今年5月の総選挙により政権についたキャメロン首相は財政再建を最優先課題とした。その5年間という任期在任中に財政再建を果たすために、6月に財政再建に向けた緊急予算案を発表した。オズボーン英財務相が発表した緊急予算案によると、第二次大戦後で最悪規模に膨らんだ公的債務を減らすため、2011年1月4日から付加価値税の基礎税率を現在の17.5%から20%に引き上げる。
オズボーン財務相は2010年度の公的債務が1490億ポンドに上るとの見通しを示した。このため、年間20億ポンド規模の銀行新税を2011年から導入するとともに子供手当てや福祉給付カットなどの歳出削減を組み合わせ、財政赤字のGDP比を2015年度までに1%まで引き下げるとした。ちなみに英国の財政再建策に伴う国防予算の削減により、英海軍は保有してる軽空母「インビンシブル」をインターネット上の競売に掛けているそうである。
財政再建には大きな痛みを伴う。これは財政再建に向けた動きに対して、デモが発生したギリシャなどの例を見ても明らかである。しかし、ギリシャなどは外部からの財政再建の圧力に屈したものであり、内部からその声が強まったわけではない。
これに対して英国では、選挙で財政再建を最優先課題とした保守党を国民は支持したことになり、内なる声に耳を傾けた結果の財政再建であり、国民は自らの責任において財政再建を推し進めるべきとしたものである。1990年代でのカナダのクレティエン政権による財政再建も同様に国民の声に答えたものである。日本の民主党政権が行っている事業仕分けは、カナダの財政再建の一部を参考にしたものである。
英国の政治を見ると、スピード感が日本などとまったく異なる。今回のキャメロン政権の財政再建もそうであるが、1997年5月に誕生したブレア政権もやはりそうであった。当時のブラウン財務相は就任わずか4日目に金融政策の大転換を行い、財務省から中央銀行であるイングランド銀行に金融政策の決定権を移し独立性を高めるという大胆な改革を進めている。
キャメロン首相もブレア元首相も非常に若いときに首相に就任しており、若さ故のスピード感もあったのかもしれない。また、高い支持率がある政権交代時にすぐに行動に移すことにより、時間をかけることによって生じかねない反対意見を抑えこんで、とにかく既成事実化する必要もあったと思われる。
日本でも民主党に政権が移った際に、本来であれば財政再建に向けてもっと大胆な施策もできたはずである。ところが民主党が掲げたマニフェストは日本の先々の不安を取り除くものではなく、財政負担はさしおいて国民生活を意識したものであった。財政再建は二の次にされ、むしろ財政再建は遅れる結果ともなった。これはこれで国民の声であったのであるから、致し方ない面はある。
しかし、英国以上に財政が悪化している日本にとり財政再建は待ったなしとなる。ただし、これについては国民は危惧はしても真剣に問題視していない部分もある。これまでの選挙で消費税増税を掲げると負けるという経験則までできている、選挙では財政再建を最優先課題とできにくい面もあろう。ただし、先送りにもそろそろ限界がある。国民もそれはかなり意識してきていると思われる。日本の先々の不安を取り除くための財政再建はそれなりの国民負担が生じることで、英国のように大胆かつスピーディーな政策が求められる。
先送りの結果、気づいたときには破綻状態となれば、その負担は国債を買い支えていた国民にふりかかる。その際には財政再建による負担に比べかなり厳しいものになることを国民自身が真剣に考えなければならない。これを避けるためには、政治そのものを大きく変えていかなければならない。英国がやろうとしている財政再建への道筋を日本の国民も早急に見習うべきである。
来年度の政府予算案の閣議決定に合わせ、財務省は「我が国の財政事情」を発表している。この中で直近3年間の日本の債務状況を確認すると、まず公債依存度は2009年度が37.6%、2010年度48.0%、2011年度が47.9%となる(昨年度と今年度は当初予算、来年度は政府案による)。さらに公債残高のGDP比は2009年度125%、2010年度134%、2011年度138%。国及び地方の長期債務残高は同173%、181%、184%となる。
一般会計歳出に占める主要経費の割合の推移を見ると社会保障関係費の伸びが突出しており、2009年度が16.6%、2010年度が19.7%、2011年度が31.1%となっている。また、長期金利が低位安定していることである程度抑えられている国債費についても、20.7%、24.0%、23.3%と高い割合を示している。
新規財源債を今年度以下に抑えたものの、44.3兆円規模の発行は2009年度、2010年度に次ぐ過去3番目の大きさとなっている。そして、国債発行額が税収を上回るという異常事態も3年目となる。
また、事業仕分けなどに取り組んでいるものの歳出削減については、聖域と化している社会保障費に手を付けない限り大幅な削減は望めないことも明白である。また、社会保障費に関してはその増加額は本来、消費税増税で補填するはずであったが、増税は先送りされた結果、歳出だけが伸びてしまう状況となっている。
国債費については、そのもとになる国債残高が年々膨らんでいる以上、今後も歳出に占める割合が大きくなるとともに、同じ金利上昇幅に対してその費用は拡大する傾向にある。つまり、今後もし長期金利が大きく上昇するようなことになれば、当然ながら歳出に占める国債費の割合が大きく増加することになる。
そして公債残高のGDP比は180%台となっているが、OECDによる債務残高の国際比較によると2011年は日本が204.2%、米国が98.5%、英国が88.6%、ドイツが81.3%となっている。欧米諸国も増加しているが、その大きさについては日本が突出していることに変わりはない。
もちろん日本の債務悪化については今に始まったことではない。しかし、新規国債の発行額の推移を見ると1998年に大きく増加しそのステージは2008年あたりまで続いていたが、ここ3年の増加は新たな規模でのステージを形成してきている。これはリーマン・ショックなど金融危機による影響が大きいことは確かであるが、債務規模の膨らみ方がその分大きくなっている。
すでに個人の金融資産については増加は頭打ちとなっている。また、企業の金融資産は増加しているとは言え、これらで賄える国債の量にも自ずと限度はある。それに対して今後も毎年40兆円から50兆円もの新規国債を発行し続けられること自体が奇跡に近い。もちろん、日銀のオペなどで吸収される分も含めれば市中への負担はその分限られようが、それでも減るのではなく増える状態にあることで、危機的なレベルに向けて増加してきていることに間違いはない。
これに対して、何をすべきかは明白であるがそれができていないのが実情である、事業仕分けも重要であろうが、それ以上に社会保障費の増加を抑える必要がある。また、本来約束されていたはずの消費税増税により、少しでもその増加分を補うことも必要であろう。さらに財政政策に頼ることなく税収増を図る施策も求められる。これもまた非常に難しいものではあるが、1997年の財政危機以降の韓国の経済回復など、ひとつの事例として参考になるのではなかろうか。また、歳出削減については最近の英国の動向など良い事例となるのではなかろうか。いずれにしてもそれをしなければならないのは政府である。
日銀は27日に10月28日と11月4日、5日に開催された金融政策決定会合の記事要旨を公開した。この中で須田審議委員が10月28日の決定会合で展望レポートに関する見通しに反対票を投じていたことが明らかとなった。金融政策そのものに対してではなく、展望レポートの文案決定に反対票を投じるというのは極めて異例なことである。その反対理由は議事要旨では以下のように記されていた。
「須田委員は、展望レポートで示した見通しに比べて、マクロ的な需給バランスの改善が物価上昇率を引き上げる力や包括緩和の効果を控えめに判断し、物価の先行きを慎重にみていることや、消費者物価指数の基準改定などに伴う不確実性に一段と配慮した情報発信が必要と考えていることから反対した」
展望レポートに対しての須田委員の反対理由は頷けるものである。包括緩和については円高対策を含めて、あくまでアナウンスメント効果が意識されたものと私自身は理解しており、包括緩和の効果を控えめに判断するというのは須田委員ばかりの意見とも思えない。
また、消費者物価指数の基準改定などに伴う影響についても、包括緩和では時間軸政策も打ち出している以上はたいへん重要な問題ともなり、しっかりとした説明が必要であったはずである。このわずか1票といえども。その反対票の意味についてしっかりと考えておく必要がある。
須田美矢子審議委員の任期は来年の3月31日までとなる。また、野田忠男審議委員も6月16日までの任期となる。これまでの日銀の政策委員には、一人でも反対を示すような委員が存在していた。須田委員ばかりでなく、水野温氏前審議委員、さらに執行部でありながらも反対票を投じた岩田前副総裁。以前では中原元審議委員や篠塚元審議委員なども強く印象に残っている。
実はこういった反対票はかなり重要な意味を持つ。むしろ反対票を投じた委員の意見のほうが正論であると思われることもしばしばあった。日銀の金融政策が多数決で決められているのは、それぞれの出身母体の知識や経験を活かし、それぞれの個性に応じた意見を戦わせ、適格な金融政策を行うためではなかろうか。
しかし、現在、須田委員以外ではそれほど個性を際立たせている委員は残念ながら見当たらない。もちろん野田委員を含めて、これまで反対票を投じた委員はいるが、単独で議長提案に向かっていくような委員は、須田委員を除けば見当たらない。このままでは今後、政策委員そのものが、白川総裁とその優秀な仲間達となってしまう危惧がある。
日銀一体となって突き進むことも重要ではあるが、金融政策決定への透明性を高めるためにも、個性を持った委員同士の意見のぶつかり合いを見せることも必要であろう。須田委員や野田委員の後任にはぜひ際立つ個性を持ち、それを示せる人物を選んでいただきたい。さらに現在の委員も、副総裁を含めて個人の意見を、決定会合の場において、もう少し強く打ち出してきても良いのではないかと思う。
財務省が24日に発表した2011年度の国債発行計画によると、新規財源債が44兆2980億円、借換債が111兆2963億円、財投債が14兆円ちょうどとなった。これにより2011年度の国債の発行総額は169兆5943億円と、2010年度の当初ベースの162兆4139億円からは7兆1604億円もの増加となる。2010年度の二次補正予算後は162兆2078億円となっており、ここからは7兆3864億円の増加になる。当初ベースでの発行総額は2005年度の169兆5051億円を上回り過去最高額となる。
国債の消化別発行額を見るとカレンダーベースの市中消化額は144兆9000億円となり、2010年度当初から6000億円の増額となり、これも年度別で過去最高額となる。
第2非競争入札による予定発行額は市中消化額の3.75%の4兆50億円、前倒し債発行による調整分が6兆3893億円となる。
そして日銀乗り換えが11兆8000億円と個人向け販売分が2兆5000億円。個人向け販売分の内訳としては、個人向け国債が2兆円ちょうど、新型窓販などの窓販分が5000億円となっている。
特別会計仕分けの結果を反映し、国債整理基金の取崩し等を財源とした買入消却が総額3兆円程度実施される(具体的な実施方法は、四半期毎に市場の状況を見ながら決定)。なお、今年度においても国債整理基金の取崩しを財源とした買入消却を0.8兆円程度実施する。これにより借換債については概算要求時点では約115兆円とされていたが、それが111兆2963億円に届まる。
前倒し債の発行額による調整分についても、財投債が概算要求での15.5兆円から14兆円になったこともあり、当初見込まれていた金額を下回り、6兆3893億円にとどまった。ちなみに来年度における前倒し債の発行限度額は12兆円となった。
前倒し債の発行額による調整分についてもう少し説明すると、今年度すでに発行されている来年度分の前倒し発行分が存在する。もしそれを取り崩さなければ、そのまま再来年度の前倒し発行分がその分確保できる。しかし、来年度のカレンダーベースの市中消化額をある程度抑えるために、今年度すでに発行された前倒し債のうちの6兆3893億円を来年度の国債発行額として加算するものである。つまりはその分、再来年度の前倒し発行可能なバッファーが減ることになる。
カレンダーベースの市中消化額は今年度の当初に比べると、30年国債(年8回発行)と40年国債(年4回発行)がそれぞれ一回あたり1千億円ずつ増額される。つまり合計で1.2兆円増額される。また、今年度当初にあった15年変動利付国債と物価連動国債のそれぞれ3千億円ずつの発行を2011年度は停止している。このため、差引でのカレンダーベースの増額は6千億円となる。
財務省は生保・年金等の機関投資家の長期運用ニーズの増大を踏まえ、超長期債の流動性の向上にも配慮して、30年債・40年債の発行総額を増加するとしている。。
30年債と40年債以外は発行額は今年度当初と同額となり、20年債が一回あたり1.1兆円、10年債は2.2兆円、5年債は2.4兆円、2年債は2.6兆円を、1年割引短期国債は2.5兆円がそれぞれ毎月発行される。また、6か月割引短期国債が合計で9千億円発行され、全体のカレンダーベース消化額合計が144.9兆円となる。
これにより、カレンダーベース市中発行額の平均償還年限は、7年9か月となり今年度に比べて3か月程度延びる。
以上のカレンダーベースの市中消化額の内訳は、直前での国債市場特別参加者会合などにおけるコンセンサスに近いものとなり、以前に予想されていたような中期国債の増発等はなかった。これによる債券市場への影響はほとんどないとみられる。
国債需給については、来年度も債券市場にとり波乱要因とはならないとみている。しかし、新規財源債が今年度並に抑えこまれたのは、歳出削減や税収増によるものではなく、結局、埋蔵金などを頼みとしている。歳出は社会保障関係費が引き続き増加する上に、新規国債発行額が税収を上回る異常事態も続いている。国債需給への目先の懸念はなくとも、日本の財政そのものへの懸念が生じれば国債は売られる。税制の抜本的な改革や、できうる限りの歳出抑制により、日本の財政リスクを軽減するための果断な努力を実際の行動で示さない限り、いずれかの段階で日本国債の信用が崩れる可能性がある。
日銀は27日に10月28日と11月4日、5日に開催された金融政策決定会合の記事要旨を公開した。この中で須田審議委員が10月28日の決定会合で展望レポートに関する見通しに反対票を投じていたことが明らかとなった。金融政策そのものに対してではなく、展望レポートの文案決定に反対票を投じるというのは極めて異例なことである。しかし、それにはそれなりの理由があった。その反対理由は議事要旨では以下のように記されていた。
「須田委員は、展望レポートで示した見通しに比べて、マクロ的な需給バランスの改善が物価上昇率を引き上げる力や包括緩和の効果を控えめに判断し、物価の先行きを慎重にみていることや、消費者物価指数の基準改定などに伴う不確実性に一段と配慮した情報発信が必要と考えていることから反対した」
ある意味、思い切った反対ではあったと思う。10月5日の包括緩和政策の決定に対しても須田委員は、資産買入等の基金の創設を検討するに際し買入対象資産として、国債を検討対象とすることについて反対している。
12月1日の講演においても須田審議委員は、「物価見通しについてもっと慎重な見方をしています」と発言しその理由を述べている。
「私は、デフレが長期化するわが国において、かかる中長期的な予想インフレ率の牽引力を強めることは容易ではないと考えています。」
「経済の稼働率がまだ低く、今年度後半にマイナス成長が予想されるなど、当分の間、需給ギャップの改善がほとんど見込めない中で、かかる需給ギャップの動きが将来のインフレ率に与える影響は無視できず、中長期の予想インフレ率の牽引力はあまり強くないと考えています。」
さらに「包括的な金融緩和政策」のすべてに賛成することはできなかったとし、買入対象資産として国債を検討対象とすることについて反対した理由として下記のような発言があった。
「実際、長めの市場金利の低下は、包括的な金融緩和政策採用以前に、政策金利を0.1%まで引き下げたことや、これまでの対話から生まれている時間軸効果や潤沢な資金供給の姿勢によってかなりの程度実現されているとみています。したがって、長めの市場金利低下を一層促すために国債買入れを増額させても効果は限定的である一方、債券市場の過熱に繋がるリスクや、過度な金利低下が金融機関の収益機会を奪い、かえって金融緩和効果を阻害する惧れがあり、副作用の方が大きいと考えています。」
「その上、長期国債買入れについては、財政再建への中長期的な道筋が不明確な中、銀行券を上限とする取扱いに例外を設けると、財政ファイナンスに一歩近づいたとの疑念が市場に生じ、かえって長期金利に悪影響が及ぶ可能性があることを懸念したことも反対の理由の一つです。」
長めの市場金利が包括緩和以降、むしろ上昇気味となっていたことは明らかである。その要因としては須田委員が挙げた債券市場の過熱に繋がるリスクが影響していたことも確かである。さらにこれらの発言からも、包括緩和の効果を控えめに判断していたことも伺える。
そして、もうひとつの反対理由としている「消費者物価指数の基準改定などに伴う不確実性に一段と配慮した情報発信が必要」との意見は、まったくもってその通りである思われる。2011年度のコアCPIの押し下げ要因ともなりうる基準年の変更については、その影響を織り込まず注記に留めていた。しかし、基準年変更の影響については政策委員の判断に委ねるとしながらも、「思っていたよりも大きかったというようなことが起こる可能性は考慮しておく必要がある」との西村副総裁発の発言が展望レポート発表の前にあったように、これについてはもう少しはっきりとした情報発信が必要であったように思われる。
今回明らかになった展望レポートへの須田委員の反対は、納得しうる理由が存在する。包括緩和については円高対策を含めてのあくまでアナウンスメント効果が意識されたものと私自身は理解しており、包括緩和の効果を控えめに判断するというのは須田委員ばかりの意見とも思えない。もちろんそれを総裁などが口にすることはできないであろうが。また、消費者物価指数の基準改定などに伴う影響についても、包括緩和では時間軸政策も打ち出している以上はたいへん重要な問題ともなり、しっかりとした説明が必要であったはずである。このわずか1票といえども。その反対票の意味についてしっかりと考えておく必要もありそうである。
今後の円債の動きをみる上では、引き続き米国債の動向に注意が必要となりそうである。米債もやや下げ止まり感はあるが、それを確認するまでは円債も神経質な動きが続くものとみられる。特に27日の350億ドルの2年債入札、28日の350億ドルの5年債入札、そして29日の290億ドルの7年債入札の結果を受けての米債の動向に注目したい。
年末に向けては28日の経済指標の発表などを除けば大きなイベントはなく、参加者少ない中、さらに閑散小動きとなることも予想される。28日に発表される経済指標では11月の全国消費者物価指数、同じく11月の鉱工業生産速報値などに注目したい。
2011年に入ってからは、まず1月6日に実施される10年国債の入札動向を確認したい。10年債利回りは一時1.2%台をみたことで、投資家もある程度の利回りを求めてくる可能性もある。このため年初は入札に向けたヘッジ売りなどで債券相場の上値が抑えられる可能性がある。
また、政局の動向についても注意したい。2011年度の国債発行に関してはカレンダーベースの市中発行額の増額が限定的なものにとどまり、国債需給への懸念は少ないものの、政局そのものが大きく変動する可能性があり、その際には今後の国債需給に関する懸念が高まる恐れもある。
12月24日に財務省は個人向け国債の商品性の改善を発表した。
個人向け国債は長期金利が低位安定していることもあり、その利回りの低さが嫌気されて販売額が低迷している。それに対し利回りの決定方法などを変更するなど商品性を見直すことにより、そのニーズを高めようとするものであるとみられる。
具体的には10年物の変動金利タイプの金利の決定方法について、これまでの「基準金利マイナス0.8%」から「基準金利×0.66%」に変更される。一見、これでどう変わるのかという声も出そうだが、これは計算してみるとその違いがわかる。
10年物の変動金利タイプの金利を決めるにはその基準となる市場金利がある。具体的には利子計算期間の開始時の前月に行われた10年固定利付国債の入札における平均落札価格を基に計算される複利利回り(小数点以下第3位を四捨五入し、0.01%刻み)の値である。
財務省のサイトで発表される10年国債の入札結果を見るとその値が確認できる。たとえば12月1日に実施された10年国債入札の結果から算出された個人向け国債(変動10年)の基準金利は1.19%とある。これから0.8%を差し引いた0.39%が、12月に募集される10年物変動タイプの個人向け国債の適用利率(税引き前)となる。
これに対して「基準金利×0.66%」とするならば、0.79%(小数点以下第3位を四捨五入?)となり、現行の0.39%に比べてかなり優位となる。
簡単な計算でわかることだが、基準金利が2.35%を上回ると現行の「基準金利マイナス0.8%」のほうが優位となる。たとえば基準金利が3%のときは、「基準金利×0.66%」は1.98%だが、「基準金利マイナス0.8%」は2.2%となる。
個人向け国債が2003年3月に発行されてから、長期金利そのものが2.35%を上回ることはなかった。これまでの方式であれば、長期金利が上がれば上がるほど有利なものとの印象があったが、長期金利そのものが低位安定しているとなると、新方式の決定方法のほうが魅力的なものとなる。長期金利の先行きを予想することは難しいが、国債需給に対しての懸念等が出ない限りは、現在の長期金利の低位安定は続くことが予想される。
そして、10年変動タイプだけでなく、5年物固定金利タイプについても見直される。こちらは発行から2年間は中途換金できないルールを改めて、発行後1年経過すれば換金できるようにする。ちなみに10年物の変動金利タイプ、そして今年7月から発行された3年物固定利付タイプについては、発行から1年経過すれば中途換金が可能となっており、これで3商品ともに中途換金のルールについては統一されることとなる。
10年物の金利については2011年7月の新規発行分から「基準金利×0.66%」が適用され、5年物の中途換金ルールは2012年4月からすべてに適用される。
これによる個人向け国債の販売額への影響であるが、これまでに比べて商品性として有利となることは間違いない。しかし、根本的な問題としては、やはり長期金利がある程度上昇しなければ個人向け国債の商品性の優位性はなかなか発揮できないと思われる。
そして今回の改訂についても、個人に大量の国債を買わせるための財務省の策略かとの意見もあるようだが、残念ながら現在の金利水準では大量に発行することそのものが難しい。さらに米国や英国などの個人向け国債の発行の状況などを見ても明らかであるが、あくまで個人向け国債の発行は国債保有者の拡大が狙いであり、個人に国債を押し付けようとしているものではない。
12月20日に開催された国債投資家懇談会の記事要旨が財務省のサイトにアップされており、今回はこの内容を確認したい。特にここにきての長期金利の上昇をどのように投資家が見ていたのかを探る上でもたいへん参考になる。
出席者からは、「国債市場については、一時、10年債利回りが1%を割った際には心配したが、現状では金利も回復してきてやや安心している状況」、「JGBは、夏場から10月くらいにかけての10年債利回りの0.8%台や5年債利回りの0.2%台はやや振れすぎたと思っており、現状はその反動が来ていると思う。」との発言があった。
心配していたのはここにきての長期金利の上昇ではなく、むしろ長期金利の1%割れの方であった。過去の長期金利の動きをみれば当然と言えば当然の見方である。
また別の発言者からは「日本国債のこの程度の金利上昇については、想定の範囲内であり特に一喜一憂していない。投資家行動を見渡した場合、今回の金利上昇については、債券を売って株へシフトした結果であるとは考えていない。」との発言もあった。
これからも特に今回の長期金利の上昇については、マスコミなどで騒がれたほど投資家も危惧していないことがわかる。さらに株価の上昇はポートフォリオの入れ替えとかではないことも指摘している。これも債券市場関係者にとり違和感はない見方であろうが、株式市場関係者などでは、そうなのかとの声もあろう。
とはいえ今回の金利上昇というかボラタイルな債券相場については、「今後、金利の絶対水準やイールドカーブの形状を含め、非常に動きやすい環境がしばらく続くのではないかと考えている。」との見方や、「最近金利が急ピッチで上昇したが、市場関係者が少ない中、日々の振れ幅が大きくなったことが、短期的に需給を悪化させたと考えている。」との発言もあった。揺れ幅があまりに大きかったことにより、投資家にとってもなかなか手が出しにくい状況でもあったことが伺える。
また、このような発言もあった。「先週までの短期、長期を中心とした金利上昇については明らかに行き過ぎだったと見ている。特に1年T−Billの0.18%を超える水準というのは、利上げも見通せない中で行き過ぎた金利上昇となってしまったと思う。その背景としては、銀行勢を中心に、外債投資のポジションを米金利の上昇を背景に落としてきたというリスクリダクションの動きが短い年限のJGBまで広がったからであると見ている。」
今回の長期金利上昇の背景はいろいろと指摘されているが、このリスクリダクションの影響は確かに大きかったと思われる。これに関しては投資家懇ではなくPD懇(国債市場特別参加者会合)でも次のような発言があった。
「10月5日に日本銀行が示唆した包括緩和政策において、時間軸の明確化や長めの市場金利の低下を促すことを明示され、市場に対してコミットしたと市場参加者は認識し、そのコミットメントに基づき、特にこの下期以降、債券運用の計画やスタンスを固めていった。一方、現状では、そのコミットが薄れつつあるのではないかとの認識を持っている。例えば、12月14日にT-Billの1年物の入札の応札倍率が1.81倍、最高利回りが0.19%程度まで流れる結果となっているが、この間、このコミットメントに対するメッセージ等がなく、日本銀行の意識に対して懐疑的にならざるを得ない状況である。」
このあたりはなかなか難しい問題を抱えている。結果からみれば日銀が包括緩和を決定してから、長期金利だけでなく短期金利も上昇気味となった。それについては日銀が市場機能を重視して、過度な抑えつけを控えてきたためとの見方もある。しかし、その要因が銀行によるリスクリダクションの動きであるとすれば、日銀が無理やり抑えこむよりも、その動きがある程度一巡して、落ち着きを取り戻してから動いたほうが効果的でもある。また、日銀が過度に短期金利上昇への警戒心を強めるようなことを総裁などが示唆してしまうと、市場では追加緩和期待が強まってしまう恐れもある。自らの動きを縛るようなことも日銀としてはしたくないであろう。
いずれにせよ、銀行によるリスクリダクションの動きは年末も近づいて一巡したとみられる。金利水準も投資家にとりある意味心地良い水準にもきている。ファンダメンタルズの先行きについては過度な悲観論とともに楽観論も影を潜めており、その意味では今後の金利はある程度落ち着いた動きを見せてくると思われる。
私の講演会を2011年1月29日(土)に滋賀県大津市で催していただきます。
<日時>2011年1月29日(土) 午後3時〜5時
<会場> 旧大津公会堂 2階 多目的室
滋賀県大津市浜大津1丁目4番1号
JR大津駅から徒歩12分。京阪・浜大津駅から徒歩1分。
<参加費> 無料
<募集人数>40名
こういった方にお勧めです。
(1)そもそも債券とか金利ってナニ?
(2)日本国債の仕組みをもっと知りたい
(3)株式やFX投資にも役立つ債券相場の知識を教えて
(4)財政危機っていうけど、国債は大丈夫なのか?
初心者向けの講演会ですが、よろしければ下記の拙著を読んだうえで参加していただけるとうれしいです
講演はこの本を読んでいただいた前提でさせていただく予定です。
もちろん本の内容に関わる質問も大歓迎です。必要ないかもしれませんが、懇親会でサインもいたします。
『最新国債の基本とカラクリがよーくわかる本』 久保田 博幸 (秀和システム)
http://www.amazon.co.jp/dp/4798024589
応募につきましては、下記ページからお願いいたします。
http://twipla.jp/events/3428
また、メールでの申し込みやお問い合わせにつきましては下記アドレスにお願いいたします。
contact@ousaka-arthills.com
皆様のご参加、お待ちしております。
12月20日に開催された国債市場特別参加者会合では、来年度の国債発行計画について財務省と参加者の間で意見交換が行われた。
冒頭の財務省から説明があり、国債発行計画は44兆円に抑えるべく予算編成作業が進められていること、借換債については概算要求では約115兆円としていたところ、仮に特別会計仕分けの結果への対応として買入消却の財源を国債整理基金の取崩しとするならば、数兆円規模で減額できる可能性がある点が示された。また、財投債については概算要求での15.5兆円より下回る可能性がある。
そして、カレンダーベース市中発行額については、前倒し債の発行減額による調整分により増額をある程度抑制することが可能であるとの説明があった。
今年度の国債発行総額は162.4兆円である。このうち借換債が102.6兆円であり、来年度の借換債は概算要求で約115兆円と大幅に増える見込みとなっている。その分、総額も増加する見込みだが、国債整理基金残高を活用した繰上償還が実現すれば、それは最大4兆円規模での借換債の減額要因となる。また、財投債も概算要求を下回る可能性があるようでそれも減額要因となりうる。
そして、前倒し債の発行減額による調整分については10兆円規模が想定され、その結果、来年度の国債発行の総額は大きく増加するものの、カレンダーベースでの市中消化額はわずかなものにとどまる見込みとなる。
前回の会合では超長期債に加えて、中期債の増額を求める声もかなり出ていたが、今回の会合では中期債の増額はせずに超長期債の増加のみを指摘する声が多かった。大方の意見は30年債、40年債ともにそれぞれ一回あたり1000億円ずつの増加とするものであった。発言内容からもほぼコンセンサスは固まっているような感じであった。
中期債の増額については「昨今の中短期ゾーンの不安定さ」などが指摘され、「ここもと価格変動性が大きいことを鑑み、なるべく増額は控えた方がよい」との声が出ていた。
11月に大手銀行が2兆8905億円もの国債を売却していたことが、20日に発表された公社債投資家別売買高で明らかになった。期間別で見ると超長期債を約3367億円、長期債を約9969億円、中期債を約1兆6646億円売り越しており、特に中期ゾーンの売りが目立っていた。この動きを踏まえて、中期ゾーンへの増額については慎重な見方をするようになったものとみられる。
いずれにせよ総額そのものが増加する割には市中発行額は抑えられることで、これによる国債需給への懸念は抑えられよう。財務省も前倒し発行などにより、少しでも国債への需給懸念を押さえ込んでいる。しかし、年間170兆円規模という巨額の国債が発行されることに変わりはない。さらに再来年度以降についても、同様規模の国債が発行されることが予想される。足元の国債需給は問題なくとも、先々のことを考えれば安心していられるような状況にないことも確かである。
先週の債券市場では、15日に現物5年債の利回りが0.6%まで上昇し、また、10年債利回りは1.295%と1.3%近くに上昇。さらに20年債利回りも2.1%近くに上昇した。
この債券利回り上昇の最大の要因は米国債の利回り上昇であったのは明らかである。円債に押し目買いが入り戻りかけても、米国市場で米債の利回りが上昇してしまい、翌日の日本の債券市場はさらに下値を試すような展開が続いた。
そして、もうひとつ円債の上値を重くさせていたものに短期国債の利回り上昇など短期金利が上昇していたことも要因であった。15日の1年物短期国債入札の応札倍率が1.81倍と過去最低を記録するなど、やや異常なほど不安定な状況にあったためである。
しかし、この大きな2つの懸念材料は次第に落ち着きを見せてきた。米債については先週末にかけて長期債主体に利回りは大きく低下した。さらに短期国債についても落ち着きを取り戻しており、その結果として0.2%台で高止まりしていた2年債の利回りも0.2%を割込んできている。
これを受けて債券相場は大きく切り返し、10年債の利回りは再び1.2%を割り込み、また債券先物も一時140円台を回復した。ここにきて波乱含みとなったいた債券相場は小休止してくるものとみられる。
ただし、このまま長期金利が再び低下基調となることも考えづらい。確かにファンダメンタルズを見る限り、日銀短観も悪化しつつあるなど景気の先行きへの懸念も強い。また、物価も上昇する気配はなく、デフレも簡単に解消に向かうことも考えづらい。しかし、日銀による追加緩和期待が強まるような状況でもない。
それには外為市場で円高が一服したことも大きいと思われる。これにより日銀に対しての外部からのプレッシャーがかなり緩和されつつある。また、FRBについてはQE2後の長期金利上昇によって追加緩和、特に国債買入増額という手段については、かなり慎重にならざるを得ないと思われるため、日銀も早期に動く必然性がない。
そして、日米ともに財政の問題もクローズアップされやすくなっている。これは欧州でも同様か。これも長期金利低下を阻害する要因ともなりうる。米国については減税策の継続などによる債務悪化、日本については抜本的な税制改革等の見送りなど一向に進められない財政再建、そして欧州については周辺国に対する支援により比較的財政が健全な国に対する財政への懸念が出てきている。
日米欧とも中銀の政策の軸は、国債買入に傾いているが、それはそもそも先進国の財務体質が悪化しつつあることの裏返しとも言える。日銀による国債買入は財政ファイナンスではないとしているが、結果としては日本の債務悪化による債券市場への悪影響に対するクッションの役割をしていることも確かである。今後、中銀が国債買入を増加すればするほど、国債需給の緩和などよりも、その国の財政悪化が意識されやすくなる可能性もある。
さらに日本では民主党政権の雲行きがかなり怪しくなってきている。民主党が分裂をするようなことがあれば、大規模な政界再編が起こる可能性がある。それにより、財政再建を積極的に進められるような若々しい政権が誕生することが望ましいが、あまり期待はできそうにもない。しかし、それに一抹の望みを託する以外に、日本の債務悪化を食い止める手段も考えづらいことも確かである。
12月17日に日銀が発表した2010年7〜9月資金循環勘定速報によると、家計の金融資産は2010年9月末現在で1441兆7865億円(速報値)となった。6月末の1444兆7385億円(確報値)から減少した。減少は2期連続となる。
この2010年7〜9月資金循環勘定速報を元に、国債の保有者別のシェアを算出してみた。ちなみに国債の総額は728兆1781億円となっている。この場合の国債とは、普通国債(建設国債と特例国債)と財投債を合計したものであり、政府短期証券は含まれていない。また、金額は時価ベースとなっている。
このうち銀行など民間預金取扱機関は278兆8460億円で38.3%、民間の保険・年金は175兆3423億円で24.1%となり、銀行や生損保で6割を越えている。これにはゆうちょ銀行やかんぽ生命の保有分も含まれている。
次に多いのが公的年金で77兆9585億円の10.7%、そして日本銀行の57兆3658億円の7.9%、投信など金融仲介機関の40兆3168億円の5.5%と続く。
海外投資家と家計(個人)の比率については海外が36兆6646億円の5.0%、家計が34兆763億円の4.7%となっている。6月末のシェア(速報値)は海外が4.6%、家計が4.8%となっており、海外シェアがやや持ち直した格好となった。
そして財政融資資金が1兆2325億円で0.2%、その他が26兆3753億円の3.6%となっている。
参考までに政府短期証券に関しても同様に保有者別に集計したところ総額で151兆5360億円のうち、銀行など民間預金取扱機関が77兆9131億円の51.4%、海外が20兆8414億円の13.8%、中央銀行が21兆1372億円の13.9%、投信など金融仲介機関が7兆6783億円の5.1% 、民間の保険・年金が3兆5788億円の2.4%、その他が20兆3871億円の13.5%となっている。このその他のうち19兆5810億円が中央政府の保有分である。
日本における皆保険、皆年金が誕生したのは1961年であり、来年で50周年となる。1961年に国民健康保険制度が完全普及され、また国民年金制度が発足したことにより、国民皆保険・国民皆年金が実現した。
現在の日本の財政を考える上では、歳出に大きな割合を占めるこの社会保障の問題を避けるわけにはいかない。特に少子化とともに高齢化が進む日本では、高齢者増加による医療費の増額などとともに、それを負担する生産年齢人口の減少が問題となる。すでに今年度は一般歳出の半分を社会保障費が超えており、この社会保障費が自然増で毎年1兆円ずつ増えていくという状況となっている。
11月8日に行われた財政制度等審議会の財政制度分科会の議事録が財務省のサイトにアップされているが、この中でも社会保障改革に対していろいろと意見が出されている。この中で、財政の問題、社会保障の問題、大きなデザインを描く必要があると指摘されているが、まさにそのとおりであろう。社会保障費そのものの削減については、いろいろとその手段については意見もあろうが、まず具体的な削減の数字を政府が示し、それに向けた議論の積み重ねも重要ではなかろうか。
この議事録の中で、社会保障のサスティナビリティを危惧する発言もあったが、それ以前に社会保障費の増加は日本の財政そのもののサスティナビリティを危うくさせうる。ただし、危ない危ないと言われた日本国債はいっこうに暴落の兆しを見せないのではないかとの指摘もあろう。しかし、そのリスクは巨額の財政赤字が継続する限り危険なレベルへと高まりつつあることも明白である。
英国などでは若手の政治家主導で、財政再建に向けて積極的な姿勢を見せている。しかし、日本では選挙で消費税アップがタブー視されるなど、積極的な財政再建を進めようとする気配すら感じさせていない。もちろん消費税を上げれば済むような問題でもないが、それを組み込んでの社会保障改革であったはずであるのに、それすら出来ていない現状が問題なのである。
坂の上の雲ではないが、国民は日露戦争の際のような臥薪嘗胆を求められても困るというのも本音であろう。しかし、もし日本の財政が立ち行かなくなくなれば、その負担は国民に一気に振りかかる。また、日銀が国債を引き受ければ済むといった考え方は、アリとキリギリスの話に例えれば、まさにキリギリス的な考え方であり、将来背負うであろう大きなリスクを何ら意識していない。
今後の日本の財政問題を考える上では、この社会保障費をどうするのかが大きな課題となる。日本の財政問題を真摯に受け止め、将来の国民の安心を導いてくれるような政治家が求められる。このためには、つまらない小競り合いに明け暮れているようなベテラン政治家たちは置いといて、海外のように若手政治家による奮起を期待したいところである。
債券相場の下落が止まらない。ここに来ての債券相場は下がるかなと思うと米債がしっかりで、翌日反発してみたり、また不安定ながらも底打ちするかと期待すると、米債が急落するなど、債券市場関係者にとり、非常にやりにくい相場展開が続いている。
今回の債券相場の下落要因については、以前にも何度か指摘したが、大きな要因としては米債安があり、それに絡んだ銀行によるリスク管理上からのポジション調整の動きが大きいとみられる。
結論から言って、米債は11月のQE2を確認してから本格調整に入り、円債に関しては10月の包括緩和政策決定を受けてから債券相場は下落基調を続けている。
FRBは米国債の買入の増額を行ない長めの金利低下を促して、その結果として物価の安定、景気の回復とそれによる雇用の回復をはかろうとした。日銀もこれまでの国債買入とは別枠で1〜2年の国債を買い入れ、さらに時間軸政策も組み入れて、やはり長めの金利低下をはかろうとした。
しかし、長めの金利は低下するどころか反対に上昇し、日本の2年債の金利は10月の包括緩和決定のころの0.1%から、現在は0.2%台に上昇している。期間1年物の短国までも0.2%近くに金利が上昇しているのである。
これを見る限り、どうやら日米の中央銀行は長めの金利の低下ではなく上昇に働きかけをしてしまったようである。もちろんそれぞれ、先に金利が大きく低下してしまった反動といった面も大きい。
特にFRBに関しては数ヶ月かけてじっくりとQE2に向けての宣伝を行なってきたことで、利回りが下がるところまで下げてしまった感もある。日銀にしても、2年債が0.1%程度まで下げたことで、やはりピークアウト感も出てしまったものとみられる。
しかし、その後の金利上昇に関しては日米の中央銀行はそれほど懸念しているような素振りはない。それには日米ともに株価が上昇し、日本では円高の動きが止まったことなども大きい。日本では今日発表された短観などみてそれほどでもないが、米国では発表される経済指標によっては景気の改善を示すものも出始めている。
日米の中銀にとり、長めの金利低下に働きかけるというのは、最終的な目標ではない。それにより景気や物価に働きかけようとするものであり、たとえ長期金利が上昇しようとも、景気に回復の兆しがみえればそれはそれでよしとなる。
景気回復を阻害するほどの金利上昇となれば懸念も出ようが、ピッチのほどはさておき、この程度の金利上昇はまだ許容範囲ということでもあろうか。つまり買われすぎの反動程度と捉えれば、金利上昇をむやみに抑えこむ必要はない。
円高一服、株価の上昇となれば、混沌としている政局の中なあっても、政治家などからの日銀へのプレッシャーも緩む。日銀としてもこの長期金利の上昇抑制のための追加緩和といった手段を取ることはまず考えづらい。このため、結果としては長めの金利の上昇に働きかけてしまったかにみえる日銀ではあるが、当面は様子見のスタンスで望むものと思われる。
ただし、注意すべきは債券相場の地合いが不安定になる中、あらためて財政への不安などからさらに国債が売り込まれるような事態になることである。いわゆる悪い金利上昇は避けなければならない。長期金利が1.5%あたりまで上昇しても、それほど悪影響を及ぼすことは考えづらい。しかし、それが2.0%を目指すようなことになれば話は違ってきてしまう。日銀の包括緩和は金利のアンカーになっていることも確かで、そのアンカーが外れてしまったような動きとなった際は危険な兆候となる。いづれ債券相場は下げ止まると思われるが、どのあたりで止まるのかも確認しておく必要があろう。
2001年度から特別会計に関する法律(第62条第1項)を発行根拠法とした財政融資資金特別会計国債、一般には財投債と呼ばれる国債が新たに発行されている。
2001年4月に財政投融資改革によって、大蔵省(財務省)の資金運用部は廃止され、郵便貯金及び年金積立金の預託義務が廃止された。郵便貯金や簡易保険、年金積立金で集められた資金は、それまで大蔵省(現財務省)の資金運用部に集められ、運用されていた。資金運用部はこの資金を旧住宅金融公庫・旧国民生活金融公庫をはじめとする公的金融機関や、旧日本道路公団などの公共事業実施機関、国の特別会計、地方自治体などに貸し出していたのである。
しかし、財政投融資改革、いわゆる財投改革によって、資金運用部に預託する義務が廃止され、郵便貯金や簡易保険で集められた資金は郵政事業庁(後に、郵政公社を経由してゆうちょ銀行・かんぽ生命)、公的年金は厚生労働省の年金基金運用基金(後に、年金積立金管理運用独立法人)が、それぞれ独自で運用することとなったのである。
財政投融資制度は、社会資本整備等により日本経済の発展に一定の貢献を果たしてきたといわれている。しかし、その規模が大きく膨らみ特殊法人等の事業の肥大化を招いたとの批判が出てきた。予算のチェックをあまり受けることなく、資金運用部から自動的に巨額の資金が特殊法人に流入されていた。自主的な資金調達を行う必要がないことで、市場のチェックを受けることがなく、特殊法人の経営そのものも不透明との指摘もあった。
これらの点を踏まえて市場のチェックを受け、特殊法人等の改革・効率化にも寄与するために行なわれたのが財政投融資改革である。
財政投融資改革により資金を必要とする財投機関は、市場から新たに資金を調達しなければならなくなった。このために発行されるのが、財投機関債、政府保証債、投融資特別会計国債(財投債)である。
財投機関債、独力で資金調達できる法人が発行する政府保証がつかない債券
政府保証債、独力では資金調達することが困難な法人が、財務省の厳正なる審査を受けた上で政府保証が付与され発行する債券。
財投債(財政融資資金特別会計国債)、財投機関債、政府保証債のいずれでも資金調達が困難な場合に、財務省が発行する国債。そこで調達した資金を財投機関に融資する。発行根拠法は特別会計に関する法律。
財投債は国がその信用に基づいて発行するものであるため、建設国債や特例国債と同様に発行限度額について国会の議決を必要とする(「特別会計に関する法律第62 条第2 項」)。財投債の発行収入は財政投融資特別会計の歳入の一部となる。
財投債の発行に際し経過措置として、2001年から7年間は、市場に配慮して郵貯、公的年金、簡保積立金が財投債の一部を直接引き受けていたが、その期間が過ぎた現在はこの直接引受けは行なわれていない。
また、財投債はその償還や利払が財政融資資金による独立行政法人などへの貸付回収金により行われていることから、将来の租税を償還財源とする建設国債・特例国債とは異なる性質を持っている。このため普通国債残高(建設国債と借換国債の残高)と財投債残高は区分して示されている。
ここにきての債券相場は連日のように先物が大きく上げ下げするなど波乱含みの展開となっている。これにはいくつかの要因が重なっているものと考えられる。
その要因のひとつは米国債券市場の不安定さであろう。米10年債利回りは上げ下げを繰り返しながらも結果として3.%台に乗せて、さらに上昇している。日本の債券市場も押し目買いが入っても、米債の下落などで押し返されるような動きが続いている。米債の下落要因としてはQE2に向けた買いの反動売りもあり、これには6月以降、米国債を大量に購入した邦銀からの売りも影響していたとみられる。
10月の日銀による包括緩和政策の決定時には0.1%近辺にあった2年国債の利回りが0.2%台での高止まりが続いている。これについても大手銀行の中期ゾーンへの売りが影響していた。日米国債の邦銀による合わせ切りの動きは、厳格なリスク管理などが影響しているのではないかとの観測もある。
また、超長期ゾーンの買い手となっている生保の動きも思いのほか鈍いものとなっている。この生保の動きの鈍さの背景には、すでに今年に入りある程度の買いを進めてしまったことで、あまり焦って買う必要はないためとの見方もある。
円高が一服し株式市場が戻り基調となっていることも、債券相場の上値を抑える要因となっている。日米ともに足元景気については予想されていたほど悪い状況にない。また、米国市場では予想を上回るような経済指標に反応しやすくなっていることもある。
さらに財政そのものへの不安が日米の債券相場の上値を抑えている可能性がある。格付け会社のムーディーズは、ブッシュ減税や失業保険の延長案により、向こう2年間における米国格付けに対する見通しの変更の可能性を示した。ムーディーズが自国の国債の格下げを行うことは考えづらいものの、こういった可能性が指摘されるほど米国の財政の先行きについては懸念が強い。米国は日本型デフレに落ち込むのではないかとの見方もあるが、同様に米国が日本のような債務膨張に陥る可能性もありうる。
そして、日本国内では政局の先行き不透明感も潜在的な要因となっている。特に政権与党である民主党に分裂の危機が迫り、来年度予算編成などにも影響する可能性がある。政局不安は国債需給への不安要因ともなる。それ以上に、財政再建に向けた積極的な動きもなく、将来に向けた国債需給悪化の懸念は強まるばかりとも言える。
以上の要因などがいくつか重なりあって、債券相場の変動を大きくさせるとともに、基調としては下値を試すような動きになっている。この流れがどこまで続くのかは予想しづらいところではあるが、まだブレーキがかかるような状況でもなさそうである。
12月9日は長期国債先物12月限の最終売買日となり、この日に先物の中心限月は2011年3月限に移行した。参考までに先物の中心限月とは、最も出来高の多い限月のことを指し、長期国債先物(以下、債券先物)に関してはそれはほぼ期近の限月となる。ほぼと言うのは、期近の限月の最終売買日を迎える前に、期先の限月と出来高が逆転し中心限月が交代したケースが以前にはあったためである。こと債券先物についてはいったん中心限月が移行してしまうと、出来高が再逆転するというケースはこれまでにない。
今年で上場してから25年を経過した債券先物取引は、日本で最初の金融先物取引である。過去の債券先物の動きを見てみてみると、中心限月にはそれぞれ個性のようなものが見受けられる。大人しい限月であったり、値動きの荒い限月であったり、ほぼ一方的に上昇するような限月であったり、その反対の動きの限月もあった。
昨日で売買最終日となった2010年12月限については、前半はほぼ一方的な上げ相場であったのが、後半はやや荒々しく下げるような展開となり、日足チャートは「へ」の字型となった。
そして、昨日中心限月となった2011年3月限については、初日から急騰急落するなど、かなり波乱に満ちた動きを見せている。この限月ごとの性格の違いには、チーペスト銘柄がやや影響していることもある。
債券先物は日経平均先物などとは違い、現引き現渡しが可能となっている。長期国債先物に関しては10年物の国債の中で残存7年以上11年未満のものが受渡し適格銘柄となっている。さらに債券先物は、その受渡し適格銘柄のうち最割安銘柄、これはチーペスト銘柄とも呼ばれるが、に連動する仕組みになっている。
現在の金利の環境では、このチーペスト銘柄は最も残存期間の短いものがなることが多い。昨日が最終売買日となった2010年12月限のチーペスト銘柄は289回債であり、この銘柄はリオープンが2回重なったことで、通常の銘柄に比べて3倍の発行量を持っている。これに対して、2011年3月限のチーペスト候補となる銘柄は利率の異なる3つの銘柄に分散される。このため、チーペストは3銘柄の中で最も割安なものとなる。
つまり、チーペスト銘柄の発行量が多ければ空売りなどが容易になるものの、チーペストの発行量が少ないと、その銘柄の需給次第では、空売りがしづらくなる場合も考えられる。このため踏み上がるようなケースも多くなることで、値動きそのものが荒くなる可能性がある。
もちろん債券先物を動かす要因は、現物全般の需給であったり、米国債など海外市場動向であったり、もちろん景気や物価情勢であったりするわけで、それにより債券先物の個性が出てくることも確かである。
はたして初日から大暴れした債券先物2011月3月限はいったい今後、どのような動きを見せるのか。その動きの個性にも注目してみたい。
今回の日本の債券市場は、かなり重症そうな雰囲気が漂ってきた。今日は5年国債入札が実施されたが、これを無難に通過すれば、先物は買戻しも入り、相場の地合いも少し良くなって、現物も押し目買いが入りしっかりと予想していた。実際に途中までのそのシナリオ通りの展開となった。
昨日8日のユーロ圏での債券市場ではドイツ連邦債が売られ、10年債利回りは3%台に上昇し、米国市場では昨日の東京時間から売られていた米国債は、10年債が一時3.33%まで利回りが上昇した。このため、本日から中心限月となる債券先物3月限は、やや売りが先行し前日比15銭安の139円05銭で寄り付いた。LIFFEでは139円割れとなっていたが、前場の安値は139円01銭までとなり、その後、先物はじりじりと切り返す展開となっていたが、現物債は前場先物に比べ上値が重くなっていた。このあたりもやや気になるところではあった。10年債利回りは前日比2毛甘の1.250%の出合い後に、朝方は1.265%まで上昇していたのである。
本日入札される5年国債は利率が前回から0.2%引き上げられ、0.5%となったがこれは予想通り。ここにきての債券相場の急落により、この入札への懸念も出ていたものの、その入札の結果は最低落札価格99円64銭、平均落札価格99円68銭と懸念されていたほどは悪くはなかった。ただし、テールは4銭と前回の1銭から伸びて、応札倍率も2.78倍と前回の3.97倍から低下していたがもそれなりのニーズがあったのではないかと推測された。
とにかくも無事に入札というイベントも通過したことで、先物はショートカバーが入り、債券先物は、前日比77銭高の139円97銭まで大きく上昇した。買戻しは予想されたものの、ちょっと行き過ぎという感じも受ける戻りではあったが下げも大きかった分、戻るののも速いということか。3月限のチーペストの発行量が12月限より少ないことでの思惑もあったようである。この先物の戻りを見て、朝方1.265%まで売られた10年債も、さすがに買いが入り前日比5.5毛強の1.185%に利回りが低下した。5年債利回りも0.475%に低下した。ただし、2年債の利回り低下は0.210%までにとどまっていた。このあたりも注意すべきところであったのかもしれない。
現物債にもそれなりに買いが入り、これでとりあえず今日のところは下げ一服かと思われた矢先、その10年債利回りは2時過ぎあたりから急速に上昇し、再び1.260%と朝方の水準に戻ってしまった。5年債も一時0.475%まで買われたのに、引けにかけては2.5毛甘の0.540%に。債券先物も引け際に139円02銭と朝方つけた安値に接近し、大引けは8銭安の139円12銭となったのである。急速に戻り過ぎた反動とも思われ、また東京時間で米10年債の利回りがじりじりと上昇していたこともあった。しかし円債は押し目買い待ちというよりも、戻り売り待ちの参加者がいたということでもある。また、5年新発債のセカンダリーニーズが思いの外見えなかった可能性もあり、ポジション調整の売りが入った可能性もある。
結局、戻った分、帳消しになり、10年債は引けあと1.270%まで打たれた。これでは地合いが好転どころか、むしろ悪化してしまったようにも思われる。いったいこの円債の上値の重さの要因は何なのか。米債の下げの影響とそれによる銀行などのポジション調整ということで片付けられれば、さほど問題はないものの、別な要因が絡んでいるようだと、注意する必要がある。この場合の別の要因とは、たとえば日本国債そのものへの需給への懸念といったものではあるが、今のタイミングでそれが問題視されるとも考えづらいことも確かである。しかし、その懸念も払拭できないような債券相場の地合いとなり、当面、注意信号が灯りそうな予感がする。もちろん米債の今後の動きにも注意する必要がある。
12月8日の債券相場は、前日の米国債券市場で米10年債利回りが前日の2.93%近辺から3.13%近辺に大きく上昇したことをきっかけに、急落の展開となった。この米債の下落要因としては、ブッシュ減税の延長や米3年債入札が低調となったことが要因とされるが、地合いそのものの悪化により、こういった売り材料に敏感になっている可能性がある。
米国債ばかりでなく、安全資産として買われていたドイツ連邦債も長い期間の債券主体に売り圧力を強めている。欧州周辺国の債務悪化により、EUによる支援策が協議されており、ドイツやフランスなどがそのために財政が悪化するのではないかとの懸念が背景にある。
また、米国債も減税策などによる財政への懸念や、将来のインフレ懸念などが材料となっているようであるが、それよりも足元の需給悪化がその要因となっている可能性もある。
いずれにせよ、この米国債やドイツ連邦債の下落が、日本国債の下げの大きな背景となっていることは確かであろう。国内銀行などは今年に入り米国債を10兆円以上購入しており、11月に2兆円程度外したがまだ残高があったとみられ、今回の米国債の下げを受けて、リスクを減らすために米国債、そして日本国債も一緒にポジションを外す動きを強めた可能性もある。また、日本国債に対しては12月1日、6日にそれぞれ5年債、10年債に銀行からと見られる買い仕掛けが入っていたが、結局、5年債で0.4%割れは一時的なものにとどまった。
本日の債券相場は先物が明日の12月限の最終売買日を控え、本来ならばロールオーバーの動きが主体になるところではあるが、その先物にはヘッジ売りも入ったものとみられ、債券先物12月限は一時、前日比1円14銭安となる140円07銭まで下落した。そして、10年債利回りは1.245%と6月16日以来の水準に上昇した。また、明日の入札を控えた5年債利回りも0.515%と0.5%台に乗せた。
昨日の30年国債入札動向を見ても生保などの投資家がかなり押し目買いに慎重となっていることも、地合い悪化のひとつの要因となっている。この慎重姿勢の背景には何があるのか。
債務問題となれば、当然ながら先進国で最も債務比率の高いのは日本である。今回の円債の下落の背景は、いまのところは海外要因と言えるものの、実際には今後の日本国債の需給がそれとなく意識されつつある懸念もないとは言えない。長期金利からみて、金利が上昇したとは言っても1.2%台の半ばというのはまだまだ低位安定していると言われる水準にある。長期金利の1%割れが異常であり、それが平時に戻っただけとも言える。しかし、チャートから見てここで下げ止まるとも思えない。もしここからさらに長期金利が上昇基調を強めてくるようだと注意も必要になってこよう。
1997年5月にタイの通貨バーツの暴落を皮切りに、アジアの新興諸国の通貨が連鎖的に暴落し、東アジア全域の経済が大混乱に陥った。いわゆるアジア危機である。東アジア各国の株は急落し、成長率は軒並みマイナスとなり、企業倒産や失業が急増したのである。
韓国では起亜自動車の倒産を皮切りに経済状態が悪化し、金融部門が大きな不良債権を抱えた。また、格付け会社のムーディーズは、1997年7月に韓国の格付けをA1からA3まで引き下げ、さらに11月にはBaa2にまで引き下げた。韓国の抱えていた民間短期対外債務残高は320億ドルあったが、通貨防衛のための為替介入により、韓国の使用可能な外貨準備高は1997年10月末の223億ドルから12月2日には60億ドルまで減少していた。こうして韓国はデフォルト寸前の状況にまで追い込まれたのである。
11月21日に韓国政府は国際通貨基金(IMF)に200億ドルの緊急支援を要請した。これにより、韓国はIMFの管理下に入ったのである。IMFは12月3日に史上最大規模となる210億ドルの融資の実施を決定し、現代グループなどに対して財閥解体が行われた。
その後、海外からの証券投資に対する規制が緩和され、対外証券投資の流入が促進された。韓国の国際収支は安定を取り戻し、韓国は通貨危機を受けたアジア諸国の中でもいち早く危機克服に向かったのである。
しかし、2008年後半に金融危機は韓国に波及し、アジア通貨危機の再来かという不安感が高まった。ただし、2008年9月にIMFは、対外債務増加と自国通貨安に見舞われた韓国経済について、1997年のアジア金融危機時に比べずっと強いとの認識を示していた。
2008年9月のリーマン・ショック直後から短期金融市場での流動性が低下し、韓国から海外への資金流出も重なり、ウォン相場は一気に不安定化した。この事態に対して韓国政府は、米国、中国に続いて日本との間で2国間の通貨スワップ協定の拡充、韓国の国内銀行の対外借入に対する政府保証の付与表明等、一連の危機対応を講じて市場の鎮静化に努め、景気対策として財政出動や金融緩和を実施した。これらにより韓国経済は、2009年第1四半期以降は景気回復トレンドが継続している。
これを見る限り、1997年の危機の経験が活かされたことに加え、構造改革などの進展により企業の体質が強化されるなどしたことで、今回の危機による韓国経済へのの影響は、1997年ほどの深刻さはなかったものとみられる。
1997年の韓国の経済危機を乗り越えたことにより、韓国企業は硬直化した組織をスリム化して意思決定のスピードを上げるなど経営の効率化を図り、国際競争力を高めた。1997年のアジア通貨危機にサムスンなども大変危険な状態を迎えたが、これを契機にグローバリゼーションを図ったと言われる。また、ウォン安もサムスン、LGなどの輸出産業にとり追い風となったことも確かである。
いまの日本にとり、この1997年の韓国の教訓を活かすべきではなかろうか。このまま政府債務が膨れ上がると、日本もいずれ1997年の韓国のような危機を迎える可能性がある。その際にはあまりに債務が大きすぎて、IMFの支援は金額的にも難しいものとなろう。そういった事態に追い込まれる前に、積極的な財政再建策を、まだ余裕のあるうちに取っておく必要がある。政府・企業ともに積極的な構造改革を進めることにより、日本のデフレからの脱却も可能になると思われる。
財政法に基づいて発行される建設国債に対して、特例国債(赤字国債)は、発行されるたびに特別法を制定し、特例により発行される。
東京オリンピック直後の1965年の日本経済は、深刻な不況に陥っており、企業の倒産が続出し政府の税収も大きく落ちこんだ。これは昭和40年不況とも呼ばれた。時の佐藤栄作首相や福田赳夫大蔵大臣などが、議論を重ねた結果、1965年11月19日の第二次補正予算で、戦後初めてとなる国債を発行する方針を決定した。この国債発行に対して、佐藤首相は「あくまでも特例としての発行である」と発表し、これにより特例国債つまり赤字国債が生まれたのである。
つまり特例国債とは建設国債の発行をもってしてもなお歳入が不足すると見込まれる場合に、公共事業等以外の歳出に充てるための資金調達を目的として国債を発行しているのである。
ただし、この1965年に発行された特例国債の発行限度額は公債発行対象経費の枠内であるという、特殊な性格を持っていた。公債発行対象経費とは財政法4条により、歳入財源としての公債または借入金の使途として認められた公共事業費、出資金および貸付金をいう。
その後しばらく特例国債は発行されなかったが、1975年度に石油ショック後の影響により巨額の税収不足が予測され、税収不足全額を公債の発行によるとすれば公債発行対象経費を大幅に上回ることになるため、政府は特別法の特例により国債を発行することになったのである。このため「昭和50年度の公債の発行の特例に関する法律」が国会に提出され、成立したのである。
この法律は単年度立法として提出されたことで、それ以降も類似の法律が毎年度制定され(略称は「特例国債法」)、特例国債が発行されている。特例国債は1990年度から1993年度までは好景気による税増収や財政再建の努力の結果として、一時的に発行されない期間があったものの、すぐにまた発行が再開され、1994年から現在に至るまで特例国債は発行され続けている。
このように特例国債は、建設国債の発行をしても歳入が不足すると見込まれる場合に、一般会計の財源不足を補うために発行される。主に社会保障、防衛費や人件費などの経常的経費を調達するために充てられている。
しかし、人件費などの経常的経費は、将来世代に資産を残すことはなく、国債の元利償還のための租税負担というかたちでの費用負担だけを残すことになるため、財政法ではこのための国債発行は認めていない。それにもかかわらず、無理やりに特例法を制定して発行しており、さらに特例法がそれ以降、一時期を除いて毎年度制定されており、もはや特例という言葉自体に意味をなさないものになっている。
特例国債の発行限度額に対しては、特例法では特例国債の発行権限のみが規定され、具体的な発行総額は予算総則により規定するというかたちになっている。つまり歳入歳出予算の一環として国会の審議・議決を受けるかたちになっている。また、特例国債と同様に償還計画表を国会に提出することとされている。
実際の特例国債の発行にあたっては国会の議決を経た範囲内で、税収等の実績に応じ発行額を極力抑える必要がある。このため毎年度の税収の収納期限である翌年度の5月末までの税収実績等を勘案して特例国債の発行額を調整するために、特例国債の発行時期を翌年度の6月末までとするいわゆる出納整理期間発行の制度が設けられている。特例法にもあるようにその期間における(つまり4月1日から6月末)国債発行による収入は3月末までの予算計上年度のものとし、これは会計年度所属区分の特例規定となっている。この出納整理期間発行は年度末の国債発行による市場への影響を緩和する効果もある。つまり、その期間分、国債発行額を均すことが可能となるのである。
須田日銀審議委員は12月1日の東京大学における講演で、金融政策を判断する難しさ、そしてそれを伝えることの難しさについて次のように述べていた。
「判断の難しさについては、金融政策の効果が現れるまでのタイムラグがその背景にあります。つまり、経済・物価の先行きを的確に予測し、政策を実施した際のメリット、デメリットを勘案した上で、最も適切と思われる政策をフォワードルッキングに実行することが求められます。これが、幾つかの前提を置いて理論を構築し、過去のデータを用いて検証すれば良かった学者時代との大きな違いです。先行きが不確実な中で判断を迫られる上、前提が違ったからといった言い訳も許されません。また、日本の住宅バブルや先般米国で起きた金融危機でもわかるとおり、何年も後になって、あの頃の金融政策が失敗だったと批判されることもあります。このように、実際に政策を判断する際には、かなり先までの経済・物価の姿やリスクを見通した上で、まさに決断が毎回求められるのです。」
これは実際に金融政策を決断するという立場にいる人間でなければ、実感として言葉にできないものであろう。特に須田委員は学者出身であることで、学者と政策決定者との違いを明確に述べている。「前提が違ったからといった言い訳も許されません」との表現に、政策決定者の責任の重さも現れている。学者出身であるバーナンキFRB議長も同じような思いを胸にしているのかもしれない。
日本の議員の中には、日銀の金融政策に対して踏み込みが足りない、日銀法を改正させてまで、政府の言う事を聞くようにさせるべきとの声がある。特にリフレ派と呼ばれる人たちにとり、日本経済回復のためという理由で、過度な金融緩和を求める声も強い。しかし、その前提となっているのはあくまで、それぞれの理論によるものであり、その結果について責任を持っているわけではない。
しかし、政策決定者にはその責任が求められるため、その効果について不透明であり、あまりにリスクの高い政策を取ることは困難である。現場にいて責任ある立場に置かれる決断と、その結果に責任を負う必要のない立場の人からの発言については、どちらが正しいかというよりも立場の違いを意識して聞く必要がある。
さらに、伝えることの難しさについて、須田委員は次のように述べている。
「いろいろな立場の全ての国民に対して、日本銀行は、政策を変更する・しないに係らず、なぜそう判断したのかについての説明が求められるわけですから、情報発信は決して簡単なものではありません。加えて、政策当局者の発言は、常に政策とリンクして受け取られます。それだけに発言のひと言ひと言が重い意味を持つということも、学者時代との大きな違いです。」
この発言については同じ政策決定者の立場にいる大臣クラスの政治家なども肝に銘じてもらいたいものである。大臣のような立場のある人間は、少なくとも公の席で発言する際には、発言のひと言ひと言が重い意味を持つため、失言は許されず、また失言があればそれ相応の責任を取ることとなるのは当然であろう。
「発言をする際には、市場の受け止め方、過去の言動や投票行動との整合性、政策的なインプリケーションなど、様々な要素を検討しなければなりません。このように、細かい言い回しまで慎重に吟味され、かつ中長期的な視点に立った政策委員の発言は、足もとの経済・物価情勢の変化に比べてトーンがmoderateで、ともすれば、見方が甘いのではないかといった批判に繋がることもあります。こうしたコミュニケーション・ギャップを埋めるためには、政策意図や判断の背景にある経済・物価情勢の見通しについて、前提条件も含めた丁寧な説明を地道に続けていくしかないと思っています。」
このあたりも難しい問題を含む。足もとの経済・物価情勢の変化に比べてトーンがmoderateになってしまっているとの批判については、須田委員自身が感じている部分なのであろうか。ただし、このあたりはそれぞれの委員によって見方に個性を出しても良いようにも思う。日銀が一丸となって政策を決定することも重要であるが、見方が均一化してしまうと、金融政策を多数決で決める意味そのものがなくなってしまう。それぞれの委員のバッググラウンドなどの違いをより反映した見方を示すことにより、説明がむしろわかりやすくなるという利点もあるのではなかろうか。
経済協力開発機構(OECD)の2009年12月時点での調査で、日本の資産を引いた純債務のGDP比は先進国で最悪水準になったことが明らかになった。1月に格付会社のS&Pは日本ソブリンのアウトルックをネガティブに変更したが、その理由は政府債務残高の対国内総生産比率の大きさや、民主党政権の政策では財政再建が予想より遅れるというものであった。
2009年度の新規国債の発行額は第二次補正予算後に53.9兆円に膨らみ、税収が36.9兆円規模になるとの見通しとなったことから、新規国債の発行額が税収を上回るという1946年以来、63年ぶりの異常事態となった。
また、2010年度予算では、景気低迷に伴い税収が37兆3960億円にまで落ち込み、また新規国債の発行額が44兆3030億円となり、当初予算段階から新規国債発行額が税収を上回る戦後初の事態となった。
2010年1月に欧州委員会がギリシャの統計上の不備を指摘したことが報道され、ギリシャの財政状況の悪化が表面化した。
格付け会社によるギリシャ国債の格付け相次ぐ引き下げからギリシャ国債が暴落し、ユーロ圏だけでなく、世界全体な株価下落へとつながった。このことから、ユーロ圏諸国の債務問題が注目され、ギリシャ以外にもスペインやポルトガルなどの国債も大きく売られたのである。さらに、外為市場ではユーロが対主要通貨に対して大きく下落した。
日本の長期金利は3月に昨年11月以来となる1.4%をつけてきたが、この背景にはギリシャの財政懸念などを受け、日本の財政悪化を意識しての海外ファンドなどからの仕掛け的な売りがあった。しかし、この債務悪化を意識した長期金利上昇は限定的であった。
ギリシャの財政問題を発端とした欧州諸国の財政問題を受けて、欧州連合は5月10日に過去最大規模となる最大7500億ユーロ規模のユーロ圏支援基金と証券買い取りプログラムを公表した。またECBが1999年のユーロ発足以来、初めて国債の買入を実施するなど異例とも言える政策が実施された。
鳩山首相の辞任により6月4日に民主党代表選挙が実施され菅財務相が後任に選出された。
日銀は2010年6月15日の金融政策決定会合において、成長基盤強化を支援するための資金供給の導入を決定。
米国でのデフレ観測も強まりなどから米10年債利回りは3%を割り込み、2年債利回りは過去最低水準まで低下した。この米国での長期金利低下が日本の長期金利の低下も促し、8月4日に日本の長期金利は2003年以来7年ぶりの1%割れとなった。
8月10日に開催された日銀の金融政策決定会合では、全員一致で政策金利の現状維持を決定したが、同じ日に開催された米FOMCでは、MBSの元本償還金を米国債(2年〜10年)に再投資する追加緩和策を決定した。
これを受けて外為市場では円高ドル安が進行。8月25日に長期金利は0.895%と0.9%を割り込んだ。
円高進行を受け、日銀に対して追加緩和圧力が強まり、8月30日に日銀は臨時の金融政策決定会合を開催し、新型オペの総供給額を20兆円から30兆円に増額し、新たに貸出期間6か月の新型オペ10兆円を新設した。しかし、新型オペの拡充策にとどまったことで、市場の反応は鈍く、円高進行にもブレーキはかからなかった。
長期金利は31日に再び1%を割込むが、それは一時的なものにとどまり、9月6日には1.195%まで上昇した。
9月7日の日銀金融政策決定会合後に発表された公表文には「必要と判断される場合には、適時・適切に政策対応を行っていく方針である」と追加緩和を示すものともなっていたことから、長期金利は追加緩和期待により再び低下基調となった。
FRBによる追加緩和観測が出てきたことや、米長期金利の低下などから外為市場ではさらに円高ドル安が進行したが、政府は9月15日に2004年3月16日以来となる為替介入を実施した。
また、日銀も10月5日の金融政策決定会合において追加の緩和策を決定した。金融緩和を一段と強力に推進するために、包括緩和策を決定したのである。これを受けて6日に長期金利は0.820%に低下したものの、それ以降は再び長期金利は上昇基調となった。11月3日のFOMCで、FRBは来年6月末まで米国債を6000億ドル追加購入するという追加緩和策(QE2)を決定した。期待先行で買い進まれていた米国債はその後、戻り売り圧力を強めることとなった。
また、外為市場では円高ドル安の動きも一服し、このため日経平均株価は11月18日に5か月ぶりに1万円の大台を回復。日本の長期金利は12月2日に1.2%台に乗せてきたのである。
11月30日の白川日銀総裁の講演後の記者会見において、長期金利に関する記者の質問があった。これに対して白川総裁は下記のように述べている。
「まず、米国の長期金利が足もと上昇している背景ですが、今年の夏場にかけて、米国経済の先行きについてかなり悲観的な見通しが広がり、そのもとで米国の金融緩和政策の強化という予想から、長期金利が低下しました。その時と比べると、米国経済に対する過度の悲観は幾分和らいでいる感じがします。それから、米国の追加緩和策が実際に決まり、これが実行に移されたということで、とりあえず長期金利が戻っているという面もあると思います。」
噂で買って事実で売るという相場格言にあるような動きとともに、市場参加者の米経済に対してのセンチメントの変化を理由としている。このあたりは頷けるものがある。
「日本の包括的な金融緩和政策との関係ですが、これはまさに包括という言葉で示しているとおり、全体として、パッケージとして理解して頂きたいと考えています。日本の長期金利は、米国の長期金利の動き等を反映して幾分上昇しているということだと思います。ただ、全体としてみた場合、まず銀行間の資金市場をみると、もともと極めて低い水準にあったTIBORや円LIBORなどのいわゆるターム物金利は幾分ながらさらに低下していますし、社債金利の対国債スプレッドも縮小しています。このように、長めの金利の引き下げ効果やスプレッドの縮小効果があらわれているほか、REITの価格も上昇しています。これらの動きは、民間経済主体の資金調達コスト全体の低下というルートを通じて、金融緩和効果を発揮していくと考えています。」
日本の長期金利の上昇理由を説明しているというよりも、包括緩和政策の効果についてあらためて説明しているようである。日銀が市場に介入することで、市場規模が限られる社債やREITが先回りして買われるのはある意味必然であろう。
「加えて申し上げますと、日本銀行は、時間軸政策を明確化しました。中長期的な物価安定の理解に基づき、物価の安定が展望できるまで実質的なゼロ金利政策を継続することを明らかにしています。講演の席でも申し上げたように、こうした政策は、この先、景気回復が進む局面において、長期金利を安定化させるという効果を期待できるということです。従って、足もとの長期金利は幾分上がっていますが、その部分だけではなくて、全体としてこの政策の効果を捉えて頂きたいと思っています。」
包括緩和のひとつの柱である時間軸政策であるが、今回はそれが打ち出されてからむしろ長期金利は上昇するという結果になっている。日銀による強力な時間軸効果は、過去にはいったん相場の急騰を招くこともあったが、その後の急反落の要因ともなっている。時間軸効果は長期金利をある程度のレベルで抑えつける要因ではあると思われるが、それを安定化させる要因となっているのかはやや疑問である。
さらに記者からは下記のような質問も出た。
「この2年債の利回りは、日銀がやや長めの金利を低めに誘導するという政策目的の対象になっている金利だと思います。先ほどはもう少し長めの金利についてコメントをされていましたが、こうした2年債金利の上昇は、あまり問題視されていないという理解で良いのでしょうか。」
これに対して白川総裁は下記のように返答している。
「金融市場は非常にグローバル化していますから、各国の国債の金利はグローバルな動きの中で変動しているという側面があります。これはFRBについてもそうですが、実際に国債の買入れを行った後は、金利が上昇しています。もっとも、だからと言って国債買入れの効果はないということではありません。やはり国債の買入れ自体は金利の低下要因になっていると思います。日本銀行の国債買入れも、長めの金利に働きかける中で、相応の影響を及ぼしていると思っています。」
過去の日銀の国債買入の効果のほどを詳細にチェックはしていないが、日銀による国債の買入は金利の低下要因というよりも、あくまで金利の上昇抑制要因として働いているように思われる。特に日本では毎年度、新規財源債が大量に発行されており、その消化先のひとつが日銀という構図になっている。これまでの日銀による国債買入が長期金利の低下を招くまでの状況には成り難いものの、国債需給に対してそれなりの影響があったことは確かである。
それよりも質問内容が2年債利回り上昇に関するものであったが、その部分についての明確な答えにはなっていないように思われる。特に短期市場参加者からは、レポのCGレートの上昇などが今回の中期債利回りの上昇要因との指摘もあった。ここにきて、日銀はさすがに積極的な資金供給を行ない、日銀の当座預金残高も20兆円超となったようであるが、こと2年債利回りの上昇については日銀の資金調節による影響も大きかったようにも思われる。
また、今後の日銀の追加緩和期待の後退も2年債利回りの上昇要因とみられるが、日銀が包括緩和で別枠で期間1〜2年の国債を買うことを決定し、さらに強力な時間軸政策をとって長めの金利に働きかけようとし、利回り低下を促進させようとしていた2年債あたりまでの金利がそれ以降、上昇してしまったというのはなんとも皮肉な結果ではあった。
29日の白川日銀総裁の講演では下記のような発言があった。
「FRBのバーナンキ議長は、先日決定した大規模な国債買入れによる追加金融緩和策について、これを量的緩和と呼ぶことは不適切であると言ったうえで、その狙いは、長めの金利を引き下げることにより緩和的な金融環境を実現することであると説明しています。」
FOMCの議事要旨における「longer-term interest rates」とは文面からみて、「長期金利」を指していると思われるが、白川総裁は「長めの金利」との表現を使っている。
日銀の「長めの金利」とはこれまでは通常、ターム物(期日物)金利のことを指していたはずである。ターム物金利とは、取引期間が2営業日から1年程度の期間の金利である。
しかし、10月5日に決定した包括緩和政策における国債買入れについて、白川総裁は次のようにも発言している。
「今回の資産買入等の基金による長期国債の買入れについては、これは短期金利の追加的な引き下げ余地が限られているという現在の情勢を踏まえて、長めの市場金利の低下を促すことを目的として実施するものです。」
日銀が基金で購入する国債は期間1〜2年物の国債であり、債券市場では中短期債に属する範疇であるが、短期債に対して長期債という表現もできるため、長期国債との表現もおかしくはない。しかし、その表現にはやや違和感も覚えた。それはこの国債買入の目的を「長めの市場金利」の低下を促すとの表現にかかっていたこともあった。
つまり、包括緩和で日銀の使った「長めの金利」との表現は、ターム物金利ではなく、2年あたりまでの金利を指していたとみられる。
さらにFRBの使った「longer-term interest rates」を長期金利とせずに、白川総裁は「長めの金利」との表現を使ったことにより、それが期間10年の、本来の意味での長期金利を指していたとみられる。長めという期間がいつの間にか延長されていた。
もちろん「長めの金利」なのだから、ターム物とか2年物とか10年物にこだわる必要はないのではと言われるかもしれない。しかし、市場参加者にとり日銀が言うところの「長めの金利」が具体的にどの期間の金利を指しているのかを探ることは重要である。
今後、日銀は「長めの金利」については具体的な期間を想定させず曖昧にさせて、その時々に応じてターム物を意識させたり、長期金利を意識させてくる可能性もありうる。そのため、市場は時々の情勢に応じてその期間を推測する必要があるかもしれない。ただし、できれば具体的な「長め」という期間を示してくれたほうがわかりやすく、さらに市場への働きかけもしやすいと思うのだが。
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