「若き知」
「過去データは一番下に移行しました」


2003.12.30「本年もお世話になりました」

本日が2003年の大納会。今年は本当に債券相場にとって激動の年となりました。来年もこのまま景気の回復基調が続くと期待しており、良い金利上昇が継続するのではとも思っています。本年もたいへんお世話になりました。来年もどうかよろしくお願いいたします。良いお年をお迎えください。


2003.12.29「2004年の債券相場見通し」

来年の債券相場を予想する上で、その中心になっている国債市場の動向を予測するため、これを3つの視点から考えてみたい。3つの視点とは、国の債務としての国債、金融商品としての国債、そして長期金利としての国債である。

国の債務としての国債であるが、12月20日に来年度の国債発行計画が発表されている。新規財源債は36兆5,900億円と今年度当初予算の36兆4,450億円と比べ微増ながらも過去最高。国債発行総発行額も162兆3,407億円と今年度の141兆4,228億円から大幅に増加する。今後も国の債務残高は増加し続けると思われ、これは確かに大きな懸念材料ながらも、債券市場関係者からは国債需給を危惧する声はあまり聞かれない。

国債需給が懸念されない大きな要因は、国債の金融商品としての側面から見て、国債への投資家の需要が依然としてかなり強いためである。来年度の国債発行において生保など機関投資家が超長期の増発を望んでいたように、国債増発は市場参加者の要望であった。懸念されるのはメガバンクなど銀行の動向である。景気の回復とともに貸し出し等が伸びれば、国債で運用される分は減る可能性はあるが、まだ貸し出しは伸びていない。景況感の変化に伴なう今年の急落過程でも銀行の国債保有残高は実際には減っていなかった。先物やスワップを使ったヘッジが売り主だったとも指摘されている。

また、個人も国債への需要を強めている。個人向け国債の初期利子が預貯金金利に比較してもかなり有利となったこともあり、今年度はすでに当初の発行額を大きく上回る見通しになっている。12月募集の第5回債も総額で1兆円を超えてくるのはほぼ間違いない。金融商品としての国債へのニーズは個人も含めて強いものがある。

低金利のうちになるべく期間の長い債券を発行したほうが国にとっても都合が良い。これは借換債の発行を抑制できる上、長い期間の国債を発行すればするほど、パッシブ運用を行っている年金などの買いも増えるためである。来年度発行される国債の平均年限は6か月も伸びる。また、来年10月から国債市場特別参加者制度が導入されるが、これも国債需給には有利に働くものと思われる。

長期金利としての国債を見る上で、最も注目されるのが日銀の金融政策であろう。日銀は来年度中はは少なくとも量的緩和を解除するいわゆる出口政策を封鎖している。このため、時間軸効果は依然として有効である。短期金利がゼロ近辺に押さえつけられている間は長期金利だけ突出して大きく上昇するということはあまり考えづらい。

ただし、経済情勢・物価動向によってはある程度の長期金利の上昇はありうると考えている。景気が回復基調を強めており、その傾向が来年も継続されるならば、長期金利で2%を乗せてくることもある。ただし日銀による金融政策の変更がなければ、上昇したとしても2.5%辺りまでと考えている。下限は1%を割ることはないであろう。直近の壁にもなっている1.2%あたりと想定される。このため、来年の長期金利(10年利付国債の利回り)の見通しについては、1.2〜2.5%と予想している。


2003.12.25「狂牛病」

これまで発生が確認されていなかったアメリカ合衆国で狂牛病の疑いがある牛が発見されたとのニュースは金融市場にも大きな影響を与えた。米国のBSE対策はこちらの米国食肉輸出連合会のページ(http://www.americanmeat.jp/safety/bse.html#01)などに詳しいが、発生の可能性はかなり低いと指摘されていた。しかし、隣国のカナダではすでに発生例があったこともあり、完全に防ぎきれるというのも難しかったのであろうか。日本での発生によって一時期は牛肉の利用が減っていたものの、結局、最近では発生以前よりも消費は多いとの指摘もあった。しかし、再び牛肉の消費はこれによって減少することも予想される。米国では年末商戦への影響も懸念されているとか。相場へのリスクはこのように思わぬところから出てくることも多い。事前にある程度予想されていたものなどは、実際に相場に与える影響はあまりない。事前に織り込まれてしまうからである。相場に悪い影響を与えないようにするにはこういった性質をよく理解して使うことも必要であろう。それはともかく、我が家の食卓にも当分牛肉は乗らなくなってしまいそうである。


2003.12.24「カナダの事例研究」

本日の日経新聞のコラム「春秋」にカナダの財政再建についてのコメントがあった。カナダは1990年代から連邦・州政府の財政再建を実行し財政収支・政府債務の大幅改善を成功させている。財政再建は歳出の削減を中心に行なわれ、財政収支は1997年度以降6年連続の黒字を維持している。日経のコラムでは「歳出の見直しは徹底していた。国民に求められているか、政府が提供すべきか、州に任せられないか、民間に任せられないか、効率を上げられないか。財政難の中でも、何を出すべきか、とっいた基準に照らして大なたをふるった」その結果の財政再建である。日本でも財政再建をうたいながらも、大なたは振るえずにいる。財政再建の立役者ポール・マーチン前財政相が次期首相となったが、そこまでしての財政再建を国民が納得して受け入れたためであろう。コラムでは「気概のある財務相がいただろうか」と締めくくっているが、全くいなかったとはいえないのではあるまいか。ただ、イタリアの事例とともにこのカナダの事例もやはりもっと研究すべきものなのであろう。まだ読んではいないが、「行政改革と財政再建、カナダはなぜ改革に成功したのか」岩崎美紀子著お茶の水書房(3500円+税)といった本も参考になりそうである。


2003.12.22「2004年度国債発行計画」

20日に来年度予算の財務省原案が閣議提出され来年度の国債発行計画が発表された。内容について見ていきたい。

新規財源債は36兆5,900億円(今年度当初予算、36兆4,450億円)。借換債は1兆円程度のバイバックで買い戻した分の再発行分を加え、84兆4,507億円(同、74兆9,678億円)。財投債については41兆3,000億円(同、30兆100億円)のうち市中発行分が、11兆7,000億円(同、11兆4,600億円)、経過措置分が29兆6,000億円(同、18兆5,500億円)となる。これにより来年度の国債発行額は、162兆3,407億円(同、141兆4,228億円)となる。このうちカレンダーベースの市中消化額は、114兆6,214億円(112兆7,309億円)となる。

公的引き受けについては、財政融資資金乗換は1兆円(同、4,000億円)と大きく引き上げられる。これについては買入消却(バイバック)が今年度の約1兆円から来年度は2兆円に引き上げられるためによるものであるが、来年度より日銀も買入消却に応ずることになっている。これに伴なって来年度の日銀乗換えには、4,000億円ほどのこの買入消却にともなう借換債を引き受ける分が加わる。日銀乗換は結局13兆2,193億円(同、6兆4,419億円)となる。

そして、個人向け国債については、民間金融機関の発行予定額を1兆6,000億円(同、1兆2,000億円)、郵貯の窓販での個人向け国債の発行予定額を5,000億円(同、3,000千億円)となる。個人向け国債は合計で2兆1,000億円(同、1兆5,000億円)となる。個人向け国債の発行額については、今後、下記の式では郵貯分を含めたものにしたい。このため、公的引受の郵貯窓販の数値は個人向け国債を除いたものとする。

新規財源債+借換債−公的引受(郵貯窓販+日銀乗換+財政融資資金乗換)+(財投債−財投債の経過措置分)−個人向け国債

(概算)36.6+84.4−(1.8+13.2+1.0)+11.7−2.1=114.6兆円

(億円単位)365,900+844,507−(18,000+132,193+10,000)+117,000−21,000=114,6214

来年度の借換債の前倒し分については3.2兆円となり、これを含めた市中消化額は約117.8兆円になる。来年度の借換債の前倒しを含めた市中消化分の年限別配分については下記のとおり。
TB6か月物を1回あたり今年度と同額の2.3兆円で計13.8兆円、
TB1年物も昨年同様に1.7兆円で計20.4兆円、
15年変動利付を隔月1.1兆円(同1兆円)で計6.6兆円、
2年は毎月1.7兆円(今年度は9月まで1.8兆円、10月以降1.7兆円)で計20.4兆円、
5年は1回あたり2兆円(同1.9兆円)で計24兆円、
10年は今年度と同じく1.9兆円で計22.8兆円、
20年は毎月0.6兆円(同0.5兆円)で7.2兆円、
30年を四半期毎0.5兆円(同0.4兆円)で2兆円、
物価連動債を年2回0.3兆円ずつ発行するで年間0.6兆円

また、平成16年度国債発行のポイントとして次のようなものがあげられている。
市中発行額の平均年限は、今年度当初予算ベースの5年8か月より6か月伸びて、6年2か月となる。
「国債市場特別参加者(仮称)」制度を16年10月から段階的に導入。
国債の保有者層の多様化を図る観点から、海外投資家等の国債保有を促進するため、16年度から新たに、外国法人がグローバル・カストディアン経由でTB・FBを保有する場合にも、償還差益に対する源泉徴収を免除
16年2月以降、国債の一層円滑な発行に向け、WI取引(入札前取引)を導入


2003.12.22「2003年の債券相場を振り返る」

債券相場は今年大きな変換点を迎えたと思われる。長期金利が日本経済の動向を映し出すひとつの鏡とすれば、日本経済自体が変換期を迎えたともいえよう。

債券に限らず、相場の流れが大きく変化する際によく現れるものが相場のオーバーシュートである。1989年末にかけての株価の上昇とその後の反落など典型的な例であろう。実は同様のことが今年の債券相場でも発生していた。

これは今年6月までは1日あたりの値幅も限られながらじりじりと高値を更新し続けた。先物は限月移行があったため中心限月の高値は10日の145円09銭となったが、現物債は11日に30年0.960%、20年0.745%、10年0.430%とそれぞれ過去最低利回りを記録している。

この相場上昇過程において、メガバンクの一角や地銀を含めた銀行主体に利回りを取りに超長期債まで買いに来ている。銀行などがポジションのリスク管理に使っているバリュー・アット・リスク(VAR)の仕組み上、変動値幅が少ないことでそのリスク許容度がかなり広がりをみせていた。株価の低迷にともなって債券での収益拡大の狙いもあり、必要以上にポジションを積み上げ、異常なほどの超低金利を演出したともいえる。

しかし、これもいわゆる債券バブルに近いものであった。6月17日日経平均株価が9000円台を回復し、この日実施された20年国債の利率が1%割れのクーポンとなり、大手投資家などが超長期国債の購入を手控えたことをきっかけにして、債券相場が急落したのである。

この債券相場の急落の背景としては、株価の上昇とそれを裏付けるような好調な経済指標が出てきたことで、景況感の変化によるものも大きかった。しかし、下げを加速させたのも実はVARであった。債券急落に伴い変動幅が今度は異常に大きくなり、銀行のリスク許容度が急速に低下。必要以上に売りを出さざるを得なくなったことで、下げが加速されたのである。

この急落も7月4日がいったん底となり、8月5日まで米国債の上昇などで戻る場面もあったが、その後、再び急落場面となった。日経平均が上昇を続け1万円の大台を回復。4−6月GDPなど経済指標も予想を上回るものとなったことなどが再び相場が下落した要因である。ヘッジファンドのよる債券先物への仕掛け的な売りもあったが、9月中間決算を控えて再び銀行勢主体にポジション整理のための売りを持ち込んだことも大きい。先物チャートからも9月初めが底となって、その後のもみあいを見てもこの中間決算が大きな要因であったことがわかる。

その後の債券相場は、レンジ内でのボックスの動きとなっている。日経平均の上値が重くなったことや、地政学的リスクの高まりなどが債券の下値を支えたとも言える。また、好調な米国経済とそれに影響され日本経済にも回復の兆しが見えていることが、債券先物の上値を抑えている。このボックスをどちらに抜けるのか。来年の見通しについては次回に解説を加えたい。


2003.12.22「物価連動債」

財務省は、来年の1−3月から物価連動債を新たに発行する予定である。これは満期が10年で、消費者物価指数(全国、除く生鮮食料品)に応じて元本が増減する。償還時の元本保証(フロアー)はない。表面利率は固定されるが、元本の変動により利回りが変化する仕組みになっている。

(参考)http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/siryou/b140910b.pdf

これまで、財務省が発行してきた変動利付国債には、主に法人向けとなる15年変動利付国債と個人向け国債がある。このふたつの変動利付国債は、10年国債の利回りに応じて利率が変化する。しかし、インフレヘッジのためには長期金利よりも直接物価指数に連動させたほうが使い勝手が良くなる。物価連動の国債がすでに欧米では発行されていることもあり、日本でも導入されることになった。

この物価連動債を購入する投資家の目的としては2つあげられる。そのひとつがインフレヘッジである。もうひとつが株式や固定利付債など他の金融商品とのリスク分散である。短期的にみると長期金利や株式は物価上昇率との相関関係は薄いとも言われるが、ある程度長期的にみると相関してくる。

ここで問題となるのは、この物価連動債を購入する投資家層である。たとえば年金であるが、欧州の年金などは株式を組み入れることができないものが多く、インフレヘッジのために物価連動債を大量に購入している。しかし、日本の年金運用には株式が組み込めるため、これによってある程度のインフレヘッジは可能となっており、欧州年金などに対して物価連動債への需要は薄いといわれる。リスク分散としてのニーズも見込めるが、いまのところそれほどの需要はなさそうである。これは日本の生命保険会社も同様であろう。

実際にこれまで15年変動利付国債を年金・生保はそれほど購入していない。15年変動利付国債を主に購入していたのは、国内投資家では農林系金融機関や地方銀行などが中心であった。ここにきて地方銀行は、株式の組み入れ比率を大きく減らしているため、物価連動債への需要は今後も続くものと思われる。また、欧州年金など海外勢からの需要もあろう。

来年度の物価連動債の発行は年2回程度、一回当たり3千億円の合計6千億円程度になるものと思われる。

これに対して、変動利付国債のなかでもニーズの強まっている個人向け国債については、来年度もかなりの販売額が見込まれる。現在募集中の第5回分でも、すでに郵貯分1千億円は完売。民間金融機関の販売額も1兆円を超えるのではとの見通しになっている


2003.12.19「サンタクロースの悩み」

今年もまたサンタクロースが悩んでいる。毎年この時期になるとサンタは考える。プレゼントを何にすべきなのか。子供たちが小さいときは何をもらっても喜んでいた。しかし、年代が上がるにつれてそれぞれの趣味の違いもあり、プレゼントもしっかり選別しなければならない。いっそ正体を明らかにしたほうが楽かとサンタは考える。しかし、夢は夢で持っていてほしい気もする。嘘はついてはいけないが、夢のある嘘はきっと許されている。去年はサンタも最近流行のネットショッピングを利用してアマゾンから本を購入した。今年もこれでと考えていたところ、「今年も本じゃないよね」との声も聞こえてきた。サンタに楽は許されない。しかし、クリスマスまで残すところあと数日。トナカイに聞いても教えてくれないよね、たぶん。


2003.12.18「2004年度国債発行計画再考その2」

市中消化分の年限別配分を想定してみる。
TB6か月ものを1回あたり今年度と同額の2.3兆円として計13.8兆円、
TB1年ものも昨年同様に1.7兆円として計20.4兆円、
15年変動利付を隔月1.1兆円(同1兆円)として計6.6兆円、
2年は毎月1.8兆円として21.6兆円、
5年は1回あたり2兆円(同1.9兆円)として24兆円、
10年も1回あたり2兆円(同1.9兆円)として24兆円、
20年は毎月0.6兆円(同0.5兆円)として7.2兆円、
30年を四半期毎0.5兆円(同0.4兆円)として2兆円、
物価連動債を年2回0.2兆円ずつ発行するとして年間0.4兆円

すべて合計すると120兆円となる。2年債については、1回当たり1.7兆円に据え置かれるといった選択肢もある。そうなると市中消化額はさらに押さえ込まれる。


2003.12.17「2004年度国債発行計画再考その1」

今週末にも来年度の国債発行計画が発表される。日興シティーグループ証券チーフストラテジストの佐野一彦氏のレポートなどを参考にさせていただき、最終的な予想を試みたい。

新規財源債については、現在、36.6兆円規模の見込み予想となっている。借換債については、当初発表されていた83.5億円に1兆円程度のバイバックで買い戻した分の再発行分を加え約84.5兆円と置く。公的引き受けについては財政融資資金乗換を修正し0.8兆円に引き上げる。個人向け国債については第5回の個人向け国債の売れ行き好調なため、今年度分より1回あたり2千億円程度上乗せとし合計2兆円として置いてみる。

新規財源債+借換債−公的引受(郵貯窓販+日銀乗換+財政融資資金乗換)+(財投債−財投債の経過措置分)−個人向け国債

36.6+84.5−(2.1+13+0.8)+12−2.0=115.2

問題は来年度の前倒し分をどの程度置くべきかということになる。当初、市中消化分として122〜123兆円程度との見方がでており、これをそのまま当てはめれば7兆円規模の前倒しが可能になる。しかし、あまり無理をする必要もないとなれば、5兆円程度の前倒しで都合120兆円程度となるのではないかと予想される。


2003.12.16「福井総裁コメント」

本日の日銀の金融政策決定会合では、賛成多数で現状維持となった。ただし、資産担保証券の買い入れ基準見直しを検討するよう執行部に指示した。その後の記者会見において、福井日銀総裁は、「従来と同じ尺度で円高の企業収益への影響かんがえなくてよいかもしれない」「日本経済は、順調に回復傾向をたどり始めた」「ドル安は米双子の赤字などリスク要因に光当てた相場形成の可能性」とコメント(いずれもロイター)。これを受け一時的に為替市場では円が買われた。たいへん正直なコメントではあると思うが、イラクのフセイン元大統領の拘束によって一時的に買われたドルが再び反落基調になっているタイミングであっただけに、やや気になるコメントにも取れる。今のところ量的緩和の出口は封鎖されてはいるが、このまま順調に日本経済が回復に向かえば、いずれその出口を見据える必要も出てくると思われるが、そうなった場合に現在行っている国債の買い切りオペをどうするのか。それを考えるのもあまりに気が早いかもしれないが、ちょっと気になるとところでもある。


2003.12.15「フセイン元大統領拘束」

フセイン元大統領が米軍に拘束されたニュースが昨日世界中を飛び回った。これにより「地政学(的)リスク」が後退する期待も強まっているが、この地政学リスクとはいかなるリスクを示すのか。英語の「geopolitical risk」の日本語訳となるが、そもそもは、特定地域が抱える政治的軍事的な緊張の高まりが世界経済全体の先行きを不透明にすることを示すとか。FRBが2002年9月に出した声明文で触れてから、広まっていった用語のようである。そもそも「地政学」とはまさに漢字が示すように地理と政治の関係を探る学問のことであるが、使われているのが金融市場であることが何か矛盾もあるように感じる。ひとつの流行語だとは思うが、やや曖昧さも感じる。曖昧さを得意とするのは、わが国政治家ばかりでなく、グリーンスパン氏なども同様に思われる。日本語のほうが、漠然としたりやや意味を不透明にするには適した言語といわれるが、英語もどうも同じような言語であったのかとも思われる。米国国防長官のイラクの大量破壊兵器に対して、わけがわからないコメントをしたと言われたが、これもまさに煙に巻いた発言に思える。その大量破壊兵器の存在について、フセイン元大統領は「NO」とコメント。イラク問題はフセイン拘束によってあらたな展開となる可能性も強まった。


2003.12.12「ベンツは高級車か?」

日本では高級外車といわれるベンツやBMWなどはドイツ国内の消費者には不人気だそうで、日本車への評価がかなり高いらしい。ベンツなどは燃費は悪くとも乗り心地が良いといった印象は過去のものなのか。もちろんベンツなど国内で買うとかなりの値段がするため、ステータスシンボルにもなっているのかもしれないが、今後は、それだけということにもなりかねない。あれだけ優秀といわれたドイツすら技術力の低下が著しいとも言われる。マイスター制度が転機を迎えたことが要因なのであろうか。

その分、日本の自動車メーカーの評価が高まったようであるが、その日本もいろいろな面で過去の良さが失われている。今度、愛知万博に「となりのトトロ」に出てくる家がそのままの姿で建てられるとか。その「となりのトトロ」のシーンに、その家で、雨戸を開けたまま、蚊帳をつってさつきとメイが寝ているシーンがある。このようにそんなに昔ではなく、田舎では特に鍵どころか戸を開けたままにしておく家も多かった。それだけ治安が良かったはずなのだが、今では複雑なドアキーをつけても安心できない状態になっている。納屋からは米も盗まれる。

何かを良くしようとすれば、何かが失われる。失われたものを取り返すことはなみなみならぬ努力も必要となる。進歩とか改革といったものの反対側には衰退するものがある。どうも、その衰退していったものに大事なものがあったのかもしれない。


2003.12.11「先物期先限月の基準価格」

10日の債券先物の2004年3月限の清算値は138円23銭である。しかし、本日前場引け値は138円32銭(+7銭)となっており、昨日の3月限の引け値はこれからもわかるように138円25銭である。なぜ基準価格と終値が異なるのであろうか。これは、債券先物の限月間スプレッド取引が影響している。東証のホームページの債券先物限月間スプレッドの概要のなかに、下記記述がある。

限月間スプレッド取引の呼値について売買が成立したときの各限月取引の約定値段は、次のとおりとする。
(1) 期近限月取引
限月間スプレッド取引の呼値について売買が成立した時の期近限月取引の直前の約定値段(気配値段を含む。以下同じ。)とし、限月間スプレッド取引の呼値について売買が成立した時までに期近限月取引にその日の約定値段がない場合には原則として前日の清算値段とする。
(2) 期先限月取引
(1)により期近限月取引の約定値段とする値段から約定スプレッド値段を減じて得た値段とする。

つまり、期先限月の約定値段については、3月限の売買における値ではなく、期近である12月限とスプレッド取引の価格より算出される。昨日の12月限の引け値は138円70銭で、これがそのまま清算値となり、スプレッド取引の引け値47銭を引くと、138円23銭となり、これが3月限の清算値になるのである。これは、日本の債券先物取引が中心限月に集中し、他限月の付値が少ないことに配慮されたものと思われる。


2003.12.10「イベント」

スティグニッツの書いた本だったかに、相場はイベントによって動くというものがあった。イベントによって流れが変わるということであろう。相場には的確な居所はない。常に変化しており、その変化の変わり目にイベントがあるというのは確かかもしれない。

相場に限らず、何がしかが突然普及し始めるのも、そのきっかけとなるイベントが存在する。昭和34年の皇太子のご成婚をきっかけにテレビが急速に普及した。カラーテレビの普及には東京オリンピックがきっかけになった。3億円強奪事件をきっかけに給与の口座振込みが急増した。ゴミを掃き出すことができない団地の誕生をきっかけに掃除機が普及した。第1次世界大戦により、働く女性が急増したことでコンパクトが普及した。このように意外な要素をきっかけとしていろいろなものが普及している。

債券相場もトレンドが変化する際には、何かきっかけがある。それは主に予想外の出来事によって起こりうる。だからこそ余計に相場を予想するのは難しいのである。もちろん、きっかけはきっかけでしかなく、その前にすでにある程度のマグマが溜まっていることも確かである。技術開発が進んで大量生産が可能になりそうなタイミングでイベントが発生するとそれが追い風になるのである。相場においてもトレンド変化を知るには、意外なものがきっかになりうるということを認識していたほうが良いかもしれない。

こんなものがきっかけで、これが普及したといったことをご存知の方、よろしければ教えてください。


2003.12.9「第5回個人向け国債募集は9500億円を超える見通し」

10日から募集が開始される個人向け国債の発行予定額が9500億円を超える見通しとなった。民間金融機関の販売希望額は8585億円で、日本郵政公社の1000億円を合わせて9585億円となる。大手証券などの積極的姿勢は予想されてはいたが、ここまで数値が積み上がるとは思わなかった。第4回債の初期利子よりは、今回の初期利子が低下するとはいえ、0.62%は預貯金金利に比較してかなり有利な上、景気回復期待の強まりから今後の長期金利上昇の可能性も期待されているものと思われる。

さて、この販売希望額に近い数字の消化が可能となれば、これは来年度の国債の市中消化額予想にも影響を与える可能性がある。今年度の個人向け国債の発行予定は1兆2千億円であり、仮に第5回債の販売を9千億円程度とすれば、実績は2兆4千億円と予定の倍となる。個人向け国債は借換債であり、これは来年度の前倒し発行分となる。そして、来年度の個人向け国債の発行予定額も上方修正される可能性が高い。私の見込みとして来年度の個人向け国債発行予定額を1兆6千億円としたが、今年度倍増の2兆4千億円としたい。これは、来年度も短期金利の上昇は抑制されるが、長期金利は1%以上で推移する可能性が高いため、この人気は一時的なものではなく継続されるものと予想するためである。

借換債については、今回の個人向け国債の上乗せ分も考慮し予想値より5千億円程度減額し、86.5兆円とする。個人向け国債を2.4兆円に上方修正して式に当てはめる。

新規財源債+借換債−公的引受(郵貯窓販+日銀乗換+財政融資資金乗換)+(財投債−財投債の経過措置分)−個人向け国債

40+86.5−(2.1+13+0.4)+12−2.4=120.6

前回予想値よりも1.3兆円程度の減額となり、これによりTBの増発をその分抑制可能になるのではないかと思われる。ただし、これはあくまで個人的な試算である。個人向け国債の最終的な販売額によって左右されうるし、また借換債については、来年度以降の借換債発行額などを見ながら長期的視野のもと発行総額のコブを押さえていく必要があるため、この数値からやや乖離する可能性もある。また、新規財源債についてはあくまで40兆円以下という想定に沿った予想である。


2003.12.8「国債市場特別参加者(仮称)制度」

先週開催された財務省での国債市場懇談会において、「国債市場特別参加者(仮称)」制度の枠組みが発表された。この資料を元に「国債市場特別参加者制度をまとめてみたい。

主な目的・機能は、国債の安定消化促進と国債市場の流動性の維持・向上である。国債引受シンジケート団との違いを見るには、まずこの国債引受シンジケート団との違いを確認したい。国債引受シンジケート団とは、複数の引受業者から構成される証券取引を目的とした団体である。相互に引受責任を分担することになどからリスク分散が図られるため、大きなロットの発行をより容易に行うことができるという制度である。しかし、国債の発行量が増加し、債券市場も整備されたことで、国債も引受方式から入札方式へと移行し、現在では10年国債の20%のみ国債引受シ団の引受になっている。

国債発行も流通市場を意識しながらの発行となり、その流通市場を構成しているメンバーとの対話が求められた。そこで設けられたのが、国債市場懇談会である。これに参加者の資格や責任をより明確にしたものが、国債市場特別参加者になる。

まず、責任について見てみたい。「すべての国債の入札で競争的に、積極的に、相応な価格で」発行予定額の3%以上の相応の額を応札するのがまずひとつの責任である。米国のプライマリーディーラーに対しても「すべての入札に、有意に、競争的に、相応な価格で、参加しなければならない」とあり、米国と似た対応が求められる。ただし、積極的とか相応の価格と言うもやや曖昧なものがあるが、たとえ相場環境が悪いときでも、実勢に近いレートで常にそれなりのシェアを維持するような応札が求められるものと思われる。

市場流動性維持・向上については、「財務省は、特別参加者からの報告に基づき、特別参加者の国債流通市場での取引状況をモニターする」とある。この報告とは、現物や金利スワップ、オプション、先物等の売買等の報告と見られる。欧米でもドイツ以外は、ポジションや取引状況等の報告責任がある。また、ランキングの発表も行われる。

資格については、まず競争入札と非競争入札に独占的に参加できる。加えて一定の条件のもと応札締め切り後の定率公募入札にも参加できる。財務省が実施する金利スワップの、優先的な取引相手となることができる。フランス・イタリアは独占的となっているが、ドイツは優先的なものとなっている。そして、財務省の「流動性供給入札」にも参加できる。流動性供給入札とは既発国債(複数銘柄)の追加発行のための入札である。

そして、当局との意見交換については、全体会合が四半期に一度開催され、個別会合も四半期に一度実施される。

全体としては、欧米の仕組のなかで日本の制度に適応できるとされるものをうまく取り入れ、まさに国債市場懇談会をプロトタイプとすれば、正式の制度がスタートすることになる。WI取引導入も実施されることで、入札に対する懸念といったものは、これまで以上になり薄れるものと思われ、安定した入札が今後実施されていくものと見られる。ただし、特別参加者にはリスクヘッジのため、たとえば先物取引などを含めた市場改革も同時に行われる必要もあるかもしれない。


2003.12.4「中心限月の性格変化」

債券先物には中心限月によって性格が異なっているらしいことにには薄々気が付いてはいたが、今年ほどそれがはっきりした年も珍しい。債券先物取引は3か月毎に中心限月が変わっていく。3月、6月、9月、12月の4つの限月が存在する。中心限月の移行は、以前は最終売買日よりかなり前に行われたが、最近はほぼ最終売買日の近辺で中心限月が移行する。現在の中心限月の2004年12月限の最終売買日は11日である。ちなみに、中心限月の移行は一日の出来高が逆転した時を示す。

それでは今年の中心限月の動きを振り返ってみることにする。3月11日に2004年3月限から6月限に中心限月が移行した。この6月限の特徴は1日の値幅がたいへん小さく前日比もほとんど値幅がないにもかかわらず142円台から145円までじりじりと上昇していったのである。四本値を見ても緩やかな上昇が伺えるが、かなりおとなしいながらもしっかりした限月であった。そして中心限月移行を迎える前日の6月10日に先物の中心限月としては史上最高値となる145円09銭を記録している。

ところが、2004年9月限に移行したあと地合いが急速に変化した。債券が急落したのである。6月限は全体の値幅としては3円もなかったのだが、9月限は7月4日までに7円以上も急落したのである。その後8月5日にかけてこんどは4円65銭も戻すのだが、今度は9月9日にかけて8円32銭も下落して134円09銭の直近安値をつけている。まさに暴れ馬のような相場となり、売りの限月と言えた。

その直近安値をつけた翌日9月10日にやはり中心限月が移行している。今度は2004年12月限である。今回も限月が変わるとまったく別の相場になってしまった。135円近辺から139円近辺までの上下動を繰り返すようになってしまったのである。つまりほぼレンジの中での動きとなった。たとえば12月1日に債券先物は急上昇したが、高値は138円98銭で止まり、翌日2日には137円07銭まで急落したが、これもレンジ内の動きであった。

この債券先物の動きの要因については、たとえば時間軸の長期化による上昇とか、その後の株価の上昇が示すような景気回復期待による急速な短期化。その株価の上昇が一服してのもみあいといったようにいろいろと解釈・説明はできるかもしれないが、それでも何故限月が変わったとたんに相場付きが変わるのかまでは説明はつかない。たまたま偶然であろうとの意見もあるかもしれないが、この直近3限月だけみても決して偶然では片付けられないものがある。

そして、12月11日にはいよいよ2004年3月限に中心限月が移行する。この中心限月の性格がどのようなものになるかは予測しがたいが、12月限月のようなレンジ相場ではないのではなかろうか。9月限ほどではないが、大きく下振れする可能性もある。ここにきて米国主体に景気回復期待が強まっており、日本経済も同様に回復ピッチを速める可能性もあるためである。12日には短観も発表される。反対に債券相場の上昇といった可能性もないとは言い切れない。来年の債券相場を占う意味でも、債券先物2004年3月限の性格をまず見極める必要がありそうである。


2003.12.4「携帯を持ったサル」

という本が売れているそうである。サルは遠くの仲間とも声を出すことで存在を確認し合うとかで、人間もどこかでネットワークに繋がっていたという願望があり、それが携帯メールの普及にも影響しているとか。私はパソコン経由でのメールは送受信を頻繁にしている割に、携帯メールを使ったことがない。以前は牛熊メールの受信確認に携帯を使っていたが、メモリーが食ってしまうため、最近はそれもストップしている。自分で携帯メールを使っていないから、使っている人たちをサル呼ばわりするのかと言われそうだが、もちろんそうではない。携帯メールは打ち込みが面倒だから使っていないのと、電車に乗っているときぐらいはネット接続を切っておきたいためである。そうはいっても、私も見ず知らずの人からメールが来ると喜んで返事を出したりしている。知らない人に接触するが苦手なのだが知らない人たちに見てもらいたいと、一生懸命ホームページを作っている自分がいる。これはたぶん人に認められたいという願望の現われなのかもしれない。携帯メールはたぶん知り合い同士で送りあっていることが多いのであろうから、人に認められたいがために打っているわけでもない。孤独が嫌だからという理由ならば納得できる。私自身、孤独でいることにあまり苦痛を感じないタイプなのかもしれない。


2003.12.3「国債管理政策の新たな展開」

財務省は昨日、大量に発行されている国債の安定消化を確保するなどのための施策を発表している。

米国でプライマリーディーラーと呼ばれている制度に類似した機能を果たす制度として「国債市場特別参加者」(仮称)制度を新たな枠組みとして導入する。なぜプライマリーディーラーと呼ばないのかという素朴な疑問も出てくると思われるので、欧米諸国の同制度を見てみたい。詳しくはこちらの資料をご覧いただきたい。 米国の「プライマリーディーラー」のメンバー選定者は、中央銀行(NY連銀)になっているのに対して、イギリスの「マーケット・メイカー」、フランスの「国債プライマリーディーラー」、ドイツの「オークション・グループ」、イタリアの「国債スペシャリスト」、スペインの「マーケットメーカー」など欧州各国は国債発行当局(日本では財務省)となっている。メンバーの資格を見ても今回、日本で取り入れられる制度は仏・独・伊に近いものとなっていることから、あえてプライマリーディーラーという呼称を採用せず、とりあえず「国債市場特別参加者」という仮称を使ったものと思われる。メンバーの責任・資格・当局との関係については今後詰めていくと思われる。これによって国債シンジケート団もいずれ廃止されると思われるが、とりあえずこの「国債市場特別参加者」(仮称)制度によって国債消化が安定的に行われるのを確認してからとなりそうで、その間は2つの制度が併用されるようである。なおこの「国債市場特別参加者」(仮称)制度は現行の国債市場懇談会(現在は理財局長の私的勉強会という形式になっている)を発展させたかたちとなると思われる。

個人向け国債の商品性の多様化も検討されるようである。期間が短いものや固定利付のものなどが検討される見込みである。

来年の2月からはWI取引つまり入札前の取引が開始される。そして国債清算機関の業務開始に向けての準備も進められている。WI取引についてはこちらの資料をご覧いただきたい。国債清算機関とは、国債に係る決済を一括してネット決済するための機関である。

複数銘柄の既発国債の同時入札・追加発行、買入消却の新たな目的のための積極的活用法の新しい措置の導入も検討されている。国債入札時に一定条件のなかで既発の国債も入札が可能とする。つまりこれは追加発行ということになる。

買入消却はこれまで今後の借換債の急激な増加を均す目的で行われてきたが、新たなリオープン制度の導入により、その追加発行分の買入消却が可能になる。

スワップ取引の活用も盛り込まれているがこれは、残存年数の調節などが目的となる。上記の追加発行に対応したり、スワップの相手方となれることが、国債市場特別参加者の資格になるものと思われる。

国債の年限別配分の変化に伴なう借換債の発行額予測や金利予測による利払費負担のシミュレーションなどを分析すると思われる「債務分析システムの導入」、公的債務管理政策等について高い見識を有する民間人の意見を聞くための「アドバイザリーコミッティ(仮称)」の設立、公的債務全体についての現状や政策を概観できる「債務管理レポートの発行(仮称)」、国債担当審議官の新設、現在の国債課を国債企画課・国債業務課の二課体制化、市場分析官の新設といったものも検討されている。


2003.12.3「国債制度改革」

プライマリーディーラー制やアドバイザリーコミッティーの設置など国債管理政策の強化策が発表されるが、安定消化を計るには国債制度そのものの見直し検討も必要ではなかろうか。たとえば、新規財源債であるが、ご存知のように、建設国債と通称赤字国債の区分けが存在する。この区分けは現在ほとんど意味がないとも思われ、新規財源債として統一すべきではなかろうか。もちろん名称を変えることだけで安定消化に繋がるものではないが、より国民理解を深めるためにも現状に沿った名称に改めることは必要ではなかろうか。

そこに加えて、日本の国債残高の増加に大きな影響を及ぼしている「60年償還ルール」の見直しの検討は必要ないのであろうか。今年度36兆円もの新規財源債が発行されるが、それはすべて実質60年かけて償還される決まりになっている。この60年償還ルールは1966年度以降の建設国債に適用され、1985年度からは大量償還を迎えたためという理由でなし崩し的に赤字国債の借換債の発行が認められている(拙著「日本国債は危なくない」40ページ)。恒常的な財政赤字が続いている現状ではこのルール改正はむずかしい。国債残高を減らすには何はともあれ新規財源債を減らすことがまず大切である。プライマリーバランスを均衡させ、そののち60年償還ルールなども再検討し、債務残高膨張の抑制を目指すことも必要ではなかろうか。ちなみに財投債にはこの60年償還ルールは適用されていない。

また、国債発行にあたって新規財源債の総額は予算編成の過程で発行額がはっきり分かるが、借換債と財投債についてはやや不透明な部分も多く感じる。借換債は60年償還ルールによってかなり複雑な計算が必要になることは理解できる。しかし、借換債と財投債の発行計画にあたってもう少しディスクローズできる部分はないのであろうか。


2003.12.2「第五回個人向け国債概要」

<募集期間>
2003年12月10日(水)から2003年12月25日(木)まで

<利率>
2004年7月に支払われる初回の利子の適用利率は12月2日の10年国債入札の際に決定される基準金利(10年固定利付国債の入札結果から算出する複利利回り)より算出される。基準金利は1.42%となったことで、初期利子は0.62%となる。

<発行日>
第5回個人向け国債の発行日は2004年1月13日。通常10日の発行だが1月10日は土曜日で三連休となるため発行が13日となる。このため、初回の利子の調整が必要になるため、この点注意が必要。

<発行予定額>
第4回と同様、金融機関から申請のあった額についてはすべて販売という方針。このため予め「発行予定額」を定めてはいない。12月2日に決まった金利水準を勘案の上、金融機関からは(郵貯も含む)、3日から5日の間に販売希望額を申請してもらい、集計後、募集開始前日の9日に公表予定

<募集価格・償還金額>
額面100円につき100円、 償還金額も額面100円につき100円

<利払日>
利子が支払われるのは毎年1月、7月の各10日(年2回)。休日になる場合には翌日。

<中途換金>
満期は10年だが、発行から1年経過後はいつでも中途換金可能。ただし、1年未満であっても個人向け国債を有している方がなくなった場合に限り中途換金できる。

<口座>
個人向け国債は証券が発行されないため、口座上の記載によって管理される。初めて国債を購入する場合は、購入する金融機関、郵便局で国債専用の口座を開設する必要がある。また、金融機関によっては口座管理手数料を取る場合もある。口座を開設する際には、運転免許証、健康保険証など本人確認が可能なものが必要。また印鑑等も用意したほうが良い。

<利子の係わる税金>
個人向け国債に係る利子所得については、これまでの国債と同様、利払時に20%の税率で源泉徴収が行われる。

<購入可能な金融機関>
「個人向け国債」は募集期間中に金融機関(銀行及び証券会社等392機関)及び郵便局でお求めになれますが、各金融機関の希望する引受額を事前に聞いてから振り分けられる予定となっている。金融機関別の振り分け額について公表はされないため、お買い求めいただく際には事前に各金融機関に問い合わせたほうが良いかもしれない。


2003.12.2「12月の債券相場(11月28日日経ネット様向け原稿より)」

11月の債券相場は国債の入札ラッシュなどから懸念する向きも多かったものの、その入札もむしろ好調となったものが多かったこともあり、相場全体は比較的落ち着いたものとなった。月末には足利銀行への公的資金導入に関する報道もあったが、これは債券にとってはどちらかといえば買いの材料と捉えられたようである。ただし12月に入ると債券相場は波乱含みとなる可能性もあるため注意が必要かとも思われる。

債券の相場を見る上で、最も直感的に動向が読めるのが債券先物取引である。立会い時間中はほとんど先物の価格は動いているため、先物の動きを見れば債券相場が活況なのか低調なのか、それとも強いのか弱いのかを判断できる。11月の先物は出来高の薄い日も多く、日替わりのように強い日と弱い日が交互に出るなど、かなり低調な売買が続いた。この理由のひとつとしてヘッジファンドが上げられる。6月以降の債券の急落の際には、ヘッジファンドの売りが大きな要因となっていた。日経平均先物などを買って、債券先物を売るといった売買がかなりのロットで入っていたのである。ところが11月は多くのヘッジファンドの決算月となっているため、売買が手控えられていたのである。しかし、12月に入ればあらたにポジションメーキングしてくる可能性は高い。

そして、12月11日は現在の先物中心限月12月限の最終売買日である。先物はこれまでの動きを見てみると面白いことがわかる。限月によって相場が大きく変わることが多いのである。たとえば今年6月から9月までの中心限月であった9月限は債券相場が急落し、大きな波乱となった限月であった。ところが9月に12月限になってからは、急激な動きは姿を消して比較的落ち着いた動きが現在まで続いているのである。

それでは、12月11日あたりより先物の新中心限月となる2004年3月限はどのような性格を持つであろうか。現在の日本経済を取り巻く環境や物価の動向を見ても、金利上昇の可能性は高く、債券は先行き売られるというのが大方の見方である。

米国もそうだが日本でも強い経済指標も出ており、加えて11月28日に発表された10月の全国消費者物価指数はついに5年6か月ぶりに前年を上回っている。だからといって日銀が量的緩和を早期に解除するとの見方は今のところほとんど出ていない。これは日銀が必死になって出口政策といわれる量的緩和解除への思惑を断ち切るような行動に出ていることなどが大きく影響している。 そして12月20日前後に来年度の国債発行計画が発表される。今年度よりも国債の市中消化額は増額されることはすでに市場参加者の多くが認識しており、よほど想定外の数値でも発表されない限りは国債の売り材料とはなりえない。年間120兆円もの国債が市中で消化できるのかという漠然とした懸念を持つ方も多いかもしれないが、これについては消化可能と言って問題はない。もし、この消化が困難とみれば、先を読むマーケットだけにすでに債券は急落しているはずである。

需給面での懸念も少ないとなれば、結局債券の急落はありえないというのが結論になるかもしれない。しかし、私は債券の急落というか長期金利が大きく上昇するという可能性は捨てきれない。予想以上に景気回復のピッチが強いとも思われ、物価上昇もやはり無視はできないはずである。さすがに債券の急落はないにしろ、10年国債の利回りがいずれ1.5%に向けて徐々に上昇していくというのが現在の私のメインシナリオである。

12月2日には10年国債の入札が実施される予定であるが、この時の平均落札価格より算出される基準金利が、12月10日から募集が開始される第五回個人向け国債の初期利子の算出根拠となる。今回も大手証券会社などが積極的に独自の宣伝もすでに行っているため、前回に引き続きかなりの募集額となることも期待されている。


2003.12.1「日銀の赤字決算」

少し前の新聞報道になるが、日銀は11月27日に民間企業の中間決算にあたる2003年度上半期財務諸表を発表し、1971年度下半期以来、31年半ぶりの赤字となった。これは6月以降の長期金利の上昇によって、保有する長期国債に7599億円の評価損が発生したことなどが影響し、引当金の取り崩しも行わないことで剰余金が1126億円の赤字になった。もし、通期でも赤字決算となれば国が今年度約5000億円見込んでいる日銀からの国庫納付金がゼロとなり国の歳入にも影響を与える。ただし、今回は日銀はすでに来年度から保有国債の評価方法を償却原価法に変更することを決めていることもあり、来年度以降は保有国債の価格変動によって決算への影響は薄れる。実際にそれが今年度適用されれば赤字ではないとの指摘もあった。


2003.12.1「足利銀行一時国有化、イラクでの外交官殺害事件、H2Aロケット打ち上げ失敗」

大きなニュースが駆け巡った週末だった。決算発表が延期され、公的資金注入が決まっても注入方法が決まらず、もめにもめてぎりぎりになって発表されたのが一時国有化であった。株式市場などに配慮して結局、りそなと同様の処置になめであろうとの意見が多く、破たん処理、国有化といった可能性を指摘する声は少なかった。しかし、結果は一時国有化。経営者責任と株主責任が問われる結果となった。しかし預金は全額保護され、劣後債や劣後ローンも保護されることになった。りそな方式を選択しなかったことは評価できる。しかし、その結論を出すまでの時間があまりに長すぎたことはやはり問題であろう。

イラクでの日本の外交官殺害という痛ましいニュースが飛び込んできた。ただ、これを耳にしたときは、なんでというより、ついに起きてしまったとの印象であった。イラク国民がいくら親日派が多いとはいえ、テロ組織にそれが通用するわけはない。この事件についてはまだ調査中とのことではあるが、もし日本人が標的になっていたとすれば、かなりの情報がテロ組織でも掴んでいるということにもなりうる。東京でのテロもこれで可能性が高まったともいえる。犠牲になられた方々には心からご冥福をお祈りしたい。そして、その悲劇が拡大しないように、日本政府にはしっかりした対応を取っていただきたい。犠牲となられた方々のためにも。

H2Aロケットの打ち上げ失敗は、日本の科学技術への信頼を再び失わせる結果となった。中国がすでに有人での宇宙飛行を成功させているが、日本はまだまだ追いつかない。日本の技術を持ってすればすぐにも有人飛行は可能と言っていた方もいたようだが、衛星すら打ち上げられないのではそれどころではない。東京から熱海の距離に等しいといわれる宇宙までの距離は、日本にとってさらに長く感じられるものになってしまうのか。


2003.12.1「塩川前財務大臣」

「日本国債は危なくない」(文春新書)をどうしても直接お渡ししたかった方がおりました。しかし、その方はそう簡単には会えるような方ではありません。さすがにそのような機会はないだろうと思っておりましたが、ある方からのお誘いで、なんとこれが実現してしまったのです。その方こそ、塩爺こと塩川前財務大臣でした。お会いしてびっくりしたのはまさに塩爺と呼ばれるようにとても良い方で、終始にこやかにされ、楽しいお話しをいろいろと聞かせていただきました。私の本も手に取ってご覧いただき「良く調べたな」と言っていただいた際は、大変感激でした。どうぞこれからもお体に留意され、がんばっていただきたいと思います。


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