. 若き知
2024年5月28日「長期金利が1%を超えてきた。これはいつ以来?」

 24日午後、長期金利が一段と上昇。10年債の利回りは一時1.005%と2012年4月以来およそ12年ぶりに節目の1%を超えた。

 手元のデータによると、2012年4月15日に10年債利回りは1.015%まで上昇したあとに1%を割り込んでいた。それ以来の1%超えということになる。

 当時の様子を振り返ってみたい。

 2012年1月25日のFOMCでFRBは物価に対して特定の長期的な目標(ゴール)を置くこととし、それをPCEの物価指数(PCEデフレーター)の2%とした。これは実質的なインフレ目標値の設定とも言える。

 2月9日のイングランド銀行のMPCでは、資産買い取りプログラムの規模を500億ポンド拡大することを決めた。その際に購入対象となる償還期限を変更し、従来よりも3〜7年物の購入を増やすことにした

 これら一連の動き、なかでもFRBによる物価目標の設定と時間軸の長期化は日銀にも大きな影響を与えた。

 2月14日の日銀の金融政策決定会合では、中長期的に持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率として「中長期的な物価安定の目途」を示すことを決定。

 「中長期的な物価安定の目処」とは、消費者物価指数の前年比上昇率で2%以下のプラス領域にあるとある程度幅を持って示すこととした。その上で、「当面は1%を目途(Goal)」として、金融政策運営において目指す物価上昇率を明確にした。

 2012年7月にECBのドラギ総裁はユーロ存続のために必要な、いかなる措置を取る用意があると表明しました。9月6日のECB理事会では、市場から国債を買い取る新たな対策を正式に決定した。ECB理事会では償還期間1〜3年の国債を無制限で買い入れることを決定した。このOMTは利用されることはなかったものの、その存在が市場の動揺を抑える役割を果たした。

 これを受け、欧州の信用不安は次第に後退してくることになる。すでに米国株式市場は2009年あたりをボトムに回復基調となっていた。

 ドル円も80円を割り込んだあたりで、ボトムを着けにきた。

 欧州の信用不安の後退のタイミングで出てきたのがいわゆるアベノミクスである。これがひとつのきっかけになって円買いドル売りのカバーが入り、ドル円は上昇。この円安もあったが、すでに回復していた米国株式市場のあとを追うようにして東京株式市場も回復してきた。

 アベノミクスが円安・株高のきっかけとなったことは確かながら、円安・株高の原動力は欧州の信用不安に後退によって、リスク回避の反動が起きたこと。いわばショートカバーによるものであった。

 このため、もしアベノミクスがなかったとしても、このショートカバーは多少、勢いは違えど起きていたこともたしかであろう。

 2013年4月4日に日銀は量的・質的金融緩和、いわゆる異次元緩和の導入を決定した。この日の10年債0.425%と過去最低利回りを更新していた。果たしてこれは本当に必要なものであったのであろうか。


2024年5月27日「金と銅の価格が過去最高値更新、銀の価格も上昇」

 20日のロンドン金属取引所(LME)の銅相場は一時、過去最高値を更新した。銅相場は4月上旬あたりから上昇し始め、やや過熱状態になっていたようである。

 これを受けて5円玉など貨幣の材料費が上がっているとか。

 5円玉の原料は銅と亜鉛からなる「黄銅」で、割合は銅が60〜70%、亜鉛が40〜30%になる。5円玉の重さ3.75グラムのうち平均して銅は2.44グラム、亜鉛は1.31グラムを含有する(16祖付日本経済新聞)。

 5円玉の材料費を建値から計算すると銅が4.03円、亜鉛が0.69円の合計で4.71円となり、すでに額面の94%となる。このまま銅の価格が上がり、さらに円安となれば、額面価格を上回る可能性も出てきている。

 そして金(ゴールド)の価格も上昇している。国際指標となるニューヨーク先物(中心限月)で最高値を更新した。

 海外相場の上昇基調を受け、国内の金価格も上昇している。地金商最大手の田中貴金属工業が発表した金の小売価格が最高値を更新した。

 そして銀の価格も上昇してきている。やや出遅れ感があった銀も買われてきている。

 この背景には4月の米消費者物価指数などで、米国のインフレの鈍化が意識され、米FRBによる利下げ期待が高まり、金利がつかない金の投資妙味が増し、資金が流入したとの解説があったが、腑に落ちない。

 金については中国が引き続き購入している。個人による購入が活発化といったニュースもあったが、政府保有の金の残高も増加している。新興国の中央銀行が外貨準備で金保有を増やす動きも出ている。

 米国の長期金利が上昇したことで、米ドル建ての米国債は価格が下落した。これを受けて米国債から金などに資金シフトしたところもあった可能性がある。

 さらに貴金属の買いの要因としては、FRBの金融政策などとは別の側面もあるのではなかろうか。

 そのひとつの要因として、地政学的リスクの増加がある。ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルとパレスチナとの紛争、イランとイスラエルの緊張の高まりなどが、さらに飛び火してくる懸念もある。

 米国大統領選の結果次第では、トランプ氏が返り咲く可能性もあり、これによってあらたなリスクも加わりかねない。

 そこにインフレという問題も加わる。米国や日本では物価が下がりにくい状況となりつつある。たしかに貴金属は金利は付かない。しかし、物価高とはその反対にある通貨価値が下落することになる。

 こういった理由により、金を中心に貴金属へ資金が流入している可能性も否定はできないのではなかろう。


2024年5月27日「1年超3年以下の国債買入で札割れに」

 23日の日銀による国債買入オペでは、オファー額は1年超3年以下3750億円、3年超5年以下4250億円、5年超10年以下4250億円となり、いずれも前回と変わらずとなった。

 ただし、結果をみると1年超3年以下の応札額が予定額に届かない、札割れとなっていたのである。

 10年債利回りが1%を付けるなど、ここにきて国債が売られ、利回りが上昇してきた。特に超長期債と呼ばれる期間の長い国債を中心に売られていた半面、中期債の利回り低下のピッチはそれほど大きくはなかった。

 10年債利回りが1%を付けた背景には、日銀が国債買入の減額を正式に示唆する可能性とともに、利上げの可能性も織り込んできたといえる。

 国債は売られやすい状況となるなか、どうして1年超3年以下への売りはオファー金額に届かなかったのか。

 何かしらの特殊要因が働いた可能性も否定はできないが、超長期債を売却した資金で中短期債を購入していた可能性もある。

 国債利回りが上昇している場合には、同じ利回り幅での価格の下落が大きくなる長めの期間の国債はリスクが大きくなる。むしろ今後、国債利回りが予想通りに上昇した際に、長めの期間の国債を購入したほうが損失は少なくなる。

 それまでの間、待機資金は中短期の期間の国債に向かわせるといった動きがあったとしてもおかしくはない。

 とはいえ、1年超3年以下の札割れはサプライズであった。しかし、これをきっかけに1年超3年以下の国債買入については次回から減額することも予想される。国債需給に応じた対応ということにもなる。ただし、今月は1年超3年以下の国債買入はもうない。


2024年5月24日「日本の長期金利は1%を付ける」

 22日に10年国債の利回り(長期金利)は、2013年5月以来およそ11年ぶりに1%を付けてきた。

 21日に0.980%上昇しており、1%が見えていた。さすがに1%が大きな壁として認識されており、その達成にはもう少し時間が掛かるかとみていた。ところが、22日の40年国債の入札がやや低調な結果となったことをきっかけに、意外とあっさり1%を付けてきた。

 長期金利は1990年以来の上昇局面となっており、1%を超えてくるのも時間の問題とみていた。これは本格的に物価が上昇してきたことが大きな要因といえる。さらに日銀が正常化に向けて歩みを進めるとの見方も背景にある。

 早ければ6月の金融政策決定会合での政策修正、つまり0.25%の利上げと国債買入減額の正式アナウンス(まずは6兆円の看板外し)があるのではないかとの見方も強まりつつある。

 円安の進行もあり、4月と同様に日銀が無回答ということは考えづらい。米国のイエレン財務長官も円安対応は為替介入ではなく、政策修正を求めるような発言をしていた。日銀が利上げに動く可能性は強いと個人的にはみている。

 長期金利が1%を付けたのは2013年5月以来およそ11年ぶりとなる。日銀がアベノミクスを受けて異次元緩和を決定したのがこの年の4月であり、そのあたりに付けた水準といえる。

 1%は大きな節目ではあるが、長期金利の上昇がこれで天井を打つことのほうが考えづらい。

 個人的には日銀は年内、少なくとも2回の利上げを実施するとみており、それを受けて長期金利は1.5%あたりまで上昇すると予想している。

 その後の利上げも可能となれば、大きな節目となる2%が見えてくる。過去に長期金利が2%近くを付けていた当時(2000年から2008年あたり)の消費者物価は前年同月比でマイナスを付けることも多かった。

 足元物価が2%を上回った状態が続いていることを考慮しても、長期金利が2%を付けてきても何ら不思議ではない。むろん、物価だけが長期金利を決める要因ではないことも確かなのだが。


2024年5月23日「日銀は社債の買い入れを減額」

 日銀は21日、社債の買い入れオペ(公開市場操作)を通知した。買い入れ額を250億円減額し、これまでの1000億円から750億円にした。日銀は段階的に買い入れを減らす方針を示していたが、異次元緩和終了後初めての減額となった(22日付日本経済新聞)。

 13日には国債買い入れを減額しているが、やや意味合いが異なる。記事にもあったが、社債については日銀は段階的に買い入れを減らす方針を示していた。

 3月19日の金融政策決定会合で日銀は、マイナス金利政策の解除などにあわせ社債の買い入れも、1年後をめどに終了すると発表していた。

 これに対して国債の買入については、「これまでと概ね同程度の金額で長期国債の買入れを継続する。」としていて、さらに「足もとの長期国債の月間買入れ額は、6兆円程度となっている。」との注釈まで付けていたのである。

 4月26日の金融政策決定会合でも「長期国債およびCP等・社債等の買入れについては、2024年3月の金融政策決定会合において決定された方針に沿って実施する。」としていた。

 植田総裁は会見で「国債買入れについて今日の決定会合でどういう議論があったかというご質問だったと思いますが、これは今日の会合では6兆円で続けるということに関して特に反対は出なかったということでございます。」と発言していた。

 ところが日銀は5月13日の国債買い入れで一部のオファー額を減額し、こちらはサプライズとなった。

 ただし、9日に公表された4月25、26日の金融政策決定会合の主な意見では、日銀の国債買入に関する意見がいくつかみられていた。

 「長期国債の買入れについては、イールドカーブ・コントロール解除後の市場の状況を見ているところであるが、どこかで削減の方向性を示すのが良い。」

 「国債保有量の正常化、過剰な水準にある準備預金の適正化という観点から、日銀のバランスシートの圧縮を進めていく必要がある。」

 「国債の需給バランスを踏まえ、市場機能回復を志向し、現状6兆円程度の毎月の長期国債買入れを減額することは選択肢である。」

 4月からの国債発行額の減額に合わせた、日銀の国債買入の減額は「市場の動向や国債需給などを踏まえて実施した」ということにもなろうか。

 これに対して社債の減額は1年後をめどに終了する過程であると捉えることができる。


2024年5月22日「FRBの早期利下げ観測は後退」

 FRBのジェファーソン副議長は20日、このところ複数のインフレ指標で鎮静化が示されていることは喜ばしいが、インフレ率が2%回帰への持続可能な軌道に戻ったかを判断するには時期尚早だと述べた。

 バー副議長(金融規制担当)も20日、年初来数カ月間の米国のインフレ指標は「期待外れ」で、FRBが金融政策を緩和するためには必要な証拠が不足していると述べた。

 アトランタ地区連銀のボスティック総裁は20日、インフレ率が目標の2%に戻る軌道に乗っているとFRBが確信するにはしばらく時間がかかると述べた。

 このようにFRB高官から相次いで、今後の利下げの可能性について慎重な姿勢をみせていた。これは個別の意見ではあるが、市場が期待先行となってしまいがちな「利下げ」について、FRBが過度な期待は禁物であることを示したといえる。  21日にはFRBのウォラー理事が、追加利上げはおそらく必要ないと信じていると述べた。物価の軟化が今後3〜5か月間続けば、年末の利下げ実施も検討できるだろうと。私もFRBの利下げは年末かとみているが、米大統領選挙と重なるのでそれによる影響も考慮する必要がある。

 ECBについては6月9日の定例理事会において、利下げが議論されることもすでにアナウンスしている。ただし、その後は慎重となる可能性も出てきた。

 イングランド銀行も6月からの利下げが意識されているが、こちらはやや不透明感も出てきている。

 欧州の中央銀行が利下げを実施して、米国も追随というったシナリオを市場は描いていた可能性もあるが、いずれにしてもそれは今後の物価指標の動向次第となりそうである。

 少なくともFRBが7月に利下げする可能性は以前に比べて低下してきたと思われる。これを受けて円安が進み、ドル円は156円台に上昇してきている。


2024年5月21日「日銀はどの程度長期金利を抑え込んでいるのか。1998年末の運用部ショックという事例からも1%程度か」

 日本の長期金利、つまり10年国債の利回りが再び1%に向かって上昇しつつある。しかし、足元の消費者物価指数(除く生鮮)が前年同月比で2.6%の上昇と比べて、長期金利はかなり低い状態にある。

 長期金利を形成する要因はいくつもあり、それを導く方程式があるわけではない。

 名目長期金利=実質長期金利+期待インフレ率というフィッシャー方程式があるが、実質長期金利と期待インフレ率そのものの算出が困難である。

 物価連動国債から期待インフレ率が算出はできるが、物価連動国債の市場規模そのものが小さく、足元の物価の状態に大きく影響を受けやすいものでもあり、それはあくまで参考程度となるのではなかろうか。

 ただし、この長期金利と物価の乖離には日銀が大きく関与していることは確かであろう。これについて日銀は4月の展望レポートで、下記のように解説していた。

 「ストック効果を中心に、均してみれば、概ねマイナス1%程度の長期金利の押し下げ効果がみられたことが示唆された」

 注釈では下記のような解説もあった。

 日本銀行が 2021年3月に実施した「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」でも、本BOXとはやや異なる定式化のもとで、日本銀行の国債買入れが、長期金利の押し下げに有意に影響しており、均してみれば概ねマイナス1%程度の下押し効果があったことを示している。

 注意すべきは、日銀は2024年3月の金融政策決定会合で長期金利コントロールそのものを解除している点である。

 巨額の日銀による国債買入によっても当然ながら長期金利は抑えられる。それはフロー効果となるが、フローとストックの効果がそれぞれどの程度であったのかはこれから試されることになる。

 ひとつ参考になる事例が1998年末にあった。現在の日銀のように大量の国債を保有しているところがあり、そこが国債の買入を停止するというアナウンスをきっかけに長期金利が跳ね上がったことがあった。

 いわゆる運用部ショックと呼ばれているものである。大蔵省(当時)の資金運用部はピーク度には国債残高のうち半分近く保有していたこともあったように記憶している。

 そこが国債の買入を停止するとアナウンスしただけで、長期金利が1998年12月の1%近辺から2%近辺へと1%あまり上昇したのである。

 これからみても日銀の試算の1%というのは適切なものであるかもしれない。ただし、フローとストックの効果をそれぞれどの程度なのかを計ることは難しい。フロー効果が削がれるだけでも1%程度跳ね上がる可能性も運用部ショックからは窺えるのである。


2024年5月18日「日銀の正常化に向けたロードマップ予想、7月利上げ予想を6月に前倒し」

 13日にイエレン米財務長官は、主要国の為替介入について「過剰な変動があれば実施することは可能だが、もっと根本的な政策の変更がない場合はいつも機能するとは限らない」と述べた。

 これは日本を名指ししていたわけではないが、4月29日と5月2日の為替介入とみられる動きに対してのコメントと捉えて良いかと思う。

 これにより為替介入がやりづらくなるとともに、「根本的な政策の変更」、つまり日銀による金融政策の正常化に向けて動くことが求められたといえる。

 日銀の植田総裁は5月7日の夕方に、首相官邸で岸田首相と会談し、為替が経済物価に与える影響などについて議論した。このあたりから日銀の様相に大きな変化が生じていた。  何もなかったはずの4月26日の金融政策決定会合の主な意見では、利下げや国債買入減額といった意見が多くみられていた。

 5月13日には国債買い入れで期間5年超10年以下対象が4250億円と前回の4月24日の4750億円から500億円減額したのである。3月に日銀がイールドカーブ・コントロールを解除してから初めての買い入れ減額となった。

 これらの動きを踏まえ、国内景気の急激な悪化、大地震などが起きない前提で、今後、日銀が金融政策の正常化に向けて歩みを進めると予想している。

 6月13日、14日の金融政策決定会合では国債買入減額を正式に決めるとの見方が多くなっている。しかし、それだけではやはりインパクトが足りない。ここで0.25%の利上げを決定する可能性がある。

 私は今年は7月と12月に0.25%の利上げを当初予想していた。しかしそれを6月と9月に前倒ししたい。可能であれば最難関とされる0.50%から0.75%への利上げを12月にも実施する。

 国債の買入減額については4月からの発行額減少分は早めに減額し、その後は慎重に進めていくとみている。またETFの売却についても年内に議論を進める必要もある。

 米国では年末に向けて利下げのタイミングを探ると予想している。ただし米大統領選挙による影響が予想しづらい。

 日銀の「利上げ」については米国が反対することは考えづらい。これによって、物価に応じた金融政策の正常化を進めるとともに、円安の動きが多少なり是正されることも期待したい。

 ただし、政治的圧力も強まる恐れもある0.75%への利上げが大きなハードルとなることは確かではなかろうか。むろん0.25%の利上げですら反対してくる政治家もいるようだが、その圧力はかなり後退してきているのも確かなのではなかろうか。


2024年5月18日「穀物相場が反騰、物価への影響にも注意」

 穀物相場が反騰している。小麦の世界最大の輸出国であるロシアで霜害が発生、大豆の収穫が進むブラジル南部では洪水がおきた。想定外の供給リスクに低迷していた相場の雰囲気が一変し、投機筋は買い戻しを迫られていると17日に日本経済新聞が報じた。

 2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻により、穀物価格などが上昇し、これをきっかけに世界的な物価上昇が引き起こされた。

 小麦価格の推移をみると今年3月半ばあたりまで低下基調となっていた。その後次第に底堅い動きとなり、4月18日あたりから再び上昇してきた。

 トウモロコシは昨年12月以来、大豆も今年1月以来の高値圏に上昇してきたそうである。

 ここにきての穀物相場の水準は2022年のウクライナ侵略開始直後の高値に比べればまだ低いものの、被害の状況次第では再び穀物価格が高騰し、物価に影響を与える可能性もあるため、小麦価格の動向なども念の為注意しておく必要もありそうである。


2024年5月17日「1〜3月期実質GDP速報値は年率換算で2.0%減」

内閣府が16日に発表した1〜3月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値が前期比0.5%減、年率換算で2.0%減となった。2四半期ぶりのマイナス成長となる。

 市場の事前予測では1.2%減が見込まれていたが、それも下回った。

 4四半期連続での減少はリーマン・ショックに見舞われた2009年1〜3月期以来で15年ぶりとなる。

 ただし、ダイハツ工業や豊田自動織機の生産・出荷停止による販売の減少が押し下げる要因となった点には注意したい。また能登半島地震による影響、2023年10〜12月期に生じたサービス輸出急増の反動などの特殊要因があったこともたしかである。

 個人消費は前期比0.7%減で4四半期連続のマイナス。設備投資は前期比0.8%減で2四半期連続のマイナス。輸出は5.0%減と4四半期ぶりに減少。自動車の出荷が減ったことが響いた。

 エコノミストからは消費の弱さは円安の影響が大きいとの指摘もあった。

 1〜3月期の名目GDPは前期比0.1%増、年率換算は0.4%増。2023年度の実質GDPは前年度比1.2%増となった。


2024年5月16日「1990年以来の本格的な長期金利上昇局面」

 長期金利とは10年国債の利回りのことを示す。現物国債は店頭取引が主体であり、相対で売買されるため、その居所は掴みにくい。このため、長期金利として利用されているのは、業者同士が売買している日本相互証券で売買された10年国債の利回りとなる。

 日本相互証券での売買状況はその端末を持っているところであれば、その板を見ることはできる。ただし、どの業者が売り買いを出しているのかは表示されず、あくまで利回り別の数量のみ表示されている。

 国債の取引が本格的に行われるようになったのは1985年からとみている。この年に債券先物が上場されたこと、銀行の国債のフルディーリングが認可されたためである。

 債券ディーリングが活況となり、仕掛的な動きも出て1987年5月に当時の指標銘柄とされる10年の89回債が当時の政策金利である公定歩合に接近した、当時の公定歩合は2.5%、89回債の利回りは2.55%に低下した(一説には2.50%を付けたとも)。

 ここがボトムとなって、その後の10年債利回りは上昇基調となる。当初は89回債だけ突出して低かったものが修正され、その後タテホショックなども経て、長期金利は5%を挟んでの上げ下げとなった。

 そして1989年あたりから長期金利は上昇基調となる。この年の5月に日銀は公定歩合を3.25%に引き上げ、その後も引き上げを継続し、1990年8月には6%にまで引き上げた。

 この結果、長期金利も上昇し、1990年9月頃には8%台を付けて、このあたりがピークとなった。

 実は債券取引が活況となってからの長期金利の本格的な上昇はこのときだけであった。その後も運用部ショック、VARショックと呼ばれた一時的な国債急落場面はあったが、トレンドが変わったわけではなかった。

 1986年あたりからの長期金利のグラフを見る限り、今回が本格的な上昇局面となっていることが窺える。

 1989年から1990年にかけての長期金利上昇を経験している人はいまの現場にはほとんどいないのではなかろうか。

 1999年あたりからは長期金利は2%あたりまでは上昇していた。そして2016年からはゼロ近傍となる。

 そして2019年あたりをボトムにじりじりと長期金利は上昇してきているのである。


2024年5月15日「10年債利回りは1%が再び視野に」

 10年債利回りは14日の10時半現在、0.960%と昨年11月1日以来の水準に上昇してきた。11月1日には0.970%まで上昇していたが、ここを抜けてくる可能性が出てきた。

 日本の10年債利回りのチャートを確認するともし0.970%を超えてくるとなれば、2012年以来となる。当然ながら1%が次の視野に入り、再び上昇トレンドとなる可能性が出てきた。

 日本の長期金利が再び上昇してきた背景として、円安とそれに対応すべく日銀の政策の変化が要因となっている。

 4月25、26日の日銀の金融政策決定会合の結果とその後の総裁会見をみると、完全な現状維持かとみられていた。しかし、それが円安の動きを煽る結果となってしまった。

 日銀の植田総裁は5月7日の夕方に、首相官邸で岸田首相と会談し、為替が経済物価に与える影響などについて議論した。

 このあたりから日銀の様相に変化が生じた。

 この場でどのような意見が交わされたのかは想像するしかないが、4日のイエレン米財務長官の発言も絡んでいた可能性がある。

 4日に米国のイエレン財務長官は「介入の有無についてコメントするつもりはない」と述べ、「それはうわさだと思う」と話した。その上で長官は、円相場は「比較的短期間にかなり動いた」と述べ、「こうした介入はまれであるべきで、協議が行われることが期待される」と付け加えた。

 13日にもイエレン米財務長官は、主要国の為替介入について「過剰な変動があれば実施することは可能だが、もっと根本的な政策の変更がない場合はいつも機能するとは限らない」と述べた。

 さらに介入は「極めてまれなこと」と従来からの表現を繰り返した。事前に貿易相手国との協議が必要だとの認識も繰り返した。

 外圧という言葉は使いたくはないが、それによって官邸が動いた可能性も完全には否定はできない。

 どうして4月26日の決定会合で日銀は頑なな姿勢を貫いたのかはわからないが、5月7日の首相官邸での会談後、日銀は柔軟な姿勢に転じてきたようにもみえた。

 それが9日に公表された「主な意見」にね反映された。

 そして13日には国債買い入れの減額があった。それは4月からの国債発行額の減額に合わせるとともに、10年債利回り、長期金利の上昇をー促すことも目的であった可能性もある。

 13日には日銀理事の業務担当が変更となり、加藤毅理事が企画局(金融政策の企画・立案等)・金融市場局(金融市場調節等)・決済機構局(決済システム、中央銀行デジタル通貨等)を担当することになった。


2024年5月14日「日銀は5年超10年以下の国債買入を減額、4月からの発行額の減額に合わせるとともに、長期金利の上昇を促したのか」

 日銀は13日の国債買い入れで一部のオファー額を減額した。

 残存期間5年超10年以下対象が4250億円と前回の4月24日の4750億円から500億円減額したのである。3月に日銀がイールドカーブ・コントロールを解除してから初めての買い入れ減額となった。

 残存期間1年超3年以下と残存期間10年超25年以下対象は前回のオファー額は変わらずとなっていた。

 日銀が国債買い入れの減額に向け検討を本格化させていることが、9日公表した4月25、26日の金融政策決定会合の主な意見で明らかになったと、10日に時事通信が伝えていた。

 実際に「主な意見」のなかで「金融政策運営に関する意見」では日銀の国債買入に関する意見がいくつかみられた。

 「長期国債の買入れについては、イールドカーブ・コントロール解除後の市場の状況を見ているところであるが、どこかで削減の方向性を示すのが良い。」

 「国債保有量の正常化、過剰な水準にある準備預金の適正化という観点から、日銀のバランスシートの圧縮を進めていく必要がある。」

 「国債の需給バランスを踏まえ、市場機能回復を志向し、現状6兆円程度の毎月の長期国債買入れを減額することは選択肢である。」

 4月26日の金融政策決定会合の結果とそのあとの植田総裁の会見内容に比べ、主な意見の内容はかなり相違を感じた。

 何かしらあって日銀は姿勢を修正させたとみて良いと思う。その結果が今回の残存期間5年超10年以下対象のオファー額の減額ということであろう。

 これは5年超10年以下対象ということで長期金利を上昇させようとの動きともみえる。これにより日米の長期金利の差を少しでも縮小させ、円安の勢いにブレーキを掛けることも目的かと思われる。


2024年5月13日「円安に対して日銀がなすべきこととは」

 日銀は物価の安定を図ることで通貨の対内的な価値を維持することが役割となっているのに対し、円という通貨の対外的な通貨価値を安定させるのは財務省の役割となっている。

 つまり円安へ対応しているのは財務省であり、実務責任者は財務官となる。大臣の了解のもと司令塔となる財務官の指示を受けて、実際に外為市場で円買いドル売りを行っているのが日銀の実働部隊となっている。

 ちなみに米国では、実務的に米財務省がFRBと協議の上、為替介入を決定し、ニューヨーク地区連銀が介入事務を行なっている。

 日本では介入を行う際に、日銀と協議を行う必要はないかもしれないが、協議を行う必要もあるのではなかろうか。

 この協議とは介入の有無とかではない。それぞれに責任があることを確認する必要があるのではないかということである。

 今回の円安の主要因は円への信認が低下したとか、貿易収支によるもの、地政学的リスクによるものではないのは明確であろう。

 つまり日米の金利差というか、日本と米国の中央銀行の金融政策の方向性の違いによってもたらされた金利差によるものであるのは明確である。

 FRBの政策金利はFRBの政策金利は5.25%から5.5%であるのに対して、日銀の政策金利ははゼロから0.1%となっている。

 長期金利は米国が4%台、日本は1%にも満たない状況にある。

 日銀は3月19日にマイナス金利政策とイールドカーブコントロールは解除したものの、まだ緩和的な政策を行っていることを強調している。今後、利上げを行う可能性は示したものの、それに対し慎重姿勢は崩していない。

 つまり正常化に向けて方向転換したかにみえたが、実際には方向転換にすら至っていない。

 これは巨額の国債買入についても同様である。

 4月から5000億円も国債発行額が減額されたのにもかかわらず、日銀は保有する国債の額を維持しようとそれに応じた買入の減額すら行わず、これは結果として量的緩和強化にすらみえる。

 過去の利上げに対する政治からのプレッシャがトラウマになっているとの見方や、アベノミクスを進めた政治家からのプレッシャなどがあったとの見方もある。

 いずれにしても円安に対して日銀が無回答では、介入を繰り返しても効果は限られよう。

 日銀も柔軟に動けることを示すだけでも市場は用心せざるを得なくなる。それすら行わないというのはやや責任逃れではあるまいか。このあたりも本来であれば財務省としっかりと協議してほしいところである。

 植田日銀総裁は7日の首相との会談後「円安について日銀の政策運営上、十分注視することを確認した」と語ったそうだが、「注視」では済まされないのではなかろうか。


2024年5月13日「日銀の様相が急激に変化」

 日銀が国債買い入れの減額に向け検討を本格化させていることが、9日公表した4月25、26日の金融政策決定会合の主な意見で明らかになったと、10日に時事通信が伝えた。

 たしかに4月25、26日の金融政策決定会合の主な意見をみると、明らかに様相が変わっていたことがうかがえる。

 何と比べてといえば、26日の金融政策決定会合の結果とそのあとの植田総裁の会見内容に比べてである。

 4月の決定会合は円安が進むなかで開かれていた。このため、このタイミングで日銀が無回答ということもむしろ考えづらいと私は考えていた。

 しかし、その結果は無回答であった。

 3月会合の公表文の注釈で「足もとの長期国債の月間買入れ額は、6兆円程度となっている。」とあった。この6兆円程度の数値を外し「市場の動向や国債需給などを踏まえて実施」することを強調しても良いかと思っていた。

 より柔軟な姿勢をみせることで、市場に国債買入減額修正などへの警戒感を匂わせるだけでも、円安にブレーキを掛けることも可能とみていたためである。

 4月の会合は展望レポートの発表もあり、公表文のフォーマットそのものを変えていた。このため、注釈そのものはなかった。それでは「6兆円」の存在はどうなったのだろうか。

 会合後の植田総裁会見をみていたところ、「6兆円」はそのままといった発言があったのである。これを日銀サイトにアップされている会見内容で確認してみると下記のような発言が確認できた。

 「国債買入れについて今日の決定会合でどういう議論があったかというご質問だったと思いますが、これは今日の会合では6兆円で続けるということに関して特に反対は出なかったということでございます。」

 ところが上記の時事通信の記事のなかに下記のような表現があったのである。

 同会合では、声明文から「6兆円」という購入額の表記を削除し、実際の買い入れをある程度柔軟に行えるよう布石も打った(10日付時事通信)。

 これをみて驚いた。たしかにフォーマットの変更により、注釈は消えていた。しかし、総裁会見では「今日の会合では6兆円で続けるということに関して特に反対は出なかった」と発言していたのではなかったか。

 実はこれだけでなく、9日に公表された4月25、26日の金融政策決定会合の主な意見の内容が、4月26日の総裁会見とトーンがまったく異なっていた。

 円安への警戒、国債買入減額の可能性を強く示唆するかのような内容となっていたのである。

 4月26日の総裁会見は総裁個人の意見を示す場ではない。決定会合で委員達がどのような議論を展開していたのかを総じて示す場であったはず。

 ところが主な意見を見る限り、個別の委員たちの意見は、むしろ今後の修正の可能性を示唆するかのようなものとなっていたのである。

 現実にどのような意見であったのかは10年後に公表される議事録を確認するまではわからない。たぶん議事要旨でもはっきりは確認できないのではなかろうか。

 何があったのかは何となく想像は付くが、結果としてこのような状況に追い込まれる可能性を日銀は意識していなかったのであろうか。

 4月の会合と総裁会見をみて、市場は日銀の金融政策が再び膠着化したと認識。これにより、円売りを仕掛けやすくなり、26日の総裁会見後の急激な円安を招くこととなってしまった。

 これを避けるためには、金融政策そのものを柔軟に行う姿勢をむしろ強調すべきではなかったろうか。

 後の祭りとなってしまったが、26日に「6兆円」の看板は外しており、今後の国債買入減額の可能性を匂わせ、さらに年内利上げがある可能性も示唆するなどすれば、急激な円安を抑えられた可能性もある。少なくとも日銀が円安に対して火に油を注ぐ格好となったのは避けられたはずである。


2024年5月10日「4月の決定会合の主な意見には、国債買入減額に関する意見も出ていた」

 日銀は9日、4月25、26日に開かれた金融政策決定会合の主な意見を公表した。

 物価に関する議論では、「円安と原油高は、コストプッシュ要因の減衰という前提を弱めており」とか、「足もとの円安と原油価格等の上昇が、輸入物価を通じて企業物価へ波及しつつある」など円安による影響に関する発言が目立っていたようにみえる。

 また、「金融政策運営に関する意見」では日銀の国債買入に関する意見がいくつかみられた。

 「長期国債の買入れについては、イールドカーブ・コントロール解除後の市場の状況を見ているところであるが、どこかで削減の方向性を示すのが良い。」

 「国債保有量の正常化、過剰な水準にある準備預金の適正化という観点から、日銀のバランスシートの圧縮を進めていく必要がある。」

 「国債の需給バランスを踏まえ、市場機能回復を志向し、現状6兆円程度の毎月の長期国債買入れを減額することは選択肢である。」

 こういった意見をもう少し反映させて、4月の会合での国債買入で柔軟化を進めることもできたのではなかろうか。

 日銀が保有しているETFやREITの処分の仕方にも意見が出ていた。

 「市場動向を踏まえると、保有するETFやJ−REITの取扱いについても具体的議論ができる環境になりつつあると考えられる。」

 「本行保有ETFの取扱いを検討するにあたり、その処分方法が株式市場の機能に与える影響や市場に及ぼすインパクトの大きさ等を考慮する必要がある。したがって、簡単な解決策はないが、仮に長い時間がかかっても方向としては残高をゼロにしていくべきである。」

 当然の意見ではあるものの、「残高をゼロにしていくべきである」との意見まで出せる環境になったことも確かであろう。

 4月26日の決定会合の結果だけ見ると総裁会見を含め、まったく変化なしにしかみえていなかっただけに、これらの意見がもう少し反映されても良かったのではないかと思う。それで多少なり円安にブレーキも掛けられたはずである。

 円安に関しては、内閣府から「世界経済の不確実性や円安による家計購買力への影響には注意が必要である」との意見が出ていたのには意外感があった。

 会合二日目の内閣府からの出席者が、新藤義孝経済財政政策担当大臣であり、日銀は動くなよ、とのお目付役ではなかったかと勝手に想像していたためであった。


2024年5月9日「首相は動かぬ日銀に注意を促したのか」

 日本銀行の植田総裁は7日の夕方に、首相官邸で岸田首相と会談し、為替が経済物価に与える影響などについて議論した。両者の会談は日銀が17年ぶりの利上げを決定した3月19日以来となる。

 4日に米国のイエレン財務長官は「介入の有無についてコメントするつもりはない」と述べ、「それはうわさだと思う」と話した。その上で長官は、円相場は「比較的短期間にかなり動いた」と述べ、「こうした介入はまれであるべきで、協議が行われることが期待される」と付け加えた。

 この発言を鵜呑みにすると、29日と2日がもし介入であったとすると、事前に米国サイドと協議が行われていなかった可能性がある。首相と日銀総裁の会談の背景に米国政府からの意向が伝えられていた可能性もあるのかもしれない。

 ちなみに神田財務官は、イエレン財務長官の発言について「私からコメントするのは不適切なので控える」と述べるにとどめた。

 神田財務官は、為替相場は「ファンダメンタルズに従って安定的に推移することが好ましい」と従来の発言を繰り返した。その上で、「マーケットがそのように健全に機能していれば、政府が介在する必要もなく、市場に任せればいいが、投機などによって過度な変動、無秩序な動きがある場合には、マーケットが機能していないわけで、政府が適切な対応を取らなければいけない」と語った(7日付ブルームバーグ)。

 7日のニューヨーク外為市場では、この発言を受けて円安が進んだとの見方があった。この日の米長期金利は低下していたにもかかわらず、ドル円は155円近くまで戻してきている。

 神田財務官のコメント、さらに首相と日銀総裁の会談、その前のイエレン財務長官の発言などから、今後の介入は困難になりつつあるとの読みが働いた可能性がある。

 それ以上に今回の円安の要因が金利差であり、日米の金融政策の方向性の違いが背景にある。

 日銀は3月19日にマイナス金利政策とイールドカーブコントロールを解除した。さらに次のステップは利上げであることを示していた。ただし、国債の買入については4月からの国債発行額の減額があるにもかかわらず、6兆円という数字まで出して日銀の国債保有額を維持する姿勢を何故か強く示していた。

 4月からの国債発行額の減額に合わせた日銀の国債買入の減額すら行わないのは何故なのか。日銀の頑なな姿勢が再び現れたことも、円安の動きを助長していた可能性がある。

 6兆円という数字を取るなり、国債発行額の減額に合わせた買入額の修正を行うなどすれば、日銀は柔軟に対応してくるとの読みも働き、円安にも対応してみせたということにもなったはずである。

 植田総裁は会談のあと「為替を直接のコントロール対象とはみていない」、「円安、様々な経済主体の活動に影響を与える」、「基調的な物価上昇率が動けば、金融政策上の対応が必要になる」、「最近の円安の動きを十分に注視している」、「為替レートは経済・物価に大きな影響を与える」などと発言したそうである。

 米国サイドの意向が官邸を通じて日銀にも伝えられ、日銀が何らかの対応を迫られるという可能性も出てきたように思われる。


2024年5月8日「イエレン財務長官、為替介入はまれであれと」

 米国のイエレン財務長官はアリゾナ州メサで行われた講演の後、記者団に「介入の有無についてコメントするつもりはない」と述べ、「それはうわさだと思う」と話した。その上で長官は、円相場は「比較的短期間にかなり動いた」と述べ、「こうした介入はまれであるべきで、協議が行われることが期待される」と付け加えた(5日付ブルームバーグ)。

 イエレン長官は4月25日のロイター通信とのインタビューでも、「介入がまれであることを願う。そのような介入がめったに起きず、過度な変動がある場合に限定され、事前に協議があることが期待される」と述べていた。

 4月29日の外国為替市場で日本の通貨当局が円買い介入を実施したとされる。この日は昭和の日の休日で東京市場が休場だった。ドル円は一時160円24銭と1990年以来の高値を付けた(当時の高値は160円35銭か)。長期チャートをみるとここを抜けると260円あたりまで節目らしい節目がなくなる。ユーロ円は171円60銭と2008年につけた最高値の169円77銭を抜いて、過去最高値を更新した。こちらは上値の節目がなくなった。

 市場ではドル円の160円、ユーロ円の170円を試しにきた格好となっていた。そして、29日の13時あたりでドル円・ユーロ円ともに急落となった。動きからみて介入の可能性が高い。神田財務官は介入の有無については「ノーコメント」としており、覆面介入といった格好になった。規模は5兆円を超え、2022年10月21日に実施した5.6兆円の円買い介入と同規模に匹敵する規模の介入であったとみられる。

 そして、日本時間2日早朝(5時過ぎ)の外国為替市場では、ドル円が157円台半ばから153円近くまで急落となった。こちらも介入とみられ、規模は3.5兆円程度とされている。今回の2度の介入はすでに9兆円規模もの大きさとなっているようだ。

 前回の2022年の介入時は、米長期金利がピークアウトしたようなタイミンであり、結果として順張り型の介入となったことで、それなりの効果があったようにもみられた。

 今回もそれを予期していたのかはまではわからないが、2日から6日にかけて米長期金利は低下しており、1日の4.68%から6日は4.48%に低下していた。このため、介入のタイミングとしては、特に2日は結果として効果的であった可能性がある。

 ただし、今回のイエレン財務長官のコメントからも、介入を何度も繰り返すことは難しくなることも予想される。

 日銀が動かない以上は、FRBとその動きを予測しての米長期金利の動向次第であるため、他力本願的な介入とならざるを得ない側面もある。


2024年5月7日「FOMCでは6会合連続で金利据え置き」

 FRBは1日、FOMCを開いて政策金利の据え置きを全会一致で決めた。金利据え置きは6会合連続となる。金利据え置きは予想通り。政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジは5.25〜5.5%のままとなる。

 パウエル議長は会合後の記者会見で「今年はこれまでのところ、特に確信を深められるようなデータは得られていない」と発言。「インフレに関する指標は予想を上回っている。確信を強めるまで、従来の想定よりも時間がかかりそうだ」と述べた。

 ただし、FOMCの次の動きが利上げとなる可能性は低いとも指摘し、あくまで利下げの時期を模索するような姿勢も強調していた。これに1日の米国債は反応し、10年債利回りは低下した。

 注意すべきはパウエル議長が、年内に利下げが実施される可能性が高いとのシグナルを発しなかった点かと思われる。物価の高止まりによって、年内利下げについては明確に示唆することをためらったと思われる。

 また、FRBはバランスシートの縮小ペースを減速させるとも発表した。

 6月1日から月間で最大600億ドルの米国債の縮小ペースを250億ドルに引き下げる一方、住宅ローン担保証券(MBS)の縮小ペースは月間350億ドルで維持する。

 こちらも予想通りではあったが、米国債の縮小ペース引き下げについては予想よりもやや積極的だったとの見方となっていた。


2024年5月1日「前回2022年のときの円買い介入の状況を振り返る」

 日銀が30日に公表した5月1日の当座預金残高の見通しによると、為替介入を反映する「財政等要因」による減少額が7兆5600億円だった。為替介入を想定しない市場推計と5兆円強のずれが生じており、市場では円が急変動した29日に5兆円規模の円買い介入があったとの観測が強まっている(1日付日本経済新聞)。

 介入を実施したかどうかは、5月31日に公表する4月26日〜5月29日分の合計介入額で正式に明らかになる。

 過去最大規模の介入は2022年10月21日に実施したもので、この際には5.6兆円の円買い介入が実施された。今回も同規模に匹敵する規模の介入であったとみられる。

 当時の状況を確認してみたい。

 2022年9月22日に政府・日銀は1998年6月17日以来となるドル売り円買い介入を実施した。この際には2.8兆円の外貨準備を取り崩して介入を行ったとされる。

 当日のドル円は145円台から140円台までドル円は下落したが。140円台でブレーキが掛かった。

 その後は介入警戒も残り、恐る恐るドル円は上昇してきた。介入効果は皆無ではなかったものの、結局、ドル円は介入時の水準を上回ってきた。

 10月21日のニューヨーク時間の朝方にドル円は一時151円94銭まで上昇し、32年ぶり安値を更新した。米10年債利回りが4.33%とほぼ15年ぶりの高水準をつけるなど、米国債利回りの上昇を背景とした円安となっていた。

 このタイミングで、大口の円買いドル売りが入った模様で、日本時間の21日の夜、ドル円は一時144円台まで下落した。

 日銀が公表した当座預金残高の見通しからの推計によると、この際の円買いドル売りの為替介入が5.5兆円規模に達した可能性がある。この規模は円買い介入としては過去最大となる。

 日経新聞は22日付の電子版で関係筋の話として、政府・日銀が円買い・ドル売りの為替介入に踏み切ったと報じたが、日本の財務省はコメントを避けた。つまりこのときも覆面介入となっていた。

 24日の東京時間の朝方に再び、大口の円買いドル売りが入った。ドル円は145円台に低下。こちらも覆面介入が実施された。

 米国のイエレン財務長官は24日、「日本が行った、または行ったと示唆した為替介入について私は知らない」と述べていた。


2024年5月1日「ドル円が160円を抜けたタイミングでの介入か」

 昭和の日の休日で東京市場が休場だった29日に、ドル円は一時160円24銭と1990年以来の高値を付けた。長期チャートをみるとここを抜けると260円あたりまで節目らしい節目がなくなる。

 ユーロ円は171円60銭と2008年につけた最高値の169円77銭を抜いて、過去最高値を更新した。こちらは上値の節目がなくなった。

 市場ではドル円の160円、ユーロ円の170円を試しにきた格好となり、日本の当局の動きを探ろうとしたような動きとなった。

 市場介入を行うかどうかは財務省が決定し、日銀が売買を行う。介入の有無は財務大臣の了承を得た上で、財務官がタイミングを判断して指示し、実行部隊が日銀となる。

 ドル円とユーロ円が節目を抜けたあと、29日の13時あたりでドル円・ユーロ円ともに急落となった。動きからみて介入の可能性が高い。

 神田財務官は介入の有無については「ノーコメント」としており、覆面介入といった格好になった。

 ドル円は一時155円台に急落(ドル安円高)、その後157円台に戻ったあたりで、16時頃に再度まとまったドル売りが入り、ドル円は16時半ごろに154円50銭近辺まで下落したのである。

 ユーロ円も同様に29日の10時半あたりに171円60銭の高値を付け、13時と16時に急落し、165円60銭と6円もの急落となっていた。

 動きからみて介入であった可能性は高い。チャートも当然意識されていたと思われる。しかし、円安の根本的な原因が解消されない限りは、介入だけで円安にブレーキを掛けることには無理がある。

 米国の景気の底堅さや物価の粘着性によって、FRBの利下げ観測が後退し、それが米長期金利を上昇させている。

 それに対し日銀は再び柔軟性を失ったかのような状態に戻ってしまった。

 日銀は利上げにはまだ時間が掛かっても、国債の買い入れを4月からの国債減額分ぐらいは減少させても、国債需給にはさほど影響は出ないであろう。

 国債買入の減額の可能性を市場に示すことで、過度な円売りにブレーキも掛けられたはず。どうしてそれをしなかったのか。いやできなかったのであろうか。


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