額加重平均で算出した指数となる。NASDAQ市場にはハイテク株やインターネット関連株の多くが上場しており、ハイテク株の占める割合が高い。インテル、マイクロソフト、アップル、フェイスブックなどが上場している。

 ナスダック総合指数のザラ場中の過去最高値は今年2月19日につけた9838.37であり、そこから下落し3月23日に6631.42まで下落した。そこから再び回復基調になり、8日には9000ポイントも抜いてきている。2月19日から3月23日に下落したが、そこからの半値戻しは8234.89となり、これは4月14日にすでに達成していた。そこからさらに上昇基調を辿り、過去最高値が視野に入りつつある。

 ちなみにダウ平均は2月12日に29568.57ドルをつけてここがいったん最高値となった。ここから下落し、3月23日に18213.65ドルまで下落した。この半値戻しは23891.11ドルとなる。こちらも5月5日に半値戻しを達成している。昨年末のダウ平均の引け値は28859.44ドルなので、ここにはまだ距離があるものの、半値戻しは全値戻しとなる可能性はチャート上からはありうる。

 今回の新型コロナウイルス感染拡大抑制のための世界的な活動自粛の動きは、経済そのものに過去に例をみないような大きな打撃を与えている。ただし、自粛によりテレワークの増加、自宅でのネット利用の増加などもあり、ハイテク大手、ネット大手はむしろ恩恵を受けているところもある。このため、ナスダックがいち早く回復基調となった面もある。とはいえ打撃を受けてる企業も多いはずながらも、ダウ平均もしっかり値を戻しつある。

 4月30日の東京株式市場でも日経平均は2万円台を回復し、1月の高値から3月の安値までの下落幅の半分を戻す、いわゆる半値戻しをこちらも達成した。ここからはいったん下落基調となっていたが、5月8日には再び2万円を回復した。

 これがいつわりの株価上昇なのかといえば、そう断言することもできない。むしろこの株価が何かを示しているということもありうるか。世界的な景気の急激な落ち込みは誰しも感じているところであり、株価だけが浮かれて上昇していることは考えづらい。もしかすると新型コロナウイルス感染拡大による経済への影響は大きいものの、これが短期的なものに止まり、経済の根幹は揺るぎないという自信の表れなのかもしれない。感染拡大に歯止めかかれば経済は自律回復する力があるとの指摘もある。二次感染拡大の恐れもあり、株式市場にも絶対という言葉は使えない。それでも、少なくともいまのところは。この流れには逆らわないほうが良いのではないかと思われる。


2020年5月8日「米国やドイツでの国債増発、市場は警戒も。日本も第二次補正を準備か」

 米財務省は四半期定例入札(クォータリーリファンディング)で発行する国債の規模を過去最大となる960億ドルに引き上げると発表した。そして20年債の発行を再開することも明らかにした。20年債の定期発行はレーガン政権下の1986年以来34年ぶりとなる。ただし、20年祭の発行再開そのものは資金調達手段の多様化を図るためとして、今年の2月にすでに発行計画は公表されていた。

 米財務省のブライアン・スミス副次官補は声明で、新型ウイルス対策に関連する資金調達は当初、政府短期証券の発行によって賄っていたが、今後数四半期は満期までの期間が長い債券の発行による資金調達にシフトしていくと表明した。

 そして、6日にドイツでは2015年以来となるシンジケート団を通じて初の15年債を発行を行った。日本でも国債発行の際にシンジケート団が引き受ける方式が以前に行われていたが、現在はシンジケート団そのものが廃止されている。

 今回、ドイツ政府がシンジケート団を通じて15年債発行にて調達した金額は75億ユーロとなったが、引き合いは355億ユーロ超と、国内でのシ団方式売却としては過去最高に達したそうである。

 米国での20年債を含めた国債の増発、さらにはドイツでの国債発行の目的は、両者ともに新型コロナウイルス対策に必要な資金を確保するためである。

 すでにマイナス利回りとなっているドイツ国債ではあるが、これまで比較的国債発行額は押さえられてきた。ドイツ国債はユーロ圏内では最も安全な資産のひとつでもあり、潜在的なニーズは強い。米国債は安全資産でありながらプラスの利回りとなっていることもあって、こちらもニーズは強いとみられる。

 このため、今回の国債の増発に関しては、それほどの需給悪化懸念材料とはならないとみられたが、6日の米国と欧州の国債はそれぞれ売られていた(7日はそれぞれ買い戻されたが)。

 目先の需給悪化とはならなくても、今後の国債発行については増発圧力がさらに強まることも予想される。日本でも今年度第二次補正予算を政府・与党が検討とも伝わっている。国債が増発されるとはいえFRBやECB、日銀が量的緩和策の拡大により、大量に国債を購入するであろうことも想定され、これも需給悪化を防ぐとの認識もあろう。

 しかし、ドイツ連邦憲法裁判所がECBの国債を買い入れる量的緩和政策は一部違憲と判断するなど、主要国で禁止されている財政ファイナンスへの懸念も出てきている。これは日本も同様である。

 新型コロナウイルスの感染拡大の防止には、経済活動が犠牲とならざるを得ない。このため戦後なかったような景気や雇用の大幅な落ち込みとなっている。これには政府が支援せざるを得ないことで、その財政政策のための資金は借金に頼らざるを得ない。また、中央銀行も景気の下支えのために、積極的な金融緩和策を実施している。政策金利がゼロ、もしくはマイナスとなっているところは、その副作用が意識され、金利の深掘りはむしろリスクになる。このため、どうしても量的緩和策に頼ることになり、その主役は国債の買い入れとなる。

 財政政策のための国債増発と量的緩和拡大による中央銀行による大量の国債買い入れが組み合わされると、これは財政ファイナンス、マネタイゼーションとも写ってしまう。このリスクを軽減させるためには節度ある債務管理政策も必要となろう。


2020年5月6日「ドイツ連邦憲法裁判所はECBの国債を買い入れる量的緩和政策は一部違憲と判断、日本はどうなのか」

 ドイツ連邦憲法裁判所は5日、欧州中央銀行(ECB)が各国の国債を買い入れる量的緩和政策が一部違憲との判断を示した。ドイツ政府や連邦議会の関与なしに政策が決定され、進められていることを問題視した。ECBが新たに政策の必要性などを示さない場合には、独連邦銀行(中央銀行)が実施している国債購入を3か月以内に中止する考えも示した(6日付日本経済新聞)。

 財政ファイナンスは財政規律を失わせ、ハイパーインフレなどをもたらす恐れがあるため、欧州では「欧州連合の機能に関する条約」の第123条で禁止されている。

 このため、ドイツでは経済学者や法学者らの2千人に近いグループが適法性を問い、訴えを起こしていた。連邦憲法裁判所は17年に量的緩和政策への懸念を示したものの、欧州司法裁判所に判断を求めていた。欧州司法裁判所は18年末に適法と認めたが、連邦憲法裁判所が再び判断することになっていた(6日付日本経済新聞)。

 その結果が今回のドイツ連邦憲法裁判所による一部違憲との判断となった。もし、ECBが新たに政策の必要性などを示さない場合には、ドイツ連邦銀行がECBの指示により実施している国債購入を3か月以内に中止する考えも示した。

 欧州の中央銀行であるECBの量的緩和政策では、ECBが決定した内容に則し、ECBの指示の元、各国の中央銀行がそれぞれの国債の買い入れを担っている。ドイツ連銀が勝手にドイツ国債を購入しているわけではない。

 今回の判決でECBの量的緩和政策全体がただちに中止に追い込まれることはないが、政策決定や進め方について強い警告が示されたといえると日経新聞は報じている。特に前総裁であったドラギ氏は量的緩和策の拡大を含めた積極的な金融緩和策を行ってきていたことで、この根拠やその決定方法に対して、あらためて問題が提議されることになろう。

 ただし、今回の一部違憲との判決は、ドラギ総裁時代の量的緩和政策に対するもので、ECBが新型コロナ対策として3月に決定した7500億ユーロの特別枠は対象とはなっていない。だからといってこちらは財政ファイナンスにはあたらないというわけではなく、あくまで判決の対象にはなっていないということである。

 日本でも財政法第5条によって日本銀行における国債の引受けは、原則として禁止されている。これは、中央銀行がいったん国債の引受けによって政府への資金供与を始めると、その国の政府の財政節度を失わせ、ひいては中央銀行通貨の増発に歯止めが掛からなくなり、悪性のインフレーションを引き起こすおそれがあるからと日銀のサイトでは説明されている。そうなるとその国の通貨や経済運営そのものに対する国内外からの信頼も失われてしまう。これは長い歴史から得られた貴重な経験であり、わが国だけでなく先進各国で中央銀行による国債引受けが制度的に禁止されているのもこのためとの指摘もあった。

 また戦前において日銀による国債引受などを通じ、安易に公債の発行による財政運営を許したことが戦争の遂行・拡大を支える一因となったことを反省するという趣旨に由来するものともされている。

 米国では、クドロー国家経済会議(NEC)委員長が、新型コロナウイルスのパンデミックを踏まえ、連邦政府が「戦時国債」を発行するという考えに賛成するとし、トランプ大統領にこれについて話をする意向だと述べたとも伝わっている。

 米国でも連邦準備法により連邦準備銀行は国債を市場から購入する(引受は行わない)ことが定められている。また、1951年の連邦準備制度理事会と財務省との間での合意(アコード)により、連邦準備銀行は国債の市中消化を助けるための国債買いオペ(国債の価格支持)も行わないこととなった。

 日本では、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の延長を決めた政府に対し、与野党は対策長期化で疲弊する国民や事業者への追加支援のため、今年度第二次補正予算を編成するよう要求を強めたと報じられている。

 自民党の若手国会議員らは、新型コロナウイルスに対する経済対策として、新たに財政支出100兆円規模の今年度補正予算案の編成を政府に求める提言を発表した。新規の国債発行で財源をまかなうとしたが、これは安易に、日銀が国債を大量に購入するから問題ないとの認識が背景にあるとすれば、財政法第5条との兼ね合いはどうみるべきなのかも問われよう。


2020年5月4日「繰り返される百年に一度の危機、これは異常かといえば歴史上はそうでもない」

 2008年のリーマンショックに象徴される金融危機、2010年のギリシャショックを発端とした欧州の債務危機は百年に一度の危機と称された。百年に一度ぐらいしかないほどの金融経済危機という意味であろうが、何度も続くと本当に百年に一度という表現は正しいのかとも勘ぐりたくなった。

 しかし、今度こそ本物(?)の百年に一度とされるような経済の危機的状況が訪れつつある。IMFは新型コロナウイルス感染防止のための「大規模ロックダウン(都市封鎖)」を受けて約100年で最も深刻なリセッション(景気後退)に陥ると予想した。感染が長引いたり再来したりすれば景気回復は予想を下回る恐れがあるとの認識を示した。今年の世界GDPを3%減と予測し、大恐慌以来最大の落ち込みとなる可能性が高いとした。

 それを示すような経済指標も出てきている。29日に発表された米国の1〜3月期GDP成長率は4.8%のマイナスとなった。4〜6月期には年率換算で前期比40%減と戦後最悪のマイナス成長が予想されている。

 欧州連合(EU)統計局が30日発表した2020年1〜3月期のユーロ圏の域内GDP速報値によると、物価変動を除いた実質で前期比3.8%減となった。年率換算では14.4%減とデータが公表された1995年以来最悪となった。

 市場ではこれまで考えられなかったことも起きている。原油先物価格がマイナスとなる事態が発生したのである。

 それ以前にすでに金利がマイナスとなる事態も発生していたが、2000年代の金融市場はかつてないほど異常な状態に陥っているとの見方もできる。ただし、株価をみると欧米の株価指数は過去最高値を更新するなど、経済実態とかけ離れた動きをしていた。

 このような危機が何度も訪れるのは異常かといえばそうでもない。むしろ日本では戦後からバブル崩壊あたりまでは、ニクソンショックやオイルショックなどはあったものの、それほど大きな危機的状況には陥らなかったのがむしろ不思議であったようにも思われる。

 昭和恐慌といった言葉も残っているように戦前などでは幾たびも危機的状況は起きていた。大恐慌という言葉も出てきたように、今回の世界的規模の危機的状況は第二次世界大戦前の状況に似ている。経済だけでなく政治も同様に思われる。だから第三次世界大戦が起きるなどというつもりはないが、世界の政治経済が変な方向に向かう可能性もないとはいえない。

 第二次大戦中の金融市場では金利は抑えられ、国債は大量に発行され、株価も政府によって調整されていた。現在も金利は中央銀行に抑えられ、経済対策のための財源として国債が増発される。日本では株価も中央銀行が下支えているようにもみえる。

 緊急時であり、これはある意味いたしかたないと見ざるを得ないものの、政府債務や中央銀行のバランスシートが膨れ上がってきていることも確かである。第二次大戦後、その調整を日本でも行ったが、それは結果として国民の犠牲の上で行ってきた。同じようなことが起きないとも限らないことを一応、認識をしておくことも必要ではないかと思う。


2020年5月2日「原油先物をマイナスにしたのは誰なのか」

 米国の石油市場で最大の上場取引型金融商品である「ザ・ユナイテッド・ステーツ・オイル・ファンド(USO)」は4月27日、原油先物の期近6月限のポジションを解消する方針を示した(ロイター)。

 27日の原油先物市場では、この報道もあって、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物6月限は4.16ドル安の12.78ドルと大幅に下落した。6月限と7月限とのスプレッドは大幅に拡大したが、これが投機家のターゲットになったとされた。

 20日の原油先物市場では史上初の事態が発生していた。WTI先物6月限が一時マイナス40.32ドルまで下落したのである。先物価格が初めてマイナスとなってしまった。

 米商品先物取引委員会(CFTC)のバーコビッツ委員はロイターのインタビューに対し、20日に米原油先物が30分間で1バレル当たり約40ドル急落したことについてCFTCが調査に着手したと明らかにした。

 この調査結果を見ないと現実に何が20日に起きたのかははっきりしない。しかし、そのカラクリにこのUSOも絡んでいたことも確かではなかろうか。 

 ロイターによると5月限の先物価格が史上初めてマイナスに沈んだ20日に、USOは壊滅的な損害を回避したとされる。ただし、5月限の取引最終日を前にロールオーバーする必要があったため、そこに行き着くまでの原油価格の下押し要因となっていたことは確かではなかろうか。

 ただし、マイナス40ドルに下げた際には、別の投資家によるいわゆる買い方の投げが入っていたようである。

 28日の日経新聞の記事では、これについて興味深いものを指摘していた。「取引所によると、マイナス価格での取引は可能」との米東部時間20日正午ごろの通信社からの一報がきっかけで原油先物価格が一気に崩れたそうである。

 現地時間午後2時9分、ゼロドルの節目を割ると防衛ラインは決裂、わずかな買い注文を投げ売りが次々とのみ込み、約20分でマイナス40ドルまで下がった(28日日経新聞の記事より)。

 取引所がマイナス価格の商いを可能にしていたということは、関係者にとってはあってもおかしくはないとの認識であったのか。結果からすれば、渡された原油の保管場所の問題も絡んで、保管費用分のマイナス覚悟の投げ売りが入った格好となった。

 この際、売りの仕掛け人がいた可能性は完全には否定できない。しかし、やはりこれはパニック的な買い方の投げとしか言いようはない。そして原油価格の下落そのものを招いたものとして、USOを通じた個人の資金のファンドの限月の乗り換えに絡んだ売りなども入っていたものと考えられる。


2020年5月1日「日経平均は2万円台を回復し半値戻しを達成、楽観論と悲観論、どちらが正しいのか」

 4月30日の東京株式市場で日経平均は2万円台を回復した。2万円を超えたのは取引時間中としては3月9日以来となる。1月の高値から3月の安値までの下落幅の半分を戻す、いわゆる半値戻しを達成した。

 ちなみに1月の日経平均の高値は24083円51銭、3月の安値は16552円83銭であったことで、半値は2万0318円17銭となる。

 相場の格言の一つに「半値戻しは全値戻し」というものがある。下落幅の半分まで値を戻した相場は、今後もとの水準まで戻る勢いがあることを示す。ただし、一度下げた相場が半分まで戻したら、欲張らずにそこで利益確定売りをした方がよいという見方もあるそうである(野村證券のサイトの証券用語解説集より)。

 日経平均が半値近くに戻った背景には、欧米の株式市場の反発がある。米国ではミシガン州やフロリダ州など一部の州で新型コロナウイルス感染拡大に伴い実施している営業規制について5月上旬から一部緩和する方針を明かした。また欧州でも、イタリアでは来月4日から工場の操業などが認められ段階的に制限が解除されることになり、スペインでも条件付きで子どもの外出が認められるなど、制限を緩める動きが広がってきている。

 これにより制限されていた経済活動が徐々に回復するとの見方から、過度に悲観的な見方が後退し、これが欧米の株式市場に反映された格好となっている。

 29日に発表された米国の1〜3月期GDP成長率は4.8%のマイナスとなった。4〜6月期には年率換算で前期比40%減と戦後最悪のマイナス成長が予想されている。失業率も10%を突破するとの予想となっている。

 29日に開かれたFOMCでは、米国債などを制限なく購入する量的緩和政策などの維持を決めた。会合後に記者会見したパウエル議長は「経済の大部分が停止し、4〜6月期は過去例のないマイナス成長になる」と指摘していた。

 日本でも緊急事態宣言を全国対象に1か月程度延長で調整すると報じられるなど、新型コロナウイルスの感染拡大は続いており、安倍首相は全面的な解除は難しいという認識を示した。

 欧米での一部の制限の緩和の動きは、感染拡大阻止への期待が強まったというよりも、深刻な経済への懸念もあり、感染拡大防止に務めながらも経済活動も徐々に再開せざるを得ないためとの見方もできる。

 それでは、もし日経平均が半値戻しを達成したら、そこからどちらに向かうのか。私の経験上、あくまでチャートからの見方によれば、「半値戻しは全値戻し」ではないかとみている。

 ただし、本音でいえば半値ですら戻ることなどないのではと見ていたし、ここからさらに上がるということは、現状を認識するとありえないのではないかというのか正直なところ、自分の見方ではある。

 しかし、新型コロナウイルスという未知の驚異に対して私自身、医学的なものを含めてそれほどの知見を持っているわけではない。

 長きに渡り相場の世界をみてきて、この相場、どう考えてもおかしいとみることは常々あった。しかし、結論から言えば、相場が間違っているということはないというのが私の結論でもある。

 人間心理の集合体でもある相場の動きが、私には見えないものを示していることも多いと私は思っている。もし相場が何かを示しているとみるのであれば、半値を超えて全面戻しとはいかないまでも、戻りを試すような動きとなる可能性もまったくは否定できない。

 株のロングポジションを持てとまでは言い切れないが、少なくともショートポジションはいったん解いた方がよいとは思う。


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