「若き知」
「過去データは一番下に移行しました」


2005.8.31「2006年度借換債」

2006年度の借換債の発行額は、111兆5733億円の見込みとの財務省の発表があった。2006年度の新規国債発行額は35.5兆円で仮置き。ちなみに、今年1月に発表された国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算においては、2006年度の借換債の発行額は112兆6700億円の置かれていた。


2005.8.31「TXレポート その4」

今回はTXの開通までの経緯とTXを運営している首都圏新都市鉄道株式会社について見てみることにする。

首都圏新都市鉄道株式会社、資本金1850億1630万円(2004年8月31日現在)

設立、1991年3月15日

出資構成

茨城県18.0%、東京都17.7%、千葉県7.1%、東京都足立区7.1%、茨城県つくば市6.7%、埼玉県5.9%、東京都台東区5.3%、千葉県柏市5.3%、千葉県流山市5.3%、東京都千代田区2.6%、東京都荒川区2.6%、埼玉県八潮市1.6%、茨城県守谷市1.5%、埼玉県三郷市1.3%、茨城県伊奈町0.7%、茨城県谷和原村0.7%、以上自治体計89.5%。その他203団体10.5%。

輸送人員約135000人/日 (2005年度見込み)

収支見込み、2006年度〜2008年度計 経常損益(百万円)▲44,463

上記のように、1991年3月に建設主体となる第三セクター会社「首都圏新都市鉄道株式会社」が設立された。当初運営主体となることが予定されていたJR東日本が「採算性に不安がある」として参加を見送ったため、この首都圏新都市鉄道が完成後の運営も行う。

1992年度に工事に着手。建設資金は、全体の80%が運輸施設整備事業団(旧鉄道整備基金)及び沿線地方自治体(4都県、八潮市、三郷市)からの無利子貸付金で、残り20%のうち14%が沿線関係地方自治体(4都県、12市区町村)からの出資金、6%が財投資金の借入等となっていたようである。参考(http://www.pref.ibaraki.jp/forum/forum02/2-6.htm)

2000年に開業予定であったが、用地買収の難航や沿線地盤の悪さなどで工事が遅れ約5年繰り下げられた。当初は2005年10月開業予定であったが、地元の強い要望と学校の2学期に間に合うよう2ヶ月前倒して開業することが決定し、2005年8月24日に開業が決定した。

トンネルや橋梁での新技術利用などのコスト削減を図り、建設費用は8300億円と当初計画1兆500億円を2000億円程度下回る結果となった。

そして、TXといえば特に債券市場関係者にとっては下記のような記事も記憶に残っているのではなかろうか。

つくばエクスプレス(常磐新線)を建設中の第三セクター「首都圏新都市鉄道」(本社・東京都台東区)の水田嘉憲社長は2001年11月29日、取締役会で辞任する意向を明らかにした。首都圏新都市鉄道は、11月22日に会社更生法を提出した大手スーパー「マイカル」関連の社債110億円を保有していた。


2005.8.30「TXレポート その3」

昨日、家の娘達がつくばから秋葉原までつくばエクスプレスに乗ってきたようであるが、座るために2列車ほど見送ったそうである。昼間はまだ夏休みということで家族連れなどで賑わっているようである。

朝の通勤時間帯はほぼ通勤客のみとなり落ち着いてきたように思う。6時12分つくば発の区間快速で通っているのだが、始発はさすがにがらがら。しかし、次第に席も埋まり、最も混んでいる青井と北千住区間では立って新聞を読める程度の混雑となっている。なんとか初年度一日平均13万人の予想は上回ってほしい気もする。

昨日の帰りに少しびっくりしたのは、赤ん坊を胸に抱えた母親が、時速130Km近くのスピードで走っているにもかかわらず、何も捉まらず立ったままあやしていたことである。席は空いていたので、赤ん坊がくずったものと思われるが、こういった光景が見られるというのも、如何につくばエクスプレスの揺れが少ないかということを実感させる。ただ、見ている者は結構はらはらしていたが。

秋葉原からつくばに近づくに連れて、駅前の空き地も目立ち、ブルドーザーなどが整地している状態である。先にまず線路を繋げて、駅を作って、それから周りを造成し、商業施設を作り・・・。まさに、パソコンゲームのシムシティやA列車で行こうの実写版のようにすら感じる。ゲームは失敗すればやり直しが効くが、現実にはやり直しは難しい。しっかりと計画して既存の地方駅周辺のような過疎化が起きないような工夫もしてほしい気もするが。


2005.8.30「2006年度一般会計の概算要求」

2006年度一般会計の概算要求が財務省から発表された。総額は85兆2700億円の見込み。国債費は長期金利の想定金利を昨年の概算要求と同じ年2・7%と高めに設定することから20兆5000億円程度となった(2005年度当初予算では18兆4422億円)、財政投融資要求額は2005年度比4.8%減の16兆3200億円程度、そして財投機関債は25機関が6.8兆円の発行を想定(2005年度予定額は5兆8806億円)。


2005.8.30「7月勤労者世帯消費支出」

総務省によると7月勤労者世帯消費支出は、1世帯当たり323,515円となり、前年同月比 名目で3.6%の減少、実質で3.3%の減少と発表された。前月比(季節調整値)では実質3.5%の減少。また、実収入は、前年同月比実質3.6%の減少となり、可処分所得は、前年同月比実質3.3%の減少となった。

昨年が猛暑の影響で飲料や電気代などの支出の伸びが大きかったためにその反動もあったものと思われるが、前年同月比3.3%減という今年2月以来のマイナス幅についてはそれだけでは説明できない。可処分所得が前年同月比実質3.3%の減少となったことなどから、調査対象は約4300だが毎月700世帯ずつを入れ替えているため、「7月は収入の低い世帯が調査対象に多く入った」との特殊要因があったとも総務省は説明していると日経などが伝えている。


2005.8.30「物価連動国債の会計処理」

昨日、第7回国債市場特別参加者会合が開催され、早速議事要旨が財務省のホームページにアップされている。この中で、物価連動国債に関して、理財局から下記のようなコメントがあった。

「物価連動国債に係る会計処理上の問題については、当局としても認識しており、先週会計基準を所掌している財務会計基準機構と会計基準の下にある実務指針のメンテナンスを担当している公認会計士協会との協議に着手したところ。当局から、米国会計基準及び国際会計基準では、フロアーのない商品であってもP/Lヒットさせる必要のない取り扱いになっており、わが国においても同様の取扱いをすることができないかという要望をしたところ、財務会計基準機構及び公認会計士協会は、まずは、米国等における取扱について精査し、その上で検討させていただきたいとのことであった。その際、物価連動国債の扱いに対する理屈付けのほか、他の商品への波及等も併せて検討していく必要があるということであった。現時点では、当局として要望している段階であり、今後の見通しについては確たることはいえないが、当局としては、引き続き、国債市場特別参加者等の協力も得ながら、財務会計基準機構及び公認会計士協会とともに一層の議論を進め、できるだけ早期に結果が出るように取り組んで行きたい。」

物価連動国債がやや投資家から敬遠されている大きな理由のひとつは、上記のように会計上の問題にあった。米国会計基準及び国際会計基準では、フロアーのない商品であってもP/Lヒットさせる必要のない取り扱いになっているが、日本国内においてはP/Lにヒットしてしまうことで、投資家も手が出しにくく、また業者にとっても持ちづらくなっていたことから、一時スパイラル的に価格が低下するなどしていた。財務会計基準機構及び公認会計士協会もやや重かった腰を上げてきたようにも思われるため、今後、物価連動債の会計処理の取り扱いについては米国のような取り扱いになる可能性も出てきた。

ただし、理財局は「フロアについては、これまでも様々な意見が出されているが、今のところ物価連動国債に関する商品性の見直しは考えておらず、まず会計処理の問題について、財務会計基準機構及び公認会計士協会等とともに検討を進めていくことが先決と考えている」とのコメントもあり、フロアをつけるといった商品性の見直しについては、まだ予定してはいないことも明らかにしている。


2005.8.30「第12回 個人向け国債」

第12回の個人向け国債の募集が9月8日から始まる。募集期間は9月8日から27日まで。発行日は10月11日。初期利子は9月1日の10年国債入札結果により導かれる基準金利から0.8%を引いて算出される。利払いは毎年10月10日及び4月10日の年2回。償還は2015年の10月10日となる。

10年債の利回りは一時、1.485%と1.5%に接近していたが、昨日は1.4%を大きく割込んでいる。現在のところ1.4%近辺となることが予想され、そうなると0.6%近辺の初期利子となろう。ただし、長期金利は先週末から昨日にかけてのように0.07%程度も一気に動くこともあるため、あくまで予想であることに注意してほしい。実際の利子は1日14時に発表される基準利回りを確認してほしい。


2005.8.29「TXレポート その2」

つくばエクスプレスの車両は2系統ある。葉原〜守谷間(直流区間)を走行するTX-1000系(直流車)と、秋葉原〜つくば間を走行するTX-2000系(交直流車)に分かれている。これは常磐線では取手までの電車と取手以北の車両が異なっているのと同じ理由である。

常磐線の取手以北に行く車両に乗ると、取手駅と藤代駅の間で一時電気が消える。これはここで電化方式が直流(都会派?)から交流(田舎派?)に変るためである。都会派と田舎派では語弊があるかもしれないが、電化が早くから進んでいた地方では直流の方式が多いのも確かである。また直流は架線での電圧降下が多いため、変電所を複数設けなければならない反面、車両のコストが軽減されるため運行密度が高い都市型の電車に向いている。しかし、交流方式は電圧を高くすることができるため送電ロスが低くなる反面、車両が動く変電所となる。新幹線や在来線特急がごつい形をしている重量系なのは何もカッコ良くみせるためばかりではない。

ところが、いくら茨城県が田舎といえども、実は路線上は都市近郊路線の範囲内にあるそうである(一応、関東地方の一角)。それでも田舎なので、やはり立場上、都会と同じ直流とするのが気が引けたため・・・ではない。茨城県の新治郡八郷町柿岡というところに(昨日、この近くで釣堀のマス釣りを楽しんだ)気象庁地磁気観測所があり、直流電流を流すと地磁気観測に影響を与える為半径30km以内は直流電化に出来ないためである。そのために廃線となった筑波鉄道も非電化であったし、現在もまだがんばっている常総線や龍ヶ崎鉄道も非電化である。

ということで、つくばエクスプレスも2系統あるのである。車両も一部内装が異なっている。秋葉原〜つくば間を走行するTX-2000系には、4人座れるクロスシートが3両目と4両目に設置されている。TXの窓から見える空はとても大きく見える。高架ということと窓が大きいことが理由であろうが、それとともにスピード感を体験するには、ぜひこのクロスシート窓際に乗ることをお勧めしたい。


2005.8.29「財投機関債と政府保証」

郵政民営化に関連して、財投機関債と政府保証についての論議が盛んなようである。今回はこの財投機関債と政府保証についてもう一度振り返ってみることにする。 財投機関債とは、公団や公庫などの特殊法人(財投機関)が、資金調達のために発行する債券である。そして、この特殊法人とは簡単に言えば「特別な法律によって設立され、公共サービスを行う機関」である。

総務省設置法によると総務省の事務として、4条15号に「法律により直接に設立される法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立すべきものとされる法人(独立行政法人を除く。)の新設、目的の変更その他当該法律の定める制度の改正及び廃止に関する審査を行うこと。」というものがあり、「法律により直接に設立される法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立すべきものとされる法人(独立行政法人を除く)」というものが特殊法人(ただし、独立行政法人を除く。独立行政法人については後述)を示していると言われている。

財政投融資改革、いわゆる財投改革によって、資金運用部に預託する義務が廃止され、郵便貯金や簡易保険で集められた資金は郵政事業庁、公的年金は厚生労働省の年金基金運用基金が、それぞれ独自で運用することとなった。これにより資金を必要とする特殊法人(財投機関)は、市場から新たに資金を調達しなければならなくなった。このために発行されるのが、財投機関債、政府保証債、財投債である。

財投機関債は、独力で資金調達できる法人が発行する政府保証がつかない債券である。 政府保証債は、独力では資金調達することが困難な法人が、財務省の厳正なる審査を受けた上で政府保証が付与され発行する債券。そして、財投債(財政融資資金特別会計国債)

財投機関債、政府保証債のいずれでも資金調達が困難な場合に、財務省が発行する国債であり、そこで調達した資金を財投機関に融資する。

2003年の10月以降、特殊法人等整理合理化計画に従って、多くの特殊法人(財投機関)が独立行政法人になった。また、地方独立行政法人法が成立し、平成16年4月以降、自治体も独立行政法人を設置することができるようになっている。

この独立行政法人制度はそもそも行政のスリム化を目的として96年に行政改革会議で提案されたもので、1998年の「中央省庁等改革基本法」でその導入が正式に決定されたものである。英国のエージェンシー制度を参考に基本的な枠組みが定められ、1999年には「独立行政法人通則法」が成立し、2001年4月には57の独立行政法人が発足した。独立行政法人は、法人共通の規定である通則法と、業務特性に応じた補足規定がなされている個別法に基づき設置される。

独立行政法人制度では、業務運営の自立性・効率性・透明性を確保すべく、国の関与が抑制され、外部評価の実施や情報公開が義務付けられる。

それでは特殊法人と独立行政法人はどのように区分けされるのであろうか。特殊法人はその行っている事務・事業の公共性などは高いが、予算による官庁の強い事前統制・事前関与がなされるのに対して事後統制が制度的にはほとんどなされない。これに対して、独立行政法人は、予算による官庁の関与はあるものの、国からの助成である運営費交付金は原則使途自由となっている。その半面、結果については主務官庁の評価委員会により事後的に厳しく評価される。その評価次第では経営層の給与が変動や、事業自体の存廃が見直されたりすることになる。

そして、特殊法人では単年度予算であり翌年度への繰越しはできないが、独立行政法人では余った予算は翌年度へ繰越しができ、さらに経営効率化の結果、当初予定ほど予算を使わずに済んだ場合は、一定の前提のものと独立行政法人の自由裁量により使うことができるといった点も異なる。

さて、それでは本題の財投機関債は建前上、政府保証はついていないが、実際には暗黙の政府保証がついているのか否か。法務省は「特殊法人も倒産しうる」との法解釈をしているそうであるが、そもそも国が作ったもの機関であり、国が全額出資しているケースもほとんどであり、特殊法人の経営が危機に瀕すれば、国がフォローする可能性は高いのではなかろうか。

そして独立行政法人通則法第八条においては、下記のような条文がある。

独立行政法人は、その業務を確実に実施するために必要な資本金その他の財産的基礎を有しなければならない。

2 政府は、その業務を確実に実施させるために必要があると認めるときは、個別法で定めるところにより、各独立行政法人に出資することができる。

財務的基礎がある法人ということで、これが簡単にディフォルトする可能性は低いとも思われる。その上に、「その業務を確実に実施させるため」必要ならば政府は「出資することができる」ために、債務返済の可能性は極めて高いと理解されよう。これは明示的な政府保証ではないものの、同様の理解をして良いとも思われ、これにより財投機関債には「暗黙の政府保証」がついているといった認識が強いものとなっているのである。


2005.8.29「7月の全国CPI」

26日に発表された7月の全国消費者物価指数は生鮮食品を除く総合指数は97.7となり,前月比は0.1%の下落。前年同月比は0.2%の下落となった。事前のマーケット関係者の予想の中心は-0.2%程度であり、ほぼ市場予想通りとなった。しかし、私自身はガソリン価格の引き上げなどの要因や価格転嫁の進行度合いなどからゼロ近辺へ戻ることを期待していたが、結果は引き続きマイナスが維持された。

ガソリン価格については昨年7月分も前月比上昇していたことから、今年も先月からの上昇分はそれによって相殺されていたようである。また、前年同月との比較で見ると光熱費等は上昇しているものの、穀物などの下落が大きかったようである。ただし、特殊要因の箔肉などにより、全国CPIがプラスに転じるのは今年10月以降となる見込みに変わりはない。


2005.8.25「TX(つくばエクスプレス)レポート」

昨日昼頃の秋葉原は大変な人出であったようで、つくばエクスプレスに乗るためには2〜3時間待ちの状態になっていたとか。まるでディズニーランドの人気アトラクション並みの待ち時間である。電車内でも家族連れなどは、まるでアトラクションに乗っているように楽しんでいた。

しかし、その混雑も夕方には緩和され、帰宅時は改札でやや時間が取られたものの、5分程度待って座ってつくば行きの快速に乗ることができた。今朝の乗客はさすがに昨日よりはかなり減っており途中駅までは席も空いていたが、北千住あたりでは立っている人も多く見られそこそこの混雑度合いとはなっていた。

この、つくばエクスプレスは期待も大きい反面、採算面などの問題も指摘されている。建設には約8400億円が投じられたが、当初、開業5年後の1日の輸送需要を38万人と見込んでいたが、沿線の宅地開発の遅れなどを織り込んで見直した結果、29万人、さらに27万人と次第に下方修正され、開業初年についてはその半分の13万5000人と見積もられているそうである(朝日新聞等より)。

昨日は終着駅となるつくば駅の乗降者数が私を含めて(?)約6万人あったそうで、滑り出しは順調のようである。常磐線も通勤時間帯の混雑がかなり緩和されていたとも聞く。しかし、朝方の下り車両の乗客はまばらであり、やや気になった。

慶應の日吉キャンパスに通っていた際、東急東横線を利用していたが、上り電車がギュウギュウ詰め状態だった半面、下りはそれほどの混雑ではないものの学生とかが多く利用していた。なるほど大学キャンパスなどがあれば、このような利用が見込めるのかとも感心していた記憶がある。

つくばエクスプレスの沿線にも大学のキャンパスがある。終着駅となるつくば駅からは、歩いていける距離にあるのが筑波大学。そして「柏の葉キャンパス駅」はまさに東京大学柏キャンパスのためにあるような駅である。もちろんここからは国立がんセンターなども近い。

こういった学生などをどれだけ取り込めるのか。近隣の大手大学が国立だけに私立に比べると絶対数が少ないような気もするが、学生たちが戻ってくる9月以降に期待したい。そういえば、陸の孤島の大学といわれた筑波大学も、この路線の開通によって東京から通学することが容易になり、さらに人気化してくる期待もあるのだろうか。


2005.8.25「量的緩和解除巡ってのせめぎ合い???」

今朝の日本経済新聞に「量的緩和 せめぎあい」との記事があったが、さすがにこれは捉え方が違うと思われる。

「政府は税金や社会保険料を受け入れる一方、年金や公共工事の代金を支払っている。政府と民間銀行がそれぞれ日銀に持つ当座預金口座の間で資金を受け払いしている。国庫は巨額の受け払いをするため、日々、資金の大幅な不足や余剰が生じる。」

日経ネット版には上記の補足コメントがあったが、これは間違いない。7月末から8月上旬にかけての、日銀当座預金目標額の一時的な下限割れの要因も、この巨額資金の受払いが影響している。

日経新聞によると、「民間金融機関を通じて自治体に支払う交付税の支給日を、毎月下旬から2日に変更。交付税の支給額は一回あたり4兆円で、(2日の)納税によって日銀当座預金が減っても補えるとみている。」

これについて、財務省が量的緩和の早期解除をけん制していると日経は指摘しているが、実際にはそうではないはずである。量的緩和が解除されるなりして当預残目標額が引き下げられるまでは、30兆円を維持できるようにと、日銀を側面支援するために実施されるものであろう。これによって、30兆円を維持させるため、日銀としてはできれば避けたい期間の長い手形買いオペを無理に打つ必要もなくなる。その意味からはむしろ当預残引き下げをしやすくさせることも意味しよう。

財務省内部でも日銀の早期の量的緩和解除には反対しているところもあると聞いているが、反面、日銀の姿勢に理解を示しているところもあると聞く。解除に伴う長期金利の上昇による国債の利払い増は避けたいというのは確かであろうが、量的緩和解除の3条件が整えば、金利機能を回復させ正常化させたいとの日銀の意向も重視すべきであろう。

財務省としては、たとえ早期解除には反対であったとしても、今回の措置の目的は量的緩和解除をしにくくさせるために行うものではないはずである。


2005.8.24「郵貯資金の流出で国債は暴落するのか」

郵貯が民営化されても国債の暴落は起きないと断言したい。別に日銀がそれを引き受けてくれるからとか言うわけでもなく、そもそも安易に日銀の国債を引き受けを行ったときこそ国債は暴落する。

2005年度3月末の日銀の資金循環統計を見ていただきたい。ここに郵貯の資産が何で運用されているのかが一目瞭然である。260兆円の郵貯の資産のうち105兆円と40.4%が財投債を含む国債であるが、それ以上に多いのが118兆円近くある財投融資資金預託金である。これが45.2%を占め、この両者で86%近くとなる。

郵政民営化によって仮に大量に資金が流出したとすると、その資金を手当てするには国債を売却せざるを得ないことは確かである。もし100兆円あまりの国債が一度に売却されれば確かに市場は混乱を極める。

しかし、これだけ情報が公開されている世の中にあって、ある程度その動きが事前に予測できる際には、当然事前にいろいろな手立てを打つことができる。長年マーケットに浸かっていた身として言えるのだが、事前に予想されていたイベントで暴騰や暴落を引き起こすことはまずありえない。暴落が引き起こされるのは、あくまで予想外の突発事項によるものである。

仮に郵貯の国債大量売却が現実化したとしても、この場合も金融当局や日銀などが対応策を話し合い、その売却が円滑になるような手立てを用いることは容易に想像できる。しかも、そもそも100兆円もの資金が流出して、それを何で運用するというのであろうか。これだけ巨額の資金をリスク・安全性を考慮して振り向ける先としては結果として国債しかあり得ない。

デフレが続くと見てタンス預金にするというのか。現金を保有する保管リスクや保管コストを考えれば、それよりも民間金融機関などの口座に入れておく方が安全であろう。もしくはより安全な個人向け国債を購入したりするはずである。一人当たり1000万円しか(私にとっては1000万円も、だが)郵貯には本来預けられないはずであり(名寄せはしっかりやってほしい)、この金額では民間金融機関に預け入れたとしてもリスクはそれほど大きなものにはならないはずである。

結果として、郵貯から流出した資金は、かなりの部分が金融機関なり預入限度のない個人向け国債なりにシフトされることは容易に想像できる。結果的には回りまわって資金の多くは国債投資に再度向かう結果となるはずである。その資金のシフトの過程でのリスクもあるが、マーケット参加者が事前にこれを理解しているものであれば、慌てて国債を売るような参加者はいないはずである。というわけで、郵政民営化による資金流出による国債の「暴落」はありえない。


2005.8.24「祝、つくばエクスプレス開通」

新しい鉄道の開業日にその電車に乗り込むというのもなかなか貴重な体験である。開通の式典はすでに朝4時ごろに行っていたようであるが、地下にあるつくば駅ではマスコミ関係者など多くの人が詰めかけていた。長い人の列が出来ていたので、こんなに乗るのかと一瞬引いてしまったが、これは記念乗車券を求める列であった。鉄道マニアも多いとは聞くが、首都圏での最後の通勤新線かということもあって注目もされていたものと思われる。

つくばエクスプレスは地下鉄南北線のようにワンマンで運行されるため、プラットフォームにはフェンスがある。発車時間の5分前に秋葉原からの列車が到着。こちらは通勤族というより家族連れや学生などの姿が多かった。座席は思いのほか固く、言われていたほど座り心地が良いというわけでもなかった。ただ、これまでは常磐線の特急車両で朝通っていただけにその座席と比較するのはやや酷か。難点としてはいつも聞いていたFM放送が聞きづらく、地下を走っている際は聞こえない。貴重な情報収集アイテムだっただけに残念である。こうなると無線LANのモニターに募集し、ノートPCを持ち歩いてインターネット接続をすることも検討しなくてはと外を眺めながら考えていた。

乗り心地は良い。ガタンゴトンといった揺れはない。継ぎ目のないロングレールを使っているそうである。また最高速度は130キロ出るようでスピード感もかなりある。つくば駅を出てまもなく地上に出るが、この車窓からは当初は緑一色、千葉県に入っても緑が目立つ。沿線の開発はまさにこれからとなるようである。三郷や八潮といった高速道路でおなじみの地名の駅を過ぎると北千住や浅草を過ぎて秋葉原についた。


2005.8.23「手形オペの期日短縮」

2005年 6月14、15日開催分の日銀金融政策決定会合記事要旨に以下のような記述があった。

「資金供給オペレーション期間の長期化により、例えば短期国債の金利がほぼ一様にゼロに貼り付くなど、タイム・バリューのない異常な金利形成になっていると述べた。」

「一人の委員は、2006年度にかけて量的緩和政策の枠組みを変更する可能性が徐々に高まると想定されるもとで、長めの資金供給オペレーションにより金利を無理に押し下げてしまうと、金利に関する市場の情報発信機能を損なうことになるため、オペレーション期間の長期化は避けるべきであると指摘した。」

「別の委員は、同様の観点から、オペレーション期間の短期化を進めるべきとの見解を示した。」

23日にオファーされた日銀の全店での手形買入オペの期間は8月25日から4月14日までとなり、前回の309日から232日と短縮してきた。景況感の改善から、金融機関による資金調達への意欲も高まり、札割れがここにきて回避されてきたことなどが要因と見られる。今回の平均落札レートは期間が短縮されたにも関わらず、前回の0.005%に比べて0.007%にアップしている。

あまり長い期間のオペに対して、日銀は上記の決定会合を見てもわかるように、市場機能を損なう可能性や、当預残高を減らせにくくなるという事情から、本来回避したい意向であったと思われる。このため、資金ニーズに合わせるかたちで今回から期間短縮に動いた。11月ごろまで大幅な資金不足はないことで、今後も期間の短縮を図っていくのではないかと見られている。

福井総裁はすでに景気の踊り場からの脱却を明言しており、日経平均株価は12000円を抜け大幅に上昇している。また、10月以降のコアCPIが前年比プラスとなるというのが市場のコンセンサスにもなっている状況下、解除の3条件が整ってくるのもそれほど先の話ではないと思われる。正常化に向けて、日銀も市場参加者の意識の変化に応じて、少しずつ準備を始めてきたとしても何らおかしくはないものと思われる。

議事要旨には下記コメントもあった。

「別の一人の委員は、量的緩和政策は、当初から市場機能への影響と政策目的達成との間のバランスを保ちつつ進められてきた政策であるとした上で、経済金融情勢が変化してきている中で、当座預金残高目標が自己目的化し、市場機能に過度の悪影響を及ぼすことは出来る限り避けるべきであると述べた。」


2005.8.23「マップとサウンド」

検索サイトのコンテンツが面白い。もうすでに使っている方も多いと思うが、グーグルのマップはいろいろと便利。たとえば左上の検索欄に「港区」と打ち込みクリックする。地図はマウスをクリックしたまま動かすと東西南北どの方向にも行ける。ダブルクリックするとそこが真ん中になる。レインボーブリッジをダブルクリック。左にある縦の棒の一番上までボタンを持ち上げる。そして右上の「マップ」「サテライト」と書かれているうちの「サテライト」をクリックすると、レインボーブリッジを通過している車までわかるぐらいの衛星写真が出てくる。都心に住んでいる方など自宅も見つけることができるそうである。

そして、最近始まったのが、ヤフーによるサウンドステーションである。無料で数万曲もの音楽をそれなりの音質で楽しめる。ある程度ジャンルを絞り込むことも可能。一部特定のミュージシャンを専用番組で楽しむこともできるようである。インターネットラジオがすでに普及しており、それを利用している方も多いと思う。私もクラッシックを一日中パソコンから流して聞いていたこともあったが、MP3など利用して放送局によってはかなりの音質でも楽しめる。その日本版といったものともサウンドステーションは言えるのではなかろうか。もちろんインターネットラジオの放送局は日本にも数多くあるものの、著作権の問題もあってか音楽を楽しむには何分不十分であった。このためサウンドステーションは思いのほか楽しめそうである。


2005.8.22「セミの抜け殻」

我々世代の夏の自由研究のひとつとして昆虫採集というのが定番であったが、最近はめっきり少なくなっている。昆虫採集セットが注射針の問題などで販売されなくなったのが原因なのであろうか。夏の昆虫といえばセミであるが、このセミの抜け殻を通して、その土地の自然度を図る方法があるという。

木や電柱でうるさく鳴いているセミの成虫は、種類によっては5〜10kmも飛ぶそうである。このため、成虫が止まっていた木を調べてもその場所の自然度はわからない。しかし、セミの抜けガラは土の中から這い上がってきた箇所にあるためにその場所の自然度がわかるそうなのである。

京都市職労のホームページによると、この自然度は5段階に分かれるそうである。

自然度0、成虫が見られても、脱皮殻が見られない。
自然度1、アブラゼミ、クマゼミの脱皮殻有り(1種だけでもよい)。
自然度2、ニイニイゼミの脱皮殻有り。
自然度3、ツクツクボウシの脱皮殻有り。
自然度4、ヒグラシ、ミンミンゼミ、ハルゼミ、チッチゼミ、エゾゼミなどの脱皮殻有り。(1種だけでもよい)

上記はあくまで京都近辺のものであるため、関東などでは若干異なる。特にクマゼミは西日本ではよく見られるものの東日本ではあまり見られない。ただし、温暖化の影響もあって最近は関東地方でも見られるようになってきたそうである。江ノ島においても抜け殻が見つかったと聞いたことがある。

セミの抜け殻で自然度が測れるというのも面白い。長期金利が測れるような面白い道具が何かないものであろうか。


2005.8.19「日本版アコードはあるのか」

米国では1930年代の大不況下に米連邦準備理事会(FRB)は大幅な金融緩和に踏み切った。これを受けて、TBの金利は1938年からの3年間にわたってゼロ%近辺で推移した。この1930年代の不況対策に加え、1941年に第二次世界大戦に参戦したことで、米国の国債発行額は大きく膨らんだ。1945年の国債残高はGNPの1.2倍に達したのである(2005年度日本における国の債務残高のGDP比は約1.18倍)。そして政府は連銀を通じて国債を買い支える価格支持策(ペッギング・オペレーション)を採ってきた。この結果、1946年に連銀は市場性国債残高の11.5%を保有していたのである(国債のうち日銀の保有比率は2005年3月末現在14.4%)。

また、カネ余りにより米銀の余剰資金も膨れ上がり、この余剰資金を振り向けたのは国債であった。結果としてFRBは長期金利の跳ね上がりを防ぐことができ、大不況と戦争という危機を乗り切ったこととなる。上記の様子は現在の日本国債を取り巻く環境に、数値を含めてたいへん似ているようにも思われる。

第二次大戦後、今度はインフレ懸念の台頭により、FRBは国債価格を維持する政策の副作用に直面することになった。インフレリスクを防ぐために、1951年に財務省とFRBは「アコード」を取り交わし、国債価格維持を撤廃したのである。 これによりFRBの判断で金融政策が行えるようになり、中央銀行による金融調節が重要性を増すこととなった。財務省は金融政策に依存することなく、債券市場に向き合っての国債管理政策を採用することとなった。

米国は平時への回帰に少なくとも20年もの長い期間を要したことになる。そして、まもなく同様のことが起きそうなのが現在の日本である。10月以降にコアCPIはプラスが継続される可能性が出ており、政府と日銀は景気の踊り場からの脱却を明言している。つまり量的緩和解除の三条件が徐々に揃いつつある、

しかし、財務省は「デフレは依然として継続しており、現状の量的緩和政策を堅持する姿勢に変更がないことを、市場や国民に引き続き示してほしい」と決定会合で要望している。日銀も当然ながら政府や財務省の意向といったものを重視していると思われる。日銀は新日銀法で独立性を保持しているとはいえ、今後の軋轢を防ぐためにも、量的緩和解除に際しては何らかの日本版アコードも必要となろう。どのようなかたちで日銀と財務省がアコードを取り交わすことができるのか。これは来年の大きな注目材料になるものと思われる。


2005.8.19「アグレッシブ」

日常会話で良く使われる英語に「アグレッシブ」という単語がある。私はあまりこれをアグレッシブに使っていない(?)。どうも意味がいまひとつ曖昧なためである。そもそも英語としては、Aggressiveは侵略的・攻撃的といったようにあまり良い意味では使われていないはずである。米語としての積極的とか行動的といった意味合いで使われているものと思われる。同様な意味で使われるものに写真などの用語から派生した「ポジティブ」という単語もあるが、これもいまひとつピンとこない。ポジの反対はネガであり、ポジティブにはネガティブという反対語も存在しているが、日本語として使われるアグレッシブの反対語は聞いたこともない。カッコよく聞こえる、知的会話に聞こえることも確かであろうが、「積極的」という立派な日本語もあるのだから、無理して英語、いや米語を使わなくても良いのではなかろうかと、英会話能力に不自由している私としては考えてしまうのであるが。


2005.8.19「クールビズ」

クールビズが浸透しつつある。通勤時間帯に観察してみるとネクタイをしている人がかなり減ったことに気が付く。世界的なベストドレッサーに選ばれるほどの首相の着こなしが良かったからなのか、今回の省エネルックは一部の期待に反して成功していると思う。ほとんど一年中、クールビズ状態であった私としては歓迎すべきものである。スーツ・ネクタイ姿が男らしいといった見方もあろうが、以前、テレビの取材を受けた際、撮影があることを知らされずカジュアルな格好でテレビに写ったところ、家族内ではスーツよりも良いとの評価もあった(参考にはならないかもしれないが・・・)。

それでも何か公式の場といったところではスーツの着用も必要であろう。しかし、それを毎日普段着のように着ることに対しては私は抵抗がある。特にこの暑い最中ならなおさらであろう。いったんカジュアルを経験するとその過ごしやすさも実感するはずである。今回は政治家から始まってスーツの権化のようにも見られていた(違う?)官僚の人たちも真っ先に導入したようである。いまだに無理にスーツ姿をしているのは銀行や証券など金融業界だけではないかとの指摘もある。命の次に大事なお金を扱う職業からという自負も影響しているのかもしれないが、今では顧客からはむしろむさ苦しい格好とも見られかねない。それぐらい一気にクールビズが普及しているともいえる。なんといっても百貨店売上高を押し上げた要因とも言われているぐらいである。

問題はこの暑さが通り過ぎてからである。防寒対策としてのネクタイ姿というのは、その本来の目的にかなっている。しかし、それを無理に押し付けることはせず、公式な行事、大切なお客様を招いた際など、特別な場合に限ってスーツ着用を義務付け、それ以外の日は、カジュアルな格好も容認すべきではないかと思う。


2005.8.18「誰が債券先物を売買しているのか」

これは東京証券取引所が発表している資料を見ればわかる。東証の方には怒られそうだが、どうも東証のホームページは少しわかりにくい(もちろん私のページが見やすいというわけでもありませんが)。このページの上の東証のロゴの右側にあるのが各サイトへの入り口である。たとえば債券先物の概要とかを調べたいときには「先物・オプション」のところをクリックする。「株式・債券」のところは現物のことで債券先物のページではないのでご注意を。この「先物・オプション」をクリックするとすぐ下に項目がいくつか出てくる。このうち「国債先物取引」をクリックすると債券先物のページにやっと入れる。

今回は先物の売買している人を調べるのが主眼である。これは「国債先物取引」のページには載っていない。そこで、また東証のロゴのところを見ていただき、一番右側の「統計資料」をクリックしてほしい。クリックするとそのすぐ下がまた変るので、その中の「投資部門別売買状況」をクリック。そうするとページが変る。ここのページに掲載されているのである。このページを少し下を探ると「国債先物取引・国債先物オプション取引」という項目がある。これが目指す資料である。たとえば2005年7月といったところのエクセルファイルをクリックしてみる。最初のページは債券先物オプションであるのでご注意を。とりあえずここもチェックすると、プット、コールともに海外投資家が半分以上占めていることがわかる。次にエクセルの場合、下にあるシートのところを見ると「国債先物取引」というシートがあるので、そこをクリックする。これでやっと2005年7月の国債先物の投資部門別売買状況がわかる。

債券先物の売買を行っているのはほぼ3つの部門に集約される。証券と銀行と海外投資家である。2005年7月はそれぞれ42.4%、23.2%、32.6%となっていることがわかる。


2005.8.17「流れを読む」

本日、ワールドカップアジア最終予選、最終節イラン戦が行われる。私自身サッカーは体育の授業でしか経験はないため、本格的な試合でピッチに立って行方を見るといったことはしたことがない。サッカーのように広い場所で、しかも選手やボールの移動速度が速いとその位置を把握するのが状況によっては困難になると思われる。テレビ観戦していれば常に上からカメラがボールを追っているため、確認は容易だが、選手達にとっては三次元空間というより二次元の空間にいる感じに近いものと思われる。

そのような状況でボールの位置を確認するため、あるブラジルの選手が行っていたといわれるのが、観客の視線を確認することであったという。記憶が確かならば、その選手とはペレで、それを指摘していたのがジーコであったと思う。観客の視線までもボールの位置確認の武器として利用するというのはいかにもプロらしいと思われる。そもそもプロでなければそれほど観客も入っていないとも思われるが。

債券相場の流れを読む上でも、ただ単に先物や現物の値動きを追うばかりでなく、市場参加者の視線がどこを向いているのかといったものをしっかり認識しなければならない。


2005.8.17「つくばエクスプレス(TX)」

「つくばエクスプレス(TX)」は8月24日の開通を前に着々と準備も進んでいるようである。昨日、予約してあった定期券を受け取りに「新御徒町駅」に行った。定期代はややJRより高かったが、通勤時間を片道30分程度短縮されることを考えれば止むを得ないものと思う。つくば秋葉原間が最速45分で結ばれることとなるが、昔住んでいた横浜の金沢文庫から乗換えで秋葉原までがやはり45分程度。つくば市も完全に通勤圏内となる。新駅の沿線周辺の開発も進んでいるものの、まだまだ都心あたりの認知度も低い模様。緑の豊富な田舎に生活したいけど通勤時間はできるだけ短いほうが良いとお考えのあなた。ぜひTXを利用してはいかか。と、何故か宣伝してしまっている自分がいたりする。ご興味のある方は、まずはこちらTXのホームページをご参照ください。


2005.8.16「地方自治体の市場化テスト」

15日の日経新聞によると、地方も市場化テストの導入に動き始めたようである。

東京都足立区は印鑑登録、納税証明書や住民票の発行等区民事務所での窓口業務のほか、地方税の徴収、戸籍事務などを対象に市場化テストの準備を進めている。ちなみに足立区は、行政改革先進自治体として、学校給食等の民間委託をはじめとする先駆的な試みを積極的に進めており20年余で2000名近くの職員削減を達成するという実績を残している。また、官民共同による職業紹介事業により1年間の就職者が2000人を超えたといった実績もあるようである。

大阪府は全国の自治体で初めて「市場化テストガイドライン(指針)」を発表している。府民向けの広報、統計整備などの調査業務が候補にのぼっているという。大阪府のガイドラインの特徴は、国に準じた「官民競争入札型」とは別に、独自の「提案アウトソーシング型」を設けたことである。これは、現行の行政コストやサービス水準を上回る効果が期待される事業について、知事が民間事業者から提案を公募し、経営判断や創意工夫を含めて包括的に民間委託する手法である。

埼玉県の志木市も行政改革に積極的に取り組んできているようである。前市長の穂坂市長は部長級の職員が市の事業すべてについて廃止、縮減、事業の見直し、継続の4つに仕分けし、ほぼ半分の430事業について廃止を含む何らかの見直しを行った。たとえば市長車に運転手をつけず、手の空いている職員がハンドルを握る。職員の執務スペースの清掃は業者に任せず自分でやるといったことで費用削減に努めたようである。また、公共事業を市民に選択するという「公共事業市民選択権保有条例」なども制定した。そして今後は上水道の管理・運営など専門性の高い業務などに市場化テストの手法を取り入れるようである。


2005.8.15「縄文時代」

娘達の夏休みの宿題を見ていたら、歴史年表に「縄文時代」が抜け落ちていた。発掘調査によって新たな事実が明らかとなり、私が学んだ縄文時代と弥生時代の歴史教科書の記述は大きく違ってきている。

縄文時代の遺跡としてテストには暗記必須となっているのが三内丸山遺跡(さんないまるやまいせき)である。県営の野球場を建設するため1992年から行われた本格調査で発見されたため、私の頃の小中学校の社会の教科書には記述がなかったのも当然である。三内丸山遺跡の発見によって、竪穴住居や高床倉庫のほかに祭祀用と思われる大型掘立柱建物が存在した跡が発見されている。定住生活をしていたことや、クリやマメなどを栽培していたこともわかっている。

そして縄文時代にはすでに熱帯ジャポニカの焼畑稲作が行われていた。つまり稲作も始まっていた。縄文という名前の由来にもなった存と煮炊きに使う縄文式土器を作り、打製石器だけでなく磨製石器や骨角器も作っていたうえに舟をも用いていた。

私の頃の教科書のイラストなどから縄文時代は原始人のような人々が暮らしていたとのイメージを持ってしまっていたが、そもそも縄文時代とは、今から約1万3000年前ないし1万年前から紀元前3世紀までの約1万1000年〜約8000年間とされている。

紀元前3世紀といえば、 秦の始皇帝が中国を統一したり、 ローマとカルタゴとの間で第ポエニ戦争が始まったりしている時代である。いくら当時の日本が遅れているとはいえ、原始人のような生活をしていたとは思えない。すでにこの時代に日本でも古墳なども発見されている。

このあと700年程度経て4世紀後期あたりからは全国的に前方後円墳の分布が拡大していることから、大和朝廷の支配権が全国へ伸展したと見られている。現在の時の流れに比べ、はるかに時がゆっくりと流れていた時代での700年程度というのはそれほど大きな変化があるとは思えない。日本の古い歴史が古事記や日本書紀の記述を元にして見られていたことによって、それ以前の姿は明らかになっておらず、そのために認識に大きなギャップが生じているのではないかと思われる。縄文式土器を使っていた人たちは実際にはどのような生活を営んでいたのであろうか。


2005.8.15「経験から学ぶ」

日経新聞のコラム欄で、前税国国務長官のコリン・パウエル氏は、若かりしころの軍の極秘任務で携行のピストルをなくした経験談をもとに、「人間とは多くの経験から学び、そこから作り出される生産物(product)なのだ」と結論付けた。

若いうちに、とにかく何事にもチャレンジして失敗を繰り返すことで将来への貴重な経験となる。多かれ少なかれ、年を重ねるにつれ自らの立場といったものも障害となって、人は失敗を恐れるあまりチャレンジ精神は薄れてしまう。

そして、それなりの役職についたベテランは若い人たちのチャレンジ精神を生かすためにも、パウエル氏の言う「The buck stops here(責任は私にある)」という立場を明確にすべきである。

また、「自己責任」という言葉が独り歩きしつつあるように思うが、リスクのあるものに対しての情報を得てリスクの所在を確認するためには、ある程度そのリスクにさらされた経験が必要になる。それをしっかり伝えなければ、責任だけをむやみやたらに押し付けることにもなりうる。

投資は自己責任で、とも言うが相場の本当の恐さはそれを経験したものでないとわからない。言葉で伝えるのも難しいかもしれないが、なんとかその恐さを伝えなければリスクをしっかり認識してもらえない。戦争の恐さも同様であろう。今日、終戦から60年目を迎える。


2005.8.12「1.5%を抜けたなら」

今回の長期金利上昇の背景には、9日に政府や日銀が景気の踊り場脱却を表明したように、景気の回復基調がある。輸出に持ち直しの動きがあり、設備投資も緩やかな上昇基調が続いている。そして予想以上に個人消費が増加基調になっている。また、参院での郵政民営化法案の否決による衆院の解散総選挙により、特に海外投資家などは日本の構造改革が進むとの期待から日本株を大量に買ってきており、日経平均株価は12000円の大台に乗せ12300円をつけてきている。

懸念されているのが海外動向と原油価格である。中国は元の切り上げを実施したがその幅が予想より小幅に止まっていたことなどから、これによる影響は大きくはなかった。米経済は物価や賃金の上昇圧力が高まっているものの底堅い成長が続いている。9日のFOMCで10回目の利上げが実施されたように適格な金融政策でうまく舵取りされていると思われる。そして、ここのところ高値を更新し続けている原油価格についても、注意は必要ではあるが、日本の景気回復の腰を折るほどの影響とは今のところはなっていない。

長期金利の上昇要因となっているものに時間軸の縮小もある。今回の金利上昇はオペ金利の上昇など短期金利の上昇も伴っている。また中短期債も売られ2年債も11日に0.185%に上昇している。

日銀の福井総裁も今年末から来年初めにかけて、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比がプラスの領域に入っていく可能性があるとコメントしていたが、早ければ7月のコアCPIからプラスに転じる可能性がある。そして特殊要因が剥落してくる10月以降はコアCPIがプラスになる可能性が高い。一部報道によれば、日銀は来年前半にも量的緩和を解除するシナリオを描いているそうだが、たとえば今年10月から来年にかけてコアCPIがプラスを維持してきた場合には、量的緩和解除の条件は徐々に揃いつつある状況になろう。このため市場でも市場コンセンサスよりもやや前倒しで量的緩和が解除される見方も強まってきたものと思われる。

10年債の利回りが9月末までの目標値であった1.5%に接近し、5年債の利回りも0.7%に接近しつつある。ここは大きな節目とも見られ、投資家の押し目買いなども期待される。しかしここで下げ止まるかといえば、そうは思えない。日経平均株価のチャートなどを見ると大きく上抜けてきたことがわかるように、今回の新たな動きはまだ始まったばかりとも言える。

節目節目では投資家の買いが入ることで、一方的な下落とはならず緩やかな金利上昇になろう。長期金利の1.5%を抜けてきた際に、債券の次のターゲットとなるのが、5年の1.0%と10年の1.8%近辺かと思われる。


2005.8.12「夜のピクニック」

恩田陸さんの小説「夜のピクニック」。23万部を売り上げているベストセラーにもかかわらず、しかも前から気になっていたにもかかわらず読んでいない。そろそろ本屋に行って買ってこようと思っている。すでにこれを原作とした映画撮影も順調に進んでいるとのこと。

なぜこの小説が気になっていたのか。恩田陸さんの出身高校が水戸一高であり、その伝統行事でもあった「歩行祭」が小説のもとになっていたためである。

茨城県の進学校と言えば、私の高校時代はなんといってもこの水戸一高が飛びぬけていた。その水戸一高と私の母校の土浦一高は、私の在校当時「土水戦」と呼ばれる交流戦が年一回それぞれの高校で交互に開かれていた。交流戦というのも、メインが野球の試合であったためであるが、そのほかのクラブも体育系に限らず交流戦を行っていた。

当時の水戸一高は、勉強ではなかなか追いつこうとしても追いつくものではなく、少なくとも野球の試合ぐらいは負かせてやろうと在校生も必死になって応援した記憶がある。現在では東大の進学率等などは土浦一高が上回っているが、これは、あくまで「つくば研究学園都市」というIQのとても高い方々がわんさか集まった都市が出来て、その師弟が大きくなり、近くの進学校たる土浦一高に通ったためと言われ、水戸一高に追いつこうとのがんばりによるものではなかったと想像される(違うかなあ・・・)。

それはさておき、この水戸一高の「歩行祭」だが、この存在は当時も聞いていた記憶がある。また、これに対抗すべく土浦一高でも、夜ではなく昼であったが、筑波山までの歩く会も開催されていた。

当時のことは、こういったイベント中心に深く記憶に刻まれている。恩田陸さんもやはり同様であったと思われ、それで「夜のピクニック」という小説が出来たのではないかと思う。恩田陸さんは1964年生まれということで、土水戦でご一緒する機会はなかったようであるが、そんなに歳が離れているわけでもない。早速本屋に行って当時の記憶を呼び覚ませてみたい気がする。


2005.8.11「牛さん熊さんの本日の債券(号外)」
熊「おとなしかった債券相場も牙をむいてきたという感じだな」
牛「需給要因に支えられていた相場もいよいよ状況が変化してきた」
熊「日経平均先物は11290円と11300円に接近」
牛「しかし、衆院解散総選挙で景況感まで一気に変わってくるとは」
熊「これまでだって福井さんは踊り場から脱却しつつあると言っていたのに」
牛「それでも海外勢などは日本の構造改革が進まないと本格的な回復は無理と」
熊「ところが、郵政法案の参院否決で今度は一気に構造改革が進む可能性が見え」
牛「海外投資家主体に一斉に買いを入れてきたものと思われる」
熊「いったい政治家は何をやるべきであったか、これで理解してくれるのかな」
牛「マーケット参加者も構造改革などできはしないし量的緩和解除など無理と」
熊「そういった見方も強く9月末に向けて長期金利は1%割れかとの記事なども7月に」
牛「作者はおいおいと、対抗するわけやなかったけど7月上旬に」
熊「長期金利は9月までに1.5%に上昇するとレポートしていた」
牛「今日はその10年270回は1.475%に利回りが上昇し1.5%に接近」
熊「1.5%は通過点といった見方も広がっているようだが」
牛「それでも大きな節目であることは間違いない」.
熊「5年47回は一時0.690%まで利回りが上昇」
牛「5年国債の入札結果発表後に一時0.665%が買われたんやが」
熊「今回の入札はこういった地合いの中だけに投資家さんもかなり慎重となり」
牛「セカンダリーニーズには乏しかったものと思われる」
熊「結局引け際に0.685%まで売られている」
牛「ちなみに、5年国債入札の結果は最低落札価格100円12銭、平均13銭」
熊「予想より良かったものの、そんなに無理しなくてもと思ったんだが」
牛「業者さんもある程度のシェアも必要やし、事前にヘッジも進んでいたろうし」
熊「入札結果発表後はやや上げ下げを繰り返していたが」
牛「日経平均先物が明日のGDP発表を控えてか、再び動意を示し始め」
熊「一時11290円と11300円に接近」
牛「これを受けて債券先物は5か月ぶりとなる138円割れに」
熊「大引けも138円を割り込んで137円95銭の引けとなった」
猫「円金先の価格急落で東京金融先物取引所は緊急証拠金制度を発動したそうよ」
熊「いよいよ金利も正常化に向けて動き始めた」
猫「ということはそれなりの動きも覚悟する必要があるということね」
牛「これからがたいへんやな」
「牛さん熊さんの本日の債券」の購読お申し込み等につきましては、
「債券ディーリングルーム」(http://fp.st23.arena.ne.jp/)のお知らせをご覧ください

2005.8.11「福井日銀総裁記者会見」

景気について・・・。
「前回、『踊り場局面から脱却しつつある』と言ったが、今回も同じかというと同じではなく、少し前進している。」
牛熊「同意、政治的配慮というのはやや考えすぎであると思う。元々景気については強気のコメントを出されていた上、最近の経済指標もそれを裏付けている。」

物価について・・・。
「本年末から来年初にかけて、米価格の下落や電気・電話料金引き下げといった特殊要因の影響が剥落していく過程で、プラスに転じる可能性が高くなると判断している。」
牛熊「同意、とりあえず7月にもプラスになると私は予想・・・。」

解散総選挙に関して・・・
「長期的に考えれば、日本経済の新しいダイナミズムを確立するためには、民間部門だけではなく、公的部門のリストラ、構造改革がしっかり伴っていって初めて完成形に近づいていく。将来の課題は非常に明確である。従って、今後の政治情勢の展開が、公的部門の構造改革推進という国民の期待にしっかりと沿うようなかたちで進展していくことが、経済にとって非常に重要である。」
牛熊「民意もどうやらその方向を向いてきたように思われる。やっと普通の国になりつつあるのか、わがニッポン?」

3日間の当預目標下限割れについて・・・
「十分ご承知の通り、このごく短期間の下限割れに、市場が格別動揺を示しておらず、市場は「なお書き」適用の範囲内と冷静に受け止めている。このような事実からもわかる通り、日本銀行と市場の間のこの点に関するコミュニケーションには、一切ほころびがない。従って、今回は、下限割れについての日本銀行の理解、つまり資金需要が著しく後退する局面における一時的な下限割れという文字通り定義の範囲内にしっかり入っている。金額的にも、時間的な長さもしっかり入っている。」
牛熊「すみません、まさか3日で済んでしまうとは思っておりませんでした。そこまで読んでおられたとしたら、すごい・・・。」

マニフェストについて・・・
「マニフェストと金融政策の関係については、ご承知の通り日本銀行法では、金融政策は、これも一から十まで完全に日本銀行政策委員会・金融政策決定会合で決定するもので、100%日本銀行の責任の範囲内にある。マニフェストとは切り離して理解されるべき性格のものだと思う。」
牛熊「民主党はまたマニフェストにゼロ金利・量的緩和解除の終息を盛り込む方針だそうですが、私もこれにはかなり違和感が・・・。」

長期金利について・・・
「債券市場を見ると、長期金利がごく僅かずつ上がってきているが、リスク・プレミアムが上がっているとか、期間プレミアムが上がっているというような不安定な状況は出ておらず、市場は落ち着いている。為替市場も比較的安定した動きが続いている。」
牛熊「落ち着きながらもじりじりと上昇するとの私の読みですが。今回、長期金利の2%までにはそれなりの時間もかかりそうです。年内は無理かもしれませんね。もちろん急激な金利上昇は日銀も政府、財務省も避けたいところかと思われ、現在の状況は居心地も良いものとも思われます。」

財政収支の均衡について・・・
「民間企業、民間金融機関は、新しい局面に入りつつあるとの認識を強めて、長い時間的距離をもった先行きの展望に立って新しい戦略を生み出す段階に入ってきている。財政再建、社会保障制度の改革、郵貯、政府系金融機関のあり方、いずれについても、今後の長期を展望した改革のプログラムを明確に認識した上で行動していく必要もあり、そうでなければそれらと民間部門の新しい戦略との平仄が合ってこないことになる。今後どのように政治が形成されていくかに関係なく、政治に対しては経済の面からそういう意味での強い要請が出てくることはおっしゃる通りだと思う。その改革のプログラムがしっかりしたものであり、特にその根底に財政規律がきちんと強化されていき、さらに世代間の利害対立が民主的なプロセスを経てきちんと調整される、といった認識が非常に重要である。また、その改革のプログラムの実行の過程においては、その時々の経済情勢に応じて、ある程度弾力的にこれを実行に移していく、このような認識が国民の皆様の間で共有されていくことが非常に重要であると思う。」
牛熊「せっかくのこの機会、しっかりした改革プログラムを次期政権には作っていただきたいと私も思います。」


2005.8.10「新たなステージ」

東京株式市場における本日の外資系12社の寄り前の状況は、売り3060万株に対して買いは6270万株となり、差し引き3200万株の買い越しとなった模様である。この時期としては破格の買い越し額となり、日経平均は再び12000円の大台を回復した。

衆院解散総選挙となって政治的な空白期間が生じるというのに、海外投資家に加えて国内の機関投資家まで日本株への買い圧力を強めている。政府と日銀は景気の踊り場脱却を表明し、もちろん日本の景気回復への期待もあろう。しかし、それ以上に日本の構造改革進展への期待が強まっているのではなかろうか。

海外マスコミも小泉首相は日本を「普通の国」に進化させようとしているとして、小泉改革への期待感を強めている。国内においても小泉内閣の支持率が上昇するなど、国民自体も改革進展への期待を強めている。企業に加え政府もしっかりリストラクチャリングを行えば、大きな足枷となっている莫大な政府債務問題も緩和されてくる期待もある。国民の意識もだいぶ様変わりしてきたようにも感じられる。

日経平均株価の12000円は大きな壁であった。しかし、今回の買いはこの壁をやっと抜け出すような動きとなっている。そうなれば東京株式市場もあらたなステージにトライすることとなる。踊り場からの脱却は景気だけでなく日経平均株価も同様となりそうである。そして日本自体もあらたなステージ入りする期待もここには込められていそうである。


2005.8.10「郵政民営化関連法案、参院本会議で否決による債券市場への影響」

8日の午後1時に郵政民営化関連法案が参院本会議で採決され否決された。先行きへの政局不安も高まったものの、結果とすれば、あらためて国民の声を聴くということは必要なのかもしれない。郵政民営化を主体とする小泉構造改革は、反対派が自民党内 にいることで本来の目的からやや乖離しつつある。構造改革自体が妥協を重ねるうちに民営化との流れがすっきりしたものとならなくなっている。そのため選挙 を行うことで、小泉政権後も財政構造改革、民営化、市場化、小さな政府といった方向性をさらに強固なものとしてほしいと思う。

  自民党も仮に構造改革に反対する人たちが多く残ってしまうようでは、今後の改革の妨げにもなろう。リニューアルした改革派がしっかり政権を担って、これ までの中途半端な改革ではなく徹底した改革を進めなければならない。日本の巨額債務を見るまでもなく、これには国の存亡すらかかっているといっても決して過言ではないはずである。

衆院は解散総選挙となったがこれによる債券市場へのインパクトを考えてみたい。福井日銀総裁がコメントしていたように、日本では景気の踊り場からの脱却の可能性が次第に強まっている。今年度の設備投資計画も15年ぶりの2桁増となるなどしており、個人消費も好調。ガソリン価格の上昇など懸念材料もあるものの、引き続き経済は上向きの状態が続くものと見られる。解散総選挙による政治的な空白期間も懸念されていたが、今回の景気回復はこのように民需主導であり影響は限られる。

すでに長期金利は上昇トレンド入りしたものと見ており、今回の衆院解散総選挙によってこの流れが変わるとは思っていない。小泉改革は財政の援護がなくても景気は回復できることを示した。むしろ財政出動による景気刺激といったものは今行われたとしても百害あって一利なしといった状況にすらなっている。

今回の金利上昇は長期金利だけではなく短期金利も上昇圧力を強めている点に注意したい。10月以降の全国コアCPIのプラス転換もほぼ確実視され、量的緩和解除に向けての条件も徐々にではあるが整いつつある。日銀も早ければ来年前半の量的緩和解除も視野に入れているとも見られている。誰が政権を取るかによって、日銀の金融政策の自由度に変化が生じるとの見方もあるが、現政権に比べて大きな変化が出る可能性はむしろ薄い。

好調な需給なども反映して長期金利の上昇ピッチは鈍いものの長期金利はいずれ1.5%を抜けてくるものと思われる。しかし、ここもやはり通過点になるものと予想している。

(レポート原稿のため、一部これまでの内容と重複しております。)


2005.8.9「流れはリニューアル自民党か」

衆院が解散し、9月11日が投票日と決まった。各マスコミの論調は予想以上に小泉自民党への期待を強めているように思われる。流れは小泉新自民党にある。金融市場関係者においても小泉改革支持派が多い。これはたしかに市場関係者にとって市場化の必要性は身を持って感じているためであろう。

国民の声は改革を望んでいるものと思われる。仮に今回の選挙で小泉自民党が勝った場合、小泉さんの後継者がもし改革派でなければ、国民が納得しないであろう。そして、すでに人事などでも透明性を強めた結果、それを元の密室人事などに戻すことなども誰も納得できないはずである。自民党が今回の選挙で勝ったならば、政権維持のためには改革への意欲をさらに高めてもらわなければいけない。

ただし数の上では、小泉自民党もなかなか厳しい状況に変わりはない。民主党が政権を握る可能性もありうる。しかし、国民の過半数以上が郵政民営化を支持している以上、内容はともあれ、それに民主党が反対していたことは不利に働くものとも見られる。そして民主党にももっとしっかりと現実的な改革路線を主張してほしいものである。


2005.8.8「長期金利は1.5%を目指す」

郵政関連化法案は参院で否決懸念され、衆院は解散総選挙となり不透明感も強まったものの、ファンダメンタルズの良好さが意識されこれによる株の下落なども一時的なものに止まった。中国や米国の景気減速懸念も次第に払拭され、日本でも景気の踊り場からの脱却の可能性が次第に強まっている。今年度の設備投資計画も15年ぶりの2桁増となるなどしており、個人消費も好調。ガソリン価格の上昇など懸念材料もあるものの、引き続き経済は上向きの状態が続くものと見られる。そして物価巣動向も注目したい。7月の全国消費者物価指数も前年比ゼロもしくはプラスとなる可能性がある。

長期金利は上昇トレンド入りした。好調な需給なども反映してピッチは鈍いものの、じりじりと上昇基調となっている。今回の金利上昇は長期金利だけではなく短期金利も上昇圧力を強めている。10月以降の全国コアCPIのプラス転換もほぼ確実視され、量的緩和解除に向けての条件も徐々にではあるが整いつつある。日経平均の12000円はあくまで通過点となるものとみられる。長期金利はいずれ1.5%をトライしてくるものと思われる。しかし、ここもやはり通過点になるものと予想している。


2005.8.8「郵政民営化関連法案、参院本会議で否決」

本日の午後1時に郵政民営化関連法案が参院本会議で採決された。結局、反対125票、賛成108票の大差で否決された。知り合いの方が郵政民営化準備室で大変なご苦労をされていたこともあり、個人的には通してほしいとの気持ちも強かった。

しかし、結果とすれば、衆院の解散、そして総選挙というかたちであらためて国民の声を聴くということは必要なのかもしれないとも思う。郵政民営化を主体とする小泉構造改革は、反対派が自民党内にいることで本来の目的からやや乖離しつつある。構造改革自体が妥協を重ねるうちに民営化との流れがすっきりしたものとならなくなっている。そのため選挙を行うことで、小泉政権後も財政構造改革、民営化、市場化、小さな政府といった方向性をさらに強固なものとしてほしい。

結果として、国民がどのような答えを出すのかは読みづらい。選挙となれば既得権益を持っている人たちが結集してがんばってしまう。それを突き崩すためには、浮動層と言われている人たちが動かなければならない。民主党が政権を取るとの予想もあるが、郵政民営化についても非常に中途半端な位置にいたことで、強く財政構造改革が打ち出せるとも思えない。今回の選挙で棚ボタ式に政権を取ったとしてもあまり期待はできないのではなかろうかと、私は思う。

自民党も仮に構造改革に反対する人たちが多く残ってしまうようでは、今後の改革の妨げにもなろう。リニューアルした改革派がしっかり政権を担って、これまでの中途半端な改革ではなく徹底した改革を進めなければならない。日本の巨額債務を見るまでもなく、これには国の存亡すらかかっているといっても決して過言ではないはずである。


2005.8.5「村尾信尚さんの特別寄稿」

「もうひとつの日本を考える会」でお世話になった関西学院大学教授の村尾信尚さんの特別寄稿が、4日に発行された小泉首相メルマガに掲載されています。「官から民への大政奉還」はすぐにも実行していかないと、大げさに聞こえるかもしれませんが国の存亡にも関わってくる可能性があります。「巨額の赤字をつくり、融通の利かない官は、そろそろ退いてもらわなければなりません」。まさに同意です。よろしければぜひお読みください。


2005.8.4「メガバンク統合と日銀当座預金残高目標値の技術的引き下げの可能性」

7月29日の当座預金残高は6月3日以来の目標下限割れとなり、8月3日以降8日もしくは9日あたりまで下限割れが続く予定だが、これについてはあくまで「なお書き」修正で対処するようである。少なくとも10日あたりには再び30兆円以上となることが明らかとなっているため、一時的との解釈であろう。

これにともなう当預残目標値の技術的引き下げは今回なかったが、年内にもうひとつのチャンスが存在すると見られていた。それはメガバンクの統合に伴うものであった。

7月28日の読売新聞ネット版において、今年10月に合併が予定されている東京三菱とUFJについて、みずほフィナンシャルグループの時のようなシステム障害が発生する懸念が払拭しきれない可能性が出ており、金融庁が銀行法に基づき、システム統合作業の進展状況に関する異例の再報告を求め、三菱東京と UFJは事実上の合併延期要請と受け止め、両銀行の合併を延期し、来年1月以降にする方向で検討に入ったようであると伝えた。

上記記事については、最終テストが今月末に控えているため、やや先走った感もあると指摘され、実際に他紙での同様の報道はなかったものの、市場関係者の間では延期される可能性は高いとも見られている。

もし、両メガバンクの合併が延期されるとなると、当事者だけでなく別途日銀のシナリオが狂ったとのではないかとの思惑も広がった。日銀は当座預金残高が大量に存在するメガバンク2行の合併を理由に、日銀当座預金残高目標値の技術的引き下げを模索していた可能性があると考えられていたのである。確かに日銀当座預金残高目標値の技術的引き下げに対して名目が立つ大きなチャンスであることに間違いはない。これには財務省や政府なども反論するのも難しいものと思われた。しかし、実際に合併が延期となれば年内唯一とも思えた引き下げのチャンスも消滅しかねない。

この可能性もなくなったとなれば、日銀の当預残の技術的な引き下げは行われず、10月以降のCPIの推移や経済動向を見ながら、早ければ来年の1〜3月あたりにかけて、直接、量的緩和政策が解除される可能性が高いものと思われる。

ちなみに、メガバンク統合に伴う日銀当座預金残高目標値の技術的引き下げに関する憶測については、メガバンクの当預残が明確になってしまうこともあり、実際には実現性は薄いとの見方もあった。


2005.8.4「鷹くん鳩さんの日銀ウォッチング」

「一時的って」

・・・・・・・・・・ はじまりはじまり

鷹「7月29日に日銀の当座預金残高が目標値下限の30兆円を割って」
鳩「8月3日からしばらくの間、30兆円割れが続くようね」
鷹「こらこら、しばらくではなくて一時的と言いなさい」
鳩「一時的って何日ぐらいのことなの」
鷹「辞典では、しばらくの間だけであるさまとなっているぞ」
鳩「じゃあ、来週の8日とか9日まで続いても一時的と言うわけね」
鷹「なんか思ったよりも短期間に済みそうになっている」
鳩「景気の踊り場からの脱却期待に」
鷹「思ったより早めに消費者物価指数もプラスになりそうだし」
鳩「それで短期金利には上昇圧力が強まり」
鷹「今のうちにと資金を取りに行っている」
鳩「期間10か月程度の手形オペの金利が上昇している反面」
鷹「期間3か月のFBの入札なんかは金利ゼロが続いている」
鳩「短いところは運用難、長くなると状況が変るとの読みなの」
鷹「大手銀行さんも、Xデーに向けて着々と準備?」
鳩「金先なんかも売りが入り債券先物もかなり重そうなのもそのせいかしら」.
鷹「債券先物などは海外からの売りもだいぶ入っていると熊さんが言っていた」
鳩「日経平均も12000円の大台に一時乗せたわね」
鷹「景色もだいぶ変わりつつある」
鳩「それでも金利の動きはまだ落ち着いているわね」
鷹「景気が良さそうなのはわかるけど」
鳩「いざ日銀が動くとしても、まず条件のひとつCPIがプラスにならないと」
鷹「まずはそれからだろうな」
鳩「それにしてもガソリンの価格もさらに上がっているわね」
鷹「それによる景気への影響も木になるところではあるものの」
鳩「それは消費者物価の押し上げ要因ともなる」
鷹「景気回復の裾野が拡大すると価格転嫁もこれまでよりも容易になる」
鳩「実際にそういった動きも出ているとも言われるわね」
鷹「来週は8日から9日にかけて金融政策決定会合が開催」
鳩「その解説はまた10日あたりにアップいたします」

・・・・・・・・・・続く。

2005.8.4「米30年債発行再開」

米財務省は、30年物米国債の発行を2006年1-3月から年2階のペースで再開することを発表した。2001年にいったん30年国債の発行は停止されていたが、財政赤字の増加などから方針を転換した。


2005.8.4「2005年度設備投資計画11.6%増」

日本政策投資銀行が発表した設備投資調査(6月実施)によると20054年度の設備投資計画は全産業で2004年度実績比11.6%増の22兆3620億円となった。二桁増は15年ぶり。


2005.8.3「長期金利の市場機能回復」

日銀による量的緩和政策は、ある意味金利の振動を止まらせた状態、つまり金利を絶対零度に押さえ込む異常とも思える政策であった。これを受けて長期金利の振幅は限られ、どれほどの国債が供給されようが、それは吸収され続け、所謂好需給という環境を形成してきた。しかし、長期金利は本来、ある程度の振幅を繰り返しながら、その居所を調整していくものである。そして、それは本来、日本経済や物価動向を先読みして動くものであるはずが、日銀の量的緩和政策によって押さえ込まれ、むしろ遅行指数と指摘されるようにすらなっている。

デフレが悪化し日本経済にとって回復の兆しがない状態となれば、金利を絶対零度に押さえ込んでも、デフレ解消と景気回復を図ることは許されるかもしれない。しかし、日本経済が本当の意味でのリストラクチャリング(再構築)が進み、体力を強化した企業も米国や中国経済の影響などを受けて攻めの姿勢に転じている。これが雇用にまで影響するようになり、個人消費も予想以上の回復を見せている。企業によってはソニーのように戦略の失敗から業績回復が遅れているところもあるが、それが日本経済の足枷になるとも思えない。

これまで、勝ち組や負け組との表現が良く使われていたが、これは特に負け組を意識したものであった。しかし、ここにきて注目されるようになったのは勝ち組である。リストラを進め、世界経済の回復基調に乗れた企業の中では過去最大級の業績を出しているところも多い。

競争激化により価格転嫁が進行せず、特に消費者物価指数の上昇は抑えられてきた。消費者の中でも格差の広がりが生じ、希望格差社会なる言葉も流行していた。ニートや少子化といった問題が日本経済の回復を妨げるとの見方もある。しかし、市場化の進行はある程度の格差を生じさせることはいたしかたない。個人も自己責任能力を強め、負け組に入らない努力が求められる。反面、勝ち組による消費などが全体の消費を底上げさせる力をも持つようにもなる。米国社会などが良い事例ともなろう。

このように日本経済も姿を変えて、回復の兆しを強めるとともに物価に上昇圧力がかかりつつある。日銀も絶対零度に押さえ込んだ冷却装置の解除スイッチを押すタイミングを見計らっている。長期金利も徐々に市場機能を回復しつつあるように見える。

長期金利の市場機能が回復するとなれば、ある程度の価格の乱高下は避けられない。巨額の国債残高を抱えた上での長期金利の市場機能の回復は市場関係者にとっても未体験ともなる。今後の長期金利の動きには細心の注意も求められよう。


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