「若き知」
「過去データは一番下に移行しました」


2010.8.31「概算要求での来年度の国債費は過去最大の24.1兆円に」

財務省は2011年度予算の一般会計概算要求を発表し、そのうち国債費(国債の元金返済や利払いに充てる経費)が24兆1321億円となり要求段階で過去最大となった。2009年度決算剰余金1兆6247億円の繰入れや(決算上の剰余金の2分の1に相当する額の国債整理基金特別会計への繰入れ)、国債発行増に伴う利払い負担の増加(公債利子等で約1兆円)などで、2010年度当初予算に比べ3兆4831億円増となる。この前提となる国債発行のうち新規国債は2010年度と同額の44兆3030億円で仮置。想定金利は10年債で2.4%(2010年度の要求段階では2.5%)。


2010.8.30「あまりに中途半端なタイミングでの追加緩和」

日銀は本日、臨時の金融政策決定会合を開催し追加緩和策を決定した。政策金利は変更せずに、新型オペの総供給額を、現行の20兆円から30兆円に増額し、新たに貸出期間6月の新型オペ10兆円を新設する。

今回の追加緩和は新型オペの拡充(量もしくは期間)と見られていことで、想定の範囲内となったが、結果としては期間と量ともに増額させ、緩和効果をアピールか。しかし、市場ではさらなる緩和策を期待していたのか、この結果発表後に日経平均は上げ幅を縮小させ、外為市場ではやや円が買われた。

日銀は今回の追加緩和の理由として声明文では、「米国経済を中心に、先行きを巡る不確実性がこれまで以上に高まっており、為替相場や株価は不安定な動きを続けている。こうしたもとで、日本銀行としては、わが国の経済・物価見通しの下振れリスクに、より注意していくことが必要と判断した。」としている。

今回の追加緩和策については、全員一致とはならず、須田委員が反対票を投じた。新型オペを通じた資金供給を大幅に拡大することについて反対と声明文はあり、今回の追加緩和そのものに反対票を投じたものとみられる。政策金利の据え置きについては全員一致となっている。

4月7日に新型オペの増額を決定した際には、須田委員および野田委員が反対していた。今回の新型オペの拡充策について、このとき反対していた野田委員は今回は賛成票を投じている。野田委員は4月とはやや考え方を異にしていたのであろうか。

日銀は今回も昨年12月1日の臨時の金融政策決定会合のときと同様に、政治的に追い込まれての追加策との印象が強い。白川総裁が訪米中で、この際にはバーナンキ議長やトリシェ総裁などとの貴重な対話の機会でもあったにも関わらず、予定を1日に早めて急遽帰国したことを踏まえても、民主党の代表選をも睨んでの円高・株安対策へのアピールら日銀も歩調をあわせざるを得なかったと考えざるを得ない。

今度の緩和策については効果がまったくないわけではない。短期金利の中でもやや長めの期間の金利を低下させてくるとみられる。ただし、この追加緩和策は市場もある程度織り込み済みであったことで、たとえばこれで債券の中期ゾーンがさらに買い進まれるということも考えづらい。

株式市場や外為市場では、やや思惑的な動きも出やすいことで一時的に失望感も出てこようが、為替介入の可能性もあり、また明日発表される追加の経済対策の内容も見極める必要があるため、株式市場での失望売りなどは限定的となろう。

債券市場では長期金利が一時の0.9%割れからすでに1.1%台にまで跳ね上がるなど、過去2度の長期金利1%割れ後の債券急落と同じような様相となっており、米債の動向次第では債券のミニバブルの崩壊の可能性が強まりつつあり、日銀による追加緩和よりも足元の国債の需給動向が意識されやすい。

今回の日銀の追加緩和で注目すべきは、また政治の力が働いて日銀が動かざるを得なくなったことであろう。あらためて政治や市場で追い込まれて動く日銀との印象を与えたことについては、日銀への信認という意味からはマイナス要因となると思われる。通常の決定会合まで動かないとしていたのならば、その信念は貫くべきではなかったのか。もしくは追加緩和に追い込まれるとみたら、即座に行動を起こすことも必要ではなかったのか。今回の追加緩和の決定はあまりにタイミングが中途半端であり、菅総理と日銀総裁の会談、政府の追加経済対策発表というタイミングでしか見ることができないものとなってしまったことが、たいへん残念である。


2010.8.30「20年入札や米債安に見る債券相場の変化の兆し」

24日に実施された20年国債の入札は、利率は1.6%と2003年6月以来の水準に引き下げられたが、最低落札価格は事前予想を上回り、テールも8銭と前回の5銭よりは伸びたが無難な結果となった。ただし、応札倍率は2.86倍と前回の4.46倍を下回っていたことからも、この入札では一部の大口落札者はいたものの、多くの業者は珍しく引き気味であったようである。つまりそれだけ投資家の押し目買い意欲が感じられない状況になりつつあったともいえよう。

それが明らかとなったのが、27日の相場である。昼に菅総理は急激な円高について、「必要なときには断固たる措置を取る」と述べたことが伝わり、これにより円安・株高が進行し、債券市場では20年国債を中心に急落の展開となった。

この債券急落の背景には、小沢氏の民主党代表選出馬にともなう財政拡大懸念があったとみられるが、すでに何かしらのきっかけで相場が崩れやすくなっていた状況にあった可能性がある。27日の相場を見ると、10年債利回りは前場の0.930%から後場に入り一時前日比+0.080%の1.015%まで上昇し1%台を回復した。さらに20年債利回りは一時、同+0.140%の1.705%にまで上昇した。しかし、30年債は後場は日本相互証券では出合いはなかった。これを見る限り、相場急落には20年国債が崩れたことがきっかけのようにも見える。このあたり、2003年6月のやはり結果は順調ではあった20年国債入札をきっかけとした相場下落に似ている。

さらに注目すべきは、米国債の動きである。28日の日経新聞一面にはワイオミングでの国際シンポジウムでのバーナンキ米連邦準備理事会議長の講演を受けて「米、追加緩和を検討」との記事が踊っていた。しかし、先週末の米国債券市場では、この講演の内容からは当初一部で期待されていたようなFRBによる新規の債券買い入れが迫っていることを示す内容とはならなかったことにより、米債への売り圧力が強まっていた。米10年債の利回りは利回りは前日の2.48%から2.65%と過去3カ月間で最大の下落となった。また、米30年債の利回りも、前日の3.51%から3.70%に大きく上昇した。

20年国債入札をひとつのきっかけとした27日の債券相場の下げ方や、この米債の下落の仕方を見る限り、2003年6月と同様のことが起こりつつあると判断するのは、まだ早計かもしれないが、その兆候があることは確かであろう。

日銀の追加緩和の報はあったが、本日30日の債券先物は142円39銭と先週末比16銭安と売られてのスタートとなっている。今後の債券相場の動向についてはなり注意して見ておく必要がある。


2010.8.30「日銀は本日、臨時の金融政策決定会合を開催」

米国出張中の日銀の白川総裁は予定を1日に早めて急遽帰国し(日経)、本日9時から臨時の金融政策決定会合を開催し、追加緩和策を協議すると報じられた。政府は明日31日に経済対策の基本方針を決めることで、政府・日銀が一体となって円高・株安の反転や景気の下支えに取り組む姿勢を打ち出す(日経)そうである。

先週末の27日に、菅総理は急激な円高について、「必要なときには断固たる措置を取る」と述べ、為替介入の可能性を示唆した。また、米国から帰国後に白川日銀総裁と首相官邸で会談することを明らかにし、追加的な金融緩和策を求める考えも示した。

日銀の動きは昨年12月に比べると思いのほか鈍く、市場では8月18日から20日にかけて毎日のように臨時の決定会合開催の噂が駆け巡ったものの、開催されることはなかった。白川総裁も予定通りに米国に出張したことで、9月の通常の会合で追加緩和を協議するのかと思われた。

また、外為市場では24日のロンドン、ニューヨーク市場でドル円は一時83円58銭をつけるなど円高が進行したが、その後はやや円高の動きは落ち着いてはており、27日の菅総理の発言によりドル円は85円台を回復していた。日銀総裁が予定を早めて、帰国する必要があるほど週末に緊迫感が走っていたわけではない。

今回の日銀の臨時の金融政策決定会合開催は、この様子を見る限り政府の意向が強く働いていることが伺える。特に民主党の代表選に小沢氏が出馬を決定したことで、菅総理は円高と景気への対策をアピールする狙いがあったものとみられ、それに日銀もお付き合いさせられたということであろう。

このため、日銀としても積極的な追加緩和策というよりも、すでに予想されていた新型オペの拡充策を軸に協議するとみられる。また、成長基盤強化に向けた貸出制度の救急枠(現行3兆円)の拡充も検討される可能性はある。いずれにしても短期金融市場などでは、9月の通常での会合での追加緩和の可能性を織り込んでいたとみられ、債券市場などへの影響も限定的なものとなると予想される。

白川総裁は2時30分に記者会見を予定しており、臨時会合で議論が白熱するような状況にはなく、すんなりと予想される追加緩和策が時間通りに決定されるとみられる。


2010.8.27「債券相場は目先、調整入りした可能性も」

午前中にアップした「債券相場は目先、調整入りする可能性も」は来週の予想を書いたものであったが、どうやらその懸念がすでに強まった感がある。27日の債券相場は後場に入り下げ足を早めた。

現物債は長期債、超長期債主体に急落の展開となり、10年債利回りは一時前日比+0.080%の1.015%まで上昇し、1%台を回復した。また、20年債利回りは一時、同+0.140%の1.705%となるなど急落の展開となった。これを受けて債券先物も一時前日比46銭安の142円36銭まで下落した。

売り手はこれまでの最大の買い手の銀行勢のようである。菅首相の円高対策の表明により株式市場が上昇したためとの見方もあるかもしれないが、あまりその円高対策には期待は持てない。それ以上に懸念すべきは小沢氏の民主党代表選への出馬であろう。

報道などによればいまのところ代表選の行方は五分五分との見方ではあるが、選挙に長けた小沢氏であり、小沢グループと鳩山グループだけでも数の上では優位に立っているとみられる。国民感情からは金まみれの小沢氏で良いのかとの議論もあろうが、政権与党の立て直しには菅氏よりも小沢氏が適しているともみられるだけに、恐いものの一度任せてみても良いかとの意識に今後変化してくる可能性もある。

債券相場に取っては、小沢氏が有利となれば、財政再建に傾いていた菅氏から、再び財政拡大路線への変更となることが当然予想される。民主党の当初のマニフェストの内容が実行されるとなれば、財源は国債の増発とならざるを得ない。ただし、これにより国債市場が小沢氏に警鐘を鳴らすようなことになれば、仮に小沢首相が誕生しても闇雲に国債を増発させるようなことはないかもしれない。しかし、債券市場では今後、ここにきてほとんど意識されていなかった財政悪化リスクが再び顕在化してくることは確かであろう。

過去2度に渡り長期金利が1%割れとなった際には、その後債券相場の急落を迎えた。今回も長期金利は1%を一時割り込んだが、どうやら今後の債券急落の可能性もありそうである。今年に入っての債券相場は4月あたりからほぼ一本調子の上昇となり、調整らしい調整がなかった。ここで調整し、その後いったん戻りがあって、その後本格的に調整が入ってくる可能性もある。ただし、それには米債も調整局面入りしないと難しいともみられ、今後の米債の動きにも注意したい。

足元の相場としては、菅首相は日銀総裁が帰国後に会談するとも伝えられ、日銀による追加緩和の可能性もあり、中期債などは比較的しっかりしてくる可能性はあるが、イールドカーブそのものはスティープ化圧力が加わりそうである。


2010.8.27「債券相場は目先、調整入りする可能性も」

日銀の白川総裁が26日から5日間の日程で米国出張となっており、白川総裁の帰国後にも臨時の会合を開き追加緩和の可能性があるのではないかとの思惑も燻っている。しかし、昨年12月時ほど切羽詰った様子もなく、9月6日から7日にかけての定例の金融政策決定会合であらためて議論される可能性が高いと見ている。また、政府は追加の経済対策を月内にも取りまとめ予定となっているため、こちらの動向にも注意したい。ただし、これについては新たな国債の増発などは考えにくい。

注目すべきは民主党代表選の行方となろう。菅氏と小沢氏の一騎打ちとなり、その結果次第では債券市場にも大きな影響を与える可能性がある。特に小沢氏が勝利した場合には、当初の民主党マニフェストに沿った政策が打ち出され、その財源のために国債に増発圧力が加わる可能性がある。

ここにきての日本の長期金利低下は円高株安や米国債の上昇に大きく影響を受けており、財政への懸念は無視されてきていた。しかし、来年度予算編成も睨んで、あらためて財政悪化が意識され、売り材料視される局面もありそうである。

9月1日には10年国債の入札が実施される。利率は2003年8月以来の1%以下に引き下げられる可能性があり、こちらの動向にも注意が必要となろう。過去にも入札が相場の転機となったことも多い。

引き続き米債や株式市場などを睨んだしっかりした展開となりそうだが、債券相場は4月以降、ほぼ一本調子の上昇となっていたこともあり、ここにきて改めて政局の動向が注目され、久しぶりに調整局面入りする可能性もある。
予想レンジ 0.90%〜1.10%


2010.8.26「2年国債の利率が5年ぶりの0.1%に」

本日入札される2年国債の利率は、0.1%に引き下げられ、2005年8月に入札された235回債以来の0.1%となった。日銀の量的緩和政策が解除されたのが2006年3月であり、まさに量的緩和を行って際の利率に低下したこととなる。しかも政策金利の0.1%に並んだことになる。

すでに長期金利も1%を割り込み、一時0.9%も割込むような状況にある。米国債も2年債利回りは0.5%を割って史上最低利回りを更新している。日銀の追加緩和の可能性も指摘されている中にあり、2年国債の利率0.1%に違和感はない。しかし、それでも政策金利に並ぶということは、来るところまで来たのかという感もある。

日銀の追加緩和については総裁が米国出張から帰国してからとの見方となっているようだが、新型オペの拡充の可能性が高い。しかし、政策金利自体の引き下げの可能性もありうるのではなかろうか。個人的には量的緩和政策への転換も視野に入れる必要があると思ってはいるが。


2010.8.26「過去の長期金利の1%割れ(その4)」

最初に1%割れとなったのは1998年9月1日、その9日後の金融政策決定会合で日銀は3年ぶりの追加緩和を行った。また、次に長期金利が1%割れれとなったのが、手元の記録によると2002年10月31日で、その前日にやはり日銀は追加緩和策を実施している。今回は2010年8月4日に1%割れとなったが、やはり日銀は追加緩和を実施する可能性が現時点(8月26日)では高まりつつある。

しかし、それぞれ過去の2回の場面では多少、期間を置いてではあるが「運用部ショック」と「VARショック」と呼ばれた債券相場の急落を迎えていたことには注意する必要があろう。バブルはその時点では気がついてはいても、大勢の流れにはついか行くしかなく、そのピーク時には皆が皆、安心して債券を買い込んでしまっている。それまで売る人がいないような状況にあったのが、いつの間にかさらに買う人がいなくなってしまうのである。

今度も債券相場の急落があったとしても、過去と同様に一時的なもので終わる可能性はある。あくまでこれは国債の需給の崩れであり、信用を失ったことによる急落ではないためである。相場には上げ下げはつきものであり、その一貫としてみなされるであろう。しかし、ギリシャ・ショックは信用力そのものへの懸念から引き起こされた。もしも、日本国債への信用が失われるようなことをきっかけとした国債価格の急落であったならば、それは相場の域を超え、日本初のあらたな金融危機を迎えることになる。このあたりのことを意識して、今後の債券相場の動向を見ておく必要があろう。


2010.8.26「過去の長期金利の1%割れ(その3)」

次に長期金利が1%割れとなったのが、手元の記録によると2002年10月31日である。当時の様子を私のコラムや著作の原稿から追ってみた。

2001年4月以降、それまで売っていた都銀が買いに転じ、じりじりと債券相場は反発した。デフレが長期化するといった見通しから、期間の長い債券が買われだしたのである。9月13日には10年国債の金利は1%ちょうどまで低下した。

ところが、9月18日に日銀が銀行保有の株式を購入すると発表したことで、日銀の資産劣化が懸念され、債券先物はストップ安となった。また、その翌々日の20日の10年国債入札において、10年国債としては初めての札割れが発生し、10年国債の金利は1.3%台まで利回りが上昇したのである。

しかし、デフレといったファンダメンタルズに変化はなく再び債券相場は反発した。10月30日に日銀は金融政策決定会合において、政府の総合デフレ対策に呼応して追加緩和策を決定した。国債の買い切りの額を月1兆円から1兆2千億円に増額。また、日銀の当座預金残高目標値を15〜20兆円に引き上げた。また、手形買い入れ期間を従来の6か月以内から1年以内に延長した。政府の総合デフレ対策は、当初の竹中案からはやや後退したものとなったことに加え、日銀が追加緩和を実施することで、短期金利が低下し、長期金利も低下。その結果、31日に10年国債の利回りは、1998年以来の1%割れとなったのである。

2003年5月のりそな銀行に対する資本注入によって、政府は大手銀行は潰さないといった意識も強まり、その結果、株式市場では銀行株などが買われ、海外投資家の買いなどにより、日経平均株価は2003年4月の7607.88円がバブル崩壊後の安値となり、米国や中国などの経済成長などを背景に、日本の景気も徐々に回復し始め、その後上昇基調を強めた。

2002年6月までは債券相場は1日あたりの値幅も限られながらも、じりじりと高値を更新し続けた。JGB先物は限月移行があったため中心限月の高値は10日の145円09銭となったが、現物債は11日に30年で0.960%、20年で0.745%、そして10年0.430%とそれぞれ過去最低利回りを記録した。

この相場上昇過程において、目立ったのがメガバンクの一角や地銀を含めた銀行主体の債券買いであった。銀行などがポジションのリスク管理に使っているバリュー・アット・リスク(VAR)の仕組み上、変動値幅が少ないことでそのリスク許容度がかなり広がりをみせていた。株価の低迷にともなって債券での収益拡大の狙いもあり、必要以上にポジションを積み上げ、異常なほどの超低金利を演出した。

しかし、これもいわゆる債券バブルに近いものとなり、6月17日に日経平均株価が9000円台を回復し、この日実施された20年国債の利率が1%割れのクーポンとなり、大手投資家などが超長期国債の購入を手控えたことをきっかけにして、債券相場が急落したのである。のちに「VARショック」と呼ばれた債券相場の急落である。2003年6月から8月にかけ、長期金利は0.430%から1.550%にまで急上昇したのである。

この債券相場の急落の背景としては、株価の上昇とそれを裏付けるような好調な経済指標が出てきたことで、景況感の変化によるものも当然大きかった。しかし、下げを加速させたのもVARであった。債券急落に伴い変動幅が今度は異常に大きくなり、銀行のリスク許容度が急速に低下。必要以上に売りを出さざるを得なくなったことで、下げが加速されたのである。


2010.8.26「過去の長期金利の1%割れ(その2)」

世界的な金融システム不安の台頭により、日銀は1998年9月9日の金融政策決定会合において、無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.25%に引き下げるという金融緩和策を決定した。この3年ぶりの金融緩和を受けて10年国債の金利は0.7%にまで低下し、債券先物は10月7日に139円56銭とそれまでの最高値をつけた。

1998年の小渕政権成立後、次々に経済政策が打ち出された。1998年11月16日に発表された緊急経済対策の財源として、12兆円を上回る国債が第三次補正予算にて手当てされた。翌17日には、米国格付け機関ムーディーズが、日本国債の格下げを発表した。公的部門の債務膨張も、格下げの大きな理由であった。国債の増発と海外格付け機関による国債の格下げは、債券市場参加者による国債への信頼性を次第に低下させていった。

1998年の年末に、1999年度の国債発行計画が発表され、そのなかで大蔵省資金運用部の引き受けが減少し、国債の市中消化額が急増することが明らかされた。また、大蔵省資金運用部による国債買い切りオペの中止も発表された。

経済対策に伴う国債増発が影響し、1999年の1月から長期国債は、月々1兆8千億円と、一気に4千億円も増額される見通しも出された。日銀の速水総裁は、日銀による大量の国債保有に対して「自然な姿ではない」とのコメントを出したことなどから、日銀も自ら大量に保有する国債について危惧を表明した。

債券市場にとって需給悪化を主体とする悪材料が重なったことで、12月22日にJGB先物はストップ安をつけるなど債券相場は急落。これはのちに「運用部ショック」と呼ばれたのである。1999年2月に長期金利は2.440%まで上昇したが、これが直近での長期金利の最高利回りとなった。


2010.8.26「過去の長期金利の1%割れ(その1)」

8月4日に長期金利は1%の大台を割り込んだが、長期金利が1%割れとなったのはこれで三度目である。過去二回の1%割れ後はいずれも債券相場の急落があり、それぞれ「資金運用部ショック」そして「VARショック」として債券相場の歴史に刻まれている。

最初に1%割れとなったのは1998年9月1日である。9月3日のコラムで私は下記のようなものを書いていた。

「世界の金融市場はこれまでにない衝撃を受けている。日本の景気低迷というのが、その大きな要因となっていることは確かである。これまで日本の金融市場は自国の事情により影響を受けていたが、日本の地震が津波となって、世界の金融市場に被害をもたらせた。その津波は地球を回って日本にしっかり帰ってきている。

まず、日本国内の景気低迷については、ついに「日立、初の赤字」という事態にまで陥った。半導体不況をもろにかぶったことは確かであるが、設備投資・個人消費の低迷が大きく影響しているはずである。そして、日本の景気悪化の最大要因はやはり「金融再生法案」でもめている金融機関処理問題である。長銀一行でこれだけごたごたしているということは、問題解決にはかなりの時間が必要とされそうである。それより解決の糸口さえいまのところ見出されない。この銀行の不良債権処理にさらに悪影響を与えているのが、アジア市場である。ついに「マレーシア固定制へ」そして「香港は空売り禁止」、まさに時代に逆行する施策を取らざるをえない事態にまで発展してしまった。香港には中国の元切り下げ懸念が大きく影響している。そして、このアジアの金融危機が飛び火したのがロシアと中南米である。「米露首脳会談」がモスクワで開かれているが、ルーブルを切り下げてもさらに混乱を加速させたロシアは、首相の承認すらままならない。エリツィン大統領もかなり追い込まれている。

そして、先進国で唯一景気がしっかりしていた米国が揺れている。「スイス金融機関も損失」の原因がロシアであったようにロシアの金融危機がユーロに影響を与え、また「メキシコ、大幅な金融引き締め」せざるを得なくなったように中南米へと影響が広がった。そうなると、米国経済もさすがに打撃を受ける。ニューヨークダウ平均は大きく下落した。加えて大統領自信がセックススキャンダルで信任を失いつつある。宮沢蔵相は「日米協調利下げ、提案せず」と語っていたが、ドイツを含めての協調利下げの可能性すら指摘されるようになってきた。為替市場もこれまでと様相が変化し、米国は自国経済のためにドル安政策をとるのではとの観測も流れている。世界の市場が揺れに揺れている。そして相場に対する見方も大きく変化しつつある。今、まさに大きな変革期にいるのであろうか。 」(1998年9月3日の「若き知」より)

ちなみに日銀は9月10日の通常の金融政策決定会合で短期金利の誘導目標を0.25%引き下げるという3年ぶりの緩和策をとっている。1998年の長期金利の1%割れは、このようにロシアの金融危機が大きな引き金になっていた。また、このロシア危機がLTCMの破綻を招き、FRBによる金利引き下げとともに日欧の中銀も金利を引き下げたのである。これについては拙著にも下記の記述がある。

「ロシアが資本主義体制へ移行して間もなく、ロシアの銀行の多くは海外から米ドル建てで資金を調達していたことで、ルーブルの暴落と共に破綻した。このロシアの金融危機がユーロに影響を与え、またメキシコが大幅な金融引き締めをせざるを得なくなったように中南米へと影響が広がり、資金の貸し手となっていた欧米などの債権者は大きな損失を蒙りました。これにより先進国で唯一景気がしっかりしていた米国にも影響が及んだのである。そして、ロシアの通貨危機はヘッジファンドにも影響を及ぼし、とりわけノーベル賞受賞者が設立に関与したLTCMが1998年9月に破綻に追い込まれたのである。FRBは9月17日から11月17日まで三回に渡り積極的な金利引き下げを実施し、日欧の中央銀行も政策金利を引き下げた。この機動的な金融緩和措置により、米国の金融システム不安はとりあえず払拭されたといえる」(拙著「金融のことがスラスラわかる本―歴史に学ぶ金融の基本」より)。(続く)


2010.8.25「国債関係資料(備忘録)」

債務管理レポート2010(財務省)、http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/saimukanri/2010/saimu00.htm
国債及び借入金並びに政府保証債務現在高、http://www.mof.go.jp/gbb/2206.htm
国際収支(対内証券投資、地域別内訳)、http://www.mof.go.jp/bpoffice/bpdata/pdf/bppi1006.pdf
米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES、http://www.ustreas.gov/tic/mfh.tx


2010.8.24「財務相会見で円高が進行した理由」

本日、外為市場では午後4時過ぎに、ドル円が84.72円を下回り、15年ぶりの安値を更新した。この円高進行を受けて、野田財務相は午後5時に記者会見を開き、「為替相場の過度な変動、無秩序な動きは経済に悪影響がある。細心の注意が必要」とし、「マーケットの動きには重大な関心をもって極めて注意深く見守っていく」と述べたそうである(ロイター)。

そして、政府としての政策対応については「マーケット動向を重大な関心をもってウオッチしていくことが肝要」と述べ、為替介入については「コメントしない」とこれまで通りの発言を繰り返した(ロイター)。

この発言を受けて、外為市場ではさらに円買いが進行し、5時10分頃にドル円は84円16銭近辺まで円高ドル安が進行した。財務相がわざわざ会見を開く以上は、何かしらの円高大雄についてのコメントがあるのではないかとの期待というか警戒があったが、結局、肩透かしに会い円高を加速させることとなった。

何もしないよりも、少なくとも財務相は関心をもって市場の行方をチェックしていることを伝えることで、市場にインパクトを与えることが可能との認識での会見であったのであろうか。それならば無理に開くよりも、財務相のコメントを手短に市場に伝えるだけで十分である。わざわざ記者会見という場を設けたにも関わらず、従来の発言の繰り返しではむしろ市場の失望を招くだけである。

民主党の代表選や来年度予算に絡んで、政府が動きにくい状況にあることは確かである。さらに為替介入についても欧米との協調介入は難しく、単独介入ではむしろ円高を促進させる結果ともなりかねない。

もし会見を開くのならば、市場に向けてのアナウンスメント効果をかなり意識しての発言内容とすべきである。そのあたりのさじ加減は難しいものがあるが、日本の足元経済やデフレの状況をあらためて強調し、ドルやユーロに対して円の強さの背景には具体的な根拠が乏しいことなどを力説するという手もあるのではないか。

また、日銀との連携についても自ら進んで水面下で接触し、形式的なものだけでなく実際にも協力している姿勢を見せる必要があるのではなかろうか。


2010.8.24「動きの取れない政府と動きを見せない日銀と」

8月23日にも菅総理と白川日銀総裁が会談すると伝えられ、これが昨年12月1日の臨時の決定会合を連想させた。18日から20日にかけては、連日、日銀による臨時の金融政策決定会合開催の噂が出ており、市場は追加緩和を期待しての動きを見せた。

しかし、この会談は先送りされ、その代わりに24日にわずか15分間の電話会談が実施された。ここで気になるのは、何故、直接会って話をしなかったのか、という点である。時事通信によると会談先送りの検討理由は「独立性を持つ日銀の金融政策に政府が介入するような印象を避けるため」だそうである。

仙谷官房長官は「この段階では電話で話すことが最も適切」とコメントした。何故、直接会わずに電話で話すほうが適切なのか。市場に余計な期待感を持たせるべきでないとしたのか。それとも、この段階でトップ会談を行っても、なんや具体的な対策を出すことが難しいと判断したためなのか。

実際に民主党は代表選を控え、さらに2011年度予算の概算要求基準の締め切りを今月末に控えていることもあり、与党内部での追加経済対策の策定にもおぼつかない状況にある。 また、これで日銀が早期に追加緩和に動く可能性が後退したことも確かであろう。昨年12月1日の臨時の決定会合を開催した際の状況とは異なっており、日銀は今回、政府とやや距離を置く姿勢を見せているようにも思われる。

日銀が動くのは9月6日から7日にかけての金融政策決定会合かとの観測が強まりつつあるが、日銀からは今回の円高やそれに影響を受けての株安については、具体的なメッセージが出てきておらず、次回の会合で追加緩和が実施されるかどうかも不透明である。

海外市場ではドイツのウェーバー連銀総裁が「年末まで無制限の資金供給を維持すべき」と述べたことで、ユーロ売りが強まった。欧米での自国通貨安のための誘導策はあの手この手で行われている。通貨安競争の中にあり、日本の政府・日銀が連携も取れないと市場で見透かされると今後は円高圧力がさらに強まる可能性がある。 欧米ではバーナンキFRB議長や今回のウェーバー総裁のように中銀関係者による発言により、為替市場が反応してくることも多い。ここにきて沈黙を保っている日銀首脳も何らかの手を使う必要があるのではないか。

為替介入などの実力行使や追加の緩和策だけがその手段ではなく、日銀総裁による発言でもアナウンスメント効果により、市場に影響を与えることができるはずである。市場のセンチメントを意識して、それに働きかけることも重要ではなかろうか。


2010.8.24「2003年の債券急落のターニングポイントは20年国債入札」

2003年6月の債券相場の急落におけるターニングポイントは20年国債の入札にあった。本日も20年国債の入札が実施される。ここにきての債券相場の上昇により、中期から超長期にかけての利回りが2003年の水準にまで低下しており、2003年6月の債券急落と同様のことが起こりうるのではとの懸念もある。

本日入札される20年国債の利率は1.6%と予想され、2003年6月17日に実施された20年国債の利率0.8%の倍ともなっていることで、まだ懸念すべき水準にあるとは思えない。ただし、この1.6%の利率はその2003年6月以来の低水準ではある。さらに、10年債利回りがすでに1%を割り込んでおり、いずれ危険水域に接近しつつある。当時と同じことがいずれ繰り返されるとも限らないことで、2003年6月17日の債券相場の様子を、当時の私の書いたコラムから再確認してみたい。

2003年6月17日の債券相場の下落は当初中期主体であった。このため銀行の中期売りがきっかけかとも言われたが、銀行が何故、このタイミングで売ったのか。それは20年国債の入札時の投資家層の変化を嗅ぎ取っていたためとも思われた。利率が0.8%と1%を割り込んでいたが、入札への懸念はまったくといってよいほどなかった。実際に落札結果も悪くない。

ところが、その20年の買い手が様変わりしていたのである。業者も在庫を抱えた。しかしセカンダリーの買いも見えない。肝心の投資家の姿が消えた。なれない超長期を買い込んでしまった投資家もいたと思われる。こうなるとあとは崩れるのを待つだけとなってしまう。債券のベンチマークとなっている先物が売られたことで、不安感が広がり、業者も致し方なくヘッジ売りを入れるが、下げがとまらない。結果としては手持ちの超長期をどこがいつどのタイミングで外しにかかるのかというだけとなってしまった。

いったん売りが出れば、売りが売りを呼ぶ。押し目買いも入るが、こういった動きの際の押し目買いはリスクが高い。これまでの上昇相場がやや異常とみれば、その上げ始めの時点あたりまで下げることは十分に考えられる。それが20年の1%台であったり、先物の142円40銭近辺であったりする。今日はその水準すら大きく割り込んでしまった。先物はストップ安近くまで下げた。しかし、この下げは過熱相場の反動であり、大きな材料があったわけではない。ただし、株価を見る限り大きな流れの変化の可能性も無視はできない。この下げの足を見る限りにおいて、日本の長期金利は底を打ったと見てもおかしくはない。それぐらいインパクトのある下落であった。


2010.8.23「首相と日銀総裁の電話会談は、むしろ円高や株安を進行させる可能性も」

仙谷官房長官は、菅首相が白川日銀総裁とけさ電話会談をしたことを明らかにした。為替を含む経済金融情勢で意見交換し、今後ともコミュニケーションを密にとることが大事との認識だったという。仙谷官房長官は、「この段階では電話で話すことが最も適切」とコメントしたとか。

先週末に時事が、菅直人首相と白川方明総裁の会談を先送りする方向で調整に入り、代わりに電話協議を行う案が浮上したと伝えていたが、この報道の通りとなったようである。

ここで気になるのは、何故、直接会って話をしなかったのか、という点である。時事によると会談先送りの検討理由は「独立性を持つ日銀の金融政策に政府が介入するような印象を避けるため」だそうである。つまり、会談を仕掛けた向きは日銀の追加緩和を意識していたが、それに対して待ったをかけた向きがいたと言うことになるのか。

仙谷官房長官は「この段階では電話で話すことが最も適切」とのコメントしたが、この発言からはストップをかけたのは仙石氏の可能性がある。そして今朝、野田財務相は、電話会談になるとの報道については「コメントしない」と述べており、仮に野田氏が電話会談を望んでいたならば別のコメントになった可能性があり、野田氏はむしろ直接会談を望んでいたのではとみなすのは考えすぎであろうか。

絶対的な情報不足の段階で、あれやこれやの推測もいけないことも重々承知しているが、なにはともあれ市場が肩透かしを意識して、円買いや日本株売りを抑えようとしての月曜早朝というお互い忙しいはずの中での電話会談であったようである。

とにかくも、これで日銀が早期に追加緩和に動く可能性が後退したことは確かであろう。どうやら昨年12月1日の臨時の決定会合を開催した際の状況とは異なっており、日銀は今回、政府とやや距離を置く姿勢を見せているようにも思われる。

さらに為替介入についての話はなかったと伝えられたが、それは首相と財務相が話すべきものであるはずである。そもそも、日銀総裁には介入の権限はない。

民主党の代表選も控えて、与党内部での追加経済対策の策定にもおぼつかない状況にある。政府も日銀も積極的には円高や景気対策には乗り出さないと認識されれば、あらためて円高や株安が進行する可能性もある。

それに事前に対処するために、沈黙し続けている白川総裁がそろそろ市場に対して、何かしらアナウンスする必要もあるのではなかろうか。


2010.8.21「首相と日銀総裁の会談先送りの影響」

時事通信によると、政府・日銀は20日、菅直人首相と白川方明総裁の定期的な意見交換の一環として検討していた週明けの会談を、先送りする方向で調整に入ったそうである。代わりに電話協議を行う案が浮上。両者は23日にも会談する方向と伝えられたことで、金融市場ではこれに合わせて政府が日銀に円高に対応する追加的金融緩和を迫り、臨時の金融政策決定会合が開催されるのではないかとの噂が18日から20日にかけての東京市場で駆け巡った。

時事によると会談先送りの検討理由は「独立性を持つ日銀の金融政策に政府が介入するような印象を避けるため」だそうである。今回の政府・日銀のトップ会談は昨年12月2日のトップ会談を前にしての、臨時の決定会合の開催が連想された。このときは日銀総裁のデフレを巡る発言などからも、日銀が政府との対立が決定的となるのを回避するため、追加緩和を行ったと市場では認識されていた。

今回の会談先送り、実質的には電話会談で済ませての先送りの理由は何であったのであろうか。そもそも首相と日銀総裁の会談を仕掛けた人物がおり、これにより日銀に追加緩和を行う環境を整えようとしていた可能性がある。

しかし、民主党の代表選などが影響し、政府自身が追加の経済対策を巡っての意見が閣僚間で分かれるなどしており、また、円高の責任を一方的に日銀に押し付けるような民主党幹部からの発言もあるなどしており、日銀としても政府と連携して対応できる状況にはないのかもしれない。

海外市場ではドイツのウェーバー連銀総裁は「年末まで無制限の資金供給を維持すべき」と述べたことで、ユーロ売りが強まった。欧米での自国通貨安のための誘導策はあの手この手で行われている。通貨安競争の中にあり、日本の政府・日銀が連携も取れないと市場で見透かされると円高圧力がさらに強まる可能性がある。 欧米ではバーナンキFRB議長や今回のウェーバー総裁のように中銀関係者による発言により、為替市場が反応してくることも多い。ここにきて沈黙を保っている日銀首脳も何らかの手を使う必要があろう。追加の緩和策だけがその手段ではない。たとえば、量的緩和策への復帰もひとつの選択肢といった発言だけでも、それなりのインパクトは与えられると思うのだが。


2010.8.20「連日の臨時の決定会合の噂」

18日から今日にかけて、毎日のように日銀による臨時の金融政策決定会合開催の噂が出ていた。これは昨年12月1日の臨時の会合が開催された当時と今回の状況が似通っているために、市場での期待、もしくはそれに備えた動きをしたことによるためか。

市場では噂で買って事実で売るとの格言もあり、噂の段階で債券や株、そしてドルなどを買っていた向きもあるのではなかろうか。債券先物は143円台をつけ、2年債利回りは0.110%、5年債利回りは0.250%に低下し、追加緩和を織り込みにきている。

10年債利回り、つまり長期金利も0.9%まで低下している。しかし、この水準は2003年6月の0.4%台に比べればまだ高いといえば高い。それだけ今回は2003年のVARショックを教訓としての警戒心を強めている結果でもあろう。それでも米債高などもあり、投資家はさらに高いところを買ってこざるを得なくなり、その結果として2003年6月の相場を繰り返す可能性も否定はできない。まあ、相場にまったく同じような展開が繰り返されることはむしろ考えづらく、今回は2003年の際とは違う結末が待っているような気もする。

日銀は首相と日銀総裁の会談を前に果たして動くのか。昨年12月と今回では微妙に空気も違っている。9月の民主党代表選を控えており、政府は経済対策よりもそちらの動向に目が向かいがちになっている。だからこそ日銀への期待を強めることにもなりかねないが。

さらに財務大臣が当時の藤井氏ではなく野田氏に変わっている点にも注意したい。野田財務相が日銀との調整役になっているのかどうか。さらに菅首相は前財務相でもあることも影響がありそうである。どのような動きになっているのか想像の域を出ないが、あくまで個人的な見方としては、日銀が臨時の会合を開くまでの状況には、まだなっていないとも思うのだが。


2010.8.19「今回もまた臨時の金融政策決定会合が開催されるのか」

18日の引けあとに、10年国債の利回りは0.9%ちょうどまで低下した。直近の最低利回りとなり、2003年8月以来の水準となる。この背景には、日銀による追加緩和観測があった。昨日は日中から、日銀が近々、臨時の決定会合を開催して追加緩和をおこなうのではないかとの観測が出ていた。

23日にも菅総理と白川日銀総裁が会談すると伝えられ、これが昨年12月1日の臨時の決定会合を連想させたものとみられる。当時の様子を日経新聞の記事をもとに追ってみたい。

政府がデフレを宣言した昨年の11月20日に日銀の金融政策決定会合が開催され、日銀は景気判断を上方修正させた。日銀にはデフレを宣言した政府と距離を置こうとの意見が多かったそうである(日経新聞)。

しかし、26日には今年1月21日につけた87円10銭を割り込み一気に86円台に突入し1995年7月以来の水準をつけた。ドバイショックも加わって、27日にドル円は一時85円割れとなった。

この急激な円高とそれを受けた株安に対し、政府は日銀に理解を示す藤井財務相(当時)と古川元久、大塚耕平の両内閣副大臣(当時)らが、日銀との調整役となり、27日に藤井財務相と白川総裁が都内で極秘会談を行なった。

29日には首相官邸で、12月2日の首相と日銀総裁の会談でデフレ克服での強調で足並みを揃える段取りを確認したそうで、それが30日の日銀総裁による突然のデフレ発言に繋がったとみられる。

さらに、日銀には金融面から経済を下支えるようにと、政府からもう一押しもあり、政府との対立が決定的となるのを回避するため、講じた政策が12月1日の新オペということになった。

以上が昨年12月1日の臨時の金融政策決定会合の経緯であるが、今回のパターンと非常に似通っていることがわかる。8月10日の金融政策決定会合では日銀は動かず、同日のFOMCでの形式的ながらも追加緩和策により、円高ドル安が進行した。

外為市場では今回もドル円は85円割れ寸前にまで円高が進行している。この円高を受けて日経平均株価は低迷し一時9000円近くまで下落していた。

さて、ここからは推測の域を出ないが、18日の日銀による追加観測は単なる観測だけであったのか、それとも何かしら政府・日銀の動きがあり、それを察知していたものがいたのか。19日の産経新聞では、来週に予定される菅直人首相と白川方明日銀総裁との会談前に、臨時の金融政策決定会合で新型オペの拡充決めるのではないかとの声も出ている、との記事があったが、これは市場観測を記事にしてものなのかもしれないが、気になる記事ではある。

今週はまだ夏期休暇をとっている政府や日銀幹部もいるとみられるものの、昨年末の動きからみても、密かに政府関係者と日銀関係者がトップ会談を前にして、何かしら動きを見せているとしてもおかしくはない。今回もまた日銀は動くのか。白川総裁の発言等に注意が必要となりそうである。


2010.8.18「現代のバーチャル通貨戦争」

近隣窮乏化政策とは、自国の為替レートを切下げることにより、輸出を増やすことにより景気回復を図ろうとするもの。1930年代の世界恐慌期において、世界の列強は意図的に為替相場を切り下げることによる近隣窮乏化政策を行なったものの、所詮はゼロ・サム・ゲームであることにより、他国の報復を招き第2次世界大戦を引き起こす契機となったとも言われている。

リーマン・ショックという大きな金融経済の打撃を受けたものの、欧米諸国は金融緩和とともに大規模な財政出動によって大恐慌の再来は免れたものの、景気回復はままならず、欧米では意図したかどうかはさておき、現代の近隣窮乏化政策を取り始めているとも言える。

サブプライム問題やリーマンショックの本拠地であった米国のドルが売られたものの、実はその打撃を一番受けたのが欧州であったことに加え、ギリシャの財政問題などにより今度はユーロ安が進行し、ドイツなどはこのユーロ安の恩恵を大きく蒙った。

しかし、これに対して米国はFRBを中心に景気悪化を意識する発言を繰り返し、さらにデフレを懸念するようなレポートなどを出したり、結果としては量的緩和拡大ではないものの追加緩和策としてアナウンスメント効果を意識した政策を行ったことで、結果としてドルを下落するよう仕掛けてきたようにも思える。

これに対して、実際にはリーマン・ショックによる経済への打撃を最も被ったはずの日本では、特に為替に対しての戦略は取らず、日銀も景気に対しては回復基調との認識を維持した上で、金融政策については現状維持とし、その結果として日米金利差の縮小から、円高が進行するといった構図になっている。

この円高に対し、政府・日銀はやっと対策に乗り出そうとしています。しかし、その手段は財政出動の伴なう経済対策や追加の金融緩和、さらに為替介入などがピックアップされている。

しかし、欧米では特に実弾での対策を仕掛けているのではなく、市場を意識しての心理戦を仕掛けているように思われる。それならば、日本でも無理に実弾を使わずに、心理戦で対抗手段を講じたらどうであろう。

対ドルについては米国経済以上に日本経済が悲観的であるようにアピールし、先行きの景気見通しについても市場参加者には悲観的なイメージを植えつける。ただし、マスコミなどによる景気回復のための実弾要求に対しては、財政悪化を理由に身動きがとれないことをことさらアピールすることで、財政悪化による円安をも誘導させる。

日銀はバーチャルな金融緩和策には過去に実例がある。つまり再び量的緩和政策を導入し、リザーブ・ターゲットを行ない段階的に日銀の当座預金残高を引き上げることで、追加緩和策をアピールする。うまくすれば日銀総裁の写真がタイムの表紙を飾れる。

量的緩和による経済実態への効果の有無などさておき、それで市場が円安で反応するのならば間接的には効果はありうる。そして国債買入増額も求められようが、それには慎重姿勢をとりながらも、将来いずれかのタイミングで財政悪化により日銀への国債買入増額が求められることになるとして、今のうちに日銀券ルールという社内ルールも取り外した上で、増額を実施しておくことも。ただし、これは将来のインフレを招き兼ねないとしての警告も忘れないように。円安にするならば何でも使えるものは使う必要かある。

為替介入については辞めたほうが良い。単独介入では効果はないことに加え、ヘッジファンドの標的にされる懸念もある。ただし、レートチェックなどは適時行ない、いつでも出撃てきる体制にあることを市場に浸透させておくことも重要である。

以上はあくまで私の妄想の範囲内のものであり、実行しろと提言するものではもちろんない。しかし、市場心理を意識して政策を取ることは今後も重要であり、そのあたりFRBなどはうまくやっているように思えることも確かである。


2010.8.17「為替介入の仕組」

ここにきての円高対応策として、為替介入の可能性が指摘されている。8月12日の東京市場ではレートチェックも実施されたとみられ、介入の可能性も否定できない。現実には欧米でも自国通貨安を意識していることで、協調介入は考えにくい面もある。今回はこの為替介入とはそもそも何であるのかを再確認してみたい。

外国為替市場における介入は「外国為替平衡操作」と言われるが、この言葉にはあまり馴染みがない。「外国為替平衡操作」とは、中央銀行や財務省等の通貨当局が、外国為替相場に影響を与えることを目的に、外国為替市場で通貨間の売買を行うことで、日本においては円相場の安定を実現するために、「財務大臣の権限」において実施されるとある。要するに介入である。日銀は、財務大臣の代理人として、財務大臣の指示に基づいて為替介入の実務を遂行している。日銀による為替介入という表現が良く使われるが、指示は財務大臣から出されている。

政府はこの為替介入資金を調達するために、外国為替資金証券(FB)を発行している。この外国為替資金証券は無制限な発行を防ぐため、毎年度の予算で発行残高の上限が規定されている。例えば、2003年度発行限度額は当初予算総則で決められた79兆円から100兆円に拡大した。更に2004年度予算案では発行限度額を140兆円に増額している。また、当時の臨時措置として、政府と日本銀行は、外国為替市場での円売り介入に使用する円資金が不足する場合に、政府が外貨準備で保有している米国債券を日本銀行に売却して必要とする円資金を調達することができる契約を結んだ。

参考までにこの外貨準備とは、通貨当局が為替介入に使用する資金であるほか、通貨危機などによって、他国に対して外貨建債務の返済などが困難になった場合に使用する準備資産である。その内訳は、大きく分けて、外貨証券、外貨預金、IMFリザーブポジション、SDR、金となっている。 財務省(外国為替資金特別会計)と日本銀行が外貨準備を保有しているが、日銀は、国際金融協力の実施などに備えて、外貨準備のうち、金と外貨資産の一部を保有しているにすぎない(金額で数兆円?)。


2010.8.17「景気低迷と円高への対応策と債券相場」

8月12日の東京市場では、ドル円が15年ぶりに85円を割込むなどの円高が進み、政府・日銀は対応に追われた。日経新聞によると12日の正午過ぎにレートチェックを実施した模様である。この日の午後には財務省の玉木財務官と日銀の中曽理事が為替市場についての意見交換を行い、その後夕方には野田財務相が「無秩序な動きは金融経済に悪影響がある」と発言し、白川日銀総裁も「国内経済への影響を注意深くみていく」と発言(日経新聞)し、いわゆる口先介入を行った。

2003年から2004年にかけて政府は積極的な為替介入を行った。しかし現在では、欧米でも自国通貨安を意識していることで、協調介入は考えにくく、単独介入ではその効果も限定的となろう。

10日の決定会合では日銀は動かず、同日のFOMCでの形式的ながらも追加緩和策により、円高ドル安が進行したともみられることで、日銀に追加緩和を求める声もある。これまでも日銀は円高によるプレッシャーを受けて動いたこともあるとみられることで、追加緩和の可能性は否定できない。

さらに、内閣府が16日に発表した4〜6月期GDP速報値によると、物価変動の影響を除いた同期の実質GDPは前期比0.1%増となり、前期比プラス0.5%との予想を大きく下回った。特に個人消費は薄型テレビのエコポイント対象商品が3月末に変更されたことなどに伴う駆け込み需要の反動減が出たため、横ばいにとどまった模様である。

この円高や、弱かったGDPを受けて、政府はエコポイント制度の延長などの追加経済対策の検討に入った。追加対策の財源として2010年度予算に計上した「経済危機対応・地域活性化予備費」のうち約9000億円と、2009年度一般会計決算の純剰余金のうち約8000億円の計1兆7000億円程度を使い、国債の増発は避けるとみられる。

今回も政府の追加経済対策に呼応して、日銀も動くことにより、政府・日銀が一丸となって円高・景気対策に望むという図式となりそうである。実質的な効果はさておき、これによるアナウンスメント効果はある程度望めるであろう。ちなみに、10日に開催されたFOMCでは、減速傾向が強まりつつ会った景気の回復をサポートするために、MBSの償還資金による国債への再投資を表明した。これをFRBは追加緩和と称したが、量的緩和策を拡大したわけではなくこれもアナウンスメント効果狙いであった。

米国のみならず日本でもあまり踏み込んだ対応策は財源の問題もあり望みづらい。その中にあって少しでも効果を引き出すための、アナウンスメント効果は必要となろう。ただし、それに反応してしまいがちなのが債券相場である。

日本の10年債利回りは1%を大きく割りこんでおり、米国の10年債利回りも17日に2.5%台にまで低下している。日本の10年債利回の水準は2003年以来であり、2003年の債券相場の状況とも酷似していることで、急落が再び引き起こされる可能性もある。景気低迷と円高への対応策とともに、債券相場の動向についても政府・日銀は注意を払う必要があろう。


2010.8.16「中国のGDPが日本を上回る」

内閣府が16日に発表した4〜6月期GDP速報値によると、物価変動の影響を除いた同期の実質GDPは前期比0.1%増となり、前期比プラス0.5%近辺かとの予想を大きく下回った。

民間最終消費支出は、実質0.0%(1〜3月期は0.5%)、名目マイナス0.3%(1〜3月期は0.4%)となった。そのうち、家計最終消費支出は、実質0.0%(1〜3月期は0.5%)、名目▲0.3%(1〜3月期は0.4%)となった。家計最終消費支出(除く持ち家の帰属家賃)は、実質マイナス0.0%(1〜3月期は0.6%)、名目マイナス0.4%(1〜3月期は0.5%)となった。個人消費は薄型テレビのエコポイント対象商品が3月末に変更されたことなどに伴う駆け込み需要の反動減が出たため、横ばいにとどまった模様である。

民間企業設備は、実質0.5%(1〜3月期は0.6%)と3四半期連続のプラス。民間在庫品増加の成長率への寄与度は実質マイナス0.2%(1〜3月期の寄与度は0.0%)。民間住宅は、実質マイナス1.3%(1〜3 月期は0.3%)となった。

また、GDPデフレーターはマイナス1.0%(1〜3 月期は0.3%)。国内需要デフレーターはマイナス0.7%(1〜3 月期は0.6%)。財貨・サービスの輸出デフレーターはマイナス0.5%(1〜3 月期は1.2%)、財貨・サービスの輸入デフレーターは2.0%(1〜3 月期は3.6%)。

そして日経新聞によると、日本の4〜6月期の名目GDPがドル換算で中国を下回ったと伝えた。内閣府の試算によると日本は1兆2883億ドル、中国は1兆3369億ドルとなった模様。ただし、季節調整をかけない原数値での試算のため、暫定的なものではあるがどうやら足元の経済規模は中国が日本を上回ったとみられる。

中国のGDPが日本を上回るのは時間の問題とみられていたが、実際に数値として出てきたことで、とくに米メディアが相次いでこれについての速報を流すなど関心の高さを示した。

これまでの中国の成長力の高さは言うまでもないが、経済規模自体も日本を凌駕してきたことの衝撃は大きい。日本の成長力を高めるにはどうしたら良いのか。デフレ対策と称して日銀の金融政策に責任を負わせるのではなく、日本の成長基盤を再構築し新たな成長産業を掘り起こし、中国と良い意味での経済規模競争を行う必要がある。しかし、そのための司令塔がいない。


2010.8.13「円高けん制」

12日の東京市場ではドル円が15年ぶりに85円を割込むなどの円高が進み、政府・日銀は対応に追われた。日経新聞によると12日の正午過ぎにレートチェックを実施した模様である。菅首相の「動き激しい」との発言もあったが、この日の午後に為替市場では円売りドル買いが進み、日経平均も下げ幅を縮小させた。政府・日銀の対応にひとまず相場は反応した格好となった。

午後には財務省の玉木財務官と日銀の中曽理事が為替市場についての意見交換を行い、その後夕方には野田財務相が「無秩序な動きは金融経済に悪影響がある」と発言し、白川日銀総裁も「国内経済への影響を注意深くみていく」と発言(日経新聞)し、いわゆる口先介入を行った。

2003年から2004年にかけて政府は積極的な為替介入を行った。しかし現在では、欧米でも自国通貨安を意識していることで、協調介入は考えにくく、単独介入ではその効果も限定的となろう。

10日の決定会合では日銀は動かず、同日のFOMCでの形式的ながらも追加緩和策により、円高ドル安が進行したともみられることで、日銀に追加緩和を求める声もある。これまでも日銀は円高によるプレッシャーを受けて動いたこともあるとみられることで、臨時の会合開催の可能性は否定できない。

しかし、12日のニューヨーク外為市場ではドルが円だけでなく他の通貨に対しても買われるなど、やや流れに変化も生じた。急激な円高ドル安の流れがとりあえず、レートチェックや口先介入をきっかけに、いったんブレーキはかかった。

お盆休みの関係者も多いとみられるものの、市場は待ったなしとも言えることで、今週末にかけて政府・日銀がさらなる協議を行ない円高対応策を検討してくるとみられる。市場もかなり神経質になっているのが12日の相場の動きからも読み取れる。このような際にある程度効果的な手を打つと、その反応も大きくなり市場が動く可能性がある。ただし、その「ある程度効果的な手」が何かあるのか。政府・日銀の次の一手に注目してみたい。


2010.8.11「日本初のマネーの製造時期が明らかに」

続日本紀などによると、708年の和銅元年にわが国最初の「公鋳貨幣」として「和同開珎」が律令制府により鋳造されたとされている。701年に「大宝律令」が完成し、平城京への遷都の準備中でもあった矢先に、現在の関東地方の武蔵国秩父郡で和銅が発見された。遷都などで大量の資金が必要としていた政府は、中国などに習って貨幣発行の準備していたところでもあり、政府は年号まで「和銅」と改元して、わが国最初の公鋳貨幣を発行したと記されているものの、実は明確な証拠はなかった。

毎日新聞によると、山口県下関市教育委員会が10日に日本初の流通貨幣「和同開珎」が鋳造されていたとされる同市長府逢坂町の国史跡「長門鋳銭所跡」から「天平二年(730年)」と記された木簡が出土したと発表した。

これまでは前述のように文献史料から「708〜760年ごろ」と推定されてきたが、和同開珎の製造時期を初めて裏付ける根拠となる資料が出てきた。参考までに、この和同銅銭には1個1文の価値が付され、江戸時代末までの約1200年間にわたって日本の貨幣制度のなかで重要な役割を果たした通貨である。いわば円のプロトタイプと言える。

その円がドルやユーロに対して買われている。日本の円に対してそれほど魅力があるのか。和同銅銭が長らく流通したのは、それだけ信用力があったためと思われるが、日本の現在の円に対しての信用力はそれほど強いものなのか。

円が強いのではなく、ドルやユーロを弱くさせて欧米の輸出産業の業績改善を計り、景気てこ入れとするとの思惑などがどれだけ働いているかはわからない。しかし、10日のFOMCでのMBSの償還資金による国債への再投資表明などは、かなりアナウンスメント効果を意識したものと言える、その背景にはドル安を意識したものとも言えるのではなかろうか。巨額の債務残高を抱え、デフレは続き、さらに政治も不安定な国ながらも、それでも円の信用力が強いことに越したことはない。しかし、それにより欧米の景気回復のために日本の景気回復が取り残され、実際の国力が落ち込むこととなれば、今の円の強さは虎の皮を被せられた猫に過ぎないこととなる。


2010.8.11「FOMCではMBSの償還資金による国債への再投資を表明」

10日に開催されたFOMCでは、減速傾向が強まりつつ会った景気の回復をサポートするために、MBSの償還資金による国債への再投資を表明した。

「To help support the economic recovery in a context of price stability, the Committee will keep constant the Federal Reserve's holdings of securities at their current level by reinvesting principal payments from agency debt and agency mortgage-backed securities in longer-term Treasury securities.1 The Committee will continue to roll over the Federal Reserve's holdings of Treasury securities as they mature.」(10日発表のFOMC statementより)

3日付のWSJが、FRBは今回のFOMCで保有モーゲージ債(MBS)の償還資金を再投資し、バランスシートの規模を維持することを検討と報じたが、結果としてはその報道の通りの内容となった。バーナンキFRB議長も「追加緩和の手段」として明確な時間軸の導入や超過準備預金の付利金利の引き下げとともに、MBSの償還資金の再投資の3つを指摘していた。つまりは、これは追加緩和策としての位置づけである。

ただし、実際にはFRBのバランスシートを維持することであり拡大するわけではなく、追加の緩和策との表現が適切かどうかはさておき、かなりアナウンスメント効果も意識したものとも言える。緩和的効果が得られることは確かかもしれず、これにより一時市場に出ていた出口政策に向けての動きは後退した。ちなみに日銀も保有する国債が償還を迎えた際には、1年間だけTBで乗換を行っている。FRBはこのような日銀の過去の対応を分析し、手段の限られた中での緩和効果を引き出そうとの努力の現れが今回の結果となったようにも思われる。


2010.8.10「渡辺氏、日銀総裁に公開討論を求める」

ロイターによると、日銀が本日現状の金融政策を維持することを決めたことをめぐり、中川秀直、山本幸三、渡辺喜美衆議院議員は3氏の連名で、日銀の白川方明総裁に対し、早急に公開討論会を設定するよう求める文書を送付したそうである。

この3人の政治家は所属政党は自民党とみんなの党に分かれているものの、現状の日銀の金融政策については批判的な意見を繰り返し述べている。ある意味、アンチ日銀の急先鋒とも言える。この3人が所属政党を乗り越えて、手を結んだことには今後の政局の流れにも微妙な影響を与えそうである。

同文書では、3氏は「わが国経済の置かれた環境を一顧だにしない無策と判断している」と批判し、その上で「(討論会の)日時、形式は日銀の意向を尊重する。遅くとも、次回の政策決定会合までには必ず開いていただきたい」としている。

3氏は、文書を通じて「物価上昇率は依然としてマイナスのままであり、デフレ脱却の気配はみえない。こうした状況を打開するためには、CPI上昇率2%程度の物価安定目標を設定し、その達成のために20兆円規模の量的緩和が必要」と主張している。

白川総裁も以前に指摘していたように、ある意味時代遅れのインフレターゲット論者による強行意見とも言える。デフレの責任を日銀に押し付け、その効果が疑問視されている量的緩和策の再導入を提案している。20兆円の数字にどのように理由があるのか。そもそもそれでどのように物価上昇に波及そせられるのか。その意味では確かにその公開討論は面白いかもしれない。理論武装では日銀にはかなうまい。しかも、相手が「現場」とともに金融理論に精通している白川総裁である。白川総裁はここはいつものおとなしいスタイルを改め、真正面でこの3人とぶつかり合ってほしい。日銀法改正まで言及している渡辺氏だが、その意見が本当に正しいのか、この公開討論をみた国民があらためて判断を下してきるのではなかろうか。


2010.8.10「金融政策は現状維持、景気認識はほとんど変化なし」

9日から10日にかけて開催された日銀の金融政策決定会合の結果は、全員一致で政策金利の現状維持を決定した。同じ日に開催される米FOMCで追加緩和策が決定されるのではとの思惑も手伝い、もしFRBが追加緩和を行ない日銀が現状維持となった際に、円高ドル安の進行などを懸念する声もあった。しかし、前回の7月15日から今回らかけて確かに円高は進行してはいるが、経済実態については大きく後退したような気配はなく、むしろ政策変更を行うこと自体に無理があったように思われる。これは米国も同様であり、政策変更をFRBが行うとするならば何を根拠に行うのであろうか。

それはさておき、それでは今回の日銀の決定会合での発表分と前回7月15日のものを比較してみたい。

(今回)わが国の景気は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつある。すなわち、新興国経済の高成長や世界的な情報関連財需要の拡大などを背景に、輸出や生産は増加を続けている。設備投資は持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。そうしたもとで、個人消費は持ち直し基調を続けている。公共投資は減少している。この間、金融環境をみると、緩和方向の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落しているが、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。

(前回)わが国の景気は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつある。すなわち、新興国経済の高成長や世界的な情報関連財需要の拡大などを背景に、輸出や生産は増加を続けている。企業収益や企業の業況感は引き続き改善しており、設備投資は持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。そうしたもとで、個人消費は持ち直し基調を続けている。公共投資は減少している。この間、金融環境をみると、緩和方向の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落しているが、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。

もちろん、お盆休みを控えて日銀の担当者が手を抜いたわけではないと思うが、前回は短観発表後であったことで、設備投資について「企業収益や企業の業況感は引き続き改善しており、」という文面があったことを除けば、全く変化はない。

(今回)先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、回復傾向を辿るとみられる。物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小していくと考えられる。

(前回)先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、回復傾向を辿るとみられる。物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小していくと考えられる。

比較する意味すらない。まさにコピペとも言える。それだけ経済の見通しにも変化はなかったと言うことであろう。

(今回)リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の更なる強まりなど上振れ要因がある。一方で、国際金融面での動きなど下振れリスクもある。この点、一部欧州諸国における財政・金融状況を巡る動きなどが、国際金融資本市場の動きを通じて内外の経済に与える影響に注意する必要がある。物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。

(前回)リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の更なる強まりなど上振れ要因がある。一方で、国際金融面での動きなど下振れリスクもある。この点、一部欧州諸国における財政・金融状況を巡る動きが、国際金融や世界経済に与える影響に注意する必要がある。物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。

ここには微妙な差異がある今回は「一部欧州諸国における財政・金融状況を巡る動きなどが、国際金融資本市場の動きを通じて内外の経済に与える影響に注意する必要がある。」として、国際金融面では欧州以外にも存在する可能性を指摘している。ここにきての円高なども懸念要因として認識している可能性がある。「国際金融資本市場の動きを通じて内外の経済に与える影響に注意する必要がある。」として国際金融市場の動きに対する警戒心を前回よりも強めている。

(今回)日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。

(前回)日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。

こちらはまさに、コピーアンドペースト。以上のように政策変更する理由には全く乏しい状態と日銀は認識していることが伺える。ただし、国際金融市場には注意する必要性を認識している。日銀は足元景気の見通しについて楽観的すぎるとの意見も聞かれるが、円高進行もあるとは言えも日本経済が景気認識を改める必要があるほど悪化していることを示すようなものも出ていない。日銀の金融政策への過度な期待は毎度のことでもあるが、冷静にファンダメンタルを認識しておことも必要であろう。


2010.8.9「米国の追加緩和の可能性」

8月6日に発表された7月の米雇用統計によると、失業率は9.5%と前回と変わらずとなったが、非農業雇用者数は前月比13.1万人減となり、予想の8.7万人程度よりも減少した。注目された民間部門の雇用者数も7.1万人増に留まり、予想の8.3万人程度よりも少なかった。

3日付のWSJが、FRBは今月10日のFOMCで保有モーゲージ債(MBS)の償還資金を再投資し、バランスシートの規模を維持することを検討と報じた。バーナンキFRB議長も追加緩和の手段として明確な時間軸の導入や超過準備預金の付利金利の引き下げとともに、MBSの償還資金の再投資の3つを指摘していた。

さらにブラード・セントルイス地区連銀総裁は先日発表した論文(Seven Faces of The Peril)で、米連邦公開市場委員会(FOMC)の(声明にある)長期間との文言は、米経済が日本のような結果(デフレ)に陥る確率を高めている可能性がある」とした。さらに「米国の量的緩和政策は、そのような結果を回避するうえで最善の措置」と指摘した。つまり、一段の米債買い入れを検討すべき、との見方を示した。

米雇用統計の内容が事前予想よりも悪かったことで、10日のFOMCで追加緩和観測が強まり、その内容として米国債の買入という量的緩和政策が検討されるのではないかとの観測が強まっている。

しかし、現時点での米国追加緩和の可能性はそれほど高いものなのかは、疑問である。ルービン、オニール両氏が米経済は緩やかに改善する見通しであり、新たな財政刺激策を講じたとしても恐らく効果は見込めないとの見解を明らかにし(ブルームバーグ)、市場ではあまりに楽観的な見方過ぎるとの声もあった。しかし、市場の見方があまりに悲観的すぎる、もしくはFRBの追加緩和への期待度が高すぎるとも言えまいか。

ここにきて発表されている米経済指標は、良いものもあれば悪いものもあり、それにより米株式市場は一喜一憂し、上げ下げが繰り返されてきている。市場でも景気の先行きについては、あくまで不透明感の強さは感じるものの、急激や悪化や二番底を本格的に懸念すべき状況でもない。6月のFOMC以降、追加緩和を行うような状況に本当に追い込まれているのか。米国の金利動向を見ても、追加緩和期待が背景にあるとは言え、すでに2年債など一時0.5%割れとなり過去最低水準にまで低下しており、追加緩和により、さらなる金利の引き下げを通じて民間金融環境の改善を促す必要性があるのであろうか。

今回のFOMCでは、追加緩和の検討が議論される可能性はあるものの、実際には現状維持とされる可能性もありうる。追加緩和への期待だけでも、ドル安を進行させ長期金利を低下させてきている。梯子を外されると一時的な反動があるかもしれない。しかし、今後も追加緩和の可能性を匂わすことで、市場の期待を継続させ実際の緩和効果と同様の効果をもたらす可能性もある。


2010.8.6「8月6日の牛さん熊さんの本日の債券」

熊「ご無沙汰しております」
牛「7月はまったく顔を出さなかったことで、ついてに牛熊コンビは解散説も流れたようやが」
熊「強気と弱気が解散しちまったら、相場にならねえだろうが」
牛「しかし、いつの間にやら、日本の長期金利は1%を割り込んでいたようや」
熊「8月4日に10年309回債の利回りは0.995%をつけて、2003年8月以来の長期金利の1%割れだとか」
牛「7年ぶりというのは、惑星探査機のはやぶさが打ち上げられて地球に帰ってきたのも7年ぶり」
熊「そのはやぶさのカプセルを作者は昨日、つくばで見てきたそうだが、本当に良く帰ってきたなあ」
牛「ついでにデフレもまた帰ってきてしまったかのような、長期金利の1%割れとなったが」
熊「さすがに2003年には、VARショックと言われた国債価格の急落もあったことで」
牛「1%割れまでにはそれなりの時間も掛かり、1%割れそのものも一時的なものとなった」
熊「投資家さんもかなりの慎重姿勢であったしみられるけど、まだ過熱感といったものもなく」
牛「さすがにいったんは利益確定売りに押され、今日は1.060%に利回りは上昇していたようやが」
熊「1%割れは、はやぶさのイトカワへの着陸のようにワンタッチ、いや着陸は2回あったので、ツータッチとなるのかどうか」
牛「それには、意外と米国債の動向が焦点となる可能性がある」
熊「2003年に長期金利が0.43%まで低下した背景には、米国債が買われたことも大きな要因となっており」
牛「その後の相場急落のひとつのきっかけが、FRBによる追加緩和観測の後退による米債の反落があった」.
熊「来週には、日銀の金融政策決定会合とともに10日にはFOMCも開催される」
牛「追加緩和観測というか期待もあるようだが、とりあえず今日発表される米雇用統計を確認しないと」
熊「ということもあってか、今日の東京市場、日経平均先物そして債券先物は10時半あたりに、仕掛け的な動きがあった」
牛「日経平均先物にはまとまった買いが入り、債券先物にはまとまった売りが入った」
熊「雇用統計前でいったん、ヘッジファンドなどがポジションをアンワインドさせてきた可能性もある」
牛「その後、債券先物は後場に入りさらに下げる場面もあったが、大きくは崩れず」
熊「日経平均は再度下げ幅を拡大した場面もあったが、前日引け近くまで値を戻してきた」
牛「日経平均は前日比11.80円安の9642.12円での引け、そして債券先物は14銭安の141円87銭で引けている」
熊「今日の米雇用統計、来週の日銀の決定会合に、FOMC、そして米債の入札」
牛「日本でも5年国債の入札も予定されているが、こちらは銀行さんのニーズもあって特に問題はなさそうやが」
熊「来週はお盆休みを取る市場参加者も多いとみられ、東京市場は閑散に売りなしとなるのか」
牛「それは株式市場なのか、債券市場なのか」
熊「さて、どっちだろうか」
猫「iPhone4向けSIMカードが発売されると、ドコモ回線で利用可能になるそうね」
熊「作者はこのニュースを見て、ピクっとしていたぞ。どうやら、海外で販売されているiPadも利用可能となるとか」
猫「それよりも、おひさしゅうございます。作者さんは、ふたたびぼちぼちと登場させたいとお申しており」
牛「今後の牛さん熊さんの動向にもご注目いただければと存じます」


2010.8.6「7年ぶりに帰ってきたはやぶさと日本のデフレ対策」

昨日5日に、筑波宇宙センターにて開催されている「はやぶさ」特別展で、小惑星探査機「はやぶさ」の回収カプセルの一部を見てきた。2日から始まった展示でヒートシールドは2日と3日だけの公開であったが、インスツルメントモジュールと搭載電子機器部、そしてパラシュートの実物を見ることができた。混んでいるとの情報もあったが、4日はあまり待ち時間がないとの情報もあったことで、夕方4時頃に行ったのだが、待ち時間はゼロであり、じっくりと見ることができた。はやぶさの帰還については、日本の技術を世界に知らしめるなど驚異的なものであり、よくぞ戻ってきたというのが実感である。カプセルを打ち出したあと、本体が燃え尽きる姿はまさに感動的なものがあった。

さて、このはやぶさが打ち上げられたのが2003年5月9日である。5月9日の債券相場を振り返ってみると、当日30年国債が1%をつけるなど軒並み過去最低利回りを更新していた。10年債利回りは0.580%と1%をはるかに下回っていた。

7年ぶりに、はやぶさが地球に帰還するとともに、日本の長期金利も7年ぶりに1%を割り込んだということは、つまりはやぶさが苦労して飛行を続けていた7年もの間、日本のデフレは結果として解消されることなく、長期金利は低位安定し続けていたこととなる。

はやぶさはイトカワへの着陸後、行方不明になり、またエンジンのトラブルにも見まわれながら、もしものことを見通して作っておいたバックアップシステムなどが功を奏し、粘り強い管制により、無事に帰還させている。このミッションそのものを日本のデフレ対策にも応用できないものであろうか。

民主党のデフレ議連などの動向を見る限り、デフレ対策を日銀な押し付けているかのように思われる。その半面、日銀は需給不足を原因とすることで金融政策には限界があるとしている。政府と日銀は協力してデフレへの対応を行っているとしているが、お互いの様子を伺いながらでの姿勢のようにしか見えない。

はやぶさのミッションとデフレ対策を同じように考えることは無理もあろうが、それでもデフレ対策をひとつのミッションとして、政府・日銀・財界さらに学識研究者などを総動員して、一度、具体的な対応策を検討してみてはどうであろうか。たまたま今回は7年ぶりという区切りでもあったことで、今後7年間の間でデフレを解消すべき手段を公の場で検討し、そのミッション成功に向けての具体策を講じてはどうであろうか。もちろん財政再建に向けてのミッションと併用である必要もあるのだが。


2010.8.5「2003年の1%割れ後の債券急落を振り返る」

昨日、アップさせていただいたコラム「長期金利が1%割れに」へのブログへのアクセス数が、3068人といきなり大きく急増した。これは長期金利の低下に対しての関心度の高さを示すとともに、過去にあった1%割れの状況を知りたい方が多かったためと思う。そこで、今回はあらためて2003年の債券急落について、過去の債券の暴落時の様子とともに当時の状況をもう少し詳しく振り返ってみることにする。

国債の流動化があまり進んでいなかったころに、国債は一度大きな暴落を経験している。それが、「ロクイチ国債」と呼ばれた国債の暴落である。1978年は、当時とすれば低金利局面であり、4月には利率6.1%(通称、ロクイチ国債)の国債が発行された。それまで発行された10年国債の最低利率であったこともあり、金利上昇に伴う価格下落が懸念された。1979年4月以降は、本格的な金利上昇局面となり、国債価格は大きく下落した。5月には国債価格下落を防ぐために、国債整理基金による公開入札形式の国債買い入れが実施されたにもかかわらず、景気拡大や原油価格の上昇により、6月にはロクイチ国債の利回りは上昇し9%を超えてきた。1980年、日銀は2月、3月と立て続けに公定歩合を引き上げた。このため、長期金利も大きく上昇し、ロクイチ国債は暴落した。4月にロクイチ国債の国債の利回りが12%台にまで上昇し、金融機関がパニック状況に陥ったのである。その後、米国金利の急激な低下などによって市況は急回復したが、このロクイチ国債の暴落は大蔵省(現、財務省)の国債管理政策にも大きな影響を与えたとされている。

2003年の国債急落とロクイチ国債を比較できるものではないが、2003年のときも極端なまでに利率が引き下げられた国債が入札されたことが急落のきっかけになっている点は類似している。2003年6月17日に実施された20年国債の入札において、超長期国債としては初めて利率が1%を割り込み0.8%となった。

2002年9月20日を基点に国債の金利は下げ続けていった。日銀による時間軸効果によって、中短期債から利回りが低下し、最後には超長期ゾーンへの積極的な買いが入った。先行きの相場上昇期待が極端に強まった。10年の利回りは0.3%とか0.2%まで低下するとの見方も出ていた。ほぼ一方的な上昇相場であり、債券の値動きも小さくなっていたことで、リスク管理上大きな要因にもなるボラティリティも低下し続けていった。債券への投資環境としては文句ない状況が続いていたのである。

しかし、それが長く続くわけでもないことは、ある意味当然ともいえる。上がったものはいつかは下がる。当初、米国債が下げ始めた。米国株式市場の上昇に影響され、東京株式市場は出来高を伴なって上昇してきた。また、債券先物は限月が6月11日から9月限に変わってから様相が変わってきた。大手銀行が6月限を大量に現引きし、中期主体にポジション整理に動き始めたとも言われた。そんな最中に20年国債の入札が実施されたのである。

落札結果自体は決して悪くはなかった。しかし、買い手が大きく変化していた。これまだ大量に超長期を買っていた大手生命保険会社が買いを控えたことが明らかとなった。また、中期を売っていた銀行が超長期を買うとの期待もあったが、それもなかった。結局、落札した業者は先物でヘッジせざるを得なくなり、これが急落の要因ともなった。

7月3日に10年国債の入札が行われた。利率は前回の0.5%から0.9%へと大きく引き上げられたが、結果はかなり不調なものとなり、10年国債の利回りはついに一時1%台に乗せ1.125%にまで上昇したのである。さらに4日には10年251回債は一時1.400%まで利回りが上昇し6月11日につけた0.43%からは1%近い利回り上昇となったのである。この日、先物も137円76銭とストップ安近くまで急落した。ところが、大手の機関投資家が数千億円とも思われる買いを10年主体に入れてきたことで今度は相場は急反発した。先物は140円38銭まで上昇し、一日の値幅が2円62銭となり債券先物としては、1985年11月1日に次いで二番目の記録となったのである。


2010.8.4「長期金利が1%割れに」

日本の長期金利が2003年以来7年ぶりの1%割れとなった。2003年6月に長期金利は0.430%にまで低下した。このときの長期金利の低下要因は、日本のデフレの長期化観測が根幹にあり、その上、欧米でもデフレへの懸念が強まったことで金融緩和期待から長期金利が低下し、それが日本にも影響を及ぼした。つまりは今回の日本の長期金利低下と背景と酷似している。

ただし、2003年の際の長期金利低下には銀行のリスク管理手法に大きく影響を受けた。長期金利の低下、つまり国債価格の上昇の際には大きな価格変動を伴わなかったこともあり、リスク許容度が増加したことから金融機関の国債保有が大きく増加し、デュレーションが長期化した。みんなで買えば怖くないといった状況となり、行き過ぎたと思った際には今度は売り手一色となってしまい、急落を招いたのである。

この急落を佐野一彦氏は「VARショック」と名付けた。この「VARショック」の経験もあってか、今回の長期金利の低下の動きは慎重のようにも見える。しかし、結果として銀行などの買いにより、長期金利が1%割れとなり、再び2003年の債券相場の急落が頭をよぎる。

2003年6月の相場の反落の際には、堅調だった米国債がFRBによる大幅な利下げ期待の後退で売られたことや、米国株式の上昇を受け日経平均が9000円台に乗せるなどやや外部環境が変化したことがひとつの要因となっていた。

また、当時も超長期ゾーンに対しての投資層が拡大し、都銀ばかりか地銀なども参入してきていた。相場がほぼ一本調子の上昇であったことで、証券会社などの業者も在庫を抱えてもヘッジをすることが少なくなってきた。つまりそれだけ先物のヘッジ機能が失われつつあったと思われる。国債の入札時なども、とりあえずノーヘッジで問題はなく、むしろヘッジをかけたときの損失の方が気になるくらいであった。まさに総強気が蔓延していた。

実はこういったときが一番危険だということは、相場を長く経験していた者ならば理解できよう。ただ、それでも流れに乗るためには、当時も今回も買うしかなかったのも事実である。気をつけるべきはそのターニングポイントである。

2003年6月の相場の際のターニングポイントは17日の20年国債の入札であった。20年国債の利率が0.8%にまで下がり、大手生命保険が買いを控えていたことがわかり、これをきっかけに相場は急落したのである。

今回の債券相場の上昇には、さほど過熱感もない。しかし、1%割れとなったことで相場上昇が仮に加速されるような結果となった際には、2003年6月の際と同様のことが起きる可能性も意識しておく必要がある。


2010.8.3「長期金利はなぜ低位安定しているのか(その2)」

さて、白書では2008年度の財政収支悪化について、循環的要素、つまり景気悪化要因によるところが大きいが、それとともに景気対策などの裁量的財政政策による収支悪化も大きいとしている。2002年度以降の構造的基礎的財政赤字はGDP比で減少してきたものの、2008年度には、急速な景気悪化に対応するため、裁量的支出等が拡大し構造的財政赤字は再び拡大した。その上、2009年度はさらに急速な悪化が見込まれている。

財政赤字の拡大はいずれ長期金利の上昇圧力となるのは確かである。市場における国債需給の悪化懸念がその要因となろうが、国内に潤沢な「貯蓄」があれば、財政赤字のファイナンスに対する懸念が生じないことも考えられると白書は指摘している。

潤沢な国内貯蓄を有する国では、長期金利の動向が景気状況や財政状況に左右される程度は低い傾向にある。日本の場合も、国内の貯蓄超過の存在によって、財政状況が悪化しても長期金利が低く抑えられている面があると考えられる。しかしながら、今後さらに高齢化が進展すると、これまでのような貯蓄超過が続かない可能性も高い。すでに日本の貯蓄率が低下傾向にある点には注意が必要であり、長期金利の先行きについては当然ながら楽観することはできない。

興味深いことに白書では、日本の長期金利の低さの要因として、国債の国内保有比率の高さについては否定的な見方をしている。日本における国債の国内保有比率は9割を超え、5割程度のアメリカや6割程度の英国など欧米諸国に比べると高い。国内資金でそのほとんどが賄われていることで日本国債の価格は安定しているとの見方がある。しかし、国内の貯蓄超過と国債の国内保有比率の高さは連動し、必ずしも国内保有比率の高さそれ自体が長期金利を押下げているわけではないとも考えられる。

これについて、国債の国内保有比率と長期金利に明確な関係は見られない点を海外との比較で示している。例えば、ドイツやイタリアはアメリカよりも国債の国内保有比率が低いが、長期金利はアメリカよりも低い傾向にある。日本は他国よりも突出して国債の国内保有比率が高いが、過去の動きを見ても常に長期金利が最も低いとはいえないことも確かである。また、アメリカについては、国債の国内保有比率は50%程度から80%程度まで年によって変化しているが、国内保有比率が高い時期の方が長期金利は高い傾向さえ見られる。これは裏をかえせば、日本国債はその9割以上を国内資金で賄っているから必ずしも安全だとは言い切れないことを示している。

日本やドイツのような経常黒字国は他国に比べて長期金利が低い傾向にあり、潤沢な国内貯蓄が長期金利の抑制要因になっていることが示唆される。

長期金利は国債の需給にも当然ながら影響される。長期金利の抑制に重要なのは貯蓄という資金フローが潤沢にあることであり、発行済の国債を誰が保有しているかというストック面での保有構造とは直接的な関係が薄いとも理解できようと白書は指摘している。

結論とすれば、日本の長期金利の低位安定の最大の要因は、経済成長率と物価上昇率が低いことにある。つまりはデフレの状況下にあっては、長期金利そのものの上昇は考えづらい。

しかし、財政悪化により長期金利に財政リスクプレミアムが上乗せされる懸念があり、白書ではすでにそれが生じつつあるとの指摘である。それでも潤沢な国内貯蓄がある限りは長期金利の抑制要因ともなることで、現実の長期金利は低位安定を続けている。

この白書の分析では、国債の国内保有比率と長期金利に明確な関係は見られない点を指摘しているが、仮に国内資金が賄えなくなった場合には、日本の長期金利の上昇圧力になる可能性がある。日本と米国、さらにドイツ国債との利回り格差はかなり縮小してきてはいるが、まだ開きがある。海外投資家が日本国債の投資を行う際には、米債やドイツ連邦債と比較してある程度の利回りを求めてくるとみられ、それが日本の長期金利の上昇圧力になる可能性はある。

ただし、もし仮に日本国債が国内資金で賄えないということが、現実化するようなことがあれば、すでに国債市場では先を見越してのパニック的な売りが入り、長期金利が大幅に上昇している可能性もある。

確かに現状の日本の長期金利は経済白書の指摘のように低位安定し、それが大きく上昇することはファンダメンタルズなどから見ても考えにくい。しかし、いつまでも財政リスクプレミアムを抑えこむことも難しく、このまま低位安定し続けるとも言い切れないことも確かなのではなかろうか。


2010.8.2「菅首相のインフレターゲット発言」

菅直人首相は衆院予算委員会で、現在の日本のデフレ状況について「何とか長年続くデフレ状況から脱却しなければ(ならない)。日本の経済(成長)、財政再建はここからスタートすることが重要」との認識を示し、「デフレ脱却議連の提示している考え方は、基本的に私自身と共通の考え方だ」と語った。

デフレ脱却議連は提言の中で、政府が2─3%の間で消費者物価指数(CPI)の上昇率目標を設定し、日銀が目標の上下1%以内にCPIを維持するインフレ目標の導入を掲げているが、これについて菅首相は「インフレターゲットの設定を政府が行い、手段は日銀に任せるという考え方は確かにある」としながら、「現実には、政府と日銀がかなり議論しており、この間、ほぼ同一の目標で行動している」と指摘。「日銀には、ある程度の自主性が認められているが、政府と協調してやっていくと理解しており、現実に協調してやってもらっている」と政府と日銀の協調姿勢をアピールした(以上、ロイターより)。

日銀法第4条に、「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」とある。ただし、第3条には「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。」ともあり、菅首相の「ある程度の自主性が認められているが、政府と協調してやっていくと理解」はその意味では正しい。

「インフレターゲットの設定を政府が行い、手段は日銀に任せるという考え方」への言及については、インフレターゲットを採用しているイングランド銀行を意識したものであろう。1998年のイングランド銀行法の施行により、金融政策委員会は、政府が設定するインフレ率を達成できるように金融政策を行っている。

しかし、イングランド銀行は1998年のイングランド銀行法施行以前までは、伝統的に政策金利などの決定そのものを大蔵省(財務省)が行っていたことで、政府からの独立性を高めたものの、インフレターゲットの設定は政府に残ったかたちとなったものである。世界的に中銀は政府からの独立性を高める流れとなっている中で、菅首相の発言では、日銀はむしろ独立性を弱める方向となる。つまり中央銀行をめぐっての時代の流れに日本だけが逆行するかのようである。

以前に日銀の白川総裁は「今回の金融危機を通じて、インフレターゲットについても反省気運が生まれてきている。物価の動向だけに過度の関心が集まり、蓄積しつつあった金融経済の不均衡を見逃し、金融危機発生の一因になったのではないかという問題意識が以前より高まっている」と述べている。また、武藤前日銀副総裁も「インフレ目標を掲げたらどうかという指摘があるが、私はこれを採用すればデフレを脱却できるとは全く考えていない」と述べたとも伝わった。

民主党のデフレ議連だけでなく、みんなの党もインフレターゲット導入を意識した動きを見せている。インフレ目標を掲げその目標に対して、手段は日銀に任せるというのは、目標そのものが金融政策で限界がある以上、かなりの無視を強いてくることになる。それはそれで大きなリスクを伴ってくる。日銀も昨年12月の臨時の金融政策決定会合あたりから、より政府の意向を意識し、デフレとの認識を強めた上での政策変更を行ってきている。これは日銀が政府と協調している姿勢を強めたようにも見えるが、そこには日銀の独立性に対しての疑問を呈する政府の一部の動きを意識したものでもあったのではなかろうか。


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