今年もあと1か月あまりを残すこととなったが、今年のマーケットを振り返るにあたり、5月6日の「フラッシュ・クラッシュ」も今年注目すべきマーケットの出来事のひとつであった。本日、都内での西村日銀副総裁の講演「電子取引と金融市場」において、フラッシュ・クラッシュについて触れているが、その前にフラッシュ・クラッシュとは何であったのかを再確認してみたい。
今年5月6日、米国株式市場はダウで一時前日比1000ドル近くまで下落し、ザラ場中での過去最大の下げ幅となった。しかし、この下げは一時的なものであり、その後、急回復した。もう少し具体的に見ると、この日の午後2時40分過ぎ頃、ダウ平均は5分間程度で600ドル近く下落し、一時前日比で995.55ドルも下げた。しかし、その後わずか1分間程度で下げ分のほとんどを取り返すなど、過去に例のみない乱高下が起こったのである。これは、フラッシュのように一瞬で株価が急落したことで「フラッシュ・クラッシュ」と呼ばれた。
ニューヨーク証券取引所などでは、結局、2時40分以降で最新の価格から60%以上下げた約定を全て取り消すと発表した。その数は2万件以上となったようである。
これは当初、システム取引による誤発注とみられたが、米国の商品先物取引委員会と証券取引委員会による調査によると、アルゴリズムによる1つの大口売り注文の自動執行が他のアルゴリズムを混乱させたと指摘された。つまり、市場参加者の多くが、買い注文の執行を見合わせた結果、市場流動性が急減するとともに、異例なほどの価格の乱高下を引き起こしたと分析されたのである。また、アルゴリズムによる裁定取引がその影響を拡大させ、幅広い銘柄で価格の瞬落を招いたとされている(西村日銀副総裁講演より)。
西村日銀副総裁は、「アルゴリズム取引が平時に市場の安定に寄与する可能性があるといっても、それは想定外の出来事や未知の不確実性が顕在化していない状況に限られます。機械的なアルゴリズムは、想定外で前例のない出来事に対して、良識を持った人間のように適切に対応できるわけではないでしょう。」と指摘している。
ただし、こういった事故を防ぐにはアルゴリズム取引で想定外の動きの兆候が出た際に機械的に探知し取引を中断させ、人間の手で想定外の動きの原因を探る必要がある。そのためには高速なアルゴリズム取引を前提としたサーキット・ブレーカーなどの制度化をより進める必要がある。
西村日銀副総裁はまた、フラッシュ・クラッシュの共同報告書の背後にある研究論文で、興味深い事実を発見したことを指摘している。
「同論文は、価格急落の終盤にかけて流動性が急減する中で、一部の高頻度取引業者が売買を活発化したと指摘しています。これは、流動性が急減した市場、すなわち平時に高頻度取引業者の取引相手となる市場参加者が不在となった市場において、こうした高頻度取引業者の間でアルゴリズムによる機械的な高速売買が繰り返されたことを示唆しています。こうした状況は、ごく短い時間に価格のボラティリティを高めたと考えられます。」
つまりこれはコンピュータによるプログラム取引の暴走とも言えるものであったとの指摘であろう。
高頻度取引業者以外の市場参加者の需給が大きく偏る中では、高頻度取引によって供給される短時間の流動性だけでその偏りを均すことは非常に困難となり、高頻度取引業者は、市場のファンダメンタルズではなく、むしろ微小な価格変化の方向性に応じて売買するため、仮に需給の不均衡がある中で、そうした機械的なトレーダーが市場の大勢を占めた場合には、市場価格がファンダメンタルズから急速に乖離していく可能性があり、フラッシュ・クラッシュは、これを示す顕著な例といえると西村副総裁は指摘している。
流動性供給という意味では、短時間で売り買いを繰り返す投機的な動きをする参加者はある意味不可欠である。必要悪とも言えるかもしれない。私も債券ディーラー時代は先物を主体に頻度の高い売買を行ってきた経験があるため、その存在は必要であるとの認識である。ただし、これをいま機械が行っているという事実には、多少なり不安も覚える。しかも、取引所のシステムはまさにこういったアルゴリズムによる取引を円滑に行える方向に整備が進んでいることも、個人的には憂慮すべきことではないかと思っている。相場は機械ではなく人が作るものであるという基本的なことが忘れ去られつつあるように思われるためである。
財政法を発行根拠法としているのが建設国債である。財政法の四条に記載されているため、四条国債とも呼ばれている。
財政法第四条
国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。
2 前項但書の規定により公債を発行し又は借入金をなす場合においては、その償還の計画を国会に提出しなければならない。
3 第一項に規定する公共事業費の範囲については、毎会計年度、国会の議決を経なければならない。
財政法では、健全財政主義の原則に基づき、基本的に国債の発行で財政を運用することを禁止している。これは、戦前・戦時の軍事費調達のために巨額の公債が発行され、その大部分が日銀で引き受けられた結果、戦後の激しいインフレーションの発生となったことに対する反省が一つの契機であったとされている。このため、国の歳出は原則として租税等によりまかなうべしとの非募債主義(国の財政は基本的に国債によらないとするもの)をとっている。しかし、公共事業費と出資金、貸付金の財源とする投資的経費に限っては財政法により国債の発行が認められており、そのために発行される国債が建設国債である。
建設国債は公共事業などの財源となり、国の資産を形成するために発行される。道路や下水道、ダムの建設といった公共事業は多額の資金が必要とされるが、我々は将来も出来上がった設備・施設の恩恵を受ける。また、このような社会基盤が整備されれば、産業の育成などに貢献し、我々の生活にもプラスとなり、将来の税収入が増える要因となることも期待されるというのが、建設国債の発行を正当化する理由となっている。
つまり負担の世代間公平という考え方に基づいて公共事業等に限り国債発行を認めているものとも言える。これはドイツの連邦基本法115条、イギリスではブレア政権が1998年に策定したゴールデン・ルールにおいて同様の原則が規定されている。
ただし、公共事業の財源に充てるために国債を発行するには、国債の議決を経た金額の範囲内としなければならない。この国会の議決は予算総則によって受けることになっている。
11月23日に香港での白川日銀総裁の講演内容が日銀のサイトにアップされた。この中で、白川総裁は「日本型デフレ」について解説を行っている。
白川総裁は、グーグルで「日本型デフレ」をキーワードに検索すると、本年7月以降11 月半ばまでのヒット件数は約100万件と、年前半の約40万件から急増している点を指摘していた。もちろんこの検索は日本語ではなく英語の「Japanese-style deflation」で行ったものであろうが、どうやら日銀はインターネットを使ってワード検索もデータ収集の一環として行っているようである。
この講演の中で、白川総裁は日本の経験やその教訓を誤って解釈しているのではないかと指摘している。総裁の理解するところとして、日本の成長率の低下の要因として以下の3つをあげている。
第1の理由がバブル崩壊の直接的な影響であり、過剰な設備、雇用、債務という3つの過剰の解消が必要であったこと。
第2の理由として、1980年代後半から1990年代にかけて世界規模で起こった規制緩和、グローバリゼーション、情報通信技術革命といった大きな潮流の変化に対して、日本企業がうまく適合できなかった点を指摘している。日本の企業は、過去の成功の記憶に囚われ、グローバル経済に生じた大きな変化への対応が遅れたとしている。
第3の理由として高齢化や人口減少の影響をあげている。
第1の理由と第3の理由は、よく指摘される点ではあるが、第2の理由による影響に関しては今後のデフレ解消に向けて新たな視点を与えることになるのではなかろうか。
そして、デフレの問題には賃金による影響も大きいことをあげている。物価上昇率が低下するにつれ、賃金がより伸縮的に設定されるようになり、名目賃金の伸縮的な調整はサービス価格の下落という形でデフレの原因になったとしている。
現在の米国経済について、この日本の教訓がどう生かせるかについても言及している。総裁は米国でのバランスシートの修復はまだ時間が掛かるとしているが、その間に経済の供給面の重要性への配慮が必要であるとしている。
需要の急激な落ち込みを防ぐ上での緩和的な金融政策は重要であるが、低金利の持続は新陳代謝を不活発化することによって、生産性の上昇を阻害する可能性も指摘している。
米国は日本よりも経済構造が柔軟であること、また、人口増加率が+1%程度と日本のバブル崩壊後に比べて高いことは、強みとして指摘できるとしているが、このあたりの日本の状況との違いは認識しておく必要がある。
ただし、バブル崩壊後の長引く経済低迷の中では、社会の不満が高まる結果、長い目でみて効率性に悪影響を与える政策が採られがちであることを指摘している。
これは現政権を含めて、バブル崩壊後にとられた日本政府による対策を意識しての発言であるかのように思われる。また、その政府の対策に呼応して実施してきた日銀の金融政策を含めての発言であるのであろうか。そして、日本の経験をミスリードしているというのはこの点も含めてのものなのであろうか。
総裁は潜在成長率の低下傾向に歯止めをかけることは、「どの国にとっても決して容易なことではありませんが、それに成功するかどうかが失われた10年と呼ばれる事態を避ける大きな鍵を握っているように思います」としている。
さらにバブル発生の要因のひとつとして、長期にわたって継続した金融緩和もあげていた。その理由として、低いインフレ率が続き、経常収支の黒字の圧縮に向けて強い対外的な圧力を受け、経常収支の黒字を圧縮するためには内需の拡大が必要であり、そのために、緩和的な金融政策が必要という議論が強力に展開されたことや、為替レートが円高に向かうことへの懸念、を指摘している。
このため、金融政策運営は、物価安定の下での持続的な経済成長を実現するという国内経済の安定を目的に運営する必要があるとして、為替レートや経常収支を金融政策の目的とすると、国内経済の安定が損なわれうる可能性を指摘している。
これは過去の日本の金融政策の反省を踏まえた発言であろう。それでも、もし日銀が過去に戻れたとして、あらたに金融政策をやり直せるとしたならば、具体的に何をしたのであろうか。そのあたりについても聞きたいところではある。
23日に11月2、3日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨の中では、追加の資産購入により、この場合の資産は米国債であったが、長めの金利の低下を促すことにより、生産と雇用の回復を後押しし、物価を目標とするレベルへ引き上げが可能としている。その経路について疑問視される部分も多々あるが、今回はそれについてではなく、そもそも長期金利のコントロールが可能であるのかという点について触れてみたい。
中央銀行の金融調節の目的はあくまで短期金利のコントロールであり、市場で決定される長期金利はコントロールできないというのが一般的な認識であると思われる。ただし、市場への期待に働きかけることでのコントロールが試みられることはある。
もし長期金利を完全にコントロールしようと思うと、市場を完全な統制下におく必要がある。さらに海外での影響を排除するために、海外と隔離された国内市場を形成する必要もある。これは戦前・戦中の日銀による国債引受が実施された際にも日本で取られた手段である。
また、国債市場そのものの規模が小さく、また金融機関への引受が主体となっている際などもある程度のコントロールは可能である。これは戦後の日本でも銀行のディーリングが認可される以前に見られたものである。
しかし、これだけ市場経済が発達している中にあってさらに国債市場規模が大きくなっているとなれば、国債価格をコントロールすることは不確定要素があまりに多く存在することも手伝い、不可能に近い。その価格を安定させることが難しいことは、QE2後にむしろ米長期金利が反転上昇していたことからも明らかである。もちろん期待が先行して、あまりに長期金利が低下してしまった反動と言えばそれまでだが、将来のインフレへの懸念により上昇していた面もあり、このあたりは市場の期待に働きかける難しさも垣間見せている。
それでは日本ではどうであろうか。デフレ下にあり、国債が国内資金でほぼ賄えているだけに、海外要因にはあまり振り回されることなく、コントロールが一見可能のように見える。確かに1998年末から1999年初めにかけての運用部ショックによる長期金利の上昇以降は長期金利は2%以内に抑えられてはいる。しかし、これは決して日銀の金融政策だけによるものではない。そもそも日銀は長期金利上昇を抑制しようとして金融緩和策を行っているのではなく、反対にデフレから脱却させようとしている。それはつまり、むしろ長期金利については上昇する方向に働きかけているわけだが、一向にデフレが解消されずに長期金利は低位安定するという結果となっているのである。
米国よりも日本で長期金利のコントロールが可能かどうかが真剣に議論される時期がいずれくる可能性がある。その際には、債務悪化を背景とした長期金利の急上昇にどのように歯止めがかけられるのかということが議論されることになろう。しかし、その際には金融政策によるものには限界がある。もちろん日銀引き受けの国債発行などは財政規律の緩みが意識されさらなる長期金利の上昇を招く。それよりも、そういった長期金利の上昇を引き起こさせないための予防的な措置が必要である。そのために最も効果的なのは財政健全化であることは言うまでもない。
前回の「国債の概念」で見てきたように国債の概念については財政法にあるが、それでは国債の発行にはどのような決めごとがあるのであろうか。それは憲法の第85条にある。
憲法 第85条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。
国債を発行するということは、国が債務を負担するということであり、そのためには憲法の規定により国会の議決に基づくことが必要とされている。つまり、日本の国債は憲法に基づいて、議会つまり国会の議決により発行されている。参考までに、米国では、合衆国憲法第一条第8項に、連邦議会の権限として、合衆国の信用に基づいて借入をすること、との規定がある。
憲法にある国会の議決とは、特に定めがないことから、法律によっても、予算によっても、あるいは他の形式でも差し支えはないものとされる。しかし、国債を発行する場合の議決はすべて法律という形式をとっている。
国債には建設国債、特例国債(赤字国債)、借換債、財投債という種類分けができるが、それぞれに発行するための発行根拠法が存在している。建設国債の発行根拠法は財政法第4条にあるように、公共事業費の財源として発行されるものである。それに対して赤字国債は発行されるたびに特別法を制定し、特例により発行されるたことで特例国債とも呼ばれているのである。
さらに発行目的による国債の分類として歳入債、繰延債、融通債という区分けがある。歳入債とは普通国債とも呼ばれ、様々な歳出需要を賄うための歳入を調達する目的で発行する国債で、新規財源債(建設国債と特例国債)と借換債、そして財政投融資特別会計国債(財投債)などが含まれる。
繰延債とは財政資金の支出に代えて国債を発行することにより、その国債の償還日まで支出を繰り延べる目的で発行される国債である。交付国債や出資・拠出国債が該当する。融通債とは国庫の日々の資金繰りを賄うための資金を調達する目的で、政府短期証券(FB)と呼ばれる一時的に発行される国債で財務省証券,食糧証券,外国為替資金証券、財政融資資金証券のことを指す。
10月の公社債投資家別売買状況が日本証券業協会から発表された。短期証券を除いた公社債投資家別の売買高は都市銀行(長信銀等を含む)が9927億円、地方銀行10,437億円、信託銀行-8,210億円、 農林系金融機関3,733億円、第二地銀協加盟行3,346億円、信用金庫7,765億円、その他金融機関4,018億円、生保・損保5,636億円、投資信託2,024億円、官公庁共済組合272億円、事業法人3,197億円、その他法人1,594億円、外国人5,778億円個人-271億円その他-52,399億円、債券ディーラー2,488億円となった(マイナスは売り超し)。
また、国債の投資家別売買状況を見ると都銀は長期債を21,070億円買い越した半面、中期債を12,063億円、超長期債を3568億円売り越していた。また、超長期債は生損保が6982億円の買い越しとなっていた。この期間分けは発行時のものであり、実際の残存期間は異なる可能性はあるが、それでもメガバンクが10年債主体に大きく買っていたことは確かであると思われる。
11月18日の国債市場特別参加者会では、「先般行われた特別会計の事業仕分けにより、国債整理基金残高を活用した繰上償還を検討することになっており、具体的なことは現在検討中であるが、仮にこれを実施して買入消却を行う場合、借換債発行額の減額要因となる可能性もあると考える」との説明があった。 (財務省、第34回国債市場特別参加者会合議事要旨より)
先月開かれた行政刷新会議の事業仕分け第3弾では、積立金制度の維持を判定する一方で、積み立て基準を見直し、一部を国債償還に充てるべきだとの意見が相次いだ。国債整理基金特別会計での積立金は2009年度末で12.5兆円規模となっている。
この中で評価者のコメントとして「オペレーショナルなリスクに十分配慮しつつ、資金が一時的に滞留する場合には、一層の信認向上のため、繰上償還に充てることも検討する(一般会計に繰り入れることは厳に慎む)」との意見も出されていた。
また「不測のリスクに備える部分を除いた積立金の一部は、国債償還にまわせるのではないか。その方が財政規律を重んじて国債の信用を高めることにつながる。積立金が一定規模を超えると埋蔵金として目をつけられてしまう。」との意見も出ていた。
今回、財務省からは、過去の実績を基に9兆円から10兆円程度の積立金の規模は確保したいと説明があったようである。2010年末の積立金は14兆円程度が見込まれるため、差引で最大4兆円程度を償還財源に充てることができる計算となる。積立金の活用は法改正が必要なく、緊急時には今年度中にも取り崩すことが可能。もしこれが実施されれば来年度の借換債の発行額を最大4兆円規模で抑えられることが可能となる。
政府は来年度の国債発行額を今年度並の44兆円規模に抑えることを目標に掲げているが、そのためには新たな埋蔵金の発掘も必要となるとみられている。このため、この積立金の活用分は埋蔵金として目をつけられる可能性ないとは言えず心配な面もある。
事業仕分けの際には、この積立金を埋蔵金として使うことは厳に慎むとの意見も付言され、財務省からも、積立金による国債発行の減債制度が財政規律を確保するための重要な柱になっているとの説明があった。
18日の夕方に開催された第34回国債市場特別参加者会合では、来年度の国債発行計画に関して財務省から下記のような説明があった。
「来年度の発行計画について、現時点で判明している状況を説明すると次のとおり。発行根拠法別発行額としては、新規財源債については本年度と同様の44兆円に抑えるべく現在予算編成作業が進められている。借換債については、買入消却を本年度当初計画と同額の3兆円と置いた場合の財源を含めて、約12兆円増の115兆円で概算要求を行っている。財投債については、概算要求では本年度と同額の15.5兆円となっているが、来年度財投計画における財政融資の規模、財投償還金及び財融回収金、預託金の見通し等によって決まってくるため、現時点ではまだ何とも言えない。」
「一方、本年度中の来年度からの前倒債の発行見通しについては、まず増額要因として、昨年度の新規財源債のうち出納整理期間発行分が減額となったことや財投債の不用分の影響、さらに本年度に入ってからの第U非価格競争の上ぶれ分がある。減少要因である個人向け国債等の減少分と15年変動債と物価連動債の発行仮置き分を差し引いても、現時点では10兆円程度に積み上がる見込みとなっている。したがって、来年度は前倒債の発行減額によって市中発行額をある程度抑制することも可能と考えられる。」
「なお、先般行われた特別会計の事業仕分けにより、国債整理基金残高を活用した繰上償還を検討することになっており、具体的なことは現在検討中であるが、仮にこれを実施して買入消却を行う場合、借換債発行額の減額要因となる可能性もあると考える。」
ひとつずつ整理してみたい。まず、新規財源債については政府は今年度並に抑えるとの目標を掲げており、多少、無理してでも抑えてくる可能性があり、44兆円と置く。財投債については不透明要因は残るが現時点では今年度と同様の15.5兆円とする。そして、借換債については概算要求時点で115兆円となっている。
国会に提出された今年度補正予算案の中の特別会計の予算総則に関する補正で、国債の前倒し債の限度額が当初の12兆円から20兆円に引き上げられたが、この前倒し債の発行については、差引で10兆円規模が想定される。その分、来年度のカレンダーベースでの国債発行額の抑制が可能となる。
また、国債整理基金残高を活用した繰上償還がもし実現すれば、それは最大4兆円規模での借換債の減額要因ともなる。
参考までに今年度の当初予算での国債発行予定額は、新規財源債が44.3兆円、借換債が102.6兆円、財投債が15.5兆円で合計162.4兆円となっている。そしてカレンダーベースでの市中発行額は144.3兆円である。
議事要旨による出席者のコメントからは、カレンダーベース市中発行増額は3.6兆円程度と想定している向きが多いようである。増額する年限としては30年、40年とするとの意見がほとんどのようで、ある程度、年限に関してのコンセンサスは固まっているように思われる。また、流動性供給入札に関して減額を希望する声も強まりつつあるようである。
来年度の予算編成に向けて、政府の動きが本格化してきた。本日の16時からは平成23年度の国債発行計画等について話し合われるPD懇が開催される。来年度の予算編成とそれに伴う国債発行をみるために、あらためて国債の基礎的な部分を確認してみることにしたい。今回はその第一回として「国債の概念」を取り上げた。
国債とは広い意味では、国が負担するすべての債務のことを指しており、供託金等の返還や公務員に対する給与支払い債務なども含まれる(以下、「国債」大蔵省財務協会を参考)。
しかし、通常は国債とは国が負担している金銭貸借債務のことを意味する。これは国債整理基金特別会計法の国債に対する概念と同様であり、この第2条には、「財務省証券其の他の融通証券、借入金及一時借入金並に割賦の方法を以て償還する交付国債は之を国債と看做さす」とあり、融通証券、借入金及一時借入金も国債の概念に含まれる。
国債の概念には、国債に対して証券の発行を伴うという限定的な意味は含まれてはいないが、一般的に国債と言えば原則として証券発行をともなう国の金銭債務として捉えられている(ただし現在は証券の発行はされずにペーパーレスとなっている)。
12世紀に北イタリア諸都市において発行された貸付債券や、その後のオランダやイギリスで発行された国債が現在の国債の起源とされているが、これは証券発行をともなう国の金銭債務とみなした場合の国債の起源となる。
財政法の第4条には、「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。」とある。
そして、財政法第7条には「国は、国庫金の出納上必要があるときは、財務省証券を発行し又は日本銀行から一時借入金をなすことができる。」とある。
財務省証券とは一時的な国庫の資金繰りなどのために発行される政府短期証券(FB)のひとつであり「融通証券」とも呼ばれる。この政府短期証券と借入金については、第4条にある国債と、厳密に言えば区別されたものとも言える。このため、政府短期証券や借入金及一時借入金については国債には含まれないとする狭義の概念も存在しているのである。
小惑星探査機「はやぶさ」の前人未到の快挙については言うまでもない。もちろん人ではないため前人未到との表現はおかしいかもしれなが、目的を遂げて健気に必死に地球に戻ってきた姿はまさに機械に魂が存在していたかのような錯覚すら覚えた。
それはさておき、「はやぶさ」の持ち帰ったサンプルが小惑星「いとかわ」のものであるとの発表に関しては、読売新聞などが事業仕分けのタイミングを計ってのものかとの観測も記事にしている。「はやぶさ」を葵のご紋の入った印籠のごとく使おうとした可能性は否定できないかもしれないが、それでも日本の基礎技術の育成に関しての費用削減については、今後の日本の経済成長のためにも再考する必要があると思う。
その事業仕分けの目的はもちろん歳出削減である。膨大に膨れ上がった日本の政府債務に対して、今後その積み上げを少しでも軽減し、いずれ債務そのものの削減に取り掛かる必要がある。そのためには増税や歳出削減は必要となろう。もちろん今後の日本経済を支えるようなものは残さなくてはいけないが。
しかし、増税については選挙に影響が出るとのことで政府は二の足を踏んでいる。さらに歳出削減についても、肝心の社会保障費などに踏み込まない限りは、債務削減に効果があるほど金額には到底追いつかないのが実情である。
政府は来年度の新期財源債を今年度の44兆円規模に抑えるというが、その44兆円規模そのものが過去最大級に近い大きさであることを忘れてはならない。
これまでのところ、日本のデフレの長期化とともに、国債への国内需要も依然としてあり、そして財務省の国債管理政策により、長期金利は低位安定し続けている。むしろ低位安定し過ぎるぐらいである。「はやぶさ」で言えば、順調に飛行を続けている状況となっている。しかし、「はやぶさ」が一時コントロールを失ってからの制御はまさに神業的なものであったと同様に、日本の債務残高が意識されて長期金利がコントロールを失うと、その制御もかなり難しいものになりかねない。
「はやぶさ」では、もしものことを想定して事前にいろいろな工夫が施され、それがミッション成功につながった。日本の長期金利のコントロールが失われた際にも、そういった対処は可能であるのであろうか。それよりもコントロールを失う前に、コントロールを失わせる要因そのものを排除しておく必要があろう。もちろんそれは政府債務のコントロールである。
長期金利がコントロールを失うまでの時間はあまり残されているとは思えない。すでに1000兆円近くに膨れ上がっている政府債務残高に対し、毎年40兆や50兆円規模で新期国債が発行されている状況が今後何年間も続けられること自体が、まさに神業だと思われるためである。
昨日の米国債券市場では、10年債利回りは2.95%近辺に、また30年債は4.4%台にまで上昇したが、この要因のひとつに米国のエコノミストや大学教授らが量的緩和を避難する声明を発表したことも挙げられていた。
報道によると、この声明では、FRBの追加の量的緩和によりインフレへのリスクを示し、量的緩和が雇用促進というFRBの目標達成にはつながらないと考えるとの主張も示された。
また追加の資産購入は金融市場にゆがみをもたらしかねないことを指摘し、金融政策の正常化に向けた当局の将来の取り組みを極めて複雑にするとの見解を示したようである。
米国では今回のQE2と呼ばれた追加緩和にあたっては、バーナンキ議長の本来の持論でもあるインフレ・ターゲット政策を封じ込め、また時間軸の強化などインフレに直結させるような政策は盛り込まずに、国債の買入増額のみを決定した。
これに対して日銀の包括緩和では、民主党の一部の議員の意見も意識したのかETFやREITの買入まで踏み込んだ上に、時間軸政策も盛り込んでいる。しかし、それでも一部議員からは踏み込みが足りないとの意見すらあった。
デフレ下にある日本に対し、米国ではまだインフレ期待も強いことで、それぞれの金融政策の違いもあるとみられるが、そもそもその金融政策に対しての非難が正反対となっていることも興味深い。
今回の米国でのエコノミストや大学教授らが主張した内容は、金融市場にゆがみとの表現などまさに過去の日銀の量的緩和政策も意識してのものである。量的緩和が雇用促進というFRBの目標達成にはつながらないと考えるとの主張についても、FRBが国債を買えば雇用が増えるという経路ははっきりと見いだせないものでもあるのも確かである。
今回の米国の量的緩和を避難する声明は、ゼロ金利下にある金融政策の限界を示すものでもある。これに対し日銀の包括緩和に関しては、特に非難めいた主張はエコノミストや学者などの有識者からは出てきてはいない(一部にあったかもしれないが)。本来、その弊害に最も敏感になっていたのは、学者肌とも称される白川日銀総裁本人であった可能性もある。果たして今後、日米の金融政策はどのような展開を迎えるのか。今回の米国での声明が、その流れを微妙に変化させるものとなる可能性もありそうである。
11月12日の債券は、10年債利回りが1.020%まで上昇したことから、債券先物も142円26銭まで下落した。しかし、引けにかけては超長期から長期、そして中期債に押し目買いが入ったことで、先物も買い戻され142円59銭で引けた。その後、イブニング・セッションで142円90銭まで反発していたが、これは現物への投資家の押し目買いによるものと言うよりも、どうやら先物の買戻し主体の動きのようであった。
イブニングセッションで142円90銭をつけたあと買戻し一巡後は上値が重くなった上に、その後、12日の米国市場で米債が大きく下落したため、これを受けて、週明け15日の債券先物はやや売られてのスタートとなった。債券先物は先週末比14銭安の142円45銭で寄り付いた。その後も売りに押され、債券先物は引け際に一段安となって先週末比58銭安の142円01銭まで売られて大引けは142円02銭に。先物が前日比50銭を超える下げとなったのである。
現物債は短いところから長いところにかけ、全般に売りが入った。現物は1年物短期国債の入札結果が悪く、この影響で中期も売られ2年が0.150%をつけ、5年債は4毛甘の0.380%が打たれた。そして、10年債は5毛甘の1.045%まで下落。超長期債も20年債が3.5毛甘の1.935%、30年債が5毛甘の2.085%が打たれた。そして、またその後のイブニング・セッションで先物は売り込まれ、142円を割り込み141円78銭まで売られた。10年債利回りも1.050%をつけたが、時間帯から見て海外勢による先物主体の売りと考えられた。
米国のエコノミストや大学教授らが量的緩和を避難する声明を発表した。そのタイトルは「ベン・バーナンキへの公開書簡」。その中で、量的緩和の効果に懐疑的な見方や、通貨下落とインフレリスクを警戒、この声明も昨日の米国債の売り要因のひとつとなった。このような内外からのQE2への批判で、追加緩和の可能性が遠のいたことに加え、昨日発表された10月の米小売売上高が前月比1.2%増となるなど、ここにきて経済の改善を示す指標がぼちぼち出てきたことも、米債には売り要因となった。昨日の米国債券市場では、10年債利回りは2.95%近辺に、また30年債は4.4%台にまで上昇した。
これを受けて、16日の債券先物は前日比49銭安の141円53銭でのスタートとなり、また10年債利回りは1.090%に上昇した。5年債利回りも0.410%と0.4%台に、20年債利回りも一時1.980%まで上昇した。短期間にここまで先物が下落し、長期金利が1.1%に接近してきたのは、日本の債券市場がいくつか不安定要因を抱えているためと思われる。
米国ではさらなる追加の量的緩和期待、つまりQE3への期待感が後退している。QE2に向けてバーナンキFRB議長を始め関係者が市場への期待感を創出させるような発言を繰り返していたこともあり、市場では必要以上に期待感を強めた結果、その反動がここにきて出てきており、この米債の動きが円債にとり不安定要因のひとつとなっている。その米債に以前ほどは影響を与えていないとは言え、アイルランドやポルトガルといった欧州での債務危機問題についても不安定要因のひとつとなる。
そして10月5日の包括緩和策の実施後、翌日に債券相場が目先の高値をつけてからは、右肩下がりの相場展開となっている。包括緩和の実施によりむしろ長期金利1%割れという異常ともいえる相場から1%台という通常モードに移行しつつあるとも言える。米国での追加緩和期待の剥落や、円高ドル安が一服していることにより、日銀の追加緩和期待も後退しつつある。もし仮に日銀が今後、追加緩和を行うとしても、基金オペの拡充になることが予想されることで、包括緩和政策を取った際ほど長期金利を押し下げる効果はなくなる可能性がある。
また、日本では年末も近づいてきていることで、来年度の国債発行計画も注目材料となる。18日に国債市場特別参加者会合(16時から)と19日に国債投資家懇談会(14時から)が開催される予定であるが、テーマは両会合ともに「予定平成23年度の国債発行計画等について」となっている。来年度の国債市中消化額について、カレンダーベースでの増発は前倒し発行等の活用により、数兆円程度に抑えられるとの見通しが多いようである。この程度であれば、債券市場への影響そのものは限定的とは思われるが、いずれにせよその概要がある程度明らかになるまでは動きづらい。
そして、15日に発表された7〜9月期のGDPが前期比年率3.9%増となり予想を上回るなど、ファンダメンタルズの状況にも注意が必要となる。10〜12月期はこの反動によりマイナス成長になるとの見方も多いが、ここにきての円高ドル安傾向に歯止めがかかってきていることもあり、今後の経済動向に関しても債券相場の不安定要因ともなりうる。米国でも景気の改善を示す指標がいくつか発表されている。
このように現在の債券市場はいくつかの不安定要素を抱えており、それにより投資家の押し目買いは期待されたほど入っておらず、かなり慎重姿勢であることが伺える。このため、当面の債券相場は米債動向、欧州諸国の債務問題、国内経済動向、為替株価動向、そして国債需給動向などを探りながら、落ち着きどころを探る展開となることが予想される。
11月11日に長期金利は9月24日以来の1%台乗せとなった。そもそも今年に入り長期金利が1%を割り込んだのは8月4日であり、これは2003年以来7年ぶりの1%割れであった。その後、円高圧力の強まりにより、8月25日に0.895%と0.9%を割り込んだところで一旦ピークアウトする。
8月27日に小沢一郎民主党前幹事長が民主党代表選出馬を表明したことを受け、財政拡張による国債増発圧力が加わる可能性が意識され、さらに菅首相が円高阻止に向けて断固たる措置を取るとの発言により円安・株高が進行したことで、長期金利は再び1%台に乗せた。
8月30日には日銀の臨時会合が開かれ、新型オペの拡充策が発表された。それにより長期金利は31日に再び1%を割込むが、それは一時的なものにとどまり、9月6日には1.195%まで上昇した。
9月7日の日銀金融政策決定会合後に発表された公表文には「必要と判断される場合には、適時・適切に政策対応を行っていく方針である」と追加緩和を示すものともなっていたことから、長期金利は追加緩和期待により再び低下基調となったのである。
10月5日の金融政策決定会合では、日銀は包括緩和策を決定。これを受けて6日に長期金利は0.820%に低下し、結局ここが直近の長期金利の最低水準となった。その後の長期金利は上昇基調となり、11月11日の1%台乗せとなったのである。
これを見て明らかなのは、8月以降、長期金利の反転のタイミングは日銀の金融政策が絡んでいたことである。
米債相場との連動性も指摘されるが、米長期金利は10月下旬からは11月3日に期待されたQE2を目指して再び低下基調となっていたが、この間の日本の長期金利は踊り場状態を形成したにすぎず、米国のように再び低下基調になることはなく、その後再び上昇基調となり、1%台をつけたのである。
この動きから明らかなのは、ここにきての日本の長期金利は日銀の政策変更を意識しての動きとなっていたことである。ある意味、当然といえば当然ではあるが、それでは今後の動きを予想するには、さらなる追加緩和策が取られるのかどうかという、日銀の動きを予想しなければならないということになる。
今後の予想としては、円高ドル安の流れがここにきて一服しており、円安ドル高の流れに転じて株式市場が上昇し日経平均が1万円台を回復といったことになる可能性もある。そうなれば日銀の追加緩和期待が後退し、長期金利はさらに上昇基調を強める可能性がある。
反対に、例えば欧州周辺国の債務悪化問題などから、再び円高圧力がかかり、日銀がさらなる追加緩和に追い込まれる可能性もないとは言えない。その際には再び長期金利が1%を大きく割り込んでくる可能性もある。
いずれにせよ、今後の長期金利の先行きは、日銀の金融政策の行方次第という面が強そうである。ただし、次回の決定会合は12月20日、21日でありそれまでかなり間があることも確かである。
11月3日のFOMCでFRBは量的緩和策の第2弾となる追加緩和策を決定した。その内容は、来年6月末まで米国債を6000億ドル追加購入するというものである。MBSの償還元本の再投資分も含めると来年6月末までのFRBによる米国債購入は総額8500億〜9000億ドルとなり、毎月1100億ドル相当になる。 NY連銀の声明によると、追加購入の国債は期間1年半から30年までが対象となり、このうち償還期限が2年半から10年までの国債が86%を占めており、17〜30年はわずかに4%となった。
FRBは市場反応を探りながら、最終的にはそのコンセンサスに近いものを決定した。ただしその内容は国債買入増額のみとし、時間軸の強化や物価水準目標の導入には触れなかった。これは新たな政策目標に手足を縛られることになることを警戒したためと思われる。
11月4日のECB理事会では主要政策金利を据え置き、そしてBOEも同日に政策金利を据え置いた。5日の日銀金融政策決定会合でも、金融政策については全員一致で現状維持となり、日程前倒しの本来の目的でもあったETFとREITの買入れの基本要領を発表した。
FOMCに対する市場の注目度は高かったが市場での波乱はなく、日銀も今回は政策変更に追い込まれることはなかった。しかし、一部のFRBの当局者が追加の国債買い入れ策について懸念を表明したように、量的緩和による効果そのものや副作用についても注意が必要となる。
量的緩和の効果については、先駆者でもある日銀が「量的緩和政策の効果:実証研究のサーベイ」において、量的緩和政策が様々な波及チャネルを通じて、総じて緩和的な金融環境を作り出し、企業の回復をサポートしたとの見方が多いとの結論を出している。しかし、このサーベイでは波及チャネルは特定されていないとの見方も示され、また肝心の物価への直接的な押し上げ効果は限定的との結果も示されている。
米国では今回の量的緩和策によるインフレリスクも指摘されている。その半面、ファンダメンタルズに違いはあるが、日本と同様に量的緩和が物価上昇にそれほど寄与せず、米国においても今後デフレ圧力がさらに強まる可能性もありうる。また、米国債の年間発行額に近いFRBによる国債買入はマネタイゼーションとみなされる懸念もあろう。 もちろんこういった懸念を承知の上での追加緩和であろうが、それが決して経済や物価に対する特効薬ではないことも認識しておくべきであろう。
11月10日に財務省は「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(2010年9月末現在)」を発表した。これはIMFの公表基準に従い、四半期毎に公表しているものである。これによると国債及び借入金現在高は908兆8617億円となる。
11月7日のNHK特集でのタイトル「862兆円 借金はこうして膨らんだ」にもある862兆円も日本の借金ではあるが、これは平成22年度末見込みの国と地方の長期債務残高である。この集計の違いはどういうところにあるのか、財務省の資料を参考に探ってみたい。
財務省は政府の債務残高としていくつか集計を出している。これは大きく4つに分けられ、「日本の公債残高」、「国と地方の公債等残高」、「国と地方の長期債務残高」、「国債及び借入金残高」がある。
今回、9月末の「国債及び借入金現在高」が発表されているが、財務省はこの統計の2010年度末の数値も出しており、統計の比較を容易とするため、すべて2010年度末予想の数値を使ってでそれぞれの数値を比較してみたい。
まず、「日本の公債残高」とは「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」の集計の中で内国債のうちの「普通国債(2010年9月末613.8兆円、2010年度末見込み637兆円)」がそれにあたる。ちなみに現在、外貨建ての日本国債は発行されておらず、また残高もないためすべて内国債である。
この「普通国債」とは建設公債と特例公債(赤字国債)の残高である。つまり財投債は含まれない。また、借換債は元々建設公債と特例公債の借換であるため、借換債という区分はない。また集計上、交付国債などは「借入金、交付国債等」として借入金等に含まれる。財投債についても、償還が主として税財源により賄われる債務ではなく、またこれは政府短期証券も同様であるため、それぞれ「普通国債」とは区分されている。
「普通国債(2010年度末見込み 637兆円)」に借入金として「一般会計借入金(同 15兆円)」と「交付税特会借入金(同 34兆円)」を加え、さらに地方債残高(同 141兆円)を加えたものが、「国と地方の公債等残高(同 827兆円)」となる。これは、一般的な政策経費や税収等に連動する国・地方の債務を集計したものであり、財政運営戦略の残高目標として用いられている指標である。財務省ではこれは主に主計局で使う数値のようである。
そして「国と地方の長期債務残高(同 862兆円)」とは、利払・償還財源が主として税財源により賄われる長期債務を国・地方の双方について集計したものである。つまり、国の債務のうち、国負担分の長期債務である普通国債、借入金、交付国債等に、地方負担分の長期債務を合計したものである。
国と地方の債務をはっきりさせるため、交付税特会借入金を地方債務(同 200兆円)に組み入れ、国の借入金とは区別し集計している。ここに「普通国債(同 637兆円)」と「借入金等(同 26兆円)」を加えたものが「国と地方の長期債務残高(同 862兆円)」となる。
日本政府の債務としては、NHK特集のタイトルにもあったようにこの数値が主に用いられる。政府債務とはそもそも徴税権を担保とした債務であると捉えれば、国だけでなく地方も含めたこの数値が該当しよう。こちらは財務省ではこれは主に理財局で使う数値のようである。
しかし、国の資金調達活動の全体像を見るためとして、別の集計が存在する。財政法28条に、国会に提出する予算には、参考のために左の書類を添附しなければならないとあり、この中に「国債及び借入金の状況に関する前前年度末における実績並びに前年度末及び当該年度末における現在高の見込及びその償還年次表に関する調書」がある。この財政法第28条に基づき、国債及び借入金の状況に関する残高を算出したものが、「国債及び借入金残高(同 973兆円)」となる。これは前述のようにIMFの公表基準に従い公表されているものでもある。
これはあくまで国による債務、つまり国債と借入金(交付税特会借入金を含む)残高である。「普通国債(同 637兆円)」と「借入金等(同 59兆円)」に、ここには財投債(同 130兆円)と政府短期証券(同 147兆円)が加わり、合計973兆円となる。つまりここには地方債務(地方債及び交付税特会借入金以外の借入金等、166兆円)は含まれていない。
財務省が11月9日に発表した9月の国際収支状況(速報)によると、中国による対内証券投資のうち、短期債が6243億円、中長期債が1449億円のそれぞれ売り超しとなり、合計で7692億円の売り超しとなっていたことが明らかになった。8月の国際収支状況(速報)では短期債は2兆285億円の売り超し、中長期債は103億円の買い越しとなり、差引で2兆182億円の売り超しとなっていた。昨年8月から今年7月までの中国による日本の債券の買い越し額の累計は2兆2383億円となっており、計算上は8月と9月でそれを上回る売り超しに転じている。
中国による日本の債券投資はそのほとんどが国債と見られるが、何ゆえに中国は日本国債の投資を大きく増やし、その後売却したのか。今年7月までの中国による日本国債の買いの多くは短期債であったことで、政治的な意図とは考えにくい。ドルやユーロに対する不安から、一時的に円に資金を逃避させてきた可能性がある。その中にあって、中長期債も少ないながらも買っていたのは、ある種の実験的な試みであったのかもしれない。日本の金融機関に対して中国から日本の債券動向に関するレポートなどを読みたいとの要請もあったと聞く。外貨準備の投資先の多様化の一環として、日本国債への投資も考慮に入れていたとも思われる。しかし、あまりに日本の金利が低いこともあり、結果として円高などを意識しての短期売買となったものと思われる。
日本ではこのまま巨額の新規国債が発行され続ける限り、いずれ日本国債が国内資金で賄いきれなくなる日はやってくる。その際には海外投資家による保有の増加をはかることも必要となろう。その海外投資家の中でも、巨額の外貨準備を抱える中国の存在感が今後さらに大きくなることも考えられる。政治的な問題も含め、このあたりはかなり神経質なところともなりそうである。
日銀は11月4日〜5日にかけて金融政策決定会合を開催した。当初予定されていたのは11月15日〜16日であったが、ETFとREITの買入れを早期に実施できるよう基本要領の審議・決定等を行うためとの理由で日程を前倒しした。しかし、この日程前倒しは11月2日から3日にかけて開かれるFOMCを意識したものであろう。
11月5日の白川日銀総裁の記者会見の内容が、日銀のサイトにアップされたことでその内容を確認してみたい。
FRBが決定した追加の量的緩和に対して、日銀が包括緩和で決定した資産買取規模が小さいのではないか、との記者からの質問に対し、白川総裁は以下のような計算結果を示している。
「今回のFRBの買入れ国債の中心、これは期間5〜6年ですが、リスク量を計算してみると、例えば ETF、J−REITは、米国の5年国債の約13倍に相当するという計算になります。」
「日本銀行が行っている長期国債の買入れは、現在、期間を特定せずに年間21.6兆円のペースで行っており、これはGDPの4%強に相当します。今回、FOMCが決定した来年第2四半期末までの買入金額は、同じくGDP対比4%です。」
ある程度、記者からの質問を想定してこれら数値を準備していたと思われるが、総裁は「日米が競争しているというご質問ですが、これも全くそのようなことはありません。」と言いながらも、比較数字を示したあたり、まったく意識していないわけではなさそうである。
ただし、買入資産の中身や規模がどうあれ、それがどのように具体的に実態経済物価動向に波及しうるのかという点については、米国同様に日銀もはっきりと示しているわけではない。
「金利の押下げを通じて緩和的な金融環境を実現し、景気の刺激効果をもたらす」とのFRBの幹部の発言を通じて、買入れの狙いについて白川総裁は言及しているが、日本の前回の量的緩和でそれがはっきりと示されていたとは思えない。
例えば、日銀による「量的緩和政策の効果:実証研究のサーベイ」を見ても、「量的緩和政策が、様々な波及チャネルを通じて、総じて緩和的な金融環境を作り出し、企業の回復をサポートしたとの見方が多い」との結論は出されているものの、波及チャネルは特定されていないとの表現もある。さらに肝心の物価への直接的な押し上げ効果は限定的との結果が多かったとも記されている。
そして、白川総裁は今回の会見で以下のようにも発言している。
「仮に、将来基金の規模を増額する場合にプロラタで増やすのか、というご質問ですが、現在はまだ買入れが始まっていない状況です。今後、買入れを行っていく中で、各資産についてどのような効果と副作用が生じているかを点検します。アプリオリに、先験的に、プロラタで買うということではなく、それぞれの効果と副作用を点検した上で決めていきます。」
つまり今後の基金増額は、プロラタ、つまり今回同様の割合を意識して増額するのではなく、アプリオリ、つまりある種自明的なものを直感を通じて(?)決めていくというものなのであろうか。これについては用語解説を含めての補足追加説明をしてほしい気もする。
これに関して、ある方から福井前日銀総裁も依然に同じ用語を使っているとの指摘を受けた。「繰り返し申し上げるが、緩和とか引き締めというのは、アプリオリに、事前的な定義を数字で言えるものではない。ご承知の通り、一定の金利水準なら必ず引き締め、一定の金利水準なら緩和ということはあり得ない」と2005年2月17日に福井前総裁も使っていた。また、5年前には谷垣財務大臣(当時)も使っていたようである。まさに哲学的表現方法。
11月7日の夜9時からのNHK特集で「862兆円 借金はこうして膨らんだ」が放映された。この862兆円とは言うまでもなく日本の借金(平成22年度末見込みの国と地方の長期債務残高)である。財務省(大蔵省)の関係者を中心に100人あまりの証言を元に構成された構成となっているとの事前の番組紹介もあり、関心を持って観た。
その内容は債券関係者ならずとも、ある程度一般に知られているであろうものであった。何ゆえ、戦後初めての国債が発行され、その後、発行され続けているのか。歳出規模の拡大要因が公共事業関係費から社会保障関係費へと移る過程など、当時の映像を織りまぜながらの解説となっていたが、特に目新しいものではなかった。
今回の番組の肝は、財務省(大蔵省)が保管している内部文書(口述録)の存在であった。私も初めてその存在を知った。これを元にしての当時の関係者のインタビューにより、あらたな事実が浮かび上がるのかとの期待もあった。しかし、あまり踏み込んだものとはならず、何かしらブレーキもかかっていたようにも思われた。
日本の債務や国債についての一般の方の関心はあるものの、それを理解するための機会も少ない。少しでも日本の債務や国債の状況をわかりやすく説明する番組は必要であり、その意味では、今回のNHK特集に意味はあったと思われる。
ただし、もう少し踏み込んだ内容となれば、国民の意識そのものを変えることも可能となったのではないかと思う。
日本の財政構造改革がなかなか進まないのは、この国民の本当の意味での危機意識の欠如が要因となっていると思われる。それに対して国の財政を最もよく知る現場からの生の声が伝えられれば、国民の関心を高め、危機意識を強めることもできるのではなかろうか。
財務省は11月8日に外国為替平衡操作の実施状況を発表した。この中で平成22年7〜9月期における外国為替平衡操作額は2兆1249億円となり、実施内容を見るとその期間での介入は平成22年9月15日だけであり、このためその日の介入金額も2兆1249億円となり、これは一日あたりの円売りドル買いの介入としては過去最大となった。これまでの介入の最高額は1998年4月に行った2.6兆円であるがこの際は円買いドル売り介入であった。
9月に関しては16日以降は介入を実施していないことが明らかとなり、その後も介入らしき動きはあったが、どうやら介入は9月15日限りとなった可能性もある。何故、介入を実施したのか、また、何故、一日だけにとどめたのか。政治的な配慮も絡んでいると思われるが、今後の介入の可能性を読む上でも、このあたりの状況を少し確認する必要がありそうである。
11月3日のFOMCでFRBは量的緩和策の第2弾となる追加緩和策を決定した。その内容は、来年6月末まで米国債を6000億ドル追加購入するというものである。毎月の追加購入額は約750億ドルとなるが、MBSの償還元本の再投資分も含めると来年6月末までの米国債購入は総額8500億〜9000億ドルとなり、毎月1100億ドル相当になる。
ニューヨーク連銀の声明によると、追加購入の国債は期間1年半から30年までが対象となり、このうち償還期限が2年半から10年までの国債が86%を占めており、17〜30年はわずかに4%となった。年限別の割合は、1年半から2年半が5%、2年半から4年が20%、4年から5年半が20%、5年半から7年が23%、7年から10年が23%、10年から17年が2%、17年から30年が4%、物価連動債(TIPS)が3%とした。
また個別銘柄について35%となっている内規による保有上限を一時的に緩和し、小幅の超過を認める方針もニューヨーク連銀の声明で示された。FRBは内規により「すべての発行証券について、銘柄毎のFRBの保有比率は発行残高の35%を超えない」としている。
FOMCの声明文では超低金利政策を長期間に渡って続けるとの表現は変わらずとなり、15日の講演でバーナンキ議長が示したような、超低金利政策を長期間に渡って続ける、との文面を市場の期待以上に強化することはなく、また物価水準目標の導入なども示されなかった。
FRBは関係者の発言の影響を見ながら市場反応を探り、最終的にはそのコンセンサスに近いものを決定した。ただし、その内容はあくまで国債買入増額のみとし、さらなる時間軸の強化、さらには物価水準目標の導入には触れなかったのは、新たな政策目標に手足を縛られることになることを警戒したためと思われる。
市場では追加緩和策を好感し、4日のダウ平均株価はリーマン・ショック前の水準に上昇した。また、米債は追加購入の国債の期間別シェアが意識され、購入比率の高い中長期債は買われるが、比率の低い30年債は売られ、5年債と30年債の利回り格差は3%超に拡大した。
超長期ゾーンの買入比率を落としたのは、発行残高や流動性等も意識されたと思われるが、FRBが市場におけるイールドカーブの形成に関与しようとの意図があった可能性もある。
今回の量的緩和第二弾によって、FRBは新たな領域にさらに一歩踏み込んだ。しかし、その効果はどこまで持続するかは定かではない。先輩格の日銀は量的緩和の一環として、市場から国債を買い続けているものの、それがデフレ解消に直接結びついているようには思えない。FRBは適度なインフレ期待に働きかけようとしているようだが、それが果たしてうまくいくのかどうか。今後の動向に注目していきたい。
11月2日に公表された日銀の金融政策決定会合議事要旨(10月4、5日に開催)から、なぜこのタイミングで積極的な追加緩和策である包括緩和策を実施したのかを探ってみたい。
9月の決定会合の議事要旨と今回の議事要旨を比較して気がつくのは、今回の議事要旨で「為替円高」という用語が頻繁に使われていることである。確認した限り9月の決定会合の議事要旨には円高との表現はあっても「為替円高」との表現はなかった。
特に委員会の検討の中において、以下のように為替円高との用語を伴う発言が複数みられたのである。
「委員はわが国の景気は、緩やかに回復しつつあるものの海外経済の減速や、為替円高による企業マインド面への影響等を背景に改善の動きが弱まっているとの認識で一致した」「多くの委員は、為替円高について、輸出や企業収益などを通じた経路に加え、企業や家計のマインド面に与える影響を通じても、経済の下押し圧力として作用する可能性があると指摘した」 「一人の委員は、足もとの為替円高が長期化する場合には、設備投資スタンスが更に慎重化する可能性もあると述べた」 「物価固有のリスク要因として、ある委員は、為替円高に伴う下押し圧力の強まりを挙げた」
あらためて指摘するまでもなく、今回の包括緩和策導入には、為替円高、特に史上最高値に迫る円高ドル安が大きな影響を与えていたことは明らかである。円高が日本経済の下押し圧力となり、それは設備投資にも影響を及ぼしかねず、さらにデフレ圧力を強める可能性があることを各委員は指摘した。
そして円高進行などにより、日銀が目指している物価安定のもとでの持続的成長経路に復する時期が、これまでの想定に比べて後ずれする可能性が強まったとして、金融緩和を一段と強力に推進する政策、つまり包括緩和策を決定したのである。その政策とはゼロ金利政策、資産買入のための基金設立、そして時間軸政策であった。
決定会合の議論の中でここまで為替円高が強調されたとなれば、今後、さらに円高が進むようなことになれば、円高阻止を意識した追加緩和期待が強まることが想定される。
11月3日のFOMCにおいて、FRBによる6000億ドルの米国債の追加購入を決定したが、これはほぼ予想の範囲内となり、為替市場への影響は限定的となった。
日銀はETFとREITの買入れを早期に実施できるよう基本要領の審議・決定等を行うためとの理由で、次回の金融政策決定会合を予定していた11月15日〜16日から11月4日〜5日に前倒した。しかし、この前倒しの本当の目的はFOMCの結果による相場変動に備えるためと推測される。
FOMC後の為替相場は比較的落ち着いた動きとなっており、特に為替円高の動きが強まらなければ、11月4日〜5日の会合で日銀がさらなる追加緩和を実施する可能性は低いと思われる。
昨日、文化の日、久しぶりに家族総出で映画を観に行った。子供たちはドラマSPで岡田准一のファンとなり、親も夢中で見ていたこともあり観に行くことになった。内容を書いては、まだ観ていない方に失礼なので書かないが、シナリオにやや無理矢理さ(ドラマ当時も)はあるものの、なかなか面白いストーリー展開となっており、飽きさせなかった。
岡田君こと井上がつけていた腕時計もカシオのデジタルでドラマにつけていたものと同一と思われるなど、かなり細部にわたり3年のギャップを感じさせない作りとなっていた。アクションシーンはかなり派手であるが、岡田君はスタントマンなしで臨んだようである。これだけのアクションシーンを見せられる日本の若手俳優はいないのではないかと思うくらいであった。
途中のシーンで一箇所、えっと思わず口にしてしまったところがあった。とある宴会場シーンでのある階段とそのビルの入り口にあった「Grand Shinonome」との表示である。これって、つくば市の「グランド東雲」ではないかと。まさか自宅からそう遠くないところで撮影が行われていたとは。そういえば、ドラマ版でもつくば市の国際会議場が使われていたこともあり、今回もつくば市での撮影が行われたのであろうか。
SPの映画は二部作となっており、最終章となるSP革命篇(来年3月公開)が楽しみである。それよりも映画の予告篇で見た、「宇宙戦艦ヤマト」の実写映画化された「SPACE BATTLESHIP ヤマト」(12月公開)がちょっと気になっている。
11月2日から3日にかけて開かれたFOMCで、FRBは追加緩和策を決定した。その内容は、来年6月末まで米国債を6000億ドル追加購入するというものとなった。事前の大方の予想は、今後半年間で5000億ドル規模となっていたことで、規模は予想からやや上乗せされ、期間は予想されたよりも長めとなった。このあたり、市場に失望感を与えないよえにと、バーナンキ流の微妙な匙加減とも思われる。毎月の追加購入額は約750億ドルとなるが、MBSの償還元本の再投資分も含めると来年6月末までの米国債購入は総額8500億〜9000億ドルとなり、毎月1100億ドル相当になる。
ニューヨーク連銀の声明によると、追加購入の国債は期間1年半から30年までが対象となり、このうち償還期限が2年半から10年までの国債が86%を占めており、17〜30年はわずかに4%となった。これを受けて2日の米国債券市場では30年債が売られた。年限別の割合は、1年半から2年半が5%、2年半から4年が20%、4年から5年半が20%、5年半から7年が23%、7年から10年が23%、10年から17年が2%、17年から30年が4%、物価連動債(TIPS)が3%。
また個別銘柄について35%となっている内規による保有上限を一時的に緩和し、小幅の超過を認める方針もニューヨーク連銀の声明で示された。FRBは内規により「すべての発行証券について、銘柄毎のFRBの保有比率は発行残高の35%を超えない」としている。
そして、FOMCの声明文の内容も注目されたが、超低金利政策を長期間に渡って続けるとの表現は変わらずとなり、15日の講演でバーナンキ議長が示したような、超低金利政策を長期間に渡って続ける、との文面を市場の期待以上に強化することはなく、また物価水準目標の導入なども示されなかった。
9月のFOMCの声明文では、物価を示す指標は現在、物価安定と雇用最大化を促す目標に対し、長期的に見て適正とする水準をいくらか下回っていると指摘した。物価安定と雇用最大化を促す目標とは、デュアル・マンデートとも呼ばれるFRBの2つの使命(目的)である。
ちなみに日銀のマンデートは日銀法第二条にあるように「物価の安定を図ること」にある。
バーナンキFRB議長は10月15日の講演で、デュアル・マンデートを果たすのに適切だと判断しているインフレ率は2%か、それをやや下回る水準であると発言している。現状は9月の米コアCPIが0.8%と1%をやや割込む水準にある。
日銀も10月5日の包括緩和策を導入した際に、「中長期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していくとし、時間軸政策を取り入れた。中長期的な物価安定の理解によれば、コアCPIでの1%程度が日銀のマンデートを果たしうる水準となる。
FRBはデュアル・マンデートを果たすためには、現状プラス1%程度の物価水準をプラス2%程度に引き上げることが必要とし、日銀は現状マイナス1%近辺(ただし、ここからマイナス0.5%程度の高校授業料の影響を除く)のコアCPIをプラス1%程度に引き上げることを必要としている。
そして、その手段として講じた手段が日銀は国債を含む基金オペの設立などの包括緩和策であり、FRBがやろうとしているのがQE2と呼ばれる追加の量的緩和で、それは結局、国債の買入れ増額になるとみられる。
しかし、中央銀行が国債を買い入れることで、果たしてどれだけCPIの上昇に影響を及ぼすというのであろうか。日銀は前回行った量的緩和策においても国債買入れの増額を行っているが、それによるCPIへの波及効果がはっきりと検証されたというのは聞いたことがない(私の認識不足の可能性もあるが)。というよりも、中央銀行が国債を買えば本当に物価が上がるという理由をしっかり説明することは可能なのか。
戦前の日銀による国債引受による一時的なデフレ解消(とその後のハイパーインフレ)という実証例は確かにある。しかしこれは結局、財政規律の喪失により結果としてインフレを招いた。
ブルムバーグは2日、FRBは今週のFOMCで、自主的に設けた米国債の保有制限を撤廃する可能性が高いと報じた。FRBは公開市場操作用口座、システム・オープン・マーケット・アカウント(SOMA)に2兆540億ドルの資産を保有しており、このうち米国債は8000億ドル以上を占める。FRBは保有比率の上限を各種発行済み証券残高の最大35%に制限している。追加緩和策を通じてSOMAの規模を最大2兆ドル拡大すれば、FRBは35%制限の修正を迫られる。
FRBは内規により「すべての発行証券について、銘柄毎のFRBの保有比率は発行残高の35%を超えない」としている。今週のFOMCの結果次第では、この内規に触れる可能性が出てきているようである。この内規は、ニューヨーク連銀のポートフォリオ管理担当者(SOMAマネージャー)とFOMCの協議により決定される。この内規は残存2年以上の国債が対象となり、国債の銘柄別としては期間別となっており、2〜3年、3〜4年、4〜5年、5〜6年、6年〜7年、7年〜8年、8年〜9年、そして10年以上となっている。すでに銘柄によっては、内規の制限に近づいているものもあるようである。
日銀が保有する長期国債は銀行券発行残高を上限とする「日銀券ルール」も、やはり内規である。ただし、こちらの内規には銘柄別の保有制限とはなっていない。また、包括緩和策による資産買入等の基金による国債買入れは、この日銀券ルールとは異なる取り扱いとするとある。
今回のFOMCで、どの程度の規模の国債買入れが実施されるかは、わからないものの、このルールに抵触する可能性もあることで、35%制限の修正なりの手段が取られる可能性はある。
国会に提出された今年度補正予算案の中の特別会計の予算総則に関する補正で、国債の前倒し債の限度額が当初の12兆円から20兆円に引き上げられた。「平成22年度特別会計補正予算」の「予算総則補正」の第6条に「平成22年度特別会計予算総則第10条第1項に定める特別会計に関する法律第47条の規定により平成22年度において翌年度における国債の整理又は償還のため借換国債を起債する場合のその限度額12,000,000,000 千円を20,000,000,000 千円に改める」とある。
http://www.bb.mof.go.jp/server/2010/pdfhdocs/201022001Main.html
この部分が前倒し発行の限度額となるが、今年度の限度額が増額されたことにより、来年度の国債発行の調整がその分可能となる。これは今年度の前倒し債の発行が順調に進んでいるためと思われる。ただし、あくまで限度額の引き上げであり、この20兆円をすべて使い切るわけではない。
大量の国債発行を円滑に行うために、借換債は年度を越えて前年度に前倒して発行ができる、いわゆる前倒し発行が可能となっている。これは翌年度の国債発行額を多少なりとも減額させられるときには借換債を前倒しで発行し、国債の安定消化を図るように調整するためのものである。たとえば年度間で借換を必要とする額に開きがある場合など、償還額を均すために前倒し発行が使われる。
11月2日から3日にかけて開催されるFOMCの行方に注目が集まっているが、どうもその内容がはっきりせずに不透明感を強めている。それがむしろ今回のFOMCそのものを注目させる要因ともなっている。
QE2観測の強まりの発端は10月12日に発表されたFOMCの議事要旨であるかと思う。ここで近い将来、金融緩和を実施する用意があるとの認識が示され。一段の景気刺激に向けた措置として、長期国債の追加購入と、インフレ期待に影響を与えうる施策が議論されていたことが明らかになった。
そして15日の講演でバーナンキ議長は失業率は緩やかにしか低下せず、基調的なインフレ率はFOMCが妥当と考える水準を下回ると指摘した。FOMCの使命であるデュアル・マンデート(最大雇用と物価安定)に照らし追加緩和が必要な状況にあると思われる、として追加緩和の必要性について述べた。
具体的な追加緩和の手段としての量的緩和による国債買入れ増についてバーナンキ議長は、そうした非伝統的金融政策については前例がなく効果が不透明な点を指摘し、長期債の適切な購入額と購入ペースの決定は極めて難しい問題とも述べている。さらに、FOMCの声明文にある超低金利政策を長期間に渡って続ける、との文面を市場の期待以上に強化する考えも示した。
10月4日に副議長に就任したイエレンFRB副議長は10月11日の講演で「緩和的な金融政策が、金融システム内におけるレバレッジ、および過度のリスク行動増大の火種となることは考えられる」と低金利政策により金融バブルを招く懸念があることを指摘した。
ウォーシュFRB理事は6月の時点では、MBSや国債の買い取りを再開することに慎重な姿勢を示した。
また、デュークFRB理事は10月19日の講演で、FRBのコミュニケーション戦略は市場の期待を形成することから、金融政策の最も強力な側面の一つとの認識を示した。また、FOMCの現在のコンセンサスを最もよく理解しているのはバーナンキ議長だと指摘した(ロイター)。
これまでの追加緩和に反対票を投じてきたカンザスシティー連銀のホーニグ総裁はさらなる金融緩和について、「長期金利の若干の低下という極めて小さな追加的効果を得るためにインフレ上昇のリスクを冒す」ことを意味するだろうと述べた。(スイス紙ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥングとのインタビュー、ロイター)
また、ボストン地区連銀のローゼングレン総裁は、日本のデフレとの戦いは治療よりも予防措置をとる方がはるかに容易であることを示していると指摘、政策当局者は悪性のデフレが定着する前に積極的に対処する必要があるとの考えを示し、積極的な緩和策が必要だとの見方を示した(ロイター)。
クリーブランド連銀のピアナルト総裁は9月30日、景気回復のペースがあまりにも鈍く、来年のインフレ率は米連邦準備制度理事会(FRB)が望む水準に上昇せず、失業率も十分には低下しないとの見通しを示した。追加金融緩和については、「海図なき領域にある」とし、「追加緩和が必要であれば、採用する枠組みが効果的であることを確実にしたい」と述べた(ブルームバーグ)。
米セントルイス地区連銀のブラード総裁(James Bullard)は、7月にリサーチペーパーのなかで「米連邦公開市場委員会(FOMC)の(声明にある)長期間との文言は、米経済が日本のような結果(デフレ)に陥る確率を高めている可能性がある」とした。さらに「米国の量的緩和政策は、そのような結果を回避するうえで最善の措置」と指摘した。つまり、一段の米債買い入れを検討すべき、との見方を示した。
ロックハート・アトランタ連銀総裁は18日の講演で、一段の金融緩和を支持する立場を表明した。この際に毎月1000億ドル規模の米国債の買い取りに触れた。買入れ規模の1000億ドルについては「単月の数字としては、前回実施された量的緩和とほぼ一致しており、第2弾もこのレンジになると想定されるだろうと述べている(ロイター)。
そしてダドリー・ニューヨーク連銀総裁は、10月1日に米国の雇用成長と物価の見通しは受け入れられないものとし、QE2の可能性を指摘した。ただし、FRBは魔法のつえを持っていない。これまでの過剰の局面に残された問題を直ちに解消することはできないとし、対策対応には限界がある点も示した。
ニューヨーク連銀のウィリアム・ダドリー総裁は元ゴールドマン・サックスのチーフ・エコノミストであったが、そのゴールドマンがQE2に関して出した予測も市場に大きな影響を与えた。
22日に発表した調査リポートにおいて、テイラールールに基づけばFRBはFFレートを300bp引き下げる必要があると分析し、1兆ドルの資産買入れが約75bpの利下げ効果に等しいとした。つまりは4兆ドルの買入れが必要ということになる。ただし、FRBが4兆ドルの資産購入を決定する可能性は低いとし、QE2の規模は2兆ドルになる公算が大きいとの見通しを示した(ロイター)。その上でまず最初の半年間で5000億ドルといった予想を行ったのである。
20日メドレー・レポートで5000億ドル規模の国債買い入れを計画しているとも伝えられたが、27日には英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙が当初6カ月間で5000億ドルの資産購入を発表する可能性と言及。
これに対して、26日にウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、今後数カ月にわたって数千億(2、3千億か)ドル規模(a few hundred billion dollar)の国債買い入れ計画を発表する見通しだと伝えた。
そして、28日にはニューヨーク連銀が債券ディーラーや投資家に対し、今後6カ月間の資産購入規模の予想やその利回りへの影響について調査を行ったとブルームバーグが報じた。これを市場では予想以上の国債買入れの可能性があると受け取ったようである。
バーナンキFRB議長を含めてFRB関係者の多くが追加緩和に前向きな姿勢と見られることで、QE2の実施そのものの可能性は高いと言える。むしろ何もせずに現状維持となった場合の市場の反応が恐いくらいである。また、バーナンキ議長発言からは時間軸を意識しての声明文のより強めのトーンでの変更もありうる。ただし、物価水準目標の導入までには至らないとみられる。
また、国債買入れ以外の手段も考えにくい。このため、注目はその国債買入れの規模となろう。当初半年での数千億ドル、五千億ドル(もしくは毎月1千億ドル)相当、1兆ドルかそれ以上の選択肢がある。
可能性として高いのは、五千億ドル(もしくは毎月1千億ドル)相当か。それと同時にさらなる追加の可能性を示し、大規模な国債買入れと同様の効果を与えることも選択肢としてありそうである。しかし、これも私個人の観測にすぎず、FOMCを前にどのようなコンセンサスが広がり、現実には何が選択されるのかは予想は難しい。ただ、注目が集まりすぎている分、予想外の結果(変更なし、もしくは期待以上の買入れ)は市場に過大なインパクトを与える可能性もあり、控えられるのではないかとも思われる。
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