「若き知」
「過去データは一番下に移行しました」


2011.3.31「財務省のホームページがリニューアル」

 1月31日に日銀のホームページがリニューアルされたが、3月26日には財務省のホームページもリニューアルされた。情報入手先として特に金融関係者にとり、日銀と財務省のホームページは非常に重要であり、その使い勝手を良くすることは歓迎である。

 しかし、ここにひとつ大きな問題が発生している。日銀、財務省ともにトップページのアドレスに変更はなかったものの、個別のリンクが修正されてしまっているのである。つまり、参考資料として個別に「お気に入り」や「ブックマーク」していたもののリンクが切れてしまったのである。

 これについては財務省のホームページに「財務省では、平成23年3月26日(土)に財務省ホームページのリニューアルを実施いたしました。それに伴い、各URLが変更になりましたので、個別のページにリンクを貼っておられる方は修正していただきますようお願いいたします。なお、財務省ホームページのトップページのURLは変更ありません。」とのコメントがあった。ちなみにこのような文面は日銀のホームページにはなかった。

 もちろんあらためてその資料を探し出して、リンクを貼り直せば良いことではあるが、財務省や日銀のホームページではかなり奥にいかないと辿りつけない資料も多く、その修復作業はかなり面倒な作業になる。

 さらにもうひとつ問題がある。当面ではあると思うが、検索をかけてもそれがリンク切れとなってしまうのである。たとえば「国債発行計画」とグーグルで検索すると「平成20年度国債発行計画」が最初に出てくる(30日11時現在)。これをクリックすると、財務省のページではあるが、表示には「お探しのページは見つかりませんでした。」とある。つまり過去に探してリンクしていたものを、あらためて検索で探そうとしても見つからないのである。これも少し困る。

 特に官公庁系など公的な資料へのリンク先については、書籍などへの掲載も多いとみられ、その修正作業も必要になる。私も国債や日銀関係の本を出しているが、そのリンクも使えなくなる。

 また、このコラムの執筆などの原稿書きのために、財務省や日銀の資料を探すことも多いが、当分の間は探しづらい状況が続きそうである。リニューアルということで致し方ない面はあるかもしれないが、リンク切れを起こさないような手立てはなかったものであろうか。


2011.3.30「禁じられた日銀の国債引受の例外」

 昨日のコラムで、日本を含めて主要先進国では中央銀行による国債引受は禁じられていることを示したが、日銀については国債引受には例外が存在している。このため、日銀はすでに国債引受を行っており、日銀による国債の直接引き受けは問題ないと論じる向きもいる。

 日銀が保有する国債のうち償還期限が到来したものについては、財政法第5条のただし書にある「特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りではない」という規定に基づいて、特別会計の予算総則に記載され、国会の議決を経た金額の範囲内に限って、国による借換えに応じることができる。これは国債の日銀乗り換えとも呼ばれている。これはつまり、日銀が保有している国債が満期償還を迎えると、1年間に限って現金償還を延長し、現金の代わりに短期国債を発行し、それを日銀が引き受けるというものである。

 これについては次のような解説もある。日銀による国債の買入れは、日本の経済成長に応じて日銀券の流通を増加させるために行われているとも言える。このため、買入れにより購入された日銀保有の国債が満期償還を迎えた場合に、日銀券の流通量を維持するために、再び別の国債の購入する必要がある。これは日銀券の流通量を増加させるものとはならず、物価上昇を引き起こすおそれがないことから、事務効率に資するため市場を通さずに国債発行当局から直接国債を購入する場合がある。

 そしてもうひとつ、日銀による公債の引受けは財政法により原則として禁止されているが、政府短期証券(FB)については当該条項の適用を受けないと解されており、日銀法でも日銀がFBの引受けを行うことができる旨の条項が設けられている(日本銀行法第34条第4号3)。

 ただし、FBの発行が1999年度以降、原則として市場における公募入札により発行する方式に改められ、この公募入札方式への移行後は、日銀がFBの引受けを行う場合は、政府からの要請に応じて例外的に行う臨時引受けと、日銀の業務運営上必要がある場合に自らが行う引受けに限られることになった。

 このうち、政府からの要請に応じて実施する臨時引受けには、市場における公募入札において募集残額等が生じた場合と、為替介入の実施や国庫資金繰りの予想と実績との乖離の発生などにより「予期せざる資金需要」が発生した場合に限定されている。また、臨時引受けを行った政府短期証券については、可及的速やかに償還を受ける扱いとなっている。このように臨時引受けについては、中央銀行による政府向け信用のあり方の観点も踏まえ、一時的な流動性の供給となるような明確な「歯止め」が設けられている。

 以上のように、確かに日銀による国債引受については例外がある。しかし、両者ともに財政ファイナンスを目的としたものではない。日銀保有の国債償還分の1年間に限って現金償還を延長するのも、60年償還ルールに基づいた借換債の発行増による市中への影響を軽減させるなどの目的もあるものとみられる。さらに、FBについては「予期せざる資金需要」が発生した場合などにはむしろ短期的な措置としては必要なものであろう。それぞれ、あくまで短期的な措置である。

 このような例外措置が存在しているからと言って、日銀による復興国債の直接引受を行っても問題ないという意見はおかしい。繰り返すが、これらは財政ファイナンスそのものを目的としているものではない。もし、日銀が財政ファイナンスを目的とした国債引受を行うとなれば、その時点で市場参加者による国債への信用が失われよう。当然ながら長期金利にもその影響は及ぶであろう。そして、その歯止めが効かないと認識されると、歴史上何度も繰り返されたような悲惨な事態が起こりうる。それだけは絶対に避けなければならない。


2011.3.29「中央銀行による国債引受が禁じ手である理由」

 一部政治家などからの復興国債の日銀引受要請に対して、政府は否定的な見解を示した。これは当然のことだと思う。日本を含めた主要先進国は中央銀行による国債引受を禁じているが、これは主要国の歴史から得られた貴重な教訓によるものである。

 すなわち中央銀行が、いったん国債の引受などにより政府への資金の供与を始めてしまうと、その国の政府の財政規律を失わせ、通貨の増発に歯止めが効かなくなり、将来において悪性のインフレを招く恐れが高まるためである。それにより日本に対する国内外からの信認も失われ、格付け会社による日本国債の格下げも行われよう。国債への信認低下により日本の長期金利は大きく上昇し、これは日銀の金融政策などにより抑えられるものではなくなる。

 中央銀行による国債引受は麻薬に例えられることがある。いったん踏み入れてしまうと常用することになり、元には戻れず最後に身を滅ぼすことになる。先進主要国が中央銀行による政府への信用供与を厳しく制限しているのは、こうした考え方に基づくものである。

 たとえば、米国では連邦準備法により連邦準備銀行は国債を市場から購入する(引受は行わない)ことが定められている。また、1951年のFRBと財務省との間での合意(いわゆるアコード)により、連邦準備銀行は国債の「市中消化を助けるため」の国債買いオペは行わないことになっている。しかし、FRBは2009年3月から3000億ドル分の長期国債の買入れを行ない、同年10月には6000億ドルの追加購入を決定したが、これらは財政ファイナンスが目的ではない。

 また、欧州では1993年に発効した「マーストリヒト条約」およびこれに基づく「欧州中央銀行法」により、当該国が中央銀行による対政府与信を禁止する規定を置くことが、単一通貨制度と欧州中央銀行への加盟条件の一つとなっている。つまり、ドイツやフランスなどユーロ加盟国もマーストリヒト条約により、中央銀行による国債の直接引受を行うことは禁止されている。ECBは2010年5月より国債の買入れを行っているが、国債市場の安定化や市場機能の正常化を目的とした市場からの買入れである。

 イギリスではイングランド銀行による国債の引受は明示的には禁止されておらず、以前にはイングランド銀行による国債の直接引き受けが行われていた例はあるが、現在、直接引き受けは行われていない。イングランド銀行も2009年3月から国債買入を行ったが、その目的は中期的なインフレ率目標を達成するために、マネーと信用の供給量拡大をはかるためであり、やはり財政ファイナンスが目的ではない。

(「新しい日本銀行─その機能と業務」日本銀行金融研究所を参照)


2011.3.26「やっと始めるFRB議長の定例記者会見」

 24日に米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)は、バーナンキ議長が1年間に4回、連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に記者会見を行うと発表した。FRB議長による定例記者会見は1913年に創設されて以来初めてとなる。これにより、すでに記者会見が実施されている日銀やECBと足並みを揃えることとなる。

 議長会見はFOMC会合のうち最新の経済見通しを示す年4回の会合後に行われる予定となっている。今年は現地時間での4月27日、6月22日、11月2日となる。FOMC終了後、現地時間午後2時15分(日本時間28日午前3時15分)から始まる予定である。会見が行われる日のFOMC声明の発表時間は従来の現地時間午後2時15分から同零時半に繰り上げられることも発表された。また、FRBはウェブサイトを通じて会見の模様を同時中継するそうであるが、これは是非、日銀総裁の記者会見においても検討してほしい。

 FRBではこれまで金融政策に関してどちらかと言えば秘密主義が取られていた。しかし、特にバーナンキ議長に変わってからは金融政策に対しての透明性を高めようとしており、今回の記者会見の開始は透明度向上のためには最も重要なものとなろう。また、報道によるとイエレン副議長は昨年11月から、非公開の政策討議をどこまで公表するかに関する見直し作業を進めるグループを率いているそうで、さらなる透明性向上にむけて動いているようである。

 ちなみに米国のFOMCでは会合終了後に声明文が公表される。この声明文には、基本的な見解、政策決定内容、それに関する各FOMCメンバーの政策決定にかかる賛否といったものが記されている。FOMCの議事要旨は会合の約3週間後に、議事録は5年後に公表されることとなっている。

 日本では1998年4月1日の新日銀法の施行に伴い、金融政策決定会合が毎月1、2回程度の頻度で定期的に開催され、決定会合終了後は、決定された金融市場調節方針が発表されるほか、当日の15時半から総裁の定例記者会見が開かれ、決定事項の説明と記者との質疑応答が行われる。会合の約1か月後に議事要旨が発表され、さらに10年後には議事録が公表される。

 ECBの政策理事会の場合には、議事要旨および議事録は公表されていない。政策決定に関する各メンバーの投票結果についても公表されないのが原則となっている。これは各国を跨いでの中央銀行という特殊性も意識されたものと思われる。ECB政策理事会の会合終了後に、欧州中央銀行の総裁が記者会見を行っている。総裁は記者会見の冒頭において、ステートメントに基づいての政策決定内容とその基礎となった分析などを説明し、その後、記者との間での質疑応答が行われる。

 英国イングランド銀行の金融政策委員会(MPC)の場合は、会合終了後に政策決定が公表される。金融政策が変更された場合には声明が発表され、総裁の記者会見が行われているようである。会合の2週間後に議事要旨が公表され、政策決定に関する投票結果はこの議事要旨において公表されている。


2011.3.25「関東大震災の際の日銀の対応とその後」

 2011年3月11日の東日本大震災を受けて、週明けの14日の朝から日銀は動いた。まず、資金の出し手が資金放出を控える動きが広がり、コール市場での取引が成立しない状況がみられたことから、金融機関などの決済の安定性を確保するため、日銀は大量の資金供給を実施したのである。

 また、14日から15日にかけて開催予定の日銀の金融政策決定会合は、14日のみの開催とした。これはできるだけ早く結論を出すための措置であり、この決定会合で日銀は追加緩和を決定し、資産買い入れ基金を総額5兆円から10兆円に拡充した。企業マインドの悪化や金融市場におけるリスク回避姿勢の高まりが実体経済に悪影響を与えることを未然に防止することが目的であり、リスク性資産を中心に資産買入れ等基金を増額した。具体的には5兆円の増額分のうち、CP・社債等とETF、J−REITのリスク性資産を 3.5 兆円程度、長期・短期国債を 1.5 兆円程度買い入れたのである。 (大分における宮尾審議委員講演要旨より一部引用)

 それでは過去の災害時には、日銀はどのような対応をしたのか、関東大震災の時の状況を見てみたい。1923年9月1日に発生した関東大震災によって、関東地方の企業は壊滅的な打撃を受けた。日銀も被災したが、週明け3日には営業を再開し、焼損した紙幣の引換に応じるなどした。ただし、大蔵省印刷局も被災したため、紙幣不足が見込まれ、200円という高額紙幣を国債証書の用紙を用いて大阪で作られた。しかし、これは結局使われることはなかったそうである(日銀サイト「日本銀行 あの日の記録」より一部引用)。

 また、損害を受けた企業は震災前に振り出した手形を決済することができず、それを抱えた市中銀行も資金繰りに支障をきたすようになった。政府はこのためモラトリアム(支払猶予)を出して、9月中に支払期限を迎える金融債権のうち被災地域の企業・住民が債務者となっているものについては支払期限を1か月間猶予したのである。

   さらに9月29日に震災手形割引損失補償令が出され、震災地を支払地とする手形や震災地に営業所を有していた商工業者を債務者とする手形等(震災手形)については、特別に日本銀行による再割引、つまり、銀行がもっている震災手形を日銀に買い取らせた。これに伴い日銀が損害を受けた場合は政府が補償することになったのである。

 少し時が経過し、1927年1月に政府は日銀をはじめとする銀行の損失を補償するための国債を発行したうえで、震災手形の整理を進めることとし、震災手形二法が議会に提出された。しかし、震災手形の振出が鈴木商店に、また所持が台湾銀行に集中していたことから、政府資金による特定企業の救済につながるとして、議会での審議は紛糾した。この審議の過程で3月14日に当時の片岡蔵相が「東京渡辺銀行が破綻した」と発言してしまったのである。ところが、同行はこの日資金融通が可能となり実際には破綻は免れていた。

 この片岡蔵相の発言により、一般預金者の不安が増長され、東京渡辺銀行やその関連銀行のあかぢ貯蓄銀行が取付に合い、休業に追い込まれ、その後他の銀行にも取付が波及した。政府は事態を収束するため、4月22日から2日間銀行を臨時休業させることとしたほか、3週間のモラトリアムを公布した。この間、日銀は正規の手続きによらない特別融通などの緊急貸出を実施した。預金者の不安心理を一掃することを目的に、現金を銀行の窓口に高く積み上げるという単純ながらも有効な手段が取られた。

 この際に、短期間に大量の日本銀行券が市中銀行に対する預金者からの預金払戻し請求などに応じるために発行されたことから、銀行券の印刷が間に合わなくなり、やむなく裏面が白紙の200円の高額紙幣が発行された。これらの措置の結果、いわゆる金融恐慌はようやく鎮静化したのである。


2011.3.24「2010年12月末の国債保有者状況」

 23日に日銀は「資金循環統計(速報)(10〜12月期)」を発表した。これを元にして、2010年12月末時点での国債の保有者状況を集計してみた。国債(財投債を含む国債で国庫短期証券は除く)の2010年12月末の合計は727兆1166億円となった。

 この内訳を見ると、銀行など民間預金取扱機関(ゆうちょ銀行含む)は282兆7523億円となり全体に占めるシェアは38.9%となった。次に大きいのは民間の保険・年金(かんぽ生命含む)の176兆2619億円でシェアは24.2%であった。そして公的年金の74兆8489億円で10.3%、日本銀行の58兆514億円の8.0%、投信など金融仲介機関の40兆6497億円の5.6%、海外の35兆754億円の4.8%、家計の32兆9689億円の4.5%となり、その他として33兆8123億円で3.6%となっていた。

 9月末(速報)とのシェアを比較すると、それほど大きな変化はないものの、海外は9月の5.0%から4.8%、そして家計は4.7%から4.5%にそれぞれ小幅低下している。これを見てもわかるように、日本国債は、銀行・生損保・年金だけで7割以上を占めており、海外投資家によるシェアは5%近辺と低く、また個人の増加も頭打ちとなっている。なかなか国債の投資層の裾野の拡大は進んでいない。

 この状況はこの先も続くものとみられ、今後の新規での国債発行額に関しては、これら国内の機関投資家による国債への買い余力がどの程度あるのかにかかっているとも言える。

 参考までに速報値ベースで9月末から12月末にかけての残高に大きな動きがあったのは、銀行など民間預金取扱機関がプラス3兆9063億円、これに対して公的年金がマイナスの3兆1096億円となっていたのが目立った。


2011.3.23「復興国債の日銀引き受けの主張理由がわからない」

 19日のこのコラムでは産経新聞の『10兆円規模「復興国債」発行へ 全額日銀が引き受け』との記事に関して取り上げたが、今回の大災害の復興にかこつけての日銀による国債引き受け要請は、今後の日本の将来にも大きな影響を与える可能性があることで、注意して見ておく必要がある。

 今回、復興国債の日銀引受について報道およびツイッターなどでの推進派の状況を見ると、所謂、リフレ派と呼ばれる人たちに多い。ただし、リフレ派と言っても純粋に学術的なアプローチをしている人というよりも、デフレの原因は日銀の金融政策の失敗によるものであり、日銀法を改正し政府関与を強めさせ、さらにインフレターゲットを導入させ、日銀引受の大量の国債を発行した上で、デフレからの脱却をはかることを、今回の危機以前から目指そうとしていた人たちである。

 産経新聞で「復興国債100兆円も可能 日本再生のチャンスに変えよ」との記事を書いた田村秀男編集委員も、同様の発想であろう。また、国民新党の亀井静香代表も震災復興国債を発行し、場合によっては財政法第5条の但し書きで容認されている国債の日銀引き受けも検討すべきだと指摘し、さらに、田中康夫新党日本代表も国会で日銀による国債の引き受けを議決して100兆円規模の復興資金を調達すべきと述べたと伝わっている。民主党にはデフレ脱却議連というのがあるが、その関係者からも同様の発言もあったようである。

 今回の震災による被害が甚大なものであり、当然ながら復興のための財政支出は行われる必要がある。1995年の阪神淡路大震災の際には10兆円近くの被害を受け、3回の補正予算が組まれ、支出総額は3兆2298億円に上っていた。この際に8106億円の震災特例公債も発行された。今回、予想される復興費用はこれを大きく上回るものと予想される。

 このため、補正予算編成に伴っての財源問題が浮上するのは避けられない。これに際して、自民党の谷垣禎一総裁は震災の復旧・復興財源を確保するため臨時増税の時限的な立法措置を講じるよう提案したそうであるが、さすがにこのタイミングでの増税は厳しいのではなかろうか。

 民主党のマニフェストの主要4項目である子ども手当、高校授業料の無償化、農家の戸別所得保障の分を財源に充てる案も出ているが、22日の日経新聞では補正の財源に、基礎年金給付の国負担分の財源不足を一時的に埋めている「霞が関埋蔵金」を転用する案が政府内で浮上した。ただし、これについて野田佳彦財務相は「(補正予算の)規模が定まっていない時に、財源先行ではないと思う」と述べたと伝わっている。

 金額も定まっていないのにも関わらず財源の問題が出るというのも、ある意味、日本の財政状況が懸念されているためでもあろう。このような財源に関する動きは、なるべく国債発行に頼らずに、できるところからまず資金を捻出しようとの意向が働いているためであろう。日本の政府債務は危機的状況にまで膨らんでおり、国債発行を抑制しようとの一連の動きは当然のものである。

 しかし、それでも国債の増発は避けられないであろう。それは市場参加者も当然ながら認識しているが、日本国債が需給悪化観測で売られるような状況にあるわけではない。これは市場参加者の感覚が麻痺しているとかではなく、10兆円規模の国債発行で、すぐに国債需給が悪化するようなことはないとの認識が働いているためである。実際に短期国債などを絡めての増発であれば、国債需給に影響なく増発は可能であるとみられ、日銀の積極的な資金供給などがそれをフォローしてくるであろう。

 このように国債市場が落ち着いている中にあって、何ゆえに日銀引受の国債を発行しなければいけないのか、その理由が全くわからない。想像しうるに、これまで主張してきたリフレ政策をどさくさに紛れて進めてしまおうとの意識が働いていたのではなかろうか。しかも、一部新聞社では復興国債の日銀引受がまるで政府の意向かのように伝えられるという、報道による既成事実化を図ったような行為ははっきり言って言語道断である。

 財政法第五条には「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。」とある。いまさら主張するようなことでもないが、この財政法が生まれた理由をぜひ思い起こしてほしい。

 今回の復興国債の日銀引受を主張している向きは、震災という、この財政法第五条にある「特別の事由がある場合」を殊更強調しているようだが、それはまず復興費用に対して財源がなく、結果として大量国債発行に頼ることとなり、さらに市場はその国債を消化できうる環境にないという「特別の事由がある」ならば、そうせざるを得ないと思う。しかし、震災を特別な事由として、いきなり日銀の国債引受に結びつけて認めろというのは、この財政法の意味をわざと履き違えているとしか思えないのである。


2011.3.19「大きな問題を孕む日銀引受の復興国債10兆円との憶測記事」

 18日の産経新聞は、『10兆円規模「復興国債」発行へ 全額日銀が引き受け』、との記事をいかにもスクープのように出してきた。他紙にはそのような記事は見当たらない。しかし、この記事の内容を見ると、『東日本大震災を受け、政府は、復旧・復興のための補正予算編成に向け、主要財源として日銀が全額を直接引き受ける「震災復興国債」を緊急発行する方針を固めた。複数の政府筋が明らかにした。発行額は10兆円を超す見通し。日銀や与党と早急に調整に入り、野党も含めた合意を目指す。』とある(産経新聞)。

 この文書を読む限りにおいて、「複数の政府筋」とあるように、まるで政府の見解のような記事である。しかし、与謝野経済財政相が「日銀が直接国債を引き受けるのは法的に不可能」「資金調達に困難はない、日銀は特別なことする必要ないと断言できる」(ロイター)とコメントしたように、政府にそのような動きは見えない。また、 野田財務相も「日銀の直接引き受けは、慎重な検討が必要だ」とコメントした。

 産経新聞では、この記事を出す前に、「復興国債100兆円も可能 日本再生のチャンスに変えよ」との提言のような記事を田村秀男編集委員が書いていた。当然ながら、この提言と今回の10兆円の復興国債の記事には関連性があるとみられ、複数の政府筋とみられる与党系議員などの提言をあたかも政府の見解として記事に出した可能性があり、そうであれば、これは大きな問題である。

 そもそも、政府は現在、被災者支援や原発での放射能漏れを防ぐことに全力を尽くしており、被害額等の見積もり等はまだ具体的に行われるような状況になく、補正予算についてもその規模を計ることすら難しい状況にあるはずである。

 もちろん、今回の被害が甚大なものであり、当然ながら復興のための財政支出は行われるであろう。1995年の阪神淡路大震災の際には10兆円近くの被害を受け、3回の補正予算が組まれ、支出総額は3兆2298億円に上っていた。この際には、8106億円の震災特例公債も発行された。

 今回の東北関東大震災による被害総額は、阪神淡路大震災を上回る可能性がある。すでに地震や津波そのもので大きな被害が出ている上、福島の原子力発電所の動向次第ではさらに被害が拡大する恐れもある。

 このため、補正予算編成に伴い国債増発についても避けられないとみられるが、通常の特例国債の発行で十分賄われよう。与謝野経済財政相が指摘したように、資金調達に困難はない。むしろそれが困難であったら重大な問題である。

 産経の記事には「新規国債の発行も検討されたが、国債を市場に大量流通させれば財政事情が悪化する上、国債の格付けが下がり長期金利の上昇をもたらす危険性がある。」とあったが、むしろ財政法で禁じられた日銀引き受けでしか国債が発行できない状況であるとなれば、それこそ長期金利の急上昇を招きかねない。日銀による国債引受は財政ファイナンスと捉えられ、その行為そのものが格付け会社による日本国債の格下げをもたらすことも理解できないのであろうか。

 産経の田村編集委員は「政府はこれまで国民の預貯金を100兆円借り上げて米国債を保有している。政府は必要なら、日銀に米国債を担保として差し出せばよい。」とも提言している。政府保有の米国債はFBを発行した上で要するに借金して購入しているものであるが、いくら国民資金から借りているものだからといって、それを担保にしての新たな借金などという発想は、政府に対する信認そのものを失墜させるような行為である。

 産経新聞の今回の記事の背景には、記事の表現を見る限り、複数の政府関係者がいると推測される。このような記事を出すことによって、財政法で禁じられた日銀の国債引受を、危機に乗じて煽り立てようとしたのかもしれないが、それはあまりに危険な行為である。


2011.3.18「昨日、円が史上最高値を更新し、G7は協調介入で合意」

 昨日朝方、外為市場で大きな動きがあり、ドル円は一時76円台をつけ(日経新聞によると76円25銭近辺まで)、1995年4月の79円75銭を割り込み、円はドルに対し過去最高値を更新した。この際の為替市場の動きを見ると、ちょうど参加者が薄い時間帯にであったことで、ストップロスなどを巻き込んでの短時間での急激な円高となったとみられるが、その発端は、福島の原発絡みのニュースであった可能性がある。

 そのひとつは、ルース駐日米大使が福島第1原発の半径80キロ圏内に在住する米国民に対し予防的措置として、圏外への避難を勧告したこと(時事通信)。また、英外務省が日本にいる英国人に対し、東京と東京の北部からの退避を検討するよう呼びかけたこと(朝日)。さらに欧州委員が福島原発を制御不能と発言したと伝わったこと(ロイター)などがあった。

 現在の外為市場では、東日本大震災を受けて状況の悪化が伝えられると円が買われやすい地合いとなっている。これは、日本企業が手元資金を厚くするために海外資産の売却をするとの観測や、日銀が積極的に資金供給を行っているものの、対日銀以外での取引は閑散となっており、外資系金融機関はなかなか円資金が取りづらくなっていることなどが影響していた可能性がある。このために、原発絡みのニュースにも、外為市場では円買いで反応し急激な円高を招いたものとみられる。

 今回の円相場の最高値更新を受けて、日米欧の先進7か国(G7)の財務相・中央銀行総裁が日本時間の今日、緊急電話会談を行った。その結果、日本当局の要請に基づき協調介入に参加で合意し、さっそく午前9時から日本の財務省は介入を実施した。今回の協調介入には米、カナダ、そして欧州中銀が参加する。このG7での声明とともに介入を受けて、ドル円は79円台から一気に81円台をつけ、ユーロ円も111円台から114円近辺に跳ね上がった。この円高修正を受けて朝方に日経平均株価は9100円台を回復し、債券先物は売られて一時139円30銭近辺まで値を下げた。

 今回の円高についてはいろいろと要因もあったとみられるが、市場のセンチメントにおいて危機感が強まるほど円買いに走りやすくなっていたことで、今回の協調介入はそのセンチメントを変化させる可能性がある。今回の円高に対しては投機的な動きとの指摘もあったが、それよりも円高の動きを加速させたものはロスカットなり、ポジション調整なりの動きが主因であった可能性がある。しかし、今回の介入により円高の動きが多少なり修正されれば、そのような動きも抑えられるものとみられる。

 債券市場に関して今回の円高修正の動きは、株高などにより売り要因となるが、その影響は限定的と見ている。円高・株安により決算期末を控えての債券の益出し売りの懸念もあったことで、むしろそういった懸念が払拭される可能性もある。


2011.3.17「過度な懸念は必要ないが、適度な警戒も必要な債券市場」

 15日の日本の債券市場は、原発事故のニュースなどにより、日経平均先物が一時7800円まで急落したことから、債券先物は141円17銭まで上昇した。しかし、現物は10年債が前日比6毛強の1.145%までは買われていたものの、中短期債などは上値が重く、むしろ利回りが上昇していた。昨日実施された1年物の国庫短期証券の入札結果が悪かったことも、影響したようだが、これには手元の流動性資金を厚くさせるため、中期ゾーンにおいても換金化の動きが強まったことが要因とみられた。

 昨日16日に20年国債の入札が実施された。利率は2.2%、回号は125回と発表された。地震とその後の原発事故などにより、一部には入札延期の要望もあったと言われているが、むしろ入札を延期してしまうほうが影響も大きかったはずである。

 しかし、超長期債の購入層のひとつである生保については、今回の震災による保険料支払いなどが想定されるため、積極的には購入しにくい面もある。また、外資系金融機関は在日外国人の帰国も相次いでいるため、こちらも積極的に応札しにくい面もあろう。

 さらに銀行は昨日のように手元資金を厚めに確保する動きにより、超長期債に手が出しにくい上、決算期末も絡んで動きづらい。さらに、業者である証券会社も決算期末も絡んで、あまりリスクが取れる状況にない。

 このため今回の20年国債の入札については投資家がどの程度、札を入れてくるかどうかにより、その行方が左右されるものとみられた。結局、20年国債の入札は最低落札価格100円72銭、平均落札価格100円97銭となり、比較的無難な結果となった。テールは22銭と前回の14銭よりは伸びたものの、応札倍率は4.13倍と前回の2.64倍を上回った。どうやら一部の投資家が大量に購入したのではとの観測も出ていた。

 震災の影響による今後の日本経済への影響などを考えると、本来であれば国債主体に買いが入るはずではあるが、目先はある意味、リスク回避の動きが日本国債にも及んでいる格好となっている。そこに期末要因も加わり、債券相場そのものが不安定な展開となっている。日本の債券市場には、過度な懸念は必要ないと思われるものの、適度な警戒も必要な状況が続いていることは確かである。


2011.3.16「東日本大震災による債券市場への影響」

 1995年の阪神淡路大震災の際には10兆円近くの被害を受け、3回の補正予算が組まれ、支出総額は3兆2298億円に上っていた。この際には、8106億円の震災特例公債も発行された。

 今回の東北関東大震災による被害は、阪神淡路大震災を上回る可能性がある。すでに地震や津波そのもので大きな被害が出ている上、福島の原子力発電所の動向次第ではさらに被害が拡大する恐れもある。

 政府は今のところ原発の対応に追われているが、いずれ補正予算などの編成も行う必要が出てくることは間違いない。財源としては子供手当てや高速道路無料化実験費用などを回すことなども想定されているが、ある程度の国債増発は避けられないであろう。

 国債増発については、今回も無利子国債の発行や日銀引受による国債発行などの案も出ているようであるが、通常の特例国債の発行で賄われるものと予想される。これにより国債需給が悪化するようなことはないと思われるが、財政リスクが意識されやすくなり、超長期債などを中心として売り圧力が強まる可能性がある。生損保による換金のための国債売却が懸念されており、超長期ゾーン主体に投資家の買い余力が後退するであろう。また、原発事故の影響で在日外国人が帰国しており、外資系金融機関の動向にも影響が出てくる恐れもある。目先的には債券の換金の動きが強まることも考えられる。

 今後の景気の見通しについては、すでに大手自動車メーカーが操業を一時停止するなど各所に甚大な影響が出ている。1〜3月期における景気の回復期待は今後、大きく後退すると思われる。そのため、日銀は国債の買入れ増額を含めた基金オペのさらなる拡充などの追加緩和策を行うことが予想され、政府は積極的な財政政策を行う可能性がある。債券市場にとり、日銀の緩和期待と財政リスクというプラスとマイナスの両要因が混在することとなるが、国債需給に懸念が生じない限りは、財政リスクにより売られても限定的であろう。


2011.3.15「日銀は追加緩和を決定」

 14日の東京市場は、東電の計画停電の影響等も危惧されましたが、通常通りにスタートしました。債券市場はリスク回避の動きにより、買いが先行し債券先物は一時140円台をつける場面がありました。また、債券への買いの要因としては日銀による積極的な資金供給もあげられます。

 13日、日銀の白川総裁は金融機関などの決済の安定性を確保するため、大量の資金供給を表明しておりましたが、日銀は7兆円を即日で供給する緊急オペを実施しました。1回当たりの供給額としては過去最大規模となります。また、その後2回目となる即日スタートの共通担保資金供給オペ5兆円、さらに午後1時過ぎに共通担保資金供給オペ3兆円も行い、この日の即日供給額は合計で15兆円に達するなど積極的な対応をとっています。

 また、14日から15日にかけて開催予定の日銀の金融政策決定会合につきましては、14日のみの開催とし当初13時からとしていた開始時間を12時に早めました。これはできるだけ早く結論を出すための措置であるようで、これにより日銀の追加緩和観測も出ておりました。その観測通りに日銀は追加緩和を決定し、資産買い入れ基金を総額5兆円から10兆円に拡充しました。基金による買い入れ増額は、長期国債が0.5兆円程度増額、短国を1兆円程度、CP等を1.5兆円程度、社債等を1.5兆円程度、ETFを0.45兆円程度、J-REITを0.05兆円程度となります。

 また、日銀の金融政策決定会合の日程変更を受けて、14日に予定されておりました国庫短期証券(第178回)の入札は15日に延期されました。また、11日の夕方に開催予定でした国債市場特別参加者会合は14日16時からの開催となりました。こちらの会合でも今回の震災による影響等を含めて話し合いが行われたものとみられます。

 また、地震の影響により、11日の2時49分から利付国債の取引を停止していた日本相互証券は14日は通常通りに開始されました。11日の日本相互証券の措置についてはシステムに影響があったわけではなく、顧客である証券会社や銀行などの一部が地震の影響で大半が取引に参加できないことなどを考慮した措置であったようです。

 今回の地震の影響で、海外投資家による日本国債売りを懸念する声も一部にあったようですが、国債の需給に対しては現状はさほど懸念する必要はないとみられ、むしろ安全資産としての買いが入りやすい状況にありました。また、日銀による積極的な対応も日本国債にとっては特に中期債などへの買い材料となりました。

 今後は復興費用などを考えると財政を圧迫することも考えられますが、すぐに国債需給が悪化するようなことは想定しづらいです。むしろこれにより混迷を極めていた来年度の予算審議がスムーズに行くことも期待したいところです。


2011.3.13「ご心配をおかけいたしました」

11日の東北関東大震災の影響で、11日の「引け後の牛さん熊さん本日の債券」の配信ができず大変申し訳ございませんでした。また、ブログの配信もできない状況の中、12日にはブログに多数のアクセスをいただきました。また、ツイッター上でもご心配いただいた方々からの書き込みも多くいただくなど、皆様にはたいへんご心配をおかけいたしました。我が家は茨城にありますが、家族は全員無事であり、家屋の損傷も軽微でした。

あらためまして、被災された方々にお見舞い申し上げます。特に地震だけでなく津波での大きな被害があったことを、昨夜、やっと通じた電気によりテレビの画像で観たことで、今回の被害の大きさを実感いたしました。

現在、私は自宅にて「牛さん熊さんの本日の債券」と「コラム」をQUICK様より配信していただき、またメルマガにても配信しております。このため、11日も自宅2階の自宅にて作業をしておりました。地震が起きたのはちょうど「牛さん熊さんの本日の債券」を書いていた時間帯でしたが、大きな揺れとともに机脇の本棚が倒れそうになり、電気が切れたことでパソコンも切れました。部屋の中は落ちてきた本などが散乱し足の踏み場もない状況となりました。少し落ち着いてから下の部屋に行くと、家人と春休みで家にいた長女が外に避難しておりました。まずは玄関を開けて、出入口を確保したのことでした。一瞬、私を忘れていないか、と思いましたが、とりあえず呼んだとのこと。

それはさておき、牛熊が送れないことを伝えようとしたのですが、Xperiaでのネット接続も出来ない状況で、携帯電話も繋がりにくい状態のため、それよりもまず家族の安全と今後のライフライン遮断の影響を考えて、その対策を取ることを優先しました。ガソリンと食料の確保とともに次女を迎えにクルマで出かけましたが、道路の信号は消えておりました。それでも皆、慎重な運転となっており、またゆずり合いにより、特に危ないような状況にはありませんでした。

近くのガソリンスタンドは電気が落ちて販売できないとのこと。自家発電を持つスタンドに廻ってくれと言われましたが、ガソリンは多少、余裕もあるとみて食料を優先しました。しかし、近くのスーパーは電源が落ちて閉店しており、これは無理かと思っていたところコンビニは真っ暗な店舗の中、がんばって営業しておりました。実はこの点について家人と意見が別れており、コンビニは大丈夫という家人に対しPOSを使って管理しているのでコンビニも無理と言っていた私。しかし、結果は家人の意見通りでした。このコンビニでは緊急時の対応についてもしっかりできていたようです。

まだ地震発生からそれほど時間は経過していなかったのですが、すでに乾電池や水は売り切れ。ただし、パンなど食料品はその時点ではまだ豊富にあり、少なくとも3日間は5人で食いつなげる程度にパンとカップ麺を購入しました。また、チョコレートやウエットティシュも購入しておきました。3日あればとりあえずライフラインは復旧するとの話を以前から聞いており、それを信じることにしたのです。コンビニのレジでは、価格を確認する人、計算をする人と別れ、テキパキと対応しておりました。次第に長い列が出来ていたものの、それほど待たせられることはありませんでした。

ちなみにカップ麺についてですが、これには水とそれを沸かすものが必要です。電気が切れると同時に、水を汲み上げるには電気が必要となるため水道も切れます。我が家の地区も同様でした。しかし、我が家にはペットボトルでの飲料水の在庫が多少あり、また自宅には新築時にも非常時のために残しておいた井戸があります。水に関してはなんとかなる状態でした。ただし、我が家の井戸の水は水質が悪く、飲料水にはあまり適さないため当面は生活用水として使うことにしました。また、ガスについては都市ガスではなくプロパンガスであったことで利用可能で、お湯を沸かすことも可能でした。

コンピニでの調達後は次女を迎えに学校に向かいました。なんとか携帯メールが通じて次女を拾って、三女の学校に向かうかどうか検討しました。ただし、三女の学校は携帯保有が許されておらず、しかもスクールバスということで、行き違いになる懸念もあるため、自宅にて待つこととしました。しかし、これは結果的には判断ミスとなりました。そのまま三女を学校に迎えに行っていれば、なんとかバスに乗る前に拾えたのですが、結局、三女はバスで帰宅したものの、通常30分程度で着くはずが3時間以上も掛かってしまいました。主要道路は信号が消えていたこともあり大渋滞となっていたのです。

当日夜は三女の帰りを待って、100円ショップなどで購入していた電池式の小型の灯りを頼りにカップ麺での食事となりました。それ以降、12日の夜に電気が通じるまでは夜は真っ暗な状態で、水道も使えないという不便な中で、過ごしておりました。12日の夜に灯りが点いたときは、これで少し普通の生活に戻れると喜びました。今朝はパソコンも立ち上げて、ネットの接続も確認できました。ただし、いまだに水道の復旧の目処はたっていません。

東北地方などの被害に比べれば、全然たいしたことのないものではありましたが、あって当然のライフラインがなくなったときの厳しさを身にしみて感じました。今後、同様のことはあってはならないと思いたいのですが、自然災害ばかりは防ぎようがありません。今回の私の体験が多少なり非常時にお役に立てていただければ幸いです。そして、大きな被害に合われた地域では一刻も早い救助活動をお願いし、また原子力発電所についても適切な対応を望むばかりです。


2011.3.11「日本の短期債の海外保有は意外に多い」

 昨日のこのコラムにおいて、白井さゆり氏の「日本国債の外貨準備資産としての国際化も真剣に検討していくべきである」との提言を紹介させていただいたが、短期債に目を向けると意外に海外勢による購入額が多くなっている。

 財務省が8日に発表した1月の国際収支統計によると、海外勢による日本の短期債の買越し額が5兆2743億円となり、データが比較可能な2005年1月以降で最大となった(8日の日経新聞サイトより)。ちなみに中長期債については1月は6390億円の買い越しであった。

 地域別の内訳を見ると、短期債に対して中国は1713億円の売り越し、シンガポールも2529億円の売り越し、フランス3006億円の売り越し、アラブ首長国連邦3982億円の売り越しといった売り越しが目立つ中にあり、英国が7兆337億円もの買い越しとなっている。

 この場合の英国とは英国政府などからというよりも、ロンドンの金融機関を通じてほかの国・地域が購入していたのではないかと推測されている。また、2月28日に米財務省は2010年末時点の国別米国債保有高において、中国の保有高を大幅に上方修正したが、これは英国の保有高の一部を中国分として修正されたものである。これもあり、日本の短期債についても、英国経由で中国が購入しているのではないかとの観測もあった。

 英国経由での日本の短期債の購入の要因としては具体的な理由は掴みづらい。このためすべて憶測となってしまうが、たとえば、東南アジア諸国が為替介入を行って得たドル資金を円に変えて短期債に振り向けたとの見方もある。また、欧州諸国の財政悪化などを意識してリスク回避のための買いとか、資源価格の上昇により新興国の利上げなどを警戒して資金を一時的に退避させたのではないかとの見方もある。さらに1月末にかけてはエジプト情勢の悪化もあり、リスク回避を含めて中東産油国が大きく買い越した可能性もある。

 いずれにしても、現在の世界の金融市場にあって日本国債は安全資産として認識され、リスク回避により、資金が流入しやすくなっていることは確かである。外為市場で比較的円相場がしっかりしていることもひとつの要因であろう。外貨準備資産として日本国債もそれなりに意識されていることも考えられる。ただし、あくまで短期債主体であるため、一時的な逃避先と見ておく必要がある。

 ちなみに日銀が発表した2010年7〜9月資金循環勘定速報によると、2010年9月末現在の政府短期証券の保有者別集計では151兆5360億円のうち、銀行など民間預金取扱機関が77兆9131億円の51.4%、海外が20兆8414億円の13.8%、中央銀行が21兆1372億円の13.9%、投信など金融仲介機関が7兆6783億円の5.1% 、民間の保険・年金が3兆5788億円の2.4%、その他が20兆3871億円の13.5%で、このうち19兆5810億円が中央政府の保有分であった。

 短期債を除く国債で見ると同時点での海外投資家の保有割合は5.0%しかないが、短期債ではこのように13.8%のシェアとなり、比較的高いものとなっている。短期債については、FRBやECBも超緩和策を継続させていることで、利回りにおいて日米欧でそれほど大きな差はない。このため比較的安全資産と認識されている日本の短期債に資金が向かいやすくなっているのであろう。

 しかし、ここにきてECBやイングランド銀行が利上げを行う可能性が高まってきており、また、FRBも徐々に出口を意識した動きに入る可能性が出てきている。それに対して日銀の利上げについては、「水平線の彼方」にも見えてこないような状況に現在はある。これにより短期債の利回りの差が大きくなると、この流れに変化が起きる可能性がありうる。

 海外投資家による日本の中長期債への購入が手控えられているのは、やはり為替の安定などよりも利回りの差が大きい。このため米国債やドイツ連邦債並に、日本国債の利回りが上昇すれば、海外投資家による中長期債への購入も増加しよう。しかし、日本国債の利回りが上昇すれば、それは利払い負担の増加に繋がり、それは財政をより悪化させてしまう。中長期債の海外保有を増加させるのは、なかなか難しい問題である。


2011.3.10「白井さゆり氏の日本国債の国際化に関する記述」

 政府は8日の衆参両院合同代表者会議で、国会同意が必要な5機関7人の人事案を提示した。このうち今月末で任期の切れる須田美矢子審議委員の後任として、白井早由里慶大教授を充てるそうである。ただし、ねじれ国会ということもあり、国会同意が得られない可能性もあるが、この日銀審議委員については野党が反対する理由は特にないように思われる。

 白井早由里氏は慶應義塾大学総合政策学部の教授で、白井さゆりさんの名前で本なども書かれているが、元IMFのエコノミストで、ご本人のサイトによると専門は国際経済、マクロ経済、アジア経済とある。

 市場参加者がまず注目するのは、いわゆるタカ派なのかハト派なのかという点であるが、過去の論文などを、ざっと拝見してもはっきりしない。想像するに当面は中立的な立場をとり、執行部と歩調をあわせるのではなかろうか。

 白井さゆりさんのサイト(http://www.paw.hi-ho.ne.jp/~sshirai/srij_main.html)には過去の論文やコラムもアップされている。その中の「世界金融危機とG20金融サミットをめぐる経済外交」というワーキングペーパーにおいて、次のような記述があった。

 「日本国債は米国につぐ規模の市場をもっており、流動性も比較的高い。明確な将来の財政再建計画を提示し日本国債への信用を確保しつつ、日本国債の外貨準備資産としての国際化も真剣に検討していくべきである」

 日銀の審議委員はあくまで日銀の金融政策等にかかわる仕事であり、日本国債の発行等に直接関わるわけではない。しかし、審議委員となれば言動に注目が集まり、講演などの内容がマスコミで報じられることも多いなど注目度はより高くなる。

 その際に是非、日本国債の国際化についても積極的に提言してほしいと思う。日本国債についてはその95%を国内資金で賄われているということで安定消化されているが、今後はこれが大きなウイークポイントになりうる。つまり、国内資金で賄えなくなった際には、利払い負担の増加で財政をさらに悪化させることや、日銀引受などにより日本国債や円の信用度を低下させる懸念がある。

 それを防ぐためには国債発行額そのものを抑えるとともに、新たな買い手を見つけることも重要である。財務省もIR活動を行なっているが、なかなか海外投資家のシェアは伸びていない。長期金利の上昇を抑えながらも、海外の日本国債保有を増加させ、日本国債の国際化を可能にする何かしらの手立てが模索できないものか。そのあたりについても白井氏の提言等に期待したい。


2011.3.9「公的年金や郵政の国債運用が縮小している」

 3月6日付の日経新聞に「郵政、国債運用が縮小」との記事があった。これによると、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の運用資産は昨年12月末で計289兆円弱と、2009年度末に比べ4.5兆円減少した。このうち国債の保有残高は約215兆円と、こちらは9兆円もの減少となっていた。運用資産に占める国債の割合は2009年度末の76%から74%余りに低下した。

 日経によると郵政グループが保有する日本国債の残高は2007年度の227兆円弱と、国の発行残高の33%にも達していた。しかし、2008年度からは保有額が減少に転じており、今年度になり減少ペースが加速し、国債発行残高に占める割合は28%台に低下した。これは資金が大手銀行などに流出したことが大きな要因であった。また、一部資産を外債などリスク資産に振り向けたことも要因であった。

 さらに年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の三谷隆博理事長が、ブルームバーグ・ニュースのインタビューで、新年度の国内債の運用について「ネットで売り手になるだろう」と発言したことも伝えられた。

 ブルムバーグによると、GPIFは2001年の発足以来、日本国債の最大の買い手だったが、年金特会の資金不足に対応して、20110年2月に国内債券1800億円を売却したのを皮切りに運用資産の売却も始めて、2010年度は国内債券などで約4兆円を現金化した。ちなみに、2010年9月末のGPIF運用資産額は118兆円であり、内訳は国内債券が82兆3966億円で70.04%、国内株式が12兆6145億円で10.72%、外国債券が9兆5981億円で8.16%、外国株式が11兆4634億円で9.74%となっている。

 日本国債はその95%を国内資金で賄われている。その中でもゆうちょ銀行、かんぽ生命、そしてGPIFによる保有額は大きな割合を占めていた。しかし、その国債保有額がどうやら頭打ちになってきたことが伺える。しかも、新規国債発行額は来年度以降も50兆円規模で発行され続ける見込みにも関わらずである。

 現在のところゆうちょ銀行とかんぽ生命からの資金の流出先である銀行預金が増加していることや、企業への貸し出しが伸びないことなどで、銀行などにより国債残高の増加分が賄われている状況にある。つまり多少でも景気が回復し、企業が借入を増やすなどした際には、新たに国債を買い入れる原資そのものが枯渇する懸念がある。

 これまでは預貯金、生保、年金資金の伸びにより、増え続けてきた国債残高は国内資金で賄えられていた。しかし、その買いの大手であるゆうちょ銀行、かんぽ生命、GPIFの国債保有額が頭打ちになってきているという事実は、国債を国内資金で賄えるには限界が近づいてきていることを示すものでもある。

 これを見ても新規国債の発行額を早期に抑制しなければ、いずれ国内資金で国債が賄われなくなるという事態が必ずやってくる。財政再建はやはり急ぐ必要がある。


2011.3.8「日本人は財政破綻へと向かうのか」

 6日のNHKスペシャルは「日本人はなぜ戦争へと向かったのか」の第4回「開戦・リーダーたちの迷走」であった。毎週、NHKスペシャルを見ているわけではないが、高橋是清などを調べていた関係で戦前の政治・経済状況に関心があったこともあり、この特集は見ていた。

 6日の「開戦・リーダーたちの迷走」を見て感じたのは、当時の政治の状況が現在と非常に似通っているという点であった。当時の各組織のリーダーたちは、「戦争に勝ち目がないことを知りつつも、戦争できないと言うことが自らの組織に不利益を与えると考え、言い出すことができない」という状況にあった(NHKの番組サイトより一部引用)。

 当時の日本の国策決定の場は、全ての組織の代表者が対等な権限を持つ集団指導体制となっており、全会一致が建前であったため、常に曖昧で玉虫色の決定が繰り返されたという。「日米交渉が暗礁に乗り上げ、妥結の見通しがみえない中、首脳部は、国力判断、すなわち国家の生産力・戦争遂行能力のデータを総動員して、譲歩か、戦争かの合議を行う。結論は、各組織の自壊を招く戦争回避より、3年間の時間を稼ぐことのできる開戦の方に運命を賭ける。」(NHKの番組サイトより一部引用)。

 これには軍事力で優っていたロシアを日露戦争で短期決戦で破ったことなども影響していたのかもしれない。しかし、対米戦争はあまりにリスクが大きいことは当時の日本のリーダーたちも良く知っていたようである。ところが、国家の大局的な視野に基づくことなく組織利害の調整に終始したことで、最後まで勇気をもった決断を下すことはなかった。つまり流れに身を任すしかなかったのである。

 あの戦争がなぜ起きたのか、それにはいろいろな背景はあろう。しかし、戦争を決断したのは為政者たちである。そしてその最大の犠牲となったのは国民であった。NHKは自戒も込めて当時のマスコミへの批判も行った。マスコミも戦争を煽ったことは間違いないが、やはり為政者による責任は大きかったはずである。

 そしてこのNHKスペシャルの内容は、なぜ開戦に向かったのかという理由を探るものではあったが、それを伝えることにより現在の政治状況を痛烈に批判しているようにも感じた。意図していたのかどうかはわからないが、現在の日本を取り巻く情勢への警告でもあると思われた。今回のNHKスペシャルの感想を番組終了後にツイッターで書き込んだところ、同様の印象を持ったとの書き込みが多数寄せられていたことからも、そう感じた人も多かったようである。

 つまり「日本人はなぜ戦争へと向かったのか」というタイトルではなく、「日本人はなぜ財政破綻へと向かったのか」というタイトルに置き換えても良いような内容になっていた。あの時と同様に大きな危機が迫っている。しかし、現政権も債務悪化という危機を目の前にしながらも、国家の大局的な視野に基づくことなく、組織利害の調整に終始している。

 国債が国内資金で賄えるのはそろそろ限界に近いことは、現在のリーダー達も良く理解しているはずである。そのことを真剣に国民に問いかけて、財政危機を回避しうる道を早期に模索する必要がある。しかし、財政再建そのものが「自らの組織に不利益を与えると考え、言い出すことができない」状況にある以上、気がついた時には取り返しようのない事態となっている可能性がある。それをNHKスペシャルは示していたのではなかろうか。


2011.3.7「先週の債券相場の動きと今週の予想」

先週の動き
 2月28日の債券先物の寄り付きは、25日比14銭高の139円73銭と買戻しが先行した。しかし、1日の10年国債入札控えて買い方も慎重な中、利益確定売りなどに押され、引けは139円54銭となった。
 1日に実施された10年国債の入札は、利率が1.3%に引き上げられたにも関わらず、最低落札価格は事前予想を下回り、テールも9銭と前回の6銭より伸びて、総じて低調な結果となった。この入札結果を受けて債券先物は139円28銭まで下落し、イブニング・セッションでは139円20銭まで値を下げた。
 ところが中東・北アフリカ情勢の緊迫化による原油価格の上昇が意識され、1日の米株式市場は大きく下落し米債は買われ、2日の債券先物は日経平均の大幅下落も手伝い139円78銭まで買い進まれた。しかし、2日の米国市場では米雇用の改善期待や米株の上昇を受けて、米10年債利回りは再び上昇し、3日の債券先物は売りが先行し139円52銭まで下落した。
 3日のECB理事会後の会見でトリシェ総裁は4月の利上げの可能性に言及した。また、米国では雇用の改善を示す経済指標を受けて米債は下落し、米10年債利回りは3.56%近辺に上昇した。これを受けて4日の債券先物は一時139円19銭と1日のイブニングでつけた安値を下回るが、現物に押し目買いが入ったことで下値も限られた。

今週の予想
 複数の波乱要因があり、先行きの情勢が読みづらくなっている。中東・北アフリカ情勢についてはリビアのカダフィ政権の動向とともに、それがサウジアラビアに波及するのかが大きな焦点となる。いずれカダフィ大佐が退き、サウジへの影響も限定的とみているが予断は許さない。原油価格については、背景に需要増があり高値圏での推移が続くと予想している。
 ECBは原油など商品価格の上昇を受けた物価上昇により、金融引き締めの方向に舵をとりつつあり、これはFRBの金融政策にも影響を及ぼす可能性がある。米国では雇用統計など含めて、景気の改善を示す指標が出てきており、物価の上昇と景気の回復への期待は米国債券市場にとってはマイナス要因となろう。円債は再び米国債の動向の影響を受けやすくなっており、引き続き米債の動きに注意が必要となる。
 国内では来年度の予算関連法案を巡っての与野党の攻防が続いている。前原外相の辞任によりさらに混迷を深める可能性がある。現状、これによる債券市場への影響は小さいものの、こんごの動向次第では財政健全化に向けた動きが頓挫する可能性もある。また、特例公債法案の成立の目処が全く立たないとなればデフォルトリスクも高まる懸念がある。このため政治動向にも注意が必要か。
 国債入札は8日に30年債、10日に5年債が予定されており、この動向にも注意したい。債券先物3月限は10日が最終売買日となることで、ロールオーバー主体の動きとなりそうである。

予想レンジ 1.25〜1.40%


2011.3.5「日本の民主党議員がルービン回顧録に傍線をつけた箇所とは」

 3月2日付の日経新聞一面の「予算案修正か補正不可避」との記事中に、日本の民主党議員の間で、クリントン政権下で財務長官を務めたロバート・ルービン氏の回顧録が広く読まれているとあった。さらに議員が傍線をつけて読んだ箇所があるそうである。

 2月23日のこのコラムで、もし新年度入りしても特例公債法案の成立の目処がまったく立たないような状況に追い込まれた際には、どのような状況に陥るのか、クリントン政権時の米国がひとつの事例として参考になるかもしれないと書いた。

 私も当時の様子が知りたいと実は関連の文献を探していたのだが、なかなか見当たらず、この本ならば記述がありそうと目星をつけたのが「ルービン回顧録」であった。ただし、本体価格が3200円と高価であり、古書店を探したが見つからず、結局、少し日にちをおいてから、アマゾンで定価で購入した。痛い出費であった。

 それはさておき、「ルービン回顧録」のどのあたりの部分に民主党議員も注目したのかを今回は探ってみたい、その前に23日のコラムにも書いたが、当時の様子を簡単に見てみたい。

 「1995年、クリントン政権と野党共和党の対立は激しくなり、その結果、米国での新年度開始の10月になっても予算案が可決できなかった。このため政府職員を一時帰休させ政府機関を数週間閉鎖するなど、政府が11月と12月に二度機能停止に追い込まれる事態となったのである。この際に悪役となってしまったのが、共和党のギングリッチ議長であるが、議長は徹底した歳出削減で均衡財政を目指そうとしたことで、クリントン政権も結局、それに歩み寄り歳出削減と一定の減税がはかられ、その後の財政再建に繋がる。」

 「ルービン回顧録」(日本経済新聞社刊)によると、1996年1月末には、ついに借金のあてがなくなり、3月1日に社会保障年金受給者と退役軍人に対する30億ドルの給付が滞る見込みとなった。しかし、これを前に政府のデフォルトは退職者にも契約業者や債務保有者にとり良いことではないとの声が共和党支持層からも出てきた。そこに格付け会社ムーディーズによる米国債の格下げ警告があり、デフォルトのもたらす懸念が強まったのである。

 「より重要な勝因は、政治と世論の流れの変化かもしれない」とルービン氏は記述している。

 「11月と12月の政府機能停止が非常な不評を買ったあと、デフォルトを招く政治戦略は非難の的となり、ほとんどの人がこの件から手を引いた」、そして「マスコミもデフォルトが招く結果のほうに注目を向けるように成り、事態をより批判的に報道し始めた。ある時点で、反対勢力は争いを放棄し、段階的に譲歩して、ついに債務枠の拡大を認めた。」(「ルービン回顧録」より引用)。

 日本の民主党議員が線を引いた箇所はこのあたりではないかと想像される。2011年度予算は1日ではなくどうやら2日に参院が受け取ったようだが、いずれにせよ年度内成立は確定的だが、特例公債法案を含めての予算関連法案成立の目処はたっていない。むしろ与野党の攻防は激しくなるばかりである。

 果たして日本でも民主党議員がルービン回顧録を読んで期待したように、政府閉鎖が起きるようなことになり、デフォルトの心配が出てくれば、国民からの自民党など野党への反発が強まり、特例公債法案の成立を可能にするのであろうか。

 しかし、ルービン回顧録で学ぶべきものはそのような箇所ではないはずである。クリントン政権が行った財政赤字削減や財政均衡こそ見習うべきところではなかろうか。クリントン政権下での財政再建は景気回復などがあり、タイミングが良かったからとの見方もあるかもしれない、しかし、そのタイミングを活かせたのも財政再建に向けた強い信念があったればこそである。


2011.3.4「日本が財政問題で学ぶべき、ポアンカレの奇跡」

 「ポアンカレの奇跡」というのをご存知であろうか。ちなみに「ボンカレーの奇跡」ではない。私はボンカレーの登場はカップラーメン同様のインパクトがあったが、それはここでは関係ない。ポアンカレの奇跡である。

 「ポアンカレの奇跡」をグーグルで検索してもあまりヒットしない。経済史や財政問題などを専門とする方にとり、知っていて当たり前であったかもしれないが、私も詳しくは知らなかった。しかし、それを調べてみると今の日本が置かれた財政事情、そして今後どのようなことが起こりうるかを示してくれる。今、日本人が知っておくべきは「ポアンカレの奇跡」ではないかとも思う。

 前置きが長くなってしまったが、ポアンカレの奇跡のポアンカレとはフランスの政治家である。ここでは富田俊基氏の「国債の歴史」を参考に、第一次世界大戦当時のフランスの様子から探ってみたい。

 第一次世界大戦中のフランスはドイツよりも激しいインフレに見舞われたものの、フランス国債の利回りは比較的安定していた。ドイツからの賠償金により国債の償還資金が賄えるとの期待があったのかもしれないと富田氏は指摘している。また、その賠償金をあてにして放漫な財政運営が行われていたが、ドイツからの賠償金が滞るとの観測により、フランス通貨であるフランが売られ、国債価格も下落した。国債発行が困難になると、政府は中央銀行からの借入を増やしたことで、それがさらにインフレとフラン安を加速させたのである。

 1924年にポアンカレ首相は財政再建、金利の引き上げ、為替介入を行うが効果は一時的であった。左翼勢力が資本課税を導入しようとしたところ資本逃避が起き、さらにフランや国債が下落した。1924年6月の下院選挙で政権が後退しポアンカレ首相はいったん退くこととなるが、1925年6月に3%の国債は7%にまで上昇した。

 財政赤字を削減しても、過去に発行した国債の借り換えが必要となり、借換債の発行が困難となり、償還財源は中央銀行に依存せざるを得なくなった。これがさらにフラン安と金利上昇をもたらした。1926年には物価上昇率が年率で300%を突破して、当時のフランスはハイパー・インフレーションの瀬戸際まで追い込まれたのである。

 このフランや国債の危機の要因として、政府債務に対してのマネタイゼーションの圧力があった。さらに当時、ケインズはフランの下落に対し「赤字予算が崩壊の最初の原因であっても、本当の転落がやってくるのは、一般国民の信認がなくなった時である」と指摘している。国民の信認低下も大きな要因であった。

 しかし、フラン危機が最も深刻となった際に再度登場したのがポアンカレである。ポアンカレは蔵相も兼務し、組閣に際して自ら含めて6名の首相経験者を入閣させるなど、資本課税の導入に反対したすべての政党による挙国一致内閣を成立させた。これを受けてフラン安は急速に沈静化した。国民の信認が戻ってきたのである。

 ポアンカレは国債のマネタイゼーションを行わないという姿勢を明確に打ち出し、フランや国債の信認を取り戻した。資本課税を否定し抜本的な税制改革を行ない、高所得者の所得税率の引下げ、相続税の軽減とともに間接税の引き上げを行った。またフランス中央銀行は公定歩合を引き上げるなどフラン安定化策が実施された。大量に発行されていたディフェンス・ビルと呼ばれた政府短期証券の整理も進めた。さらに政府債務の利払いや償還、借り換えを行うため独立した機関も設置したのである。

 これら一連の施策により、フランス国債の信認が回復し、通貨であるフランも上昇した。これが、ポアンカレの奇跡と呼ばれたものである。

 これから教訓として学べるのは、国債の急落を回避するには国民の信認を維持させることが重要であること。さらに国債のマネタイゼーションは結果として国債や通貨の価格をさらに下落させる要因となること。これは中央銀行による国債引き受けを禁じた大きな理由である。そして、最終的に国債や通貨の信認を取り戻すには、強い指導力を持った政権による抜本的な改革が必要であることなどである。

 現在の日本の財政事情や政府の動向を見る限り、いずれ国債の新規発行が難しくなり、その結果として日銀による国債の引き受けが実施され、国債や円の信認低下により、急激や円安や金利上昇を引き起こすことで、ハイパー・インフレーションの瀬戸際まで追い込まれるような危機的状況となる可能性のほうがむしろ高い。ポアンカレの奇跡をひとつの教訓として、危機を回避する手立てを探ることが重要である。現在のように金利や為替が落ち着いており、危機が表面化していない時にこそ早めに手をつけるべきものである。

(富田俊基著「国債の歴史」東洋経済新報社より一部引用させていただきました)


2011.3.3「インフレ目標には財政規律もセット、イギリスの事例」

 1997年5月にイギリスではブレア政権が誕生し、ブラウン財務相は就任わずか4日目に金融政策の大転換を行い、財務省から中央銀行であるイングランド銀行に金融政策の決定権を移し、独立性を高めるという大胆な改革に踏み切った。

 ブレア政権によるイングランド銀行の改革により、イングランド銀行総裁、副総裁、理事、外部らの委員で構成される金融政策委員会へ政策運営権限が委譲され、外国為替市場介入権限を部分的にイングランド銀行へ委譲され、準備預金制度の法制化、銀行監督権限をイングランド銀行から分離し、新設された金融サービス機構(FSA)へ移管し、そして国債管理業務は財務省へ移管されたのである。

 金融政策に関しては、インフレーション目標の土台が築かれた。インフレーション目標は政府が設定し、イングランド銀行はこれを達成するために必要な政策手段を決定するという役割となった。また、量的緩和策の導入やその拡大にあたっても財務相の了承が必要となっている。

 しかし、この改革の際には「財政安定化規律」がセットとして設けられていることに注意したい。1980年代後半から90年代前半にかけてのイギリスでは財政赤字の拡大、公的債務の累増が生じた。こうした状況に陥った最大の要因は、明確で透明性の高い財政政策の目標がなかったことにあった。このためブレア政権下において、1998年に財政安定化規律(The Code for Fiscal Stability)が議会の承認を経て制定されたのである。

 ちなみにイングランド銀行による国債の引受は明示的には禁止されていないが、実施されていない。同じ欧州のドイツやフランスなどはマーストリヒト条約により中央銀行による国債の直接引受は禁じられている。言うまでもなく日本でも財政法により日銀の国債引き受けは禁じられている。

 民主党の一部議員やみんなの党あたりから、日銀法改正を求める動きがある。そのなかには、インフレーション目標とともに日銀による国債の直接引き受けを議論すべきとの声も出ているようだ。

 しかし、もし日本でもイギリスのようにインフレーション目標を導入するとするならば、ブレア政権下で行ったように規律の高い財政ルールもセットにしなければならない。財政規律を重んじた上でこそインフレ目標導入の意味があり、インフレーション目標と財政規律を脅かすような国債の直接引き受けのセットなどが許されるはずもない。


2011.3.2「米国の暫定予算を巡る攻防と日本の財政問題」

 日本では来年度予算案の年度内成立が確定したものの、特例公債法案など歳入に関する予算関連法案については、衆院再可決に必要な三分の二の議席に届かない状況にあるため年度内に成立しない可能性が極めて高まった。今後の予算関連法案を巡る与野党の攻防に注目したいが、与党民主党、野党自民党ともにお互いの政策批判が中心であり、肝心の財政問題は棚上げされている。

 これに対して米国では財政再建を巡って与野党が対立している結果、2011年度の暫定予算が3月4日に期限切れとなり、連邦政府機関が閉鎖される可能性が出てきた。米国の与党民主党と野党共和党もお互いに非難し合う状況となっているが、それは歳出削減を巡る攻防である。

 共和党が多数派の下院は低所得層向け補助金や教育、治安分野など610億ドル以上の歳出削減策を盛り込んだ2011年度予算案を本会議で可決した。しかし、今週審議に入る上院の民主党は強く反対しており、オバマ大統領も下院法案には拒否権を下す構えである(2月28日付読売新聞より)。

 もし3月4日に期限切れを迎える2011会計年度の暫定予算が延長できなければ、連邦政府機関は1995〜96年以来となる閉鎖に追い込まれることになる。1995年にクリントン政権と野党共和党の対立は激しくなり、米国での新年度開始の10月になっても予算案が可決できなかった。このため政府職員を一時帰休させたり政府機関を数週間閉鎖するなど、政府が11月と12月に二度機能停止に追い込まれる事態となった。

ロイターによると、米下院は1日に2週間の政府資金を確保するための「つなぎ法案」を335票対91票で可決したと伝えられた。上院も直ちに延長を認める見込みであり、政府機関の閉鎖はいったん回避される見込みだが、わずか2週間の延長しか認められないことになる。

 日米ともに予算に絡んで、ねじれ国会にともなう与野党の攻防が続いている。しかし、日本の場合には最重要事項であるはずの財政再建に向けての与野党の論点の違いが明確ではない。英国ではすでに軸足を財政再建に移している。米国も財政再建が中心課題となっている。しかし、先進国中最も債務状態の悪い日本では、足の引っ張り合いをするだけで、肝心の財政再建問題は二の次になっているという情けない状況にある。これは国民の意識の問題なのであろうか。


2011.3.1「特例公債法案の成立の目処立たず、財政への危機意識強まるか」

 来年度予算案は衆院本会議で民主、国民新両党の与党などの賛成多数で可決され、参院に送付された。来年度予算案は、憲法の規定により参院送付後30日で自動的に成立するため年度内成立が確定する。

 しかし、特例公債法案など歳入に関する予算関連法案については、衆院再可決に必要な三分の二の議席に届かない状況にあるため、民主党は採決を先送りする方針と伝えられている。これにより、特例公債法案が年度内に成立しない可能性が極めて高まった。これまでこのコラムでは、特例公債法案が年度内に成立しなかった際の資金繰りやその影響について見てきたが、これをきっかけとして国民による財政危機への認識を高めることはできないものであろうか。

 6月あたりまでの猶予期間はあるにせよ、特例公債法案が成立しない限りはその後の資金繰りについてはまったく目処は立っていない。国債の来年度の総発行額は約170兆円の予定となっている。特例国債が発行できずともそれを後回しにしておけば、国債入札さえ淡々とこなせば資金繰りには問題はないとの見方もあるかもしれない。しかし、財政規律上、国債の借り換えのための資金などを一時的にせよ予算に回すなどといったことが許されるはずもない。もちろん埋蔵金などで一時的に補うこともできない。来年度予算で資金をやり繰りできる金額は予算で定められた20兆円でしかない。

 現時点では特例公債法案が成立する見込みは全くなく、そうとなれば、財務省証券と一時借入金による20兆円以内のやり繰りそのものも行って良いものなのかという問題も出てこよう。つまり、借金の目処が全く立たない状態で新年度入してしまう可能性がある。これは国として本来非常事態のはずであるが、国民による危機感は薄い。そうは言っても何とかなるだろうとの意識が強いのであろう。

 ここは無理に資金繰りなどをせず動向を見守ることで、リスクは伴うが国民の危機意識を高めさせた方が良いのではないかとの声も出ている。現在の日本の財政の状況では、いずれ新規財源債の発行そのものが困難になる危険性がある。そうなった際には、どのような事が起こりうるのかを今回示してくれるかもしれない。たいへんなリスクを伴うが現状、ショック療法も必要なのかもしれない。それにより国民の危機意識が高まり、その上で本格的な財政再建が行われるのであれば。


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