早速、発表された日銀の金融政策決定会合の議事録に目を通してみたが、何分、議事要旨に比べ分量が多いだけにすべてをすぐに読みきれないが、気になった部分をチェックしてみたい。
1998年4月8日の決定会合の中で、当時の植田審議委員が次のような発言をしていた。
「それ以外の玉としては量的なターゲットを作るという金融政策が有り得るかと思う。これは実務家の間では評判が悪い話ではあるが、たとえばマネタリー・ベース、あるいはマネー・サプライでも良いが、これを厳密にコントロールするということは恐らく非常に難しいし、不可能かと思うので、それのターゲット・レンジを定め、他の手段をそれに向けて動かしていくという金融政策が理論的には考えられるし、一応形式的にはFEDが80年代はじめにやったといわれている」
この部分を当時発表された議事要旨を見てみると「別の委員から、仮に将来一段の金融緩和を行うような状況においては、公定歩合やコールレートを一段引き下げるという従来の方法だけではなく、併せてマネタリーベース等の量的金融指標を目標にするといった方法も、場合によっては使い得る手段として、検討してみる余地があるとの見解が示された。」
植田審議委員が1998年4月にコメントした「量的緩和策」が実際に採用されるのは、これから約5年後の2003年3月となる。
日銀は本日、金融政策決定会合の議事録を初めて公表した。1998年に施行された新日銀法の規定により、決定会合の約1か月後に議事要旨が発表され、さらに10年後には議事録が公表されることとなったことで、今回初めて議事録が公表されることとなった。
また、2007年6月5日の政策委員会において、金融政策決定会合の議事録等の公表に関し、各会合から10年を経過した後に半年分(1月から6月分、7月から12月分)毎にとりまとめて、年2回公表することが決定されている。(http://www.boj.or.jp/type/pub/pb_geppo/giji07049.htm)。
さらに新日銀法施行前の1998年1月から3月に行われた金融政策決定会合の議事録等についても公表することとなったため、今回の公表分は1998年1月〜6月開催分となる。(http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gijiroku/data/gjrk.htm)。
25日の講演で門間日銀調査統計局長は、雇用について、中高年の失業率が上昇し中高年の雇用環境が厳しい。全体としても雇用の伸び率は止まっているといった状況を指摘していた。今後、失業率は上昇傾向との発言もあったが、実際に29日に発表された6月の完全失業率(季節調整値)は4.1%となり前月に比べ0.1ポイントの上昇となった。引き続き中高年の失業率が増加し、非自発的失業者数が増加に転じるなど雇用情勢の悪化を示す内容となった。また6月の有効求人倍率(季節調整値)は0.91倍となり、こちらも前月比0.01ポイント低下と悪化し、これは2005年2月以来の低水準となった。新規求人数は前年比17.9%減となり主要9産業の全てで減少した。
また経済産業省が本日発表した6月の鉱工業生産指数速報値(季節調整済み)は前月比2.0%低下と2か月ぶりの低下となり。市場予想よりも弱い数字となった。また4〜6月期の生産指数は前期比0.7%の低下、これにより低下は2四半期連続となったが、2四半期連続のマイナスは2005年基準では初めてとなった。経済産業省は生産の基調判断をこれまでの「生産は横ばい傾向であるが、弱含んでいる」から「弱含みで推移」と下方修正した。生産についてもやや注意信号が点ったかたちとなっている。
大田経済財政担当相は、失業率等の発表を受けて、雇用は足踏み状態だが今回の数字には注意が必要と発言した。また日銀の水野審議委員は24日の会見において「個人的には、今は景気の下振れの方をやや意識」と発言しており、門間調査統計局長も、いざなぎ景気を超えてきた現在の景気拡張局面から景気後退局面に入る可能性もありうると指摘していたが、今回の6月の失業率と鉱工業生産指数を見ても、足元経済が弱含みとなっていることを示し、景気後退入りするのかどうかまさに正念場といったところにありそうである。
7月24日に青森で開催された金融経済懇談会における水野日銀審議委員の講演から特に国内経済と金融政策に関する部分を確認してみたい。
国内景気動向に関しては、「エネルギー・原材料価格高が、企業収益、個人消費でダウンサイドに、CPIコアでアップサイドにもたらしたインパクトは、展望レポートをまとめた4月末時点では想定できなかったほど厳しいものになっています」と総括。
短観では、「販売価格の引き上げの動きが若干とはいえ広がり始めた可能性を示唆している」点を指摘。ただし「販売価格を引き上げても、企業が期待するほど業績が改善しないリスク」も指摘している。
設備投資に関して「環境は今後悪化する可能性は否定できず、2008年度も設備投資計画が翌年度に先送りされる可能性」があると。さらに「足許の雇用者数の上昇率の鈍化は、労働市場の潮目の変化を示唆している可能性」も指摘している。
輸出に関して鈍化傾向にあるのは、「米国向けの自動車輸出がこのところ減少に転じたこと、東アジア経済の成長鈍化の兆しがみえてきたこと」を指摘。ただし、ロシア・中東産油国向けの輸出増加が対米輸出の減少を相殺する構図は続くとも。
また物価動向について、6月の国内企業物価指数がここ20年ほどでみると例がないスピードで上昇し、国内企業物価が前年同月比+6%を超えるのは時間の問題と見込まれ、消費者物価に先行するとみられる国内最終消費財価格の大幅増などから、「コアCPIは、小売段階での値上げの広がりから、秋には同+2.5%程度まで上昇すると私は予想しています。」と水野委員は発言した。加えて、ピークアウト後もなかなか物価が下がりにくいとの指摘も会見であった、
ただし「企業向けサービス価格をみると、サービスについてはあまり進んでいません。CPIはサービスの占めるウエイトが高いので、賃金上昇率の弱さを考えると、やはり米国型のコアCPIの前年比上昇率の上昇テンポは緩やかにとどまると予想」との発言も。
講演で「金融政策を考えるうえでのポイント」の部分で、水野委員は「エネルギー・原材料価格高騰による交易条件の悪化を受けて、民間内需の下振れ懸念が強い状況」にある点を指摘。
そして一般論としながら「エネルギー・原材料価格の高騰という相対価格の変化による物価上昇圧力は、金融政策で止めることはできません。一方、エネルギー・原材料価格の高騰が、企業や家計のインフレ予想を押し上げることによって賃金・物価がさらに上昇する二次的効果(second-round effect)が発生した場合、金融引き締めによって歯止めをかける必要があります。現在のわが国をみると、賃金の伸び率は前年比+1%前後と落ち着いており、二次的効果が発生しているわけではありません。」とし、現在の日本における物価上昇については利上げで対応していく必要はない点を指摘している。
水野委員は会見において「個人的には、今は景気の下振れの方をやや意識しながら政策運営を行っていくのが適切ではないかなと思っています」と発言している。
そして景気については「2002年1月にスタートした今回の景気拡大局面は昨年10-12月にピークを付け、緩やかな景気後退局面に入ったと判断される可能性」があることも指摘している。GDPベースの個人消費が4-6月期は前期比マイナスとなる可能性についてもコメントしている。しかし、企業部門では在庫、設備、雇用という面で3つ過剰を抱えていないことで景気に粘りはある点も指摘している。
以上のことから、「日本銀行としては、現在、エネルギー・原材料価格高を背景とした民間内需の下振れリスクと物価の上振れリスク、及び、国際金融市場の動向、について予断を持つことなく、丹念にウォッチするべき局面と思います。」としている。
また水野委員は個人的な見方としながら、新興成長国の景気・物価の先行きを懸念している、とも。東アジアを中心とした新興成長国の景気が失速した場合、わが国の景気見通しを下方修正する必要が出てくる点を指摘している。さらに会見では、「東アジア経済がインフレを上手く抑制して、ソフトランディングできるかどうかについてはやや懐疑的である」との発言もあった。
そして水野委員は、日本経済の潜在成長率の水準からみて「いつまでも0.5%という政策金利を継続することの副作用についても、常に念頭におきながら、適切な金融政策運営を毎回毎回の金融政策決定会合で議論している」ことについても言及した。
25日に日本証券アナリスト協会主催の講演会があった。今回の講師は門間一夫日銀調査統計局長ということで、昨年に続いて拝聴させていただいた。記憶とメモを頼りに内容をまとめてみるつもりだが、一部聞き間違い等がある可能性もあり、あくまで参考程度に読んでいただけたらと思う。
まず、日銀短観から見た日本経済の動向について、製造業DIの動向などをみると、いざなぎ景気を超えてきた現在の景気拡張局面から景気後退局面に入る可能性もありうると指摘。ただし相断定することもできないとも。日本経済は厳しい状況が続いており、ここ数か月が正念場との見方も。
ただし、GDPなどを見る限り景気はしっかりしており減速しているとも見えないが、ここにきて日本経済の圧迫要因となっている「交易条件の悪化」がGDPにはすぐに反映されていないと指摘。GDPは増加してもGNI(実質国民総所得)は減少し、働いても儲けに繋がらない状況ともなっている。
その交易条件の悪化は2003年頃からの傾向となっており、今に始まったわけではないが、ここにきての内需のペースダウンも重なったことで、足元経済が相当厳しいものとなっており、さらなる輸入物価の上昇を受けての交易条件の悪化は今後さらに厳しい状況に。
米経済の減速は、サブプライム問題以前からすでに減速傾向となっており、2007年前半から住宅投資や設備投資にその兆候がみられたように内需の減速が要因。今後については高い新興諸国の成長率がどこで止まるのかといったことが注目点となる。
日本での住宅投資については、昨年の改正建築基準法の影響もあるが、その後も前の水準には戻れず、それ以前にピークアウトしていたとみられる。
設備投資に関しては、自律的な調整となり行き過ぎの前にエンジンブレーキをかけたような状況に。米サブプライム問題による米経済減速など外的ショックに対しては新興国がカバーしていた。ただ法人企業統計等からみても大勢としては設備投資は弱いとも。
個人消費については販売統計合成指数などを見ても潮目が変った可能性も。このため月報で伸び悩みとの表現に。
雇用については中高年の失業率が上昇し、中高年の雇用環境が厳しい。全体としても雇用の伸び率は止まっているといった状況に。
賃金については、人手不足が続いていたことや団塊世代による押し下げ効果が後退したことで小幅ながらプラスに。ただし今後は失業率は上昇傾向、企業収益は悪化などから環境は悪化。
賃金決定要因として物価の割合は低い状態は続くが、これは最近15年間物価が上がっていなかったためと。ただし、今後、「二次的効果」の可能性を頭から排除することはできない。
物価について国内企業物価を見ると、原油価格の上昇が大きな要因となっているが、鉄鋼や建材関連も同様に大きく上昇しており、ファンダメンタルによる需要が国際商品市況を大きく引き上げているとみられ、原油価格の上昇について投機的なものが要因とは判断しにくい。
国際商品市況に直接影響受けない企業向けサービス価格については、6月がマイナスとなっており、これは企業収益環境が厳しいことで企業広告費などを節約した影響が大きい。
消費者物価指数は6月ヘッドラインが1.9%となり、今後2%突破は間違いない。ただし食料およびエネルギー除く総合指数はゼロ近傍となっており、今後もし世界的に景気減速が強まり商品市況も下落するなどした際に、コアCPIもゼロ近傍と元に戻ってしまうリスクもある。
そして、今後の金融政策に冠する質問がありその答えの中で、日銀が動くことで日本経済が良くなるわけではない。フリーランチはなく国民が汗を流し、どうしたら金利を上げられる状態に出来るのかを考える必要があるとのコメントも。
本日、首相官邸において額賀財務相、大田経済財政担当相、町村官房長官と日銀の白川総裁は、経済・金融情勢に関する意見交換会を開いたそうである。この意見交換会は福田首相の提案で開催されたとか。今後も定期的に意見交換を行なうことも確認したとも伝えられている。
総務省が今朝発表した6月の全国消費者物価(除く生鮮食料品)は前年同月比1.9%の上昇となった。これにより前年比上昇は9カ月連続となる。また前年比上昇幅は、消費税率引き上げの影響を除けば、1992年12月の2.0%以来の大きさとなった。
事前の市場予想も+1.9%であったことから、これによる市場への影響は限られたものの、日銀の物価安定の目安としている上限の2.0%に接近したことで、今後はさらに物価上昇のリスクも意識されそうである。
昨日、日銀の水野審議委員の発言の中に「コアCPIは秋には2.5%まで上昇すると予想」とあったように、今後もコアCPIは上昇圧力を強めてくる可能性が高い。「消費者物価、原油価格が天井打っても下がりにくい」との水野委員の発言もあったが、やや投機的に動きを伴っている原油先物価格がピークアウトしても、他の原材料や食料品価格の上昇などもあって物価は下がりにくい状況にある。
ただし、この物価上昇も個人消費などにとりマイナス要因となり、「2008年度の成長率より2099年度が高くなるとの自信ない」、「景気回復時期は予想より後ずれする可能性」、 「潜在成長率への回復に対する私の自信は落ちている」との水野委員の発言もあったように景気後退リスクも大きい。このため日銀としては当面、金融政策を動かすことは難しい状況にあり、少なくとも年末まではCPIの前年比伸び率が2%を超えてきたとしても、現状の政策金利が維持される可能性が高いように思われる。
ここにきて米国市場が妙な妙な振れ方をしている。米国株式市場では金融株が大幅上昇となり、原油先物価格は特に大きな需要絡みの材料とかはないにもかかわらず急落している。さらにFRBの利上げ観測も影響はしていそうだが、ここにきてのドルも上昇基調となっている。
これらはそれぞれ勝手に動いているわけではなく、何がしかの関連があるとみられる。その謎解きのヒントとしては、ヘッジファンドなどによる足の速い投機的な動きが指摘されている。
サブプライム問題を起因としての米大手金融機関の巨額損失に加え、米政府系住宅金融機関の経営不安まで出てきて、金融不安が再び広がりを見せ、金融株が大きく売られていた際に、原油先物が上昇基調を続けていたが、米金融株と原油先物のチャートを見ると綺麗に逆相関となっている。
つまり、ヘッジファンドなどが米金融株売り、原油先物買いといったポジションを大きく組んでいたのではないかとの見方がある。そこにドル売りなども絡んでいた可能性も。
ところが、米国で金融株に対して空売り規制が強化されたことをきっかけに、そのようなポジションの撒き戻しの動きが、ここにきて一気に入った可能性がある。さらに政府系住宅金融機関の支援策の成立も時間の問題となってきたことも影響か。ここにきての米国市場での妙な動きは、こういった何かしらのポジションの解消の動きと見る以外に説明が難しいように思われる。
6月24日に東証2部上場の不動産会社スルガコーポレーションの公募社債が2001年のマイカル以来、7年ぶりとなるデフォルト(債務不履行、購入した債券の利息や償還金をあらかじめ決められた条件で支払うことができなくなること)に陥ったことに続き、7月18日には東証1部上場の不動産開発会社であるゼファーの公募社債もデフォルトとなった。ゼファーの社債は、来月8月に償還を迎える予定の第2回債が120億円、2010年6月に償還を迎える予定の第3回債が80億円発行されている。
本日の債券先物は寄り前から一部の端末で、立ち上がらなかったり板が見えないなどの障害が発生していた。しかし、寄り付き時点では回復し、売り気配でのスタートとなり先週末比37銭安の136円19銭で寄り付いた。その後、136円11銭から136円24銭の間で動いたものの、その後再び債券先物等東証の先物関連が一部通信障害が発生したことで取引が9時21分に取引が停止した。そして債券先物は13時45分に136円13銭で取引を再開した。
債券先物が動かなくなると、債券相場の居所や方向性を探る指標というか目安がなくなり、債券市場は機能不全に陥ってしまう。現実に前場での店頭での現物取引も閑散となったとみられ、日本相互証券での現物取引もほとんど出合いがない状況に陥った。このように債券市場にとって債券先物は非常に重要な機能を有している。国債の発行額からも世界的に非常に規模の大きな日本の債券市場なだけに、それが機能不全になるような状況は出来る限り避けてほしい。
債券先物は後場に入り次第に上値が重くなり、あっさりと136円も割り込んだ。14時半近くには、ややまとまった売りが債券先物に入り、この時間に先週末比88銭安の135円68銭に下落した。同じ時間帯に、日経平均先物もやはり出来高を伴っての買いが入り、13180円に上昇。その後引けにかけて、再び日経平均が先物主導で上昇してきたこともあり、債券先物は一時先週末比91銭安の135円65銭をつけ、大引けは86銭安の135円70銭となった。一方、日経平均先物は、一時先週末比380円高の13230円まで上昇した。どうやら、債券先物買い、日経平均先物売りのポジションを組んでいた投資家がそのポジションを外してきた可能性がありそうである。これは債券先物のシステム障害が嫌気されて、債券先物に絡んだポジションを外してきた可能性も否定できない。
東証はこのシステム障害原因について、21日までの連休中にシステム改良をした際にプログラムミスが発生したのが原因と説明した。こういったシステム障害によって、海外投資家が日本への投資を嫌気するような状況をもたらす可能性がないとは言えない。
また債券先物の建て玉が以前に較べて大きく減少したのは、債券相場が非常に値動きが激しくなり、債券先物を使ったヘッジが難しくなったことで、国内投資家や業者が先物を使ってのヘッジを避けるようになったためと思われる。この債券の値動きの荒さの大きな要因は、米サブプライム問題に起因する米国での金融不安などによる相場変動によるものだが、それとともに今年に入っての債券先物のシステム変更に伴って、以前に較べて値動き自体が速くなってしまったことも市場参加者からは指摘されている。
今回の障害をきっかけに国内の債券市場を支えている債券先物のシステムそのものを再度見直して、より安定的なものにするだけでなく、使いやすいものにしてもらいたいと思う。
内外情勢調査会における講演において、日銀の白川総裁は、エネルギー・原材料価格の上昇という供給ショックに対して金融政策運営面でどう対応すべきかの考え方を示している。
白川総裁は1970年代の石油ショックの経験なども踏まえて、先進国中央銀行間で共有されているオーソドックスな考え方として2つのポイントを指摘している。
「第1に、供給要因に基づく輸入コストの一時的な上昇に対しては、金利引き上げで抑え込むことは適切ではない、第2に、インフレ予想の上昇などを通じて二次的効果が発生する惧れがある場合には、金利引き上げで対応すべきである」
今回の商品市況の上昇は、中国やインドなど新興諸国を中心とした世界的な需要増加によるものであり一時的なものではない。このためインフレ予想などを通じての二次的効果( second-round effect)が発生するかどうかが注目点となるとしている。
そして白川総裁は輸入コスト上昇の下での金融政策運営という点で3つの判断ポイントを指摘している。
第1、原材料価格の高騰に伴う所得流出による内需の減少と、新興国・資源国を中心とする世界経済の強さを背景とした輸出の増加という2つの異なる方向の力が、日本の景気に及ぼす影響をどうみるか、
第2、そうした景気情勢が物価に与える影響をどう評価するか、
第3、国際商品市況の上昇やその下での現実の物価上昇が、消費者のインフレ予想や企業の価格設定行動をどう変化させるか
この3つの判断ポイントを指摘した上で白川総裁は次のように述べている。
「現在のような経済情勢の下での金融政策運営について、よく「景気・物価の両睨み」という表現が使われます。しかし、単に両者のバランスをとるという折衷的アプローチではありません。景気と物価が異なる動きを示す際、金融政策運営上の判断基準が必要ですが、日本銀行を含め多くの中央銀行は、上述の第3のポイント、すなわち、予想インフレ率の安定が確保されているかどうかを重視しています。」
つまり物価の上昇リスクと景気減速のリスクが高まる中にあり、それぞれのリスクを注視する必要があるが、金融政策の運営にあたっては「予想インフレ率の安定が確保」されているかどうかがポイントとしている。「現状、、賃金の伸び率は前年比1%前後と落ち着いており、他のデータと併せて考えると、二次的効果が発生している訳ではないと思います。」と白川総裁は指摘している反面、「日本の経済主体のインフレ予想が変化する可能性も否定できません」としており、そのリスクもないとはいえない。しかし、そのリスクが顕在化するまでは「利上げ」という選択肢は選びにくい半面、そのリスクを完全に否定できない限りは景気を重視しての「利下げ」という選択肢も取りにくい。以上のことから、当面の日銀の金融政策運営は「様子見姿勢」ということになるのであろうか。
「何人かの委員は4月の実質輸出の前月比が大きくマイナスとなったことは、為替換算や季節調整など技術的な要因による振れである可能性が高いとの認識を示した。」
「ある委員は、幅広い地域に向けて増加という基本的な判断を変える必要はないが、さすがにこれまでと比べて増加ペースは鈍ると考えられると述べた。」
4月の前月比マイナスは特殊要因によるものが大きく、5月の実質輸出は前月比+2.8%と持ち直してきているが、原油価格の上昇により世界経済が減速基調となっていることから、輸出が鈍化傾向にあることも確か。
「国内民間需要について、委員は、エネルギー・原材料価格高の影響などから、企業収益はこのところ減少しており、設備投資は増勢が鈍化しているとの認識で一致した。」
「個人消費について、委員は、底堅く推移しており、先行きについても、雇用者所得の緩やかな増加を背景に、底堅く推移する可能性が高いとの認識を共有した。ある委員は、最近の物価上昇が家計の実質購買力を低下させていると指摘した。」
「住宅投資について、委員は、緩やかに回復しているが、先行きについては、回復の動きが徐々に一巡していくとの見方を共有した。ある委員は、不動産業者への金融機関の融資姿勢の慎重化、マンション在庫の増加などが、住宅投資の回復にどのような影響を与えるか留意が必要であるとの見方を示した。」
「別の委員は、生産全体が落ち込むことは当面考えにくいが、中小企業においては労働投入量がこのところ減少しており、交易条件悪化の影響をより強く受けている、との見方を示した。」
景気に対しての認識は総じて弱めとなっているようである。7月15日の白川総裁の会見においても、足許景気がさらに減速しているとの判断を示している。
「複数の委員は、わが国においては、賃金が目立って上昇しておらず、これまでのところ、石油製品や食料品の価格上昇が2次的な物価上昇に結びつく動きはみられていないと述べた。ある委員は、需要面からの価格上昇圧力は強くなく、現在のところ、値上げのモメンタムは、エネルギーや食料品など比較的限定的な範囲に止まっていると指摘した。」
「委員は、国際商品市況の高騰が進む中、消費者のインフレ予想や企業の価格設定行動を含め、先行きの物価動向について、より注意深くみていく必要があるとの認識を共有した」
物価上昇リスクについては、より注意深くみていく必要があるとしているものの、賃金上昇が伴ってないことなどから物価上昇はいまのところ限定的な範囲に止まっているとしている。
「複数の委員は、需要が旺盛で賃金上昇圧力が強い国と異なり、わが国の現在の局面においては物価面のリスクよりも景気の下振れリスクを重視すべきであると述べた。」
この複数の委員に果たして白川総裁も含まれているのかどうか。その後の白川総裁の会見の内容などを確認しても、物価面のリスクよりも景気の下振れリスクをより重視しているようにも伺える。
「複数の委員は、金融政策が効果を発揮するには長いラグを伴うため、中央銀行としては、足もとの物価動向よりもやや長い目でみた基調的な物価動向に注意を払うべきであり、そうした観点から、人々の中長期的な物価観に変化が生じるかが、政策判断を行う際の重要なポイントの一つになる、との認識を示した。」
物価に関しては、インフレ懸念が強まるのかどうか、ある程度長い目で見ての物価感の動向に注視している姿勢を示している。
「ある委員は、世界的なインフレ傾向が強まる中で、わが国もそれと無縁であることはなく、インフレ予想が高まることを未然に防ぐ観点から、物価安定のもとでの持続的な成長パスを辿っていることにある程度の確信を得られれば、漸進的かつ早めに政策対応する必要があると述べた。」
とはいうものの、状況によっては利上げも漸進的かつ早めに行なう必要性を強調している委員が少なくとも一人はいるようである。
15日の日銀金融政策決定会合後の白川総裁の会見の内容が日銀のホームページにアップされている。この中から、気になるところをピックアップしてみたい。
まずはスタグフレーションの局面に入ったのかとの質問に対しては、総裁は入ったとは判断していないとしているが、こうした見通しには不確実性が大きい点もコメントしている。
また、原油価格の先行き見通しについて、総裁は予想を述べることは適当ではなくあまり意味もない点を指摘している。相場の決定要因は複雑に絡み合い先行きの的確な予想は困難に近い。ただ原油需要に支えられ国際商品市況は先行きも高水準で推移すると想定していることも示している。また原油価格に関しては「敢えて強いポジションは取らずに、現在の高い水準で推移するということでまずシナリオを立ててみるということが、責任ある当局としての予測の立て方だと思います。」とも指摘している。
景気について足許はさらに減速をし、暫くこの局面が続くが、その後は徐々に緩やかな成長経路に復していくという判断。一方、物価については先行き上がっていくが、その後はまた低下していくというシナリオからは、現在ここで金利水準を調整する必要はないとの判断を示した。
先行き物価に関しては「足許エネルギー価格、原材料価格が上がってきていますので、この先、消費者物価上昇率は暫く上がっていくとみています」との発言もあった。ただし、「セカンド・ラウンド・エフェクト(二次的効果)、つまり輸入コストの上昇により物価が上がった結果、先々の予想インフレ率も上がり、それが賃金の設定を始めとした色々な賃金・物価形成に組み込まれていき、さらに物価が上がっていくという効果が起きているかというと、現在のところそうしたものは起きていないように見えます。」とも指摘している。このため「セカンド・ラウンド・エフェクトがこの先起きてこないかどうかは丹念にみていく必要があると思っています。現在は起きていないということですので金融政策で対応しなければならないということではないと思っています。」としている。このため物価上昇を意識しての利上げといったものも現状は考えづらいとも言える。
ただし、「インフレ・リスクについて言いますと、中央銀行は決してインフレのリスクに対して鈍感ではなく、先ほど申し上げたような意味において十分注意深くみている、という情報は常に発信していく必要があると考えています。」とも指摘しインフレ・リスクを全く無視しているわけではない点も指摘している。
そして、足許景気がさらに減速していることの一番大きな原因として、交易条件の更なる悪化を示し、その結果、設備投資にも影響が出て、短観などから中小企業あるいは非製造業に設備投資の増勢鈍化の傾向がより明確に出てきている点を示している。また個人消費の伸び鈍化の要因については、雇用者所得の伸びと交易条件の悪化による購買力の低下という2つの要因を指摘した。
また設備投資に関して、1〜3月が前期比小幅のマイナス、4〜6月は6月の予測計数を前提にするとやはり小幅のマイナスと減少基調との点も言及。「こうした動きは、今回景気が更に減速しているということを裏付けるひとつの材料として認識しています。」としている。
物価上昇と景気減速のリスクに対して、白川総裁はバランスを取れた発言をしてするようにも思えるが、現在の物価上昇がインフレを招くものといった印象ではなく、景気減速に関しては設備投資などの増勢鈍化などもあってより警戒心を強めているようにも伺えることで、やや景気に対して軸足を置いているようにも思われる。
そして、各国中銀との政策協調に対して総裁は次のように発言している。
「政策協調についてですが、各国が政策金利を同じ方向に動かすという意味での政策協調は、これまで各国がやってきたわけではありませんし、またそうした政策が望ましいとも思いません。かつてプラザ合意の後にいわゆる政策協調という議論が盛んな時期があったことは事実です。しかし、現在は中央銀行間および学界においても、いわゆる政策協調は望ましくないというのが、どちらかというと多数説だと思います。これは、金利を一斉に各国が調整するという意味での政策協調を否定する議論ではありますが、各国が意思疎通を図るということの重要性を否定するものではありません。十分に意思疎通を図っていくということは非常に大事であり、そういう 意味で協調という言葉を使うとすれば、協調は格段に強化されているというのが私の実感です。」
いまだに協調利上げや協調利下げといった思惑が市場で出ることがあるが、すでにそういった見方が時代錯誤的なものであるのは、この白川総裁の発言からも確かなものであろう。
15日に日銀は金融政策決定会合において、「金融政策運営の枠組み」のもとでの情報発信の充実するための措置を実施することを決定した。その措置の目的とは「金融政策の効果の波及にはタイムラグがあることなどを踏まえ、経済・物価の現状と先行きおよびリスク要因について、枠組みに沿って、適時かつ丁寧に、説明する体制を整える」としている。
この措置のひとつは、「これまで、会合後の公表文では、政策変更の場合には決定内容とその背景を、また、現状維持の場合には決定内容のみを公表してきた。今後は、毎回の会合後に、決定内容に加え、その背景となる経済・物価情勢の評価を2つの柱に基づいて整理して示すとともに、先行きの金融政策運営の考え方について公表することとする」ことである。
これまでは下記のように簡潔な内容であった。「日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%前後で推移するよう促す。」
これに対して7月15日に発表された「当面の金融政策運営について」(http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/k080715.pdf)では、決定事項とともに景気物価の現状と見通し、4月の「展望レポート」の見通しとの比較、そして今後の「リスク要因」、先行きの金融政策運営の考え方がまとめられている。
これに伴い、金融政策決定会合の結果発表日に発表されていた「金融経済月報の基本的見解」の発表がなくなり、翌日発表される全文のみの発表となる。
また、展望レポートの見通し期間を延長することになり、展望レポートで、これまで、当該年度および翌年度の見通しを公表してきたが、今年の10月の展望レポートからはこれに加え、翌々年度の見通しも公表することになった。
さらに、政策委員の見通し計数を4月と10月の展望レポート発表時だけでなく、1月と7月の中間レビュー発表時にも公表するとともに、今年4月の展望レポートで掲載したリスク・バランス・チャートも引き続き公表することになり、こちらも中間レビューの際にも参考資料として公表される。
加えて、これまで会合の日程に応じて次回または次々回の会合で承認してきた決定会合の議事要旨は、今後は次回会合で承認の上公表することとすることになった。
以上が日銀が発表した「日銀の情報発信の拡充」の内容であるが、会合後の公表文の変更により米国のFOMC後のStatementに近い内容となる(6月25日分のStatement、http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20080625a.htm)。さらに、FRBも景気物価見通しを年4回発表し、その中で当該年度および翌年度とともに翌々年度の見通しも公表している(7月発表分、http://www.federalreserve.gov/boarddocs/hh/2008/july/0708mpr_part4.htm)が、日銀の展望レポートにおいても同様に翌々年度の見通しが加わることとなった。
最近、地域の集会に参加したり、親戚が集る機会などがあり、いろいろな人と話をしていると金融市場に関係ない人が、米サブプライム問題や原油価格の上昇などについてかなり詳しいことがわかった。ニュースなどで報じられていることもあるが、投資信託や株式、そして個人向け国債などを通じて金融市場に関心を持つ人が増えてきていることも確かなのであろう。
ただし、実際の金融商品のリスクについては、それほど詳しい知識は持ってはいないのではなかろうか。銀行や証券会社、ゆうちょ銀行などでの窓口を通じ、担当者の説明は聞くものの、結局、その担当者の言っていることを信頼して購入するといったことも多く、リスクに関して話しを聞いてもそれを完全に理解しているわけでもないようである。
金融商品にどれだけのリスクが内在されているかは現実には計りようがない。その計りのひとつであるはずの格付会社の格付が正確にリスクを示しているのかどうかは、米サブプライム問題で疑問符が生じただけでなく、日本国債への格付などを見ても疑問である。格付はあくまでひとつの専門調査機関のリスク判断に過ぎないと見ておく必要がある。
価格変動リスクに関しては、さすがに現場で相場に張り付いて経験すれば、そのリスクを肌で感じることができよう。市場関係者だけでなくデイトレーダーと呼ばれる個人投機家もその恐さとともに面白さも理解しているものと思われる。
金融商品のリスクは現実に相場を経験しないとはっきりわからないものでもある。クルマを運転していると事前に何かを察して交通事故を防いだという経験を持った人も多いのではなかろうか。視野に入ったものに何かしら違和感なり、通常ではない気配を察することがあるのは、ある種の経験によるものだと考えられる。金融のリスクも同様でなかろうか。これを知識だけで理解しようというのにも無理があるのかもしれない。
本日の日本時間の早朝、米国時間の夕方に米財務省とFRBは緊急声明を発表した。その内容とは米政府系住宅金融機関2社、連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸し付け抵当公社(フレディーマック)の支援策である。
米財務省はファニーメイとフレディーマックに対する信用枠を一時的に拡大し、必要なら米財務省はファニーメイとフレディーマックの株式を所得する一時的な権限を保有する。また米連邦制度理事会(FRB)も声明を発表し、両社に対して緊急融資を実施する権限をニューヨーク連銀に付与し、必要なら公定歩合貸出を認可とも伝えられた。以前にファニーメイとフレディーマックは国有化もとの報道もあったが、それに対しては、現在の株式会社形態を維持すべきとのホワイトハウスからの発表もあった。
ファニーメイとフレディーマックはともにGSE(Government Sponsored Enterprises)と呼ばれる米国における住宅や農業関連の政府後援企業の機関のひとつある。ファニーメイ(Fannie Mae)とは連邦住宅抵当公庫(Federal National Mortgage Association)のことで、フレディーマック(Freddie Mac)とは連邦住宅貸し付け抵当公社(Federal Home Loan Mortgage Corporation)のことである。それぞれの株式はニューヨーク証券取引所などに上場されている。
それぞれ名称、設立時期(ファニーメイ1938年、フレディーマック1970年)は異なるものの事業内容は、住宅ローン市場に安定的に資金を供給するために、民間金融機関からローン債権を買い取り、それを証券し市場で住宅ローン担保証券を発行するというものである。また、発行した証券を自己勘定でも保有しており、証券化した商品の元利金支払いの保証なども行なっている。
両社ともに政府系機関ではあるものの民間企業であり、米国連邦政府の公的保証は受けていない。しかし、両社が大量に発行している住宅ローン担保証券は、政府機関債として米国国債に次ぐ信用力を持つとされている。またファニーメイとフレディマックが保有もしくは保証する債券は5兆2千億ドルと日本円で約550兆円程度にもなり日本のGDP並みの金額となっている。
サブプライムローン問題の影響により、この両社の経営悪化が伝えられ、6月11日の米株式市場では一時両社の株が前日比50%安となるなど異常な事態となり、政府やFRBはこのように異例の支援策発表となったとみられる。
中国の税関総署が発表した今年1-6月期の貿易黒字は、前年同期に比べ11.8%の減少となった。日経新聞の報道などによると、原油価格の上昇などにより輸入が31.0%増加した反面、米国など世界経済の減速で輸出の伸びが17.6%に止まったことで、貿易黒字が大きく減少した。特にこの輸出の減速は注意が必要となりそうである。特に6月以降、対米輸出の伸びが鈍化し、今後も予想以上に貿易黒字の減少が進む可能性がある。
また、日経が報じたところによると香港紙が消息筋の話として17日ごろに発表予定の4-6月期の中国のGDP伸び率が9.8%に止まると報じているとか。これが事実となれば2005年10-12月期以来の1桁成長となる。それでもまだ10%近い成長とも言えるが、トレンドとして伸び率鈍化の方向に転じてくる可能性もあり、特に北京オリンピック後に伸び率鈍化が顕著となってきたとしてもおかしくはない。
インドでもインフレ圧力の強まりなどもあり、新車販売が減速するなどこちらもこれまでの高成長を維持してくるのが難しくなってくる可能性がある。米国経済の減速、さらに日本も景気減速が顕著となりつつあり、アジア地域の新興国経済だけが高成長を維持することも難しい状況となりつつある。
中国やインドの景気減速が明らかになると、今度は世界的な原油需要の後退懸念によって、やや投機的な動きも入っている原油先物価格だが、投機筋が先を読んで急落するといった事態も今後は考えられる。これはこれでインフレ圧力が抑えられることになるが、今度は原油価格など商品市況の上昇により、ある意味原油バブルに潤っていた資源国がその利益を享受できなくなるとなれば、いずれあらたな問題も出てくることも考えられる。今後の世界経済の動向にも細かな注意も必要となりそうである。
7月7日に公表された日銀の地域経済報告(さくらレポート)の総括判断は、「足もとの景気は、地域差はあるものの、エネルギー・原材料価格高の影響などから、全体として引き続き減速している」として基調判断は据え置かれた。
しかし、全9地域のうち東北は現状維持としていたが、その他の8地域は個人消費に弱めの動きがみられること等からやや下方修正されている。ちなみに4月時は北海道以外の8地域がやはり下方修正となっていた。
このさくらレポートの中の設備投資に関する部分を見てみると、「設備投資は、交易条件の悪化等により企業収益が減少していることなどを背景に、増勢が鈍化しているないしは、高水準ながら横ばいとなっているといった報告が目立っている」となっている。
最近の企業の設備投資動向として「交易条件の悪化による企業収益の減少や先行きの需要に対する不透明感の高まりを背景に、増勢が鈍化している。こうした中で、企業の規模や業種等の違いによる投資スタンスのばらつきが一段と鮮明化している」と指摘している。
特に大企業・製造業では、投資抑制の動きが一部にみられるものの、先行きの市場成長が見込まれる分野に対しての投資は着実に実施するとのスタンスが維持されている。しかし、大企業・非製造業は、グローバル需要の取り込みが難しことや、消費の先行きに対する不透明感などで、大企業製造業ほど設備投資に対し積極的ではない点が伺える。
今後の動向により注意が必要なのは、中小企業の設備投資へのスタンスか。中小企業では業種に関わらず抑制的な投資スタンスが広がりつつあり、「リスクの大きい投資を見合わせたり、必要最低限の投資に絞り込もうとする動きが目立ち始めている」とレポートは指摘している。
ただし、「高い技術力を持つオンリーワン企業やニッチ分野における需要の取り込みに成功した先等では、積極的な投資スタンスを維持している」として、中小企業間でも投資スタンスの「ばらつき」が鮮明化している点をレポートは指摘している。
「今後の企業収益や内外経済の動向次第では、中小企業の抑制スタンスが一段と強まるのみならず、大企業の中長期的な戦略に基づく投資計画にも少なからず影響が及び、こうした下支え効果が剥落するリスクには留意する必要があると考えられる。」とレポートでは今後の設備投資の動向に関しての注意を促している。
7月の決定会合では4月に発表した展望レポートの中間レビューが実施されるが、今後の設備投資動向を含めて、経済見通しについてはより慎重な見方となる可能性が高いとみられている。
2008年6月に募集された夏の個人向け国債の販売額は、10年変動タイプと5年固定タイプの合計で9952億円と前回の春の分の販売額の約3倍に増加した。10年変動タイプの販売額は1010億円と1000億円台を回復し、5年固定タイプは8942億円となった。
4月以降、米サブプライム問題による金融市場の混乱が3月のベア・スターンズの救済などをきっかけに沈静化し、さらに原油高などを受けて世界的なインフレ懸念の強まりなどから欧米での利上げ観測なども手伝い欧米の長期金利が上昇基調を強め、日本の長期金利も上昇したことで、変動の初期利子、固定の利率ともに前回から引き上げられたことが好感されたとみられる。個人は利子の変化に対してはかなり敏感であり、利子が引き下げられていた前回の募集額を大きく上回ったものとみられる。
ただし、その後の長期金利は低下基調となっている。物価上昇を意識してECBは7月に利上げを行なったが今後についてはバイアスはないと明言せず、FRBは物価よりも景気減速を意識していることで利上げ観測が後退したことが背景にある。また、日銀も国内景気の減速を意識しており、物価上昇圧力も強まっていることで当面利上げにも利下げにも動けない状況にある。6月16日に長期金利は物価上昇背景に1.895%まで上昇したが、その後は景気が意識され1.6%台に低下しており、当面は1.6%から1.8%あたりでの動きを予想しているが、次回の個人向け国債の条件決定日(9月の10年国債入札日)の長期金利の予測をすることは難しい。
これまで発行された個人向け国債の回号別販売額と税引き前の初期利子(固定は利率)は下記の通り
第1回変動10年(2003年3月)3,835億円(うち郵便局499億円)、0.09%
第2回変動10年(2003年4月)3,486億円(うち郵便局746億円)、0.05%
第3回変動10年(2003年7月)2,802億円(うち郵便局588億円)、0.05%
第4回変動10年(2003年10月)9,432億円(うち郵便局1,659億円)、0.77%
第5回変動10年(2004年1月)1兆3,951億円(うち郵便局995億円)、0.62%
第6回変動10年(2004年4月)1兆4,185億円(うち郵便局1,244億円)、0.55%
第7回変動10年(2004年7月)1兆7,726億円(うち郵便局1,990億円)、0.74%
第8回変動10年(2004年10月)1兆8,652億円(うち郵便局2,484億円)、0.74%
第9回変動10年(2005年1月)1兆7,647億円(うち郵便局2,436億円)、0.67%
第10回変動10年(2005年4月)2兆3,374億円(うち郵便局1,990億円)、0.73%
第11回変動10年(2005年7月)1兆6,423億円(うち郵便局2,484億円)、0.45%
第12回変動10年(2005年10月)1兆3,629億円(うち郵便局2,483億円)、0.55%
第13回変動10年(2006年1月)8,001億円(うち郵便局1,488億円)、0.68%
第14回変動10年(2006年4月)8,285億円(うち郵便局1,491億円)、0.85%
第15回変動10年(2006年7月)9,813億円(うち郵便局995億円)、1.10%
第16回変動10年(2006年10月)7,323億円(うち郵便局997億円)、0.92%
第17回変動10年(2007年1月)4,334億円(うち郵便局938億円)、0.84%
第18回変動10年(2007年4月)3,479億円(うち郵便局642億円)、0.87%
第19回変動10年(2007年7月)3,713億円(うち郵便局736億円)、1.01%
第20回変動10年(2007年10月)1,933億円、0.85%
第21回変動10年(2008年1月)1,316億円、0.68%
第22回変動10年(2008年4月)622億円、0.57%
第23回変動10年(2008年7月)1010億円、1.00%
第1回固定5年(2006年1月)1兆1,285億円(うち郵便局497億円)、0.80%
第2回固定5年(2006年4月)9,883億円(うち郵便局1,490億円)、1.01%
第3回固定5年(2006年7月)1兆2,430億円(うち郵便局996億円)、1.30%
第4回固定5年(2006年10月)8,584億円(うち郵便局998億円)、1.13%
第5回固定5年(2007年1月)10,730億円(うち郵便局998億円)、1.20%
第6回固定5年(2007年4月)8,326億円(うち郵便局1,311億円)、1.13%
第7回固定5年(2007年7月)1兆5,964億円(うち郵便局1,545億円)、1.50%
第8回固定5年(2007年10月)7,691億円、1.15%
第9回固定5年(2008年1月)4,196億円、0.94%
第10回固定5年(2008年4月)2,919億円、0.81%
第11回固定5年(2008年4月)8,942億円、1.22%
7日に日銀の支店長会議が開催された。日銀のホームページにアップされた総裁開会挨拶要旨を前回4月の分と比較してみたい。
国内経済については、7月は輸出に関して足元鈍化傾向が意識されている。企業収益については日銀短観でも明らかになったように、交易条件の悪化等を背景に4月の「伸び悩み」から7月は「減少している」となっている。また4月にあった「住宅投資」に関する記述、「住宅投資は、回復に向けた動きがみられるが、なお低水準となっている」が7月には含まれていなかった。ちなみに6月26日の中村審議委員の講演において、住宅投資に関して「業界内では先行きを警戒する声が高まりつつある」との発言があった。
足元国内経済については下方リスクをより意識したものとなっているものの、先行き見通しについては「その後緩やかな成長経路をたどると予想される」との見方に変化はない。
海外経済情勢について、7月に「米国経済は停滞しており、金融市場・資産価格・実体経済の負の相乗作用が、いつ、どのように収束に向かうのか、不確実性が大きい」として4月の「不確実性が高まっている」といった表現に較べて、より警戒感を強めている。また7月には「世界的にインフレ方向のリスクは高まっている」との文面が加わっており、国際商品市況の高騰による世界的なインフレ圧力に対してより警戒を強める格好となっている。
国内の物価については、大きな文面の違いはなかったものの消費者物価(除く生鮮食品)の前年比「プラス基調」から「プラス」と表記が若干変化している。ちなみに5月全国消費者物価指数(除く生鮮)が前年比+1.5%と10年ぶりの高い水準になっている。
総括として7月には「上下両方向のリスク要因を丹念に点検」や「機動的」という言葉が入っていたが、これらは最近の白川総裁などの会見などで使われている表現でもある。
6月16日の白川日銀総裁会見でも、日本の現在の景気についての交易条件の悪化に伴う所得形成の弱まりが民需の下振れをもたらすリスクとともに、物価については、消費者のインフレ予想や企業の価格設定行動を含めて、先行きの上振れリスクに言及している
このように今後のリスクについては景気については下振れ、物価については上昇リスクを意識し、今後の金融政策については「機動的な」運営を行なうとしている。 「機動的」というのはどのような動きを示しているのかは、今後の日銀の動向によって次第に明らかとなっていくものとみられる。
7月7日に公表された日銀の地域経済報告(さくらレポート)の内容を確認してみたい。
総括判断としては、「足もとの景気は、地域差はあるものの、エネルギー・原材料価格高の影響などから、全体として引き続き減速している」として基調判断は据え置かれたものの、全9地域のうち、東北は現状維持としていたが、その他の8地域は個人消費に弱めの動きがみられること等からやや下方修正されている。ちなみに4月時は北海道以外の8地域がやはり下方修正となっていた。
このさくらレポートの中で、今回は設備投資に関して見てみたい。総括としては「設備投資は、交易条件の悪化等により企業収益が減少していることなどを背景に、 増勢が鈍化しているないしは、高水準ながら横ばいとなっているといった報告が目立っている。」としている。
そして、最近の企業の設備投資動向として「交易条件の悪化による企業収益の減少や先行きの需要に対する不透明感の高まりを背景に、増勢が鈍化している。こうした中で、企業の規模や業種等の違いによる投資スタンスのばらつきが一段と鮮明化している」としている。
「交易条件の悪化による企業収益の減少」は今後の国内景気動向を見る上でのひとつのポイントとなりそうだが、設備投資においての「投資スタンスのばらつきが一段と鮮明化」している点も興味深い。
特に大企業製造業では、投資抑制の動きが一部にみられるものの、先行きの市場成長が見込まれる分野に対しての投資は着実に実施するとのスタンスが維持されている。これは「企業が財務体質の改善強化を進めてきた結果、経営環境の悪化に対する耐性を強めている」点も指摘している。また、エネルギー・原材料コスト増に対応するための合理化や省力化投資に対する関心も強まり、「環境関連投資や被災リスクへの対応、食品の安全性向上などに向けた投資に取り組む動きが目立ちはじめているのも最近の特徴である」としている。
大企業非製造業は、グローバル需要の取り込みが難しことや、消費の先行きに対する不透明感などで大企業製造業ほどは積極的ではないとみられる。
注意が必要なのは、中小企業の投資へのスタンスかと思われる。中小企業では業種に関わらず抑制的な投資スタンスが広がりつつあり、大企業に比べ投資余力や価格交渉力、技術力・販売力に乏しい先が多いことで「リスクの大きい投資を見合わせたり、必要最低限の投資に絞り込もうとする動きが目立ち始めている」としている。ただし、「高い技術力を持つオンリーワン企業やニッチ分野における需要の取り込みに成功した先等では、積極的な投資スタンスを維持している」として、中小企業間でも投資スタンスの「ばらつき」が鮮明化している点をレポートは指摘している。
そしてレポートでは、「今後の企業収益や内外経済の動向次第では、中小企業の抑制スタンスが一段と強まるのみならず、大企業の中長期的な戦略に基づく投資計画にも少なからず影響が及び、こうした下支え効果が剥落するリスクには留意する必要があると考えられる。」としている。
7月1日に発表された日銀短観では、2008年度全産業設備投資計画は例年通り3月の見通しに較べて上方修正され+2.4%となり、市場予想を上回る結果となったが、一時期に較べて低水準であることも確かである。設備投資について今後はばらつきがより一掃鮮明化した上で、全体として抑制的な投資スタンスが広がる可能性もあることで、先行きの動向には注意が必要となりそうである。
本日、日銀の支店長会議が開催された。日銀のホームページにアップされた総裁開会挨拶要旨を前回4月の分と比較してみたい。
最初に国内経済について。
(7月)わが国の景気は、エネルギー・原材料価格高の影響などから、減速している。輸出は、「足もと幾分鈍化しつつも」増加を続けている。企業収益は、「交易条件の悪化等を背景にこのところ減少している」。そうしたもとで、設備投資は増勢が鈍化している。個人消費は、雇用者所得の緩やかな増加を背景に、底堅く推移している。生産は、横ばい圏内の動きとなっている。景気の先行きについては、当面減速が続くものの、その後緩やかな成長経路をたどると予想される。
(4月)わが国の景気は、エネルギー・原材料価格高の影響などから、減速している。輸出は増加している。企業収益は高水準ながら伸び悩んでおり、企業の業況感もこのところ慎重化している。そうしたもとで、設備投資は増勢が鈍化している。雇用者所得の緩やかな増加を背景に、個人消費は底堅く推移している。「この間、住宅投資は、回復に向けた動きがみられるが、なお低水準となっている」。生産は、やや強めに推移した昨年後半の反動もあって、このところ横ばい圏内の動きとなっている。景気の先行きについては、当面減速が続くものの、その後緩やかな成長経路をたどると予想される。
7月の「」内が前回分と違いがあった箇所である。輸出に関して足元鈍化傾向が意識されている。企業収益については日銀短観でも明らかになったように、4月の「伸び悩み」から「減少している」となっている。また4月にあった「住宅投資」に関する記述が7月には含まれていない。これを見る限り、足元景気については下方リスクをより意識したものとなっているとみられるが、先行き見通しについては「その後緩やかな成長経路をたどると予想される」との見方に変化はない。
海外経済情勢について
(7月)国際金融資本市場においては、米国のサブプライム住宅ローン問題に端を発した不安定な状態が続いている。「また、米国経済は停滞しており、金融市場・資産価格・実体経済の負の相乗作用が、いつ、どのように収束に向かうのか、不確実性が大きい。国際商品市況の高騰が続くなど、世界的にインフレ方向のリスクは高まっている。海外経済や国際金融資本市場を巡る不確実性」、エネルギー・原材料価格高の影響などに、引き続き注意する必要がある。
(4月)国際金融資本市場においては、米国のサブプライム住宅ローン問題に端を発した不安定な状態が続いている。また、原油価格をはじめとする国際商品市況の高騰や米国経済の下振れリスクなど、世界経済についての不確実性が高まっている。したがって、国際金融資本市場や世界経済の動向、エネルギー・原材料価格高の影響については、引き続き注意する必要がある。
海外経済情勢については7月に「米国経済は停滞しており、金融市場・資産価格・実体経済の負の相乗作用が、いつ、どのように収束に向かうのか、不確実性が大きい」として4月に較べてより警戒感を強めていることがわかる。また7月には明確に「世界的にインフレ方向のリスクは高まっている」としている。
国内の物価について
(7月)物価面では、国内企業物価は、国際商品市況高などを背景に、当面、上昇を続ける可能性が高い。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が概ねバランスした状態で推移するもとで、石油製品や食料品の価格上昇などから、「プラス」を続けていくと予想される。
(4月)物価面では、国内企業物価は、国際商品市況高などを背景に、3か月前比でみて、当面、上昇を続ける可能性が高い。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が概ねバランスした状態で推移するもとで、石油製品や食料品の価格上昇などから、プラス基調を続けていくと予想される。
大きな文面の違いはないものの消費者物価(除く生鮮食品)の前年比「プラス基調」から「プラス」と表記が変化しており、より強めの見方となっている。
総括
(7月)日本銀行は、経済・物価の見通しとその蓋然性、上下両方向のリスク要因を丹念に点検しながら、それらに応じて機動的に金融政策運営を行っていく方針である。
(4月)日本銀行は、経済・物価情勢を丹念に点検しながら、見通しの蓋然性とそれに対するリスクを見極めた上で、それらに応じた適切な金融政策運営を行っていく所存である。
7月には「上下両方向のリスク要因を丹念に点検」や「機動的」という言葉が入っている。これらは最近の白川総裁などの会見などで使われている表現でもある。リスクについては景気については下振れ、物価については上昇リスクを意識し、今後の金融政策については「機動的」な運営を行なうとしている。機動的というのはどのような動きを意味するのかは、今後の日銀の動向によって次第に明らかとなっていくものとみられる。
欧州中央銀行(ECB)は、3日の定例理事会で政策金利を0.25%引き上げ、年4.25%にすることを決定した。6月のユーロ圏15か国の消費者物価上昇率(速報値)が前年同月比で4.0%となり1999年の通貨統合後の最高水準を更新するなど、「インフレは安定水準を上回っている」とのトリシェECB総裁の発言もあったがインフレ抑制のための利上げとなった。注目された今後の金融政策の運営に対してトリシェ総裁は、「先行きの金融政策に関しバイアスはない」とコメントし」追加利上げに関しては明言せず、これによりECBによる追加利上げ観測はいったん後退した。
今回のECBの利上げにより、欧米の金利差は2.25%となり1999年のユーロ導入以来最大となり、ドル安への懸念なども強まっていたが、ECBによる追加利上げ観測の後退でドル売りは一服となった。トリシェ総裁とポールソン財務長官と事前に会合を開くなどしていた経緯もあったことで米国に対して一定の配慮を示したともみられる。さらに、トリシェ総裁は欧州の経済成長リスクは下向きとの発言もあったように、域内景気も意識されたのではないかともみられる。
もうひとつ注目された6月の米雇用統計では、非農業雇用者数が前月比6.2万人減と6か月連続で前月比減少となったが、これはほぼ事前予想に近い数字ともなった。4月の雇用者数も2.8万人減から6.7万人減に、5月も4.9万人減から6.2万人減にそれぞれ悪化の方向で修正された。
そして6月の失業率は5.5%と前月比横ばいに。5月の米失業率が前月比+0.5%も跳ね上がっていたことで、その水準が維持されているのかどうか注目されていた。結局、前月比横ばいとなったことで引き続き米雇用情勢は悪化していることを示した。FRB高官からも物価上昇よりも景気減速を意識するような発言もあったようだが、失業率の発表を受けてFRBによる利上げ観測はさらに後退したものとみられる。
昨日、東京株式市場では日経平均は10日続落となり、これは1956年の2月19日から3月2日以来の実に43年ぶりの記録となった。40年不況と呼ばれた当時の様子を拙著「日本国債は危なくない」(文春新書)の原稿から振り返ってみたい。
「昭和38年(1963年)は、東京オリンピックを控えて公共投資が活発化した。夢の超特急といわれた東海道新幹線や首都高速道路、東京モノレール、そして黒四ダムといった大型の公共工事が次々に行われてきたのである。しかし、東京オリンピックが始まった昭和39年(1964年)10月ごろから景気は急速に冷え込みはじめ、後退局面に入った。すでに昭和36年(1961年)ごろから中小企業の倒産が増加しており、株価も下落していた。企業収益も減りつつあったのだが、それが顕在化したのが昭和39年(1964年)の後半であった。昭和40年(1965年)に入ると、サンウエーブや山陽特殊製鋼など大手企業の破綻が相次いだ。株価も急落し続け、信用不安も広がりをみせていた。信用不安に対しては、山一證券への日銀法25条にもとづく無担保・無制限の特別融資(日銀特融)が実行されたことでなんとか収まったのだが、株価の下落はさらに続いた。これが「40年不況」と呼ばれ、金融緩和も効果がなく、財政面からの公共事業が促進されることになり、戦後初めてとなる「国債発行」が準備されることとなったのである。」「日本国債は危なくない」(文春新書)の原稿より
40年不況と現在の状況を較べると、現在は景気の減速懸念は強まっているものの当時のような不況下にあるわけではない。当時と現在を直接比較することはあまり意味のないことかもしれないが、10日も続落していた背景は意識しておく必要があるかもしれない。原油先物価格の上昇などを背景にした物価上昇懸念、米金融不安の拡大、そして米経済の減速がじわりじわりと世界経済に影響を及ぼしている状況。日銀も物価上昇も気になるものの、景気の下振れリスクもかなり意識しているともみられ、今後の日本経済の動向にもより注意が必要となりそうである。
本日の日経新聞によると、日銀は1日に発表された日銀短観の結果などを踏まえ、今月14日から15日にかけて開催される金融政策決定会合において実施される展望レポートの中間点検において2008年度の景気見通しについて、下振れとの表現を盛り込み下方修正する方向と伝えている。
展望レポートの中間点検においては物価についても上振れのリスクを強調する見通しとも伝えられているが、もしかすると日銀内部では今月に入り物価上昇を意識する空気が広がる可能性があるかもしれない。それというのも日銀食堂のランチやコーヒーなどが7月に入り一斉に値上げされたそうなのである。これまで一杯140円となっていたのコーヒーは、前回の値上げ時期がわからないぐらい値上げは行なわれてこなかったとか。物価の番人の本拠地食堂の値上げは、果たして日銀の金融政策にも微妙に影響を与えるのかどうか。
6月25日のFOMCにおいて、米FRBは政策金利を現行の2.00%に据え置くことを決定し、これにより昨年9月以降の利下げはいったん休止となった。
FOMC終了後に発表された声明文は、「経済成長の下振れリスクは幾分か縮小している半面、インフレおよびインフレ期待の上振れリスクは上昇している」とややインフレの上振れリスクを意識したものとなってはいたが、市場が警戒していたほど利上げを意識させるような内容ではなかった。このため、米FRBによる早期の利上げ観測は後退した。さらに米国では景気への不安とともに金融機関の損失等についても再び懸念が強まってきた。
欧州では6月30日に発表された6月のユーロ圏15か国の消費者物価上昇率(速報値)が前年同月比で4.0%となり1999年の通貨統合後の最高水準を更新した。これにより7月3日のECB理事会で0.25%の利上げが実施されることがほぼ確定的となったが、さらなる追加利上げの可能性も出てきた。
日本国内を見ると、27日に発表された5月全国消費者物価指数(除く生鮮)は、前年比+1.5%とほぼ10年ぶりの高い水準になった。暫定税率が復活したことでガソリンが値上げされ、さらに食品の値上がりなども進行したことが影響した。当面CPIはこのまま上昇基調を続けるとみられ、いずれ 2.0%あたりまでの上昇もあるとみられる。この物価上昇も気になるが、物価安定の目安の上限でもある2.0%を大きく上回ってくることがない限りは、物価上昇にそれほど神経質になる水準でもない。
市場でもここにきて物価よりも景気動向を気にするようになってきている。7月1日に発表された6月調査の日銀短観は、ヘッドラインとして注目される大企業製造業・業況判断DIは+5と市場予想の+3を上回った。また、2008年度全産業設備投資計画は例年通り3月の見通しに較べて上方修正され+2.4%となり、市場予想も上回る結果となったが、一時期に較べて低水準であることも確かである。さらに2008年度大企業製造業経常利益計画が-9.9%となるなど気になる数字も出ており、原油高などの影響を含めて今後の景気動向には注意も必要となりそうである。価格判断DIは原材料価格の高騰を受けて販売、仕入れともに1980年以来の高さとなった。
景気動向について日銀短観そのものは予想されていたほど悲観的な内容ではなかったものの、足元の景気減速を確認し、先行きについては不透明感も強いものとなっている。日本国内においては当面、物価よりも景気動向が注視されてくるものと思われる。
6月調査の日銀短観はヘッドラインとして注目される大企業製造業・業況判断DIは+5と市場予想の+3を上回った。同9月予測は+4となり先行きもさほど低下を見込んではいない結果ともなり、これを受けて1日の債券先物は寄り付きから大きく下落した。
2008年度全産業設備投資計画は例年通り3月の見通しに較べて上方修正され+2.4%となり、市場予想も上回る結果となったが、一時期に較べて低水準であることも確か。 さらに2008年度大企業製造業経常利益計画が-9.9%となるなど気になる数字も出ており、原油高などの影響を含めて今後の景気動向には注意も必要となりそうである。価格判断DIは原材料価格の高騰を受けて販売、仕入れともに1980年以来の高さとなった。
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