「若き知」
「過去データは一番下に移行しました」


2009.9.30「国債の翌日決済を検討」(一部修正)

9月30日付けの日経新聞によると、証券、銀行など金融業界と日銀、金融庁は国債の決済日を現在の売買日の3日後(T+3)から、翌日(T+1)に短縮する方向で検討に入ったと伝えている。ちなみにT+1のTとは「Trade date」のことで証券の売買が成約された日、つまり約定日を意味する。慣行上、T+1は「ティプラスいち」、T+3は「ティプラスさん」といった呼び方をしている。

国債など金融商品の決済期間の短縮は、未決済残高を減少させ、結果として決済リスクを削減するための有力な手段となる。たとえば急激な相場変動が起きた際にも決済不履行などの事故が生じる決済リスクを軽減させられる。

昨年秋のリーマン・ショック後の市場混乱をきっかけに、市場の安定化を目指し、国債のペーパーレス化も進んでいたことなどもあり、以前からの懸案事項でもあった国債の翌日決済などの制度改革に取り組むようである。

大手の証券、銀行、生保などが今月に入り、国債決済の短縮化を目指す専門委員会を設置したと日経新聞は伝えている。これは日本証券業協会が事務局となる「国債の決済期間の短縮化に関する検討ワーキング・グループ」のことを指すとみられる。

設置要綱 http://www.kessaicenter.com/finish/kokusaik-yoko.pdf

委員名簿 http://www.kessaicenter.com/finish/kokusaik-meibo2.pdf

これは1998年9月に設立されたGSTPA(Global Straight Through Processing Association)を意識したものではないかと思われる。GSTPAとはグローバルな証券取引におけるSTPを推進させるため、欧米の主要なバイサイド、セルサイド、カストディアンが結集して設立したものである。STP(Straight Through Processing)とは、約定から決済や商品受け渡しまでの事務を自動的に処理することである(野村資本市場研究所のサイトより http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/1999/1999sum08.html)。

国債の決済に関しては、1995年時点ですでにアメリカ、イギリスなどは約定日から起算して2営業日目(T+1)つまり翌日決済を行っていたが、当時日本ではまだ特定日決済の5・10日決済をおこなっていた。ちなみに「特定日決済」とはある期間に約定された取引の決済をすべて特定の日に行う決済である。これに対して取引を常に約定日から一定期間経過後に決済するのは「ローリング決済」と呼ばれる。

その後日本でも1996年9月19日の売買分より、約定日から起算して8営業日目(T+7)に決済を行うローリング決済に移行し、1997年4月21日売買分から約定日から起算して4営業日目(T+3)に決済を行うことになり、現在に至っている。

ただし、すでに日本では証券と資金の振替が同時に行われる決済方式であるDVP決済が1994年に導入され、2001年からは国債決済にRTGS(即時グロス決済)が導入された。また、2005年5月からは日本国債清算機関の業務が開始されるなどしており、現在のT+3でもシステマティックリスクなど国債の決済に対してのリスクはかなり軽減されている。

リーマン・ショックのような異常事態が発生しない限りは未決済残高に関わるリスクが発生する可能性は低く、、巨額のシステム費用をかけてまで、T+1を推し進めるインセンティブは業界内ではさほど強くはないはずである。また、国債の翌日決済を実現するには、レポ市場の受け渡しを「T+0」に縮小する必要などもある。さらに日本ではフェールの問題も完全にクリアーとなっていない側面もある。慣行としてフェールは良くないとの認識も強く、そういった慣行となっている業態もある。そして、国債だけでなく株や一般債などでも同様の決済期間の短縮が図られると、さらにフェールの問題などが発生しうる。

日経新聞は国債の翌日決済の時期導入は国債の決済を担っている日銀がシステムを刷新する2015年が当面の目標となる見通しと伝えているが、具体的にそのような動きとなっているのかもどうやら不透明のようである。


2009.9.30「8月全国消費者物価指数(除く生鮮)は前年同月比マイナス2.4%」

29日の朝方発表された8月全国消費者物価指数の除く生鮮、いわゆるコア指数は前年同月比マイナス2.4%となり、下落幅は比較可能な1971年以降で過去最大を更新した。ただし、ほぼ市場の予想通りとはなったことから市場への影響は限られた。

昨年の原油など商品価格の急上昇の反動といった面もあるが、景気悪化に伴う需要不足の影響も大きく、変動が大きい生鮮食品を除く食料は2006年8月以来のマイナスに転じた。

需要の後退により企業も衣料品などの価格引下げを余儀なくされているようで、同時に発表された9月の東京都区部の消費者物価指数も、コア指数は前年同月比マイナス2.1%となったが、衣料品などの下落幅は前月より大幅に拡大していた。下落率は前月の1.9%を上回り、こちらも比較可能な1971年以降で最大の落ち込みとなった。


2009.9.30「8月の鉱工業生産速報は前月比プラス1.8%」

朝方に発表された8月の鉱工業生産速報は前月比プラス1.8%となり6か月連続の上昇(前年同月比はマイナス18.7%)と、ほぼ事前予想に近いものとなった。生産の上昇に寄与した業種は、鉄鋼業、輸送機械工業、電子部品・デバイス工業等。

8月の出荷は、前月比1.0%の上昇と6か月連続の上昇(前年同月比はマイナス18.6%)、8月の在庫は前月比0.0%の横ばい(前年同月比はマイナス10.4%)となった。8月の在庫率は前月比マイナス0.8%と3か月連続の低下となった(前年同月比はプラス11.4%)。

製造工業生産予測調査によると、9月は前月比1.1%の上昇、そして10月は同2.2%の上昇となり、先行きも回復基調が継続との予測に。

経済産業省は基調判断を「生産は持ち直しの動きで推移している」とし据え置いた。


2009.9.30「2009年度上期の金融市場」

今日で今年度の上半期が終了することで、4月から半年間の相場の動向を見てみたい。

まず、日経平均株価は右肩上がりの上昇基調となった。4月は8351.91円でスタートし、ここが安値となり、8月には10639.71円まで上昇した。世界的に景気回復基調となったことが背景にあるが、他国の株式市場に比較して戻りはやや鈍かった。

外為市場のドル円の動きを見ると、4月に一時101.44円まで円安となったが、その後は再び円高圧力が強まり、今月に入り88円22銭をつけており、この円高も東京株式市場の上値を抑えたものとみられる、

10年国債の利回り、つまり長期金利は4月は1.330%でスタートし、いったん利回りは上昇し6月に1.560%をつけたが、その後は再び利回りは低下圧力が強まって、7月に1.270%まで低下し、今月に入って昨日1.275%をつけている。余剰資金を抱えた銀行さんなどが積極的に中短期債を購入し、それが長期債にも及んだことがこの利回り低下の大きな背景にあった。それを裏返せば、設備投資が回復しないなど貸し出しが伸びず、個人も消費を抑えて安全な預金に資金をシフトしているということでもあろう。


2009.9.29「バランスシート調整に関する政策委員間の見方の相違」

25日に発表された8月10、11日の金融政策決定会合議事要旨の中において、バランスシート調整に関する政策委員間の見方の相違があったようである。

金融経済情勢に関する委員会の検討の中での海外の金融経済情勢について、「多くの委員は、在庫調整が終了し、政策効果が一巡した後の海外経済の改善ペースと持続性には、依然として不確実性が大きいと述べた」とある。

これに関してある委員は、「今回の信用バブルの崩壊が実体経済に影響を与えてきた経路を、バランスシート調整と流動性危機に始まる信用収縮との2つに整理し、最近の景況感の改善は、後者が各国の政策対応等を通じて収まってきたことの表れと評価される」と述べた。

その上で、この委員は「今後はバランスシート調整が焦点となるが、調整には時間がかかるため、先行きの景気回復テンポは緩やかかつ不確実なものとならざるを得ない」と述べた。

これに対して別の委員が、「バランスシート調整に相応の時間を要するのは確かであるが、これが経済に与える影響度合いの評価に当たり、90年代の日本の経験を直接当てはめる形で悲観的な見通しを立てることが適当かどうかは、議論の余地がある」と付け加えていた。

この2人の「バランスシート調整」に関する委員の微妙な見解の相違に注意したい。今後の景気回復について悲観的に見ている市場関係者などは前者の委員の見方に近いのではなかろうか。反対に今後の景気動向を比較的楽観的に見ているむきは後者の委員の見方に近いのではなかろうか。

そして議事要旨には、「この間、何人かの委員は各国で講じられている積極的な財政・金融政策が、やや長い目でみると世界経済に過度な振幅をもたらすリスクや、経済に新たな歪みを蓄積させるリスクについても指摘した。」とある。

「この間」という表現が面白い。後者の委員は前者の委員の意見に「付け加えた」とあるが、実際にはこの2人の委員はかなり活発な議論を交わした可能性がある。そして「その間」に他の委員から上記のような意見も出されたのではないかと推測される。

結局、今後のバランスシート調整について、日本と同じ轍を踏むのか。そして各国の積極的な財政・金融政策がどの程度経済に振幅をもたらすのか、といったところが今後の経済の先行きを占う上での大きなポイントとなることは確かである。


2009.9.25「2009年03月末現在の国債保有者別残高」

9月17日に日銀が発表した2009年4〜6月資金循環勘定速報によると、家計の金融資産は2009年3月末の1410兆4430億円から、2009年6月末は1441兆3391億円と31兆円程度増加した。

この家計の金融資産のうち、株式は2009年3月末の50兆2692億円から66兆1274億円と16兆円程度増加し、投資信託については2009年3月末の47兆2437億円から、2009年6月末は49兆9437億円とこちらは2.7兆円の増加となっていた。また定期性預金については2009年3月末の456兆5568億円から、2009年6月末は460兆6797億円と4.1兆円程度の増加となった。

2008年9月15日のリーマン・ブラザーズの破綻をきっかけとした金融経済危機により、日経平均株価は2009年3月10日に7054.98円まで下落した。2009年3月末の日経平均は8109.53円となっていたが、2009年6月末は9958.44円に上昇した。各国政府の経済対策や中央銀行の積極的な対応が功を奏し、世界的に景気が回復基調となったことで、株価も上昇し個人保有の株式資産を含め、また金融資産全体も増加したものと思われる。投資信託の増加も同様の理由であろう。定期性預金も増加しており安全資産へのシフトも継続している。

この資金循環勘定速報をもとに 2009年6月末現在日本における国債所有別内訳を算出してみた。

国債の残高そのものは、2009年3月末比5兆8515億円減の675兆8029億円となった。海外投資家のシェアは、6.1%と3月末の6.4%からやや減少し、金額ベースでは2兆3811億円の減少となった。海外投資家は引き続き日本国債においてもポジション解消の動きを強めた結果とみられる。家計の全体に占めるシェアは5.3%となり、3月末の5.3%と大きな変化はなかった。

3月に比べ全体の残高が減少したが、最大の減少額となったのは銀行など民間預金取扱機関の3兆3295億円の減少、次に日本銀行の3兆1026億円の減少、海外投資家が2兆3811億円の減少、公的年金の1兆3783億円の減少となった。反対に増加したのが民間の保険年金の2兆4869億円の増加、投信など金融仲介機関の2兆2840億円の増加となった。

全体に占めるシェアとしては、民間預金取扱機関が244兆8126億円で36.2%、民間の保険年金が163兆6598億円で24.2%、公的年金が79兆6818億円で11.8%、日本銀行が52兆8377億円で7.8%、海外が41兆3637億円で6.1%、家計が35兆5508億円で5.3%、投信など金融仲介機関が34兆3157億円で5.1%、財政融資資金が1兆1202億円で0.2%、その他が22兆4606億円で3.3%となった。


2009.9.25「日本の財政に不安」

24日付けの日経新聞に、財務省は国の財政に関する国民の意識調査を実施したとの記事が掲載された。インターネットを使ったアンケート(調査は同省の委託を受けた博報堂が6月に実施)で成人男女2000人に回答を求めたところ、日本の財政について「とても不安・不満」と感じている人が68%に上ったそうである。「やや不安・不満」との回答も31%で、ほとんどの人が国の財政を懸念していることが分かったそうである。

インターネットを使ったアンケートということで、やや年代層に偏りが出る可能性もあるが、それでも日本の財政について7割近い国民が不安を感じているとの結果は注目すべきであろう。民主党政権となっても、藤井財務相が財政規律を重視する姿勢を示したのも、こういった国民の意識を受けてのものであろう。

この財政に不安を感じている国民層が、果たして国債の信用度をどのように認識しているのかにも興味がある。財政悪化イコール国債暴落といった意識が強いのか。そうであれば国債の発行が順調に行なわれ、国債の価格の裏返しとなる長期金利が低位安定している事実をどのように理解しているのかも聞いてみたいところ。

また、税金や社会保険料の「負担」と「受益」の関係については「負担ほどは公共サービスは受けられない」(89%)との回答が「負担以上に公共サービスが受けられる」(2%)との回答を大きく上回ったそうである。75%の人は「現状のまま財政赤字を放置すると現在の社会保障制度は維持できない」と認識していることも明らかとなったとか。これは消費税増税も意識してのアンケートのように思われるが、日本の財政悪化の中での、日本の将来を考えれば消費税増税はある意味不可避であろうとの認識も強いように思われる。

財政赤字の理由については(複数回答)、「無駄遣いが多い」(72%)、「国の政策が失敗している」(52%)との回答が多かったそうである。今回、民主党政権が「無駄遣い」をどの程度、ピックアップできるのかも興味深い。

そして、財務省のイメージ(複数回答)については、40〜50%が「国民のことがわかっていない」「責任感が不足している」との厳しい認識が示されたとか。財務省の方々にいろいろお世話になっている私自身は全くそういったイメージはないが、国民の認識がこのようなものであるということは気に留めておく必要もありそうである。


2009.9.24「8月の貿易統計」

財務省が24日に発表した8月の貿易統計によると、輸出は対前年同月比36.0%減(7月は同36.5%減)となり、輸入は対前年同月比41.3%(同40.8%)の減少となり、前月に比べ輸出の減少幅がやや縮小したが、輸入の減少幅はやや拡大した。差し引きでは、1857億円の黒字となった。

地域別にみると
対米国では輸出が34.4%減(7月39.5%減)、輸入が38.4%減(同35.0%減)
対EUでは輸出が45.9%減(7月45.8%減)、輸入が24.2%減(同31.0%減)
対アジアは輸出が30.6%減(7月29.9%減)、輸入が30.7%減(同31.7%減)
対中国では輸出が27.6%減(7月26.5%減)、輸入が23.4%減(同26.5%減)

欧州向けの輸出がさらに減少し、対米では輸出の減少幅は縮小した。輸入については欧州向けがやや減少幅が減少したが、中でも医薬品の輸入が増加した。


2009.9.24「個人向け国債販売低迷で市中消化に振り替えも」

23日の日経新聞では、財務省が個人向け国債の販売低迷を受けて、2009年度の販売計画に届かない分について、一般の国債の市中消化に振り替える方針を固めたと伝えた。市中消化に切り替えるのは、新型窓口販売分を含めて約1.5兆円となるようである。

今年度の個人向け国債の販売計画は2.4兆円となっているが、4月と7月の発行分では、約8千億円の販売実績にとどまっている(4月3208億円、7月4873億円)。現在募集中の10月発行分の個人向け国債の表面利率は5年固定金利物で0.6%(税引き前)と7月発行分より低下しており、今回の募集分も低迷すると予想され7月発行分(5年固定4441億円、10年変動432億円)を下回る可能性がある。このままのペースでは今年度の個人向け国債の販売額は当初計画を8千億円程度は下回ることとなる。

また、新型窓口販売分も当初予定の1.8兆円を大きく下回ることが予想され、合計で少なくとも1.5兆円分、(今後の状況次第では2兆円近くになる可能性も)が、市中消化に振り返られる可能性がある。

これは5兆円程度と予想されている税収見積もりの下方修正分を含めて、今年度国債の増発要因となりうる。


2009.9.18「HTVのISSへのドッキングに成功」

日本の無人輸送機HTVが、予定通りにISSに到着し、本日午前4時50分ごろにロボットアームで捕獲することに成功。そして、7時26分にISSへのドッキングに成功した。

朝日新聞によると姿勢制御用の噴射機が熱くなりすぎるなど想定外の問題もあったものの、予定通りの位置ど真ん中に送り込むことに成功し、これによって日本の日本の宇宙技術の高さを示すことができた。

お盆の頃に、親類の家でのバーベキューパーティーに参加したのだが、地元にはHTVの誘導も行なった筑波宇宙センターがあり、参加メンバーの中にJAXAの関係者の方がいた。話を聞いたところH-IIBロケットの打ち上げの際に種子島の地下にいる予定と聞いており、この方も今回の歴史的にミッション成功の一端を担われたと思われる。

それにしても、すごいことを日本の技術陣がやってくれた。今回の成功でスペースシャトル退役後の日本の役割に対しての世界的な期待も高まった。巨額の費用はかかるもの、ISSに直接参加している日本の意味は大きい。日本の産業育成にもいろいろなかたちでの効果もあるのではなかろうか。とにかくも、ミッション成功おめでとうございます。


2009.9.17「日銀は景気判断を上方修正」

日銀は17日の金融政策決定会合において政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標値を0.1%に据え置くことを全員一致で決定した。また、景気の現況判断については2か月ぶりに上方修正させた。

発表された「当面の金融政策運営について」では、景気については下記となった。

「わが国の景気は持ち直しに転じつつある。すなわち、公共投資が増加を続けているほか、内外の在庫調整の進捗や海外経済の持ち直し、とりわけ新興国の回復などを背景に、輸出や生産も増加している。一方、厳しい収益状況などを背景に、設備投資は減少を続けている。また、個人消費は、各種対策の効果などから一部に持ち直しの動きが窺われるものの、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、全体としては弱めの動きとなっている。この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、改善の動きが拡がっている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和した状態が続く中、前年における石油製品価格高騰の反動などから、下落幅が拡大している。」

これに対し前回の8月11日の会合では、以下の内容となっていた。

「わが国の景気は下げ止まっている。すなわち、公共投資が増加しているほか、輸出や生産は持ち直している。一方、厳しい収益状況などを背景に、設備投資は大幅に減少している。また、個人消費は、各種対策の効果などから一部に持ち直しの動きが窺われるものの、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、全体としては弱めの動きとなっている。この間、金融環境をみると、なお厳しい状態にあるものの、改善の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和した状態が続く中、前年における石油製品価格高騰の反動などから、マイナス幅が拡大している。」

総括が8月の「わが国の景気は下げ止まっている」から今回は「わが国の景気は持ち直しに転じつつある」に上方修正された。輪出や生産の持ち直しの理由を今回は、「内外の在庫調整の進捗や海外経済の持ち直し、とりわけ新興国の回復などを背景に」と具体的に示した。設備投資についても8月の「大幅に減少している」から「減少を続けている」と悪化の表現を弱めた。個人消費に関する表現はそのまま。金融環境については8月の「なお厳しい状態にあるものの、改善の動きが続いている」が「厳しさを残しつつも、改善の動きが拡がっている」に上方修正している。物価に関しての表現はほぼ変わらず。

新興国の回復などを背景にした輸出や生産の持ち直しに、設備投資の悪化がいくぶん弱まったこと、金融環境の改善などにより、今回は景気判断が上方修正されたことが伺える。下げ止まりから持ち直しの動きとなり、持ち直しの動きが今後強まってくるのかどうか。景気は日銀が予想した緩やかな持ち直しというシナリオに沿った動きをしているともいえる。


2009.9.17「鳩山新政権への期待と懸念」

9月16日に鳩山新政権が発足した。閣僚人事はベテランを配し、民主党内の勢力関係や参院に配慮するなど、結局は自民党型の人事であったように思われる。しかし、あまり斬新な人事を行なってしまうと政権基盤そのものが不安定化してしまうリスクもあるため、ある意味妥当な人事であったかと思う。

その中にあって金融市場関係者が注目していたのは、財務相と金融担当相の人事であった。その財務相は多くの市場関係者が予想していたように藤井裕久氏が就任した。ところが、金融担当相は予想外の亀井静香氏が郵政問題担当も兼務して就任したのである。

藤井財務相は初閣議後の記者会見で、政府と日銀の関係について「政府が金融政策に介入すべきではない」と述べ日銀の独立性を尊重する考えを示した。また、為替政策について、輸出のために円が安ければいいという考えは違うと指摘し、為替介入について常識的な範囲ではあり得ないと述べた。

政府と日銀に軋轢が生まれると日銀が適切なタイミングで金融政策を行なえなくなるリスクがある。米財務省とFRBの関係などを見ても、政府は中央銀行に対して独立性を認める姿勢を強めており、新政権でも日銀の独立性については認める姿勢を示したことは金融市場にとり安心材料ともなる。

また、経済の財政再建のあり方について藤井財務相は、「財政のために経済をつぶしてはいけない」としながらも「(財政に)野放図でもいけない」とし、財政健全化目標の重要性を指摘した(以上、ロイターより)。財政健全化の長期目標はストラテジーであり、国家戦略局の大きな仕事とも述べるなど、大蔵省出身だけに財政健全化路線も継続され、これは債券市場にとり好材料となろう。

これに対して、亀井静香氏の金融・郵政担当相の就任は懸念要因と見ざるを得ない。亀井郵政問題・金融担当相記者会見で、中小企業による借入金や個人の住宅ローンなど銀行への返済に一定の猶予期間(モラトリアム)を設ける制度の導入について法案化した上で10月の臨時国会に提出する方針を示した(ロイター)。

もし、これが本当に実施されれば金融機関の収益を圧迫する可能性があり、また本来退出すべき企業を延命させてしまうというモラルハザードの問題も出てこよう。

また、亀井氏が郵政担当相を兼ねることで郵政民営化路線が大幅に見直されることは必然であり、時計の針が戻される懸念がある。金持ち優遇批判への観点からの証券優遇税制の廃止などが懸念されるなど、株式市場には大きな逆風となることも想定される。

鳩山政権は財政については重視するが、金融についてはリーマンショックもあり、また行過ぎた市場主義を是正するため、さほど重きを置いてこない可能性もあり、これは今後、金融市場にとり大きな懸念材料となるかもしれない。


2009.9.16「亀井郵政・金融担当相と金融市場」

本日、鳩山新政権が発足する。金融市場では財務相人事を注目していたが、以前に蔵相も務めた藤井氏の起用で安心感も広がった。ところが、意外な人事で市場関係者はやや戸惑いを見せた。防衛相と伝わっていた亀井国民新党代表が亀井郵政・金融担当相に就任したのである。

小泉改革に異を唱える急先鋒ともいえる亀井氏の郵政担当相の起用で、郵政民営化路線が大幅に見直されることは必然であり、日経新聞の社説でも時計の針が戻される懸念が論じられていた。しかし、市場関係者の間では金融相への就任の方がショックであった。

金持ち優遇批判への観点からの証券優遇税制の廃止などが懸念されるとともに、国民新党が平成20年10月17日に発表した緊急金融安定化対策について、が注目された。この中には、時価会計の無期限停止、自己資本比率の撤廃、ペイオフ制度の適用停止をうたい、大阪証券取引所における日経225先物取引の廃止、なども組み入れられていた。亀井氏は以前に無利子の永久国債を発行せよと発言したこともあったようである。

リーマン・ショックから1年が経過し、とりあえず金融危機は収束に向かい、景気も底打ちしてきたことでこのような極端な施策を今後、講じてくるとは思えない。しかし、このような方針を打ち出した党の党首が金融担当相となることで、今後の動向を危惧する参加者も多いはずである。


2009.9.15「リーマン・ショックから1年」

本日でリーマン・ショックからちょうど1年が経過した。1年経過すると当時の記憶もやや薄れかけてきてしまうため、ここで当時の状況を振り返ってみたいと思う。(拙著「金融のことがスラスラわかる本」の原稿より一部抜粋)

2008年1月18日に証券化商品を保証していたモノラインと呼ばれた金融保証会社が資本調達難から格下げされた。サブプライム・ローン問題の発生後、モノラインそのものの格下げによって、他の証券化商品や米地方債市場などにも混乱が広がった。

3月14日に証券化商品を大量保有していた投資銀行のベア・スターンズが資本調達の失敗から資金繰りに行き詰まり、FRBの資金支援のもとJPモルガン・チェースに買収された。

6月に入り米国で金融株に対して空売り規制が強化され、これをきっかけにヘッジファンドが組んでいた米金融株売り、原油先物買いのポジションの撒き戻す動き強まり、NY原油先物価格は7月11日につけた147.27ドルをピークに急落した。

7月13日には政府系住宅金融公庫が経営危機に陥り、政府の資本注入などで経営再建を図ることになった。

そして9月15日、証券化商品により大きな損失を抱えていた投資銀行のリーマン・ブラザーズが、資本調達や身売りに失敗し経営不安に陥り破綻した。大規模金融機関が破綻したことで世界の金融市場は極度の不安に陥り、カウンター・パーティーリスクが強まり、各国の中央銀行は大量の資金供給を行ったのである。

リーマン・ショックにより、巨大金融機関の破綻がもたらす影響を懸念した米政府は金融機関を破綻させない方針に転じ、FRBは9月16日に米国の大手保険会社AIGに対して緊急融資を行うことを表明した。

金融機関の不良債権と資本不足の問題に対し米国財務省は最大7千億ドルを投入し金融機関の不良債権を買い取る「緊急経済安定化法案」を議会に提出したが、9月29日に下院で否決された。これは金融市場に再び大きなショックを与え、29日のダウ平均株価は終値で777ドル安と史上最大の下げ幅を記録した。

米議会は10月3日にこの法案を多少修正した上で認めた。財務省は法案が採り得る施策の自由度が高いことを利用し、この資金を不良債権の購入ではなく金融機関への資本注入に充てることにしたのである。

アメリカのサブ・プライム問題を発端とする金融危機は世界経済を直撃し、異例のスピードで景気が悪化した。アメリカの雇用は2008年全体の非農業雇用者数は258万人減となり、これは第二次世界大戦が終わった1945年に次ぐ水準となった。2008年は年間ベースで先進国が同時に不況に陥ったが、これは第二次世界大戦後初めての事態となったのである。


2009.9.14「リーマンショック一周年記念にお勧めの本(広告?)」

明日15日でリーマンショックから1年が経過します。リーマンショックは歴史的な出来事として、世界史の教科書にも記述されることと思います。この機会に金融の歴史を振り返ってみてはいかがでしょうか。拙著「金融のことがスラスラわかる本」では、金融の歴史を日本史と世界史から追っています。できるだけやさしい記述を心がけておりますので、空いた時間にさっと読むことができると思います。「簡単に読めて、だいたいの流れも分かる経済史のベスト」とのコメントもいただきました。

全国書店もしくはアマゾンにて販売しております。ちょうどアマゾンでは、11月4日まで1500円未満の本を含めてすべての本が送料が無料となっています。このため税込み1365円の「金融のことがスラスラわかる本」も今ならばアマゾンで送料なしで購入が可能です。ぜひこの機会に御購入いただけるとうれしいです。


2009.9.14「90円台前半への円高進行」

先週末のニューヨーク外為市場では、円高ドル安が進行し、ドル円は90円21銭と2月12日以来の水準をつけた。その後、90円70銭近辺までドルは戻したものの、今朝のオセアニア時間では90円19銭をつけた。

先週末のニューヨーク市場では、ドルは他の通貨に対してほぼ全面安の展開となったが、ドルに対しての信認低下といったものではなく、投資家のリスク選考姿勢の高まりなどがその背景にある。

さらに銀行間金利であるドルLIBORが過去最低水準となり、米長期金利の低下なども要因となっている。米国の短期金利がゼロに近く、ドルを借りて他通貨の資産に投資するドルキャリートレードなども入っているのではとの観測もある。

円はドルだけでなく、やや出遅れ感のあったユーロに対しても大幅続伸となり、今朝のオセアニア時間でのユーロ円は131円47銭をつけるなど、ドル安の動きとともに円高の動きも強まり、この円高の動きは輸出関連企業にとってはやや頭の痛い問題ともなりそうである。

先週末のニューヨーク市場では、原油先物の下落などもあったが、利益確定売りが入ったこともあり、ダウ平均は前日比22.07ドル安の9605.41ドル、ナスダックは同3.12ポイント安の2080.90となった。

ニューヨーク原油先物も利益確定売りから5日ぶりの下げとなり、前日比2.65ドル安の69.29と70ドル割れに。そして、ドルから金への動きからか、金の先物は一時1013.7ドルまで上昇し、昨年3月の取引時間中の高値1033.9ドルに接近し、引け値では1006.4ドルとなり、こちらは引け値ベースでの史上最高値を更新した。

米国債券市場では、先週の3年、10年、30年国債の入札が好調な結果となったこともあり、買いが先行し、米10年債利回りは一時3.27%まで低下したが、やはり利益確定売りに押され、前日比+0.01%の3.35%と3日ぶりに価格は反落となった。

発表された9月のミシガン大学調べの消費者態度指数速報値は市場予想を上回るも、経済指標に対しての反応は鈍くなっていたが、現在の市場ではファンダメンタルズよりも、投資資金の流れの行方に関心が向かっているように思われる。


2009.9.11「危機終焉宣言か」

ガイトナー米財務長官は10日に議会の不良資産救済プログラム(TARP)監督委員会で証言し、米経済は1年前の「崩壊寸前」の状況と比べて大幅に改善したと指摘した上で、依然問題を抱えていると述べた。

この中でガイトナー長官は、「米経済が新たな段階に差しかかる中、金融システムへの異例の支援措置の一部を緩和し始める必要がある」とも語ったようである。

米経済について、オバマ大統領が就任した1月時点の急激な落ち込みの「瀬戸際から引き返した」との認識を示した。この一方で、回復の歩みは良くても緩やかなペースにとどまるの慎重な見方を示したものの、実質的な危機終焉宣言ともいえるような内容となったようだ(以上、ロイターより)。

高水準の失業率、不安定な住宅ローン市場、商業用不動産業者への融資のひっ迫などの問題を抱えていることも確かであり、回復については緩やかなものとなるとの予想は、日本経済にとっても似たような状況にあると言える。

ただし、これらの問題が深刻化し、第二のリーマン・ショックを引き起こすほどの破壊力を持つほどのものになることも考えづらい。すでにリーマン・ショックを経験した各国政府や中銀は危機対応能力を図らずも高める結果となっている。

今後の問題となるのは、回復にかかる時間ではないかと思われる。世界的に株価はリーマンショック前の水準に接近しつつある。インドのハンセン指数やドルベースでの日経平均などはリーマンショック前の水準にまで戻している。しかし、経済全体は回復基調とはなっているものの絶対水準はかなり低い位置にある。株価は世界的な金余りなどによる期待先行の面もありそうだが、ゆっくりながらも実態経済もいずれ追いついてくるものと期待している。


2009.9.10「HTVの打ち上げ迫る」

宇宙ステーション補給機(HTV)を載せたH-IIBロケットの打ち上げが、本日の深夜、日付が変って9月11日の2時01分46秒に行なわれる。HTV、H-IIBロケットともに日本のロケット技術の集大成のものとなり、今後の有人飛行などに向けて一歩を踏み出すこととなる。

新型のH-IIBロケット打ち上げの成功とともに、HTVの分離の成功、さらにISSに10メートルまで接近するという超難関なミッションを無事に達成できるのか。ISSに無事ドッキングできれば、日本の技術力の高さを全世界に示すことができる。すでに中国では有人ロケットの打ち上げに成功しているが、日本もそれに近い技術を有していることを示せるチャンスでもある。是非、成功してほしい。

HTVのプロモーションビデオ http://www.jaxa.jp/countdown/h2bf1/special/movie_j.html


2009.9.10「足元景気の状況と先行き」

9月9日の長崎県での須田審議委員の講演より、足元景気の状況に関する発言部分から見てみたい。

設備投資、住宅投資が引き続きマイナスとなる一方、純輸出、個人消費、公共投資が全体を押し上げたかたちとなっており、外需の持ち直しと経済対策に支えられた 反発との評価をしている。

項目ごとの背景からはまず、実質輸出について10〜12月期(前期比-14.6%)、1〜3月期(同-28.9%)と2期連続して大幅に減少した後、4〜6月期は前期比+12.4%の大幅増となっている。7月も前月比+2.3%と増加を続けている。

この輸出の持ち直しの要因としては、各国で打たれた各種経済対策が奏効し中国をはじめとする東アジアや、米国において、自動車や情報関連といった品目の在庫調整にほぼ目途が立ちつつあねとを指摘している。

公共投資も、公共工事出来高が4〜6月期にかけて伸び率を拡大するなど、経済対策の執行に伴って増加を続け、この経済対策効果は個人消費にも現れている。いわゆるエコカー減税等による自動車販売の持ち直しや、エコポイント制度による家電販売の増加が、4〜6月期のGDPベースの個人消費をプラスに押し上げた。

しかし、7月の完全失業率は5.7%と過去最悪を記録するなど、雇用・所得環境が厳しさを増している点も指摘している。夏場の天候不順もあって、全国百貨店売上高や全国スーパー売上高などでは大幅な減少が続き、7月の家計調査でも実質消費支出の前月比が減少幅を拡大するなど、個人消費の基調は引き続き弱い。

設備投資も、7月の資本財出荷(除く輸送機械)が前月比-1.3%となるなど、厳しい収益環境や設備過剰感を背景に大幅な減少が続いてる。

住宅投資も引き続き低調で、3月期末の値下げ販売により1〜3月期は年率5万戸近い水準まで回復した首都圏新築マンション販売も、その後は再び4万戸程度の低い水準で推移している。

以上のような内外需要を背景に、鉱工業生産は持ち直しの動きを続けています。出荷・在庫バランスについても、資本財や建設財では引き続き在庫調整圧力の強い状態が続いているが、耐久消費財や生産財などでは、順調に調整が進捗していると須田委員はコメントしている。

こういった足元の状況を見て、今後の経済動向に向けて見るべき注意点がいくつか浮かび上がりそうである。まず、輸出については各国で打たれた各種経済対策が大きく影響したとなれば、すでに米国では新車購入支援を中止しており、景気の底打ちが明らかとなりつつある中、政府の支援策は打ち止めとなる公算が高く、それによる効果といったものは今後は期待しにくい。また、公共投資については民主党政権となり、今後は公共工事等は再び低迷する可能性がある。さらに雇用の悪化が続いており、それが個人消費の低迷に繋がっている。このため新築マンション販売の伸びも当面は期待しにくいことも確かであろう。

しかし、世界的に株価が回復基調となるなど、昨年9月15日のリーマン・ショック後にかつてないスピードで一気に落ち込んだ世界経済は、そこから更に落ち込むことは考えづらく、むしろ緩やかながらも回復してくるとみるのが妥当であろう。もちろん回復には時間が掛かり、生産などの水準がリーマン・ショック前にいきなり戻ることは考えづらい。破壊された機体を、壊れた箇所をひとつずつ直しながら元の機体に戻そうとしている当初段階にあると言える。雇用などについての修復はどうしても後回しにならざるを得ない。たとえ今後政府による支援がなくなっても、それによる落ち込みは一時的なものとなるのではなかろうか。


2009.9.9「香港で人民建て国債を発行」

中国の財務省は、香港で初めて人民建て国債60億元を28日に発行すると発表したそうだ(9月9日付日経新聞)。中国本土外での始めての元建て国債となり、外国人投資家の購入も認める見通し。

中国国内で発行されている国債は、現在一部の国外機関投資家による投資が認められているものの、購入額に上限があるため、海外投資家による投資は進んでいないが 「香港は中国の一部ながら投資の自由が確保されており、今回の国債発行をきっかけに海外投資家による元建て国債の購入が積極化する可能性がある。

日本の国債については、特に海外投資家の購入は制限されていないものの、海外投資家のシェアは6.4%しかない(2009年3月末現在)。これは海外投資家に多くを頼らずとも、国内資金でしっかり消化されているため。しかし、貯蓄率は低下傾向、さらに少子高齢化なども今後は影響し、国債へ向かう原資そのものが今後減少していく可能性があり、世界的な国債市場に中国も加わってくるとなると、さらに競争も激化することも考えられ、日本も海外投資家へのアピールをさらに強化する必要もありそうである。


2009.9.8「今週から月末にかけての債券相場の予想」

今年は今月21日から23日までが連休となり、その前の土日を合わせると5連休となることで、ゴールデンウイークならぬシルバーウイークと呼ばれている。9月は国債の償還月であり大量の国債の償還と利払いは24日に行なわれ、同時に約7.8兆円もの国債が発行される。

この大量の国債償還に伴う投資家の買いなどを背景に、債券先物は9月2日にかけて上昇基調となり139円60銭まで上昇した。現物債も5年債が9月3日と4日に0.580%まで利回りが低下し、10年債は1日につけた1.285%が利回りとしてはボトムとなり、その後の利回りは上昇基調となった。

現物債は5年の0.6%割れ、10年の1.3%割れでは、それぞれ高値警戒感もあったが、売り方も慎重となっていた。しかし、先週末にかけての米債の反落などもあり、現物債には利益確定売りが特に長い期間の債券主体に入るとともに、債券先物は、これまで買いポジションを積み上げていたとみられるCTAといった海外投資家の調整売りが入ったとみられる。

9月は銀行などの中間決算期末でもあり、ここにきて期末を意識しての長期債などを中心に利益確定売り動きが入っていたが、間決算期末を意識しての動きは、今週あたりがピークとなりそうである。

さらに今週は10日に債券先物9月限の最終売買日もあり。ここにきての債券相場はかなり波乱含みの様相ともなっている。債券先物は9月2日につけた139円60銭を高値に調整局面となり、7日には138円68銭まで売られ、直近高値からはすでに1円近い下げとなっている。

7日の債券先物9月限の建て玉は4日に比べて1兆円近く減少したが、12月限は5千億円程度の増加に止まるなど、ロールオーバーに加えて、ポジションの調整もかなり進んでいる。このため、債券先物のポジション調整の動きは9日あたりまでとなりそうである。このため、中間決算期末や債券先物の9月限の売買最終日に伴う債券相場の調整は、今週あたりがピークとなる可能性がある。

14日以降は銀行が今度は決算を控えて動きにくくなる中、あらためて海外投資家が先物に新規ポジションを建ててくる可能性もある。債券相場は参加者が限られた中にあって、波乱含みの展開も予想される。ただし、シルバーウイーク後は徐々に落ち着きも取り戻し、月末にかけては投資家の押し目買いなども入り、底堅い動きとなりそうである。


2009.9.7「子ども手当」

民主党の公約から今度はあらためて「子ども手当」を見てみたい。公約では年額31万2000円の「子ども手当」を創設するとしている。

この政策目的は、次代の社会を担う子ども1人ひとりの育ちを社会全体で応援するため。子育ての経済的負担を軽減し、安心して出産し、子どもが育てられる社会をつくる。

具体策として、中学卒業までの子ども1人当たり年31万2000円(月額2万6000円)の「子ども手当」を創設する(平成22年度は半額)。相対的に高所得者に有利な所得控除から、中・低所得者に有利な手当などへ切り替える。所要額としては5.3兆円程度を予定している。

もうひとつ、公立高校を実質無償化し、私立高校生の学費負担を軽減するともしている。

この政策目的は、家庭の状況にかかわらず、全ての意志ある高校生・大学生が安心して勉学に打ち込める社会をつくる。

具体策としては。公立高校生のいる世帯に対し、授業料相当額を助成し、実質的に授業料を無料とする。私立高校生のいる世帯に対し、年額12万円(低所得世帯は24万円)の助成を行う。大学などの学生に、希望者全員が受けられる奨学金制度を創設する。所要額9000億円程度を予定。

9月3日の産経新聞によるとこの「子ども手当」の制度創設のための関連法案を今秋の臨時国会で成立させる方針を固めたそうである。それとともに子ども手当とセットで実施する可能性もあった配偶者・扶養控除の廃止については切り離して実施するとし、これらの動きは来年7月の参院選対策の意味合いがあると指摘している。

少子高齢化を見据えた「子ども手当」については、英国やドイツなどでも所得制限なしに実施されており、子供のいる家庭の育児負担の軽減は消費喚起等を含めて一定の効果はあろう。しかし、この5.3兆円もの手当てにより日本経済全体を下支えるような効果が本当にあるのかは疑問である。選挙を見据えたバラマキとの見方もあろう、さらにこれにも財源という大きな問題がある。セットであったはずの配偶者・扶養控除の廃止は切り離すなど、結局残るのは国の借金だけという事態にもなりかねない。この政策についても、実施する際には財源をしっかり明確化するべきであろう。


2009.9.7「ねこやんさんの一年忌」

今日でねこやんこと根谷さんが亡くなられて1年が経ちました。ねこやんさんが亡くなったすぐあとにリーマンショックが起こり、世界の金融・経済は未曾有の混乱となりました。天国のねこやんさんは、これをどのように見ていたのでしょう。もし生きていらしたら、クレジットの動向などに精通していたねこやんさんのことですから、適切なアドバイスを貰えたはずです。私のハンドルネームをウシクマでなくギュウクマと呼ばれていたねこやんさん。話を聞きに行くと「ギュウクマさん、それは甘いで」と、いつも厳しいながらも適切なアドバイスをくれていました。一緒に10周年記念パーティーをやろうと言っていたのに、それはかなうことができませんでした。いつも明るく元気を与えてくれたねこやんさん、あらためてご冥福をお祈りします。これからも私たちや金融市場を暖かく見守ってください。


2009.9.4「高速道路の無料化」

民主党の公約では、子ども手当てやガソリン暫定税率の廃止、高速道路の無料化などの家計支援策は初年度に約7兆円、農家への個別所得補償なども加えると2013年度には16.8兆円に広がる(9月3日日経新聞)。

暫定税率の廃止により2.5兆円の減税となり、高速道路の無料化(首都高速。阪神高速を除く)では国民負担は2兆円程度軽くなると民主党は試算している。

民主党のマニフェストでは下記のように記載されている。

高速道路を原則無料化して、地域経済の活性化を図る。

政策目的は、流通コストの引き下げを通じて、生活コストを引き下げる。産地から消費地へ商品を運びやすいようにして、地域経済を活性化する。高速道路の出入り口を増設し、今ある社会資本を有効に使って、渋滞などの経済的損失を軽減する。

具体策としては、割引率の順次拡大などの社会実験を実施し、その影響を確認しながら、高速道路を無料化していく。所要額は1.3兆円程度

9月4日付けの日経新聞によると、日本の高速道路料金は普通車で150円の基本料金に走行距離1KMあたり24.6円かかる計算となっている。米国やドイツの高速道路のほとんどが無料であり、フランスがおよそ半分、イタリアは三分の一だそうである。日本の高速料金が高いのは通行料で建設費を賄わざるを得なく、不採算の高速道路建設に充てるため、いまだにほとんどの路線で料金が徴収されているのが現状である。

高速道路の無料化による環境問題や鉄道・フェリーなど公共交通機関への影響を懸念する声もあるが、そもそも不採算の高速道路をあちこち作ってしまったツケを高速料金として国民が支っている状況を考えれば、財源問題などがクリアーできれば、料金の引き下げや無料化はある意味当然行なわれてしかるべきと思う。

しかし、その財源は大きな問題となる。日経新聞では高速道路の建設に絡む有利子負債は3月末で30.7兆円となり、これを高速6社が年間で約2.3兆円の料金収入の大半を充てている。無料となれば当然ながら料金収入はなくなる。民主党は、この負債をほかの国の借金と同様に60年間で返済する計画で、そうなれば国の長期債務残高の約600兆円にこの30兆円が上乗せされる。それでも年間の元本と利息の支払いで年間1.3兆円の財政負担で済むとして、所要額は1.3兆円程度となっている。ただし、6社で6千億円の高速道路の維持管理費はこれには含まれていない。

すでに抱えてしまった有利子負債はいずれ何らかのかたちで処理せざるを得ない。料金収入に頼らないとないのは良いとしても、それが国の債務に上乗せされ将来の国民負担を増加させることとなれば、むしろ結果として債務削減を遅らせてしまうことにもなりかねない。また、高速道路の安全面を考慮すれば維持管理費は今後も必要となり、首都高速や東名高速などの老朽化等を考慮すればさらに大きくなる可能性もある。やはり財源はかなり問題も含んでいると思われる。


2009.9.3「暫定税率の廃止」

総選挙の結果、政権を担うことになる民主党の政権公約に「暫定税率の廃止」が含まれている。民主党のマニフェストをあらためて確認してみたい。

目的を失った自動車関連諸税の暫定税率は廃止するとし、その政策目的は、「課税の根拠を失った暫定税率を廃止して、税制に対する国民の信頼を回復すためとある。 そして、2.5兆円の減税を実施し、国民生活を守る。特に、移動を車に依存することの多い地方の国民負担を軽減する。

ガソリン税、軽油引取税、自動車重量税、自動車取得税の暫定税率は廃止して、2.5兆円の減税を実施する。このため所要額は2.5兆円程度となる。将来的には、ガソリン税、軽油引取税は「地球温暖化対策税(仮称)」として一本化、自動車重量税は自動車税と一本化、自動車取得税は消費税との二重課税回避の観点から廃止するとしている。

暫定税率についてはこれまでの与野党の大きな争点のひとつとなっていたが、公約に掲げた民主党が政権を取ったことで、暫定税率は廃止される可能性が高まった。

これにより消費者負担が軽減されることは確かである。特に地方では自動車が重要な足となっており、我が家でも自動車は2台保有している。暫定税率の廃止により特に地方の住民に対しての恩恵は大きそうである。ある意味、交通の便に恵まれている都心に対しての格差是正といえるのかもしれない。

暫定税率の廃止については、税収という側面から見ると、それでなくても税収が大きく落ち込んでいる中にあって、さらに2.5兆円もの削減はかなり厳しいものとなろう。暫定税率が廃止されると、2010年度の税収は40兆円を割り込む可能性も指摘されている。

そして、物価の面からみると昨年のように原油先物価格の急騰などでインフレ圧力が強まっている状況から、現在はやや原油先物は値を戻しているもののインフレ圧力はかなり後退している状況にある。7月の全国消費者物価指数(除く生鮮)は前年同月比2.2%の低下と、過去最大の下落率を記録している。暫定税率の廃止はインフレ圧力を緩和するためでもあったかと思われるが、むしろデフレ圧力を強めてしまう結果となる可能性もある。


2009.9.2「2009年秋の個人向け国債」

今月3日から2009年秋の個人向け国債の募集が開始される。募集期間は9月3日から9月30日まで。ちなみに個人向け国債の募集期間は10年債入札日(今回は9月1日)の翌々営業日(金融機関の営業日)から月末最終営業日までとなる。10年国債入札の結果により10年変動タイプの初期利子が決定され、5年固定の条件も10年国債入札日の5年債利回りに応じて決定される。その結果は10年入札日の翌朝8時50分に発表される。

ちなみに、個人向け国債(固定5年)の条件を決めるための「基準金利」は、募集期間開始日の2営業日前(10年固定利付国債入札日)において、市場実勢利回りを基に計算した期間5年の固定利付国債の「想定利回り」となる。

10年変動タイプの初期利子を決める基準金利は10年国債の入札の結果、1.33%となり、変動タイプの初期利子はここから0.8%差し引かれた税引き前での0.53%となった。

5年固定タイプの利率は、年率税引き前で0.60%となり、2006年1月の発行開始以来最低水準となった。日銀の超低金利政策が当面継続されるとの見通しとともに、貸し出しの減少、預金の増加による余剰資金を抱えた銀行が中短期債主体に国債を買い進んでいたことで、5年債の利回りが低下したことが、最低利率となった背景にある。

個人向け国債の販売額は、ここにきて利率の低さなどが嫌気され低迷しており、今回も販売は苦戦を強いられそうである。


2009.9.2「景気動向」

31日に発表された7月の鉱工業生産指数前月比でプラス1.9%と、5か月連続の上昇となった。製造工業生産予測調査では8月が前月比2.4%上昇、9月も3.2%の上昇となり7か月連続のプラスを見込んでいる。

9月1日に発表された8月の新車販売が前年比プラス2.3%と13か月ぶりに増加するなど生産は改善傾向を引き続き示している。しかし、新車の販売はエコカー減税や新車購入補助金など政府の対策の影響が大きかったことも確かである。

これに対し、7月の完全失業率5.7%と前月と比べ0.3ポイント悪化し過去最悪を更新し、。7月の有効求人倍率は0.01ポイント低下の0.42倍とこちらも過去最低を記録するなど雇用環境については改善が見られない。

また、7月の全国消費者物価指数(除く生鮮)は前年同月比2.2%の低下と、過去最大の下落率を記録した。これは昨年の原油価格など商品価格の急騰の反動といった側面もあるが、景気低迷による価格引下げ競争の影響も出ていた。

民主党政権となることで、今後は個人消費を喚起するように対策が打ち出される可能性がある。しかし、実際に民主党政権が軌道に乗るまでは時間もかかるとみられる。さらに今年度の二次補正予算や来年度予算についても大きく組み替えられる可能性があるため、即効性のある対策がすぐに打ち出される可能性は少ない。

ただし、在庫調整が進捗し、エコカー減税・エコポイントといった自民党政権下での経済対策の効果により、自動車や電気機械を中心とした輸出と生産の回復は継続するとみられる。この動きが日本経済全体の裾野を広げた回復に繋がるかどせうかが焦点となろう。雇用や所得環境はより厳しさを増しており、これらが回復してくるかどうが、引き続き今後の焦点となりそうである。


2009.9.1「民主党と日銀のアコード」

民主党の大塚耕平氏は、8月7日の市場関係者への衆院選マニフェスト(政権公約)説明会で、日銀の金融政策に関連し「中央銀行の独立性は十分理解している」として、日銀の独立性を尊重する考えを示していた。しかし、厳しい経済状況を克服するために、マクロ経済運営で中央銀行当局と財政当局間で共通価値観、何らかのアコードはあり得ると述べ政策目標の共有を示唆した。(ロイター)

大塚氏は、日銀の国債買い入れ状況について「過去のピークから相当ピークアウトしている状況である。若干の余力があるかもしれない。財政ファイナンスに協力していだたく余力はあると推測している」と述べ、危機時の政策対応余地があることも指摘した。

白川方明日銀総裁は8月11日の金融政策決定会合語の会見で、「米国の政策アコード導入以前の金融政策は、国債価格のペッグと申しますか、国債価格を支持するということに割り当てられていました。しかし、アコードの導入により、そうしたことから解放されて金融政策が物価安定という目的に割り当てられるように変わり、中央銀行が独立性を回復しました。」と述べている。

第二次世界大戦後、国債の利払いコストを抑えさらに利上げによる国債価格の下落を回避しようとしたアメリカの財務省と、インフレ抑制のために金融引き締めを主張するFRBとの対立が激化した。このため1951年にトルーマン大統領の調停により、財務省とFRBとの間で「アコード」が成立し、国債管理政策と金融政策が「分離」され、これによって低金利政策は廃止され、FRBは政府からの「独立性」を強めたのである。

もちろんこういった経緯は日銀出身の大塚氏は理解しての発言であろうが、大塚氏のアコードはこの歴史の経緯から見れば「逆アコード」とも言えるものである。

11日の日銀総裁会見では、1998年の日銀法改正によって、金融政策については既に独立性、つまり日本銀行の責任と判断で決定するということが法律で定められている点を指摘している。

野党が与党になり、日銀に対しての風向きも変化してくるのか。民主党が掲げた施策の財源問題があらためて浮上した際には、アコードと称して日銀に国債買入を要求してくるような可能性も否定できない。今後の民主党による日銀への対応は注意深く見ておく必要もありそうである。


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