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21日に金(ゴールド)価格が大きく下落した。国際指標のニューヨーク先物は21日、前日比250.3ドル安い1トロイオンス4109.1ドルまで下落した。1日の下落幅としては過去最大となった(22日付日本経済新聞)。
右肩上がりの上昇となっていた金価格だが、ニューヨーク金先物価格は8月下旬あたりから上昇基調を強めた。
10月に入ってから上昇ピッチが加速し、7日に1トロイオンス4000ドルを突破し、20日に1トロイオンス4398ドルまで上昇し、ここが目先の高値となった。
この流れを受け、国内の取引価格も大きく値下がりした。田中貴金属工業が22日朝に公表した金1グラムあたりの小売価格は前日より1540円安い2万1830円となった。
国内の小売価格は8月に入り6000円近く上昇、21日に2万3370円と最高値をつけていた。
21日の金価格の下落について、何かしらの具体的な材料が出たわけではない。
ここにきての金価格の上昇を受けて、やや投機的な買いポジションが膨らんだことで、そのポジション解消売りが入ったのではないかとみられる。
21日は銀(シルバー)や白金(プラチナ)など他の貴金属も大きく下げた。
金の上昇が予想外に続いたことで、やや出遅れて上昇してきた銀(シルバー)や白金(プラチナ)にもやや投機的な買いが入っていた可能性がある。
世界を取り巻く状況が大きく変わってきているわけではない。中東情勢についてもまだ楽観的になれず、ウクライナ情勢も同様である。
金の価格上昇は、まさにリスク回避の動きであるとみている。
値上がり益を享受するための投機的な買いも遅れて入っていたとみられるが、値上がりの根幹を支えているのが各国中央銀行などであり、これは投資目的ではないはずである。
世界的なリスクが継続する限りにおいて、金そのものの需要が後退するとは考えづらい。
投資や投機ではなく、リスク回避を目的とした金への買いは今後も継続するものとみられる。金の買いを促してきた安全資産としての位置づけに変わりはない。
日本銀行は、今月の金融政策決定会合で急いで利上げをしなければならない情勢にはないものの、12月を含めた早期利上げの環境が整いつつあるとみている。複数の関係者への取材で分かった(21日付ブルームバーグ)。
この複数の関係者とは、事情に詳しい複数の関係者かとみられる。
前回の利上げが今年1月であったことで、10月30日に利上げをしても、急いで利上げをすることにはならないと思うが、「新政権発足直後であり」という前提条件を付ければ意味が通るか。
関係者によると、最大のリスク要因である米関税政策の内外経済への影響は、顕在化が後ずれしており、もう少しデータや情報を見極めたいとの声が日銀内にある(21日付ブルームバーグ)。
やや慎重になりすぎてはいないか。結果として、もう少し、もう少し、と先送りしているようにも思えるのだが。
米政府機関の閉鎖で米国の実体経済の動向が把握しづらくなる可能性や、関税を巡る米中対立の行方も懸念されるという(21日付ブルームバーグ)。
米政府機関の閉鎖については、米国家経済会議(NEC)のハセット委員長は20日の米CNBCの番組で、米政府機関の一部閉鎖は今週中に終わる可能性があると語っていた。
これが本当かどうかもかなり不透明であるが、早めに終わってほしいことに変わりはない。関税を巡る米中対立の行方やウクライナの行方も先行き不透明感が強いことも確かである。
もっとも、こうした材料は現時点で日銀のシナリオに変更を迫るものではなく、新たに示す経済・物価見通しも現行から大きな変化はない見込み。経済・物価は日銀の見通しに沿って推移しており、目標実現の確度は着実に高まっているという(21日付ブルームバーグ)。
日銀内には、政策委員が利上げという方向性で一致している中で、あとはタイミングの問題だとの声もあるそうだが、まさにタイミング次第だと思う。
トランプ大統領の来日も控え、このタイミングでの利上げはここにきての円安にブレーキを掛ける意味でも効果的ではないかと思うのだが。
ただし、発足して間もない高市新政権とのコミュニケーションをしっかり行ってからのほうが良いとも考えたのかもしれない。
21日に予定される首相指名選挙で高市氏が出される可能性が出てきたことで、国内政局の不透明感の後退とともに、高市トレードの復活も意識されて、20日の東京株式市場では日経平均は49000円台に上昇してきた。
これに対して20日の債券市場では、積極財政への懸念よりも、新政権発足で政局が落ち着けば日銀が利上げしやすくなるとの見方から、中期ゾーン主体に売られた。
日銀の高田審議委員が講演で、利上げに向け機が熟したと述べたこともあり、あらためて早期利上げ観測が再燃したような格好となった。
高市氏は昨年の総裁選では、「金利をいま上げるのはアホやと思う」という発言があったこともあり、自民党総裁選で高市氏が総裁に選ばれたことから、市場ではいったん早期利上げ観測が後退した格好となった。
今回の総裁選では高市氏から日銀の利上げについて直接触れた発言はいまのところない。
物価対策そのものが大きな課題となるなか、物価抑制要因、円安抑制要因となる政策金利の引き上げについて、極めて否定的な見解をすることは憚られる。
自民党総裁選で大きな影響力を発した麻生副総裁、さらに鈴木自民党幹事長などは日銀の利上げについては否定的だとは思えない。
今回連立を組む、維新の会についても利上げについて否定的なコメントはいまのところみられていない。
これを書いている段階でまだ首相指名選挙は行われていないが、高市氏が首相に就任するとすぐに組閣人事に着手すると予想される。
日銀の動向に影響力のある財務相人事について、片山さつき氏の名前が挙がった。
片山さつき氏は2024年4月のロイターとのインタビューで追加利上げは「急がないほうがいい」と語ったことがあった。
それでもトランプ米大統領の来日も控えていることもあり、日銀の利上げに向けた調整が今後進んできてもおかしくはない。
すでに9月の決定会合で、利上げを主張して現状維持に反対した田村審議委員と高田審議委員の講演が行われた。
田村審議委員は利上げを判断するべき局面にきていると発言、高田審議委員が講演で、利上げに向け機が熟したと述べた。
G20における植田総裁の会見をみても、10月29、30日までに揃うデータ次第では利上げの可能性を示していた。
高市氏を取り巻く環境下では日銀の利上げに真っ向から反対はできないとみられることもあり、日銀は30日の決定会合にて政策金利0.75%への引き上げを行う可能性は依然として高いとみている。
石破氏の後任となる第104代首相が21日から始まる臨時国会で指名される。
首相(内閣総理大臣)は、国会議員の中から国会の議決で指名する、と憲法67条に定められている。衆議院、参議院では、それぞれ記名投票を行って、指名する議員を選ぶ。それが「首相(首班)指名選挙」となる。
1回目の記名投票で過半数を得た議員がいなければ、上位2人の決選投票が行われ、多数票を得た議員を選出する仕組み。
衆院と参院で異なる議決となった場合は、両院協議会を開き、そこでも意見が一致しなければ、衆院の議決が国会の議決となる。
21日に予定される首相指名選挙の1回目の投票で自民党の高市早苗総裁が第104代内閣総理大臣に選出される可能性が出てきた。
衆議院で自民党は196議席。連立協議が正式合意に近づいている日本維新の会の35議席を合わせても、231議席で、数の上では野党勢力を上回るものの、過半数の233議席にまだ2議席足りない。
しかし、保守系無所属の議員なども入れると、1回目の投票で過半数となる可能性もある。
結果として連立を離脱した公明党と組んでいたときよりも、維新との連立が可能となれば数の上でも過半数に近づくこととなり、まさに結果オーライということになる。
20日の東京株式市場で日経平均は反発し一時、前週末比1200円超高の48700円台まで上昇した。
米地銀のフィフス・サード・バンコープが17日に発表した2025年7〜9月期決算を受けて、米地銀の信用不安に対する問題がひとまず一服したと捉えられた。
トランプ米大統領は17日に放映された米FOXビジネスのインタビューで、対中関税の大幅な上乗せについて、持続可能ではないとの認識を示した。
これらが好感されて17日の米国株式市場でダウ平均は238ドル高、ナスダックは117ポイント高となり、これを受けて20日の東京株式市場も買いが先行した。
それとともに国内政局の不透明感の後退というか、高市氏の指名の可能性が高まったことによる高市トレードの復活も意識された可能性がある。日経平均は5万円が見えてきた。
ドル円も上昇し、151円台を一時、回復している。
10月に募集される(募集期間10月6日から31日)個人向け国債の3年固定、5年固定、10年変動の利子がすべて1%超えとなった。3つともに1%超えは初となる。
固定3年の利率は1.08%(税込み)と、2010年7月の発行開始以来、最も高い水準を更新してきた。
固定5年の利率は1.22%(税込み)となり、2008年7月発行の1.22%に並んだ。
10年変動利付の利率が1.08%(税込み)と2006年7月の1.10%以来の高い水準となった。
個人向け国債の利率が上昇してきたのは、日銀が金融政策の正常化に乗り出し、政策金利を引き上げ、それとともに国債利回りも上昇してきたことによる。
10年国債の入札日である10月2日に向けて、10月29、30日の日銀金融政策決定会合での追加利上げ観測が強まったことで、中長期の国債利回りが上昇してきた。
消費者物価指数は2%を超える状態が続き、実質金利はマイナスの状態となるなか、日銀の利上げは継続すると予想されており、年内にも政策金利をどこかのタイミングで0.75%に引き上げると予想されている。
ただし、その後やや状況が変わってきた。
10月4日の投開票の自民党総裁選で高市早苗氏が勝利したためである。
昨年、「金利をいま上げるのはアホやと思う」と発言していた高市氏だけに、日銀の早期利上げ観測が急速に後退したと認識された。
その後、10日の15時半過ぎに公明党の連立離脱が伝わると再び情勢が変わってきた。
21日に招集される臨時国会の首相指名選挙で、高市氏が選出されるかどうかも不透明となり、与野党の駆け引きが激化してくるとみられている。
これを受けて市場では10月29、30日の0.75%への利上げは難しいとの見方も強まりつつある。
今月の個人向け国債は購入のタイミングとしては面白いのではないかと思う。
日銀の利上げ観測が強まるなかでの、国債利回り上昇のタイミングで、発行条件が決められていたためである。
個人向け国債には1年経てば財務省が額面で買い取るなど、国債にもかかわらず流動性リスクや価格変動リスクがない。
その分、一般の国債に比べて金利はやや抑えられるが、さすがに1%台となれば、個人投資家の食指も動いてくるのではなかろうか。
今後も金利は上がり続けると予想しており10年変動をお薦めしていたが、今回は3年固定も魅力的に映る。個人の場合、期間の短い方が好まれる。
10月発行分では5年固定の発行額が3年固定や10年変動に比べてかなり多くなったが、10月募集の11月発行分では、3年固定もかなり発行額が増加してくる可能性がある。
米地銀のザイオンズ・バンコーポレーションやウエスタン・アライアンス・バンコープが融資に不正があったとして借り手を訴えていることが明らかになった。
ウエスタン・アライアンス・バンコーポレーションが16日、米証券取引委員会(SEC)に提出した資料によると、商業用不動産ローン債権について借り手の不正を発見したため、8月に訴訟を提起したという。
同様にSECに提出した資料によると、ザイオンズ・バンコーポレーションは傘下のカリフォルニアバンク&トラストの融資に関連し「明らな虚偽表示や契約上の不履行」を発見したとして、借り手を訴えているという。
16日の米国市場では、地銀の不良債権が拡大している可能性が意識され、リスク回避から米債は買われ、米10年債利回りは3.97%と4%割れとなった。
米国株式市場では、銀行業界の健全性を巡る懸念から金融株全般が売られ、ダウ平均は301ドル安となった。
ドルも下落し、ドル円は150円近くまで下落した。
9月に米自動車部品メーカー、ファースト・ブランズ・グループと自動車ローン事業者のトライカラー・ホールディングスが相次ぎ経営破綻した。
どちらも債務の実態が分かりづらく、債権者に思わぬ損失が発生するリスクがくすぶっている。
両社とも複雑な形態の融資が明らかになり、投資信託として市場で売買されている代表的な融資ファンドの株価が大きく下落していた。
「ゴキブリが一匹いたらおそらくもっとたくさんいるだろう」とJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は14日の決算説明会で、自動車関連の破綻に触れ、問題は氷山の一角だと警告を鳴らしていた(17日付日本経済新聞)。
ただし、ファンド融資を手掛けるファンド大手の幹部からは「過剰反応」との反論が相次いだそうである。
リスクが見えづらいといえば、2008年9月のリーマンショックを引き起こしたサブプライムローン問題を思い起こす人も多いのではなかろうか。
今回の米地銀の問題があらたな金融不安を起こすのかどうかはわからない。しかし、当面はしっかり見守っていく必要はあるかもしれない。
日本のバブル崩壊を持ち出すまでもなく、日欧米の株価が史上最高値を更新するなどしているなかにあって、リスクは突然やってくる可能性がある。
1985年10月19日に東京証券取引所において、日本で最初の金融先物取引となった長期国債先物取引市場が創設されてから、まもなく40周年を迎える。
私は当時、証券会社の債券部に所属していた。日本初のデリバティブ取引がはじまると聞いて強い関心を抱いた。
上場を前にまだ少なかった関連書籍を購入して読みあさり、有給をとって東証主催のセミナーなどにも出席した。
当時は債券部の事務方にいたことで、直接の売買はできなかった。
ただし、会社のシステムでは債券先物の事務処理等を行う予定はなかったことで、それならばそのシステムを構築しようと勝手に動いた。
何故か当時の債券部にはオフコンと呼ばれたコンピュータがあり、それを使って売買処理やポジション管理、チーペスト算出などの処理を行うシステムを上場に向けて一人で構築したのである。
結果としてそれが利用されることになった。
長期国債先物が上場した年、1985年といえばつくば科学万博開催、NTT民営化などとともに、プラザ合意を思い浮かべる人がいるかと思う。
プラザ合意とは、1985年9月22日にニューヨークのプラザホテルで秘密裏に開かれた会議である。
G5と呼ばれた国(日本、アメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ)の蔵相・中央銀行総裁が集まり、アメリカの貿易赤字と財政赤字の双子の赤字問題を是正するため、ドルを引き下げる方向で合意した。
プラザ合意が発表される前のドル円相場は1ドル242円であった。そして、合意発表後に開いた23日のニュージーランド市場では1ドル234円程度まで円高ドル安が進行したものの、大蔵省と日銀が必死の努力でドルを売り、口先介入などを行っても、そこからなかなか進まなかった。
そこで日銀は10月25日に短期金融市場を操作して第二の公定歩合といわれた短期金利の高め誘導を実施した。短期金利を高くすることで、ドル売り・円買いの動きを誘ったのである。日銀のオペで2か月物の手形レートは0.5625%上昇して7.125%となり、コールレートも上昇した。
債券先物にとってこれは最悪のタイミングであった。
短期金利を無理やり上げたことで長期金利にも上昇圧力が加わり、債券が売られる展開となったのである。
債券先物市場に大量の売り注文が殺到。そうでなくても債券はスタートしたばかりであり、ご祝儀による大量の買いポジションを抱える証券会社が多かった。売りが売りを呼ぶ展開となり2日間値がつかないという大混乱となったのである。
1985年10月24日の債券先物は101円63銭で引けていた。25日、26日は値が付かず、ストップ安で張り付いたままとなった。28日にようやく96円63銭で寄り付いたものの、その後も下げて、11月14日に安値89円82銭を付けて、ようやく底入れしたのである。実に12円近い下落である。
これを受けて多くの債券ディーラーが痛手を受けた。
私の所属していた債券部のディーラーもその一人となった。その結果、上場してから1年後、1986年10月にそのディーラーに代わって私が晴れて債券ディーラーとなることになったのである。
その後、約15年間は債券先物や10年国債を中心に売買をする債券ディーラーとして、その後は金融アナリストととして債券先物を中心とする債券市場をずっとみてきた。
波乱の1980年代は面白かった。1990年代の金利上昇もあった。いわゆるバブル崩壊後の金利低下。1989年末の運用部ショックで一時跳ね上がった長期金利は、その後は低迷することになる。
2022年4月あたりからの物価上昇によって、長期金利もやっと目覚めてきた。
特に超長期国債の利回りは15日の20年国債でみると1999年あたりの水準を回復してきたのである。
長期金利もやっと1.7%あたりまで上昇してきた。金利は復活しつつあり、債券の市場規模そのものは大きくなっているが、債券先物の動きからはまだダイナミックさは感じない。
日銀の利上げペースが極めて緩やかなことも影響していると思う。果たして物価水準からみて、中長期の金利もこのまま押さえ込めることが可能なのかという疑問も残る。いずれ債券先物も昔のダイナミックな動きをみせてくるのではないかと思う。
14日に金(ゴールド)や銀(シルバー)価格がそろって最高値を更新した。
金価格の国内指標となる田中貴金属工業が14日午後2時に公表した小売価格は前週末比755円高い1グラム2万2463円を付けた。2万2000円台は初めてとなる。
金価格の国際指標となるニューヨーク先物(中心限月)は14日アジア時間の取引で、一時前日比57.9ドル高の1トロイオンス4190.9ドルを付けて最高値を更新した。
銀価格も14日アジア時間、ロンドン現物価格が前日比1.26ドル高の1トロイオンス53.6ドルに上昇し最高値を更新した。
高騰する金(ゴールド)が人気を集め、貴金属店の店頭で品薄になっている。とりわけ50グラム以下など小さなサイズの地金は生産が追いつかず、一部の店舗では販売を中断している(15日付日本経済新聞)。
田中貴金属などの買取店は、買取金額が200万円超である場合は、住所、氏名、個人番号(マイナンバー)と取引内容を記載した支払調書を税務署に提出する義務がある。
支払調書提出の対象は、金地金、プラチナ地金、金貨、プラチナコインの売却取引、および純金積立(金・プラチナ)の現金化取引となる。銀地金や貴金属ジュエリーなどの売却は対象外(田中貴金属のサイトより)。
金価格は1グラム2万円を超えている。つまり、100グラムだと200万円を超えてしまう。田中貴金属などでは100グラム以下の単位が50グラム、20グラム、10グラム、5グラムとなり、50グラム以下など小さなサイズの地金のニーズが高まっているとみられる。
金を売却して利益が出た場合、主に「譲渡所得」として課税対象になる。損失が出た場合には課税されない。
譲渡所得の総合課税となり、他の金融商品のように分離課税ではないことに注意が必要となる。
所有期間が5年超かどうかで計算方法が変わる。
5年以内であれば、売却価格ー(取得費+譲渡費用)−特別控除(50万円)
5年超であれば、上記譲渡所得×1/2が課税譲渡所得となる。
所得費としてレシートや領収書、購入履歴などで証明できるものが必要となる。取得費が不明な場合は「売却価格の5%」を取得費とみなされてしまうことがあり、大幅に税額が増えることがある。
譲渡費用とは売却にかかった手数料や査定費用、配送料などが該当する。
10月4日投開票の自民党総裁選で高市早苗氏が勝利した。
その際の債券市場における高市トレードとしては日銀の早期利上げ観測が後退し、現物債は中期ゾーンが買い進まれた。10月利上げをかなり織り込んで推移していたことで、その反動の利回り低下、つまり価格は上昇した。
財政拡大路線をとる高市氏だけに、債務悪化が強く意識されて、海外投資家が売買の主流となっている超長期国債と呼ばれる20年、30年、40年の国債の利回りは急上昇した(価格は急落)。
自民党総裁選で高市氏が勝利した場合には、公明党が連立から離脱するのではないかとの観測も強まっていた。
高市氏はそれを回避できるとみていたのか、10日の自民党と公明党の1時間半の党首会談後の高市氏の顔はかなりこわばっていた。15時半過ぎに連立離脱が伝えられると、15時45分まで動いていた日経平均先物がさらに下落した。
20日か21日にも予定されている招集される臨時国会で、首班指名が行われる。首班指名は、1回目の投票で過半数を取る者がいなければ、上位2名の決選投票となる。決選投票では過半数を取れなくても、投票数が多い方が総理大臣となる。
衆議院の現状の勢力は、自民党196、立憲民主党148、日本維新の会35、国民民主党27、公明党24、その他となる。
立憲民主党、日本維新の会、国民民主党で合わせて210となり、決選投票でもし野党連合としての玉木票として結集すれば自民党の196を上回る。
本当にその可能性はあるのか。
高市氏が首相となれば、市場はある程度いったん織り込んだ動きをしたが、さらなる注目点は財務大臣が誰になるかということになろう。
債務拡大、日銀の利上げブレーキ色が強まるとなれば、中期ゾーンと超長期ゾーンが引き続き異なった動きとなることが予想される。
玉木氏が首相となった際もやはり財務大臣が誰になるのかひとつのポイントとなる。もし立憲民主党の野田代表あたりが財務大臣となれば、債務拡大にブレーキが掛かり、日銀の利上げが進められる可能性はある。
現状はまったく先が読めない。
確率からは自民党の数をみても高市氏の可能性は高いのかもしれない。しかし、ここにきての動きはそれを阻止してくる可能性も意識させる。
海外ではイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦合意と、歴史が動いている、日本の政治の歴史の上でも大きな転換点を迎える可能性もある。いずれにしても債券市場は政治に翻弄されそうである。
昨日の東京株式市場で、日経平均の引けは491円安の48088円となっていた。しかし、東京市場の15時半の取引終了後、公明党の連立離脱が伝わると15時45分まで大阪取引所で取引が続いていた日経平均先物の売りが膨らみ、当日の引けは前日比1180円安の47620円と大幅な下落となった。
公明党離脱ショックといった様相となったが、ここにあらたなショックが追加された。
中国商務省は9日に一部のレアアースや関連技術などの輸出規制を発表していた。これを受けてトランプ大統領は自身のSNSに「11月1日から中国に対し、現在の関税に上乗せして100%の関税を課す」と記した。
ノーベル委員会は10日、2025年のノーベル平和賞をベネズエラの野党指導者マリア・コリーナ・マチャド氏に授与すると発表した。世界は、受賞を逃したトランプ氏がこの結果をどう受け止めるかにも注目していた。
米国による対中関税の大幅な引き上げとそれに伴う両国の関係悪化が懸念され、リスク回避の買いから米国債券市場では米債は買い進まれ、米10年債利回りは4.03%と前営業日の4.14%から低下した。欧州の国債は米債同様に、リスク回避の動きとなって総じて買われた。
米中関係悪化への警戒が広がったことから、昨日の米国株式市場は大幅な下落となった。突然のトランプ氏の投稿に市場は大きく反応した。下げが大きかったのはAI関連や半導体株となった。米中貿易摩擦が収益の逆風になるハイテク株などを中心に幅広い銘柄が売られたのである。
主要株価指数が過去最高値圏で推移していたこともあり、利益確定売りなども入りやすかった。10日のダウ平均は続落となり878ドル安、ナスダックは820ポイント安となった。
公明党連立離脱ショックに加え、トランプ関税ショックが重なったことで、ナイトセッションの日経平均先物(11日朝6時まで)は、2420円安の45200円となった。10日の15時半の日経平均が48088円となっていたことから、3000円近くの下落となる計算に。
さらに公明党の連立離脱は予想以上に自民党に影響を与えかねない。
自民党の高市総裁と公明党の斉藤代表は10日、国会内で会談した。ここで「政治とカネ」の問題に対する考え方の溝が埋まらず決裂。斉藤氏は連立離脱の方針を伝えた。記者会見での高市氏の様子からもかなりショックを受けた様子が窺えた。
ただし、自民党総裁選で高市氏が予想外の勝利を収めた際に公明党の連立離脱の可能性はかなり意識されていたはずである。高市氏がもしそれを予想していなかったのであれば、それも予想外の出来事となる。
26年もの間続いた自公の協力体制解消は、日本政治の大きな転換点となる可能性が強まった。早ければ20日に召集される臨時国会の首相指名選挙で、高市氏が選出されるかどうかも不透明となり、与野党の駆け引きが激化してくるとみられている。
28日に予定されている日米首脳会議でのトランプ大統領の相手になるのは誰なのか。高市新総裁への期待から株式市場では「高市トレード」と称して株高・円安の動きとなった。
4日投開票の自民党総裁選で高市早苗氏が勝利した。これを受けての週明け6日の日経平均の引けは2175円高の47944円となり、最高値を更新した。その後も買い進まれて10日には一時、48510円まで上昇していた。
しかし、今回のダブルショックによって日経平均先物は45200円に下落しており、これは高市トレード前の3日の日経平均の水準(引けは45769円)を下回っている。高市トレードで上昇した分が完全に剥げ落ちた格好となった。
13日の東京株式市場はスポーツの日の祝日で休場となるが、大阪取引所での祝日取引は実施されるため、ここでの日経平均先物の値動きにも注意したい。
米有力シンクタンク、ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長は9日、一部記者団に対し、自民党の高市早苗総裁が首相に就任すれば、積極的な財政政策を推進し、いずれ市場の動揺を招く恐れがあるとして懸念を表明した(10日付時事通信)。
ポーゼン氏は「自民党主導の連立政権がトラス・モーメント(トラスの瞬間)を防げるとは思えない」と指摘したように、2022の英国でのトラスショックの二の舞となることへの懸念を表明した格好となる。
あらためてトラス・モーメントとも称されるトラスショックを確認したい。
ジョンソンの党首辞任を受けて行われた保守党党首選挙で勝利し、2022年9月6日に首相に任命されたのがメアリー・エリザベス・トラス氏であった。英国で3人目の女性首相で、女王エリザベス2世に任命された最後の首相でもあった。
トラス英政権は1972年以来の大規模な減税を打ち出した。クワーテング英財務相は不動産購入時の印紙税を削減。個人や企業が直面する光熱費の高騰に対し、今後6カ月間で600億ポンド(約9兆5000億円)を拠出して支援することを確認。
高額所得者に対する45%の所得税最高税率を廃止し、基礎税率も20%から19%に引き下げる。ロンドンの金融街シティーに対する規制自由化も約束し、バンカーの賞与制限は撤廃する。
英債務管理庁(DMO)は23日、2023会計年度(2022年4月〜2023年3月)の国債発行額が1939億ポンドに増額されると発表。4月時点では1315億ポンドを計画していた。
イングランド銀行は22日に0.5%の利上げ決定を発表し、保有する英国債の市場での売却を始めると発表した。
これを受けて英国債は22日に10年債利回りは3.49%と16日の3.31%から大きく上昇していたが、トラス政権の1972年以来の大型減税と国債増発を受けて、火に油が注がれた格好となった。
23日のロンドン市場では英国債の利回りが急騰した。2年債利回りは前日より一時、0.4%あまり上昇して4%を上回り、2008年10月以来約14年ぶりの水準となった。政府債務増への懸念とともに、減税策がインフレをさらに加速させかねないとの懸念も強まったのである。
これをきっかけに英国の10年債利回りだけでなく、米国債の利回りも上昇圧力も加わった。これについて「債券自警団」が戻ってきたと表現する向きもあった。英国の10年債利回りも、一時4%を超えてきたのである。
このままでは英国の年金基金が破綻しかねない危機的状況となり、イングランド銀行(英中央銀行)は28日に国債市場の急落を防ぐため、英国の長期国債を無制限で購入すると表明した。
これを受けて市場の連鎖的不安は沈静化したが、トラス政権も減税策の大部分を撤回せざるを得なくなった。結局、発表から1か月も経たないうちにトラス首相は辞任に追い込まれ、在任わずか44日という英国史上最短の政権に終わっている。
米国における金取引価格は再び過去最高値を更新し、初めて1トロイオンスあたり4000ドルの大台を突破した。
金価格が今年に入り大きく上昇した背景には、トランプ関税を巡る世界貿易の不透明感に加え、FRBの独立性への懸念や米国の財政への懸念などがある。
また、ロシアによるウクライナ侵攻や、イスラエルによるガザ進行などにより、地政学的緊張が安全資産としての金への需要を押し上げている、
多くの中央銀行が金の購入を継続しており、こちらも金価格を押し上げている。
目先の材料としては米国の政府閉鎖、雇用市場の悪化、持続するインフレの中で金の需要が強まっている。
国内での金の価格も上昇している。国内価格の指標とされる田中貴金属工業の店頭小売価格は、8日午前9時半の時点で前日より1グラムあたり2万1500円を突破していた。
田中貴金属が運営する銀座の店には、購入者が殺到しており、予想を超える売れ行きに製造が追いつかず、田中貴金属は小型の金地金の販売を一時停止しているとの報道もあった。
金価格の推移をみてみると2022年あたりからの上昇となり、ここにきて上昇ピッチを早めている格好となった。
2022年といえばロシアによるウクライナ侵攻が大きな要因となって、世界的な物価上昇を引き起こした年である。
地政学的リスクの増大とともに、インフレが金への需要を押し上げた。
さらに米国のトランプ政権の関税策が世界貿易への不透明要因となるとともに、これによる米国内での物価上昇への懸念も相まってのリスク回避による金への需要もあった。
国内では2022年4月以降、消費者物価指数は前年比で2%を超す上昇が続いており、そこに円安なども重なっての、金への需要が強まったものとみられる。
やや投機的な動きのようにみえるが、それだけ需要が高まっていることも確かかと思われる。
このリスク回避の動きはやはり無視はできないと思う。世界的に株価も上昇しているが、リスク回避の動きとリスクを取る動きが共存しているといえる。
これが何を示しているのか。いまのところ具体的なものは見えてこないが、不安と期待が入り交じっているような状況なのであろうか。
7日のニューヨーク外国為替市場で、ドル円は一時、152円台を付けてきた。152円台をつけるのは2月中旬以来、約8か月ぶりとなる。
いわゆる高市トレードとなり、自民党の高市早苗総裁が重視する積極的な財政・金融政策への警戒から、円が売られた。
ドル円の次の目安は今年1月に付けた158円台となる。こちらはまだ距離がありそうにみえるものの、このまま円安の勢いが付くと意外に早く付けてくる可能性がある。
その先行指標ともなりそうなのが、ユーロ円となる。対ユーロでも円安が進んでおり、ユーロ円は177円台を付けてきたことで、円ユーロに対して史上最安値を更新した。
ドル円の直近のピークは2024年6月に付けた161円95銭近辺となる。
ユーロ円の直近のピークは2024年7月に付けた175円40銭近辺であったが、こちらはここを抜けての円としての過去最安値の更新となっていた。
このためドル円も158円を抜けて160円台を目指す動きとなってもチャート上はなんら不思議ではない。
ちなみにポンド円をみてみると、足元204円台となり、2024年7月に付けた208円台が視野に入ってきている。
円がほぼ全面安の展開となってきているが、この背景のひとつに、日銀による10月29、30日の決定会合における利上げ観測の後退がある。
となれば、この円安にブレーキを掛けるには、介入などよりも早期利上げ観測の回復も必要となるのではなかろうか。
日銀の利上げ路線に変更はない以上。あとはタイミング次第ということになる。
円安を放置してもかまわないというのであれば、対策は必要ない。しかし、放置できないのであれば、最も手っ取り早い策は、日銀に早期利上げを促すということになるのではなかろうかと思うのだが。
当然ながら円安は物価上昇の要因ともなる。政府にとっての重要課題のひとつが物価対策ではなかったか。
4日投開票の自民党総裁選で高市早苗氏が勝利した。これを受けての週明け6日の債券市場における高市トレードの様子を振り返ってみたい。
10月6日の15時現在の債券市況
長期国債先物2025年12月限(日中)
寄136円50銭、高136円63銭、安135円83銭、引135円90銭(-1銭)出来高 26155億円
現物債
2年477回 0.895%(-0.045%)、0.890〜0.905%
5年180回 1.190%(-0.030%)、1.170〜1.200%
10年380回 1.670%(+0.010%)、1.655〜1.675%
20年193回 2.690%(+0.080%)、2.670〜2.695%
30年87回 3.280%(+0.130%)、3.275〜3.290%
40年18回 3.515%(+0.135%)、3.510〜3.550%
長期国債先物(以下、債券先物)については、買い戻しが先行し前日比59銭高の136円50銭で寄り付いた。
これは昨年、「金利をいま上げるのはアホやと思う」と発言していた高市氏だけに、日銀の早期利上げ観測が急速に後退したと認識されての債券先物の買い戻しとなった。
日銀の政策金利の影響を受けやすい中期ゾーンも買い進まれた。10月利上げをかなり織り込んで推移していたことで、その反動の利回り低下、つまり価格は上昇した。
これに対して、財政路線をとる高市氏だけに、債務悪化が強く意識されて、海外投資家が売買の主流となっている超長期国債と呼ばれる20年、30年、40年の国債の利回りは急上昇した(価格は急落)。
本来であれば債券売買の主流となるはずの債券先物や10年国債については、イールドカーブ上のツイスト・スティープの支点のようになってしまい、債券先物の引けは1銭安。10年国債の利回りは0.010%の上昇に止まった。
6日の夕刻に10年国債の利回りは1.680%に上昇した。そして7日には1.695%と、2008年7月以来、約17年ぶりの水準に上昇している(7日10時30分現在)。
こちらは売られていた超長期債に引っ張られたことや、7日の30年国債入札への警戒感なども影響したか。
さらに高市早苗自民党総裁の経済ブレーンの1人とされる本田悦朗元内閣官房参与が、日銀の利上げ時期に関して、今月の金融政策決定会合は難しいとする一方、12月会合の可能性はあるとの見解を示したことも影響か。
個人的には日銀が10月29、30日に利上げをする可能性はありうるとみている。キーとなりそうなのは円安とともに、28日の日米首脳会談の予定となる。
別に外圧とかを意識しているわけではないが、このタイミングで利上げをしておいたほうが良いと考えている。今後の利上げはまさにタイミングが重要だと思っているためである。
4日投開票の自民党総裁選で高市早苗氏が勝利した。 選挙は水物と言われるが、小泉優勢かとみられていたものの、麻生氏の働きかけもあり、高市早苗氏が勝利となった。
自民党の高市総裁は5日、党役員人事などの調整を本格化させ、幹事長に鈴木俊一総務会長を起用する方針を固めた。
これを受けての6日の東京市場では、まず為替が動いた。朝方にドル円は149円台に上昇した。先週末の147円台から2円以上の上昇(円安ドル高)となった。
積極財政を掲げる高市氏の勝利を受けて、幅広い通貨に対して円売りが膨らんだ。高市氏の勝利で日銀が10月に利上げに動くとの観測が後退したことも円売りドル買いにつながったとの見方もある。
東京株式市場では日経平均先物が48000円台を付けてきた。さすがに日経平均の寄り付きははそこまでの上昇とはならなかったものの、結局、初の47000円台を付けてきた。
これらの動きを見る限り、2012年のアベノミクスの登場時の動きを彷彿とさせる。ただし、注意すべきは当時はいろいろと状況が異なっている点である。
2012年のアベノミクスの登場時はアベノミクスそのものが円安株高とさせたと認識している人も多かったかもしれない。しかし現実には欧州の信用不安の後退で、米国株式市場などがすでに回復基調となっていたタイミングであった。
リスクオフの反動が起きつつあったところにアベノミクスが登場し、ヘッジファンドなどが円売りドル買い、日経平均先物買いなどを積極化させた。いわは安値にあったものが通常値に戻るといった動きとなっていた。
これに対して今回は高値にあったが、地合そのものの良さもあり、さらに高値を目指すといった動きであり、こちらはバブル時の価格形成に近い。
そして、アベノミクスの登場時との最大の違いは物価の状況にある。
アベノミクスの目的は物価上昇にあったが、その物価はすでに消費者物価で2022年4月以降、今にいたるまで2%を超えている。
それにより金利そのものも回復し、国債の炭鉱のカナリアとしての機能も回復しつつある。
特に超長期国債は生保に代わって海外勢の保有、売買高が増加しており、債務状態などに敏感になっている。
注意すべきは、円安がさらなる物価上昇を招くとともに、ドル高を望んでいない米政権の存在となる。
高市氏はいまのところ日銀の利上げについては直接、言及していない。自民党総裁選でも争点等にはなっていない。
すでに物価に応じた政策金利水準にあるならまだしろ、政策金利は0.5%という低位にあり、これも円安要因のひとつとなる。
極端な金融緩和でデフレは解消しなかった。むしろ金利がついたほうが経済は活性化する。
日本の債務状態がこれまでの財政拡大策によって悪化しているなかにあり、ここでさらに積極財政を行えば何が起きるのか。
そのひとつの事例がトラスショックであろう。それを招かず、米国サイドの危惧を強めさせないために何をすべきか、もいや何をすべきでないのかも認識する必要がある。
日銀の植田総裁は大阪経済4団体共催懇談会における挨拶内容を確認したい。
経済の現状と先行きについて
「企業の業況感は、日米関税交渉の合意により、先行きの不透明感が後退したとの見方から、製造業の一部で改善し、全体としても良好な水準となっています」
先行きの不透明感が後退したとの見方というのがポイントか。つまり関税による不確実性はかなり後退したとの認識となろう。
物価の現状と先行きについて
「基調的な物価上昇率、すなわち食料品などの一時的な変動要因を除いた物価上昇率と現実の物価上昇率はともに高まっていき、展望レポートの見通し期間の後半には、2%の「物価安定の目標」と概ね整合的な水準に達すると考えています」
物価については概ね、日銀の予想に沿ったかたちで推移している。
「先行き、海外経済や各国の通商政策等を巡る不透明感が高い状況が続くような場合には、企業におけるコスト削減の動きが強まったり、物価上昇を賃金に反映させる動きが弱まる可能性があります。日本銀行としては、今後、こうしたリスクが顕現化してくることがないか、本支店を通じて、企業の皆様の声をきめ細かく確認していきたいと考えています」
「本支店を通じて」とのコメントに注意したい。6日に日銀の支店長会議が開催されるため、ここでの点検が可能となる。足元のデータ等は入りやすい。
「世界経済に不確実性をもたらし、15%というこれまでにない高い関税は、わが国経済の下押し要因として作用することになります。こうした点を踏まえると、まずは、緩和的な金融環境を維持し、経済活動をしっかりと支えていくことが大切です。このため、日本銀行は先月の金融政策決定会合において、0.5%の政策金利を据え置きました」
これは9月19、20日の決定会合で利上げを主張する委員もいたが、現状維持を決定した理由ということになろう。その不確実性は後退したとしている。
「先行きの金融政策運営については、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、これまでご説明したような経済・物価の中心的な見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています」
「現在の実質金利がきわめて低い水準にある」との指摘だが、2日の内田副総裁の挨拶でも、「現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると」といった発言があった。
きわめて低い水準から低い水準への水準調整が10月に行われたとしてもおかしくしない。それが否定される状況でもない。
「経済・物価情勢が改善しているかどうかについては、当面は、先ほどお話ししたいくつかのポイント、すなわち、米国を始めとする世界経済の動向、関税政策がわが国企業の収益や賃金・価格設定行動に与える影響、食料品価格を含めた物価動向などを点検していくことになります」
10月に入り食料品の値上げ等も明らかとなる。新米も流通しており、こちらの価格動向なども把握できる。
「日本銀行としては、経済・物価の中心的な見通しが実現する確度や、上振れ・下振れ双方向のリスクを丹念に点検し、予断を持たずに、適切に政策を判断していく方針です」
これも毎度の発言内容ながら、適切に政策を判断していくのはあとはタイミングしだいというようにも取れる。特に早期利上げが示唆されたわけではないものの、それを否定するような内容でもなかった。
参考までに、9月30日に発表されていたものだが、10月21日には氷見野副総裁の講演が予定として追加されている。
日銀の野口旭審議委員は9月29日に札幌で「世界経済の変貌と金融政策の進展」と題する講演を行った。
日銀は9月18、19日の金融政策決定会合で、政策金利の据え置きを7対2の賛成多数で決定した。現状維持は想定通りながら、高田委員と田村委員が0.75%の利上げを求めて反対票を投じた。
今年1月の決定回号では政策金利0.5%への利上げを決めたが、この際にもその前回の2024年12月の決定会合では田村委員が利上げを主張して反対票を投じていた。
当然ながら9月19日の2票の反対票は、10月29、30日の決定会合での0.75%の利上げに向けた動きである可能性がある。
9月会合から10月会合の間に、政策委員による講演が複数設けられていた。これはかなり異例ともいえるのではなかろうか。
9月29日野口審議委員、10月2日内田副総裁、3日植田総裁、16日田村審議委員、17日内田副総裁、20日高田審議委員。
加えて10月1日には日銀短観の発表、6日には日銀支店長会議が開催される。
これによって10月30日での利上げの可能性を市場に意識させてくる可能性があるとみている。
ただし、野口審議委員については、いわゆるリフレ派とされていたため、最初に利上げに距離を置く姿勢を示したあと、再び利上げに向けた姿勢を次第に強めると勝手に予想していた。
ところが野口委員は講演で下記のような発言をしたのである。
「私自身は、日本銀行としては、そうした物価の推移を見極めながら、世界経済も含めたその時々の経済情勢に即応した金融政策の調整を柔軟に実行していくことが必要と考えています」
「(物価の)下方リスクのみではなくて上方リスクにも配慮することが必要となります」
これはサプライズとなった。
利上げから距離を置くどころか、金融政策の調整を柔軟に実行していくことが必要、つまり利上げを行っていくことが必要と示唆していたのである。
10月の決定会合での政策金利0.75%への利上げに向けて、野口審議委員の講演がステップワンとなった格好だ。
ただし、9月30日には、18、19日の金融政策決定会合の主な意見が公表され、このなかで下記の意見があった。
「不確実性が高い状況が続いていることを踏まえ、予断を持たずに判断していくことが重要である。」
「米国の関税率が 15%になっても日本経済に影響はあり、成長率がいったんは鈍化するという見通しは不変である。」
これらの意見が発言順などから植田総裁と内田副総裁の可能性がある。そうなるといったん植田総裁、内田副総裁は慎重姿勢を示してくる可能性もあるので注意が必要か。
それでも10月30日の利上げに向けた動きを継続させてくると私はみている。
マネー・マーケット・ファンド(MMF)が約9年ぶりに復活すると1日の日本経済新聞が報じていた。
MMFとは通常はマネー・マーケット・ファンドの略称であり、国内で生まれている外貨建MMFもマネー・マーケット・ファンドと呼ばれる。
これに対して9年前に新規の購入申し込みを停止した日本版のMMFはマネー・マネジメント・ファンドと称されていた。
このため、知り合いに問い合わせたところ、どうやら今回検討されているMMFと9年前のMMFとは別物である可能性がある。
ちなみにMMFとされるマネー・マーケット・ファンドとマネー・マネジメント・ファンドともに、主要な投資対象を国債など国内外の公社債や譲渡性預金(CD)、コマーシャル・ペーパーなどの短期金融資産とするオープン型の公社債投資信託のことである。
まず9年前に新規の購入申し込みを停止したマネー・マネジメント・ファンドについてみてみたい。
日銀が2016年1月の決定会合でマイナス金利政策を導入したことにより、10年債の利回りが一時マイナス0.1%に低下するなど債券の利回りが大きく低下した。
これによりの安定したマネーマネジメントファンドの資金運用が厳しくなり、新規の購入申し込みを停止し、運用を終了して顧客に資金を返す繰り上げ償還も実施された。
2024年3月19日、日銀は金融政策決定会合で無担保コール翌日物の金利に戻しそれをゼロから0.1%としマイナス金利を解除した。長期金利コントロールを含めたイールドカーブ・コントロールも廃止した。
マイナス金利政策と長期金利コントロールが解除され、その後日銀は政策金利を0.5%まで引き上げてきた。
長期金利の指標である10年国債利回りは1.6%台と約17年ぶりの高水準に上昇してきた。
日銀の追加利上げ観測が強まるなど、金利の先高観は根強くなってきたが、まだマネー・マネジメント・ファンドを復活させるにはやや金利が低いか。
今回の日本経済新聞の記事によると、金融機関は3メガバンクグループが出資するProgmat(プログマ、東京・千代田)が開発するシステム基盤を利用し、それぞれMMF(マネー・マーケット・ファンド)を組成・販売する。
プログマを中心として大手銀行や運用会社、証券会社などおよそ50社がMMFの商品化を議論してきた。複数の金融機関が2026年までに投入する意向を示しているとか(1日付日本経済新聞)。
今回の復活に際しては海外のMMFでも利用されているブロックチェーン(分散型台帳)技術を使うとか。
どうやらこれは9年前にあった個人向けのマネー・マネジメント・ファンドではなく、事業法人などの資金繰りなどで利用することを想定したデジタル化したマネー・マーケット・ファンドではないかと思われる。
記事でも、デジタル化したMMFを日本にも導入できないか検討を進めてきた。このほど商品化に向けた法的な整理などが完了し、具体的な商品開発を進める段階に入ったとの指摘があった。
日銀が1日に発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、前回の2025年6月調査でのプラス13から改善しプラス14となった。2四半期連続で改善した。市場予想とも一致した。
造船・重機や電気機械、はん用機械、自動車などが改善した。鉄鋼や石油・石炭製品などが悪化。先行きはプラス12と悪化の見通し。
大企業非製造業の景況感は6月から横ばいのプラス34となった。
建設や情報サービス、電気・ガスなどが改善した。宿泊・飲食サービスや通信、不動産などは悪化。先行きはプラス28と悪化の見通し。
今回の短観では、日米合意も踏まえた米関税政策による影響も危惧されていたが、結果として引き続き影響は限定的にとどまっていた。
市場で高まっている日銀の早期利上げ観測をサポートする内容となる。
「わが国の経済状況という観点だけから判断すれば、前回の利上げから半年以上が経過していることもあり、そろそろ再度の利上げを考えてもいい時期かもしれない」
これは9月の決定会合の主な意見に出ていたものである。
わが国の経済状況については短観や支店長会議の各地域からの報告でもある程度は確認できる可能性はあろう。
日銀の政策金利はいまだ0.5%と物価水準と比較して極めて低い水準にある。これが物価水準近くの政策金利であれば、追加利上げについては見送ることも予想される。
しかし、少なくとも現在の物価水準で、政策金利の1%あたりまでの引き上げであれば、それはあくまで金融政策の正常化を進めるこひとに他ならない。
「経済・物価が本行の見通しに対してオントラックであり、大きく軌道を外れなければ、ある程度定期的な間隔で政策金利の水準を調整していくべきであると考えている。この先、米国の関税の影響を含め、3月決算企業の上期決算と通期見通しや短観など、幅広い情報が揃うだろう」(主な意見より)
ただし、ここであらたに注意すべき事態も発生した。
米上院は、共和党主導のつなぎ予算案を否決した。これによって米政府機関の一部閉鎖は確実となった。
政府機関の一部閉鎖によって米雇用統計が発表されないといった事態も予想されているが、米国経済そのものへ与える影響も危惧される。
いずれにしても次回の決定会合は10月29、30日であり、このあたりも確認できる時間はありそうである。
日銀は18、19日に開催された金融政策決定会合の主な意見を公表した。この会合では政策金利の据え置きを7対2の賛成多数で決定した。高田委員と田村委員が0.75%の利上げを求めて反対票を投じた。
このなかの「金融政策運営に関する意見」を確認してみたい。
「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる。そのうえで、こうした見通しが実現していくかは、不確実性が高い状況が続いていることを踏まえ、予断を持たずに判断していくことが重要である。」
植田総裁のコメントとみられる。「不確実性が高い状況が続いていること」が今回、利上げを決定しなかった理由となりそうだが、それでは政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくタイミングはいつとなるのか。
「米国の関税率が 15%になっても日本経済に影響はあり、成長率がいったんは鈍化するという見通しは不変である。物価面では、食料品のコストプッシュが収まることで、来年度に2%を下回ると予想される。こうした状況下、今は、現在の金利水準で緩和的な金融環境を維持し、経済をしっかりと支えるべきである。」
内容からみて、以前であれば野口審議委員からのコメントのように思えてしまうが、296日の野口委員の講演の内容からは乖離がある。それとともに、順番からみておそらく内田副総裁のコメントか。こちらはかなり慎重な見方をしているように思われる。
「わが国の経済状況という観点だけから判断すれば、前回の利上げから半年以上が経過していることもあり、そろそろ再度の利上げを考えてもいい時期かもしれない。もっとも、米国経済の落ち込みの程度の目途がついていないため、当面の金融政策運営は、現状維持が適当と考える。」
個人的には9月に利上げを見送った理由としては、こちらがピンとくる。たぶん氷見野副総裁の発言か。
ここでは「前回の利上げから半年以上が経過していることもあり」との表現に着目したい。10月の利上げを模索するとすれば、この期間もひとつの要素となりうる。米国経済の落ち込みの程度の目途が10月会合までにつくのか。短観や支店長会議の各地域からの報告でもある程度は確認できる可能性はあろう。
「市場にサプライズとなる現時点での利上げは避けるべきである。」
誰の発言であろうか。そうであれば利上げの際にはしっかりとした準備が必要ということであろうか。
「わが国経済の特徴として、内需が外的な負のショックに対し脆弱な傾向がある。金利の正常化を進める上では、ハードデータをもう少し確認してから判断しても遅くないだろう。」
10月末であれば、もう少しハードデータは確認できる。
「今後の政策運営に当たっては、各国通商政策の世界経済への影響、米国の金融政策と為替相場の方向性、国内の物価と賃金の見通しの3点を注視していく必要がある。」
少なくとも現在の物価か水準で、政策金利の1%あたりまでの引き上げであれば、それほど神経質になる必要はないと思う。
「米国経済の帰趨が見えることを待つことで得られる知見もあるが、国内の物価との関係では待つことのコストも徐々に大きくなっていくので、待つことのコスト・ベネフィットやそれに伴うリスクの比較考量が必要になっていく。」
待つことのコストを負担する(本来もらえるはずの利子がもらえない)のは我々国民でもある。
「経済・物価が本行の見通しに対してオントラックであり、大きく軌道を外れなければ、ある程度定期的な間隔で政策金利の水準を調整していくべきであると考えている。この先、米国の関税の影響を含め、3月決算企業の上期決算と通期見通しや短観など、幅広い情報が揃うだろう。」
ある程度定期的な間隔で政策金利の水準を調整していくべきであると、こちらもコメントしている。今回の会合というより10月会合でゴーサインが出せるとの認識か。
「米国の相互関税賦課以来の不安が後退し、物価見通し実現に向けて海外要因の制約が解消に向かう中、再び利上げスタンスに回帰し、海外対比で低水準の実質金利の調整を行い得る状況と考える。」
「0 .5%までの利上げの経済全体への影響は極めて限定的である。上下双方向のリスクがある現時点で、政策金利を一気に引き締める領域まで引き上げるべきではないが、物価の上振れリスクがある中、将来の急激な利上げによるショックを避けるため、中立金利にもう少し近づけておくべきである。」
今回、反対票を投じた高田委員と田村委員の発言であろう。「海外対比で低水準の実質金利の調整」、「中立金利にもう少し近づけておくべき」とそれほど積極的な利上げの主張ではなさそうだが、とにかくも0.75%の利上げを行っておくべきとの認識か。