「若き知」
「過去データは一番下に移行しました」


2008.4.30「日銀の展望レポート」

本日、日銀の展望レポートが発表された。金融政策の運営については、まずは2つの柱の点検があり、その前提としての中長期的な物価安定の理解については、消費者物価指数の前年比で0〜2%程度の範囲内にあり、委員毎の中心値は大勢として1%程度とした。

2009年度までの経済・物価情勢について最も蓋然性が高いと判断される見通しは、日本経済は当面減速するが見通し期間全体では概ね潜在成長率並みで推移、コアCPIは均してみれば1%程度で推移する可能性が高いとしている。

第2の柱子の長期的な視点からは、景気の下振れリスクに最も注意する必要があるが、物価下落と景気悪化の悪循環が生じるリスクは小さいとしており、物価については上振れるリスクがあるが、中長期的な物価安定の理解から大きく乖離する可能性は小さいとしている。ただし、緩和的な金融環境の長期化が経済・物価の振幅をもたらすリスクは、引き続き存在し、経済の減速や下振れリスクの高まりを背景に、金融市場における先行きの利上げ見通しは後退したとしている。

そしてここがポイントとみられるが、現在のように不確実性が極めて高い状況のもとで、先行きの金融政策運営について予め特定の方向性を持つことは適当ではないと、より中立的なスタンスを明確化した。

2008〜2009年度の政策委員の大勢見通し、政策委員見通しの中央値は2008年度が+1.5%、2009年度が+1.7%、そして、コアCPIは2008年度が+1.1%、2009年度が+1.0%となっている。


2008.4.30「3月の鉱工業生産動向速報値」

経済産業省が30日発表した3月の鉱工業生産動向速報値は、指数水準は106.8(季節調整済)となり、3月の生産指数は前月比3.1%の低下と2か月ぶりの低下(前年同月比は0.4%の低下)となった。生産の低下に寄与した業種は、輸送機械工業、一般機械工業、金属製品工業等であった。(経済産業省ホームページより)

ちなみに、2月の鉱工業生産指数確報値は5年に1度の基準年の改定があり2000年基準から2005年基準となり、速報値よりも0.7ポイント上方修正され110.2と過去最高となっていた。

同時に発表された製造工業生産予測調査は、4月が0.3%の低下、5月は3.4%の上昇を予測。また、3月の出荷指数は前月比3.9%低下の107.0で、在庫指数は同0.2%上昇の105.6、在庫率指数は同6.7%上昇となっていた。経済産業省はこうした生産の動向について「総じてみれば、生産は横ばい傾向で推移している。」と基調判断を据え置いた。


2008.4.28「初の債券先物のサーキット・ブレーカー制度発動」

4月25日の債券先物取引では、債券相場の急落により初めてサーキット・ブレーカー制度が発動された。特に25日に悪材料が出たわけではないが、債券相場が調整局面入りしており、ストップロスなどが入りやすい状況にあったことで、そういったポジション調整の動きによって下げが加速されたものとみられる。

今回の下げの背景には、欧米の金融機関の1-3月期決算が予想されたほどの悪化ではなく、また増資等も発表されたことで金融リスク不安が後退した。米国の大手企業決算も予想を上回るものが出ており、米経済指標もしっかりしたものも出ており米経済への過度の悲観的な見方も後退した。29日から30日にかけてのFOMCでは0.25%の小幅利下げが予想されているが、これでいったん利下げは打ち止めといった見方も強まった。これを受け米2年債利回りは24日にFRBの政策金利の2.25%を上回るなど米債も下落基調となっていた。

またドルも買戻されたこともあり、東京株式市場もこの円安ドル高も好感し、米株の上昇も加わって日経平均が13000円台を回復したことも、債券相場の上値を抑える要因となった。

米経済の減速懸念などの影響が国内経済への影響も危惧され、日銀による4〜6月の利下げ観測などもあったことなどから大手銀行などは2月から3月にかけて中期ゾーン主体にポジションを積み上げていったとみられる。しかし、米経済への懸念の後退とともに日銀のよる早期利下げ観測も後退し、債券先物は3月19日の141円91銭を高値に調整局面となり、2月末あたりからの上昇相場は終焉した。

4月17日あたりからは下げ足が加速されたが、中期ゾーン主体に大手銀行によるポジション調整等が入ったものとみられ、5年債は4月24日に1%台に乗せ、さらり利回りが上昇基調を強めたことで、リスク管理上のロスカットなども働いたことで、さらに売りが入り、5年債利回りは1.1%から1.2%台に利回りが急上昇した。

債券先物にはヘッジ売りなども入り、CTAなどのストップロスも巻き込み下げが下げを呼ぶ展開となったことで、その結果として25日のサーキット・ブレーカー制度発動となったものとみられる。

サーキットブレーカー制度とは呼び値の制限値幅の基準値段を2円を超えて上回って(下回って)いる場合に15分間売買を一時中断するというみので、2008年1月に導入されて以来、初めての発動となった。この際に長期国債先物の制限値幅(ストップ高安)は3円となっている。

ちなみに制度変更前のストップ安(前日比2円の下げ)は、2002年9月18日に日銀が銀行保有株購入の発表を行なったことをきっかけに債券先物が急落した際にストップ安となっている。


2008.4.28「債券先物のサーキット・ブレーカー制度」

4月25日の債券先物取引では、債券相場の急落により初めてサーキット・ブレーカー制度が発動された。このサーキット・ブレーカー制度そのものは、2000年9月18日に「制限値幅の臨時拡大措置」として導入されたものである。

これは「長期国債先物に関しては、呼値の制限値幅の上限又は下限の値段において買特別気配又は売特別気配が5分以上継続して表示されている場合に、取引を一時中断(15分以上)した後、当該取引日における呼値の値幅制限を3円に拡大して取引を再開する。」というものであった。(参考 制限値幅に関する制度の推移(東証) http://www.tse.or.jp/rules/jgbf/history/a2.pdf)

しかし、2008年1月に東証は債券と株式の先物システムを統合し、この新派生売買システム等の稼動に伴う先物・オプション取引制度等を一部改正し、サーキット・ブレーカー制度についても発動基準を見直すとともに、制限値幅そのものが直されている。(参考 http://www.tse.or.jp/rules/derivbooklet/jgb080115_j.pdf)

この中で長期国債先物に関しての部分を見てみると、 「現在の国債証券先物・オプション取引における呼び値の制限値幅の拡大措置を売買の一時中断措置として整理し見直すとともに、原稿の拡大後の制限値幅を呼び値の制限値幅とすることにします」とある。

このため呼び値の制限値幅に関しては、長期国債先物取引は2円から「3円」となった。

そして、「国債証券先物取引の各限月取引について、直前の約定値段又は特別気配値段が、呼び値の制限値幅の基準値段を当該取引所が定める値幅(長期国債先物については2円)を超えて上回って(下回って)いる場合に、東証が適当と認める時間が経過するまでの間(15分間)、売買を一時中断します」とある。

ただし、午後2時35分以降(半休日は午前10時35分以降)は一時中断は行なわれない。また、一時中断を実施した限月取引が、同一取引中に再度同じ基準に該当した場合も一時中断は行なわれないとなっている。

つまり制限値幅そのものとサーキット・ブレーカー制度についての発動基準を見直されたことで、長期国債先物の制限値幅は3円となり、サーキット・ブレーカーは2円を超えて上回った(下回った)ときに発動され(25日の発動は12時58分の前日比2円01銭安)、発動後15分の一時中断ののち取引が再開される(25日は13時13分再開)。再開後は制限値幅の3円までの動きが可能(25日の場合は134円08銭が事実上のストップ安)となるのである。


2008.4.25「偶然の一致だとは思いますが」

債券先物がストップ安となったのは2002年9月18日に日銀が銀行保有株購入の発表を行なったことをきっかけに債券先物が売られて以来となるが、そのストップ安となった翌々日に行なわれた10年国債入札で10年国債としては初めての「札割れ」が発生した。そしてこの日は拙著「日本国債は危なくない」(文春新書)が発売された日であった。

そして今回2008年4月25日に債券先物は前日比2円を超す下げとなりサーキットブレーカーが働いたのだが、その前日24日に拙著「債券の基本とカラクリがよくわかーる」が発売されたのである。もちろんたまたま偶然ではあろうが、次回、債券関係の本を出す際にはとりあえず注意してみたい。


2008.4.25「債券先物一時サーキットブレーカーが働く下げに」

中期ゾーン主体に大手金融機関からとみられる売りが入り、週末に向けて相場は急落となった。欧米の金融機関の1-3月期決算は予想されたほどの悪化ではなく、また増資等も発表されたことで金融リスク不安も後退してきた。また米国の大手企業決算も予想を上回るものが出ており、米経済指標でもしっかりしたものも出ており、米経済への過度の悲観的な見方は後退した。29日から30日にかけてのFOMCでは0.25%の小幅利下げが予想されているが、これでいったん利下げは打ち止めといった見方も強まった。これを受け米2年債利回りは、一時2.43%と1月18日以来の水準をつけFRBの政策金利の2.25%を上回った。

米経済の減速懸念などの影響が国内経済への影響も危惧され、日銀による利下げ観測などもあったものの、そういった見方が後退。このため大手銀行主体に現物の中期ゾーンを外す動きが強まり、それをきっかけに相場は急落した。

本日の債券市場ではストップロスなどを巻き込み、後場に入りさらに下げ足を速めた。債券先物は一時135円07銭と2円を超す下げとなったことで、サーキットブレーカーが働き、一時売買停止となった。前日比2円を超す下げは、2002年9月18日に日銀が銀行保有株購入の発表を行なったことをきっかけに債券先物がストップ安となって以来か。(参、http://www.tse.or.jp/rules/jgbf/history/a2.pdf)

ちなみにサーキットブレーカー制度とは債券先物が前日の基準値段から、2円を超えて上昇もしくは下落した際に売買が中断され、15分間後に取引が再開され、債券先物はさらに値幅が1円拡大されるシステムである。ただし14時35分を過ぎた場合には中断措置は行われない。

13時13分に売買が再開され、いったん買い気配となり135円35銭まで戻したが再び戻り売りに押され、135円も割り込み前日比2円50銭安の134円58銭まで下げている。現物は5年70回1.280%、2年268回0.850%まで売られ、10年291回も1.620%に利回りが上昇した。超長期もさすがに売られ20年100回は2.250%、30年28回は2.475%に。


2008.4.25「3月コアCPIは前年比+1.2%、4月東京都区部+0.7%」

朝方発表された3月全国消費者物価指数(除く生鮮)は前年同月比+1.2%とほぼ市場の予想通りとなり、 4月東京都区部消費者物価指数(除く生鮮)は、前年同月比+0.7%となり市場予想の+0.5%を上回った。

ガソリン税の暫定税率の影響で4月はガソリン価格が下落したが、東京都区部は全国に較べてその影響は限定的なものとなったことで、食料品などの価格上昇の影響を大きく受けたかたちとなった。来月発表される4月の全国消費者物価指数はガソリン税の暫定税率の影響を加味して、1.1%あたりになるのではないかとの予想となっている。5月には暫定税率が再び引き上げられることも予想されており、4月の反動もありそこそこ高い伸びになる可能性もある。ただ、これによって日銀の金融政策が大きく左右されることはないとみられる。


2008.4.25「米2年債利回りは政策金利を上回る」

債券先物は24日のイブニングセッションで136円80銭まで売られ、昨年の年末年始を挟んでの債券先物中心限月の136円87銭から137円11銭の窓を埋めてきた。現物10年291回も引け後に1.495%が打たれ、1.5%に接近したが、ここのところ引け後に当日の安値を打たれることが多い。業者のポジション調整の売りとかが入っている可能性もある。24日のイブニングセッションの出来高は7196億円と過去のイブニングセッションの出来高では最高に。24日の米国市場では、5年国債入札が不調だったことなどから米債は大幅続落となった。米時間朝方に発表された新規失業保険申請件数は市場予想を大幅に下回り、同時刻に発表された3月耐久財受注は前月比-0.3%となったものの変動の大きな輸送用機器除く受注額は+1.5%と予想を大きく上回ったこともあり米債は売りが先行し、3月の新築住宅販売件数が市場予想を下回ったことで買戻される場面もあったが、米株の上昇が上値を押さえ、さらに午後に発表された5年国債の入札結果がやや不調と捉えられ、米10年債利回りは一時3.86%と2か月ぶりの水準をつけ、結局前日比+0.09%の3.82%で引けた。米2年債利回りは、一時2.43%と1月18日以来の水準をつけ、引けは前日比+0.17%の2.39%と大幅な下落に。2.39%というのは、FRBの政策金利の2.25%を上回った。大幅下落の要因としては、米ウォール・ストリート・ジャーナルがFRBは来週のFOMCで0.25%利下げ後に利下げを休止するかもしれないと報じたことも影響した。


2008.4.24「3月の貿易統計」

財務省が23日発表した3月の貿易統計によると、輸出総額は自動車、船舶等が増加し前年同月比2.3%の増となったものの、これは2005年5月以来の低い伸びにとなった。。米国向けは-11.0%と7か月連続の減となり、2003年11月以来4年半ぶりの2ケタ減に落ち込んだ。米向け輸出の落ち込みをカバーしていたアジア向けの輸出もここにきて伸び鈍化傾向となっており、この流れが続くと輸出額の前年割れの可能性も出てきている。米サブプライム問題の影響による米経済の減速が世界経済にも影響を及ぼしつつある様子が伺える内容となったが、今後の日本の輸出動向にも引き続き注意が必要となりそうである。


2008.4.23「図解入門ビジネス 最新債券の基本とカラクリがよ〜くわかる本」

拙著、単独では8冊目となります「図解入門ビジネス 最新債券の基本とカラクリがよ〜くわかる本」が明日24日に、秀和システムさんから発売されます。一般の方にも債券に対しての知識を広げてもらえればとなるべくわかりやすく書き下ろしたものです。債券業務に関わっている方、特に債券関係の部署に配属されたばかりの方、また金融に関心のある個人の方など、よろしければご購入いただければうれしいです。定価税込み1575円です。


2008.4.22「春の個人向け国債販売額は、合計で3541億円に」

2008年3月に募集された冬の個人向け国債の販売額は、10年変動タイプと5年固定タイプの合計で3541億円と低迷した。10年変、5年固定ともに販売開始以来の最低水準となり、10年変動タイプの販売額は622億円と初の1千億円割れ。5年固定タイプは2919億円となった。

米国ではサブプライム問題による影響で金融収縮といった動きも強まり、さらに米経済の減速観測の強まりなどを受け、日本の国債の金利も10年債利回りで3月には一時1.2%台にまで低下した。このように長期金利は低迷し、その結果、変動の初期利子、固定の利率ともにさらに引き下げられたのである。

個人向け国債の人気そのものが低迷したというよりも、個人は利子の変化に対して、かなり敏感であり、初期利子や利率そのものに魅力が薄れたことが今回の販売低迷の主因とみられる。

その後、日本の長期金利はやや持ち直したものの1.5%近辺までとなっており、当面は個人向け国債の販売は苦戦しそうである。

日銀は利下げと利上げ両睨みといった状況にあるものの、物価上昇圧力も強まってきていることから、サブプライム問題の落ち着きとともにいずれは日本の長期金利も再び上昇圧力を強めてくることも考えられる。しかし、こればかりは相場であり確証があるわけでもない。いずれにせよ当面は有効な個人向け国債の販売促進策も見出しづらく、債券相場の動向を見守らざるを得ないといった状況が続きそうである。

これまで発行された個人向け国債の回号別販売額と税引き前の初期利子(固定は利率)は下記の通り

第1回変動10年(2003年3月)3,835億円(うち郵便局499億円)、0.09%
第2回変動10年(2003年4月)3,486億円(うち郵便局746億円)、0.05%
第3回変動10年(2003年7月)2,802億円(うち郵便局588億円)、0.05%
第4回変動10年(2003年10月)9,432億円(うち郵便局1,659億円)、0.77%
第5回変動10年(2004年1月)1兆3,951億円(うち郵便局995億円)、0.62%
第6回変動10年(2004年4月)1兆4,185億円(うち郵便局1,244億円)、0.55%
第7回変動10年(2004年7月)1兆7,726億円(うち郵便局1,990億円)、0.74%
第8回変動10年(2004年10月)1兆8,652億円(うち郵便局2,484億円)、0.74%
第9回変動10年(2005年1月)1兆7,647億円(うち郵便局2,436億円)、0.67%
第10回変動10年(2005年4月)2兆3,374億円(うち郵便局1,990億円)、0.73%
第11回変動10年(2005年7月)1兆6,423億円(うち郵便局2,484億円)、0.45%
第12回変動10年(2005年10月)1兆3,629億円(うち郵便局2,483億円)、0.55%
第13回変動10年(2006年1月)8,001億円(うち郵便局1,488億円)、0.68%
第14回変動10年(2006年4月)8,285億円(うち郵便局1,491億円)、0.85%
第15回変動10年(2006年7月)9,813億円(うち郵便局995億円)、1.10%
第16回変動10年(2006年10月)7,323億円(うち郵便局997億円)、0.92%
第17回変動10年(2007年1月)4,334億円(うち郵便局938億円)、0.84%
第18回変動10年(2007年4月)3,479億円(うち郵便局642億円)、0.87%
第19回変動10年(2007年7月)3,713億円(うち郵便局736億円)、1.01%
第20回変動10年(2007年10月)1,933億円、0.85%
第21回変動10年(2008年1月)1,316億円、0.68%
第22回変動10年(2008年4月)622億円、0.57%

第1回固定5年(2006年1月)1兆1,285億円(うち郵便局497億円)、0.80%
第2回固定5年(2006年4月)9,883億円(うち郵便局1,490億円)、1.01%
第3回固定5年(2006年7月)1兆2,430億円(うち郵便局996億円)、1.30%
第4回固定5年(2006年10月)8,584億円(うち郵便局998億円)、1.13%
第5回固定5年(2007年1月)10,730億円(うち郵便局998億円)、1.20%
第6回固定5年(2007年4月)8,326億円(うち郵便局1,311億円)、1.13%
第7回固定5年(2007年7月)1兆5,964億円(うち郵便局1,545億円)、1.50%
第8回固定5年(2007年10月)7,691億円、1.15%
第9回固定5年(2008年1月)4,196億円、0.94%
第10回固定5年(2008年4月)2,919億円、0.81%


2008.4.22「日銀による不良債権処理問題への対策を振り返る」

2002年9月18日
「金融システムの安定に向けた日本銀行の新たな取り組みについて」を公表
1.金融機関による保有株式削減努力の促進策=日銀による銀行保有株の直接買取=の導入検討(10月11日に「株式買入等基本要領」を制定 2.不良債権問題についての基本的な考え方の整理・公表
(金融政策決定会合終了後、通常会合で決定)

2002年10月30日
手形買入期間の延長、これまで「6か月以内」としてきた手形買入の期間を「1年以内」に延長する。

2002年12月17日

「企業金融円滑化策について」を公表
1.証書貸付債権の担保拡大、債務者種類および当初貸付期間毎に担保掛け目を細分化し、3年以内の証貸債権の担保掛け目を引き上げるとともに、5年超10年以内の証貸債権を、新たに適格担保化。
2.資産担保コマーシャル・ペーパー(ABCP)の適格基準の緩和、2004年度末までの時限措置として日銀取引先の保証するABCPを適格の扱いとする

2003年3月25日
金融機関保有株式の買入れ上限の引上げ、買入総額の上限を2兆円から3兆円、買入対象先毎の累計買入限度額5,000億円から7,500億円に。

2003年6月11日
「資産担保証券の買入れとその考え方について」を公表、具体的スキームの骨子を取りまとめ、7月末までの実施に向けて所要の準備を進める。


2008.4.22「イングランド銀行による金融支援」

英国の中央銀行であるイングランド銀行は、銀行の貸し渋りを和らげるための金融支援策を発表した。銀行が保有する住宅ローン担保証券500億ポンド(約10兆円)を最長3年間にわたり国債に交換できるようにすることが柱となる。

米FRBも3月に住宅ローンを含む不動産担保証券で米国債を供給するという対策を採っているが、こちらは期間が28日間となっており、住宅ローン証券を担保に資金供給を実施しているECBも最長6か月までとしているが、今回のイングランド銀行による対策は3年まで延長が可能となっている。

金融機関が保有している住宅ローン担保証券は、米サブプライム問題に端を発した金融市場の混乱などを受け、証券化市場が機能不全に陥り、銀行の資金繰りが急速に悪化したことで、銀行が保有している住宅ローン証券を流動性のある国債に交換することで、銀行の資金繰りを助けることとなる。

日銀も不良債権処理問題に対処するため、2002年にはいくつかの対策を行なっている、たとえば2002年9月には金融システムの安定化のために金融機関の保有株式を日銀が直接購入することを発表し、10月に手形買入期間についてこれまで「6か月以内」としてきた手形買入の期間を「1年以内」に延長した。12月には3年以内の証貸債権の担保掛け目を引き上げるとともに、5年超10年以内の証貸債権を、新たに適格担保化。資産担保コマーシャル・ペーパー(ABCP)の適格基準を緩和、2004年度末までの時限措置として日銀取引先の保証するABCPを適格の扱いとするなどを行なった。

今回のイングランド銀行の金融支援策はいろいろと条件も付けられている。交換するローン証券の格付は最も信用度の高いトリプルAに限定。国債と交換できるのは昨年末時点で保有していたローン証券だけで今後発行するローン証券は認めない。銀行は国債を借り受けるための費用を支払う必要がある。

そしてローン証券の評価額が下がった場合には金融機関が損失を負担するが、もしその金融機関が破綻した際には、インクランド銀行が損失を蒙る可能性がある。


2008.4.21「アキバ・トリムとレム秋葉原が17日オープン」

通勤で利用しているつくばエクスプレスの秋葉原駅の上(ちなみに駅は地下)に、商業施設アキバ・トリムとホテルのレム秋葉原が入るビルが建てられ、先週17日にオープンした。

アキバ・トリムの店舗構成を見ると、かなり女性を意識したものとなっており、ある意味アキバらしからぬ商業施設となっている。JR秋葉原駅の中央口近くでもあり、ヨドバシアキバにも近い位置となり、この界隈はややオタクの聖地というよりも、一般客を対象とした施設の方が流行ると意識したのだろうか。アキバ・トリムの道路を挟んだ正面ビルもまもなくオープンとなるが、このビルはほぼ飲食店が占めているとか。また、アキバ・トリムの裏手には、東京で最大規模とうたうブックオフもまも24日に開店予定となっている。

アキバに一般書店というのもやや似合わないのかもしれないが、ヨドバシアキバには有燐堂が入り、アキバ・トリムにはブック・ファースト、書泉グランデも近くにあり、そして中古のブックオフも入るなど、この界隈がいきなりに本屋街ともなっている。

つくばエクスプレスの開通で沿線が大きく変化しているが、終着駅でもある秋葉原でも変化が生じているようである。


2008.4.18「LIBOR問題」

米ウォールストリート・ジャーナルは16日、LIBORがもはや信頼できないかもしれないとの懸念を銀行家やトレーダーが抱いていると報道した。

英国銀行協会(BBA)が調査に乗り出し、実勢とかい離した金利を提示する銀行をレファレンスバンク(金利提示銀行)から外すとの見方も出たことで、17日のLIBORではドル金利が急騰し、米中短期債の下落要因のひとつとなったと指摘された。

LIBORとは「London InterBank Offered Rate」の略で、一般的には英国銀行協会(British Bankers Association)が複数の銀行(現16行)の金利を平均値化してロンドン時間午前11時に毎日発表するBBA LIBORのことを指している。米ドルだけでなく英ポンド、日本円、ユーロ、豪ドル、ニュージーランドドル、スイスフラン、カナダドル、デンマーククローネの9通貨について発表され、歴史もあり短期金利の重要な指標となっている

ウォール・ストリート・ジャーナルは「資金繰りに困っているという印象を与えないために銀行が金利を正確に報告していないと市場は懸念を抱いている」としているが、実際に虚偽の報告といったものがあったのかどうか含め今後の推移を見守りたい。


2008.4.17「流動性供給入札」

本日第25回目の流動性供給入札(発行金額1000億円)が実施。追加発行の対象範囲が今回から拡充され、6年〜15年(9年〜11年を除く)と16年〜29年(19年〜20年を除く)の2パターンから選択して実施される。

今回の対象範囲はこのうち前者のパターンとなり、対象銘柄は10年258回(残存5.91年)〜284(残存8.67年)回と、20年24回〜33回(残存5.91年から8.42年)及び20年43回〜61回(残存11.42年から14.91年)となる。


2008.4.17「ディズニー・アンバサダーホテル」

今月始めの4月3日と4日、休暇をもらい家族でディズニー・リゾートに出かけた。自宅からディズニー・リゾートまで高速の渋滞さえなければ1時間程度が着いてしまうこともあり、これまでディズニー・リゾート内のホテルの宿泊をしたことはなかった。しかし、今回。次女の受験も控えていることもあり旅行を諦め、かわりにディズニー・アンバサダーホテルに家族で宿泊することになったのである。

ご存知の方も多いと思うが、ディズニー直営のホテルの予約は6か月前から可能である。というより混雑が予想される時期はすぐに埋まってしまうため、早めの準備が必要になる。当初、ミラコスタにしようかとも思ったが、子供たちの希望も取り入れてアンバサダーホテルに予約を入れておいた。キャラクターが来るというホテル内のレストランにも予約を入れた。

3日の早朝に家を出て直接アンバサダーホテル内の駐車場にクルマを停め、そのままチェックインの手続きをする。エレベーターに乗るとミッキーの声で案内がある。ただ部屋に入れるのは夕方16時半から。7時からチケットが発売されるため、その時間を待って2日分の入場チケットを購入。ホテル宿泊者は入場制限があってもここでチケットを購入しておけば入場することができる。

チケット購入後、ホテルからの直行バスに乗ってディズニーランドへ。春休みとあってすでに長蛇の列となっていた。入場制限があったようだといった声もあったがとにかく混雑していたが、めぼしいアトラクションはなんとか乗ることができ、パレードも見て夕方、ホテルに向かった。気温が上昇していたこともあるが、皆かなりの疲労度となっていたが、予約していたレストラン、シェフ・ミッキーでの子供たちの食欲はすごいものがあった。これも若さゆえか。

かなり疲労はしていたものの、食事後にせっかくだからとホテルに隣接しているこれもディズニー直営のショッピングセンター、イクスピリアに出かけた。目的はアルコールとつまみ類の購入にあったのだが、一緒についてきた長女はあちらこちらの店に興味深々の様子、主な買い物は成城石井で済ませた。

ホテルの部屋はまさにディズニーの世界になっている。ミッキーの模様などがあちこちにあり、歯ブラシなど使い捨てできるものにはこの時期は白雪姫がデザインされておりしっかりお持ち帰り。

翌4日はディズニーシーへ。この時期はランドの開園は8時だがシーは9時ということで、8時ごろにホテルから直通バスに乗った。ランドもシーも直通バスでは5分前後で到着した。

ランドほどの混雑ではなかったもののそれでもシーも混んでいた。それでも子供たちは乗りたいアトラクションはほぼクリアーできたようである。実はあまり下調べしておらず、たまたま何だろうと入ったのが「レジェンド・オブ・ミシカ」、劇団四季のミュージカルを連想させるなかなかのショーであった。これは現在シーのひとつの目玉ともなっているようである。

シーでは花火まで観て、その後アンバサダーホテルに戻って駐車場を出た。出口を出るとすぐに首都高の入り口となっていることで、渋滞に巻き込まれることなく、1時間程度で帰宅した。ちなみに前回ディズニーランドに行った際は、ランドから首都高入り口まで約2時間もかかっていたのである。


2008.4.15「白川新総裁への期待と不安」

白川方明日銀新総裁が京都大学教授時代に書き下ろした著書「現代の金融政策」が売れている。その購入者の多くが金融市場関係者ではないかと推測されるが、私も御多分に漏れずアマゾンで購入した。アマゾンといえば15日現在、アマゾンで白川氏の「現代の金融政策」の紹介ページを見ると「この商品を買った人はこんな商品も買っています」になんと拙著「ネットで調べる経済指標」が並んでいる。たいへん光栄である。ぜひこの機会に「ネットで調べる経済指標をご購入いただければ、といった宣伝はさておき、今回は白川新総裁への期待と不安についてコメントしたい。

白川総裁誕生までの経緯についてはマスコミ等で詳しく報じられており、この「若き知」でも何度か触れていたことで省略し、結果として白川氏が総裁に就任し、西村審議委員が副総裁に昇格したのである。もうひとりの副総裁は空席のままとなり、いつ決定されるのかも予想がつかない状況にある。

新日銀法の下では執行部は総裁1人、副総裁2人で構成され、それぞれ役割分担があるが、それを当面2人で行なわなくてはならない。審議委員も西村氏の昇格で1人少なく、政策委員は現在定員9名のうちの7名だけで構成されている。

白川氏の経歴から見て総裁としての能力に対し疑問を呈する人はいないと思う。京都大学に転じる際にも、のちの日銀総裁就任が意識されていたのではないかとも見られていた日銀のホープである。企画担当の審議役や理事を歴任し金融政策の現場をある意味知り尽くした人物の一人であり、このため白川新総裁の政策運営には多いに期待したいところである。ただし、不安があるとすれば帝王学というかトップとしての学習期間がなかったことにあろうか。

過去の日銀総裁を見ればわかるように、良し悪しはさておきタスキ掛け人事で財務省のトップである財務次官経験者とともに日銀出身者がほぼ交代で日銀総裁に就任してきた。しかも、総裁となった人物の多くが副総裁を経験しているのである。直近では前川総裁、澄田総裁、三重野総裁、福井総裁などがそうであり、例外としては松下総裁、速水総裁がいるが、松下氏は大蔵省事務次官出身であり、また速水氏は日商岩井会長や経済同友会代表幹事といったトップを務めている。

日銀の総裁は金融政策による金融市場に対しての影響ばかりではなく、日銀券という信用そのものを維持させるという重要な役割があり、日本の金融システムを安定させ、さらに国際的な影響力も大きいものがある。日本のトップの中にあってもその責任といったものでは、文字通り国内トップクラスとなろう。そういったトップにいきなり身を置くよりも、本来ならば副総裁を経験しその期間に帝王学を学んだあとの方が、より力が発揮できたのではないかと思われるのである。

さらに大きな問題が政治との折衝か。総裁人事のゴタゴタは今後も後を引くとみられ、大きな政策変更の際の政治との折り合いといったものをどのように持って行くのか。しかも「ねじれ国会」という複雑な要因も絡んで、与野党の折衝には非常にセンシティブな対応を迫られる可能性がある。これをどのように打破していくのかが、新総裁の腕の見せ所ともなろう。残る一人の副総裁にはこういった政治との折衝にも長けた人物が選ばれれば、白川総裁の負担もやや軽減すると思われるのだが。

金融政策に関しては、日銀のトップとなった白川氏にはある意味柔軟な対応も迫られよう。福井前総裁の就任後の追加緩和策には反対したという白川氏ではあるが、政治や市場の信認を得るには論理的な整合性だけではなく、目に見えないマインドに働きかけるという必要性も出てくる。日銀は当面現状維持を続けるとみられるが、その後の米国経済の動向などを見極めて次ぎの手を打ってこよう。現状、先行きが不透明なだけに利下げ、利上げともに可能性があり、いずれにせよ政策変更の際には新総裁の手腕が問われよう。


2008.4.15「日銀福井総裁の5年間を振り返る」

1998年3月20日の日銀不祥事により当時の松下総裁と福井副総裁が辞任し、急遽、日商岩井の速水優氏が新日銀法施行後の最初の日銀総裁に選ばれた。新日銀法では日銀の独立性が強化され、その分透明性という面から、アカウンタビリティすなわち外部に対する説明責任が重視されるようになった。しかし、政治との関係は2000年8月におけるゼロ金利解除の際の議決延期請求権行使を招くなどギクシャクしたものとなってしまった。その後、デフレ懸念の強まりから速水日銀総裁は結局、2001年3月に量的緩和策を導入することとなった。速水総裁の5年間は、新日銀が本来の意味で独立を成し遂げたもののいきなり野に放たれたライオンの子のように数々の試練が待ち受けていた。

このため2003年3月20日に就任した福井総裁の5年間は日銀の独立性、透明性を高め信頼に足りうる中央銀行としての信認を強化することが重要課題のひとつとなった。福井新総裁はいずれ金利の正常化を目指していたと思われるが、当初取った行動は市場をも驚かせた。2003年3月20日に就任した福井総裁は就任間もない3月25日に臨時の金融政策決定会合を開催したのである。

この目的のひとつは行動を起こすことによって政府からの信認を得ようとしたものと思われた。また、福井総裁が就任した3月20日のイラク開戦で市場がやや動意を見せていたことも影響していたともみられる。ただし、臨時の会合を開催したにもかかわらず、その結果は現行の政策を維持することを全員一致で決定し、4月1日以後の郵政公社の発足に伴い当座預金残高目標を17〜22兆円程度に引き上げることなどが決定されるなど大きな政策変換ではなかった。

その後開催された通常の政策委員会(毎週、火曜日、木曜日)において、銀行保有株買取の枠を2兆円から3兆円に拡大し、これを政府は高く評価した。ただし、福井総裁は3兆円が限度と釘を刺していた。

この決定会合・政策委員会やその後の福井総裁の会見を見てみると政府とのアコードも意識しながらも、これまでの政策から大きく逸脱した政策は取ることはなかった。インフレターゲット導入やETF、REITの購入に対する要求についてはやんわりながら否定した。速水前総裁は福井総裁に対して私より大人と表現したが、だめなものはだめと言った速水氏に対して福井氏は機動性、また政府への意思疎通といった行動力によって、そういった意見を封じこめたのである。

その後、日銀の当座預金残高目標の引き上げは数度にわたって機動的に行われ、2004年1月には当座預金残高目標が30〜35兆円程度にまで引き上げられた。ところがこの間、国債の買入について福井総裁となってからはまったく増額されていなかった。これはデフレ退治を前面に押し出しながら、いずれ来るであろう量的緩和解除にも備えていたと考えられる。

つまり、当座預金残高目標の引き上げは実質的な効果を狙うよりもデフレ退治への日銀の意思を示すためのもの、つまりアナウンスメント効果を最大限利用したものとみられた。実際に当座預金残高を元に戻すことは技術的に短期間で行なえるものであり、広げてもすぐに手仕舞える施策であったのである。しかし国債買入の減額は国債需給にも影響を与え政府や財務省の反対も予想され容易には可能ではない。このあたり福井総裁のある意味強かさが見え隠れしていた部分でもあった。

日経平均株価は結果的に2003年4月28日に7607円の最安値をつけその上昇に転じた。福井総裁の就任はまさに株価で言えば底にあるときであり、その後は米国や中国などの経済成長などを背景に、日本の景気も徐々に回復し始め、非常にタイムリーでもあった。

量的緩和解除に向けて日銀は次第に動きを見せるようになる。金利の正常化路線を懐に暖めていた福井総裁もそれを次第に表に取り出し始めたのである。

生鮮食料品を除く消費者物価指数の前年比上昇率が、基調的にゼロ以上になる、消費者物価指数が先行きもマイナスにならない、経済・物価情勢を総合的に判断する、という3つの条件を掲げ、2006年3月9日の金融政策決定会合ではこの条件が満たされたと判断した日銀は量的緩和政策を解除したのである。

この日の会見で福井総裁は、次のように述べている。「生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比はプラスに転じている。経済全体の需給ギャップが緩やかに改善を続けており、ユニット・レーバー・コストの動きを見ても、下押し圧力は基調として減少している。加えて、企業や家計の物価の先行き見通しも上振れてきている。このもとで、消費者物価指数の前年比は先行きプラス基調が定着していくとみている。こうしたことを踏まえて、消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで量的緩和政策を継続する」というかねてからの約束の条件は満たされたと判断した。」

量的緩和政策の解除にともない、30-35兆円に積み上がった日銀の当座預金残高を6兆円程度の所要額に引き下げる必要があった。技術的には短期間で可能であったものの急激な減少は市場に影響を与えることになり、政策を量から金利に戻すことで機能不全に陥っていた短期金融市場の機能も回復させる必要があるため、やや時間をかけて行なわれた。当座預金残高の削減も順調に進み、6月に福井日銀総裁は「金融政策の判断、早めに小刻みにゆっくりと」との発言し、今度はゼロ金利解除に向けた姿勢を示したのである。

しかし、そんな時期に福井総裁自身の村上ファンドへの出資が明らかとなるという問題が発生した。野党やマスコミなどを中心に辞任を求める声が強まったが、与党や金融市場参加者の一部などからは辞任の必要はないとの声もあり、結局、福井総裁は辞任せず「職責をまっとうする」こととなった。

そして2006年7月14日の金融政策決定会合において、福井総裁は無担保コール翌時物金利の誘導目標をゼロに抑え込むゼロ金利政策を解除することを提案し、それは全員一致で可決された。これにより無担保コール翌時物金利の誘導目標は0.25%に引き上げられた。金利の引き上げは2000年8月以来ぶりであった。

2007年2月21日の日銀金融政策決定会合において、福井総裁は利上げを議長提案し8対1の賛成多数で追加利上げが決定され、無担保コール翌日物の誘導目標値は0.25%から0.5%に引き上げられ即日実施された。このとき反対したのは岩田副総裁であった。新日銀法による金融政策決定会合の仕組みが出来てから、総裁と副総裁のいわゆる執行部の賛否が割れたのは初めてのケースとなった。これは見方によっては合議制らしさが出たものといえるが、総裁票が否決されたことがあるイングランド銀行のMPCなどに較べて日銀の金融政策決定会合はFOMCに近くコンセンサスが重視されていたともみられていたことで、ある意味執行部の中の票割れは意外感もあった。

その後、追加利上げを日銀は模索していたものとみられるが、2007年8月あたりから米国でサブプライム問題に端を発する金融市場の混乱から、欧米金融機関の巨額損失にゆる信用システムへの不安、さらに米経済の後退観測などから、日銀は2007年3月の金融政策決定会合から福井総裁としては最後の会合となった2008年3月の会合までは現状維持を続け、福井総裁とすれば金利の正常化に対し道半ばで退任せざるを得なかったのである。


2008.4.14「3月6〜7日分日銀金融政策決定会合議事要旨より」

本日公表された3月6〜7日分日銀金融政策決定会合議事要旨の当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要によると、先行きの金融政策の運営について、基本的な考え方を維持することが適当であることを確認したものの、一部の委員から下記のような発言があった。

「先行きについては、これまでの金融政策運営の基本的な考え方を維持しながら、見通しの蓋然性と上下両方向のリスクを綿密に点検し、最も適切と考えられる政策を 機動的に実施していくべきである、との見解を示した。」

「更に別の委員は、金利調整の方向性は維持されているものの、今後、緩和度合いを高める必要があると判断される場合には、その時々の状況に合わせた機動的な対応を考えていくべきである、との考えを示した。」

「利下げ」との表現は使ってはいないものの、機動的な政策、機動的な対応というのは、利下げも含めての対応を意識したものとも捉えられる。どの委員の発言かはわからないものの、その可能性も次第に意識されているように思われる。この議事要旨は福井総裁時のものであるが、白川総裁となってもそういった認識が大きく変化してくるとは考えづらいことも確かか。現状、日銀による早期の利下げは考えづらいものの、その可能性は海外情勢の影響による国内経済情勢次第では全くないわけではなさそうである。


2008.4.11「日銀総裁の役割」

日銀は物価の安定を図り日本経済を支えるという重要な役割があり、日銀総裁はトップとして、こうした機能を円滑にするため職務執行の責任を担っています。

日銀総裁の仕事として一番重要なものは、金融政策の決定です。ただし、現在の日銀の金融政策の決定は合議制を取っており、総裁といえども他の政策委員と同じ一票にすぎません。しかし、総裁は最終的に政策委員の意見を取りまとめます。総裁を含めた政策委員の仕事は、決定会合に参加して金融政策を決定するだけではありません。政策委員会には原則週2回定例的に開催され、日本銀行の業務運営等についての審議など金融政策以外の重要事項を審議する通常会合があります。

日銀総裁は金融政策決定会合後の記者会見で、決定した金融政策について説明を行なっています。さらに日銀は金融政策に関する報告書を6か月に1回程度国会に提出し、総裁と副総裁などが国会に出席しそれについて説明を行なっています。審議委員も含めて講演を通じて日銀の金融政策に対しての考え方を明らかにしています。さらに総裁は経済財政諮問会議に委員として出席し経済財政政策に関し意見を述べています。そして総裁は財務大臣とともにG7と呼ばれる7か国財務相・中央銀行総裁会議や、中央銀行総裁会議(BIS)など海外での会合にも出席しています。


2008.4.10「歴代日銀総裁」

日本銀行のホームページ(http://www.boj.or.jp/type/list/rekidai/governor.htm)を基にした歴代の日銀総裁の一覧は下記の通り、
氏 名、就 任、退 任、主な前歴

初代、吉原 重俊、明治15.10. 6、明治20.12.19、鹿児島県、大蔵少輔(次官)
2、富田 鐵之助、、明治21. 2.21、明治22. 9. 3、宮城県、副総裁
3、川田 小一郎、明治22. 9. 3、明治29.11. 7、高知県、三菱財閥
4、岩崎 彌之助、明治29.11.11、明治31.10.20、高知県、三菱財閥
5、山本 達雄、明治31.10.20、明治36.10.19、大分県、郵便汽船三菱会社から日銀
6、松尾 臣善、明治36.10.20、明治44. 6. 1、兵庫県、大蔵省理財局長
7、高橋 是清、明治44. 6. 1、大正 2. 2.20、東京都、官僚へて日銀へ、のちの第20代内閣総理大臣
8、三島 彌太郎、大正 2. 2.28、大正 8. 3. 7、鹿児島県、横浜正金銀行頭取
9、井上 準之助、大正 8. 3.13、昭和 2. 5.10、昭和 3. 6.12、大分県、日本銀行はえぬき総裁第1号
10、市来 乙彦、大正12. 9. 5、昭和 2. 5.10、鹿児島県、大蔵大臣
11、井上 準之助、昭和 2. 5.10、昭和 3. 6.12、大分県、第9代総裁、貴族院議員、財団法人東洋文庫の初代理事長
12、土方 久徴、昭和 3. 6.12、昭和10. 6. 4、三重県、日本銀行から日本興業銀行総裁
13、深井 英五、昭和10. 6. 4、昭和12. 2. 9、群馬県、ジャーナリストから日本銀行
14、池田 成彬、昭和12. 2. 9、昭和12. 7.27、山形県、時事新報社の論説委員を経て三井銀行
15、結城 豊太郎、昭和12. 7.27、昭和19. 3.18、山形県、日本銀行から安田財閥の統帥者、日本興業銀行総裁
16、渋澤 敬三、昭和19. 3.18、昭和20.10. 9、東京都、第一銀行副頭取
17、新木 栄吉、昭和20.10. 9、昭和21. 6. 1、石川県、日本銀行
18、一萬田 尚登、昭和21. 6. 1、昭和29.12.10、大分県、日本銀行、のちの大蔵大臣
19、新木 栄吉、昭和29.12.11、昭和31.11.30、第17代総裁、東京電力会長、駐米大使
20、山際 正道、昭和31.11.30、昭和39.12.17、東京都、大蔵省事務次官
21、宇佐美 洵、昭和39.12.17、昭和44.12.16、山形県、三菱銀行頭取
22、佐々木 直、昭和44.12.17、昭和49.12.16、山口県、日本銀行(営業局長、理事、副総裁)
23、森永 貞一郎、昭和49.12.17、昭和54.12.16、宮崎県、大蔵省事務次官
24、前川 春雄、昭和54.12.17、昭和59.12.16、東京都、日本銀行(外国局長、理事、副総裁)
25、澄田 智、昭和59.12.17、平成 1.12.16、群馬県、大蔵省事務次官
26、三重野 康、平成 1.12.17、平成 6.12.16、大分県、日本銀行(営業局長、理事、副総裁)
27、松下 康雄、平成 6.12.17、平成10. 3.20、兵庫県、大蔵省事務次官からさくら銀行会長
28、速水  優、平成10. 3.20、平成15. 3.19、兵庫県、日本銀行外国局長から理事、日商岩井会長、経済同友会代表幹事
29、福井 俊彦、平成15. 3.20、平成20. 3.19、大阪府、日本銀行(総務局長、理事、副総裁)から富士通総研理事長、経済同友会副代表幹事
30、白川 方明、平成20. 4. 9、現在の総裁、福岡県、日本銀行(企画調査担当審議役、理事)から京都大学大学院教授


2008.4.9「何をしているんだか」

政治と宗教の話はタブーとか言われるが、私はこの両者ともに関心が薄いこともあって、あまり話題にしたくなかった。とはいうものの、政治については経済と密接な関係もあることで、まったくの無視もできないことも事実。ただ黒幕が暗躍し魑魅魍魎が蠢いて現金が飛び交っているような場所(一部勝手な想像部分あり)にはあまり関わりたくないというのが本音である。ちなみに私の出身学部学科は法学部政治学科である。そういえば政治学を教えていただいた内山秀夫慶應義塾大学名誉教授が亡くなったと昨日報じられた。授業を受けた一人としてあらためてご冥福をお祈りしたい。

さて今回の日銀総裁人事だが、自民党と民主党の駆け引きによってぐちゃぐちゃにされたかと思ったら、今度は民主党の内紛でさらにドタバタ劇を演じている。小沢派と仙谷派の対立抗争についてなど詳しいことなど知らないが、民主党もいずれバラバラになって再編成でもしないとまともに機能しないのではなかろうか。これは自民党もしかり。日銀総裁副総裁人事とは直接関係はないが、いっそ自民党道路派と自民党反道路派にでも分裂してくれたほうがすっきりしてわかりやすい気がする。

日銀関係者にとっては企業で言えば社長人事が政治に弄ばれてしまい、嫌気どころか呆れてしまっているのではなかろうか。まして、日銀総裁は通常の企業のトップとは訳が違う。私たちの財布に入っている通貨を発行しその価値を安定させるという重要な役割を担っているところの長なのである。いくら白川氏が優秀であっても今回の総裁人事を巡るゴタゴタで日銀総裁への信認が内外問わずかなり失われてしまったことも確かであろう。

そして、今日の参院本会議で渡辺副総裁案が否決されたことで、副総裁の一人の空席が続くこととなった。審議委員も西村氏の昇格で一人少ない。政府は今後あらたな副総裁を模索せざるを得ないわけだが、ここまでくるとどこから持ってくるにしても、政争に巻き込まれてしまう懸念もあり引き受け手も限られてしまうであろう。日銀プロパーがトップ、副総裁の一人が学者出身となれば、もう一人の副総裁は日銀出身者や学者出身というのはバランス上難しくなる。そして財務省出身者でもダメとなれば、残るところは民間企業出身者あたりとなるのか。

しかし、副総裁という立場はある意味中途半端な位置にもあり、残る副総裁一人だけの選択というは、その選択肢も限られるとなれば総裁人事以上に難しくなる可能性がある。一番手っ取り早いのは西村氏同様に審議委員からの昇格か。須田審議委員は学者出身で難しいとなれば、残り4人の審議委員からの選択という可能性は意外に高いかもしれない。もちろん元審議委員からという手段もあるが。その上で審議委員をあらためて探した方がすんなりいくのではなかろうか。しかし、これも政治が絡んで現実には何とも言えないことも確か。とにかくも「何をしているんだか」


2008.4.8「新日銀総裁に求められるもの」

新日銀法第23条に「総裁及び副総裁は、両議院の同意を得て、内閣が任命する。」とあるように国会同意人事となっている。

2003年の前回総裁人事の際は、与党が衆参両院で多数を占めていたことで、総裁人事はすんなりと両議院での同意を得られた。しかし、現在、衆院は与党が過半数を占めているものの、参院は野党が過半数を占める「ねじれ」状態となっていることで、この修正によって衆参いずれかの不同意によって人事案は白紙に戻ってしまうことになったのである。

このため衆院で賛成されても参院で反対されれば、内閣つまり政府が任命することはできない。それによって日銀総裁が不在となる空白の期間が生じるという最悪の事態が発生してしまった。

民主党では財政と金融の分離を主張する向きが存在しており、その考え方にも民主党内で微妙に異なっているとみられることも問題を複雑化した。重要な日銀総裁人事が政局に翻弄されたものになってしまったということ事態、日本の政治の機能不全ぶりを示しているといわざるを得ない。

新日銀総裁となった白川方明氏にとって、今回の総裁就任はまさに「青天の霹靂」といったものではなかったろうか。5年前に武藤敏郎氏が副総裁に就任した時点で、武藤氏が次期総裁の最有力候補とみられていた。その後も武藤副総裁は福井総裁を補佐し、量的緩和政策やゼロ金利政策の解除といった大きな政策変更も大きな混乱もなく実施しており、何事もなければこのまますんなり武藤氏が次期総裁となるものと見られていた。そして、副総裁候補の一人に武藤氏を金融理論や実務面でフォローしうる白川氏が挙がっていた。

武藤副総裁と白川副総裁というコンビは、福井氏と武藤氏と同様に強力なタッグとみられていたが、結局そういった想定は崩れ、白川氏がトップの総裁に就任することとなった。

白川氏はトップというよりはどちらかと言えば参謀的なタイプといった見方もあるが、今後白川新総裁が日銀内部でのリーダーシップを発揮するためには、理論面や実務面とともに、政府との調整能力も求められる。しかも現在の政権がまともに日銀総裁も決められないほど混迷しているだけに、その調整にはかなりの困難を極めることも想像される。

日銀プロパーということもあるが、白川新総裁は福井前総裁同様に金融政策における正常化路線を継承してくるとみられることで、日本の景気減速といった局面での政府からの金融緩和圧力に対し摩擦を生じさせてくる可能性といったものもある。いずれにしても白川新日銀は多難の船出となりそうである。


2008.4.8「日銀総裁に白川副総裁が昇格」

混迷した日銀総裁人事は、政府が7日に白川方明副総裁を総裁に昇格させ、後任の渡辺博史一橋大学教授を充てる人事案を国会に提出した。

手続きとしては、政府から日銀総裁・副総裁の人事案が、議院運営委員会両院合同代表者会議に事前提示され、その後に衆参両院の議院運営委員理事会に正式提示される。8日に衆参両院の議院運営委員会で総裁候補者らからそれぞれ所信を聴取したあと、9日の衆参両院の本会議で採決される。その結果、両院ともに可決となれば新総裁と副総裁が就任となる。

白川総裁については民主党も賛成する意向を示しているものの、渡辺副総裁については民主党内での意見も分かれており、8日時点ではまだ微妙な状況となっている。 新日銀法第23条に「総裁及び副総裁は、両議院の同意を得て、内閣が任命する。」とあるように国会同意人事となっている。

この国会同意人事は制度創設当初、予算案や法案と同様に衆院の議決が参院より優先される規定を明記した例があったものの衆院との対等関係を求める参院「自民党」の要請で順次削除されたそうである(4月8日付日経新聞より)。

2003年の前回総裁人事の際は、与党が衆参両院で多数を占めていたことで、総裁人事はすんなりと両議院での同意を得られた。しかし、現在、衆院は与党が過半数を占めているものの、参院は野党が過半数を占める「ねじれ」状態となっていることで、この修正によって衆参いずれかの不同意によって人事案は白紙に戻ってしまうことになったのである。

このため衆院で賛成されても参院で反対されれば、内閣つまり政府が任命することはできない。それによって日銀総裁が不在となる空白の期間が生じるという最悪の事態が発生してしまった。

民主党では財政と金融の分離を主張する向きが存在しており、その考え方にも民主党内で微妙に異なっているとみられることも問題を複雑化した。

日銀券の表に赤い印章があるが、これは「日本銀行総裁」の印章で、「総裁之印」と篆書という字体で書かれているものである。日銀券というお札は安心して使えるように日銀総裁がその価値を保証していることとなる。それだけみても日銀総裁に課せられている責任は重いものがある。

その重要な日銀総裁人事が政局に翻弄されたものになってしまったということ事態、日本の政治の機能不全ぶりを示しているといわざるを得ない。


2008.4.7「3月米雇用統計」

米国労働省労働統計局は、4日に3月の雇用統計を発表した。米国の雇用統計では失業率に加え、製造業就業者数、小売業就業者数、そして週労働時間とか平均時給などの項目の発表があるが、その中でも最も注目されるのが非農業雇用者数となる。

3月の非農業雇用者数は、前月比8万人減となり市場予想の5万人減よりも減少し、3か月連続での前月比減少となった。特に製造業が4.8万人の減少となり目立つなど雇用の弱さが示された格好に。

また非農業部門雇用者数は当月分の結果そのものだけでなく、前月分の数値の修正が行われることがあるため注意となるが、今回、必要1月分の非農業雇用者数が2.2万人減から7.6万人減に、2月分も6.3万人減から7.6万人減にそれぞれ下方修正された。

非農業雇用者数とは変動の大きい農業部門を除いた労働者の増減を表している。NFPとも呼ばれるが、これは「nonfarm payrolls」を略した。「nonfarm payrolls」とは、非農業部門の事業所の給与の支払い帳簿のことであり、これをもとにして集計される。


2008.4.2「幸田真音さんのサイン会」

幸田真音さんの新刊「あなたの余命教えます」(講談社)の発売を記念して、サイン会が予定されています。ぜひ足を運んでいただければと思います。

4月10日(木)「紀伊國屋新宿本店」 18:30〜、4月17日(木)「浜松町ブックストア談」 18:30〜


2008.4.2「NEWS ZERO」

財務省の国債課長時代からお世話になっている村尾信尚さんにお願いし、村尾さんがキャスターをされている日本テレビの「NEWS ZERO」のスタジオ見学をさせていただいた。我が家の娘たちの希望もあって、嵐の桜井翔さんが出演されている日に家族総出で汐留の日本テレビのスタジオに。

リハーサルが行なわれそのあとすぐに本番がスタート。秒刻みの生番組の進行はかなりの緊張感がある。私も以前にNHKの生番組に出演させていただいたことがあり、この緊張感は実際にやってみると癖になりそうほど高揚感があるが、それを毎日続けるというのも大変な仕事である。

子供たちもジャニーズの嵐のメンバーでもあり私の大学の後輩でもある桜井翔君に会えたことや、私も本物の小林麻央さん会えたことだけでも十分に満足。さらにラルフさんやスポーツのナレーターの方の名調子も生で聞くことができた。本当にプロはすごい。

子供たちにとっては有名人に会えたこととともに、テレビ局の仕事というものがどのようなものであるのかを知る貴重な機会になったものと思う。村尾さんと出演者の方々、そしてスタッフの方々にはあらためて感謝いたします。視聴率も好調と伺っており、「NEWS ZERO」の今後のますますの活躍をお祈りしたい。


2008.4.2「債券は当面底堅い動きを予想」

3月は国債大量償還などを控えて、投資家の買い需要の強さも債券相場の押し上げ要因ともなり、5年債利回りは0.75%を割り込み一時約2年3か月ぶりの水準をつけた。13日には円高等を受け日経平均はザラ場で昨年来安値を更新し、債券先物は中心限月としては2005年7月29日以来の140円台乗せとなった。現物は10年290回が2005年7月以来の1.3%割れに。

世界的なリスク回避の動きが強まったことで、日本の債券市場でも格付の低い銘柄主体に一般債が売られ、T-Lスプレッドも拡大。債券先物は10日に中心限月が6月限に移行したが、3月限よりも6月限の価格が上回るなどこれまでにない動きともなっていた。アセットスワップ絡みの海外投資家の売りなどから超長期はむしろさらに売りこまれた。

日本の債券市場でもリスクを落とす動きが強まりそれが超長期ゾーンや物価連動国債、15年変動利付国債などへの売りとなった。16-22日の外及び対内証券売買契約等の状況によると対内債券投資は報告機関ベースで2兆3467億円の資本流出超とこれは過去最大の流出となった。

決算期末も控えていることもあり銀行や証券会社などは動きづらく、このため債券先物は海外市場の動向などを受けて一時141円台をつける場面もあったが、その後戻り売りから大きく反落するなど、一値動きの荒い展開となった。

3月12日に発表された10〜12月期GDP2次速報では前年比+3.5%と市場予想は大きく上回った。また31日に発表された2月の鉱工業生産速報値は前月比-1.2%低下となり2か月連続の低下になったものの市場予想ほど悪い数値ではなかった。しかし、法人企業景気予測調査によると、1〜3月期の大企業全産業の景況判断指数はマイナス9.3となり、2007年10〜12月期のプラス0.5から大幅に悪化した。

そして1日に発表された日銀短観でも、大企業製造業DIはプラス11となり前回2007年12月調査に比べ8ポイントの低下となり景況感は悪化した。米サブプライム問題を発端とする金融市場の混乱や米経済の先行き懸念、それにともなう株安や円高ドル安の進行、原油価格の上昇などによる原材料高などによって大幅悪化したものとみられる。

景気の先行きの不透明感を強めるとともに、物価はじりじりと上昇圧力を強めており、これによる消費への影響も懸念される。2月の全国の消費者物価指数(除く生鮮)は前年同月比+1.0%となり1%台となり、市場予想の+0.9%も上回った。これにより全国コアCPIの前年比プラスは5か月連続となった。

米金融機関の損失拡大といった懸念は引き続き強く、このため米大手金融機関の1-3月期決算発表が集中する4月中旬には注意が必要か。また世界的な金融市場の混乱の最中にあって、日本の中央銀行総裁が空席という異常事態が早期に解決されないようだと、日銀の金融政策の行方にも影響を与えかねない。29日から30日にかけて開催される米FOMCでは追加利下げが実施される可能性があるが、日銀は当面、現状維持を選択してくると予想される。しかし、日本の足元景気についてもやや不透明感も強まっており、4月下旬からは企業決算なども発表されるが、こういった企業決算の内容や今後発表される経済指標動向によっては、日銀による利下げ観測も強まってくる可能性もある。

債券の需給面では、新年度入りしての大手銀行の動向が注目される。4月に入り益出しの売り等が入ったが、日銀による利下げ観測などが強まる可能性もあり、そういった売りも限定的か。期初の買いへの期待もあることで中長期債主体に底堅い動きを予想している。


2008.4.2「4月の債券相場予想(一部追加修正)」

3月の債券相場は海外投資家によるリスク回避の動きなどにより波乱含みの展開となったが、そういった動きは4月に入り次第に落ち着いてこよう。1日のNY市場では金融機関への資本増強策の発表を好感して株は大幅高となったものの、米金融機関の損失拡大といった懸念は引き続き根強いことで、米大手金融機関の1-3月期決算発表が集中する4月中旬にも引き続き注意は必要か。

日本の金融市場における大きな懸念材料は日銀総裁の空席である。世界的な金融市場の混乱の最中にあって、日本の中央銀行総裁が空席という異常事態が早期に解決されないようだと、日銀の金融政策の行方にも影響を与えかねない。4月8日から9日にかけて今年度最初の金融政策決定会合が開催される。このままだと金融政策を決定する政策委員は通常の9人から7人での決定となる。

さらに中旬にはワシントンでG7も開催される。総裁空席によってG7の中における日本の発言力の低下等も危惧されている。また、4月18日の日銀支店長会議も予定され、そして4月30日の金融政策決定会合では市場も注目している展望レポートの発表もある。

展望レポートは先行きの金融政策の方向性を示す目安となるものだけに、このタイミングでも総裁不在となれば市場からの不信感といったものも強まる恐れもある。 29日から30日にかけて開催される米FOMCでは追加利下げが実施される可能性があるが、日銀は当面、現状維持を選択してくると予想される。

しかし、1日の日銀短観にも見られたように日本の足元景気についてもやや不透明感も強まっている。4月下旬からは企業決算なども発表されるが、こういった企業決算の内容や経済指標動向によっては、日銀による利下げ観測も強まる可能性がある。

ここにきて消費者物価指数も上昇しているが、4月からも食品価格の値上げも続く。さらにガソリン価格の動向次第では消費動向などにも影響を与えかねないことで、物価動向にも注意が必要となる。

債券の需給面では、新年度入りしての大手銀行の動向が注目される。当初、益出しの売り等が入る可能性はあるものの、日銀による利下げ観測などが強まる可能性もあり、そういった売りも限定的か。このため中長期ゾーンは引き続き堅調な地合が維持されるとみられる。

注目は一時大きく売り込まれた30年国債や物価連動国債、15年変国である。さすがに割安感も出ていることで、物価連動国債など期が変れば国内投資家の押し目買いへの期待もあるものの、積極的に買い進まれるといったことも考えづらい。

4月に入っての債券相場は期初の売りなどから大きく売り込まれてのスタートとなった。さすがに3月ほどの荒れ相場にはならないとは見られるが、海外市場の動向やその影響を受けての株式市場や外為市場の動きを睨んで大きく動き可能性は残る。


2008.4.1「3月調査の日銀短観」

日銀が今朝発表した3月調査の日銀短観によると、大企業製造業DIはプラス11となり前回2007年12月調査に比べ8ポイントの低下となった。事前予想の12〜13も下回った。大企業非製造業も4ポイントの下落となり、プラス12となった。

米サブプライム問題を発端とする金融市場の混乱や米経済の先行き懸念、それにともなう株安や円高ドル安の進行、原油価格の上昇などによる原材料高などによって大幅悪化したものとみられる。

中小企業製造業のDIもマイナス6となり前回の+2から大幅に悪化し事前予想の-5も下回った。非製造業は3ポイント下落してマイナス15となった。

市場ではある程度の悪化も織り込んでいたものとみられ、この発表を受けての影響は限定的となり、むしろ株は先物主体に買いが先行、債券は10年国債の入札も控え戻り売り圧力を強め140円を割り込んだ。


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