「若き知」
「過去データは一番下に移行しました」


2010.3.31「債券の昨年度引けと今年度の引け比較」

今年度の債券先物の引けは138円22銭となった。2009年3月末の債券先物の引けは、138円15銭であり、わずかに7銭差しかなかった。それだけ2009年度の債券相場は、動かなかったということとなりそうである。

現物10年306回債は1.395%あたりの引けとなりそうだが、10年債利回りの2009年3月末は1.340%となっており、少しだけ利回りが上昇している。今年度を見ると最高利回りは2009年6月につけた1.560%、最低利回りは12月につけた1.190%であった。

2年291回債の利回りは0.170%あたりの引けとなりそうだが、2年債の2009年3月末の利回りは0.410%であり、さすがに日銀の追加緩和が効いて大きく利回りは低下していた。

5年88回債の利回りは0.550%あたりだが、2009年3月末の5年債利回りも確認してみると、こちらは0.780%とやはりここから大きく低下していた。

そして超長期債を見てみると20年116回債利回りは2.165%あたりとなり、20年債の2009年3月末は2.135%とであり、わずかながらの利回り上昇に。30年32回債は2.300%近辺だが、30年債の2009年3月末は2.030%と、ほとんど変わらずか。

つまり債券先物や長期債、超長期債はほぼ昨年度末の水準近くで今年度の引けとなったものの、中短期債だけは、日銀の追加緩和の影響などから大きく低下していたと 言えそうだ。

今年度は政権が変ったり、国債が増発されたり、ソブリンリスクが高まったとかいろいろあったが、この利回りの居所だけから見る限りにおいては、日本国債は危なくなかったといえる。もちろん日銀の追加緩和などがアンカーになったことも確かか。果たして、この好環境はいつまで続いてくれるものなのか。

日経平均は前日比7.20円安の11089.94円で大引けとなったが、こちらの2009年3月末は8109.53円であり3000円近くの上昇となっていた。


2010.3.31「再びコンクリートに回帰か」

郵貯限度額は2000万円への引き上げで決着となったようだ。仙石国家戦略相が反対するなど、閣内からも反対意見が出ていたが最終的に総理一任となって、亀井案が通ってしまった。

確かに限度額引き上げで、国民は暗黙の政府保証となる郵貯により多くの資金を預けられるようになり、なんといっても今後の財政悪化を見据えてより国債を買ってくれるところに資金が集中してくれるのは助かる、のであるのか。どう考えても民業圧迫であり、特に中小金融機関などからの資金流出も想定される。

国債市場には確かにプラス面もあるかもしれないが、読売新聞が報じた政府検討のゆうちょ銀行・かんぽ生命保険の資金運用改革案によると、むしろ国債に依存しない運用の方向性を打ち出している。さらに、鉄道、道路、水道など海外のインフラ整備事業への投資や進出する日本企業への融資、橋や学校、病院など国内公共施設の整備・再開発への投融資、外国債券の購入、個人・住宅ローンなど個人向け融資などを提案した。

民主党の理念は確かコンクリートから人へのはずが、またコンクリートに戻る気のようである。郵政マネーを政府系金融機関を通じて公共事業などに使う非効率な資金の流れになりかねず、かつての財政投融資を連想させる内容となっている。

しかも、今回の限度額引き上げの目的が、票集めであることも確かであろうし、あまりに時代錯誤的な動きにしか見えない。これによる債券市場への影響は、ゆうちょの国債保有の増額が意識されて若干のプラスとはなりそうだが、日本の行く末がまた気になる。


2010.3.31「日本の夜明けは勘違い」

28日のフィナンシャル・タイムズの社説は、日本の夜明けは勘違いだったとの内容となっていた。昨年8月の選挙で国をぬかるみから引っ張り出してもらうため、有権者は民主党にチャンスを与えた。そして、日本の有権者には実はもう一つ別の思惑があったとし、それは二大政党制の誕生である。

つまり、期待以下の働きしかしない政権を追い出す機会を、有権者に与える仕組みを期待していた。ところが、権力という接着剤を失った自民党が分裂の危機に瀕し、かつてないほど細分化の度合いを深め、おまけに与党の民主党も相変わらず、政治思想的にごたまぜの状態で、それが混乱に拍車をかけていると指摘している。

さらに政治思想がくっきり鮮明化することを期待する人もいたが、それは日本には不向きなことなのかもしれないともFTは指摘している。日本がほかの民主国家と比べて人種や宗教の分断、ひいては階級の分断さえ少ない、合意重視型の国であるとしているが、このあたりは外から指摘してもらわないと、なかなか気付きにくい部分でもある。

日本において政党は、社会福祉対健全財政、近隣諸国との友好対強固な日米同盟などといった明確な政治思想の違いをもとに成り立っているというより、個人的な人間関係や、力と金の取り引きをもとに成り立っているのだと指摘しており、それが大きな問題であることは確かであろう。

日本の経済力が心許ないことになりつつある時、そうした政党の在り方は、断固とした決断力あふれる行動をとるには不向きだとFTは指摘していたが、この指摘はかなり的を射たものであろう。


2010.3.30「プライマリー・バランスの段階的改善が目標か」

30日付け日経新聞朝刊によると、政府が6月にまとめる中期財政フレームと財政運営戦略の素案が、29日に明らかになった。

政府は今年6月ごろまでに、2011年度から3年間の複数年度予算を視野に入れた経済財政運営指針の「中期財政フレーム」と、中長期の財政健全化の道筋を示す「財政運営戦略」を策定する。

財政健全化に向けて基礎的財政収支(プライマリー・バランス)を段階的に改善し、公的債務残高のGDP比の安定的な縮減を目指す目標を掲げる。その中には、経費に見合う財源を確保するという「ペイアズユーゴー原則」などの財政運営ルールの導入も盛り込む。

ちなみにペイ・アズ・ユー・ゴー(Pay-as-you-go、PAYGO、ペイゴー)原則は、米国の1990年予算執行法の中で歳出管理のため設けられた、義務的経費及び歳入に関する新たな立法が財政赤字を増加させないようにする制度である。

新規施策や制度変更により義務的経費を増加させたり減税を行う場合、同一年度内にその歳出増や歳入減に見合った義務的経費の削減又は増税が行われなければならないとされる制度である。仮にそれが行われない場合、義務的経費に対する一律削減が行われる(以上、財務省資料より)。

財政健全化の最終目標については、「公的債務残高の対GDP比の安定的な縮減」とし、道筋としては中期財政フレームの設定、プライマリー・バランスの赤字を半減、プライマリー・バランスの均衡を達成、プライマリー・バランスの黒字を達成、の4段階を挙げる。ただし、目標時期については今後詰める。

ちなみに国と地方を合わせた2009年度のプライマリー・バランスの赤字推計額は過去最悪の40.6兆円となっている(日経新聞)。

そして、財政健全化の目標達成に向けて、財政規律を維持していくための財政運営ルールとして、ペイゴーのほか財政赤字を一定割合改善させる案などを検討するとしている。

参考までに自民党が国会に提出した財政責任法案では、プライマリー・バランスを2020年度めどに黒字化、遅くとも2015年度までにプライマリー・バランス対GDP比を2010年度から半減させるとなっていたが、今回の政府案は自民党の内容とも、かなり近いものともなっている。

3月28日のテレビ番組で、菅財務相が、自民党法案について考え方は基本的には私たちと共通していると述べた。今後の焦点のひとつは経費に見合う財源のひとつとなる消費税の動向かとみられる。


2010.3.29「EUとIMFによるギリシャ支援」

欧州連合(EU)の欧州単一通貨ユーロ圏16カ国の首脳会合が25日、ベルギーのブリュッセルで開かれ、緊急時のギリシャ支援について二国間融資と国際通貨基金(IMF)の援助を組み合わせた支援の枠組みを決定した。

EU加盟国ではハンガリーやラトビア、ルーマニアが金融危機でIMFの融資を受けたが、ユーロ圏の国がIMFの融資を受けることになれば、1999年のユーロ導入以来、初めてとなる。

支援策では、ギリシャが4〜5月に、総額220億ユーロ(2兆7100億円)の国債を自力で償還できない場合、ユーロ圏16カ国による2国間融資と、IMF融資を併用し実施するという内容。6カ国は全融資額の3分の2を負担、IMFは3分の1を引き受ける。16カ国のそれぞれの負担割合は、欧州中央銀行(ECB)への出資比率に応じて決める(産経新聞)。

ただし、実際の発動には欧州中央銀行と欧州委員会が是非を判断し、ユーロ圏16か国の全会一致の決定が必要となり、補助金と受け取られないような比較的高い金利を適用との厳しい条件もつけられている(日経新聞)。

単一通貨で為替調整が不可能であり、国を跨ぐ中央銀行の存在による金利調節もできない状況下、こういった枠組みを取らざるを得なかったが、なにはともあれこれによりギリシャの財政問題への懸念はいったん後退した。

しかし、フィッチはポルトガルの格付けをAAからAAマイナスに引き下げるなどしており、英米などを含めての財政問題は今後の大きな課題となりうる。ギリシャについては債務規模を隠蔽するなど財政問題そのもの以外の問題を抱えていたことで、やや特殊な事例との指摘もあるが、それでも根底にはリーマン・ショック以降の先進諸国の財政出動による財政悪化が影響していたことも確かである。


2010.3.26「ソブリンリスクや景気回復が意識され下値模索の展開か」

23日の2年物、24日の5年物、そして25日の7年物の米国債入札が低調な結果となったことを受け、25日に米10年債利回りは一時3.92%まで上昇した。

ギリシャの財政問題が燻り、格付会社のフィッチはポルトガルの格付けをAAからAAマイナスに引き下げたが、これまでのような質への逃避による米国債やドイツ連邦債への買いは入らず、むしろそれぞれ売られる結果となった。米国を含めてソブリンリスクが意識されたものとみられる。

これを受け債券相場は売り圧力を強め、26日に債券先物は3月18日につけた直近安値の138円39銭を下回ってきた。そして、現物10年債利回りは2月につけた今年の最高利回りの1.380%を上回ってきた。

決算期末でもあり大手証券や銀行などが動きづらい中、海外ファンドなどによる売りが入ったとみられる。また、国内投資家によるヘッジ売りも入った可能性もある。

外為市場では、日米長期金利格差の広がりや米国の景気回復への期待もあり、円売りドル買いが進みドル円は92円台に乗せてきた。この円安なども受けて、日経平均株価は一時11000円台に乗せるなどしっかりしていたことも、債券相場の上値を抑えた。

ここにきての日本の長期金利上昇の直接の要因は米長期金利の上昇であるが、国内景気の回復期待の強まりもその背景にある。その意味でも4月1日に発表される日銀短観の内容に注目したい。大企業製造業DIはマイナス13近辺と、前回のマイナス24から大きく回復する予想となっている。

また、世界的にソブリンリスクへの警戒感が強まったことも債券売りの背景にあった。2010年度予算が成立したが、新規国債発行額が税収を上回る異常事態となったことに加え、2011年度についても。すでに新規国債発行額が50兆円を上回るとの予想となっている。 このような中、追加経済対策の観測が出るなど現政権に対しての財政規律の緩みも意識されつつある。政府は今年6月ごろまでに中長期の財政健全化の道筋を示す予定だが、実現可能な具体的な数字が含まれるかどうかも注目されている。

そして債券の需給面では、4月に入ってからの大手銀行の動向も注意したい。景気回復やソブリンリスクなども意識しての期初の債券売りが出る可能性もある。  3月17日に日銀が追加緩和を行なったことで中短期債はしっかりすると思われるが、長期や債券先物主体に売り圧力が加わる恐れがあり、10年債利回りは1.4%台半ばあたりを試す可能性があるとみている。


2010.3.25「世界的にソブリンリスクが意識される」

世界的に債券市場の様子が少しおかしくなってきた。格付会社のフィッチは、ポルトガルの格付けをAAからAAマイナスに引き下げた。見通しはネガティブに。これまでだったら、これにより質への逃避で米国債やドイツ連邦債は買われると思われるが、昨日は米国債は反対に大幅に下落し、この余波でドイツ連邦債も下落した。もちろんポルトガル国債も下落している。

米国債の大幅続落の原因は、5年国債入札の結果が不調と受け止められたことによる。落札利回りが2.605%と入札締め切り時点での入札前取引での利回り2.560&近辺を大きく上回った。応札倍率は2.55倍と前回の2.75倍を下回り、昨年9月以来の低いものとなり、間接入札の比率も39.7%と前回の40.3%を下回り、昨年7月以来で最低を記録した。

間接入札の比率の低さの要因は、年度末控えて日本の機関投資家が応札を控えたからとの見方もあるようだが、それはどうであろうか。一方、米政府が中国に対する人民元切り上げ圧力を再び強め始めたことが影響しているとの指摘もあった、さらにソブリン債を保有するリスクが意識されたとの指摘もあった。

米債券市場では前日の2年債入札の結果も低調なものとなっており、今日の7年債入札への警戒感も強まり、米10年債利回りは前日比0.17%高い3.85%、2年債利回りは同0.06%高い1.09%となった。前日に続いて、昨日も10年物の米ドルスワップ金利が米10年債の利回りを一時下回る場面があった。スワップスプレッド・ポジションのアンワインドで米国債の売りに拍車をかけた側面もあったようだが、ソブリンリスクが意識された出来事でもあろう。

いずれにせよこの米債の下落を受けて、ドイツ連邦債10年物利回りも一時3.1%台に上昇した。そして、イギリスでは25億ポンドの予算案を発表し、日本と同様に本格的な財政再建は先送りされている。

世界的にソブリンリスクが意識され、当然ながら日本国債も例外とはなるとは考え辛い。日銀の追加緩和がアンカーとなり中短期債はしっかりするとみられるが、長期・超長期債にはあらためて売りが入る可能性がある。


2010.3.24「2月の貿易統計は輸出入ともに増加」

財務省が24日に発表した2010年2月の貿易統計によると、輸出は対前年同月比45.3%増となり3か月連続の増加、輸入も対前年同月比29.5%と3か月連続での増加となった。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支の黒字は6510億円の黒字となった。貿易黒字は11カ月連続。

地域別にみると
対米国では輸出が50.4%増と2か月連続の増加、輸入が7.2%増と2か月連続の増加
対EUでは輸出が19.7%増と3か月連続の増加、輸入は7.3%増とこちらは17か月ぶりの増加
対アジアは輸出が55.7%増と4か月連続の増加、輸入は38.9%増と2か月連続の増加
対中国では輸出が47.7%増と4か月連続の増加、輸入は54.3%と16か月ぶりの増加

輸出は自動車、自動車の部分品等が増加し、2007年8月以来2年半ぶりにすべての地域でプラスとなった。輸入は原粗油、石油製品等が増加した。対EUでは輸入が7.3%増と17か月ぶりの増加となった。自動車の輸入が大きく寄与した。また、対中国では輸入が54.3%と16か月ぶりの増加となったが、こちらは音響映像機(含部品)の増加が目立った。


2010.3.23「2009年12月末現在の国債保有者別残高」

3月23日に日銀が発表した2009年10〜12月資金循環勘定速報によると、家計の金融資産は2009年9月末(速報値)の1439兆4837億円から、2009年12月末は1456兆円3740億円となった。前期比で増加するとともに、年末ベースでは3年ぶりの増加となった。

この家計の金融資産のうち、株式(出資金を含む)は前年末比16.2%増の96兆6933億円、投資信託については前年末比10.8%増の53兆9435億円となっていた。

2008年12月末の日経平均は10546.44円、そして209年12月末は10824.72円と上昇した。

2009年12月末時点での家計の現預金は803兆5149億円、保険準備金は216兆1092億円、年金準備金は181兆4278億円。

この資金循環勘定速報をもとに 2009年12月末現在日本における国債所有別内訳を算出してみた。

国債の残高そのものは、682兆7125億円となった。海外投資家のシェアは、5.2%と9月末の5.8%からさらに減少し、金額ベースでは3兆7739億円の減少となった。海外投資家は引き続き日本国債においてもポジション解消の動きを強めたとみられる。家計の国債全体に占めるシェアは5.1%となり、9月末の5.2%から小幅減少。

9月に比べ全体の残高が増加したが、最大の増加額となったのは民間の保険・年金で9月末比で3兆4557億円増加した。次に投信など金融仲介機関が2兆7814億円の増加、銀行など民間預金取扱機関が2兆1947億円の増加となった。減少で目立つのは海外投資家の3兆7739億円の減少。またシェア順位では投信など金融仲介機関がシェアを伸ばし、海外を上回った。

全体に占めるシェアとしては、民間預金取扱機関が254兆0992億円で37.2%、民間の保険・年金が168兆0599億円で24.6%、公的年金が79兆1085億円で11.6%、日本銀行が50兆2241億円で7.4%、投信など金融仲介機関が36兆2270億円で5.3%、海外が35兆6664億円で5.2%、家計が35兆0250億円で5.1%、財政融資資金が1兆1219億円で0.2%、その他が23兆1805億円で3.4%となった。


2010.3.23「インフレーション・ターゲットの進化系」

朝方に2月17日から18日にかけて開催された日銀の金融政策決定会合の議事要旨が発表された。この中で、何人かの委員は、一部欧州諸国における財政問題を契機に、わが国を含め、世界的に財政動向に対する関心が高まっており、中長期的な財政再建の道筋に対する、市場の信認を確保できるかが大事になっていると述べた。23日の日経には、2011年度予算で新規財源10兆円必要との記事があったが、国債への市場の信認が確保できなくなると、たいへんな事態になりかねない。

また、中国経済について、何人かの委員が不動産価格の一段の上昇など、過熱懸念が生じているとの見方を示した。このうちの1人の委員は、不動産価格について、このところ沿海部よりも内陸部の上昇率が高く、80年代末における日本のバブル最終局面で、東京よりも地方の地価上昇率のほうが大きかったことと類似しているとの指摘もあった。

今後、日本のバブル崩壊の教訓が果たして生かされるのかどうか。興味深い。

そして一番注目されたのが、日銀が採用している金融政策運営の枠組みとインフレーション・ターゲットとの関係のところか。

複数の委員は、いわゆるインフレーション・ターゲットについて、すでに採用しているところは、柔軟な枠組みになってきていると指摘した。

また、別の複数の委員は、日銀の金融政策運営の枠組みは、物価の安定だけでなく、金融的な不均衡の蓄積等の様々なリスクにも目配りできるなど、従来のインフレーション・ターゲットを進化させたものであり、最近の国際的な議論を先取りしたものであると付け加えた。

進化と言う言葉を使った、この別の複数の委員とはいったい誰なのかもちょっと興味がある。どちらかと言えば現在の日銀の金融政策運営の枠組みは、インフレーション・ターゲットをバージョン・アップしたものとは考え辛い。ゼロ金利政策や量的緩和策などを経て、別途進化を遂げたものであり、かなりオリジナルなものであると思うのだが。


2010.3.23「財政健全化の目標(レポート原稿)」

昨年末の「平成22年度予算等に関する説明会」において、説明を行なった大串政務官が何度も使っていた用語がDebt-to-GDPであった。Debt-to-GDP ratioとは政府債務の対GDP比である。

また、菅直人副総理兼財務相は3月16日の参院財政金融委員会で、まずは(公的債務残高の)GDP比の安定を目指すと述べ、さらに仙谷国家戦略相もブルームバーグのインタビューで、財政健全化の目標について、長期債務残高の対国内総生産(GDP)比を中心に据え、数値目標を盛り込む考えを示した。

政府は今年6月ごろまでに、2011年度から3年間の複数年度予算を視野に入れた経済財政運営指針の「中期財政フレーム」と、中長期の財政健全化の道筋を示す「財政運営戦略」を策定する。

財務省によると国と地方を合わせた長期債務残高は10年度末に862兆円と対GDP比で181%に達する見込みとなっている。また、日本の一般政府ベースの「純債務」のGDP比率を見ても2010年に104.6%と初めて100%台に乗せ、イタリアの100.8%を抜いてG7諸国中最悪となった。 すでに日本は総債務残高のGDP比率が1999年に先進国中最悪となっていたが「純債務」でも最悪となり、日本の財政が極めて深刻な状況にあることをあらためて示した格好となっている。

果たして6月に向けてまとめる財政再建に向けた目標はどの程度の数値になるのであろうか。

来年度予算編成に当たり、「どういう財政収支やどれくらいの大きさの財政フレームを考えるかは、まだまだ慎重に見極めてなければならない」と仙谷国家戦略相はインタビューで指摘しており、まだ具体的な数値は煮詰まってはいないようである。

この数値については、ユーロの財政安定化成長協定における財政赤字の対GDP比3%、政府債務(純債務ではなく総債務)残高の対GDP比60%がひとつの目安になるのではなかろうか。

しかし、すでに200%近い政府債務残高の対GDPを60%に抑えるのはかなり難しい。目標としては英国の目標値と同様に、ある程度の期間内で現状の半減となる財政赤字の対GDP比の4%、政府債務残高の対GDP比100%あたりが目標値の目安となるのではなかろうか。それもかなり厳しい数字であることに違いはない。

また、菅財務相は23日の参院財政金融委員会で、財政健全化の道筋を法律という形で国会で議論してもらうのも一つの道かなと考えていると述べ、財政健全化法案を検討する考えを示した。


2010.3.23「財政健全化の目標」

ブルームバーグ・ニュースのインタビューによると、仙谷由人国家戦略相は、財政健全化の目標について、長期債務残高の対国内総生産(GDP)比を中心に据え、数値目標を盛り込む考えを示した。

政府は今年6月ごろまでに、2011年度から3年間の複数年度予算を視野に入れた経済財政運営指針の「中期財政フレーム」と、中長期の財政健全化の道筋を示す「財政運営戦略」を策定する。ただし、「中期財政フレーム」に長期の財政健全化目標をどのよう反映させるかに関しては明言を避けた。

仙谷国家戦略相は「長期債務残高を対GDP比でどのくらいのところに当面抑えていくのか。そういうのが中心にならざるを得ないのではないか」と述べ、「何らかの数値を書かないといけない」との意向を示し、具体的な数値目標を出すようである。

財務省によると国と地方を合わせた長期債務残高は10年度末に862兆円と対GDP比で181%に達する見込み。

民主党政権では、国家戦略室が1月以降「中期的な財政運営に関する検討会」を定期的に開催し、3月末をめどに論点整理を公表する予定。ただ、戦略相は来年度予算編成に当たり、「どういう財政収支やどれくらいの大きさの財政フレームを考えるかは、まだまだ慎重に見極めてなければならない」とインタビューで指摘している。

仙谷戦略相は、深刻な財政危機で信用リスクに直面しているギリシャなどは経常収支赤字国であると指摘しており、国債金利上昇の「一番大きな要因は、日本の経常収支がどういうふうに動いているかをマーケットは見ている」こととし、「そういう観点からみると、急騰するリスクは今のところ、割と少ないのではないか」との認識を示した。

同相はさらに、海外の投資家が円や国債先物を売買する際、他の通貨や金融市場との関係が「一番のポイントだ」とし、欧米諸国の経済状況は日本のバブル経済崩壊後と同じように「そうそう簡単にバランスシート調整はつかない」と述べた。その上で、相対的に円資産の価値が一方的に低下する可能性は小さいとの見方を示唆した。

また、読売新聞によると、菅財務相は参院財政金融委員会で「財政健全化の道筋を法律という形で国会で議論してもらうのも一つの道かなと考えている」と述べ、財政健全化法案を検討する考えを示した。


2010.3.23「2011年度の新規国債の発行額は50兆円を超えの可能性」

23日付けの日経新聞によると、財務省は2011年度予算において、税収減に加え、民主党の昨年夏の衆院選マニフェストの全面的な実行を前提にすると、新規に必要となる財源は10兆円規模となるようである。

このうち4.5兆円はマニフェスト重要政策に関する経費となる。内訳は、2011年度は子ども手当ての満額支給に約2.5兆円、求職者支援制度の設立など雇用対策の充実と高速道路無料化の実験拡大にそれぞれ約8千億円ずつ、農家の戸別所得補償の完全実施に約4千億円。

財務省の「後年度影響試算」では、もしマニフェストの新規の実行を凍結しても、社会保障費の自然増(約1兆円)などで、2011年度予算は2010年度比で1.6兆円多い93.9兆円に膨らむ。

国債発行を除いた税収と税収外収入については、同5.4兆円減の42.6兆円となるとの試算となる。すでに埋蔵金に頼るには限度がある。歳出増の1.6兆円と収入減の5.4兆円で都合7兆円規模の財源が不足する計算となる。日経は少なくとも6兆円規模の財源確保が必要としている。

この財源不足分に、マニフェスト重要政策に関する経費の4.5兆円がオンされれば10兆円を超えてくる。2010年度の新規国債の発行額は約44.3兆円であり、仮にマニフェストの新規の実行を凍結したとしても2011年度の新規国債の発行額は50兆円を超えてくる可能性がある。


2010.3.19「債券先物で11月9日につけた137円29銭が目先の下値目処か」

10年債利回りは18日に1.370%まで上昇し、2月4日につけた1.380%が視野に入ってきており、ここを抜けて1.4%台に乗せる可能性がある。18日の債券先物の急落の背景には、追加経済対策論が浮上との報道もあった。6月に向けて財政再建に向けた目標をまとめるべき時に、このような追加対策への思惑が出ると、たとえ国債増発は回避されても財政規律の緩みが意識されかねず、それが債券売りに繋がる懸念がある。

3月期末を控えて銀行や証券などは動きづらくなる。利付国債の入札も25日の2年債入札が予定されている程度であり、国内投資家は様子見気分を強めてくる可能性がある。国内投資家が動きづらい中、海外ファンドなどによる先物主導での仕掛け的な動きが入り、波乱含みの展開となる可能性がありうる。もし、仕掛け的な動きが入るとすれば売りか。

ここにきて日本の経済は緩やかな回復基調を続けており、これは米国なども同様である。4月1日に発表される日銀短観などでは思いのほか強い数字が出てくる可能性もありうる(大企業製造業DI予想はマイナス14、前回はマイナス24)。ここにきての日経平均株価も堅調地合となっており、11000円台の回復もありうる。日銀の追加緩和策が実施されても債券への買いは限定的で、むしろ戻り売りが入るなど、どちらかと言えば売りに傾きやすい状況にある。債券先物で11月9日につけた137円29銭、長期金利で1.45%あたりが目先の下値目処か。


2010.3.18「日銀は追加の緩和策を決定」

日銀は3月16日から17日にかけての金融政策決定会合において、政策金利については全員一致で現状維持としたが、固定金利オペを大幅に増額することにより、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充することとした。この新型オペの「拡充策」については、須田委員および野田委員が反対した。

白川日銀総裁はその後の記者会見において、今回の固定金利オペの大幅に増額する拡充策について、「今回の措置は追加緩和措置だ」と発言した。ただし、今回採用した措置は量的緩和政策ではないとも発言している。だからこそ、決定会合後に発表された「当面の金融政策運営について」には具体的な「増額額」が明記されていない。「どの程度の金額が適切なのかは現場部署に委ねる」と総裁は発言している。

このため、昨日の政策委員会・金融政策決定会合後には、金融政策に関しての「当面の金融政策運営について」との声明文とは別に、「固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションの運用について」という文章を公表している。この中で、期間3か月、オファーは週2回程度、資金供給額を8千億円として、その結果「オペの資金供給規模は、現在の10 兆円程度から、20兆円程度に増加することとなります」と表記している。

たしかに量的緩和策ではないため、20兆円という数値を出せばその数値を目標値として捉えかねず、あくまで「やや長めの金利の低下を促す措置」という曖昧な表現で、追加緩和策としたのであろう。

ちなみに同じ資金供給手段であるところの国債買入については、「当面の金融政策運営について」において具体的な数字が表記されている。

たとえば2009年3月18日の決定会合後に発表された「当面の金融政策運営について」には、「これまで年16.8 兆円(月1.4 兆円)ペースで行ってきた長期国債の買入れを、4.8 兆円増額し、年21.6 兆円(月1.8 兆円)ペースで実施する(当月より実施)」とある。

この際の国債買入増額の理由として、「金融市場の安定を確保するため、引き続き、積極的な資金供給を行っていくことが重要と判断しました。こうした観点から、長期の資金供給手段を一層活用し、円滑な金融調節を行っていくため長期国債の買入れを年4.8兆円増額することとしました。」と白川総裁は会見で述べている。

ちなみにこの際には、追加緩和との表現は使われていない。「あくまでも金融調節上の必要性に基づいて行うもの」としているものの、「当面の金融政策運営について」には具体的な数字を含めて明記されていたのである。

あまり細かいところを突付いてもいたしかたないが、今回の「追加緩和策」については、政策金利の変更でなければ量的緩和策の一環でもないという、かなり曖昧としてものであった。

これはあくまで、4月以降の企業金融支援特別オペレーションの残高が漸次減少していくことを踏まえた措置であるとともに、政府のデフレ対策と呼応しての「追加緩和」の意味合いを持たせるものであろうし、実際の効果のほどは限定的であり、アナウンスメント効果もかなり意識したものであると思われる。

二人の審議委員が反対した具体的な理由は議事要旨や議事録の発表を待つ必要があるが、政府側からの圧力に屈したかたちと捉えかねない措置ことへの反対であったかと思われる。

今後は更に日銀に対して政府からの追加緩和期待が強まる可能性がある。福井前日銀総裁は総裁に就任直後に、当時の政策目標である当座預金残高目標を立て続けに引き上げて、金融緩和に積極的であることをアピールした。実際に当座預金残高目標の引き上げがどの程度の緩和策になっていたのかはさとおいて、アナウンスメント効果は絶大であり、マスコミや政治家などからの評価を得ていた。

ところが、福井前総裁は当座預金残高の引き上げは行なっても、国債買入の増額はしなかった。日銀は資金の供給手段とともに吸収手段もあることで、いったん引き上げた当座預金残高を減らすのは技術的にはさほど困難ではない。それは実際の量的緩和政策の解除時を見ても明らか。ところが日銀による国債買入の額を減らすことは、実際に容易なことではない。

つまりは、今後、白川日銀が行なえる追加緩和策については、前任の福井総裁の時のように量で操作できない以上は、なかなかフレキシブルには行いづらいと思われる。できれば国債買入増額は避けたいであろうが、その代替手段は限られる。今回、新型オペはあくまで金額の拡充であり、期間の延長は行わなかった。これは追加カードを一枚残しておきたかったからともいえそうである。


2010.3.17「Debt-to-GDP ratio」

昨年末に出席させていただいた「平成22年度予算等に関する説明会」大串政務官が何度も使っていた用語が、Debt-to-GDPであった。Debt-to-GDP ratioとは政府債務の対GDP比である。

菅直人副総理兼財務相は3月16日の参院財政金融委員会で、今すぐプライマリーバランスの目標を立てるにはやや早すぎるとし、まずは(公的債務残高の)GDP比の安定を目指すと述べた。ということは、6月に向けてまとめる財政再建に向けた目標は、公的債務残高の対GDP比ということになるのであろうか。

ユーロ導入時に締結された財政安定化成長協定では、ユーロ導入後のインフレ抑制のために、参加各国の財政赤字を対GDP比3%、政府債務残高を同60%以内に抑制することが定められている。この財政赤字の対GDP比3%、政府債務残高を同60%というものがひとつの目安になる。

OECDの2009年12月時の「Economic Outlook 86」によると2009年の対GDP比の財政赤字は日本が8.3%、米国が11.6%、英国が13.3%、ドイツが5.3%などとなっている。また、1997年に財政黒字となったカナダも2009年には4.8%の赤字となっている

単年度で見た対GDP比の財政赤字では主要国で最悪とされる英国でも、やはり財政再建策が大きな焦点となっている。2010年以降の4年間で財政赤字の対GDP比率を半減させることを目指しているが、財政再建への道はかなり厳しい。

2009年度の債務残高の対GDP比をみると、日本は189.3%となっており、イタリアの127.0%をも大きく上回りG7諸国の中で最悪の水準となっている。米国や英国も急速に悪化し、米国は83.9%、英国は71.0%となっているが、日本と比較すればまたまだ少ない。

経済協力開発機構(OECD)の2009年12月時点でのまとめによると、日本の一般政府ベースの「純債務」のGDP比率は2010年に104.6%と初めて100%台に乗せるとともに、イタリアの100.8%を抜いてG7諸国中最悪となった。他のG7諸国では米国が65.2%、英国が59.0%、ドイツが54.7%、フランスが60.7%、カナダが32.6%。注目されているギリシャは2010年は94.6%だが、2011年予測では101.2%となり100%台入りする。

すでに日本は総債務残高のGDP比率が1999年に先進国中最悪となっていたが「純債務」でも最悪となり、日本の財政が極めて深刻な状況にあることをあらためて示した格好となっている。

国債と借入金、政府短期証券を合わせた国の債務残高が2010年度末で、973兆1625億円に上る見通しなども示されているが、果たして6月に向けてまとめる財政再建に向けた目標はどの程度の数値になるのであろうか。

繰り返しとなるが、ユーロの財政安定化成長協定における数値である財政赤字の対GDP比3%、政府債務(純債務ではなく総債務)残高の対GDP比60%が目安になるが、さすがにすでに200%近い政府債務残高の対GDPを60%に抑えるのはかなり難しい。目標としては英国の目標値と同様に、ある程度の期間内で(4年以上を想定か)、現状の半減となる財政赤字の対GDP比4%、政府債務残高の対GDP比100%あたりが目標値の目安となるのではなかろうか。それもかなり厳しい数字であることに違いはないが。


2010.3.16「ギリシャのデモはいずれ日本でも(レポート原稿)」

3月11日のギリシャ全土での官民の二大労組連合組織による24時間のゼネストにより、ギリシャの社会機能はマヒ状態に陥った。空港、鉄道、病院、学校、銀行などが一斉に休止したそうである。首都アテネでは警官や消防士も参加し約2万人がデモ行進し、投石により警官隊と衝突した。これは財政危機からの回復のため、給与凍結、増税などの緊縮策を進めるパパンドレウ政権に対しての抗議だけに、警備している警察官も複雑な心境とも思われる。

先月、私は霞ヶ関で久しぶりにデモ行進を見かけた。乗っていたタクシーの運転手も最近はめったにデモ更新を見なくなったと言っていたが、日本でのデモがニュースで報じられることもあまりなくなってきている。しかし、ギリシャの問題は対岸の火事ではなく、いずれ日本でも同様のことが起こりうるのではなかろうか。

ギリシャなどのユーロ導入国は、単一通貨ユーロの安定のため、財政赤字をGDP比3%以下にすると定められている(安定・成長協定ルール)。厳密にはリーマン・ショックの影響などからそのルールは守られてはいないものの、ルールの存在自体は財政規律を促す働きをしていることは確かであろう。

ところが、菅副総理兼財務相が債務残高は金メダル級と豪語した日本では、ユーロ導入国のように財政規律に対して明確なルールがない。ちなみに米国では合衆国憲法に基づいて連邦議会が定めた第二自由公債法において国債残高に制限額を課している。

日本では国債発行額に歯止となるものがないため、2009年度の新規国債の発行額が税収を上回るという異常事態すら迎えている。

その分、国債発行額はもし本当に国債が消化できないという事態になったときには、すでに対処のしようがない状態になってしまっている可能性がある。

そういった状況を国民も薄々は感じているものの、本当の意味での危機意識は薄い。そのために、政府の対応も真剣さが感じられない。政府は6月初めを目途に成長戦略実行計画を含めた成長戦略のとりまとめとともに、中期財政フレームについてまとめる予定となっている。

しかし、中期財政フレームに関して具体的な数値目標が出される気配が今のところ感じられない。具体的な数値目標を出すとなれば、消費税引き上げがその前提条件となるため、鳩山首相が在任中には引き上げないとの公約に反することが、数値目標が出せない要因であろう。

危機的な財政の中にあって、こういった公約やマニフェストに縛られて財政規律に向けて身動きできない現政権に対し、夏の参院選で国民の審判がどのように下されるのか、注意深く見守る必要がある。


2010.3.16「日銀の審議委員人事と市場との対話」

政府は3月12日に日銀の審議委員に前東京電力副社長の森本宜久・電気事業連合会副会長を起用する人事案を衆参両院に提示した。衆参両院の同意を得れば7月1日付で就任する。

今月末に、水野前委員の後任として宮尾龍蔵神戸大経済経営研究所長が就任することで、7月1日からは金融政策を決める政策委員は定数の9人が揃う 政策委員の新体制は産業界出身3人(中村清次氏、亀崎英敏氏、森本宜久氏)、学識経験者3人(西村清彦氏、須田美矢子氏、宮尾龍蔵氏)、日銀出身2人(白川方明氏、山口廣秀氏)銀行1人(野田忠男氏)の構成になる。

福井前総裁の任期満了にともなう日銀総裁人事を巡る問題をきっかけに、長きに渡り続いた政策委員の欠員がこれでやっと埋まることは歓迎したい。ただし、今回の人事により、市場に通じているストラテジストなどが起用されなかったことはやや気掛かりである。

現在の日銀の金融政策において最も重視されるべきは市場との対話であろう。その金融市場に携わった関係者は、銀行出身の野田委員と日銀出身の白川方明総裁と山口廣秀副総裁ということになろうか。

しかし、前任の水野温氏氏のように直接に金融市場、なかでも債券市場に関わりのある委員が存在しないこととなる。

日銀の金融政策とは短期金利を操作することにより長期金利などに働きかけることを目的にしているはずである。また、今後は財政悪化による債券市場動向などが金融政策に影響を与えることも多くなると思われる。その際の日銀の舵取りには市場との対話も欠かせないものとなり、それには債券市場の動向などにも精通した委員の存在が欠かせないのではなかろうか。

債券市場など金融市場は突如として大きな動きを示すことがありうる。1998年の運用部ショック後はその価格変動リスクは抑えられてきてはいる。デフレ下にあり国債管理政策が機能しているからと言っても、このまま市場が大人しくしていることの方がむしろ考えづらい。

景気判断等には産業界出身の委員の存在は欠かせないであろう。また、当然ながら学識経験者の存在も重要である。さらに日銀出身者が入ることも必要と思う。しかし、ここに債券ストラテジストなど金融市場の直接関係者の存在もやはり必要であり、加えて民主党は反対しているが国の財政に精通している財務省出身者も加わったほうが議論は深まるはずである。

どうも今回の日銀の審議委員人事は、やや産業界と学識関係者に偏り過ぎていることが、今後の市場との対話、特に国債市場との対話において気掛かりである。


2010.3.15「日銀の審議委員に前東京電力副社長の森本宜久氏」

政府は12日に日銀の審議委員に前東京電力副社長の森本宜久・電気事業連合会副会長を起用する人事案を衆参両院に提示した。衆参両院の同意を得れば7月1日付で就任する。今月末に、水野前委員の後任として宮尾龍蔵神戸大経済経営研究所長が就任することで、7月1日からは金融政策を決める政策委員は定数の9人がそろうかたちとなる

これにより政策委員の新体制は産業界出身3人(中村清次氏、亀崎英敏氏、森本宜久氏)、学識経験者3人(西村清彦氏、須田美矢子氏、宮尾龍蔵氏)、日銀出身2人(白川方明氏、山口廣秀氏)銀行1人(野田忠男氏)の構成になる。

今回の人事により、市場に通じているストラテジストやエコノミストらが起用されなかったことはやや気掛かりである。今後は財政悪化による債券市場動向などが金融政策に影響を与えることも多くなると思われる。その際の日銀の舵取りには市場との対話も欠かせないものとなり、それには市場の動向に精通した委員の存在が欠かせないのではなかろうかと思うのだが。


2010.3.12「ギリシャのデモはいずれ日本でも」

ギリシャ全土での官民の二大労組連合組織による24時間のゼネストにより、ギリシャの社会機能はマヒ状態になった。空港、鉄道、病院、学校、銀行などが一斉に休止したそうである。首都アテネでは警官や消防士も参加し約2万人がデモ行進し、投石により警官隊と衝突した。これは財政危機からの回復のため、給与凍結、増税などの緊縮策を進めるパパンドレウ政権に対しての抗議だけに、警備している警察官も複雑な心境とも思われる。

実は先日、霞ヶ関で久しぶりにデモ行進を見かけた。そのデモに参加していたのは昔のデモの第一線にいたような世代、つまりかなりの年配の方々の行進であり乗っていたタクシーの運転手も驚いていた。日本でのデモがニュースで報じられることもなくなってきている。しかし、ギリシャの問題は対岸の火事ではなく、いずれ日本でも同様のことが起こりうる。

日本ではユーロに属しているギリシャのように財政規律に対して明確なルールがない。その分、もし本当に国債が消化できないという事態になったときには、すでに対処のしようがない状態になってしまっている可能性がある。

そういった状況を国民も薄々は感じているものの、本当の意味での危機意識が薄いと思われる。そのために、政府の対応も真剣さが感じられない気がする。政府は6月初めを目途に「成長戦略実行計画」(工程表)を含めた「成長戦略」のとりまとめを行う予定としており、また中期財政フレームについても6月を目処にまとめる予定となっている。

しかし、中期財政フレームに関して具体的な数値目標が出される気配が今のところ感じられない。成長戦略にせよ、菅副総理の発言などを見る限り、デフレ対策として日銀の金融政策頼みの姿勢を強めているようにすら感じる。

具体的な数値目標を出すとなれば消費税引き上げがその前提条件となるため、鳩山首相が在任中には引き上げないとの公約に反することが、数値目標が出せない要因であろう。

危機的な財政の中にあって、こういった公約やマニフェストに縛られて身動きできない現政権に対し、夏の参院選に向けて国民の審判がどのように下されるのか。注意深く見守って行きたい。


2010.3.11「日本国債先物取引が登場して今年で四半世紀」

長期国債先物取引が東京証券取引所に上場したのが1985年10月であり、まもなく四半世紀を迎える。何故、日本の金融市場で初めての先物市場が四半世紀前に登場したのか、当時の様子を振り返ってみたい。

1985年6月、銀行による国債の「フルディーリング」が認められた。これにより、銀行が大量に保有する国債を市場で自由に売り買いできるようになった。ところが、当時はまだレポ取引といった債券の貸借取引が整備されておらず、国債の価格変動リスクをヘッジする手段がなかった。金融市場の国際化や自由化の進展もあり、そこで米国市場などで活発に利用されていた先物取引を、まずは債券市場で導入しようとの機運が高まったのである。

1984年の証券取引審議会公社債特別部会で、市場創設に向けての具体的な検討が行われ「債券先物市場の創設について」と題する報告書が大蔵大臣に提出された。同報告書には債券先物市場の経済的な意義について次のようなコメントがある。
1.債券の保有者、運用者、資金調達者、資金運用予定者に対して低コストで金利変動リスクを回避する有効な手段を提供する。
2.債券ディーラーによる十分な在庫の保有が可能になり、流通市場の安定と拡大に役立つ。
3.引受リスク回避手段として活用できることから、発行市場の安定と拡大につながる。
4.将来価格に関する情報が提供されることで、資産運用手段の多様化・取引の活発化に寄与する。

また先物の仕組みとして、対象を長期国債とすること、標準物方式が望ましいこと、証券取引所において行うこと、そしてディーリング認可金融機関(つまり銀行)を直接参加させること、当面は機関投資家中心の市場とすること、証拠金・値洗い・制限値幅等の投資家保護ための制度を設けることなどが提言された。(東証『債券先物取引市場10年間のあゆみ』より)

こうして、債券先物の参加者としては、東京証券取引所会員の証券会社だけではなく、国債を大量に保有している銀行の参入が、特別会員という資格で認められた。国債の自己売買が認められている金融機関であるディーリング認可行と非会員証券会社のうち、一定の資格条件を満たしたものについては「特別会員」として債券先物の取引所取引ができるようになったのである。

先物の対象(標準物)となる債券としては、発行主体の支払能力が高く、債務不履行リスクが低く、発行量や残存が多く、現物の取引が活発に行われ、現物市場で価格情報が広く継続的に提供されているなどの性質が求められた。これに合致するのは国債、なかでも当時最も発行量や残存が多かった10年の長期国債であった。

こうして1985年10月に日本初の金融先物として長期国債先物が東証に上場したのである(「日本国債先物入門」より)。


2010.3.10「財政健全化目標・新成長戦略と日本のソブリンリスク」

政府は6月初めを目途に「成長戦略実行計画」(工程表)を含めた「成長戦略」のとりまとめを行う予定としており、また中期財政フレームについても6月を目処にまとめる予定となっている。

ギリシャの財政問題が深刻化している中、日本の財政に関しても危機的状況にあることは間違いない。日本における財政健全化が急務であるが、国債そのものが順調に消化されるなどしており、政府や国民はまだ深刻が危機意識は抱いていないようにも思われる。

しかし、ひとたび財政悪化を理由に長期金利が跳ね上がってからの対策では遅すぎる。利払い費用がかさむだけでなく、国債発行そのものに支障が出てしまえば、日銀による国債の直接引き受けによるハイパーインフレが現実のものとなるリスクがある。

そのためにこそ、行なうべきは税収が自然増となるための成長戦略とともに、安定的な税収を確保するための消費税の引き上げとなろう。税収の自然増に対してはデフレ体質の脱却が急務であるが、これは金融政策により頼るには限度がある。日銀に国債を引き受けさせてそれを元に財政出動するなどということは火に油を注ぐ結果となり、財政悪化とインフレを促進させかねない。政府紙幣といった手段も論外である。

個人消費の回復には雇用の改善とともに将来に対しての漠然とした不安を取り除く必要もある。雇用を改善するにはさらなる企業収益の改善も前提となる。リストラ効果なども手伝って企業収益は改善傾向にあるが、その企業収益を雇用や賃金の上昇に結びつけられるだけの企業の体力改善を計る必要がある。

成長戦略については、「カネ」に制限がある以上は「知恵」を絞る必要があり、規制緩和等を含めての構造改革が求められよう。ただし、それは単なるカネの使い道とかではなく、将来を見据えて国が豊かになりうる政策を打ち出す必要がある。これには日本の強いところを磨き上げるなどポイントを見据えた対応の必要がある。

いまのところ債券相場の指標であるところの国債先物や長期金利は非常に安定した動きが続いている。しかし、政府による財政健全化目標・新成長戦略に具体性がないなどした際には、将来の財政懸念が強まり、それが国債価格に波及する可能性は否定できない。


2010.3.9「ソブリンCDSへの規制強化」

日経新聞によると、欧州主要国は財政リスクを取引するデリバティブ(金融派生商品)を対象に新たな規制策を導入する検討に入ったそうである。過大な債務を抱えるギリシャやスペインを狙った投機が債券市場の混乱を招いたと判断し、ドイツのメルケル首相は8日に記者団に対して「制限が必要だ」と表明した。ドイツやフランスなどの主要国で調整を進め、4月中にも規制の大枠を固める方向だ。日本や米国を含めた国際的な取引規制になる可能性もあるとか。

この規制対象として検討されるのは「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」である。つまりソブリンCDSと呼ばれるものであり、財政の健全度を示す目安となるとされるが、元々CDS市場では参加者も限定的なところに一部の思惑的な動きが強く反映されるなどしており、欧州でも短期的な投機資金がCDSを使って債券市場に流入している可能性が指摘されている。

主要国は財政の実態が正確に反映されていないと不満を強めているそうであるが、これは日本についても同様である。

ドイツは欧州市場でCDS取引に一定の制限を設ける方向でフランスなどと調整する考えであり、仏サルコジ大統領も規制には前向きとされ、ユーロ圏財務相会合の議長であるユンケル・ルクセンブルク首相も同調する見込みと日経新聞が伝えている。

すでに金融市場に大きな影響力を持つデリバティブ商品に関しての過度な規制については意見の分かれるところではあるが、ことソブリンCDSについては国債市場に対してはむしろノイズとしての作用しかないと思っており、今回の動きについては個人的には賛同したい。そもそも誰が何を根拠にトレードしているかすら分からないものでもあり、市場関係者もそれほどは意識はしていないはず。ただし、マスコミなどが取り上げやすいものであるため、数値だけが妙な一人歩きをしているものでもある。


2010.3.9「追加緩和期待の長期金利の行方」

3月5日の日経新聞に「日銀、追加緩和を検討」との記事があった。それによると日銀は追加の金融緩和策の検討に入り、3月16日から17日に開催される決定会合で、追加緩和について本格的な議論を始めるそうである。ただし、一部の審議委員が慎重姿勢なため3月の決定は見送り、4月に具体策を詰める可能性があるとした。 この内容については、新型オペの期間を現行の3か月から6か月程度、供給規模を現行の10兆円から拡大することが、議論の中心になるそうである。つまり昨年12月1日の臨時の金融政策決定会合で決定した新型オペのバージョンアップを計る。

すでに新型オペの資金供給額が当初予定の上限10兆円にほぼ達してきたことも、ひとつの要因となっていると思われる。しかし、何故このタイミングで先々の決定予定がスクープされたかたちとなったのかは疑問も残る。

一面トップというからには観測記事ながらもそれなりの裏を取ってのものであるはずである。このタイミングの発表の背景のひしつに「円高」が影響していたものと思われる。 

ギリシャの財政問題などによるリスク回避の動きなどから、3月に入りドル円は88円台前半をつけ、ユーロ円は3月2日に一時120円を割り込んでいた。 昨年の12月1日の臨時会合における新型オペの導入決定もその背景に円高があった。ドバイショックも加わって、11月27日にドル円は一時85円割れとなり、この急激な円高とそれを受けた株安に対し、それが30日の日銀総裁による突然のデフレ発言に繋がった。さらに政府との対立が決定的となるのを回避するため講じた政策が、12月1日の新オペの導入となったとみられる。

昨年の円高の背景のひとつにLIBORの6か月物の金利までもが日米逆転となっていたことも指摘されていた。国債も担保に出来て10兆円規模の新オペで、ターム物とよばれる3か月や6か月などやや長めの金利の低下を促すことが期待されたのである。

今回はすでに追加緩和観測が報じられてしまったことで、3月16日から17日にかけての金融政策決定会合で新型オペのバージョンアップが計られる可能性もありうる。その際には中短期の金利は低下圧力が加わろうが、長期債や超長期債についての影響は限定的と予想される。

そもそも日銀の追加緩和の背景は、円高などというよりむしろ政府への対応と見ざるを得ない。6月の財政健全化目標策定についても政府が具体的な数字が出せるかどうか不透明である。デフレ対策という名目により日銀頼みの姿勢が見透かされれば、長期・超長期債にはむしろ売り要因となる可能性がある。


2010.3.8「追加緩和と円高」

5日の日経新聞では「日銀、追加緩和を検討」との記事があり、それによると日銀は追加の金融緩和策の検討に入り、3月16日から17日に開催される決定会合で、追加緩和について本格的な議論を始めるそうである。ただし、一部の審議委員が慎重姿勢なため3月の決定は見送り、4月に具体策を詰める可能性があるとした。

この内容については、新型オペの期間を現行の3か月から6か月程度、供給規模を現行の10兆円から拡大することが、議論の中心になるそうである。つまり昨年12月1日の臨時の金融政策決定会合で決定した新型オペをバージョンアップを計るようである。

しかし、何故このタイミングで先々の決定予定がスクープされたかたちとなったのか。一面トップというからには観測記事ながらもそれなりの裏を取ってのものであるはずである。このタイミングの発表の背景には、どうやら今回も「円高」が影響していたものと思われる。ギリシャの財政問題などによるリスク回避の動きなどから、3月に入りドル円は88円台前半をつけ、ユーロ円は3月2日に一時120円を割り込んでいた。

この円高を受けての日銀の動きが結果として記事として現れた可能性がある。その理由としては12月1日の臨時会合の背景を再確認すると垣間見れる。当時の様子を振り返ってみたい。

政府がデフレを宣言した2009年11月20日、日銀の金融政策決定会合が開催されたが、日銀は景気判断を上方修正させた。日銀にはデフレを宣言した政府と距離を置こうとの意見が多かったそうである(日経新聞)。

しかし、26日には今年1月21日につけた87円10銭を割り込み一気に86円台に突入し1995年7月以来の水準をつけた。ドバイショックも加わって、27日にドル円は一時85円割れとなった。

この急激な円高とそれを受けた株安に対し、政府は日銀に理解を示す藤井財務相と古川元久、大塚耕平の両内閣副大臣らが、日銀との調整役となり、27日に藤井財務相と白川総裁が都内で極秘会談を行なった(日経)。

29日には首相官邸で、12月2日の首相と日銀総裁の会談でデフレ克服での強調で足並みを揃える段取りを確認したそうで、それが30日の日銀総裁による突然のデフレ発言に繋がったとみられる。

さらに、日銀には金融面から経済を下支えるようにと、政府からもう一押しもあり、政府との対立が決定的となるのを回避するため、講じた政策が12月1日の新オペということになったものとみられる。

藤井財務相は前日に日銀が追加緩和すれば効果ある、量的緩和ということなら経済効果あると発言していたが、日銀が臨時の決定会合を開いてなんらかの量的緩和策をとるであることを知っていたような発言であった。

「量的緩和策」という言葉から2001年3月から2006年3月まで続いた量的緩和策と同様のリザーブ・ターゲットへの移行もあるかと個人的には見ていたが、実際に12月1 日に発表されたものは、国債や社債、CPを担保に0.1%の固定金利で3か月程度の期間で10兆円規模の資金供給資金を供給する新たなオペであった。日銀の白川総裁はその後の会見で「広義の量的緩和策」と発言した。

昨年の円高の背景のひとつは、LIBORの6か月物の金利まで日米逆転となっていたことも指摘されており、国債も担保に出来て10兆円規模の新オペで、ターム物とよばれる3か月や6か月などやや長めの金利の低下を促すことも期待できる。間接的ながら円高に対応し、企業金融支援オペと違って国債や地方債も担保にできることで国債などの保有をしやすくなる利点もある。そして、政府に日銀が協力してデフレや円高に対応する姿勢を示したともいえたのである。


2010.3.5「日銀、追加緩和を検討」

本日の日経新聞一面(13版)に「日銀、追加緩和を検討」との記事があった。それによると、日銀は追加の金融緩和策の検討に入り、3月16日から17日に開催される決定会合で、追加緩和について本格的な議論を始めるそうである。ただし、一部の審議委員が慎重姿勢なため3月の決定は見送り、4月に具体策を詰める可能性があるとか。

何故、4月の決定会合で決めるかもしれないという観測記事がこのタイミングで掲載されたのであろうか。さらに昨日の中短期債への妙な積極的な買いの背景が日銀の金融緩和期待であったことで、この記事の内容との関連性もありそうである。この日銀の動き、というか動くかもしれないという観測情報が事前に流れていた可能性がある。昨日の中短期債の動きは、単純に円高になったからの思惑で買ったというより、ある意味確信犯的な買いにも見えた。

追加緩和については、新型オペの期間延長か規模拡大となる見込みだとかで、これには特段目新しさはない。参考までに新型オペの期間を現行の3か月から6か月程度、供給規模を現行の10兆円から拡大することが、議論の中心になるそうである。

そもそも何故このタイミングで追加緩和観測が流れたのか。菅財務相や亀井金融担当相などによる執拗な日銀へのプレッシャーがあり、日銀としても何らかの動きは見せざるを得ないと認識したのであろうか。また、ここにきての円高の動きも後押しした可能性はある。

ただし、国債の買い入れ増額については財政ファイナンスにくみすると捉えられかねず、そうなれば長期金利の上昇を招く懸念がある。先日の野田審議委員の講演・会見でも同様の発言があった。そのため、追加緩和を行なう姿勢は示すものの、国債買入増額要求については拒否する姿勢を示したのであろうか。政府による財政規律への姿勢がはっきりしない限りは、日銀が国債買い入れ増額を行なうことは確かにリスクがある。

しかしこれでは追加緩和が、景気とかデフレとか円高対応ではなく、政府向けの対応策のようにしか見えない。現実にすでに1年物あたりの金利までかなり低下している中にあって、この追加緩和のよる効果はアナウンスメント効果程度かと思われる。もちろん全く効果がないと言うわけではないが。

はたしてこの記事はあくまで観測記事なのか。情報出所が政府なのか日銀なのかによって読み方も大きくことなってくる。しかし、このような観測記事が出るような事自体、昔に逆戻りしつつあるように思われる。一部の投資家の先んじた動きやマスコミの観測記事では、市場との対話は成り立たなくなる可能性がある。政府も日銀も市場との対話をないがしろにすれば、のちに市場からの反発を受けることもありうる。こういったものにはマスコミも含めて細心の注意が求められよう。


2010.3.4「野田日銀審議委員の警告」

日本銀行の野田忠男審議委員は本日の大津市内の講演で「わが国の長期金利は1%前半で安定的に推移しているが、こうした水準を維持しながら、債務を増加させることを長期にわたって続けられる保証はない」と述べた(以下、ブルームバーグより)。

1999年以降、日本の長期金利は10年以上にわたり2%以内での推移が続いている。だからといってこれからもずっと低位安定が続くという保証などない。政府債務の残高は年々膨れ上がっており、そのリスクは高まっていると言わざるを得ない。

野田委員は「財政バランスの悪化が長期金利を上昇させ、金融政策の効果を減衰させるリスクにも市場の意識が高まっている」と指摘した。事実、ここにきて日本の財政悪化に伴う長期金利の上昇を警戒する声が市場内部からも聞かれるようになってきた。

「事実、ユーロ圏加盟国の中で最も深刻な財政問題を抱えるギリシャでは長期金利が上昇した。財政の持続可能性への信頼がひとたび失われると、市場の評価が急落するリスクを如実に示している」野田委員。

海外の投資家保有が大きな割合を占めるといわれるギリシャ国債と、国内資金で94%補っている日本国債とは状況が異なる。財政悪化による長期金利の上昇といったものは、海外保有の割合が大きいところの方が反応が早い。その分、対処も比較的早くなる。ところが国内でほぼ賄ってきた国の場合に、仮に国内資金で賄えないとなり財政問題が国債の価格下落に繋がった際には、そのショックはむしろ大きくなる可能性がある。

野田委員も、日本が巨額の財政赤字を抱えながらも長期金利が安定している要因として、国債発行のほとんどが国内居住者による需要によって賄われていることを指摘したが、「今後の高齢化などの財政負担を考えれば、先行きもそれを賄うだけの貯蓄超過を国内だけで確保し続けていくことができるか不確実性がある」と述べた。

まさしく同意である。このため政府には財政規律を守るために数値目標を含めて早期の対策を望みたい。危機が現実化してからでは対処のしようがなくなる恐れすらありうる。その結果、禁じ手の日銀による国債の直接引き受けが実施されれば、長期金利のパニック的な上昇すら招きかねない。


2010.3.4「2010年春の個人向け国債の募集開始」

本日より春の個人向け国債の募集が開始される。今回の10年変動金利型(第30回)の初期利子は年率0.53%(税引前)となり前回(第29回)の0.45%をやや上回った。また、5年固定金利型(第18回)の利率も年率0.48%と前回(第17回)の0.44%を上回った。

募集期間は、3月4日〜31日、発行日は4月15日、利払日は毎年4月15日及び10月15日となる。

前回同様に今回も10年変動金利型の初期利子が5年固定金利型の利率を上回り、しかもその差が拡大した。販売そのものについては、引き続きまだ金利が低いことでで今回も低調なものとなりそうだが、ボーナス時期ではないものの前回の販売額を上回ってくる可能性もありそうである(前回の10年変動546億円、5年固定1866億円)。また、10年変動金利型の販売額が多少なり増加してくるかどうかにも注目したい。


2010.3.3「日銀の国債引受を禁じた財政法」

高橋是清は首相や蔵相を歴任し、積極財政によって当時の日本の経済を立て直してきました。1931年再び81歳で蔵相となった高橋是清は日銀引受の国債を発行したのです。それによって得た資金で政府が物資を買うことなどにより経済の状況が回復し、物価も少しずつ上昇しました。政府は日銀が引受けた国債を市中に売却することで余剰な資金を回収するという巧みな政策を実施してきました。

この積極財政の仕組みは、成功するかに見えたのですが、軍部予算の急膨張によってバランスを失いました。すでにインフレの兆候も出てきたこともあり、1936年の予算編成で高橋蔵相は公債漸減方針を強調しました。

しかし、健全財政を堅持しようとする大蔵省と軍部との対立が頂点に達したことにより、軍事費の膨張を抑制しようとした高橋是清は二・二六事件により凶弾に倒れました。

第二次世界大戦による軍事費の膨張により政府の借入金は増大し戦時国債など国債が濫発されました。増税政策も強行されたもの財源は不足したため国債が発行され、これらの国債は公募されずに日銀引受となったのです。このために、日銀の保有国債残高が増加し、日本銀行券の発行高も激増しました。

1945年8月15日に日本はポツダム宣言の受託により敗戦を迎えました。第二次世界大戦後の大きな痛手を蒙った日本経済は、主食の米不足など消費財の欠乏に加え、終戦処理費として巨額の財政支出などが実施されたことでさらに激しいインフレに見舞われました。

1946年2月に政府はインフレの進行に歯止めをかけることを目指し、金融緊急措置令および日本銀行券預入令を公布しました。5円以上の日本銀行券を預金、あるいは貯金、金銭信託として強制的に金融機関に預入させ、既存の預金とともに封鎖のうえ、生活費や事業費などに限って新銀行券による払い出しを認める、いわゆる「新円切り替え」が実施されました。

そして1947年制定された財政法では、「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」(第四条)として国債の発行を制限するとともに、「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。」(第5条)として日銀による国債の直接引き受けを禁じたのです。

これは、戦前において日銀による国債引受などを通じ、安易に公債の発行による財政運営を許したことが戦争の遂行・拡大を支える一因となったことを反省するという趣旨に由来するものとされています。


2010.3.3「ネットが変えるメディアの在り方」

原口総務相は、記者会見で私のツイッターによる災害対策情報提供について、記者の1人よりなりすましの危険もあり不適切ではないかと質問があったことをツイッターで明らかにした。

ここにきて新たなネットの主流のひとつとなりつつあるツイッターは、匿名で入れることから「成りすまし」の可能性がある。実際に鳩山首相がツイッターを開始する前に「成りすまし」が出てきていたことがある。

しかし、原口総務相はかなり以前からツイッターを始めており、その内容から本人であることは5万人を超すフォローは認識しているはずであり、この場合に「なりすましの危険性」はなかった。もちろん自然災害や事件性のあるもので政府関係者を名乗る偽のツイッターが情報操作をする可能性はないとは言えない。しかし、ツイッターに関しては少なくとも固有名が出てくれば、ツイッター内での本人確認が自然発生的に行なわれ、本人かどうか特定するのにさほど時間はかからない。

ツイッターはSNS等に比べてオープン性を持っており、さらにブログで起きるような炎上も起き難い仕組みとなっている。特定のつぶやきに対して攻撃しようにも、直接攻撃する術はない。ただし、書き込み本人がフォローしている人が反論すればそれは書き手に繋がるが、それは攻撃といったものとはなりえず、悪質なものならばフォローを解消してしまえば済む。つまりは、情報伝達手段としてのツイッターは、これまでのネットのコンテンツに比べ、匿名での投稿を可能にしながらも、実名での投稿でもブログなどに比べてリスクは比較的少ない。

原口総務相への質問者には特に他意はなかったのかもしれないが、それはメディアそのものの危機意識から出た質問のようにも思われる。つまり、これまで政府高官からの発言は常にメディアを通じて我々は見聞きしていた。しかし、それが直接、ツイッターといった手段で発言内容が伝われば、時間的な速さばかりでなく、マスコミというフィルターを透すことなく、直接的に一般人が入手可能となる。これは今後、ツイッターがメディアの在り方自体を変える可能性を秘めているということの表れではなかろうか。


2010.3.2「日銀頼みのデフレ対応のリスク」

3月1日の衆院財務金融委員会において、菅直人副総理兼財務相は自民党の山本幸三氏の質問に答え、目指すべき物価上昇率の水準について、「(コアCPIの)プラス1%、ないし、もう少し高めの目標でいっても良いのではないかという認識を持っている」と語った(以下、ブルームバーグ記事より)。

いつまでに目標を達成すべきかを問われ、「欲を言えば(昨年11月に)デフレ宣言をして、今年いっぱいくらいには何とかプラスに移行してもらいたいと感じている」と述べたそうである。

また「日銀においても、やり方についてはそれぞれ独立した判断があるのは当然だが、より努力をお願いしたいと言うのが率直な気持ちだ」とも述べた。

政府としても努力を一層していきたいとしているものの、1年以内に簡単にデフレを解消する手段などあるのであろうか。

これに対して、亀井金融相は「金融政策だけでデフレを解消できるかと言うと、私は無理だと思う」と言明した。また、「政府が財政出動を含めて需給ギャップを解消していく努力をしなければ、日銀の責任だけで解決できる問題ではない」と語った。さらに。インフレ目標の導入について「数値目標を設けたところで、数字通りに経済、物価は動いてくれない」と述べており、これらについては日銀の白川総裁も同様の発言をしており、ある意味正論ともいえよう。

ただし、亀井金融相は「日銀も政府が大胆な財政出動をしていくときに協力できる点がある」と指摘し、国債について「日銀が市中から買い入れていくだけでなく、直接国債を引き受けて財源を作るということをやったら良いと思う」と述べた。

菅財務相の発言も暗に日銀にデフレ対策を押し付けているように感じられるが、亀井金融相の発言はデフレに対する認識は正しいかもしれないが、その対策として財政法で禁じられている日銀による国債の直接引き受けを要請するというのは、いかがなものであろうか。

1998年末に債券市場では国債の急落があり、これは運用部ショックと呼ばれた。この長期金利の上昇への米国金融当局からの危惧が伝わると、当時の日本の政府関係者からは日銀の国債引受を要請する声が上がったこともあった。

ただし。政府の発行した国債を日銀が直接引き受けるのは、財政法の第五条にもあるように禁じられている。「すべて公債の発行については日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない」とある。これは戦前の日銀の国債引受が戦費調達等により財政支出の無制限な膨張につながり戦後のハイパーインフレを導いたことが教訓となっている。ニ・ニ六事件では日銀の国債引受を実行しながら、それに歯止を掛けようとした高橋是清蔵相が暗殺された。日銀による国債の直接引き受けはまさに「禁じ手」なのである。

ひとたび禁じ手を使ってしまえば、それは歯止が利かなくなるのは必然である。特にこれだけの債務を抱えている以上、この打ち出の小槌を振り回し、国債は乱発され、その挙句、国債は信用力を失うとともに、ハイパーインフレを招くであろう。だからこそ財政法で禁じられているのである。日銀頼みのデフレ対応は大きな危険性を抱えることになってしまう可能性がある。


2010.3.1「財務省の国債金利情報の提供について」

3月2日から財務省は、主要年限の国債金利を財務省ホームページに掲載する。財務省のホームページにある「国債金利情報の提供について」(http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/p220226_1.pdf)より、その概要を確認したい。

金利種類は半年複利金利(半年複利ベースの最終利回り)となる。年限は1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、15年、20年、25年、30年、40年。

算出方法としては、設定したグリッド毎に個別銘柄を選定し、個別銘柄の実勢金利を接点として、3次スプライン関数を用いて補間することによりイールドカーブを形成し、そこから主要年限毎の金利を算出する。

使用する市場データは、公社債店頭売買参考統計値。

年限別金利(半年複利金利)の数値が財務省ホームページに掲載されるが、掲載予定時刻は基準日の翌営業日午前11時頃。データはCSVファイル形式にてダウンロード可能。過去データとしては平成14年(2002年)8月1日以降のデータを掲載。

3月2日(火)よりデータの提供が開始される。

今後の金利分析等にはこの財務省のデータも活用されていくと思われる。特にイールドカーブなどを引く上で、証券業協会や日本相互証券のデータが直接使えない向きには、たいへん便利なツールとなるのではなかろうか。私もあらためてこのデータをエクセル上で蓄積していくつもりである。


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