米セントルイス地区連銀のブラード総裁(James Bullard)は、リサーチペーパーのなかで「米連邦公開市場委員会(FOMC)の(声明にある)長期間との文言は、米経済が日本のような結果(デフレ)に陥る確率を高めている可能性がある」とした。さらに「米国の量的緩和政策は、そのような結果を回避するうえで最善の措置」と指摘した。つまり、一段の米債買い入れを検討すべき、との見方を示した。
ブラード総裁は、FRBによる低金利を長期間維持する確約によって、企業や消費者のデフレ期待が若干高まる可能性があるが、長期間との文言の本来の狙いは「成長と生産を促進させ、それに伴いインフレを上昇させていくこと」と述べた。
ブラード総裁総裁は、米景気が緩やかに回復し、追加金融緩和の必要はないというのが最も起こり得るシナリオと引き続き考えている、としたが、FRBは予想外の衝撃が現実のものとなる事態に備え、追加措置の用意はすべき、と述べた(以上、ロイターより、http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-16508120100729)。
ブラード総裁は、欧州の債務危機を受けたFRBの政策対応に関する市場の見方を取り上げ、「長期間」という言葉のおかげで、金利の正常化はさらに遠のいたと受け止められ予想に反する効果をもたらしていると論じた。さらに、こうした時にインフレ期待を高める適当な手段として、量的緩和の拡大、すなわち長期国債の買い上げを指摘。量的緩和策は米英のほか日本でも採用されたが、日本では長期的な信頼感が生まれず失敗に終わったと述べた(ブルームバーグ)。
日本がデフレに陥った際の量的緩和政策について日銀の検証がある。日銀は「量的緩和政策から抽出された最も大きな緩和効果は、将来にわたる予想短期金利の経路に働きかけるチャネルを通じたものであった。」とし、「量的緩和政策が総じて緩和的な金融環境を作り出し、企業の回復をサポートしたとの見方が多い。」としている。(「量的緩和政策の効果:実証研究のサーベイ」より、http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp06j14.htm)
そして、将来にわたってゼロ金利が継続されるという予想が金融市場の長めの金利や他の金融資産の利回りに影響を及ぼすことによって効果を生み出すメカニズムについて、実証分析結果から、短中期を中心にイールド・カーブを押し下げる効果(時間軸効果)は、明確に確認されたとしている。
量的緩和政策においては、日銀はその時間軸効果らよる影響が大きいとしているが、ブラード総裁は時間軸効果が恒常的な低水準の名目金利を促すことで、逆効果を生む可能性があるとの指摘である。
たしかに長期に渡りデフレが続く可能性を意識させれば、それはインフレ期待どころかデフレの長期化を意識させる可能性はある。これは中央銀行による金融政策の「アナウンスメント効果」によりどのような影響を及ぼすのかという大きな問題提議にも繋がる。アナウンスメント効果よりも、米国債の購入による直接的な量的緩和により、インフレ効果を高めるというのは、実践的ではある。
FOMCでの投票権のあるブラード総裁から、時間軸効果は諸刃の剣であったとの提言が出されたことは、日銀の量的緩和政策の効果をあらためて検証してみる必要もあるかもしれない。時間軸効果は果たして、インフレ期待を強めたのか、それともむしろデフレ期待を強めていたのか。
7月23日に発表された「平成22年度経済財政報告(経済白書)」より、日本の長期金利の低位安定の理由を探ってみたい。
白書では、日本の政府債務残高はG20諸国中、突出して大きく、債務残高は毎年の財政赤字の累積であり、過去からの赤字が積み上がって現在の債務残高ストック財政赤字の拡大は、債券市場における需給悪化を通じ、長期金利の上昇要因となり得ると指摘している。
さらに日本は債務残高が大きいだけでなく、返済能力も現時点では小さい点も指摘している。現在の歳入構造のままでは、こうした膨大な債務残高を返済する能力は乏しいといわざるを得ない。
マーケットが財政赤字のファイナンスに対して疑念を持つようになれば、それは財政リスクプレミアムとしてさらに長期金利を引き上げる要因になる。さらに財政収支の悪化が長期金利の上昇につながると、今度は長期金利の上昇が利払費の増加等を通じて、財政状況をさらに悪化させることにより、負の連鎖が生じることが財政悪化のリスクといえる。
ところが、日本は債務残高の規模が突出する一方、利払負担比率(歳入比)はG20諸国中カナダと並び、最も低く抑えられている。なぜ日本は財政状況が他国に比べて突出して悪 いにもかかわらず、長期金利の低位安定が継続しているのだろか。
その要因としては短期金利の低さとともに、経済成長率と物価上昇率が低いことが挙げられる。特にこの傾向は、90 年代と2000 年代において顕著に見られている。これはつまり、90年代のバブル崩壊による資産価格の下落を背景としたデフレが大きく影響したものとみられる。
短期金利の低さが、景気の弱さや物価上昇率の低さを反映した日銀の金融政策によるものであるとすれば、日本の長期金利の低さは景気の弱さと物価上昇率の低さでその多くが説明できるとしている。つまりはデフレが長期金利の大きな押し下げ要因となっていることを示している。
白書では80年代後半から90年代初めのバブルの生成と崩壊、そして、その後の調整の遅れが、日本の基調的な物価上昇率の低さに影響していると指摘している。さらに輸出寄与度の高さなどがさらに物価上昇率を抑えこむ要因となっているとの指摘もあることで、日本におけるデフレからの脱却は容易ではない。
先進各国では80年代から2000年代にかけて概ね長期金利の水準が低下しているが、その要因は異なっている。短期金利の低下は共通しているものの、経済成長率と物価上昇率の低下が主たる抑制要因になっているのは日本だけという指摘である。それだけ日本のデフレが深刻化し、資金が国債に向かいやすい構図となっていたものと思われる。
ただし、その一方で、近年の財政赤字の拡大が、他国に比して大きな長期金利の押上げ要因になっていることには注意する必要があるとの指摘もあった。これについては、個人的にはやや違和感がある。長期金利は2010年7月に入り、2003年8月以来の水準にまで低下しているのである。参院選による民主党の敗北もあり、今後の財政健全化についてはあまり進展がみられない中での、長期金利の低下である。ただし、2003年6月のように長期金利が1%を大きく下回るようなこともないのも確かである。日本の財政赤字拡大は長期金利の押上要因というよりも、下方硬直性の要因にはなっている可能性がある。
日銀の亀崎審議委員は講演で、現在、日本はデフレの状態にあるとし、その特有の問題点として、支出性向の高い債務者が、負債の実質価値の上昇により支出を抑制するため、景気悪化に繋がりやすい点と、名目金利がゼロ以下にならないという制約により、実質金利が経済の活動水準に見合う水準まで下がらなくなるという面があるとしている。
物価上昇率が低下傾向にあるのは世界の先進主要国・地域において共通の現象ながら、食料・エネルギーを除くベースでみてマイナスが続いているのは、日本だけであり、その主要な理由としては、需給ギャップのマイナス幅の大きさを指摘している。
バブル崩壊後の需給ギャップの大幅なマイナスが、デフレの要因との指摘は、白川総裁も何度となく発言しており、また、今年度の経済白書でも言及がある。
各経済主体のバランスシート調整が長引いて前向きの支出が出にくかったこと、特に金融機関の不良債権処理の遅れが金融仲介機能を弱め、新たな成長分野への資金供給が十分に 行われなかったことが国内需要の停滞に影響したと、亀崎委員は指摘した。
その後も、それまでの長期に亘る国内需要の停滞が、この間に起こった日本社会の人口減少への転換とも相俟って、各経済主体の先行きの成長期待を押し下げたため、前向 きの支出は戻らないまま推移した。リーマン・ショックは、そうした状況に追い討ちをかけるように需要を大きく落ち込ませ現在に至る。
その一方、需要が停滞する中でも過剰な供給力があまり調整されなかったのは、様々な規制や保護政策などにより、需要の変化に合わなくなった様々な生産要素が残存したことにも、その一因があるとしている。
それではこのデフレからの脱却には何か必要なのか。亀崎委員は、需給ギャップを縮小させためには、需要を拡大しなければならず、安全・安心が求められる食料関連分野や、環境関連分野、少子高齢化に関連する分野など、様々な分野に潜在需要が眠っているとしている。
これはつまり、政府の「新成長戦略」を意識した発言と思われるが、潜在的な需要がわかっているならば、何も政府や日銀が動かずとも、すでにその掘り起こしに向けて営利企業たる民間が先に動いているはずである。政府や日銀は自ら掘り起こすのではなく、あらたに需要が創出される環境を整えることが先決ではなかろうか。
日銀は「成長基盤強化を支援するための資金供給」を行っている。これは民間経済主体が新たな需要の掘り起こしや生産性の向上を図っていく際に必要となる融資や投資について、金融機関が自主的に取り組んでいくことを支援するための施策と亀崎委員は発言した。
これは新規需要の掘り起こしにはフォローとなろうが、それが本当にデフレ解消に繋がるほどの効果をもたらすと言えるのであろうか。
亀崎委員は、日銀はプロアクティブに適切な政策を実施していかなければならないと発言したが、確かにリーマン・ショック後の経済ショックなどに対しては、積極的な政策を先んじて取ることで、市場に安心感を与えることは重要である。
しかし、現在の日本のデフレのように長期に渡り、経済を蝕んできたようなものに対しては、金融政策などでは限界があることも確かである。少子高齢化の問題ひとつとっても、これが金融政策で簡単に解決できるものではない。雇用の問題もしかり。
デフレの解消には、政府が少しでも将来の不安を取り除き、少しでも明るい展望を抱かせることも重要である。特に財政については決して健全な状態とは言えないだけに、財政の健全化に向けての強い姿勢を示す必要がある。その上で日本経済の活性化に向けて、規制緩和や必要な構造改革に手を打つ必要がある。それには何も金をかければ良いというものではない。民間の知恵が活かされ、新たな需要の掘り起こしの障害となるものを取り除くだけでも、効果はあるのではなかろうか。
政府は26日に、予算編成に関する閣僚委員会を開き、2011年度予算の概算要求基準の原案をまとめた。成長戦略やマニフェスト(政権公約)関連の新規政策に重点配分する「特別枠」について「1兆円を相当程度超える額」で決着し、民主党が要望した2兆円規模から圧縮。また、各省庁の要求額は原則1割削減とする方針も決めた(ロイター)。
概算要求基準の原案のポイントは、予算総枠を71兆円にしたことと、社会保障費を除いて各省庁の予算を1律10%削減としたこと、1兆円超の特別枠を設け、その配分はコンテストで行うこと、などである。
この1兆円超の特別枠(元気な日本復活特別枠)とは、新たな政策効果の高い政策に重点配分をするためであり、配分については、外部の意見等も踏まえ、政策の優先順位付けを行なう政策コンテストを国民に開かれた形の公開手法で実施する。最終的には総理大臣の判断によって、この予算の配分を決めるとしている。
ここで注意すべきは、政府は自主的な削減上積みを促すために、1割を超えて削減を上積みした閣僚に対しては、削減上積みの3倍まで「特別枠」予算を追加要望することを認めるとの点である(24日付日経新聞)。
追加要望がどれだけ認められるかによるが、これでは実質的な削減にはなりえない。それ以前に、一律10%カットそのものに閣内からすでに異論が出るなど、削減自体の実行力にも疑問が生じる。
そもそも71兆円の枠内で、新規国債発行の発行額を44.3兆円に留めるとなれば、2兆円の特別枠そのものの財源をねん出することも困難となる。社会保障関係費と地方交付税交付金を除く基礎的財政収支対象経費は25兆円弱であり、その10%を仮に削減できたとして、2兆円を超える財源が生まれるが、社会保障関係費の自然増1.3兆円を除くと残りは1兆円程度にしかならない。
以上の点から見る限り、歳出削減そのものの現実性に疑問が残る。具体的な歳出削減についての議論はこれから本格化するとみられるが、予算総枠の71兆円という数字が、あくまで努力目標に過ぎなくなる可能性も現時点では強い。それはすなわち2011年度の新規国債の増額圧力に繋がりかねない。
財政赤字の拡大は、債券市場における需給悪化を通じ、長期金利の上昇要因となり得る。また、マーケットが財政赤字のファイナンスに対して疑念を持つようになれば、それはリスクプレミアムとしてさらに長期金利を引き上げる要因にもなり得る。
財政収支の悪化が長期金利の上昇につながると、今度は長期金利の上昇が利払費の増加等を通じて、財政状況をさらに悪化させる可能性がある。こうした悪循環がまさに財政悪化のリスクである。
日本の政府債務残高はG20諸国中、突出して大きい。債務残高は毎年の財政赤字の累積であり、過去からの赤字が積み上がって現在の債務残高ストックになる。財政面における過去からの負の遺産が日本では突出して大きい。
日本は債務残高が大きいだけでなく、返済能力も現時点では小さい。ここでは、債務残高の歳入比を各国で比較している。いわば、過去の赤字で積み上がった債務残高に対する 返済能力を示しているとも考えられる。現在の歳入構造のままでは、こうした膨大な債務残高を返済する能力は乏しいといわざるを得ない。
しかしながら、日本は債務残高の規模が突出する一方、利払負担比率(歳入比)はG20諸国中カナダと並び、最も低く抑えられている。
日本の利払負担の低さは、金利水準の低下が必要条件となる。さらにいえば、この場合の金利水準とは、10年債などの市場金利だけでなく、過去の債務構造を反映した実効金利水準である。
この実効利子率は、債務残高の増加にもかかわらず低下傾向にある。91年以降、政府債務残高は増加基調にあるものの、実効利子率はほぼ一貫して低下を続けている。日本の財政が、利払負担という点において、いかに低金利に支えられてきたかが明確に示されている。
低水準ではあるものの、実効利子率は2006 年以降、下げ止まりが見られる。2006年に市場金利が上昇したことが影響しているが、他方で、ゼロ金利制約もあって金利の引下げ余地が限られていることも事実である。今後、少なくとも当分の間は債務残高の累増が続く可能性が高いことを考えれば、金利引下げ余地が限られるなか、実効利子率をこれ以上引き下げることは困難であろう。この意味でも、今後の財政リスクとして、長期金利の動向を意識する必要がある。
なぜ日本は財政状況が他国に比べて突出して悪いにもかかわらず、低金利が継続しているのだろか。
日本の長期金利の水準は、短期金利の低さとともに、経済成長率と物価上昇率が低いことで押し下げられている。この傾向は、90 年代と2000 年代において顕著に見られる。また、短期金利の低さそのものが、景気の弱さや物価上昇率の低さを反映した中央銀行の政策を表していると考えれば、日本の長期金利の低さは景気の弱さと物価上昇率の低さでその多くが説明できることになる。
その一方で、日本においては、財政赤字による長期金利の引き上げ寄与が他国よりも大きい。アメリカや英国が90年代や2000年代に財政収支改善を実現したのに対し、日本の財政赤字は拡大基調で推移した。その結果、2000年代において、財政赤字による長期金利の押上げ要因が顕著に拡大している。
各国とも80年代から2000年代にかけて長期金利の水準が低下しているが、その要因は異なる。短期金利の低下は各国共通している一方、経済成長率と物価上昇率の低下が主たる抑制要因になっているのは日本だけ。
財政状況の悪化にもかかわらず、日本の長期金利が低位安定している背景には、短期金利の低さ、実質経済成長率の低さ、物価上昇率の低さといった背景がある。その一方で、近年の財政赤字の拡大が、他国に比して大きな長期金利の押上げ要因になっていることには注意する必要がある。今後、景気の持ち直しが続いていけば、長期金利に対して上昇圧力が生じる可能性が高い。しかし、同時に長期金利の上昇はそれ自体で景気を押し下げる要因ともなり得る。景気の持ち直しとともに財政健全化努力を行うことが、長期金利の安定を持続させるためには重要である。
財政赤字の拡大は長期金利の上昇圧力となっている。その要因の一つに市場における国債需給の悪化懸念がある。しかし、国内に潤沢な貯蓄があれば、財政赤字のファイナンスに対する懸念が生じないことも考えられる。
日本を含む貯蓄超過国(経常黒字国)は、貯蓄不足国に比べ、財政収支が長期金利に与える影響度合いが小さくなる。長期金利に与える影響を推計された係数で比較すると、貯蓄超過国の財政収支の係数は、貯蓄不足国に比べて3分の1程度となっている。潤沢な国内貯蓄が長期金利を抑制する要因になっていることがうかがわれる。
潤沢な国内貯蓄を有する国では、長期金利の動向が景気状況や財政状況に左右される程度は低い傾向にある。我が国の場合、国内の貯蓄超過の存在によって、財政状況が悪化しても長期金利が低く抑えられている面があると考えられる。しかしながら、今後さらに高齢化が進展すると、これまでのような貯蓄超過が続かない可能性も高い。長期金利の先行きについて楽観することはできない。
日本の長期金利の低さの要因として、国債の国内保有比率の高さが指摘されることがある。確かに、日本における国債の国内保有比率は9割を超え、5割程度のアメリカや6割程度の英国など欧米諸国に比べると高い。しかし、その一方で、国内の貯蓄超過と国債の国内保有比率の高さは連動している可能性が高く、必ずしも国内保有比率の高さそれ自体が長期金利を押下げているわけではないとも考えられる。
国債の国内保有比率と長期金利に明確な関係は見られない。例えば、ドイツやイタリアはアメリカよりも国債の国内保有比率が低いが、長期金利はアメリカよりも低い傾向にある。
国債の保有構造は、経済構造や国債市場構造など各国固有の要因が反映されている可能性を考え、各国それぞれの時系列に着目して国内保有比率と長期金利の関係を見ても、明確な相関は観察されない。日本は他国よりも突出して国債の国内保有比率が高いが、常に長期金利が最も低いとはいえない。また、アメリカについては、国債の国内保有比率は50%程度から80%程度まで年によって変化しているが、国内保有比率が高い時期の方が長期金利は高い傾向さえ見られる。
他方、長期金利と国内の貯蓄過不足の関係を見ると、貯蓄超過国(経常黒字国)ほど金利が低い関係が認められる。日本やドイツのような経常黒字国は他国に比べて長期金利が低い傾向にあり、ここで対象とした5 か国においても、前項の分析で見たように、潤沢な国内貯蓄が長期金利の抑制要因になっていることが示唆される。長期金利が国債の需給に影響されると考えれば、長期金利の抑制に重要なのは貯蓄という資金フローが潤沢にあることであり、発行済の国債を誰が保有しているかというストック面での保有構造とは直接的な関係が薄いとも理解できよう。
平成22年度の経済白書では、「財政収支悪化の原因は何か」、「債務残高のGDP比を押さえ込むには何が必要か」、「財政の持続可能性をどう評価するか」といった論点について整理している。
2008年度の財政収支悪化は、循環的要素、つまり景気悪化要因によるところが大きいが、それとともに景気対策などの裁量的財政政策による収支悪化も大きいとしている。2002年度以降の構造的基礎的財政赤字はGDP比で減少してきたものの、2008年度には、急速な景気悪化に対応するため、裁量的支出等が拡大し構造的財政赤字は再び拡大した。その上、2009年度はさらに急速な悪化が見込まれている。
国と地方合わせた歳出総額は、2000年度から2006年度まで前年度比マイナスが続いてきたが、2007年度以降、増加に転じ、2009年度は大規模な経済対策等の影響により、大幅に歳出規模が拡大すると見込まれる。
歳出の中で、社会保障支出は高齢化等の要因によって、義務的・受動的に増加する性質があることで、こうした義務的な支出増をいかに他の支出抑制で賄うかが重要となる。これまでその役割は主として公共投資の抑制が担っていた面がある。
歳入面からみると、2008年度の歳入の大幅減少は、その過半が法人税収の落ち込みによるものである。そして、歳入は2010 年度においても、依然として前年度比マイナスが見込まれている。
そして、日本の基礎的財政収支の変動は、年ごとの振れが大きいものの、その主たる要因はこの歳入の変動であると指摘している。他の先進国では歳入の安定が基礎的財政収支の改善に寄与している点も指摘している。また、日本の経済規模に比した歳入割合は先進国中比較的小さく、財政の自動安定化機能があまり大きくないため、景気悪化時には裁量的な財政出動が必要となる傾向が強い点を指摘している。
日本の現在の財政状況は、自動安定化機能の低さから生じる財政出動ニーズと財政状態の悪化に起因する財政抑制ニーズという二律背反の要請から、常に選択を求められる状態にある点を指摘している。
財政の持続可能性については、日本は現実の基礎的財政収支の赤字幅が大きいものの、財政の持続性確保のために必要な基礎的財政黒字の規模も各国以上に大きいことを指摘している。これは日本では名目成長率が名目長期金利の水準を大きく下回っていることが主因と指摘している。
ただし、成長率と金利の関係の好転に期待するのではなく、堅実な財政収支改善努力を行うことが、財政の持続可能性の安定的な回復には必要であると当然の結論となっている。
平成22年度の経済白書によると、日本のデフレの要因として、需給ギャップのマイナス基調が長く続き、それが結果として構造的なデフレ的体質をもたらしている可能性を指摘している。つまり、日本では90年代に大規模なバブル崩壊を経験し、土地や株価等の資産価格が大幅に下落する時期が続いた。90年以降の土地と株式のキャピタルロスは、累計で1500兆円を超えるほどの大規模な資産価値の下落があった(90年から2008年までの累計値)。
こうした資産価値の下落に伴う不良債権処理や過剰債務削減など、バブルの負の遺産に対応する時期が長く続き、長期間にわたり経済成長率は低い水準で推移し、需給ギャップは多くの時期でマイナスとなった。それと同時に、人々の物価予想も低くなったと考えられる。つまり、80年代後半から90年代初めのバブルの生成と崩壊、そして、その後の調整の遅れが、日本の基調的な物価上昇率の低さに影響していると指摘している。
さらに白書では、日本のように輸出寄与度の高い国ではコスト削減等による物価押下げ圧力が生じやすい面も指摘している。輸出物価は輸出企業の国際的な価格競争力で決まる面があり、価格競争力を維持するためには、輸出企業は国内での生産コストを抑制する必要がある。さらに日本は中国を始めとするアジアの新興国が主要輸出先になっており、生産コストの低い新興国への輸出寄与が高いと、さらに物価上昇率は低くなる可能性も指摘している。また、賃金についても輸出寄与率の高い国ほど一人当たり賃金の上昇率が低くなる傾向が見られる点を指摘した。
このように日本のデフレについては、90年代のバブル崩壊による資産価格の下落が大きな要因であり、さらに輸出寄与度の高さなどがさらに物価上昇率を抑えこむ要因となっている可能性があるとすれば、日本におけるデフレからの脱却は容易ではない。
このように2009年春頃からの景気持ち直しは、デフレ状況の下での持ち直しという特徴がある。ただし、この回復は輸出の回復などに加えて政府の経済対策に負うところが大きい。このため景気は自律的回復とはならず、その足取りは依然として脆弱となっている。
白書では、こうした状況の下、金融政策においては、より一層、物価と景気の両面を見据えた対応が求められているとしている。現在の超低金利政策を長期間継続させる必要もあるとみられ、景気が悪化した際にはさらなる積極的に対応が日銀にも求められよう。
ここ10年以上も長期金利の2%が防波堤のような役割存在となっています。しかし、それが決壊し、長期金利が「悪い金利上昇」により2%を超えて大きく跳ね上がったとき時には、真の意味での国債需給への危機が訪れたというシグナルになります。つまり、これは国債への信認が失われはじめたつつあるということになるのです。
もしも、堤防が決壊し国債への信認が失われたされたとき時には、その経済に与える影響はギリシャ国債の比ではありません。日本の財政悪化の顕在化が抑えられていたのは、これまでの超低金利に支えられていた側面があり、その前提が崩れることで状況は一変します。
まず、日本国債がそのほとんどを国内資金で賄っていることが裏目に出る可能性があります。つまり日本の長期金利が2%を大きく超えてくるということは、国債価格の急落を意味します。国債を保有している銀行や、生損保、年金などが大きな含み損を抱えることとなります。
国債の信認失墜は、当然、日本の通貨である同様の信用力となっている円の価値も失墜させるでしょう。急激な円売りとともに、こちらは海外投資家の保有のも大きい日本株も、当然ながら暴落することが予想されます。
また、長期金利の上昇により、国債の利払い負担が増加することになり、これがさらなる財政悪化要因になります。
ある程度の長期金利の上昇により、米国債やドイツ連邦債などと比較して利回りの上から遜色がなくなれば、海外投資家からの日本国債への買いが入る可能性があります。しかし、格付け会社による日本国債のジャンク級にまで大幅に格下げするなど日本国債への信認は失墜も予想されることで、海外投資家による買い支えもあまり期待できません。
日本国債の消化が困難になるとなれば、これまでの海外の事例からみてIMFの管理下に置おかれる可能性が高いとみられます。しかし、あまりの巨額の債務残高のためで、IMFでも対応しきれなくなるという前代未聞の事例になる可能性もあります。
最後の手段として日銀による日本国債の直接引き受けが実施されることが想定されます。しかし、これはあくまで禁じ手です。一時的にはデフレが解消されるなどの効果もあるでしょうが、財政規律そのものが無視されるかたちとなり、それによるハイパーインフレをいずれ引き起こす可能性が高くなります。そして、戦後のように日本経済そのものがリセットされて初めて、日本の財政問題が解決するとなれば、その負担は国民自身にのしかかって来ることは必然なのです。
このような最悪の事態を発生させる前に、日本国債の信認を継続させ維持し、今後も国債の消化が順調に行われるようにしなければなりません。そのためには、政府は財政規律を守る姿勢を強化し、打ち立てた財政再建に向けた目標を達成させるするための努力が必要となります。
民主党は22日に、平成23年度予算案の概算要求基準に関する提言をまとめ、玄葉光一郎政調会長が菅直人首相に提出した。この民主党提言案には、歳出の大枠は71兆円とするものの、経済成長につながる分野に重点配分する2兆円規模の「特別枠」新設を盛り込んだ。
提言はこの2兆円の使途について、デフレ脱却や雇用拡大などにつながる分野に配分し、その配分方法は各省が出してきた政策を「公開コンテスト」にかけ、首相が最終決定するとのこと(産経新聞)。この考え方については、至極ごもっともで国の予算はできるだけデフレ解消などのために有効活用してもらいたい。ただし、それはあくまで財政に余裕があればという前提である。
提言では社会保障費の自然増分約1.3兆円の要求も認め、地方交付税については22年度予算と同水準の17.5兆円を確保すると明記した。つまり、総枠は71兆円に抑えるとしながら、社会保障費の自然増分約1.3兆円に加え、さらに2兆円の特別枠が今年度に比べて増加する。結局、3.3兆円の増加分は、2010年度で23兆円規模となっている政策的経費から絞り込む必要がある。
特別枠予算の財源を捻出するにあたっては、社会保障費などを除いた政策的経費を原則一律1割程度削減するよう指示する方針のようだが、各省庁からの反対意見も出てくると予想され、これは容易ではない。しかし、政策的経費を絞り込まない限りは、歳出の大枠を71兆円以下にすることは困難である。
提言では、国債発行額は10年度の発行額を上回らないよう全力をあげるとしてはいるが、そもそも国債費を除く一般会計の歳出総額の抑制すら難しい状況になっており、税収外収入での埋蔵金頼りの姿勢は現実には難しくなりつつあり、どこまで国債発行額抑制に「全力をあげる」ことができるのかたいへん疑問である。
消費税の引き上げがすでにトーンダウンしている現政権であるが、財政再建の掛け声も次第にトーンダウンしてくる可能性がある。ここにきて、さらにダウンしてきている長期金利はこの政府の動きを完全に無視続けて良いものであろうか。
バーナンキ議長は21日の上院銀行委員会での証言で、「経済見通しが依然異例なほど不透明であることも認識している」と発言した。さらに「物価安定を念頭に置きつつ、米国の潜在生産力のフル稼働状態への回復を後押しするため、引き続き必要に応じて一段の措置を講じる用意がある」と述べた。
質疑応答では、追加の緩和策としてどのような措置があるのかとの質問に対して、モーゲージ債償還益の再投資、債券の追加買い入れ、過剰準備に付与する金利の引き下げなどを選択肢として挙げた。さらに経済情勢を踏まえると異例の低金利を「長期間」維持することが正当化されるとの見通しを示した。(ロイター)。
バーナンキ議長のこの発言を受けて、21日の米国債券市場では長い金利主体に低下圧力がかかった。追加緩和の可能性に触れたことに加え、時間軸を意識した発言があったことで、10年債利回りは一時2.86%近辺まで低下し、2年債利回りも過去最低水準の0.556%に低下した。10年債利回りの低下幅が大きかったことにより、2年と10年債利回り格差は一時230bpと2009年9月以来の水準にまで縮小した。
バーナンキ議長はデフレについては、懸念要因になるとは思わないと述べたものの、抑制されたインフレが続くと予想していると述べていた。今回はデフレ圧力を意識しての時間軸効果を意識した発言と言うよりも、雇用の回復の遅れや消費者マインドの低下などが意識された上で、不透明という言葉を使ったものとみられる。
ただし、今回のバーナンキ議長の議会証言では、景気刺激策からの出口戦略に関する部分がその多くを占めていた。出口戦略の選択肢としては、米国債の償還資金を短めの債券に再投資することや、住宅ローン担保証券(MBS)の売却、銀行がFRBに預けた1兆ドルの支払準備に対する金利の引き上げなどを挙げていた。
あくまで軸足は景気回復を念頭に置いているものの、景気の先行きには不透明要素も強いことで、追加緩和の可能性も選択肢に置いておくことを示し、議長による慎重な対応姿勢は市場に一定の安心感を与えようとしたものと思われる。さらに、時間軸を意識した発言で米国債券市場は予想以上の反応を示したものとみられる。
スペース配分をみれば出口戦略を意識しているのは明らかながら、政府やマーケットも配慮しての追加緩和や時間軸を意識した発言とも捉えられる。半身の姿勢にいることで、フレキシブルな対応も可能であることを示したのであろう。それはつまり、突発的なことがない限り、当分の間は金融政策については様子見姿勢を継続するとも捉えられよう。
日本証券業界が発表した6月の公社債投資家別売買高によると、短期証券を除く売買高で、都市銀行は2兆8546億円もの買い越しとなった。続いて信用金庫の1兆6972億円の買い越し、生損保8814億円の買い越しと続いた。海外投資家も1871億円の買い越しとなった。ただし、信託銀行は3740億円の売り越しに。
このうち国債の投資家別売買高をみると、都市銀行は短期債を2兆62億円の売り越したのに対し、中期債を2兆7031億円、長期債を4346億円買い越しとなっている。この場合の、中期、長期の区別はあくまで発行時のものであり、実際に購入した残存期間とマッチしない可能性はあるものの、短期債から中長期債に資金をシフトしたことは確かである。また、超長期債については1811億円の売り越しとなっていた。メガバンクが超長期も大量に購入かとの観測も一部にあったが実際には、生保が7494億円、信託銀行が2361億円、さらに農林系金融機関が2288億円ほど超長期債を買い越していた。
また、信用金庫は中期債9595億円、長期債2769億円、そして超長期債も1872億円とまんべんなく買い越しとなっていた。地方企業などからの資金需要が乏しくなり、運用資金を国債に振り向けざるを得なくなり、超長期債を含めて買い圧力を強めていることが伺えた。
政府は本日の閣議で2011年度予算の概算要求基準(シーリング)の骨子をまとめる。国債費を除く一般会計の歳出総額は今年度並みの71兆円とし、その範囲内で歳出を組み替える方針を示す方向と伝えられている。
民主党政権は首相直属の国家戦略室を設置し、ここで予算の基本方針「財政運営戦略」などを策定してきた。しかし、国家戦略室の機能強化を目指した法案が参院選の民主党敗北により成立が困難になり、実質的に国家戦略室の機能が縮小される。
2011年度予算の概算要求基準策定には、国家戦略室の代わりに仙谷由人官房長官や玄葉光一郎民主党政調会長の二人を関与させ政治主導の形とするとしているが、実質的には財務省が主導するのではとの見方も強まりつつある。
その2011年度の予算編成における最大の注目点が、菅首相が繰り返し述べていた新規国債の発行額を2010年度(44.3兆円)以下に抑制できるかどうかである。野田佳彦財務相は新規国債発行額を今年度当初の44.3兆円以下に抑制する「精神」は変わらないと述べたそうだが、現実にはかなり厳しい数字であることに変わりはない。
財務省の「後年度影響試算」では、もしマニフェストの新規の実行を凍結しても、社会保障費の自然増(約1兆円)などで、2011年度予算は2010年度比で1.6兆円多い93.9兆円に膨らむ見込みだが、これを政府は今年度並の92兆円規模の想定としているため、かなりの削り込みが必要となる。
また、国債発行を除いた税収と税収外収入については2011年度は、税収が38.7兆円、その他収入が3.9兆円と2010年度比5.4兆円減の42.6兆円となるとの試算となっている。特にその他収入については、すでに埋蔵金に頼るには限度があることで、大幅な減額となる見込みである。
ちなみに税収について、財務省が29日発表した2009年度の国の一般会計決算概要によると国税収入は38兆7330億円となり、第2次補正予算での見積もりの36兆8610億円を約1.9兆円上回った。この上振れにより1.5兆円分の国債発行を取りやめることとなり、その分のバッファーはできることとなる。
それでも、2011年度の国債発行額を今年度以下に抑えるのはかなり難しい。参院選での民主党の敗北により、消費税引き上げよりも地方を意識してのバラマキ型の予算となる可能性も出てきている。
いまのところ債券市場では、財政リスク・プレミアムは完全に無視された格好となり、長期金利は1.1%割れともなっている。しかし、2011年度の国債発行額が結局、50兆円規模に膨らむようなこととなり、先行きについても財政再建の動きが頓挫するようなことが予測されるようなことになれば、それはいずれ国債への信用力に影響してくるはずである。
日本の長期金利は7月1日に1.055%に低下した。その後は高値警戒感もあり、利益確定売りが入り1.1%台に乗せたが1.2%には届かずに、再び1.1%を割込む展開となった。
日銀は4月に発表した展望レポートの中間レビューで010年度の実質GDP成長率見通しを4月の+1.8%から+2.6%に引き上げた。政府も6月22日に2010年度の実質GDP成長率見通しをプラス2.6%と昨年末時点から1.2ポイント上方修正しており、政府・日銀ともに足元の景気認識についてはしっかりとの認識である。
また、11日の参院選で、与党は参院の過半数維持に必要な議席数121議席を割り込んだ。これにより政府による財政再建の行方に不透明感が強まった。参院選の結果を見て、日銀への政府からの圧力が増加するとの見方があるものの、日銀がすぐに追加緩和に動くとは思えない。
このように国内要因から見る限り、日本の長期金利に低下圧力が加わることは考えづらい。それにも関わらず長期金利が1%近辺で低位安定しているということは、別の理由が存在していよう。
そのひとつが、米国での景気減速懸念による長期金利の低下である。ここにきての米経済指標には景気の減速を示すものが出てきている。また、FRBが経済見通しをやや下方修正し、さらに米国でのデフレ観測も強まりつつある。このため米10年債利回りは3%を割り込み、2年債利回りは過去最低水準まで低下している。この米国での長期金利低下が日本の長期金利の低下を促す要因のひとつとなった。
また、米景気減速観測により、米株が下落し、円高ドル安が進行したことで、東京株式市場が下落基調となっていることも、日本の長期金利低下圧力となっている。
それとともに、今回の日本の長期金利低下には、銀行などによる長期債や超長期債への買い圧力が大きく影響している。貸出が伸びず余剰資金を抱えた銀行などは、より高い利回りを求めて長期債から超長期債への購入を増加してきている。参院選などのイベントを控えて買い控えていたことも考えられ、予想以上に買い余力があったともみられる。
ただし、過去に2003年6月のように債券相場の急落も経験してきていることで、買いのスタンスも慎重になっている。その分、堅調相場が続く要因ともなっている。
この日本の長期金利低下が、どの程度まで、さらにいつまで継続するのか。いまのところ反転の兆しはない。ただし、米国市場など外部要因に影響をうけている以上は、米長期金利の動向が大きなポイントとなりそうである。
日銀は15日の金融政策決定会合で、4月に発表した展望レポートの中間レビューを行ない、2010年度の実質GDP成長率見通しを4月の+1.8%から+2.6%に引き上げた。これは新興国の一段の高成長などを背景に上方修正したようである。2011年度については、4月の見通しの2.0%から1.9%にやや下方修正している。
ちなみに、6月22日に発表された政府の2010年度の実質GDP成長率見通しはプラス2.6%で、昨年末時点から1.2ポイント上方修正した。11年度の実質成長率は2.0%増を見込むなど、政府と日銀の見通しはほぼ一致しており、ある意味、歩調を合わせたように見えなくもない。
これに対して米国はFOMC議事要旨で経済見通しがやや下方修正されるなど、経済の減速懸念が強まっている。しかし、アルコアやインテルの企業決算が思いのほか悪くなかったことから米株自体の下げはいまのところ限定的。それに対し外為市場で一時ドル円が87円を割込むなどの円高を受けて日経平均は9400円を一時割り込んでいる。
日本では景気見通しはしっかりながら景気の先行指標のひとつと言える株が下げているのに対し、米国では景気見通しはあまり良くないもののさほど株はあまり下落していない。このちぐはぐな動きは何を示しているのであろうか。
15日付の日経新聞によると、日銀は交易条件指数の公表を今年の秋を目処に取りやめると発表した。交易条件指数とは産出物価指数を投入物価指数で除したもの(日銀)、産出物価つまり販売価格を、投入物価つまり仕入れのコストで割ったものである。
交易条件指数の動きから短期的な収益環境の変化に関する情報を得ることができるとされているが、収益環境が改善しているにも関わらず指数が悪化しているケースがこれまでにも見られていた。原材料価格はコストの一部でしかないことで、元素医療各より製品価格の上昇率が小さくても企業の採算は悪化していない場合がある。
日銀のサイトでも、「交易条件の考え方は、(a)あくまで基準時点の投入・産出構造を前提としている(技術革新や製品構成の変化を考慮していない)こと、(b)実際の企業収益には、減価償却費や人件費、金融費用等の固定費負担の多寡が大きく影響する(生産量が増えれば、固定費負担は小さくなる)こと、(c)財以外の投入価格(サービス価格)の動向を考慮していないこと、等の限界がある点には注意が必要です。」(http://www.boj.or.jp/type/exp/stat/pi/faqiopi02.htm#4-3)。
このように指数と実態のズレはすでに市場でも意識されており、上記の要因などにより、交易条件指数の変化が市場に影響を及ぼすことはあまりなかった。このため、今回の公表とりやめによる影響は限られたものとなりそうである。
また、内閣府は8月16日に発表する4〜6月期GDP速報値から国内総生産(GDP)統計の推計方法を見直すことを発表した。これまでのGDP統計では、速報値と1か月後に発表される改定値では、設備投資などの伸びにズレが生じることがあった。
特に2009年7〜9月期のGDPでは改定値が速報値に比べ、設備投資などの要因により、大幅な下方修正となっていた。速報値では実質GDPの年率換算がプラス4.8%となっていたが、改定値ではプラス1.3%に大幅下方修正された。この要因としては、速報値での設備投資の推には鉱工業生産指数の資本財出荷指数などが推計のための指数なっていたとされ、こちらが大幅増となった。しかし、その後に発表され改定値の推計となる法人企業統計調査での設備投資大幅マイナスとなっていたことが要因とみなされた。
日経新聞によると、今後は設備投資の速報値を推計する際に、利用するデータの一部から不規則な変動を取り除く。改定値の精度を高めるため法人企業統計で新たに調査対象となった金融・保険業のデータを使うことを決めたそうである。
ただし、やはりズレが大きいと指摘されていた民間在庫投資については今後の検討課題とし持ち越しとなったそうである。
GDPはもちろん経済指標として最も注目されるもののひとつであり、この推計方法の見直しには注意が必要になる。
今日は自宅のシロアリ駆除を行ってもらった。シロアリ駆除は問題のある業者もあるが、今回は築15年の点検のもとに自宅の建設業者である住友林業に依頼したのである。数日前に住友林業の担当者がまず点検したところ、とりあえずシロアリが入った形跡はなく一安心。しかし、すでに以前の薬の効果は切れつつあり、この時期での薬剤散布を勧められた。木造建築のため、やはりシロアリは恐い。多少の出費にはなるものの致し方ない。床下に薬剤を散布するとともに、玄関など地面に直接接しているところは穴を開けて散布する。次回の散布にはこの穴を再利用するのだとか。ちなみにシロアリに食われた木材はバームクーヘンのように細かくボロボロになるそうである。
参院選の結果を見て、日銀への政府からの圧力が増加するとの見方があるが、果たしてそうであろうか。みんなの党の躍進により、インフレターゲットを含めて日銀への風当たりが強まるとの見方がひとつある。また、ねじれ国会により民主党政権そのものの基盤が緩みかねず、今後の経済政策などに支障をきたすのではないかとの見方がある。
しかし、みんなの党は民主党と連立を組む意思はなく、あくまで政策ごとのパーシャル連合を模索する考えのようである。その際に、日銀法改正まで言及しているみんなの党が、金融政策について提言はするかもしれないが、それで日銀が動くことは考えづらい。選挙前からすでに国民新党などから日銀に対する要求があったが、それで日銀が動いたという形跡はない。
さらに政権基盤の緩みによる経済政策の肩代わりを日銀に求めるのではないかとの見方もある。経済の先行きに対しての懸念が強まった際に、財政が動けないとなれば金融政策に期待せざるを得なくなる可能性はある。しかし、日銀の足元景気判断を見る限り、すぐに行動を起こすような状況にはない。米国景気の二番底懸念も出ていたが、それも思惑的な動きであった可能性もある。
しかし、世界経済の先行きについてはまだ不透明感が払拭されていないこともあり、政府の経済対策の期間切れなどにより、日本経済も緩やかな景気回復シナリオが崩れる可能性はないとは言えない。また、外為市場で急速な円高進むというシナリオもないとは言えない。その際には、政府が動きづらいとみて、先んじて日銀が行動を起こすことは考えられる。その際には、新型オペの金額の増加や期間の延長となる可能性が高いと思われる。
しかし、それが例えばインフレターゲットの導入などであることなどは、これまでの日銀の動きなどを見る限りはありえない。また、もしも日銀法改正などを行うとすれば、その理由を明快にし、国民に問う必要がある。なにゆえ中央銀行には独立性を求められているのか、中央銀行の存在意義とは何であるのかをあらためて考えた上で行うべきであろう。
政権交代後、初の大型国政選挙となった第22回参院選の結果は、改選121議席(選挙区73、比例区48)のうち、民主党は44議席と改選前の54議席から10議席を失い、国民新党と合わせた与党で参院の過半数維持に必要な議席数121議席を割り込んだ。これにより国会での「ねじれ」状態が復活することとなり、今後の政局運営に大きな影響を与えることとなる。
今回の民主党の敗北は、菅総理による消費税発言がきっかけとされるが、それが主因ではあるまい。同じく消費税の引き上げを公約に掲げた自民党が改選前の71議席から84議席に躍進している。ただし、菅総理が10%の消費税引き上げを主張したあとの、発言のブレを嫌気したことは確かであろう。
今回の民主党の敗北はある程度、予想されていたことでもあり、株式市場など金融市場への影響は限定的と思われる。しかし、先行きの政局に対しての不透明感の強まりにより、今後、マーケットに大きく影響を及ぼす可能性がある。特に9月の民主党の総裁選の結果次第では、日本の首相がまた変わる可能性もある。すでに日本の財政そして経済の立て直しは待ったなしの状況にあり、海外投資家もその行方を虎視眈々と睨んでいるはずである。
特に日本の財政再建については、G20での例外措置を受けたように、海外からは見放された格好にすらなっている。国内資金で賄えるからといっても、時間的猶予がそれほど残されているわけでもない。今後は日本の財政再建の道筋をしっかりとつけられるのかどうかが大きな焦点となるはずである。
衆院解散がなければ、あと3年間は大きな国政選挙はない。しかし、日本の財政そのものはここ2、3年のうちに大きな転換点を迎える可能性がある。その中にあって、政権そのものの基盤を確固たるものしなければ、財政改革等の進展は望みようもなく、さらに危機的状況を迎えやすくなる。日本国債の価格が安定して推移しているうちに改革を推し進めなければ、政権そのものどころか日本を支える基盤自体が揺るぎかねない。
財務省が8日に発表した5月の国際収支統計(速報)によると、中国が5月も日本国債を買い越しており、その金額は中長期債が404億円、短期債が6948億円となり、合計で7352億円となった。これは統計を公表し始めた2005年1月以来、単月では過去最高となる模様。
ちなみに、この数字は財務省のサイトの中の国際収支(http://www.mof.go.jp/1c004.htm)の中の、対内・対外証券投資(速報)のPDFファイルの対内証券投資(地域別内訳)に記載されている。
すでに今年1月から4月の間の中国による日本国債の買越額は短期債で5177億円、中長期債は234億円の買い越しとなっていたが、5月単月で1〜4月分を短期債、そして中長期債ともに上回っていた。
また、6月はさらに中長期債の買い越しが増加しているとの市場観測もあり、中国による日本国債への投資が積極化しつつあることが伺える。今後の海外投資家による日本国債投資を見る上で、急激に中国が存在感を強めつつある。
ロイターによると欧州銀行監督者委員会(CEBS)は7日、ウェブサイトに声明を発表し、欧州の銀行91行を対象にストレステスト(健全性審査)を実施していると発表。ストレステストで審査中の91行は、EU銀行セクターの65%に相当。
2010年と2011年について、2つのマクロ経済シナリオ(基本的シナリオ・景気悪化シナリオ)を使い、銀行ごとに審査する。「景気悪化のシナリオ」では2年間のEUの域内総生産(GDP)が欧州委員会の見通しを3%ポイント下回ることを想定。国債ショックについては、2010年5月上旬に類似した状況を想定。
ギリシャ国債の価格が約17%、スペイン国債価格が3%それぞれ下落するシナリオを想定する可能性があるそうである(この部分、ブルームバーグより)
結果は2010年7月23日、全体および銀行ごとに開示。
想定がやや甘いのではとの見方もあり、開示された内容はある程度の健全性を示すものとなると予想される。このため、ストレステストの結果による市場への影響は限定的なものにとどまると予想される。
7月3日の公開初日に「踊る大捜査線3」を観てきた。事前に席を予約できるシステムの劇場で予約開始直後に申し込んだ。「踊る大捜査線2」が実写邦画史上最高を記録しており、当然の如く、公開初日の土曜日で満席と思ったからである。ところが、11時半スタートの部の劇場の席はなんとか7割方埋まったか埋まらなかったか程度であった。ただし、その後の報道によると、全国ではこの日の正午現在で前作対比で102%の入りであったそうである。実際には好スタートを切っていたが、地方の劇場では混雑なく観られたと言う事のようである。
しかし、映画の出来そのものは期待感があまりに強かったこともあろうが、やや不満が残るものとなった。事前から一番気になっていたのが、音楽担当が前作までの松本晃彦から菅野祐悟に変更されていたことである。もちろんメインテーマなど松本氏の曲はそのまま、もしくはアレンジされて残っていたが、菅野氏による曲も多く使われていた。それが自分の中では大きな違和感があった。踊るの世界観は君塚脚本、本広監督とともに松本音楽が柱になっていたはずである。スピンオフ作品はさておき、本線の部分で柱のひとつが欠けてしまったと感じた。
青島が係長になるなど7年の月日により、今度の踊るは前作までと異なる面は多かった。もちろん和久さんがいなくなってしまったことによる存在感の欠如はなかなか埋まるものではないが、それを新キャストでカバーしようとの試みでもあった。ただし、新キャストが多くなり、これまでのキャストの連携が薄れてしまったと感じるところにも不満があった。袴田課長を演じた小野武彦氏が、スリー・アミーゴーズではなく刑事課長として青島たちと絡みたかったとの発言が雑誌にあったが、まさにほしかったのがそこの部分であった。
とは言うものの、2時間を超す上映時間ながらまったく飽きさせず、楽しまさせてくれたことも確かである。昔の「踊る」への思い入れが強すぎて、音楽担当の変更や、昔のメンバーの絆が意識されてしまった面もある。また、今回からあらたな踊るがスタートとも思われる内容であり、その分の物足りなさも感じさせたこともややマイナス要因となった気がする。しかし、その分、次回作への期待感にも繋がることも確かである。ただ、できれば次回作の音楽担当は松本氏に戻してほしい。
5日に日銀の外山金融市場局長のロイターとのインタビュー記事の内容が短期金融市場や債券市場に一時的ながら影響を与えた。
ロイターとのインタビューの内容 http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-16139720100705
特に東京銀行間取引金利(TIBOR)について「実勢レートに比べると、相応のかい離がある」との認識を示したことが伝わると、ユーロ円3か月金利先物相場が上昇した。これを受けて先週末比マイナスとなっていた債券先物は一時前週末比8銭高の141円68銭まで買われる場面があった。
外山局長の発言は、TIBORを呈示している銀行(リファレンス・バンク)に向けて、呈示レートを引き下げるべきことを示しているとも受け止められ、つまりは金利低下を促す発言と捉えられたことから、金先や債先の買いを誘ったかたちとなった。
この部分のインタビューの内容を見ると下記のようになっている。
「日銀は市場からサンプル的に聴取しているユーロ円の実勢レートに比べると、相応のかい離があるレートになっているのは否定できない。その背景については、金融機関の貸出の基準金利として対応されているといったようなことが、現在の低金利局面において、提示レートを下げにくくしている大きな背景になっているのではないか」
「邦銀は預金でほとんどの資金を調達しているということで、市場性の資金に依存する程度は極めて低い。マーケットのレートと預金金利が十分開いているというような局面においては、信用リスクプレミアムや経費、収益の上乗せ部分を市場金利と預金金利との差によって十分カバーできるが、金利が低下してくると預金金利をそれ以上下げるのは難しくなり、その差が十分取れないということになる。したがって、信用リスクプレミアムや経費、収益を確保しようとするとどうしてもTIBOR自体を実勢のマーケットレートよりも高く提示するという金融機関の判断が働くのかもしれない」
つまり、TIBORが金融機関の貸出の基準金利として対応されていることで、すでに超低金利下にあって預金金利の引き下げが困難となり、銀行の収益源となる貸出金利と預金金利の利鞘が小さくなってしまう。このためTIBORを呈示しているリファレンス銀行は、利益とともに必要経費をカバーするためにTIBOR自体を実勢のマーケットレートよりも高く提示しているのではないかとの見方を外山局長は示した。
この上で、外山局長は下記のような発言をしている。
「TIBORあるいはLIBORが実勢の取引レートからかい離していると、他の市場のレート形成にもゆがみをもたらしかねない。したがって、市場機能の観点からすればTIBORが適切に形成されることを期待したい」
確かにスワップ取引などに影響を与える可能性はあるものの、外山局長も指摘していたようにこのTIBORの割高とみられる部分は、ある意味、超低金利政策の弊害でもある。しかし、仮に日銀が適切とみているTIBORレートに誘導するとなれば追加の資金供給策が必要となるが、それはそれで銀行の利鞘をさらに縮小させてしまう結果ともなる。
実際のTIBORレートは徐々に下げつつあったこともあり、今回の外山局長の発言内容は市場ではサプライズと受け止められた。しかし、これにより日銀がTIBORレートに誘導する政策を取ることも考えづらい。超低金利下にあっての銀行の事情は理解しており、あくまで「市場機能の観点」からの「期待」にとどめているのではと見ておくべきであろう。
<7月6日付けの日経新聞の朝刊によると、今年に入り中国が日本国債の購入を拡大させてきており、1〜4月だけで累計5410億円もの買い越しとなった。その多くは期間1年以内の短期債とみられる。
財務省によると、2005年以降の証券売買で買い越しとなったのは2005年の2538億円と2006年の2091億円、2008年の378億円の3年で、今年はすでに1〜4月だけで過去最高だった2005年の2.1倍の買越額を記録した計算となる。
今年1〜4か月間の短期債の買越額は5177億円で、中長期債は234億円の買い越し。4月単月でみると買越額は1978億円で、海外勢では英国に次ぐ2位となっているそうである。
中国からの国債買いは急拡大する外貨準備の運用が大半とみられ、人民元相場を維持するための中国人民銀行がドル買い介入により、今年3月末時点で外貨準備高は2兆4471億ドルまで積み上がっている。
外貨準備を管理する国家外貨管理局は運用方針について「ドル、ユーロ、円など主要通貨のほか新興国の通貨で構成する」としている。2008年のリーマン・ショックをきっかけにドルに偏った外貨準備の運用を「多様化」する方針を表明し、それが結果としてユーロの比率を高めることとなった。しかし、ギリシャの財政問題により今年に入りユーロが下落したことで、外貨準備の増加分をユーロからドル、そして円に振り向けたことで、中国による日本国債購入の増加につながったとみられる。
日本国債の全体に占める海外の保有比率はわずかに4.6%に過ぎない(3月末現在、国庫短期証券は除く)。ここにきて海外による保有比率は低下傾向にあったことで、中国が中長期債含めて投資を増加させてくると、海外保有比率の低下に歯止めがかかる可能性がある。
中国はすでに米国債の最大の保有国になっている。日本国債についても今後は中国による保有を意識しておく必要がある。日本国債への海外投資家による保有増は、保有層の裾野を広げる意味で必要不可欠である。特に国内資金でカバーできる余裕が残り少なくなりつつある中、いずれは海外投資家にある程度頼らざるを得なくなることで、海外の保有比率の引き上げは大きな課題である。その中にあり、中国への依存度は今後も大きくなる可能性がある。
海外保有が高まると日本国債の売却のリスクが高まるとの見方もあろう。しかし、日本国債の安定消化こそが重要であり、国債への信認を維持させられれば海外投資家による財政破綻を意識した売りなどは抑えられるはずである。
平成22年6月22日に閣議決定された「財政運営戦略」について確認してみたい。http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2010/100622_zaiseiunei-kakugikettei.pdf
基本的な考え方の「経済・財政の現状」で、財政状況が深刻さを増してきているにもかかわらず、改善を先送りできた理由として長期金利が安定していたことをあげている。その長期金利の安定の背景として、「豊富な国内貯蓄の存在や、長引くデフレ・景気低迷を反映した企業部門における資金需要の減少、家計・銀行・公的セクターなどによる国内における安定的な国債保有構造といった、我が国独特の要因」を指摘している。
「こうした環境にいつまでも安住していられるわけではない」ともしており、「高齢化による貯蓄率の低下というマイナス要因」や「今後景気の回復が続けば、設備投資の活性化等により、企業部門の資金需要は回復」し、それが長期金利上昇要因となることを指摘している。
ただし、一番リスク要因はこれらよりも国債残高をカバーできる国内資金には限度があり、そこに接近しつつある点でなかろうか。そこを見逃すべきではない。
「我が国財政は、税収が歳出の半分すら賄えず、国及び地方の長期債務残高も今年度末には対GDP比181%(うち普通国債、地方債、交付税及び譲与税配付金特別会計借入金の合計である公債等残高は171%)に達し、OECD の統計においては純債務残高も本年末にはGDP比で100%を超え、さらに、これらは拡大し続けると見込まれている。」
このあたりの数字は日本国民としては常に頭の片隅に置いておく必要があろう。
「このような状況を放置して、ギリシャ等のように、国債市場における我が国の信認が失われ、その結果、金利が大きく上昇し、財政が破綻状態に陥るようなことがないようにしなければならない。仮に、そのような状態になれば、言わば国としての財政自主権が失われ、また、社会保障等の公共サービスの水準が大きく低下し、我が国経済や国民生活に多大な悪影響が生じることとなる。」
日本の世界経済に占める位置を考えれば、日本の財政破綻による影響はギリシャ問題などの比ではなかろう。さらに日本国債が国内資金でそのほとんどをカバーされているという特殊事事情を考えれば、日本国債への信認失墜は国内金融・経済に破壊的な影響を与えうる可能性がある。国内の金融資産が円資産から海外資産へ急激にシフトするとなれば、国債と同等の信用度となる円の失墜にさらに追い打ちをかけてこよう。「多大な悪影響」はかなり深刻な影響となる可能性がある。
「しかし、悲観する必要はない。国債市場から強制されることなく、我々が自主的に対応できる今のうちに、なぜこれまで我が国の経済が低迷し、財政の悪化が続いてきたのか、その原因を正確に把握し、政治の強いリーダーシップによって改革に取り組めば、我が国は十分に立ち直ることができる。まだ間に合うし、間に合わせなければならない。」
今まさに必要なのが、改革する意思と実行力である。しかし、改革に時間がかかればかかるほど、本当に間に合うのかどうか疑問である。実際に政府の出した目標は本当に間に合わせようとしているのかどうかも疑問を感じるものとなっている(続く)。
日本の長期金利は1.1%を大きく割り込み、7月1日には1.055%まで低下した。ここにきての長期金利低下の背景には、米経済を主体とした世界経済の減速懸念がある。確かに発表された米経済指標は悪い指標が目立つが懸念が先行しているのも確かであろう。懸念という意味合いが強いことを見ても、海外ファンドなどによる仕掛け的な動きである可能性もある。一時のユーロの財政危機はいったん影を潜め、外為市場では狙い撃ちにされる通貨がユーロからドルに取って変わった。このドル売りとともに米株安が東京株式市場を直撃し、さらに米債やドイツ連邦債が安全資産として買い進まれたことで、円債が買い進まれる格好となった。
超長期債主体に投資家などの買いも入ったことも長期金利低下の背景にある。日本の財政への懸念などから投資家は買い控えていた面もある。売り手も引いて板が薄いところ、買い遅れていた投資家の買いで予想以上に強い相場を形成してきている。しかし、このままさらに長期金利が低下するにも限度がある。長い期間の債券につられて中期債も買われているが、日銀による追加緩和でもない限りはここからさらに買い進みにくい。7月1日発表の日銀短観を見て、日銀は足元景気判断を引き上げようとしており、少なくとも日銀による追加緩和は考えづらい。
現在の日本の長期金利は海外要因に大きく影響を受けており、海外要因に変化が生じるか、もしくは変動要因が国内要因にシフトすることがないと現在の長期金利のトレンドに変化が生じることは考えづらい。しかし、参院選を控えており、その結果次第では国内要因の比重が高まる可能性はある。
また、6日の10年国債の入札では、利率は1.1%に引き下げられ、2003年8月以来の低い利率となる可能性がある。国債入札がきっかけに相場のトレンドが変化することも過去にあり、、この入札への投資家の動向をチェックしておく必要もある。
少し前のことになるが、内閣府が6月22日に発表した経済財政の中期試算を見てみたい。http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h21chuuchouki.pdf
試算のための想定として世界経済が「順調回復シナリオ」、「急回復シナリオ」、「底ばい継続シナリオ」に分けている。消費税については、2011年度から2015年度にかけて消費税率5%引上げ(試算の便宜上毎年度1%ずつの引上げを想定)、ただし「底ばい継続シナリオ」は消費税率を引き上げず、基礎年金国庫負担割合の2分の1への引上げ、高齢化の進展に伴い自然に増加する公費負担のみ対応としての試算している。
この中で、公社債等残高は2009年度末の786.8兆円を起点に、それぞれのシナリオによる試算によると「順調回復シナリオ」、「急回復シナリオ」でも2020年度には1000兆円の大台に乘せる。さらに「底ばい継続シナリオ」では2015年度に1000兆円の大台に乗せ、2023年度には1388.8兆円に達するととの試算となっている。参考までに家計の金融資産は2010年3月末現在で1452兆円7512億円となっており、ほぼそれに匹敵する規模となる。
10年先の景気動向を判断するのはたいへん難しいことであるが、この3つのシナリオの中で最も蓋然性が高そうなのは「底ばい継続シナリオ」ではないであろうか。もしくは新興国の景気回復が更に進むようなこととなれば「順調回復シナリオ」の可能性もある。しかし、「急回復シナリオ」は現時点では描きにくい。
いずれにせよ、公社債等残高そのものが個人の金融資産と同額にまで膨らむリスクがあることが、この試算からも伺える。別途、個人の金融資産でどこまで国債購入が可能なのかの試算もあれば、さらに危機感は強まるのではなかろうか。国債消化について個人の金融資産に依存するのには限界があることも確かであり、そのための対策を講じる必要がある。4.6%にまで落ち込んだ海外投資家の保有比率の引き上げや、安定保有層としての個人の直接保有比率の引き上げがまず必要となろう。
本日発表された6月の日銀短観によると、景況感の目安となる大企業製造業の業況判断指数DIはプラス1となり、2008年6月調査以来2年ぶりのプラスに転じた。市場予想はマイナス3近辺であり、この予想も上回った。改善は5期連続となる。9月の先行き予測はプラス3とさらなる改善を予想している。中国やインドなど新興国経済の景気回復を受けて、製造業主体に景況感の改善が続いていることを示した。また2010年度の設備投資計画(含む土地投資額)では、大企業製造業で前年度比プラス3.8%となり、こちらもプラスに転じている。プラスは2007年度以来3年ぶりとなる。
業況判断指数DIは大企業製造業の改善が目立つものの、非製造業も前回から9ポイント改善のマイナス5となり、また中堅、中小も製造業主体に大きく改善傾向を示している。
特に大企業製造業の業況判断指数DIのプラス転換は、株価にとってもあまり無視はできない。足元の相場は米国景気の二番底への懸念などで株式市場は弱含みの展開となっているが、景気回復そのものの流れが阻害されているわけではない。あくまで「懸念」を材料に仕掛け的な動き入っているとも言える。
もちろん今後の景気減速の可能性がないと言うわけではないが、この短観の数値も無視すべきではない。大企業製造業の業況判断指数DIのトレンドと東京株式市場のトレンドはこれまでの結果から見る限り、かなり連動性が高いことも確かである。
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