「若き知」
「過去データは一番下に移行しました」


2009.7.31「8月債券相場の見通し」

7月の国債増発後の国債入札は、余剰資金を抱えた銀行などの需要を背景に比較的順調なものとなった。しかし、これは事前に警戒感が強まっていたことで業者なども準備を進めていた結果でもある。しかし、市場への大量の国債供給は今後も続くわけであり、8月に入ってからも順調に入札にこなして行くかどうかはわからず、入札への警戒感は残っている。今月の国債入札動向にも注意が必要となりそうである。また景気回復への期待感で日本を含めて世界的に株価の上昇が続いているが、この動きが継続されるかどうかも注目される。米国の経済指標などの発表を受けての米国株式市場の動向にも注意したい。そして8月に入り月末の衆院選挙の行方も気掛かり材料となりそうである。民主党が政権を取ったとしても、すぐには国債増発圧力には繋がらないとの見方も強まり、国債需給への懸念は後退している。しかし、来年度予算などの行方等には不透明感も強く債券先物にはリスク回避を意識しての売りが入る可能性もある。


2009.7.31「足元の景気動向と先行き見通し」

29日に発表された6月の鉱工業生産速報値は前月比2.4%上昇となり、4か月連続の上昇となった。生産の上昇に寄与した業種は、電子デバイスや、自動社向け鉄鋼となっていた。出荷指数は前月比3.5%の上昇となり全業種でプラスとなった。在庫率指数も9.8%と大幅に低下し過去最大の改善幅を記録した。この週は大手企業の4〜6月期決算の発表が相次いだが、その中でもホンダが好決算を発表し、ソニーなど電機大手も業績の改善が見られた。 ただし、6月の完全失業率は5.4%と前月比0.2ポイント上昇し、有効求人倍率は0.01ポイント低下の0.43倍と過去最低を更新した。引き続き雇用環境については改善が見られなかった。6月の全国消費者物価指数(除く生鮮)は前年同月比1.7%低下となった。これは過去最大の下落率となったが、ほぼ市場予想通り。これは昨年の原油価格など商品価格の急騰の反動といった側面もある。

製造工業生産予測調査では、7月は前月比1.6%の上昇、8月は同3.3%の上昇となり引き続き上昇基調が継続すると予測している。7月の上昇は輸送機械工業、鉄鋼業、一般機械工業等により、8月の上昇は一般機械工業、鉄鋼業、電子部品・デバイス工業等によるものとしている。このように在庫調整が進んだことや、エコカー減税・エコポイントといった政府の経済対策の効果、さらに中国政府による積極的な財政政策などが功を奏し、自動車や電気機械を中心とした輸出と生産の回復は当面続くとみらにれる。この動きが日本経済全体の裾野を広げた回復に繋がるか、設備投資や個人消費などの国内の民間需要については、企業収益の低迷により雇用や所得環境が厳しさを増していることで引き続き弱まっており、これが回復してくるかどうが今後の焦点となりそうである。


2009.7.30「時間軸の設定」

日銀は「今次金融経済危機における主要中央銀行の政策運営について」というレポートを発表した。これは今回の金融経済危機の中で、世界の主要中央銀行が取り組んできた政策運営について、具体的にどのような政策措置が講じられてきたか、主要中央銀行の政策運営に共通してみられる特徴点は何か、という2つの観点から取りまとめたものである。この中に主要中央銀行による政策措置の中の、政策金利の先行きに関する方針の表明に関して下記のような記述があった。

「いくつかの中央銀行では、政策金利の引き下げに加え、ターム物金利など長めの金利を低位安定化させる目的で、政策金利の先行きに関する方針を表明することによって、金融緩和効果を補強している。」

長めの金利を低位安定化させる目的とする政策金利の先行きに関する方針を表明するというのは過去に日銀に事例がある。いわゆる「時間軸効果」を意識して行なわれた施策である。1999年2月に実施されたゼロ金利政策において、その年の4月に「デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢になるまではゼロ金利政策を継続する」とした。

さらに2001年3月からの量的緩和政策を行なった際にも、「消費者物価指数(全国、除く生鮮)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで、継続する」としたのである。

しかし、2000年8月のゼロ金利政策の解除の際には政府の反対があり、2006年3月の量的緩和政策の解除の際にも、先行きの消CPIの前年比は先行きプラス基調が定着していくとみて解除したが、実際にその後のCPIを見ても安定的といえるほどプラス基調が定着したわけではなかった。

このようなコミットメントを行なってしまうと自分で自分を縛りかねない。さらに政府や市場参加者などと日銀の目標達成の認識にギャップが生じる可能性があり、解除に向けて摩擦が生じてしまう懸念もある。これが意識されたのかどうかはわからないが、昨年12月に日銀が実質ゼロ金利政策を行なった際には、政策金利の先行きに関してはこのような具体的な方針は示していない。

これに対して今回の金融危機を受けての各国の中銀の中には、たとえば2009年4月に政策金利を0.25%に引き下げたカナダ中銀のように、2010年第2四半期末までこの誘導水準を継続する方針であることを示すなど、先行きについて具体的な方針を示したところがあった。また2009年7月に政策金利を0.25%に引き下げたリクスバンクも2010年秋まで継続するとの見通しを示していた。

このカナダ中銀は目標を立てるのではなく、具体的にいつまで実施すると期間を表明したが、これはこれでリスクがある。可能性は少ないといえども2010年第2四半期末までに景気が底打ちし、インフレ圧力などが強まることもありうる。

時間軸効果を狙うことも必要かもしれないが、より機動的な金融政策を行なうためには、あまり具体的な目標は設置しないほうが良いのではないかと思うのだが。


2009.7.30「地区連銀経済報告(ベージュブック)」

29日に米連邦準備制度理事会(FRB)は地区連銀経済報告、いわゆるベージュブックを発表した。

12の地区連銀によるレポートによると、米国経済は夏に向けて弱い状態が継続しているものの、ほとんどの地区で前回のレポート時に比べて、経済の減速が鈍化もしくは安定化が見られると指摘した。

製造業は一部地区で小幅改善みられるが、依然として多くの地区で低迷している。今後については、半年から1年で緩やかながら回復するとした。ただし労働市場は全米で極めて弱く、それが賃金の上昇圧力を抑制しているとの見方を示した

住宅市場については、大半の地区で引き続き軟調となっているものの、多くの地区である程度の改善の兆しが報告された。商用不動産市場に関しては、一部では2010年終盤にかけ一段と悪化するとの見通しも示した。 


2009.7.30「6月の鉱工業生産速報値」

本日、経済産業省が発表した6月の鉱工業生産速報値は、前月比2.4%上昇の81.0となりほぼ事前の市場予測に近いものとなった。前月比では4か月連続の上昇となっていたが、前年同月比では23.4%の低下となった。

生産の上昇に寄与した業種は、電子部品・デバイス工業、鉄鋼業、化学工業(除.医薬品)等であり、品目別にみると、モス型半導体集積回路(ロジック)の次ぎに普通乗用車が上昇に寄与している。ここにきての生産の回復には電子デバイス・自動車・そして化学製品の回復が引き続き大きく影響していることが伺える。

6月の出荷は、前月比3.5%の上昇と4か月連続の上昇となり全業種でプラスとなった。在庫指数は前月比1.0%の低下と6か月連続の低下となった。また、在庫率指数は9.8%低下と大幅に低下し、過去最大の改善幅を記録した。

製造工業生産予測調査では、7月は前月比1.6%の上昇、8月は同3.3%の上昇となり引き続き上昇基調が継続すると予測している。7月の上昇は輸送機械工業、鉄鋼業、一般機械工業等により、8月の上昇は一般機械工業、鉄鋼業、電子部品・デバイス工業等によるものとしている。

経済産業省は、生産の動向についての基調判断を、前回の「持ち直しの動きが見られる」から今回は「持ち直しの動きで推移」と微妙に修正しながらも据え置いた。


2009.7.29「2003年との比較」

2003年5月に預金保険法102条に基づき金融機関への特別融資という形式で「りそな銀行」に約2兆円を資本注入することとなった。りそな銀行に対する資本注入によって、政府は大手銀行は潰さないといった意識が市場で強まり、その結果、株式市場では銀行株などが買われ、海外投資家の買いなどにより、日経平均株価は2003年4月の7607.88円がバブル崩壊後の安値に、その後上昇基調を強めた。

ダウ平均は2007年10月11日に14279.96ドルの高値を付けてから、サププライム問題の深刻化や2008年秋のリーマン・ショックを受けて、2009年3月9日の取引時間中に6440.08ドルの直近安値を付けるまで54.9%下落した。しかし、その後、各国中銀による積極的な政策により金融システム不安は徐々に落ち着きを見せ、また米国や中国などを中心に政府も積極的な財政政策を行なってきたことから、景気の減速ペースも緩やかなものとなってきた。トピックス的な出来事としては、6月1日のGMの破綻があった。

2003年の日本では、りそな銀行救済決定前に日経平均が底打ちし、2009年ではGMの破綻前にダウ平均が底打ちしていた点など、2003年の東京株式市場の回復と2009年の米国での株式市場の回復には似通った動きとなっている。

2003年の日本経済は、米国や中国などの経済成長などを背景に徐々に回復し始めた。11月には足利銀行の経営破綻が明るみにでて、やはり金融再生プログラムに手順に従って国有化されたが、株式市場はこれらは悪材料としては捉えず、むしろ不透明感が払拭されてきたことなどからこれ以上の金融危機は回避されるとの見方が強まり、次第に日本における金融不安は解消に向かっていった。

2009年も今後、欧米での金融機関の経営破綻が出てこないとも限らないが、2003年の日本における足利銀行の経営破綻時のように、これ以上の金融危機は回避されるとの見方が強まる可能性の方が高い。

2003年以降、一連の資本注入ともに景気回復も手伝って、銀行の不良債権処理は加速し、2004年の三菱UFJフィナンシャルグループの誕生により不良債権問題は終結したといわれる。2005年3月期に大手銀行の不良債権比率は2002年3月期比で半減し、資本注入を受けた金融機関は相次いで公的資金を返済したのである。

欧米の金融機関における不良資産問題も、今後徐々に解決に向かい、多少期間も必要と思われるが、いずれ今回の金融危機が収束してくるものと思われる。その時期等の見極めには2003年の日本の状況がひとつの参考となるのではなかろうか。


2009.7.28「235」

今週発売の「週刊ポスト」から、幸田真音さんの小説「235 - 日本国債7兆8千億円を狙え!」の連載が開始された。早速、読んでみたところ、財務省が舞台となっていることもあってか、その文章から伝わってくる感覚はあのベストセラー小説となった「日本国債」に近く、たいへん懐かしさを感じた。

題名にあるように日本国債そのものも大きく関わってくるものと予想されるが、7兆8千億円の日本国債とはいったい何を意味するのであろうか。そして、題名となった「235」とはいったい何なのか。日本のエネルギー政策が今回のテーマとなっているそうで、それから連想されるのは「ウラン235」のような気もするが、これはあくまで私の憶測であるので、念の為。

何はともあれ、今後の展開がたいへん楽しみな小説である。ここのところ週刊誌を買う機会はほとんどなくなっていたが「週刊ポスト」は今後、毎週買うこととなりそうである。


2009.7.28「日経平均1万円台回復と日本経済」

27日に日経平均株価は再び1万円の大台を回復した。4〜6月期の企業決算が予想を上回ることが多くなった米国の株式市場が連日上昇し、さらに中国などアジア株やドイツなど欧州の株式市場が6月高値を抜いてきた。これに対し、日本株は政局の先行き不透明感の強まりなどもあって上値が重く、7月13日には9050円と9000円近くまで下落していた。しかし、さすがに日本株の出遅れ感も意識され、海外投資家主体に買いが入ったことで、日経平均株価は1万円台回復となった。

これを見る限り、今回の日本株への買いが日本経済の先行きへの期待感によるものというよりも、他市場との比較による後ろ向きの買いであったといえる。日本経済への先行きについては、まだまだ悲観的な見方が大勢である。先行き二番底を形成するといった見方も強く、これが株式を積極的に買い上げられない要因となっている。しかし、今回の日経平均1万円台回復が期待感による積極買いではないとなれば、意外としぶとい相場上昇になる可能性がある。過去の経験則からも期待感により買ったときよりも、いたしかたなく買ったときの方が儲かるときが多い。

景気の先行き不透明感が強いことで、株高による債券市場への影響も限定的となっている。10年債利回りは日経平均の直近安値をつけた7月13日には1.295%と1.3%を割り込んでいたが、その後、米株の上昇や米債の下落も手伝って、7月23日と27日に1.395%をつけ、13日からちょうど0.1%の利回り上昇となった。これに対し5年債の利回りは13日の0.660%から22日に0.710%まで上昇したが、この間の利回り上昇は0.05%に止まった。債券相場はこの中期主体に銀行など余剰資金を抱えた投資家の買いが下支えとなっていたことが伺える。

日銀の門間調査統計局長は22日のアナリスト協会でのセミナーにおいて、日本経済の現状についてリバウンドとダメージのせめぎ合いとの表現を使った。リバウンドという面では、政府による経済政策や中国の経済成長に支えられた自動車や電気機械を中心とした輸出と生産の回復が代表的なものとなろう。これに対してダメージという面では、雇用や設備投資の悪化が上げられる。どちらに焦点を向けるかによって、日本経済への見方が変化してしまう。このため先行き見通しについては「不透明感」が強いとの表現を使わざるを得ない。

しかし、昨年秋のリーマンショック後の世界的な経済金融危機を、すでに脱してきていることは確かなものであろう。今後、あれだけの歴史的なショックが数年内に再来する可能性はない。大震災はすでに起きてしまっており、その復興対策がすでに講じられてきている。回復にはある程度の時間もかかろうが、今後、またすぐに起きるかもしれないと大地震ばかりを恐れていると、先行き見通しを誤る可能性もある。

今回の日経平均1万円回復は、ひとつの通過点となるのではなかろうか。衆院選の結果次第では日本の政権が変わる可能性も出ており、こういった不安定要素はあるものの、日本経済の自律的な回復は今後も進むものと考えている。そうなれば長期金利もじりじりと上昇基調を強めてきてもおかしくはない。


2009.7.27「あみプレミアム・アウトレット」

7月9日にオープンし、テレビコマーシャルも行なっている「あみプレミアム・アウトレット」に25日に初めて行ってきた。日中はまだ混雑していると思われ、夕方に出かけた。ほとんど地元でもあり、あまり地図を調べもせずに高速の阿見東インターを目指して一般道で行ったのだが、何故か迷ってしまい自宅から30分以内で行けるところを何故か渋滞もなかったのに1時間あまりもかかってしまった。いくら土地勘があるといっても何事も下調べは重要である。それとカーナビーも田舎道では役に立たないこともある。そういった言い訳はさておき、牛久の大仏を良く見渡せる位置に突然大きな建物が現れたのが「あみプレミアム・アウトレット」であった。

夕方遅くともなり、駐車場もすんなり入ることができ、アウトレットの中もそれほど混雑している様子もなかった。確かに多くの店が並び、なかなか観ているだけでも圧倒される。とはいえ私自身も最近はあまりブランド品に興味なく実用第一となり、娘達も同様でファッションなどはさっと見るだけで、主に小物などを主体とする店中心に観ていたようであった。夕方遅くなったことで、アウトレット内で食事をして帰宅した。

何はともあれ、自宅近郊にこういった施設が出来たことは何かと便利である。昨年からつくば市と土浦市に相次いで大型ショッピングセンターがオープンしており、買い物にはさらに便利になってきている。ただし、私自身にはあまりその恩恵を蒙ることは少ないのではないかと思うが。


2009.7.27「景気下げ止まりの原動力」

昨年9月のリーマン・ショック以降の世界的な金融・経済危機により、日本経済は金融面での打撃は欧米などに比べ限定的であったものの、経済への打撃は欧米以上に大きなものとなった。これは日本経済が輸出依存度が高かったことに加え、それまで好調さを保っていたトヨタなど自動車メーカーやパナソニックやソニーなど電機メーカーの業績が大きく落ち込んだことが影響した。

日本経済の回復には日本経済に大きな影響力を持つ自動車メーカーや電機メーカーの業績回復が不可欠となる。このため、政府による経済対策の内容も、エコカー減税やエコポイント制度など、自動車業界と電機業界の回復を意識した政策が中心となっていた。

ここにきて日本でも景気の下げ止まりが意識されているが、その原動力となっているのが、自動車や電気機械を中心とした輸出と生産の回復となっている点に注目すべきであろう。これについては日銀の山口副総裁も講演で指摘している。

「自動車については、海外現地在庫を始めとする在庫調整の進捗などから回復傾向が明確化しています。最近では、4月から実施されている新車購入促進策を受けて、ハイブリッドカーを中心に増産の動きが拡がりつつあります。また、電子部品については、国内外での在庫調整が進んだことや、中国における内需刺激策などを背景に、春先頃より、海外からの受注が大幅に増加し、生産が持ち直しています。特に、薄型テレビ、携帯電話、パソコン向けの受注が回復しています。電子部品だけでなく、完成品の生産も、薄型テレビなどを中心に足もと増加しており、今後も、「エコポイント制度」による販売押し上げ効果などから、比較的堅調な足取りを期待する声が聞かれます」

自動車や電気機械を中心とした輸出と生産の回復は、日本政府の経済刺激策が影響していることは確かである。たとえばプリウスの7月23日以降に注文を受けた3代目プリウスの納期が来年4月以降となるなど、爆発的なヒットとなっている。また、中国での大規模でスピーディーな経済対策が功を奏している側面もある。

この勢いが継続するのかどうか、また自動車や電気機械を中心とした輸出と生産の回復が日本経済全体の裾野を広げた回復に繋がるかが、今後の焦点となる。日本経済の行方については、国内民間需要、つまり設備投資や個人消費については、企業収益の低迷が続き、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、引き続き、弱まっており、短観などからも明らかなように企業の設備投資計画も減少している点を山口副総裁も指摘している。、

昨年秋以降の輸出の急減と大幅な減産の影響が、国内民間需要に遅れて波及し、雇用などに大きな影響を及ぼしている。しかし、輸出や生産が持ち直しの動きとなってきていることも確かであり、それが持続されればれ設備投資の回復にも影響し、また少し遅れて雇用面での回復にも影響を与えてくる可能性がある。あまり楽観的な見方も禁物であろうが、日経平均株価も上昇基調となり再び1万円台に乗せるなどしてきた現在、日本の景気回復への可能性を意識した見方も必要ではなかろうか。


2009.7.24「IASBの有価証券新区分案」

2009年7月14日付けでロンドンに本部をおく国際会計基準審議会(IASB)から金融商品の分類と測定に関するIAS39の改訂(公開草案)が公表された。企業が保有する株式や債券の区分が簡素化されるが、19日の日経新聞が報じたところによると、日本の金融機関の決算への影響も大きく反発の声が出ているようである。

この素案によると有価証券の分類を「時価評価して決算で損益計上するもの」と「しないもの」の2種類のみに分類し、これまでの「満期保有投資」や「売却可能金融資産」といった複雑な分類を大幅に簡素化する。

我が国の現在の区分は、「金融商品に関する会計基準」により、「売買目的有価証券」「満期保有目的債券」「子会社・関連会社株式」「その他有価証券」の4つに分類される。現在、銀行などを中心に国内金融機関の保有する大半の国債は、この中の「その他有価証券」に分類されている。

この「その他有価証券」が、新基準の「時価評価して決算で損益計上するもの」に分類されれば、決算そのものに大きな影響を与えてしまうこととなり、計上しない償却原価となれば、売却益を当期損益に組み入れるといったことができなくなる。

このため、もしこの区分案が採用されると、特に国債の大口保有者である銀行などの国債保有に大きな影響を与え、国債需給そのものへの影響を指摘する声もある。実際に市場では6月末からの債券相場の上昇課程で超長期債を購入した銀行などが、このIASBの有価証券新区分案の公表をきっかけに売却を急いだのではないかとの観測もあった。

今後のIASBの有価証券新区分案にも注意しておく必要がありそうである。


2009.7.23「6月の貿易統計」

財務省が23日に発表した6月の貿易統計によると、輸出は対前年同月比35.7%減(5月は同40.9%減)となり、輸入は対前年同月比41.9%(同42.4%)の減少となり、前月に比べ特に輸出の減少幅が縮まった。差し引きでは、5080億円の黒字となったが、貿易黒字が前年同月を上回るのは20か月ぶりとなった。

地域別にみると
対米国では5月は輸出が37.6%減(5月45.4%減)、輸入が37.9%減(同30.3%減)
対EUでは5月は輸出が41.4%減(5月45.4%減)、輸入が26.2%減(同28.8%減)
対アジアは5月は輸出が30.1%減(5月35.5%減)、輸入が31.7%減(同36.3%減)
対中国では5月は輸出が23.7%減(5月29.7%減)、輸入が26.2%減(同32.0%減)

輸出・輸入ともに対中国向けの減少幅が縮小し、対アジアでも同様の動きとなった。また対米では輸出が改善したものの輸入はさらに減少幅が拡大した。対米の輸入の減少品目では航空機類が大きく影響した。5月に比べて輸出は総じて改善傾向を示した、輸入についても対米以外は改善を示している。


2009.7.22「日銀ネット」

日本で最も重要なコンピューター・ネットワークのひとつが日本銀行と金融機関とを結んでいる「日銀ネット」であろう。日銀によると、現在、約400の金融機関等が日銀ネットを利用し、日銀当座預金決済は、1営業日あたり約3.5万件で金額は約121兆円にのぼり、国債決済については1営業日あたり約1.8万件で、金額は約90兆円(2008年中の平均)にのぼっている。

日銀ネットが稼動を開始したのが1988年であり、すでに20年以上も、日銀の当座預金を用いた金融機関同士の資金決済や国債決済を、大きな障害もなく運用されてきた。また稼動後も、証券と資金の同時決済(DVP、Delivery versus Payment)や、日本銀行当座預金決済および国債決済の即時グロス決済(RTGS、 Real-Time GrossSettlement)化にも対応している。

しかし、金融のグローバル化や情報技術革新はさらに進展しており、世界の主要な決済システムは、すでに多様な取引・決済ニーズに柔軟に対応するためのシステム基盤の構築努力を続けており、日銀ネットも同様の対応が迫られ、新日銀ネットの構築を検討しているようである。日銀によると、新日銀ネットの構築は、2010年度初よりシステム開発作業に順次着手し、2015年度を目途に開発作業を終了させることを目指し、検討を進めている。(http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/data/set0907a.pdf)。

金融は経済の血液に置き換えられることがあるが、その太い血管の役割を果たしているのが日銀ネットである。金融取引において表立っては見えないインフラではあるが、その重要性は計り知れないものがある。安全で、効率的でなおかつ使いやすいシステム構築は難しいものではあろうが、金融を支えるシステム発展のためにもより良いものを構築していただきたい。


2009.7.21「債券相場への警戒感」

麻生首相は衆院を21日に解散し、衆院選の投開票日を8月30日とすることを決めた。解散から投開票日までは40日間と現行の憲法下では最長となる。さらに投開票後も特別国会での首相指名選挙や組閣などの準備期間も必要となり、新政権の本格始動は9月中旬以降になる公算が高い(日経新聞)。約2か月に渡り政治の空白期間が継続されることは、市場にも少なからず影響を与えそうである。

内閣支持率は低迷し続け、都議選を含めた地方選の自民党の連敗により、今回の選挙で民主党が圧勝し、政権を取る可能性が高まった。このため民主党のマニフェストを確認する必要があるが、財源について不透明感もあり、結果として国債増発は避けられないと思われる。

すでに麻生政権下における経済対策などにより、7月から16.9兆円もの国債増発が開始されている。国債入札そのものは、事前に警戒感も強まっていたことで、業者も投資家も準備を進めていたとみられ、焦点となった7月2日の10年国債入札を含め、今のところ無難な入札となっている。

好調な入札となっている背景には、大手銀行などが抱えた余剰資金による買いがある。日銀の超低金利政策や企業金融支援特別オペなどに加えて、預金の増加なども手伝いこれにより多額の余剰資金が発生し、この買いが国債主体に入り込み、2年国債の利回りは2005年11月以来の水準となる0.225%に低下し、5年国債の利回りも0.650%と2005年9月以来の水準に低下した。

民主党が政権を奪取した場合の日銀への対応も金融市場にとりひとつの焦点となる。自民党政権下に比べ、民主党は日銀の独立性をより尊重するとみられており、金融政策へのプレッシャーは軽減される可能性がある。ただし、日銀が金融引き締めに動くにはかなりの時間も有するとみられ、いずれにせよ政治との軋轢は当面回避されよう。

このため債券相場への影響としては国債の需給面がより意識されよう。今のところ警戒心も強かっただけに無難なものとなっている国債入札だが、今後ももこのまま順調に消化されるかどうかはわからない。8月は政治の空白に加え、夏休みという要因もある。余剰資金を抱える銀行の買いがいつまで継続するのかも不透明な部分がある。

そして、景気の動向については、中国やインドなど新興国の景気がしっかりしており、政府の経済対策効果もあり、当面は緩やかながらも回復基調と見ている。ここにきて株価も世界的に堅調地合となりつつあり、これは債券の上値を抑えそうである。ただし、物価に関しては低下基調が継続し、デフレが意識されると債券にとっては下支え要因となる。


2009.7.17「7月15日の日銀総裁記者会見より」

7月15日の日銀総裁記者会見の要旨が日銀のサイトにアップされ、今回はその中でも、企業金融支援特別オペに関する部分を見てみたい。15日の金融政策決定会合では、CP買入れ、社債買入れ、そして企業金融支援特別オペを12月まで延長することを全員一致で決定した。

オペの頻度を月2回実施に戻すなど減らすことや、資金供給額を無制限ではなく上限を限定すること、金利そのものを引き上げるといった修正は今回加えられず、「状況が改善すれば打ち切る」といった出口を意識したような明確なメッセージは打ち出されなかった。

また、前回の企業金融支援特別オペの期間延長が2009年3月末から9月末と6か月間であったことで、今回も6か月の延長との見方もあったが、今回は12月末までと3か月の延長に止めた。

総裁は企業金融支援特別オペなどの延長の理由については下記のように述べている。

「企業からみますと、厳しい収益環境が続く中で、在庫調整が一巡した後の景気回復の足取りなどについてなお不確実な面が大きく、今後の資金調達環境に対する不安感を払拭できない状況にあるのだろうと推測しています。こうした情勢判断を踏まえて、企業金融の円滑化を引続き図っていく観点から、今回措置を延長することとしました」

「CP・社債市場の機能は着実に回復しつつあります。銀行貸出は、大企業向けを中心に高めの伸びが続いているほか、資金繰りや金融機関の貸出態度は、大企業・中小企業とも、方向としては幾分改善しています。以上のように、現状の評価としてなお厳しいということと、しかし、明らかに改善の方向に向かっていることの両方の動きが現在あるとみています。」

CP・社債市場の機能が回復しつつあり、資金繰りや金融機関の貸出態度の改善も認めるものの、景気回復に関しても不確実であり。企業にとり厳しい収益環境が続くことを考えれば、延長せざるを得なかったということであろう、

しかし、モンスターオペとも称される企業金融支援特別オペの副作用が出ていることも確かであり、その点について総裁は以下のように述べている。

「もっとも、最近では格付けの高いCPの発行金利が同期間の短期国債の発行金利を下回るなど、一部にやや行き過ぎた動きがみられることも認識しています。こうした状態が続けば、投資家の投資意欲が後退するなど、市場機能を阻害してしまうことになり、却ってCP市場の発展にとって望ましくない可能性があることは確かです。こうした行き過ぎの要因として、市場では、企業金融支援特別オペの効果が大きいのではないかという議論があることも承知しています。」

CPの金利が国庫短期証券の金利を下回るという「官民逆転現象」だけでなく、預金増という要因もあるが余剰資金を抱えた銀行が2年国債や5年国債へも買いの手を広げ、2年債利回りが0.2%台半ばまで低下していることも、モンスターオペによる影響のひとつとみられる。

「私どもとしては、今申し上げたことは十分に意識していますが、他方で、現状の企業金融の状況を考えますと、先程の二極化現象はまだ解消されていませんし、足許改善はしていますが先々の資金調達環境について、やはり不確実性が払拭できないという状況です。そういう意味で、先程申し上げた部分的な影響あるいはその副作用だけでなく、金融市場・企業金融全体の状況やこれに与える影響を踏まえて判断していく必要があると考えています。」

副作用も認識しているものの、現状の企業金融の状況を考えるとそれを停止してしまうには時期尚早でもあり、なかなか難しい判断ともなっている。そして、一部に出ていた6か月の延長観測に関しては、総裁は次のように述べている。

「一方、今回は6か月ではなく3か月の延長としたことについてですが、足許改善傾向が続いており、この後もこの傾向が続くと判断していることを踏まえ、3か月後にもう1回経済金融情勢をしっかり点検することにしました。今後、情勢が一段と改善していけば、新たな期限である年末には各種時限措置の終了または見直しを行うことが適当だと考えております。」

ここで総裁ははっきりと、情勢が一段と改善していけば、新たな期限である年末には各種時限措置の終了または見直しを行うことを指摘している。これは出口を意識した発言というよりも、状況変化に対応するというある意味常識的な発言であろう。このため情勢によっては延長の可能性についても下記のように言及している。

「しかし一方で、今回の中間評価でも指摘したように、先行きの金融経済情勢については不確実性が高いとみています。従って、情勢が十分改善せず、それが必要と判断される場合には時限措置を再延長することになります。」

そして、なぜ9月からの延長を8月の会合ではなく早めに決定したのかについては、下記のように総裁は述べていた。ただし、これについては8月の決定会合では衆院選も近づき、政治を意識しての延長と取られることを避けたためといった見方も市場ではあったようである。

「企業金融を巡る環境は改善の方向にありますが、しかし現在でも、なお厳しいという評価をしているわけです。なお厳しいという判断をしている以上、私どもとしても、市場からみて不確実な要因である各種の措置をどのように運営するか検討し、その対応方針を早めに出したほうが良いということで今回合意に至ったものです。」


2009.7.16「環混中単(かんこんちゅうたん)」

日本企業が現在、意識すべきことは何であろうかと考えてみた。ここは4文字言葉を使ってみたいと思い、ひらめいたのが「環混量安」という4文字。

「環」とは環境である。オバマ米大統領の提唱する「グリーン・ディール」政策など、世界的に環境を意識した政策が取られ、環境問題が大きくクローズアップされて入ることは周知りの通り。日米欧では二酸化炭素の排出量の少ない発電所の輸出を促すことで合意したと16日の日経新聞も伝えている。企業にとり環境問題をいかに業績に取り込めるかが重視されよう。

「混」とはハイブリッドなどを示す。トヨタがマツダにハイブリッド基幹装置を供給との大きな記事があったが、トヨタのプリウスやホンダのインサイトの売れ行きを見ても今後の自動車産業にとっては、環境を意識したハイブリッドカーが牽引役になることは間違いない。また混合をコラボと見れば、うまく組み合わせた企業コラボ商品がヒットすることも多く、異種間での混合も思わぬケミストリーを生み出す可能性がある。

「中」とは、まず中国である。高成長を続ける中国やインドなど新興市場にいかに入り込めるのかが、重要である。その中国などでは「中」流階級の層が広がりを見せており、それに適応した製品の投入が求められる。その点、品質において信頼感の高い日本製品へのニーズがさらに高まることも考えられる。

「単」とはより複雑なものから単純なものが求められるということである。たとえば、ネットワークパソコンの売れ行きが好調だが、これは機能を絞り込み、すでに生活必需品のひとつとなりつつあるパソコンにも価格革命を起こしたものである。パソコンはある意味マルチ機能を持っていたことで、常に高機能が求められていた。しかし、すでに安価なチップでも動画再生にも適応するようになっており、必要機能を有した安価にパソコンへのニーズは強くそれをうまく取り込んだ。機能を絞り込んで、より低価格ながら質のしっかりしたものを量でカバーすることも必要になる。これは新興国向け製品にも対応できる。


2009.7.15「企業金融支援特別オペを12月まで延長」

日銀の金融政策決定会合が終了。全員一致で政策金利の据え置きを決定した。さらにCP買入れ、社債買入れ、そして企業金融支援特別オペを12月まで延長することも全員一致で決定した。また、ドル資金供給オペの2月1日までの延長を正式に決定。補完当座預金制度を1月15日まで延長することも決定した。

オペの頻度を月2回実施に戻すなど減らすことや、資金供給額を無制限ではなく上限を限定すること、金利そのものを引き上げるといった修正は今回加えられず、「状況が改善すれば打ち切る」といった出口を意識したような明確なメッセージは打ち出されなかった。

また、前回の企業金融支援特別オペの期間延長が2009年3月末から9月末と6か月間であったことで、今回も6か月の延長との見方もあったが、今回は12月末までと3か月の延長に止めた。

展望レポートの中間レビューでは、2009年度GDPを4月時点のマイナス3.1%からマイナス3.4%に下方修正し、2010年度GDPもプラス1.2%からプラス1.0%に下方修正した。また、CPIについては2009年度を4月時点のマイナス1.5%からマイナス1.3%に上方修正し、2010年度についてはマイナス1.0%と横ばいに。

また会合後に発表された公表文では、「わが国の景気は下げ止まっている」として、6月の「わが国の景気は、大幅に悪化したあと、下げ止まりつつある」から上方修正された。上方修正は3か月連続となり、引き続き日銀の想定した景気の動きとなっていることを示した。

景気の先行きについては、「内外の在庫調整が進捗したもとで、最終需要の動向に大きく依存する。2010年度までの中心的な見通しとしては、中長期的な成長期待が大きく変化しない中、本年度後半以降、海外経済や国際金融資本市場の回復に加え、金融システム面での対策や財政・金融政策の効果もあって、わが国経済は持ち直していく姿が想定される」として、ほぼ前回の内容と一致した。


2009.7.15「アポロ11号の月着陸から40年」

今年7月20日で、1969年7月20日にアポロ11号のニール・アームストロング船長が月に足跡を残して40年が経過する。日本時間で1969年7月21日のお昼前の午前11時56分に、月に降りるアームストロング船長の様子を当時小学生だった私は、白黒テレビで母親と食い入るように見ていたことを思い出す。あれからもう40年も経過した。

1969年にも12月に衆院解散総選挙が行なわれている。この選挙は「沖縄解散」と呼ばれ、沖縄問返還題が争点となり結果は自民党が圧勝となった。果たして今回の解散は何と呼ばれ、その結果は民主党の圧勝になるのかどうか。

1969年6月に、当時の経済企画庁は1968年の日本のGNPが西側諸国で第二位と発表した。それ以降、GNPはGDPと代わったが日本は世界第二位の位置を守り続けてきた。しかし、その地位が中国な脅かされ、2010年にも中国に逆転されるのではないかと予測されている。

その中国はすでに有人宇宙飛行も成功させるなど科学技術の進歩も著しい。インドなどとともに急速な経済成長を遂げており、リーマン・ショック後の世界的な経済金融危機においても、日米欧に比較すれば打撃は比較的軽微なものとなっていた。

それに対して今回の危機の震源地となり、40年前に人類を初めて月に送った米国は、GMが破綻するなど過去に例を見ないような打撃を受けている。また、今回の金融危機を連鎖的に深刻化させた欧州も深刻な景気悪化を迎えた。

この欧米の経済危機が、比較的金融面では影響が少なかった日本経済にショックを与え、欧米以上に景気が悪化した。まさにグローバルな危機の連鎖的な玉突きが起こった。

ただし、日本経済の急激な悪化はリーマン・ショックはあくまできっかけであり、すでに金属疲労を起こしいつ崩れてもおかしくはなかった。しかし、米自動車メーカーの後退による日本のメーカーの台頭や、中国経済の高成長が、そういった日本経済のカンフル剤として機能してなんとか持っていたが、世界的な経済金融危機により、金属疲労が表面化したことが大きかったと思われる。

すでに外貨準備や米国債保有額で日本は中国に抜かれ、GDPでも抜かれるとなれば40年以上も維持していた経済面でのアジアの雄としての位置を中国に譲ることとなる。さらに日本の政治もかなりの金属疲労を起こしており、今まさに再構築が行なわれようとしている。

この40年間、日本は何を行い、何を残してきたのか。結局、膨大な政府債務だけが残ったと言われないためにも、ここからの新たなビジョンを持って良い意味で中国と経済大国としての地位を競い会えるような環境整備が今度の新政権に求められよう。


2009.7.14「政治の空白期間中の動向予想」

麻生首相は衆院選を21日にも解散し、衆院選の投開票日を8月30日にする方針を決めた。7月解散は初めてとなり、8月の衆院選は明治期に2度あるだけで戦後は初めてのこととなる。もし21日に解散となれば、解散から投開票日まで40日間と現行の憲法下では最長となる。長期に渡る政治の空白期間の存在中は新たな政策が打ち出せないばかりか、政権そのものが代わる可能性も高い。投開票後も特別国会での首相指名選挙や組閣などの準備期間も必要となり、新政権の本格始動は9月中旬以降になる公算が高い(日経新聞)。約2か月に渡り政治の空白期間が継続されることは、市場にも影響を与えそうである。

債券市場では国債への需給への懸念が再び強まってくる可能性がある。7月から16.9兆円もの国債増発が開始されたが、事前に警戒感も強まっていたことで、業者も投資家も準備を進めていたとみられ、焦点となった7月2日の10年国債入札を含め、無難な入札となった。

また、銀行などは日銀の超低金利政策や企業金融支援特別オペなどに加えて、預金の増加なども手伝い余剰資金を抱えていたことで、景気回復期待の後退などをきっかけに、そういった余剰資金による買いが入り込み、2年国債の利回りは2005年11月以来の水準となる0.225%に低下し、5年国債の利回りも0.650%と2005年9月以来の水準に低下した。10年債利回りも一時1.3%を割り込んだ。

日経平均株価は7月に入り連日の下落となっていたが、この背景には景気の早期回復期待が後退したことが大きな要因となった。1日に発表された日銀短観で大企業製造業DIはマイナス48と予想ほどの改善とならず、やはり景気への先行き不透明感を強めた。さらに2日に発表された6月の米雇用統計で、非農業部門雇用者数が46万7千人の減少と事前予想を大きく上回る減少となったことで、景気回復期待が後退した。

また、世界的なリスク資産への投資の巻き返しの動きが出ていた。当局が原油などの投機的取引に対して政府主導で規制を設ける措置を検討していると報じられ、原油先物は6月末の73ドルから7月9日には一時60ドルを割り込み、いずれ50ドルを割り込み可能性も指摘されている。原油先物だけでなく商品先物全般に売り圧力が強まり、また高金利通貨も下落するなど投機筋による投資の巻き戻しの動きの強まりにより、安全資産としての国債に資金が向かった側面もある。

東証の債券先物の動きや建て玉の動向などを見る限り、海外ファンドなどによる投機的な動きは影を潜めている。現物への投資家による買いや米国債の上昇などを受けて、債券先物も上昇基調となっていたものの力強さはなく、値動きも小幅なものに止まることが多かった。これは2003年6月に10年債利回りが0.430%まで低下していた際の動きに似通っていた。

政治の空白期間中に関して、債券市場で注意すべきは需給動向になるとみられる。民主党が政権を取ったとしても財政のさらなる悪化は免れないとの見方も強く、今後のさらなる財政悪化はどちらが政権を取ったにせよ免れないものと予想される。

7月は警戒心も強かっただけに無難なものとなった国債入札だが、8月以降もこのまま順調に消化されるかどうかはわからない。特に8月は政治の空白に加えて夏休みという要因もある。余剰資金を抱える銀行の買いがいつまで継続するのかもわからない。

2003年6月もやはり余剰資金を抱えた銀行の買いが相場上昇を誘ったが、その後の急落を迎えることともなった。当時とは環境も大きく異なるため同一視はできないものの、こういった急落のリスクが存在することも確かであろう。

景気の動向については再び悲観的な見方も強まってきているが、中国やインドなど新興国の景気がしっかりしており、日本経済もここからさらに大きく落ち込みことも考えづらい。リーマン・ショックと同様のリスクが発生する可能性は低く、むしろ急激な落ち込みの反動が徐々に現れると見ておいた方が良いと思われる。実際に6月の日銀短観では、大企業製造業DIの3か月後9月の予想値はマイナス30と、さらなる改善見通しとなっていた。ただし、物価に関してはさらに低下してくると予想され、デフレが意識されると債券にとっては下支え要因となる。

以上のことから、政治の空白期間中の債券市場の動向を予想すると、需給に関しては好環境がある程度持続されるかもしれないが、今後の国債需給への懸念もあるだけに、銀行などによる買い一巡後の動向には注意が必要になる。ファンダメンタルズに対しては楽観視はできないものの、あまり悲観的な見方もリスクがあるとみられる。債券先物の動きがあまりに静か過ぎることも気掛かり材料であり、政治空白期間を材料視して仕掛け的な動き、この場合は売りに大してとなろうが、そういった動きが強まる可能性もある。その際には相場が急反落する可能性もありうるとみている。


2009.7.13「欧州の国債増発」

日経新聞ネット版によると、欧州主要国は赤字国債の大量発行に踏み切るそうである。独は10年11兆円、仏も年内に追加

まず、5月下旬に2009年中の476億ユーロの国債発行を閣議決定したばかりのドイツは、2010年に861億ユーロ(約11兆円)の新規発行を決めた。メルケル政権は。景気後退に伴う税収の大幅減と景気対策での歳出増加により、2010〜11年の国債発行額は年間で700億〜800億ユーロ台に増えると見ている。また、フランスのサルコジ大統領は歳入不足を補うために09年中に国債を追加発行すると表明した。イギリスも2009年度の国債発行額は前年度を上回る。英独仏とも国債発行額は第2次大戦後の過去最高となる見込みとなる。

ちなみに、日本の財務省資料に日米欧州主要国の国債発行総額の2008年度と2009年度の対比がある。日本については2008年度の138.0兆円から2009年度の149.2兆円と2008年度当初に比べて2009年度は18.1%増となっている。

これに対して米国は2008年度の0.76兆ドルから2009年度の1.9兆ドルと153%増となっている。欧州ではイギリスが2008年度の1465億ポンドから2009年度の2200億ポンドと175%増、ドイツは2008年度の2130億ユーロから2009年度の3460億ユーロと62.4%増となる。前年度比では英米の増加率が突出している。

現在のところ日本も含めて、増発された国債は無難に消化されている。各国中央銀行による金融緩和策や、景気の先行き不透明感によるリスク回避の動きなどが投資家の資金を国債へと向かわせている。しかし、債券市場にとり好環境がこのまま継続することも考えづらい。景気はいずれ回復基調となろうが、いったん増発された国債残高は高水準のまま維持されるため、いずれ需給への懸念が大きな足枷となる可能性は否定できない。


2009.7.10「イングランド銀行の資産買い入れプログラム」

イングランド銀行は8日から9日にかけて金融政策委員会(MPC)を開催し、政策金利を0.5%を据え置くことを決定した。また、資産買い入れ規模は、現行の1250億ポンドで維持することとした。イングランド銀行は8月の会合で資産買い入れプログラムを見直すとしていた。

政策金利の据え置きは予想通りだが、一部に資産買い入れプログラムの拡大を期待する向きもあった。買い入れ枠はあとひと月で使い切る見通しとなっており、イングランド銀行は英財務省から、最大1500億ポンドまでの資産購入を認められているため、今回の委員会で残り250億ポンドの資金枠拡大が行われるのではないかとの見方があった。

イングランド銀行が今回、資産買い入れ規模を拡大しなかったことにより、市場ではプログラムの早期終了をめぐる観測も出ていたようである。また、イングランド銀行は同日、来週の国債購入額が45億ポンドになると発表。これは現行の65億ポンドを下回ることとなる(ロイター)。

はたしてイングランド銀行は今後の資産買い入れにどのような意向を持っているのか。8月の委員会に注目が集りそうだが、あまり出口を意識したような行動も避けるのではなかろうか。残り250億ポンドの資金枠拡大が行われる可能性が高いとみられるが、それをどの程度の期間継続させるのかという面も含めて注目したいところである。


2009.7.9「CFTC」

今朝の日経新聞が伝えているが、米国商品先物取引委員会(CFTC)は原油先物などのデリバティブ取引に対し、投機的な動きに対する規制強化を検討している。原油先物取引に対し、持ち高制限を課すほか、すべての取引参加者の売買実態を把握するために、口座背番号制の導入検討を進めるそうである。しかし、これには大手金融機関などからの反発も予想されている。

米国商品先物取引委員会(U.S. Commodity Futures Trading Commission)とは、1974年に商品先物取引委員会法にもとづいて設立された米国の先物取引業界の監督をする政府機関である。先物やオプション取引などにおいての、詐欺、市場操作などの不正行為から市場および市場参加者を保護するのが主な役割となっている。米国に拠点を持つ先物取引業者(FCM)はCFTCへの登録が義務づけられ、それを監督し、定期的に資産および顧客取引口座資金などを報告する義務がある。

私がCFTCという耳慣れない用語を耳にしたのは20年前のちょうどこの初夏の時期であった。当時、日本の市場では債券の店頭オプション取引が始まり、それを行うための条件にシリーズ3と呼ばれる米国の先物・オプション取引の外務員試験資格を持つというものがあった。このシリーズ3を取得するための研修を受けた際に初めて聞いたのがCFTCであった。

しかし、その後、日本ではCFTCという言葉を耳にする機会はほとんどなくなってしまった。CFTCではデリバティブに対して規制を訴えていたものの、政府や議会はそれに対しあまり耳を貸さなかったことなどが影響していたものと思われる。これについては小説という形式としたことてせやや脚色した部分もあるが、落合信彦氏の「小説サブプライム」にも描かれている。

子供のしつけについて、親はあまりうるさく言っても反感を買って逆効果になる。かといって野放しにすると、子供が勝手気ままに行動しその結果、大怪我をすることにもなりかねない。サブプライムローンに端を発する今回の金融危機は、店頭におけるデリバティブ取引などをある意味野放しにし、その結果金融機関などが巨額の利益だけを求めて行動に走った結果でもある。この反省はしっかり生かすべきであり、ある程度の規制強化、監督強化は必要になろう。


2009.7.8「企業金融支援特別オペの延長を検討か」

8日付けの日経新聞によると、日銀は9月末に期限を迎える企業金融円滑化のための特別支援措置について延長するかどうかを8月をメドに判断すると伝えている。

日銀は企業金融円滑化の支援のための措置として、「CP買現先オペの積極的活用」、「資産担保CPの適格担保要件緩和」、「民間企業債務の適格担保要件緩和」とともに、「CP等買入れ」、「社債買入れ」、そして「企業金融支援特別オペの導入・拡充」を行なっている。

この中で、企業金融支援特別オペレーションは、固定金利(現行0.1%)でCPなどの民間企業債務の担保の範囲内で金額に制限を設けずに、資金を供給するオペレーションである。これが積極的に活用され、6月末には残高は7兆4600億円まで積み上がっている。

2月19日には実施頻度を月2回実施から週1回実施に増加し、資金供給期間も1〜3か月から追加分を3か月に、実施期限については2009年3月末までを2009年9月末までに延長している。

この企業金融支援特別オペは、規模の巨額さからモンスターオペとも呼ばれている。政策金利で期間3か月の資金を調達できるため、金融危機が沈静化してからも銀行主体にこのオペは積極的に活用され、それによりCPの金利が国庫短期証券の金利を下回るという「官民逆転現象」という金利の歪みも生じている。

しかし、特別支援措置を予定通りに9月末に終了してしまうと改善しつつある企業の資金繰りに影響を与えかねない。特に改善が低格付け企業や中小企業へ改善傾向が広がる「染み出し効果」への効果がまだ見られていないだけに、日銀はオペの打ち切りには慎重とみられる。

このため期間の延長が検討されるとみられるが、その際にはオペの頻度を月2回実施に戻すなど減らすことや、資金供給額を無制限ではなく上限を限定すること、また金利そのものを引き上げるといった修正が加えられる可能性がある。

日経新聞では、延長時には「状況が改善すれば打ち切る」との明確なメッセージを打ち出すことも選択肢になる可能性も指摘している。出口を意識したメッセージとはなるものの、そういったメッセージは資金繰りに過度に日銀に依存しているような状況を改善するためにも必要かと思われる。


2009.7.7「消費者の支出行動の特徴点」

6日に発表された日銀の「さくらレポート」に、消費者の支出行動の特徴点に関する記載があった。題して「部分的・選択的節約志向、事前リサーチ志向」だそうである。

具体的には、下記行動が、各地域で指摘されているとか。

部分的節約志向(消費の基本的行動パターンは変えず、頻度の抑制や部分的にダウングレードする)

選択的節約志向(自らこだわりがある商品・サービスへの支出は可能な限り維持しつつ、その他の商品等への支出は徹底的に節約する)

徹底した事前リサーチ(購入に先立つ事前リサーチ<例えば商品・店舗間比較>を入念に行う)

所得そのものの減少に加え、雇用情勢の悪化により、個人も財布の紐はしっかり締め無駄を排除している姿勢が伺え、メリハリをつけた消費を行なっている。三番目の徹底した事前リサーチについて、具体例として「インターネット等で予め事前調査を綿密に行い、目当ての商品をより安く購入することを重視している」とあったように価格コムなどを利用して、家電商品などはより安く購入しようとしている姿勢が伺える。

インターネットを利用しての、こういった事前リサーチは、かなり一般的になってきているのではなかろうか。情報はうまく使えば節約となり、無駄をなくすことができる。

この個人の無駄の省き方は、是非、政府でも応用していただきたい。もちろん無駄を省く努力はすでにしっかり行なっているとは思うが、日本の財政の先行きもかなり危機的な状況にあるため、さらなる努力も必要と考える。個人の行動を財政に置き換えれば、下記のようなことになろうか。

国の財政の基本的行動パターンは変えずとも、頻度の抑制や部分的なダウングレードを行い、国民が必要としている商品・サービスへの支出は可能な限り維持しつつ、その他の商品等への支出は徹底的に節約する。そして、購入に先立つ事前リサーチを入念に行うこと。


2009.7.6「シンガポールではATMで国債が買える」

7月6日付けの読売新聞によると、シンガポール政府は今月から現地資本3銀行のすべての現金自動預け払い機(ATM)で投資家が国債を購入できるシステムを導入したそうである。シンガポール政府によるとATMを使った国債取引は世界にも例がないというが、確かにATMを利用した国債の購入は聞いたことがなく、なかなか面白い発想だと思われる。ただし、たとえば米国の個人向け国債といえる貯蓄国債はネットを通じて直接財務省から購入ができる。

今回の金融危機の影響で巨額の損失を被った個人投資家が増加したことから、安全資産といえる国債を買いやすくし、さらに国債全体の消化促進を狙うことが目的であると思われる。

読売新聞によると、シンガポールの今回のシステム導入により、国債購入を希望する投資家は事前に専用口座を開設し、国債の発売時にATMの画面を操作して1000シンガポールドル単位で申し込むことができるとか。取引はすべて専用口座で管理し、日本の国債と同様に債券は発行されないペーパレスとなり、売却する際には窓口で行うそうである。

日本の個人向け国債は販売が低調となってきており、その対策の一環として来年7月から3年固定金利型の個人向け国債が毎月発行される見通しとなっている。それとともに購入のしやすさなども検討する必要があり、ネットでの直販などとともに今回のシンガポールの例などは参考にしても面白いと思う。


2009.7.3「足元景気動向と今後の債券相場予想」

5月の貿易統計によると輸出は対前年同月比40.9%減となり、4月はEUを中心に改善傾向を示していたが、5月は中国向け主体に減少した。5月鉱工業生産速報値は、前月比プラス5.9%となり事前予想を下回った。また、雇用の面では5月の完全失業率は、5.2%と前月比0.2%の上昇となり、5月の有効求人倍率は0.44倍と前月比0.02ポイント低下し、過去最低を更新した。

7月1日に発表された6月の日銀短観では、大企業製造業の業況判断指数(DI)がマイナス48となり、前回から10ポイントの回復となったものの、市場予想のマイナス40近辺までの回復とはならなかった。大企業全産業の2009年度のソフトウェアを除く設備投資計画はマイナス9.4%となり3月のマイナス6.6%から下方修正された。

このように発表された経済指標は総じて事前予想を下回るものが多く、景気回復は市場が期待するほどの強さはなかった。

6月の日銀短観では、大企業製造業DIの3か月後9月の予想値はマイナス30と、さらなる改善見通しとなった。企業は足元の景気に関してはかなり慎重に見ているものの、先行きについては今後はさらに改善を示すとみているようである。しかし、景気回復の原動力となっていた生産や輸出の勢いが早くも落ち込みつつあることが気掛かりである。製造工業生産予測調査を見ても、6月がプラス3.1%、7月はプラス0.9%との予測とプラス幅はやや縮小傾にある。 雇用の回復などにより個人消費が拡大を示さない限り、本格的な景気回復は難しいこともあり、今後の景気動向は慎重に見ておく必要がありそうである。

2009年度補正予算に伴う7月からの国債増発は、注目された7月2日の10年国債入札を無難にこなしたことから、いったん山場は越えたものと思われる。ただし、今後も順調に消化可能かどうかは不透明であり、注意も必要となろう。さらに、今後の最大の焦点は政局の行方ともなり、国債需給への懸念がさらに強まることも考えられる。

債券相場は国債増発などを控えて、買いを手控えていた銀行などの買いが中期債主体に入り、2年債利回りは2006年1月以来の0.3%割れとなった。5年債利回りも0.7%割れとなり、10年債利回りも1.3%台に低下した。

しかし、余資運用とみられる買いが一巡後は、次第に上値が重くなると予想される。景気も緩やかながらも回復基調を示すとみられ、株式市場も当面堅調地合が続くと予想され、需給への懸念もあり長期金利の低下余地にも限度があろう。


2009.7.2「10年国債の発行額2兆円のタブーとは」

今日入札される10年国債から、一回あたりの発行額が2兆円を突破する。この2兆円という発行額は1998年末の運用部ショック以降、タブー視されていた。なぜタブー視されていたのか。当時を知る人がいないとわからないことでもあるため、拙著「牛さん熊さんの金融講座」や「金融のことがスラスラわかる本」の原稿などを元に紐解いてみたい。

1998年に入り、中国の通貨である元の切り下げ懸念などからアジアの通貨危機が発生し、それがロシアの通貨ルーブル切り下げの報道などに伴いロシアにも飛び火し、中南米などのエマージング市場全体に金融危機が広がっていった。これが世界経済を直撃し、日本でも長銀問題などから金融システム不安も再び台頭し、日本経済も大きな影響を受けたのである。

これを受けて1998年9月9日の日銀の金融政策決定会合において、無担保コールレートの誘導目標値を0.25%とする3年ぶりの金融緩和策が実施された。さらに11月16日には6兆円超の恒久的減税を含め20兆円を大きく上回る規模の緊急経済対策が発表された。この財源として、12兆円を上回る国債増発を内容とする第三次補正予算が組まれた。

さらに11月17日には、格付会社のムーディーズ・インベスターズは日本国債の格下げを発表した。日本政府が発行もしくは保証する円建て債券の格付け、及び日本国の外貨建て債務及び預貯金に対するカントリーシーリングを、それぞれAaaからAa1に引き下げたのである。

そして、11月20日付け日経新聞に「大蔵省は1998年度の第3次補正予算で、新規発行する国債12兆5千億円のうち、10兆円以上を市中消化する方針」といった小さな記事が出た。これは国債を大量に引き受けていた大蔵省資金運用部の引き受け比率が今後大きく低下することを示していた。さらに国債発行額の拡大に伴い、1999年の1月から10年国債が月々「1兆8千億円」と一気に4千億円も増額される見通しも示されたのである。

1999年度の国債発行額は70兆円以上、このうち市中消化は60兆円以上との新聞報道もあり、大蔵省資金運用部の国債引き受けが減るのは第三次補正予算だけでなく、来年度も急減することが明らかになった。そして、市場では4月から10年債が「2〜2兆2千億円」に増発されるとの見通しが急速に広まった。

11月21日に大蔵省で行われた国債発行に対するストラテジスト・エコノミストに対する説明会で、「資金運用部引受は資金の流動性を高めたいため今後残存5年未満の物に集中」とのコメントが出され、これにより資金運用部が来年度から買い切りオペを中止するのではとの思惑が広がり、これをきっかけに債券相場は急落した。

22日に当時の宮沢蔵相は、運用部の債券買い切りオペの中止を示唆する発言を行い、日銀総裁も日銀による大量の国債保有に対して「自然な姿ではない」とのコメントを出した。さらに国債の決済を担当している日銀から、運用部の買いオペが1月から中止されるとの正式アナウンスがあった。これを受けて債券先物は1988年8月以来の実に10年ぶりのストップ安となったのである。この債券相場の急落がのちに「運用部ショック」と呼ばれたのである。

債券の急落、つまり日本の長期金利の上昇に米国が懸念を示したことから、日本の金融当局者は対応に追われることとなった。この対応のひとつが1999年2月の日銀によるゼロ金利政策である。それとともに大蔵省(当時)は、運用部の国債買い切り再開を決定した。さらに増発が懸念されていた10年国債の3月の発行額を4千億円減額して「1兆4千億円」とし、減額分は2年国債と6年国債にそれぞれ振り分けることとなったのである。この減額は一時的なものではなく、その後も1兆4千億円が据え置かれることとなった。

こうしてこれ以降、10年国債の2兆円台の発行額がある意味タブー視されるようになったのである。2000年11月に10年国債は一回あたり1兆6千億円に増額され、2001年4月以降は毎年度1千億円ずつ増額されたが、2003年に1兆9千億円になってからは、2兆円が意識され6年以上、据え置かれることとなったのである。


2009.7.1「6月の日銀短観」

本日発表された6月の日銀短観は、大企業製造業の業況判断指数(DI)がマイナス48となり、前回から10ポイントの回復となった。改善は2006年12月以来2年半ぶりとなる。ただし、市場予想のマイナス40近辺までの回復とはならなかった。一方、3か月後9月の予想値はマイナス30となりさらなる改善見通しとなった。

大企業全産業の2009年度のソフトウェアを除く設備投資計画はマイナス9.4%となり3月のマイナス6.6%から下方修正された。雇用人員判断DI(過剰−不足)は大企業で3月の20から6月は14とやや改善した。金融機関の貸出態度判断DI(緩い−厳しい)は大企業で3月のマイナス17から6月はマイナス9とやや改善。CPの発行環境判断DI(楽である−厳しい)は3月のマイナス24から6月はマイナス14に改善した。事業計画の前提となっている想定為替レートは2009年度が94.85円となった。

大企業製造業DIは予想されたほどの改善幅ではなく企業は思いのほか慎重姿勢となっていた。ただし、9月の予想がマイナス30と先行きについては改善との見通しとなり、景気が底打ちしていた可能性も伺える。4〜6月期に日経平均が反発していたが、短観の連動性を見ると7〜9月期にかけても日経平均はさらに戻りを試す展開となる可能性もある。

しかし、2009年度の設備投資計画が下方修正されるなど、ここにきて生産が回復しているものまだ設備についてはやや過剰感も強い。雇用についてはやや改善を示しているが、まだ過剰感も強い。金融機関の貸出態度判断DIやCPの発行環境判断DIは改善を示すものの、これらは日銀による企業金融支援特別オペやCPなどの買い入れ等の政策による効果によるところも大きいとみられることに注意も必要か。


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