「若き知」
「過去データは一番下に移行しました」


2010.9.30「FRBの追加緩和規定路線化にブレーキかける」

フィラデルフィア連銀のプロッサー総裁(投票権なし)は、ニュージャージー州での講演で、デフレの「リスクがほとんどない」ことなどを理由に、FOMCによる一段の金融緩和には反対の意向を表明した。プロッサー総裁は「現時点での資産購入の拡大は、利点がほとんどなく、一定のコストが予想されるため、打ち出すべきではない」と語った(ロイター)。

また、ボストン連銀のローゼングレン総裁(投票権あり)はニューヨークでの講演後の質疑応答で、追加の大規模な国債購入は経済見通しや今後発表される統計内容に左右されるとの見方を示した(ロイター)。

ミネアポリス地区連銀のコチャラコタ総裁(投票権なし)は講演後の質疑応答で「いかなる量的緩和措置も、インフレ期待への影響はかなり控えめとなる公算が大きい」とし、量的緩和は利下げほど効果的な手段ではないとの見方を示した(ブルームバーグ)。

FRB当局者から市場での追加の量的緩和期待に対し、相次いで消極的とも見えるな発言が飛び出したのは偶然ではないとみられ、過度な期待を後退させようとの意思表示である可能性もある。いずれにせよ、FRBは早くても11月とみられる追加の量的緩和に向けて、まだそれほどコンセンサスがまとまっていないともみえるが、このあたりのさじ加減はなかなかうまいようにも感じる。さて、来週、日銀はどうするのか。


2010.9.29「日銀短観を受けての追加緩和というよりも、委員それぞれの意見を明確に出すべき」

日銀は9月29日に短観を発表した。大企業製造業DIは足元はプラス8と6期連続で改善となり、これはほぼ予想に近いながら、12月予想はマイナス1とやや予想を下回った。業種別に見ると大企業のうち自動車が足元プラス32に対して12月はマイナス6と大幅に落ち込む見通しとなっている。エコカー減税・補助金による改善の反動に加え、欧米などの景気減速への懸念、また円高などの影響などを想定してのものとみられる。石油・石炭製品についても足元のプラス26から12月はマイナス7に落ち込む予想となっている。また、2010年度の大企業・全産業の設備投資計画についても前年度比プラス2.4%と前回調査のプラス4.4%から下方修正された。日銀が金融政策を決定する上で最も重視しているとみられるのが、日銀が自ら集計し発表している短観であり、これにより追加緩和をする理由付けができたこととなる。

またここにきて円高圧力が再び強まっている。9月15日に為替介入を実施しドル円は86円近くまで取るが戻されたが、その後、米国での追加緩和の可能性の高まりや、欧州での財政悪化懸念などから、再び円買い圧力が強まりドル円は84円を再び割り込んできている。今後は介入が実施されたとしても、初回ほどの効果はなくなりドルの戻りは限定的になるとみられる。ちなみに短観での為替の想定レートは89円66銭となっている。

さらにFRBによる追加緩和観測もあることで、10月4日から5日にかけて開催される金融政策決定会合での追加緩和の可能性が高まったと言えよう。日経新聞の電子版ではさっそく「金融緩和の材料でそろう」との記事を出している。しかし、今回の日銀への追加緩和の期待は、過去にもあったように政府発マスコミ経由により醸しだされたものと見える。24日の白川総裁辞任の噂などがそれを示している。

確かに日銀は必要と判断される場合には適時適切に対応して行くとしており、追加緩和の可能性は排除していない。ところが、米FRBのように追加緩和に向けての前傾姿勢をとってきているわけではない。特に政府が期待しているとみられる国債の買入増額については、26日に神戸大学で開かれた日本金融学会秋季大会の講演で否定的な発言をしている。そうは言っても、すでに期待感が市場でも強まってしまっている以上、もし追加緩和をしなければ結果として円高圧力を強める結果ともなりかねない。

しかし、追加緩和を行うにしてもすんなりとすべきではないのではないか。日銀がどうしてもここは追加緩和すべきと政策委員が全員同意見であるのならば、それはそれで良いが、少しでも意見を異にする委員がいるのならばその意見を表に出しても良いのではないか。

今度の追加緩和は新型オペのさらなる拡充などこれまでの追加緩和策の延長線にあるものをしてくる可能性が高いとみられている。しかし、国債買入含めて量的緩和策再導入も行っても良いのでは思う委員がいるのならば、それを議事提案すべきではなかろうか。また反対に今回の追加緩和策についてその効果が認められないとする意見の委員がいれば、8月30日の臨時会合での須田委員のようにはっきりと反対の意思表示を示すべきである。

また、現在の議長提案という投票システムでは無理かもしれないが、総裁自らが反対意見に回るようなこともあっても良いのではないか。こうすることにより、それぞれの委員の特色が出て、それぞれの発言にさらに重みが増す。これによりマスコミや政府関係者からの金融政策への意見ではなく、それぞれの日銀の委員の意見をより注視するようになるはずである。そうすれば次の金融政策の行方を占うという日銀ウォッチの本来の姿に戻ることができるのではないか。もし異なる意見を持つ委員がいるのならば、ぜひその意見に基づいて票を投じてほしい。


2010.9.28「牛さん熊さんの本日の債券のメルマガ発行のお知らせ」

「牛さん熊さんの本日の債券」がメルマガになりました。10月1日から配信スタートです。
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2010.9.27「2年国債の応札倍率が量的緩和時以来の水準に」

2年国債入札の手元データが一部抜け落ちていたので修復して再確認したところ、今回の2年国債の入札における応札倍率の5.75倍は、2005年6月の268倍という異常な倍率をつけて以来の水準となっていた。2005年6月は量的緩和真っ只中で、ほとんどキャッシュ同様の扱い。今回の倍率を見ても、量的緩和をかなり意識しはじめていることが伺える。ちなみに最低落札価格と平均落札価格はともに99円92銭0厘となり、テールはゼロ。テールのゼロ円も2005年6月の入札以来となった。


2010.9.27「まず財源ありきの補正編成に経済効果はあるのか」

報道によると27日に菅首相は政府・民主党首脳会談で、円高・デフレのための2010年度補正予算案の編成を正式したそうである。野党である自民党や公明党の主張に配慮して、規模は最大4.5兆円程度となる見込み。ちなみに自民党は5兆円、公明党は4兆円規模の対策が必要と主張している。

次期臨時国会は10月1日招集、会期末は12月上旬の予定となっており、10月下旬の補正予算案の提出を想定しているとか。

補正財源については、2010年度予算の国債費の不要分の約1兆円、2009年度の決算剰余金約1.6兆円、今年度税収の見込みからの上振れ分の約2兆円などが見込めると、玄葉国家戦略相は説明をした。

2009年度決算剰余金は1兆6246億円であるが、財政法(六条)でその二分の一を下らない金額を翌翌年度までに国債の償還財源に充てなければならないと定められている。このためこれにより使うことが可能なのは8123億円となる。ただし、特例法を制定すればその限りではない。しかし、本来は国債の償還財源に充てるべきものを補正予算で使うとなれば、それは国債を増発させるのと同様である。

今年度税収の見込みからの上方修正分については3兆円との報道があったが、税収の上振れ分の3割程度は地方交付税交付金に回ることになるため、それを差し引くと約2兆円規模ということになるようである。

いずれにしても新規の国債増発は避けるとしても、本来ならば国債の発行抑制に回しても良いはずの4.5兆円規模を経済対策に回そうとの考え方は、規模の議論が先行するなど、まさに以前の自民党政権下と同様の考え方である。ねじれ国会を意識しての動きとも思われるものの、余った金は今後の選挙や支持率アップに向けて、さらには外交の不手際から国民の目を逸らさせるために、思い切って使いきってしまおうとの思惑かとも勘ぐってしまう。

しかし、これはいくら国債を増発しない結果となろうとも国債発行抑制とは言えまい。さらに金額ありきの対策では自民党政権下の際の経済対策と同様に効果は限られたものとなろう。補正予算の編成の内容を見ても、バラマキ型としか見えないように感じる。それでなくとも年々、予算規模が大きくなる社会福祉を重点に置くことは、むしろ今後の歳出削減を難しくさせる要因ともなるのではなかろうか。まず財源ありきの補正編成では経済効果は限定され、むしろ債務規模拡大効果が大きいように感じるのだが。


2010.9.27「日銀、追加緩和の可能性」

9月21日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)では追加緩和は見送られたが、発表された声明文において、「必要に応じて追加金融緩和を実施する用意がある」との見解を示した。さらに、物価下落に対する懸念も強調されており、この声明文からみて、11月2日〜3日もしくは12月14日に開催されるFOMCにおいて、国債の買入拡大の可能性という追加緩和が実施される可能性が高い。

9月15日に政府は為替介入を実施でしたが、円高対策のために、日銀は次の手も期待されている。米FRBなどは自国通貨安を意識しての動きを見せてきており、日銀も今回の為替介入については、さすがに非不胎化という非現実的な手段への言及はしなかったが、介入資金を利用しながら潤沢な資金供給を行っていることを表明した。これもアナウンスメント効果を意識したものであろう。しかし、市場ではさらなる緩和策への期待も強まりつつある。特に米FRBが国債買入を拡大する可能性が出てきたことで、日銀の国債買入増額の可能性を指摘する声も強い。

10月上旬にはワシントンでG7が開催される予定であり、政府は単独の為替介入に対する批判回避のためか、その前に日銀に追加緩和を求める声もあるようである。また、政府は4.5兆円規模の補正予算編成に着手しており、政府の経済対策の後押しをする意味でも日銀への追加緩和圧力が強まっている。

これに対して日銀は、白川総裁は26日に神戸大学で開かれた日本金融学会秋季大会の講演で、円高が日本経済に与える影響や経済の下振れリスクを注視しているとして、必要があれば適切な対応を講じるとの考えを示したものの、国債買い入れの増額については財政ファイナンス懸念から長期金利上昇につながるリスクを指摘し、通貨や金融システムの信任維持のためにも財政バランス維持が重要だと強調した。

24日の東京市場では外為市場あたりから白川日銀総裁の辞任の噂が流れた。まったく根も葉もない噂の可能性もあるものの、政府からの追加緩和要請に対して日銀がやや難色を示した可能性もありうる。特に総裁発言にもあるように国債買入拡大については、現状受け入れがたいものと思われる。

9月29日には日銀短観が発表される。これを確認した上で10月4日から5日にかけて開催される金融政策決定会合で追加緩和について協議されるとみられる。28日の日経新聞は期間3〜6か月の資金をいっそう潤沢に供給することや、短期国債の買い増しなどが選択肢に浮上していると報じているが、これはむしろ日銀へのマスコミを介したプレッシャーとも受け取れる。

果たして次回会合で日銀はどのような結論を出すのか。政府や米FRB、さらに市場などの動向を伺いながら、今回は後手に回るのを避ける意味でも、苦渋の選択を迫られる可能性となりそうである。


2010.9.27「ベルギーの国債発行に注意も」

ベルギーでは27日に最大25億ユーロの国債発行(2016〜41年償還)を予定しているが、ベルギー国債のドイツ国債に対するプレミアムの上昇率が、今月始めの政党間の連立交渉の失敗をきっかけに大きくなっていることで、その国債発行の行方に注意が向けられている。

ベルギーでは6月の選挙以来、政局が定まっておらず、9月3日に社会党のディルポ党首が主導する政権協議が決裂し、政党間の連立交渉が失敗した。これを受けてベルギー国債のドイツ国債に対するプレミアム(上乗せ金利)が上昇している。ベルギー10年国債のプレミアムは64ベーシスポイントから、その後41%も拡大し、90bpに達した。アイルランド国債のプレミアムもこの間に413bp拡大したが、そのペースは21%とベルギーほど急激ではなかった(ブルームバーグ)。

ベルギーは公的債務残高のGDP比率が97%と、イタリアの116%とギリシャの115%に次いで3番目に高い。これまでPIIGSと呼ばれているポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペインにどうやらこみに今度はBが加わりそうな気配となっている。勝手に想像するにPIGBISとでもなるのであろうか。

ちなみにベルギーと言えば、日銀設立の際のモデルとしたのがベルギーの中央銀行であるベルギー国立銀行である。これは日銀創立の立役者である松方正義が1876年にパリを中心に滞在していた際にフランス蔵相レオン・セーから、日本が発券を独占する中央銀行をもつべきこと、さらにそのモデルとしては歴史あるイングランド銀行などではなく比較的設立が新しいベルギー国立銀行が良いのではないかといった助言を得ていたことによる。


2010.9.26「白川日銀総裁の辞任の噂の背景は何か」

24日に外為市場あたりから日銀の白川総裁の辞任の噂が流れた。あくまで市場の噂であり、あまり真剣に受け止めるものはいなかったようだが唐突に出た感のある噂だけに、念のために注意も必要かもしれない。

過去の日銀総裁を振り返ると、一連の大蔵省・日銀における接待汚職問題で1998年に松下康雄総裁が監督責任を問われ辞任した。その後、就任した速水優総裁も2001年3月に量的緩和策に踏み切ってすぐの4月に、政府関係者に辞意を伝えたとの報道があったが、結局、辞任はせずに任期を全うした。次に総裁となった福井俊彦氏も村上ファンドへの投資問題での辞任観測があった。結局、福井氏も任期を全うしたが、日銀総裁への風当たりは予想以上に強いとみられ、日銀総裁の辞任観測はついてまわるもののようである。もちろん、どこかの国の首相のように簡単に責務を放棄するようなことはなかったが。

それはさておき、今回の白川総裁の辞任の噂については、根も葉もない噂である可能性も高い。しかし、ある意味、唐突な噂であっただけに火のないところに煙はたたないとの格言にも注意する必要がある。

それではもし、もしも仮に白川氏がほんの少しでも辞任する意思を持ったとすればその要因は何なのであろうか。ここにきて変化があったとすれば、政府による為替介入の実施である。円高対策のために、日銀は次の手も期待されている。米FRBなどは自国通貨安を意識しての動きを見せてきており、日銀も今回の為替介入については、さすがに非不胎化という非現実的な手段への言及はしなかったが、介入資金を利用しながら潤沢な資金供給を行っていることを表明した。これもアナウンスメント効果を意識したものであろう。しかし、市場ではさらなる緩和策への期待も強まりつつある。特に米FRBが国債買入を拡大する可能性が出てきたことで、日銀の国債買入増額の可能性を指摘する声も強い。

ただし、白川総裁は26日に神戸大学で開かれた日本金融学会秋季大会の講演で、円高が日本経済に与える影響や経済の下振れリスクを注視しているとして、必要があれば適切な対応を講じるとの考えを示したものの、国債買い入れの増額については財政ファイナンス懸念から長期金利上昇につながるリスクを指摘し、通貨や金融システムの信任維持のためにも財政バランス維持が重要だと強調した(ロイター)。

白川総裁は、国債買い入れについて、諸外国の中銀では非伝統的政策と位置付けられているのに対して、日銀では通貨供給の主要手段と位置づけられ、伝統的政策そのものになっていると指摘し、中央銀行による国債買い入れが財政ファイナンス、いわゆるマネタイゼーションを目的としているとみられる場合、将来のインフレ予想から国債金利が上昇すると指摘した。また、通貨や金融システムへの信任は究極的には政府、ソブリン国家への信任に支えられているとして、中長期的な財政バランスを維持することの重要性を強調。さらに、政府が中央銀行の通貨発行によるファイナンスという手段に自由にアクセスできるようになると、通貨の過剰発行によるインフレの危険がある。各国ともそうした危険を歴史の経験から学び、その結果、多くの国で中央銀行による財政の直接ファイナンス、すなわち、国債引き受けが禁止されていると述べた(ロイター)。

まったくの正論である。しかし、そうは言うものの日銀ができる追加緩和策には限度があることも事実である。政府による為替介入、そして追加の経済対策に呼応して日銀も何かしら動かざるを得ない状況に追い込まれやすいが、その際に何を選択できるのか。ここは白川総裁にとり辞任を考えなくてはならないようほどの状況ではないとしても、かなり悩ましい状況にはある。

小沢氏がもし民主党代表選に勝利したならば日銀法改正に向けた動きも出た可能性はあったが、菅氏の続投でその可能性は弱まった。しかし、為替介入を決断してしまった政府は何かしら日銀にもしてもらわなくては困るというところでもあろう。さらに政府は対中国との関係悪化という問題を抱えてしまっており、円高対策などを日銀に押し付けてくる可能性もないとは言えない。

もしほんのわずかでも日銀総裁の辞任の噂に何かしらの根拠があるとすれば、このように政府との関係によるものと考えられる。また、日銀内部での特に執行部内での意見の相違といった可能性もないとは言えない。はっきりとした根拠はないものの、阿吽の呼吸とも言われた山口副総裁と微妙に意見の違いも出てきているように感じるのは私だけであろうか。

なにはともあれ、白川総裁の辞任の噂はあくまで噂であってほしいし、上記の観測はあくまで、もしもを仮定した個人的な憶測である。


2010.9.24「国債依存症からの脱却」

デフレからの脱却を目指すならば、それは国債依存症からの脱却を目指すこととなる。日本ではいまさら言うまでもなく、財政は国債発行に大きく依存している。国債残高は増加し続けているが、国内銀行など民間の資金運用でも国債依存度を高めていることで、国債は安定的に消化が可能となっている。民間企業でもデフレ環境が続き景気の先行き不透明感も手伝い、手元の流動性資金は増加しているもののそれは設備投資等には振り向けられず、その分預金が増加することで、その資金の多くが国債に振り向けられている。

この国債依存度の高まりは、何も日本に限ったものではなくなっている。欧米でもリーマン・ショック後の財政政策により政府による国債依存度が高まった。しかし、民間の資金運用での国債依存度の高まりにより、米国債やドイツの連邦債なども買い進まれている。さらに米FRBが国債の買入拡大を検討するなど、中央銀行の金融政策においても国債への依存度が高まりつつある。ここにきて日銀への国債買入増額期待も出てきている。

この国債依存度の高まりにより、日本国債・米国債・ドイツ連邦債はバブル相場の様相を強めている。ただし、南欧諸国を中心にソブリン債への懸念も引き続き強いものがあるが、それも裏返せばそれだけ国債への依存度が高い現れと言える。

国債依存症からの脱却は、日本ではデフレからの脱却と言うことになる。欧米でも日本型デフレの警戒心が強まっていることで、日本での国債依存症の脱却の行方を注視していると思われるが、いまだその処方せんを見い出してはいない。

デフレという言葉が物価下落を意味していることで、物価上昇を誘発させるため日銀がリフレ政策を行えば、デフレからの脱却が可能との意見がある。しかし、もし日銀が自ら定めた水準まで物価を上昇させるために、結果として通貨を乱発する行為に出たとすれば、通貨そのものの信用失墜を招く恐れがあり、国債依存の歯車が一気に崩壊し財政そのものが成り立たないというリスクも秘めている。

国債依存症からの脱却は、そもそも国の基礎体力の増強が必要となる。企業による活発な投資が再開されれば、民間企業や金融機関の国債依存度が徐々に低下し、税収が回復すれば国による国債依存度も低下する。デフレからの脱却を考える場合には、どのようにすれば国債依存度を低くできるかということを視点に考えてみることも重要である。


2010.9.22「米国の追加緩和時には日銀も追随か」

21日の連邦公開市場委員会(FOMC)では追加緩和は見送られたが、発表された声明文において、経済の先行きや金融情勢の展開を注視し、景気回復をサポートし、時間をかけて物価を目標とする水準に戻すため、「必要に応じて追加金融緩和を実施する用意がある」との見解を示した。

The Committee will continue to monitor the economic outlook and financial developments and is prepared to provide additional accommodation if needed to support the economic recovery and to return inflation, over time, to levels consistent with its mandate.

さらに今回の声明文では、物価下落に対する懸念も強調され、物価を示す指標は現在、物価安定と雇用最大化を促す目標に対し、長期的に見て適正とする水準をいくらか下回っていると指摘している。

Measures of underlying inflation are currently at levels somewhat below those the Committee judges most consistent, over the longer run, with its mandate to promote maximum employment and price stability.

この声明文からみても、事前の観測でも今回の追加緩和は見送られるものの、11月2日〜3日もしくは12月14日に開催されるFOMCにおいて、国債の買入拡大の可能性という追加緩和が実施される可能性が高いと見られる。

21日の米国債券市場では、この声明文の内容を受けて10年債利回りは2.58%に低下、2年債利回りは0.424%と過去最低を記録した。

FRBが追加緩和に向けて前傾姿勢を取ってきたことで、今度は日銀の対応が注目される。日銀の宮尾審議委員は22日の講演で「米国経済を中心に先行きを巡る不確実性が高まっている中で、わが国経済の下振れリスクに対する警戒を解くことは出来ません。」と指摘し、「必要と判断される場合には適時適切に対応して行く所存」であることを示した。

9月7日の決定会合後に発表された公表文でも「日本銀行は、先行きの経済・物価動向を注意深く点検したうえで、必要と判断される場合には、適時・適切に政策対応を行っていく方針である。」との一文が追加されている。

米国の追加緩和(もしくはそれに類する政策)が実施されれば、円高ドル売り圧力がかかる。政府による為替介入も実施された以上は為替の動きについても日銀はさらなる配慮をする必要がある。

今後の日銀の決定会合の日程を見てみると、10月は4日から5日にかけて開催される。通常は10月1日に発表される日銀短観が今年は9月29日に発表されるのは、1日では決定会合までの日数が短すぎるとの理由のようである。このように10月の会合については日銀短観の内容をかなり意識したものとなりそうである。

次の会合が10月28日。こちらでは展望レポートの内容に注目が集まるものと考えられる。景気見通しなど下方修正すれば日銀への追加緩和の思惑がさらに強まる可能性がある。

そして次の会合は11月15日から16日、さらに12月20日から21日にかけて開催される。それぞれFOMCからややタイムラグがある。もし11月2日〜3日もしくは12月14日のどちらかのFOMCで追加緩和が実施されれば、日銀も追随して追加緩和を実施してくる可能性がある。

この場合の日銀の追加緩和はいったい何をしてくるのかを注目したい。為替介入を行った際に、この介入資金使い潤沢に供給するとの発言が総裁などからあったが、これは量的緩和策を連想させる。米国が国債買入の増額を行うならば、日銀も国債買入増額をするのではないかとの思惑も広がりやすい。果たして日銀はあらためて量的緩和策に踏み込むのか。それには国債買入増額もセットで実施されるのではないかと、あまり選択肢もない中でこの思惑が今後強まる可能性がありそうである。


2010.9.21「2010年6月末現在の国債保有者別残高」

9月17日に日銀が発表した2010年4〜6月資金循環勘定速報によると、家計の金融資産は2010年6月末現在で1445兆250億円となった。

この資金循環勘定速報をもとに 2010年6月末現在の国債所有別内訳を算出した。

国債の残高そのものは、710兆4364億円となった。海外投資家のシェアは、4.6%と3月末と変わらずとなった。家計のシェアは4.8%となり3月末の5.0%からやや低下した。

3月に比べ全体の残高が増加したが、最大の増加額となったのは銀行など民間預金取扱機関で9兆4140億円もの増加となった。引き続き余剰資金を抱えた銀行などが積極的に国債残高を積増した。民間の保険・年金が5兆8529億円増、投信など金融仲介機関が5兆7907億円増、日銀も5兆836億円の増加となった。

全体に占めるシェアとしては、民間預金取扱機関が269兆5537億円で37.9%、民間の保険・年金が173兆8680億円で24.5%、公的年金が77兆8403億円で11.0%、日本銀行が56兆2541億円で7.9%、投信など金融仲介機関が40兆5039億円で5.7%、家計が34兆3806億円で4.8%、海外が32兆4188億円で4.6%、財政融資資金が8711億円で0.1%、その他が24兆7459億円で3.5%となった。


2010.9.21「不胎化されるまでタイムラグを利用」

19日の日経新聞によると、財務省は通常、為替介入の実施の際、日銀から借りた円資金を本来は可及速やかに公募発行されるFBで得た資金により返済しなければいけない。しかし、介入による緩和効果を高めるために、一気に介入分のFBを発行せず、段階的に発行する方針と伝えられた。たとえば仮に3兆円の介入を行った際に、1週間あたり5000億円のFBを6週間に渡り発行すれば緩和効果を持続させることができると日経新聞では例を出している。

2003年から2004年にかけての大規模介入に際しても同様の措置が講じられていたが、当時、日銀は量的緩和政策という日銀の当座預金残高そのものをターゲットにする金融政策を行っていた。日々の大量の金融調節の中にあり、本来は介入資金だけを色分けすることはできないものの、介入分でFBで吸収されなかった資金分を当座預金残高に積み上がげておけば、緩和効果と形式上はなりうる。

ただし、当座預金残高が増加した要因が介入資金によるものなのか、それとも別途期末要因とかであるのか峻別することは難しい。これについては野田日銀審議委員が16日の会見で下記のように発言している。

「介入資金は一時的には金融市場への資金の供給要因になるということは、ご指摘のとおりだと思います。したがって日本銀行としては、この介入資金の活用も視野に入れながら潤沢な資金供給を行っていくことになるのではないかと、個人的には、かつ現時点では考えています。ただ、だからといって介入額が、そのまま日本銀行の当座預金残高の増加にストレートに結びつくと考えているわけでもないということも、申し上げておきたいと思います」

また、現在の日銀の金融政策は、政策金利である無担保コール翌日物金利を0.1%近辺に誘導することであり、さらに当座預金残高の超過準備分には政策金利と同じ0.1%の補完金利が付いている。この状況下にあっては、擬似的な量的緩和策により当座預金残高を多少増加させようとも緩和効果そのものは限定的である。

このため今回の財務省による不胎化されるまでタイムラグを利用する措置についても、あくまでアナウンスメント効果を意識し、市場心理(この場合の市場には短期金融市場は含まれないと思われるが)に働きかけようとするものであろう。


2010.9.17「為替介入の資金調達の仕組み」

非不胎化の意味を理解するためには、為替介入の資金調達の仕組みを理解する必要がある。これについては日銀のサイトに説明があり、これを参考にして見てみることにする。

「日本銀行における外国為替市場介入事務の概要」 http://www.mof.go.jp/jouhou/kaikei/syokan/gaitame.htm

日本での為替介入は財務大臣の権限において実施されるとある。日本銀行はその際に財務大臣の代理人として、財務大臣の指示に基づいて為替介入の実務を遂行している。

新聞・ニュース等でしばしば使われる「日銀介入」という言葉は、やや誤解を招きやすい表現であるとわざわざ指摘している。ただし、最近では政府・日銀による介入と使われることも多くなっているが、いまだに日銀が自らの判断で実施しているとの誤解も一部にあるようだ。

今回、15日以降の介入は官邸などからの強い要請により、財務大臣が指示を出したと言われる。実務部隊となる日銀の金融市場局為替課は電子ブローキングシステム(EBS)などを使って民間金融機関に注文を出している。

そして、今回の議題となる為替介入に要する資金の調達についてだが、日本での為替介入はすべて政府の外国為替資金特別会計の資金を用いて行われていることに注意したい。日銀の勘定とかではなく政府の勘定において実施されている点を認識しておく必要がある。

外国為替資金特別会計とは政府が実施する外国為替等の売買(為替介入等)等の円滑化に資するため設けられているものである。今回のように、円売り・ドル買い介入の場合には、政府短期証券(為券)の発行により円資金を調達し、外国為替市場における為替介入によりこの円資金を売却しドルを購入する。通常、この代金の決済は二営業日後に行われる。

ここで為券について少し解説したい。政府が国庫や特別会計などの一時的な資金不足を補うために発行されているのが、FB(Financing Bills)と呼ばれる政府短期証券である。発行根拠法により財務省証券、食糧証券及び外国為替資金証券に分かれている。このうち外国為替資金証券が為券と呼ばれるものである。

政府短期証券(FB)及び割引短期国庫債券(TB)は2009年2月より「国庫短期証券(Treasury Discount Bills)」として統合発行されている。しかし、発行される毎にそれが、TBなのかそれても財務省証券、食糧証券及び外国為替資金証券なのかは区別されている。

これはたとえば下記のように財務省のサイトで公表されている国庫短期証券の入札発行などに表記されている。

国庫短期証券(第138回)の入札発行 http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/tbill/tbillnyusatu/offer220916.htm

この中の発行根拠法律及びその条項がそうである。TDBの138回は下記内容となっている。

財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、第95条第1項、第136条第1項及び第137条第1項

個別にはそれぞれの条項を読めばその区別がわかる。財政法第7条に基づくものは財務省証券、財政融資資金法第9条に基づくものは融通証券であり、特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条には「外国為替資金に属する現金に不足がある場合には、外国為替資金特別会計の負担において、一時借入金をし、融通証券を発行し、又は国庫余裕金を繰り替えて使用することができる。」とあることで、この融通証券が為券であることがわかる。

参考までに10年国債の発行などについても、同様に財務省の発表する入札発行を確認すれば、それが建設国債なのか赤字国債なのか、借換債もしくは財投債なのかがわかる。

ついでに、財政融資資金法の第9条二項をみると、「融通証券の限度額については、予算をもつて、国会の議決を経なければならない。」とあるが、外国為替資金証券は無制限な発行を防ぐため、毎年度の予算で発行残高の上限が規定されている。

これは2010年度予算で145兆円に設定されており、このうち発行済みの借り換え分104兆円と15日の介入相当額となる約2兆円を除くと、 残る39兆円が今年度の介入可能額となる計算となる。

ちなみに2003年には臨時措置として、政府と日本銀行は、外国為替市場での円売り介入に使用する円資金が不足する場合に、政府が外貨準備で保有している米国債券を日本銀行に売却して必要とする円資金を調達することができる契約を結んでいる。

さて、話を本題の為替介入による資金調達に戻したい。これまで見てきたように円売り・ドル買い介入の場合には、政府が政府短期証券(為券)を発行することにより円資金を調達する。この仕組みによれば為替介入は基本的に不胎化介入となる制度的な仕組みとなっている。

これについては「日本の外貨準備の政策分析」という早稲田大学の谷内満教授の論文を参考に見てみたい。

「日本の外貨準備の政策分析」http://www.jica.go.jp/jica-ri/publication/archives/jbic/report/review/pdf/36_04.pdf

1999年以前は、為券は日銀が主に引き受けていたが同年以降は、為券は公募で発行され市中消化されている。この仕組みのもとでは為替介入は常に不胎化介入となる。なぜなら、円売りドル買い買い介入の場合、まず為券が発行されるが、それによって民間銀行の為券保有が増加し、その購入資金の支払いのため銀行準備が減少する。外貨買い介入が行われると民間銀行の外貨資産が減少し、銀行準備が(先ほどの減少分と同額だけ)増加する。したがって、民間銀行の銀行準備は変化せず、マネタリーベースは不変となる。

ただし、2003−04年の大量のドル買い介入の際は、円資金の調達規模が大きすぎて市場での資金調達が追いつかず、一部が不胎化されず、不胎化されるまでタイムラグが生じた。上述のように、為券は1999年からは原則公募発行によっているが、介入を機動的に行うため、ドル買い介入をする際は一時的に日銀が為券を引受け、後日公募発行で市場から資金を調達し日銀が引き受けた為券を償却する。通常はこの期間はごく短期間だが、この時期の大量介入の際は、日銀への資金返済には時間がかかり、したがってその間不胎化が完全にはなされなかったことになる(谷内満教授の論文より)。

日銀による公債の引受けは、財政法により原則として禁止されているが、FBについては当該条項の適用を受けないと解されており、日銀法でも日銀がFBの引受けを行うことができる旨の条項が設けられている(日本銀行法第34条第4号3)。

ただし、FBの発行が1999年度以降、原則として市場における公募入札により発行する方式に改められ、この公募入札方式への移行後は、日銀がFBの引受けを行う場合は、政府からの要請に応じて例外的に行う臨時引受けと、日銀の業務運営上必要がある場合に自らが行う引受けに限られることとなった。

このうち、政府からの要請に応じて実施する臨時引受けには、市場における公募入札において募集残額等が生じた場合と、為替介入の実施や国庫資金繰りの予想と実績との乖離の発生などにより「予期せざる資金需要」が発生した場合に限定されている。また、臨時引受けを行った政府短期証券については、可及的速やかに償還を受ける扱いとなっている。このように、臨時引受けについては、中央銀行による政府向け信用のあり方の観点も踏まえ、一時的な流動性の供給となるような明確な「歯止め」が設けられている。 (以上、「日本銀行の対政府取引」についてより、http://www.boj.or.jp/type/exp/stat/exseifu01.htm)

非不胎化させるさせないの議論があるが、現在の日本の為替介入の仕組みでは、結果とすればこのように常に不胎化となる。ただし、不胎化されるまでタイムラグの間、日銀の当座預金残高がその分一時的積み上がる。為券を発行し資金返済がなされてももしその分が上乗せされたまま当座預金残高を維持するというような金融調節を日銀が行うならば、それは結果として非不胎化ということになろう。

ただし、現在のように金融政策で金利をターゲットにして、さらに当座預金残高の超過準備分には政策金利と同じ0.1%の補完金利が付いている。この状況下にあっては、介入資金を形式上当座預金残高に多少反映させたとしても緩和効果そのものは限定的なのであり、あくまでアナウンスメント効果を意識したものでしかない。


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2010.9.16「アナウンスメント効果を意識した非不胎化観測」

昨日の為替介入は2兆円規模となり、円売りドル買い介入としては過去最大規模となったようである。これまでの介入の最高額は1998年4月に行った2.6兆円であるがこの際は円買いドル売り介入であった(日経新聞)。

日銀も政府に歩調をあわせた。白川方明日銀総裁による「強力な金融緩和を推進するなかで、潤沢な資金供給を行う」との談話や、たまたま本日、講演を行っていた日銀の野田審議委員も介入資金使い潤沢に供給と発言し、いわゆる非不胎化措置を連想させる発言をしたのである。

同様の発言は2001年9月17日の介入の際にもあった。この日、政府は2000年4月3日以来の為替介入を実施し、この介入に際して「介入資金も利用して、潤沢な資金供給に努めていく方針」と日銀はコメントしたのである。非不胎化を匂わしながらも「市場調節方針を実現するため介入資金も含め全体としての資金供給額を決定している」とも発言していた。そもそも介入資金を非不胎化しようがしまいが日銀はどちらにしても毎日大量の資金供給を実施している。どの部分が介入の非不胎化によるものなのかはっきり区別もつけづらい。それでも今日の非不胎化に関するコメントが相場に多少なりインパクトも与えたのである(2001年9月17日の「若き知」より)。

今回も同様のアナウンスメント効果を狙っての日銀関係者からの発言であったと思われる。実際に日銀からは「非不胎化」との具体的な言葉は出てきていない。あくまで政府の介入実施に歩調をあわせるため、介入資金も含め全体としての資金供給を潤沢に行うとして、非不胎化措置を連想させるとともに、量的緩和政策を意識させ市場に影響を与えることを狙ったものであろう。今回もどの部分が介入の非不胎化によるものなのかはっきり区別もつけづらい。

しかし、今回の日銀総裁の潤沢な資金供給を行うとの談話などが、日銀の量的緩和に向けての姿勢を意識させたことも事実である。過去の量的緩和政策の効果は限定的であったとする日銀ではあるが、アナウンスメント効果を意識するのならば量的緩和策の再導入の可能性もありうる。白川総裁はそこまで意識しての発言であったのか、日銀の次の一手に注目したい。


2010.9.15「EBSを使ったとみられる為替介入と日銀による非不胎化措置」

本日15日午前10時半近くに政府は2004年3月16日以来となる為替介入を実施した。ドル円は10時25分頃つけた82円88銭近辺から一気に83円台後半に。その後も断続的な介入により、ドル円は85円台を回復した。野田財務相は財務省内で緊急会見を開き、「為替相場の過度な変動を抑制するため、さきほど為替介入を実施した」と明らかにした。また、今回は協調介入ではなく日本単独での介入であることも明らかにした。

介入については、個人的にはその効果に懐疑的である。特に単独での介入では、過去の介入同様に投機筋の餌食にされる可能性がある。スイスも介入を行ってきたが、介入すればするほどスイスフランが買われる結果となった。

介入を戦争に例えるのはどうかとは思うが、太平洋戦争末期、戦艦大和の最後の出撃と被る。援軍はなく単独で、しかも大艦巨砲主義の象徴でもあり、結局、航空機の攻撃により沈没。この場合の航空機が今回は投機筋になりうる。もし戦略・戦術が優れ、市場の隅々にまで精通した人材がいて介入指示を行えば、数多の投機筋に対抗しうる可能性はないとは言えないが、それでも円高圧力を腕力で抑えこむには限界があろう。

ただし、今回の介入では2004年当時とは戦術に変化があった。介入の実行部隊となる日銀はインターバンクに協力を依頼せずに、EBSから直接円売りを実行したとの観測がある。EBS(Electronic Broking System)とは電子ブローキングシステムで人を介さず売買注文を端末に入力することにより取引が成立するコンピュータシステムである。これにより過去の介入時のように大手行主体に直接電話で取引するのと異なり、約定後でなければ相手方、つまり日銀とはわからない方法で介入したとみられる。これまでは大手行主体に介入が入りやすく、その分、介入の情報も偏在化していたが、電子取引を使うことでより公平感とともに、隠密性、さらに即時性が高まることとなる。今回はEBSで取引したディーラーがBOJQという相手方のコードを見てかなり驚いたとも伝わった。

今回の介入については日銀も政府の動きに歩調をあわせることとなった。日銀は、今回の円売り介入で市場に供給される資金を吸収しない方針を固めたと一部報道で伝えられ、たまたま本日、講演を行っていた日銀の野田審議委員も介入資金使い潤沢に供給と発言し、いわゆる非不胎化措置を講ずることとなったのである。これはある意味、量的緩和策がイメージされ、日銀が追加緩和を行ったのと同様のアナウンスメント効果があろう。


2010.9.15「為替介入と日米の追加緩和観測と長期金利の行方」

14日にウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が、ゴールドマン・サックス・グループが、FRBは早ければ11月にも新たな資産買い入れプログラムを発表する可能性があるとの見通しを示したと伝えた。WSJによると、ゴールドマンのチーフエコノミスト、Jan Hatzius氏が新たな買い入れプログラムについて、「9月21日の会合では予想していないが、11月または12月には発表される可能性がある」と述べ、約1兆ドル規模の米国債を買い入れる公算が大きいとの見方を示した。(ロイター)。

これを受けて14日の米国債券市場では、前日に一時2.85%まで上昇していた10年債主体に買いが入った。10年債利回りは前日比0.090%低下の2.67%に、2年債利回りは同-0.040%の0.50%、30年債利回りは同-0.07%の3.78%にそれぞれ低下した。

FRBの追加緩和観測とそれを受けての米長期金利の低下などから外為市場ではドルが売られ、ドル円は一時82.92円と83円を割り込み、ユーロドルも1.3033まで上昇した(ロイター)。

果たしてゴールドマンのチーフエコノミストによるFRBのバランスシート拡大の可能性はあるのであろうか。それを裏付ける何かしらの情報を握っての発言なのか、それともあくまで推測の域を出ていないのか。

8月24日に米10年債利回りは2009年以来で初めて2.5%を下回ったが、その後は上昇基調となり13日には一時2.85%に上昇している。日本の10年債利回りも8月25日に0.895%と0.9%を割り込んでから9月7日に1.195%と1.2%に接近した。それぞれ絶対水準は違えども、0.3%程度の水準調整が行われたこととなる。

円債の水準調整についてはこれまで言及していたように、小沢氏の民主党代表選出馬表明をきっかけとした財政悪化を意識しての売りがきっかけであり、史上三度目となった長期金利1%割れというバブル相場の反動という面が強かった。それに対して米債の調整については、一部、好調な経済指標の発表などを受けて極端な米経済への悲観論が後退し高値警戒も相まっての水準調整であった。

そんな中にあっての民主党の代表選の結果での菅氏の勝利と、米FRBにより追加緩和観測とそれを受けての円高ドル安は目先の債券相場の転機を示しているとも言える。ユーロに対してはさほど円高とはなっていないものの、ここにきてユーロが静かになっているが、なんらかのかたちでギリシャ問題などが蒸し返されてくる可能性もある。少なくともドル円は83円を割込むなどしており、政府や日銀に対して何らかの対応策が求められ、そのひとつの結果が2004年3月以来となる為替介入であった。

このコラムを書いている最中に単独での日本政府による為替介入が実施された。介入は2004年3月16日以来となる。ドル円は82円90銭近辺から84円台へとドルが大きく上昇した。介入を始めてしまったことにより、当初は効果があれども、一度始めると止められなくなり、投機筋の格好な餌食にされむしろ円高がさらに進行する危惧がある。このあたり過去の介入時の状況を当局はあらためて確認しておく必要もあろう。また、介入資金のためのFB発行増なども意識しておく必要がある。

欧米はこれまで実力行使というよりもアナウンスメント効果を意識して自国通貨安を演出してきたが、日本はついに実力行使を始めたことで、欧米当局が不快感を示す可能性もある。いや、むしろ過去の経緯から、これを黙認し介入すればするほど円高進行する状況を見てみることにするのかもしれない。

政府が動いたこともあり、日銀にも追加緩和圧力がさらに加わる可能性は否定できない。しかも、8月30日の会合で新型オペの拡充策を打ち出したばかりであり、別な手段を講じる必要がある。その選択肢としては国債買入増額などが視野に入る。

介入当初はさすがに円安が進み、株式市場にも好影響を与えることにより、債券相場はいったんは上値が重くなろう。しかし、その介入の効果も薄れると日銀へのプレッシャーの強まりにより、再び長期金利に低下圧力が加わる可能性がある。もしFRBによる米国債の買入拡大の実現性が高まれば、米長期金利にも低下圧力が加わろう。

いったんは上昇基調となった日米の長期金利は再び、目先つけた0.9%割れと2.5%割れを試す可能性もないとは言えなくなってきた。日本の財政問題は菅氏の続投により、急激に悪化するリスクが抑えられたに過ぎず、今後は「菅さんでも売り」となる可能性も否定はできないと昨日のコラムでは書いたが、その前にもう一度、債券バブルが復活する可能性も見ておく必要がある。


2010.9.14「民主党代表選の結果を受けての債券相場の動向」

14日に投開票が行われた民主党の代表選挙で菅候補が小沢候補を大差で破り続投が決まった。小沢氏が勝利すれば財政拡大の可能性もあり、一時的にせよ債券相場には売り圧力がかかる可能性はあったが、それは回避された。

この日には20年国債の入札が実施されたが、最低落札価格はほぼ予想に近いものとなったが、テールは20銭と前回の8銭から大きく拡大。ただし、応札倍率は4.56倍と前回の2.86倍を大きく上回った。民主党代表選の結果待ちの状況下の中にしてはまずまず無難な結果となった。

この結果を見て投資家は民主党代表選の結果を待たずに押し目買いを入れたことから、現物は10年310回が当時朝方の1.165%から1.130%に、5年91回も0.390%から0.370%に、超長期20年120回も朝方の1.975%から1.930%に、それぞれ大きく切り返してきた。

ある程度、菅氏勝利を意識していた可能性はあるが、それよりもたとえ小沢氏が勝利しても債券売りは限定的とみていたものとみられる。財政に向けての菅氏と小沢氏の姿勢は正反対であったが、もし小沢氏が首相に選ばれたとしてもあまり無茶な政策を行うことができなかったのではないか。小沢氏とて日本の財政悪化をまったく理解していないはずはない。

しかし、それでも小沢氏が首相となれば今後のリスクが高まる懸念もあった。たとえば14日の民主党代表選での立候補者演説で、小沢氏は日銀法改正など制度改革やインフレターゲット政策も視野に入れ、金融政策と財政政策の両面からあらゆる手段を尽くすと発言していた。これは所謂、民主党のデフレ議連と同様の発想であり、日銀法改正を本気で取り組むとなれば、これまでの中央銀行の歴史に逆行することともなりかねないものである。

また、小沢氏が主張していた無税国債の発行や国有財産の証券化などを本当にやるとしたら、債券市場はかなり神経質な動きを示すことも考えられた。とりあえずはこういった動きは回避され、債券相場にとり菅氏の勝利は「閑散に売りなし」という格言にあやかって、まさに「菅さんに売りなし」ということになった。しかし、これで再び長期金利が1%を大きく割込むかどうかは不透明である。債券相場にとり今回の結果はあくまで売りの材料とはならなかったと言う程度でしかない。

円高進行などにより今後は政府によるさらなる景気対策への期待が強まることも考えられる。日本の財政問題は菅氏の続投により、急激に悪化するリスクが抑えられたに過ぎない。今後は「菅さんでも売り」となる可能性も否定はできない。今後の財政再建に向けた取り組み姿勢もしっかり確認しておく必要がある。


2010.9.13「民主党代表選挙後の債券相場の予想」

民主党の代表選挙を明日に控え、その結果後の債券相場の動向を占ってみたい。現在のところ菅氏がややリードと伝わっているが、債券市場で注目されるのは財政に向けての動きである。

菅氏は前回の衆院選マニフェストについて修正やむなしとの立場であり、また社会保障改革を財源と一体で議論しその中で消費税を含む税制の抜本改革についても検討するとして消費増税に言及するなど、財政再建を意識した立場におり、その点では国債市場にとり「小沢ショック」が払拭し、買戻しの要因となりうる。それに対して小沢氏は2010年度予算に計上している予備費を財源に2兆円規模の景気対策を行うとし、さらに国債増発の可能性についても言及している。

8月25日に長期金利が0.895%をつけたあと債券相場は大きく下落したが、そのきっかけのひとつが6日に民主党代表選に小沢前幹事長が出馬と報じられた、財政拡大が意識されたことであった。このタイミングでメガバンクなどが超長期債を主体に売りを持ち込んだことで、債券相場は大きく売られ、10年債利回りは9月6日に1.195%と1.2%に接近した。

しかし、小沢氏の出馬はあくまで債券相場の売りのきっかけに過ぎなかったことに注意する必要がある。日本の債券相場は米国債やドイツ連邦債がリスク回避の資金流入で買われたことなどを背景にして、じりじりと買われ史上三度目の長期金利1%割れという場面を迎えていた。その米国債もやや高値警戒などから売りが入りつつあり、日本国債も何かしらのきっかけ次第で売られやすい状況にあった。小沢氏の出馬による財政悪化懸念は、まさにタイミングよい材料となったに過ぎない。

このため民主党代表選の結果がそのままストレートに材料視されることは考えづらい。しかし、財政に向けての動き次第では今後の国債需給があらためて見直される可能性はある。

財政に向けての菅氏と小沢氏の姿勢は正反対であり、菅氏の場合にはいったん足元の財政悪化懸念は後退しよう。小沢氏は代表選に向けては菅氏と反対の立場をとっているが、実際に首相に選ばれればあまり無茶な政策を行うことができなくなるのではないか。小沢氏とて日本の財政悪化をまったく理解していないはずはない。

ただし、仮に無税国債の発行や国有財産の証券化などを本当にやるとしたら、債券市場はかなり神経質な動きを示すことが考えられる。財政拡大に歯止めがかからないとなれば、日本国債が国内資金で賄うことができる臨界点がさらに前倒しされることになる。いまのところ日本の財政危機は狼少年に例えられているが本当の狼は必ずやってくる。問題はそれが「いつ」であるのかに過ぎない。その日を少しでも先送りさせ、その間に税制改革なり抜本的な手を打つ必要がある。

もし小沢氏にそのような認識が本当にないとなれば、債券市場が下げ足を早めるリスクはある。また、菅氏が勝利しても小沢氏の処遇次第では国債への信認が低下する懸念もある。いずれにせよ、債券相場にとっては一時的な買戻しの材料、もしくはいったんの下値模索となり、そのあとは政局とともに財政の行方を見極めてということになろう。


2010.9.10「何故、8月10日に日銀は動かなかったのか」

8月9日から10日にかけて開催された日銀の金融政策決定会合の議事要旨が発表された。同日10日に開催された米FOMCでは、MBSの償還資金による国債への再投資を表明し、これを追加緩和とした。現実にはFRBのバランスシートの規模を維持するだけで追加緩和とは認識しづらいが、日銀が動かずFRBが「追加緩和」を行ったことで、円高ドル安を進行させたひとつの要因となった。

結局、このときには追加緩和策を決めなかった日銀は8月30日に臨時の決定会合を開催し、新型オペの拡充策という「追加緩和」を実施している。それでは、なぜ8月10日の会合では追加緩和を見送っていたのか、議事要旨の内容から見てみたい。

注目すべきは為替に関する部分で、最近の為替動向については、「多くの委員は、円高が輸出や企業収益の下押し要因になりうると述べた。また、多くの委員は、円高やそれに伴う株安が、企業や家計のマインドに与える影響にも、注意が必要であると指摘した。ある委員は、足もとの円高水準が持続するリスクが高まっているとの見方を示した。」

円高リスクに対して警戒はしているものの、「複数の委員は、為替円高が経済全体に与える影響は、世界経済全体の情勢、企業収益や金融環境の動向など、様々な要因に依存するため、バランス良く全体を評価していく必要があると」との指摘もあった。

さらに、ある委員が「円の対ドル相場が、1995 年の円高のピークに近づいていることが話題となっているが、その後の日本の物価上昇率が低かったため、実質実効為替レートでみると当時ほどの円高ではないとした上で、円高と物価下落を、別々のものではなく、総合的に捉えて経済への影響を評価する必要がある」と指摘していた。このある委員とは誰なのであろうか。

それはさておき、この会合では政府からの出席者からも、特に追加緩和を望む発言はなかった。FRBが同日のFOMCで動くことはある程度日銀も察知していたと思われるが、その内容がMBSの償還資金による国債への再投資であるならば追加緩和としての実質的な効果はないことで、為替市場に与える影響は限定的とみていたのであろう。

しかし、米FRBのバーナンキ議長はFOMCの決定を「追加緩和」として、動かぬ日銀と動いたFRBとの違いを印象付けることとなった。自国通貨安を意識しての行動は、結果としてはFRBのほうが上手であったと言うことであろう。少ない手札をタイミングよく有効活用したとも言える。

この日銀の決定会合の結果は全員一致での現状維持であった。30日の臨時会合では須田委員が新型オペの拡充策については反対票を投じて全員一致が破られてはいるが、ここにきての決定会合はほぼ全員一致のケースが目立っている。もし、多少なり日銀も動くそぶりを見せれば市場に影響も出る。8月10日に日銀は動かずとも、ここで1人か2人の委員が、追加緩和策を議事提案していれば、市場が見る日銀の印象に変化があった可能性がある。

日銀の金融政策決定会合は、いろいろな分野の代表者が、それぞれの意見に基づいて最終的には多数決で金融政策等が決定される仕組みである。あまりに考え方が同方向であると、硬直的なものとみられてしまいかねず、柔軟さを示すためにも、意見の違いをもう少しはっきりさせ、少なくとも全員一致が続くような事態は避けるべきではなかろうか。


2010.9.9「財政法第五条の意味」

財政法第五条には「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。」とある。

財政法ではこのように日銀による国債引き受けを禁じている。これについては先刻ご承知のとおり、高橋是清蔵相による日銀の国債直接引き受けの実施が、戦後のハイパーインフレをもたらしたことの反省によるものである。

もう少し詳しく言えば、高橋是清蔵相による日銀の国債直接引き受けは、途中で歯止めをかけようとした高橋蔵相自身が二・二六事件で暗殺された。さらにその後の軍事費拡大にも歯止めがかけられず、その結果として戦争拡大とその後の敗戦、さらにハイパーインフレを迎え庶民の生活を直撃することとなった。

9月9日の参院の参院の財政金融委員会で、質問に立った「たちあがれ日本」の中山恭子議員は、デフレを克服するためとして、財政法で禁じられている日銀の国債引き受けを主張した。財政法第五条の「特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない」点を主張したのである。

デフレ解消という「特別の事由」のためには禁じ手も使うべきとの主張であるが、そもそも日銀が国債を直接引き受ければ、どのような経緯でデフレが解消されるのかという説明が全くなされていなかった。

そもそも財政法第五条では原則として国債の日銀による直接引き受けは禁じられているのであり、その経緯を財務官僚でもあった中山議員が把握されていないとは考えづらい。それにも関わらず、デフレ解消のためと称して日銀による国債引き受けを主張されるのか納得がいかない。

デフレ脱却議連と称してデフレ解消のために日銀を追い込むことしか考えていないような方々もいるが、中山議員も同様の考えを持っているのか。お札を刷ればデフレは解消すると簡単に考えていたとグリーンスパン前FRB議長も著書で反省していた。実際に現場に立ち、責任ある立場にいると自ずとやれるものとやれないもの、やって良いものとやって悪いものが見えてくる。バーナンキ現FRB議長が持論のインフレターゲットを封印しているのもそのためであろう。

中山議員は大蔵省で女性初の課長に昇進したことでも有名である。その時の肩書きは理財局国有財産第二課長であったそうである。国の財政に関して責任ある立場にいたにも関わらず、財政法の基本原則を破ってまで日銀による国債引き受けを主張するというのならば、それなりの信念と責任をもっての発言であろう。それならばどのようにデフレを解消させ、さらにいったん始めた日銀の国債引き受けをどのようにストップさせることができるのかを明確に示す責任がある。


2010.9.8「債券相場の下落はいったんブレーキが掛かる」

7日の日本の債券市場では、官公庁系とみられる投資家の10年ゾーンの買いで大きく反発した。10年債利回りは7日に1.195%と1.2%に接近したが、ここがいったん底となり1.135%まで買い進まれた。

6日に大きく売り込まれた5年債は、7日の前場こそ引き続き周辺銘柄主体に売りが入り89回債は5糸甘となる場面もあった。しかし、昼過ぎにはウォール・ストリート・ジャーナルの記事を受けての欧州銀行への懸念の強まりによるユーロ安、さらに東京時間ですでに米国債などに買いが入るなどしており、そこに日銀が追加緩和を示唆するような公表文がでたことなどから、5年債にもあらためて押し目買いが入り5年90回は4毛強の0.330%まで買い進まれた。

8日の前場には10年債利回りは3毛強の1.110%まで買われたが、5年債は5毛強の0.290%まで買い進まれた。7日にここにきてやはり売られていた米国債やドイツ連邦債も大きく反発したことで安心感も出て、10年1.2%近くで目先の底打感も出てきたことでの安心買いが入ってきたものとみられる。

このため今後は戻りを試す展開が予想される。ただし、2003年6月の際の債券相場の急落のきっかけのひとつが先物の限月移行にあったことは念のため注意しておく必要がある。当時の6月限が最終売買日の建玉を大きく残し、現引きした投資家による投げが相場の下げを加速した経緯がある。同じことを繰り返すとは思われないが、9日の9月限の最終売買日での建玉にも注意は必要か。


2010.9.8「円安へのせっかくのお膳立てが」

昨日の日銀の金融政策決定会合後に発表された公表文では、「必要と判断される場合には、適時・適切に政策対応を行っていく方針」を掲げ、追加緩和の可能性を滲ませた内容となった。これに対して債券市場では、そろそろ売り飽き気分も出ていたこともあってか、これをきっかけに前場まで売り圧力を強めていた5年債などが買われることとなった。ただし、これは追加緩和を織り込みにきたというよりも、タイミングから買いが入りやすかったことによる影響が大きかったとみられる。ちなみに8日に5年債利回りはあっさりと0.3%を割り込んでいる。

債券は事情はどうあれこのように反応したものの、外為市場ではほとんど反応しなかった。ウォール・ストリート・ジャーナルの記事を受けて、欧州銀行への懸念の強まりによるユーロ安により、ドルに対しても円が買い進まれてしまったためである。

ちなみにWSJの記事では、欧州の主要銀行へのストレステストで、一部銀行はソブリン債の保有高を実態よりも少なく申告し、一部の銀行では、イタリアやスペインなどの国債の一部を除外し保有残高を大幅に圧縮して公表したり、子会社の保有分や先物取引で空売りをかけている分を差し引いて公表していた例もあったことが報じられた。

あくまで個人的な感想ではあるが、FRBやECBの関係者が意識してかどうかさておき結果として自国通貨安を招くような発言をしていたが、やっと日銀も円安を意識しての動きを見せてきたかと思ったタイミングで、別途、円買い材料が出てしまい、むしろ円高が加速され、7日の欧米市場でドル円は83円51銭、ユーロ円は8日の東京時間に106円割れ寸前まで円高が進行してしまった。

また、日銀の白川総裁が8日の夕方の会見で、円高進行には当局が為替相場を自在にコントロールできるわけではないと発言し、日銀は円高抑制には積極的ではないと取られたことも影響したようである。このあたり、円高抑制を匂わすような発言となっていれば市場ももう少し円高への警戒心を高めたと思われるのだが。


2010.9.7「金融政策は全員一致で現状維持、公表文の変化は円安を意識か」

日銀は6日から7日にかけての金融政策決定会合で、政策金利の据え置きを全員一致で決定した。ただし、発表された公表文では、「必要と判断される場合には、適時・適切に政策対応を行っていく方針」を掲げ、追加緩和の可能性を滲ませている。

「日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。(8月10日の通常の決定会合、全員一致で現状維持)」

「日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。こうした認識のもと、強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援を図ってきた。日本銀行としては、今後とも、中央銀行として最大限の貢献を粘り強く続けていく方針である。(8月30日の臨時の決定会合、新型オペ拡充策を賛成多数で決定、政策金利は全員一致で据え置き)」

「日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。そのために、強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援を図ってきており、こうした中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく。日本銀行は、先行きの経済・物価動向を注意深く点検したうえで、必要と判断される場合には、適時・適切に政策対応を行っていく方針である。(9月7日の通常の決定会合)」

直近の3回の決定会合での公表文の最後の部分を並べてみたが、特に8月10日と今回では、「日本銀行は、先行きの経済・物価動向を注意深く点検したうえで、必要と判断される場合には、適時・適切に政策対応を行っていく方針である。」との部分が加わっており、追加緩和を示すものともなっている。

今回の決定会合での現状維持には違和感はない。8月30日に追加緩和を行ったばかりであり、それから環境が大きく変わったわけでもない。しかし、最後に一文を入れたことには何かしら目的があると想像される。

政治的には民主党総裁選を睨んで、小沢氏がもし総理になった際に日銀にプレッシャーをかけられる前にすでにここで手を打ってきたのではないかとの邪推もありうるか。しかし、これは欧米の中銀がアナウンスメント効果を意識しての自国の為替安政策を行っていることに対して、日銀も同様の手を打ってきたためとも考えられる。この文章が入ったからといって、確実に追加緩和が保証されるわけではない。外部環境が大きく変化すれば、この一文がなくとも日銀は動くであろう。日銀も円安を意識しての戦術も意識しはじめているのではないかと考えられる。これに果たして外為市場は反応してくるのであろうか。債券市場はちょうど売り一服というタイミングであったことで、買戻しの材料としたようではあるが。


2010.9.7「失われた20年で、増加した公債残高は約471兆円」

9月7日付の日経新聞に、バブル崩壊後の1991〜2010年度の「失われた20年」で、国の社会保障費が累計で148兆円増える一方、税収は211兆円も減ったとする分析を財務省がまとめたとの記事があった。

そのまとめた分析とは、財務省の発行している下記のパンフレットの一部(パンフレットの10ページ「公債残高の増加要因」)に掲載されている。この資料は日本の財政の内容を要領よくまとめられていたものであり、一読をお勧めしたい。

「日本の財政関係資料」、http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014_22.pdf

財務省のこの資料によると「特例公債の発行から脱却することのできた平成2年度以降の公債残高の累増について見てみると、歳出面では、90年代は公共事業関係費の増加が主要因でしたが、近年では高齢化の進行等に伴う社会保障関係費の増加が主要因となっています。また、歳入面では、景気の悪化や減税による税収の落ち込みが主要因となっています。

ちなみに特例国債とは一般に呼ばれる赤字国債のことであり、1990年度はバブル経済で税収が戦後最高の60.1兆円に達したことで赤字国債はハ行されなかったが、それは一時的であり、1991年以降は公債残高は「失われる」どころか増加し続けることとなる。まさに増加し続けた20年と言える。

91年度以降2010年度にかけて、国債発行残高増加額は約471兆円となっている。この中には旧国鉄債務の継承などによる増加分の53兆円も含まれるため、これらを除くと実質的な増加は361兆円になる。

471兆円のうち、歳出の増加分が約192兆円増加し、税収等の減少要因が約169兆円となっている。

さらに歳出の増加には社会保障関係費が約148兆円、公共事業関係費が約62兆円増でほとんどを占めている。年代毎に見てみると1990年代では経済対策のための公共事業などが増加要因となっていたが、2000年代あたりからは社会保障費が急激に増加していることがわかる。

特にここ数年の増加が大きく、2010年度も高齢化に伴う自然増や基礎年金の国庫負担割合引き上げ、子ども手当の創設などが重なっての増加となった。社会保障関係費はほぼ一貫して増え続けているが、地方交付税や教育関係費、防衛費などをあわせたその他歳出は累計18兆円の減少となっていた(一部、日経記事より)。

税収など歳入面では、税収が211兆円も減少し、税外収入は41兆円増えた。税収減は景気低迷による影響に加え、たび重なる減税も影響した。税外収入は特別会計の埋蔵金活用などで伸びているものの、税収減を補うには至っていない(一部、日経記事より)。

この資料を見ても、日本の財政健全化を進めるには歳出と歳入両面での改革が必要になる。今後も伸びが予想される社会保障費に対して、税収がこのまま落ち込みを続ければ国債への依存度はますます大きくなりかねない。社会保障費の抑制と税収改革はこれを見ても急務と言わざるを得ない。

14日の民主党代表選はすなわち日本の首相を決める選挙ともなる。両候補がこの日本の財政の現状をどう理解し、どのような打開策を練っているのかも注目していく必要がありそうである。


2010.9.7「債券バブル相場の崩壊」

8月25日に長期金利が0.895%をつけたが、今年の4月から続いた債券の上昇相場はこれでピークアウトした。 4月からのじりじりとした上昇相場が続き、長期金利は1%を割り込み、買い遅れていた投資家が少しでも利回りを求めて超長期債なども買いに走り、債券相場はバブル相場を形成していた。

このバブル崩壊のひとつのきっかけは8月24日の20年国債入札であり、またその後のメガバンクの一角からの売り崩しであったが、前回1%割れとなったあと相場が急落した2003年6月と同様のことが起きていたのである。

26日に民主党代表選に小沢前幹事長が出馬と報じられたことで財政拡大が意識され、メガバンクの一角が超長期主体に売りを出したことで相場の地合いは一変した。 30日に日銀は臨時の金融政策決定会合を開き新型オペの拡充という追加緩和策を決定したが債券相場の下落は止まらず、10年債利回りは1.105%と1.1%台に上昇し、20年債の利回りも1.820%に上昇した。

9月1日には民主党代表選に小沢氏が正式に出馬を表明し財政への懸念が強まった。また、この日に実施された10年国債の入札(利率1.0%、310回債)は低調なものとなった。 3日には今度は流動性供給入札の結果が低調なものとなったことをきっかけに、さらに売り込まれ、10年債利回りは1.150%に上昇した。 そして6日には、超長期債の下落による損失を埋めるため、利益の出る中期ゾーンにもまとまった売りが入り、5年債の利回りは0.360%に上昇し、10年債利回りは1.195%と1.2%に接近した。

民主党代表選の結果、小沢氏が勝利するとなれば「財源なきバラマキ路線」が復活する懸念がある。小沢氏は財源として国有財産の証券化や無利子非課税国債の導入検討を明らかにしたが、前者はネットでの日本の債務拡大につながりかねないし、後者は数兆円規模の発行は不可能であるなど政策の財源についてはあまりに不透明である。 財政再建を意識している菅総理が勝利するのであれば影響は限定的であろうが、債券市場では小沢リスクをかなり意識しつつある。

また、日本国債と同様に安全資産として買われていた米国債や、過去最低水準の2.083%(10年物)をつけたドイツ連邦債も相場がピークアウトした可能性がある。このため当面の債券市場は売りが出やすい地合いが続き10年債利回りは1.2%台に乗せから、いずれ1.4%近辺にまで上昇する可能性がありうる。上昇相場よりも下落相場の方が当然ながらピッチは早い。


2010.9.3「ラジオ番組に出演します」

ご案内です。明日、9月4日の朝7時からの文化放送の「幸田真音のIt's Mine!」にゲストとして出演させていただきます。この番組はすでに200回を8月28日に迎えたそうです。201回目のゲストとして登場させていただきました。国債のことを中心にお話させていただきます。ぜひお聞きください。また、9月11日にも出演させていただきます。よろしくお願いいたします。


2010.9.3「三度目の長期金利1%割れバブルの崩壊か」

8月25日に長期金利が0.895%をつけたが、今年の4月から続いた債券の上昇相場は債券相場はこれでピークアウトしたとみられる。26日に民主党代表選に小沢前幹事長が出馬と報じられたことで財政拡大が意識され、メガバンクの一角が超長期主体に売りを出したことで相場の地合いは一変した。

27日に10年債利回りは1.015%まで上昇し、25日に1.515%まで買われていた20年債の利回りは1.7%台に上昇した。30日に日銀は臨時の金融政策決定会合を開き新型オペの拡充という追加緩和策を決定したが、債券相場の下落は止まらず、10年債利回りは1.105%と1.1%台に上昇し、20年債の利回りも1.820%に上昇した。

これには27日の米債安も影響しており、米10年債の利回りは前日の2.48%から2.65%と大幅に下落していた。しかし、30日の米債は大幅反発となり10年債利回りは2.53%に低下。これを受けて31日の日本の10年債利回りも0.965%に、20年債利回りも1.655%に急低下した。このあたりまでは米債との連動性も強かったが、その連動性も次第に薄まってきた。

31日の米債は続伸して、米10年債は2.48%に低下したものの、9月1日の日本の債券市場では10年債が1.035%、20年債が1.755%をつけるなどむしろ大幅に下落したのである。これは民主党代表選に小沢氏が正式に出馬を表明したことで、財政への懸念が再び強まったことが要因となったとみられる。3日には流動性供給入札の結果が低調なものとなったことをきっかけにさらに売り込まれ、10年債利回りは1.150%に、20年債利回りも再び1.880%に上昇したのである。

今回の超長期主体の債券相場の急落要因としては、4月からのじりじりとした上昇相場が続き、気がつくと長期金利は過去三度目の1%割れとなった。買い遅れていた投資家が、これまで買っていなかったものの、少しでも利回りを求めて超長期債なども買いに入り、債券相場はまさにバブル相場を形成していた。このバブル崩壊のきっかけは、今回も8月24日の20年国債入札であり、またメガバンクの一角からの売り崩しであった。まさに2003年6月と同様のことが起きていたのである。

さらに9月1日に実施された10年国債の入札(利率1.0%、310回債)は最低落札価格は事前予想を下回り、テールは前回の2銭から10銭に伸び、応札倍率も前回から低下するなど低調なものとなった。この結果を見ても、投資家が慎重姿勢であることが伺えた。

米国経済の減速懸念や円高・株安を背景に日本の債券相場は4月以降、ほぼ一本調子で上昇してきたが、ここにきての超長期債の値動きの荒らさなどから、債券相場は調整局面を迎えるが、その大きな要因は日本の財政悪化への懸念である。

民主党代表選の結果、小沢氏が勝利するとなれば「財源なきバラマキ路線」が復活する懸念がある。小沢氏は財源として国有財産の証券化や無利子非課税国債の導入検討を明らかにしたが、前者はネットでの日本の債務拡大につながりかねないし、後者は数兆円規模の発行は不可能であるなど政策の財源についてはあまりに不透明である。

財政再建を意識している菅総理が勝利するのであれば影響は限定的であろうが、債券市場では小沢リスクをかなり意識しつつある。このため当面の債券市場は売りが出やすい地合いが続き、10年債利回りはあっさりと1.2%台に乗せ、いずれ1.4%近辺にまで上昇する可能性もありうる。上昇相場よりも下落相場の方が当然ながらピッチは早い。


2010.9.3「今度は無利子国債ですか」

読売新聞によると、民主党の小沢一郎前幹事長は2日の日本記者クラブ主催の代表選公開討論会で、公共事業などの新たな財源として、無利子非課税国債の導入を検討していることを明らかにした。

小沢氏は「都道府県で高速道路を造らせる仕組みにしたらどうか。それを国が支援する」と述べたうえで、地方の負担分について「無利子国債で補填ほてんする考えだ」と語ったそうである。

無利子非課税国債構想は目新しいものではない。自民党政権下でも何度も検討された経緯があり、それを蒸し返してきたにすぎない。過去何度も政府で検討されながら、実現できなかったのは、それなりに理由があろう。

無利子非課税国債構想とは、利子が付かない代わりに相続税を免除する国債を発行することで、眠っている民間資金を国債として吸い上げ財源として有効活用する狙いがある。言わば個人向け専用国債の一種である。

そもそも、この国債に対して個人のニーズはどれだけあるのであろうか。相続税を気にしなければならないほどの金持ちに対しての優遇措置ともみなされ、政治家自身が購入したいが為に発行させるのではとの意見もあるかもしれない。しかし、それ以前にこの国債に対してのニーズは何千億、何兆円も発行できるほどはないと考える。

昔、割引債券をツボに入れて隠し持っていた政治家がいたが、金融債がある種の税金逃れに使われていたことは周知の通りである。もしも、無利子非課税国債を税金逃れで購入しようとなれば、相続と対象となるような資産が人目に晒されることとなり、そのようなリスクを、果たして「眠っている資金」を保管している、所謂お金持ちが犯すことも考えづらい。もちろん無利子非課税国債の発行形式を昔の割引金融債のようにするというのもひとつの手段かもしれないが、それが果たして許されとは思えない。

しっかり申告をして無利子国債の恩恵を受けようとする人もいようが、それで発行できる無利子国債の金額は数兆円単位になるとはとうてい思えない。さらに事務手続きはかなり煩雑になるというデメリットもある。

財政問題をどのように処理するのか、民主党代表選に正式出馬した小沢氏の発言に注目していたが、どうやらその内容はこれまで政治家の思いつきのようなかたちで、浮かんでは消えたものを再び引き出しているに過ぎないようである。


2010.9.1「小沢ショックで債券バブル崩壊の可能性も」

8月30日に債券相場は急落した。この日、日銀は臨時の金融政策決定会合を開催し追加緩和を決定したが、これはほとんど材料視されず、むしろこの日の下げは27日の米国債の下げによる影響が大きかった。米10年債の利回りは利回りは前日の2.48%から2.65%と大幅に上昇し、米30年債の利回りも前日の3.51%から3.70%に大きく上昇していた。

これを受けて30日に現物20年119回債は12毛5糸甘の1.820%まで打たれ、10年債利回りも10毛5糸甘の1.105%に上昇した。ここにきて非常にボラタイルな動きとなり、まさに相場に変化が訪れてきている。

この日は午後に入り、売られていた10年債や20年債主体に押し目買いが入り、309回債は朝方の1.105%から1.025%へ、20年120回も朝方の1.835%から1.730%に大きく切り返した。さらに30日の米国市場で米債は大幅反発となり、10年債利回りは27日の2.65%から今度は2.53%に急低下した。

もしも日本の債券相場の上昇基調が崩れるとすれば、2003年6月のときと同様に米債の下落が大きな要因となると考えられている。このため、30日に米債がいったん戻したことで、31日に債券先物は143円台を回復し、10年債利回りも0.965%まで回復した。

31日に米債はさらに買われて2.48%をつけたにも関わらず、9月1日の債券市場では超長期債主体に急落の展開となった。そのひとつの要因が10年国債の入札である。2003年6月の債券急落の背景には米債の反落もあったが、大きなきっかけとなったのは国債入札であった。国債入札には投資家の投資意欲がその結果に反映されやすいためである。

9月1日の10年国債(利率1.0%、310回債)の入札結果は、最低価格が99円45銭、平均落札価格は99円55銭となり、最低落札価格は事前予想を下回った上、テールは前回の2銭から10銭に伸びたことや、応札倍率も3.16倍と前回の4.18倍から低下するなど低調なものとなった。

この結果はあまり良くはないとは言え、相場下落を誘発するほどの結果ではない。しかし、投資家が慎重姿勢であることは、テールの延びや応札倍率に反映されている。この日の債券市場では、現物債は10年309回債が一時7.5毛甘の1.035%、20年120回債が9.5毛甘の1.755%、30年32回債が10.5毛甘の1.790%が打たれ、イールドカーブはスティープニング圧力を強めた。

この動きを見る限りにおいて債券相場が調整局面入りした可能性が強いと見られる。そして、その大きな要因となりうる材料も浮かび上がってきた。民主党代表選挙への小沢氏の正式な出馬である。

菅氏と小沢氏の一騎打ちの様相となったが、数を争う選挙において小沢氏の右に出るものはいないであろう。負ける戦に出ることも考えづらい。国民の意識としても怖いもの見たさもあろうし、この剛腕ぶりを発揮して不透明な政局を乗り切ってくれるのではとの期待感もあるのかもしれない。これにより、小沢氏有利と見たほうが良いのではなかろうか。

しかし、小沢氏は当初の民主党マニフェストの政策を実施することを明言し、その資金の手当に国有財産の証券化の可能性を示唆したそうである(代表選立候補に伴う菅首相との共同会見で政策実行の財源について、600兆円の国の資産のうち200兆円くらいは証券化できる考えもあると指摘、ブルームバーグ)。

証券化で得た資金で当初のマニフェストに沿った政策費や来年度予算の膨張に対応するとなれば、本来ならば国債の残高圧縮に使うべきものを使ってしまうことともなり、さらに政府債務の返済能力が減退することになる。

国債の増発を抑えることは財政規律を守る上で重要ではあるが、そもそも膨大な借金を減らす努力が先決であり、それに逆行するかのような政策を取る可能性が出てきた。小沢氏ならば財源はどこからでも探し出すとの意見は以前からあったが、これでは国の債務は減るどころか返済不能に向けて突っ走ることになりかねない。

そのあたりの状況をここにきての債券相場は嗅ぎとっているのではないか。今回は特に米債が下げずとも、国内要因によって10年国債が0.9%割れまで買い進まれた債券のミニバブル相場がはじけ飛ぶ可能性が強まった。このシナリオは、もちろん代表選で小沢氏が勝利するとの前提ではあるが。


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