2013.4.30「異次元緩和後の日本の投資家の動き」

 4月25日に財務省は4月14日〜20日の対外及び対内証券売買契約等の状況を発表した。これによると、この期間の対外債券(中長期債)投資は8626億円の資本流入超となっていた。つまり日本の投資家は外債を買っていたのではなく、差し引き8626億円売っていたということになる。その前の週も3328億円売り越しとなっており、これで6週連続の売り超しとなっていた。

 4日の異次元緩和により、日銀は国債のイールドカーブ全体の低下を促すことを目的に、長期国債の保有残高が年間50兆円に相当するペースで増加するよう買入を行う。長期国債の買入対象を40年債を含む全ゾーンとし、買入の平均残存年数を現状の3年弱から国債発行残高の平均並みの7年程度に延長する。この結果、毎月の長期国債のグロスの買入額は7.5兆円規模(これまでは3.8兆円程度、4月の買入予定額は6.2兆円)になる。2013年度の長期国債のカレンダーベースの発行予定額は126.6兆円となっており(年間発行額156.6兆円から短国の30兆円を差し引いたもの)、7.5兆円の12か月で88.7兆円をグロスで日銀が購入するとなれば、毎月の発行額の70%を買い入れることになる。

 これまで超長期債の主たる買い手となっていた生保・年金、さらには一部海外投資家等は利回りの低下もさることながら、流通市場の縮小もあり、今後は日本国債への投資を縮小することが予想され、欧米の海外市場では思惑的な買いも入っていた。しかし、現実には日本の投資家は外債を買うどころか、むしろ欧米の債券の利回り低下で利食い売りを出していたと思われる。

 いわゆる機関投資家は、そう簡単に年度の運用計画を修正することはできない。4月4日の異次元緩和を受けて、すぐに外債投資の比重を高めると言った動きはしてこない。ただし、債券市場に動揺が見えるなどしたことで、今年度の運用計画そのものを白紙にし、あらためて計画の練り直しを行ったところも多かったようである。

 すでにいくつかの生保の運用の見直しが発表されているが、そのほとんどは確かに国内債を抑制し、外債を積み増すというものではあるが、それほど大きな修正ではなかった。これは為替リスク等もあるが、そもそも欧米の主要な国債利回りがかなり低下しているという事情も影響していると思われる。

 ちなみの14日から20日の対内債券(中長期債)投資は1993億円の流出超に、前の週も1763億円の流出超となっていた。短期債も流出増となり、異次元緩和を受けていったん海外投資家は円債を売ってきているようである。こちらは、4月4日の異次元緩和以降の日本の債券市場の荒れ具合を見て、ポジションを減らしてきたと思われる。

 いずれにしても、それほど大規模な資金の移動が生じているわけではないものの、今後は日本の国債の流通市場が日銀の介入により、縮小することが予想され、投資家もそれに備えた動きをせざるを得ない。国債市場の機能低下も予想され、それが異次元緩和の導入以降の超長期債市場に現れている。この動揺は時間とともに収まるかもしれないが、今後は以前ほど国債市場が安定するとは考えづらい。不安定な市場となれば、それだけ市場参加者も神経質になりかねない。つまり長期金利が何かのきっかけで跳ね上がりかねないという環境になりつつある。このあたり、政治家や日銀関係者は、言動に細心の注意を払う必要もあろう。




2013.4.26「日銀の政権交代」

 2013年3月20日、日銀では政権交代が行われた。もちろんこれは選挙によるものではなかったが、いわゆる日銀理論をベースとした政策から金融政策のレジーム・チェンジ(体制転換)が行われ、いわゆるリフレ政策をベースにした政策に転じることになった。

 長きに渡る政権がひっくり返されたといえば、2009年8月30日の第45回衆議院議員総選挙における民主党の政権奪取が連想される。民主党は単独で総議席の3分の2に迫る308議席獲得と圧勝し、鳩山内閣は当初70%を超す高い支持率を得てスタートした。

 参考までに安倍内閣の支持率は、読売新聞社によると4月12〜14日調査分で74%、前回3月15〜17日の72%をこえるなど高い支持率を示していた。アベノミクス効果による円安・株高等がかなり意識されていると思われる。安倍内閣の支持率は昨年12月の内閣発足直後から毎月上がっており、4回連続の上昇は、毎月調査を始めた1978年以降で初めてだそうである。安倍内閣が日銀との連携を強化して、成長を重視した経済政策を進めていることを評価する人67%に上り、日銀が決めた大規模な金融緩和策を「評価する」は54%と「評価しない」の30%より多かったそうである(読売新聞)。

 この調査結果を見ると、どうやに日銀の政権交代による期待については、評価しているむきは多いものの、54%という数字は「いや、ちょっと待てよ」とみている人もそれなりに多いことを示しているように思われる。

 アベノミクスは三本の矢というが、一本目の次元の違う大胆な金融緩和という期待に負うところが大きい。リフレ政策を全面に打ち出して、円安・株高を加速させ、それが支持率アップにも繋がっているのは確かであろう。今後の安倍政権の支持率の行方は、実は日銀の政策とその効果にかかっているという見方もできよう。

 そうであれば、日銀の政権交代によるレジーム・チェンジの効果を見定める必要がある。それには今回の自民党が政権を取り返した事例よりも、2009年の民主党が政権を握った際のレジーム・チェンジの際の状況が参考になるのではなかろうか。

 黒田日銀のマニフェストに掲げた大きな目標は2%の物価目標を2年で達成するというものである。しかし、これは日銀理論をベースとした政策から見ると、非常に達成が難しいものとなる。そのために打ち出した政策はこれまでの路線上にあるものながら、量を極端に大きく見せるものとなった。これでどのようにして目標達成を可能とするのか、その具体的な道筋は示されていない。さらに債券市場を混乱させるなどの副作用も出ており、日銀はまずそのための火消しに走ることになった。

 民主党が政権を握った際には、官僚との関係がかなりぎくしゃくしたと言われる。同様の事態が今回の日銀内部で発生する可能性もある。それでもアベノミクスへの期待感が維持している間は良いかもしれないが、物価目標達成に向けて今後はいろいろと問題が表面化することも想定される。今後CPIは回復すると予想されているが、足下CPIは3月の全国で前年比マイナス0.5%にいる。アベノミクス登場が昨年11月だとすれば、すでに半年経過しているが、期待感が物価に働きかけている様子は見えていないのが実情である。

 そもそも物価さえ上げれば何とかなる的な発想に問題はないのか。物価上昇への道筋含めて、日銀にはその説明が求められる。そこで適切な答えが出なければ、期待が失望に変わる可能性もある。円安・株高は海外要因に助けられているというか、海外要因が根底にある。世界的なリスクの後退とそれによる景気回復への期待である。そこに日米欧の中央銀行の超緩和策が後押ししている。

 海外要因による円安や世界的に株高にブレーキが掛かると、アベノミクスへの成果が問われる。その際に注目されるのは、日銀の金融政策となろう。政権交代により、ルビコン川を渡り、パンドラの箱を開けてしまった日銀が、今後はどのような政策をとるのか。果たしてレジーム・チェンジした金融政策への支持はどこまで続くのか。非常に興味深い。




2013.4.26「債券市場の動揺の理由」

 リフレ的な政策を全面に打ち出した安倍政権によるアベノミクスは、その一本目の矢の仕上げとして日銀に大胆な金融緩和を要求し、それを自ら選んだ黒田日銀総裁が実行に移した。

 これにより、人々の期待が高まったことは事実であろう。円安・株高もあり、日本はデフレから脱却して明るい展望が開けるとの認識も拡がっている。日銀や政府の景気判断も上方修正され、景気の気に働きかけていると。リスクを犯しても大胆な政策を打ち出せば状況は打破できる、との期待が強まっているが、果たしてそのリスクとは何なのか。

 ここはもう少し冷静に物事を見ておく必要もある。今回の政策で、果たして誰か痛手を被ったであろうか。等価交換と言う言葉がある。何かしら大きな作用を行えば、何かしら副作用が生じる。ところが、今回のリフレ政策は一見、どこも痛手を被ったようなところはない、ように見える。だからこそアベノミクスが受け入れられ、本屋にはその関連書籍のコーナーも出来ている。Win-Winで皆ハッピーというのはどこかおかしくはなかろうか。

 4月4日の異次元緩和後の国債の動きが気になる方も、債券関係者以外にもいるかもしれない。それとも円安傾向が続き、株価が上がっている状況が続く限り、アベノミクスは効果が出ており、多少の債券市場の動揺など意識する必要はない、と考えている方の方が多いのか。とにかく債券市場の動揺は何かしらの兆候を示していた可能性がある。もちろんそれは発行額の7割も中央銀行が自国国債を買い入れるという、大胆な政策が国債の需給面に影響を与えたためであろうが、投資家が引いたのは、果たして流動性の問題だけであろうか。

 今回の日銀の異次元緩和の目的は、2%の物価上昇としているが、そのための政策の中心にあるのは、より長い期間の国債の大量購入である。これにより国債のイールドカーブ全体を押しつぶし、さらに国債を買い入れることによる大量の資金供給により日銀の当座預金残高を一気に引き上げようとするものである。ただし、それで本当に物価が動くという保証があるわけではない。現実に当座預金残高は昨年末の倍近くに膨らんでいるが、物価に影響が及んでいる気配はない。もちろん円安の影響により今後は物価が多少なり上昇してくることは予想されるが、当座預金残高が直接物価に影響したわけではない。欧州リスクからの急激な円高の反動による円安でもたらされたものである。

 今後、物価が思うように上昇しなかったならば、期待感が先行している市場からはさらに大胆な政策が要求されよう。その結果、さらなる国債買入増額となれば、それは国債市場の流動性をさらに低下させかねず、市場機能が失われるリスクが生じる。それとともに財政ファイナンスとの認識が強まる可能性がある。もちろんそれは政府の意向次第ではあるが、もし消費増税が先送りされるなどすれば、その認識を強めさせかねない。

 高橋是清による日銀引受は、たしかに途中まではうまくいった。デフレからも脱却したが、その出口政策に失敗し、二・二六事件で高橋是清は暗殺され、国債の日銀引受という打ち出の小槌はさらに振られることになり、戦後のハイパーインフレを生む。それを反省して財政法では日銀による国債の直接引き受けは禁じられることになった。

 今回の異次元緩和は日銀による国債の直接引き受けではないとしているが、日銀券ルールは撤廃し、より長い期間の国債を大量に買い入れ、直近発行銘柄の買入も可能にするなど、自ら財政ファイナンスではないとするために置いておいた標識を撤廃した。超長期債の動揺は、このあたりの漠然としたリスクも意識してのものとも言えるのではなかろうか。




2013.4.25「矛盾だらけの異次元緩和」

 日銀の当座預金残高が17日に69兆7200億円となり、過去最高を記録し約70兆円近くとなった。岩田規久男日銀副総裁は、就任前のインタビューにて、「インフレ率を2%にするためには、日銀当座預金を昨年末の約40兆円の倍、70〜80兆円にすべきだ」と述べていた。

 4月4日の金融政策決定会合で決めた量的・質的金融緩和策では、マネタリーベースが、年間60〜70兆円に相当するベースで増加するよう金融市場調節を行うとしていた。年間60〜70兆円というのはマネタリーベースの増加ベースとなり、2012年末のマネタリーベースの実績138兆円規模が、2013年末が200兆円、2014年度が270兆円となる。

 岩田副総裁の発言が正しいとすれば、このピッチでのマネタリーベースの増加(増加分のほとんどは日銀当座預金)では、インフレ率は2%どころではなく跳ね上がりかねないのではなかろうか。

 それ以前にすでに日銀の当座預金残高が、昨年末の倍近いところまできているが、それで何かしら物価上昇に波及しうる兆候が出ているのであろうか。タイムラグはあるにせよ。

 アベノミクスの登場以降の円安・株高がその大きな兆候だという人もいるかもしれない。これには「期待」への効果は確かにあったかと思うが、それは果たしてマネタリーベースの増加が影響していたものなのか。そもそもどれだけの人が日銀の当座預金残高に関心を持っていようか。

 日銀はコアCPIの2%という物価目標に対して、2年程度の期間を念頭に置いて、早期に実現するとしている。26日に発表される展望レポートでは、2年後に2%の物価目標が達成しうるという予測が示されると予想される。

 2年で2%の物価上昇は達成できるのかとの質問に対して、宮尾審議委員は会見で次の発言を繰り返していた。

 「今回、私どもは2年程度の期間を念頭において、2%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するために今回の「量的・質的金融緩和」というパッケージを決定し、実行に移したということです。」

 まったくこれは答えになっていない。会見前の講演ではその道筋を示してはいたが、そのポイントには、世界経済の安定化、それによる世界経済の回復基調を背景にあげている。リーマン・ショックや欧州の信用不安という大きなショックの後退により、世界経済の回復が日本経済にも影響を与えるとしている。つまりは異次元緩和があっての2%の物価上昇という前提になっていない。

 宮尾審議委員を含めて、六名の審議委員が26日の展望レポートでコアCPIの予想を大きく引き上げたならば、その理由の説明が求められる。宮尾委員の会見では、記者から2%の目標は2年程度で達成できるという事に関し、「宮尾審議委員が何故ここでご自身の考えを述べないのか、よく分かりません。」ともコメントしている。この点についての説明責任も審議委員には求められるはずである。

 さらにこれまでの日銀の考え方を踏まえた上で、今回の異次元緩和がどのように物価に波及するのかの経路について、日銀プロパーであり、これまでの日銀の政策にも携わってきた中曽副総裁の意見も聞きたいところである。

 債券市場にも異次元緩和の影響が及んでいるが、すでに生保や年金、地方の金融機関などが国債投資を減少させるとの見方も強まっている。それでなくても国債発行額のうちこれまでの4割弱から7割強を日銀が買い入れることで、債券市場の実質的な規模が縮小し、参加者も減少するとなれば、その機能低下による影響も考えておく必要がある。

 高橋是清は日銀による国債引受を行ってはいたが、それは当時の国債の流通市場が整備されていなかったこともあり、日銀はいったん引き受けた国債を銀行に売却していた。今回、日銀はあくまで買い入れるだけが目的となっている。国債の市場機能を低下させて、その結果、イールドカーブは全体に低下するどころか、いびつな動きになりかねない。それでどのように実態経済に働きかけられるのか、このあたりの説明もほしいところである。




2013.4.24「イタリアの2年債利回りが過去最低になったことの意味」

 4月22日の欧州市場では、イタリアの2年国債の利回りが一時1.208%まで下げ、ブルームバーグによるとデータ集計を開始した1993年以来の最低を記録したそうである。23日には1.2%を割り込みさらに記録を更新し、10年債利回りは2010年11月以来の4%割れとなった。

 22日の日本時間の夕方に、イタリアの2年債利回りが過去最低になったとの記事が出ていたが、これを見て一瞬目を疑った。ドイツやベルギー、オーストリアとかの2年債利回りではなく、イタリアの2年債利回りが過去最低を記録したのである。これは欧州のリスク後退を示す、大きな象徴的な出来事ではあるまいか。

 ブルームバーグによるとイタリアの15年債利回りも4.23%と2006年12月以来の低水準となったそうである。2006年末と言えば、ギリシャ・ショックどころか、リーマン・ショック以前の水準である。

 2010年1月に欧州委員会がギリシャの財政に関して統計上の不備を指摘し、ギリシャの財政状況の悪化が表面化した。ギリシャの格下げ等も伴いギリシャの国債が急落したのが欧州の信用不安の発端である。

 それがポルトガルやスペインを経て、イタリアに波及した。ユーロというシステムの維持が可能かどうか試されることになった。その意味ではイタリアの金利、つまりイタリア国債の価格の動きが、ユーロの安定度を測るひとつの目安ともなっていたはずである。

 そのイタリア国債の利回りが低下し、2年債に至っては過去最低水準まで低下したという。これはつまりユーロ圏というシステムへの不安とともに、信用不安もかなり後退してきたことの現れと言えるのではなかろうか。

 日本ではアベノミクスの登場と、黒田日銀による異次元緩和に浮かれ、このあたりの状況についてあまり関心はなさそうだが、そもそも昨年末あたりからの急激な円安と株高の根底には、欧州の信用リスクを中心とした世界的なリスクの後退がある。その流れをアベノミクスへの期待が加速させ、ヘッジ・ファンドなどが仕掛けやすい環境を形成したとみられる。

 株価の上昇については、日本株ばかりでなく米国株式市場でもダウ平均が過去最高値を更新してきた。これには日米欧の中銀による積極的な資金供給策による影響ばかりでなく、世界経済の回復期待があろう。それも欧州のリスクの後退が背景にあると考えられる。

 今回の円安・株高の要因としてアベノミクスがどの程度関与しているのかを具体的に計ることは難しい。ただし、アベノミクスだけで今回の円安・株高が生じたとみて、その効果に絶対の信用を置くこともどうかと思う。このあたりは冷静な分析も求められる。

 ちなみにイタリアに限らず、スペインやポルトガルの国債が今回買われた背景には、ECBの利下げ観測に加え、日本の生保や年金による買いが今後入るとの期待感もあろう。しかし、少なくとも期待感が不安感を打ち負かしている環境そのものの要因を理解することも重要かと思われる。




2013.4.22「3月の債券市場における投資家の動き」

 4月22日に日本証券業協会は3月の公社債投資家別売買高を発表した。3月20日に日銀の黒田総裁、岩田副総裁、中曽副総裁が就任した。異次元緩和への期待も強まっていたなかで、投資家は果たして国債を主体に債券市場でどのような運用をしていたのか気になるところである。

 短期国債を除くベース、つまり1年以上の残存期間の国債について、都銀は7921億円の買い越しとなっていた。地銀は4137億円の買い越し、信託銀行は3兆2110億円と3兆円を超える大幅買い越しとなっていた。農林系金融機関も3750億円の買い越しに。

 生損保は1兆221億円の買い越し、投資信託も5347億円の買い越しとなっていたが、海外投資家は1191億円の売り越しとなっていた。

 都銀は買い越しに転じ、信託の買い越し額もさらに大きくなっていたが、年限別の売買にはそれぞれ偏りも見えていた。

 それを国債の投資家別売買高でみてみると、都銀は長期債を2兆7924億円も買い越していた半面、中期債を1兆8525億円売り越していた。超長期債は1562億円の売り越し。ちなみに都銀は2月も中期債を売り越して中期債を買い越し、ただし超長期は買い越していた。都銀による長期債の2兆7924億円の買い越しは、2004年4月以降のデータのなかでは最高の買い越し額となっていた。

 信託銀行は前年限で買い越しとなっており、超長期債を1兆1181億円、長期債を7683億円、中期債1兆1663億円のそれぞれ買い越し。円安株高の進行に伴うパッシブ系の年金運用者などからのリバランスの買いが、中期ゾーンを含めて引き続き入っていたものと思われる。

 農林系金融機関は超長期を2557億円買い越し。生保も超長期債を9265億円の買い越しに。

 外国人は長期債を1兆4540億円売り越していた半面、中期債を1兆1724億円買い越していた。2月も金額はこれよりは少ないが、やはり外人は長期債売り、中期債買いをしていた。

 短期債の売買高をみると、外国人がこの月も13兆8073億円の買い越しとなっており、外投資家による短期債の買い越しは継続していた。

 3月の債券相場を振り返ってみると、日銀総裁候補の黒田東彦氏は4日の衆議院運営委員会の所信聴取で、デフレ脱却へ向け可能なことは何でもやると表明し、長期の国債も購入対象として検討すべきだと述べた。4日の債券先物はこの発言を受けて上昇し、145円32銭の高値引けとなり、12月11日につけた過去最高値を更新した。5日も債券に買いが入り10年債利回りは0.6%割れに。8日の30年国債入札は順調な結果となったが、一部の投資家が直接大量に応札した可能性があり、このため債券相場は一時大きく買われた。

 12日の5年国債の入札は無難な結果となったが、20年国債の入札は低調な結果に。しかし、超長期債の売りも限定的であった。むしろ中期ゾーンの買いがいったん止まり、超長期債や長期債には投資家の買いが入った。このあたりで都銀が中期債から長期債に入れ替えていた可能性がある。

 ユーロ圏財務相会合ではキプロスへの財政支援と引き換えに全ての銀行預金への課税を決めたことを受け、キプロス政府は16日に全銀行口座からの引き出しを制限する預金封鎖を開始した。この異例の措置に市場は動揺した。15日の米10年債利回りは2%割れとなっていたこともあり、18日の現物10年債利回りは再び0.6%割れに。20日に日銀の黒田東彦総裁、岩田規久男副総裁、中曽宏副総裁が就任したが、大胆な金融緩和の期待も強く、特に長期、超長期債に買いが入った。21日に債券先物は145円75銭まで上昇し、連日で債券先物の最高値を更新した。

 このように3月の債券相場は、超長期債には信託銀行や生保、長期債には都銀や信託銀行からの買いが入っていた。中期債は信託銀行などからの買いは入るものの、都銀による売りにより上値が抑えられた格好となっていた。




2013.4.19「2%の物価上昇の道筋とリスク」

 日銀の宮尾龍蔵審議委員は、4月18日の岐阜県での講演において、2%物価安定目標への道筋を示した。それによると、

 1.海外経済の正常化は、わが国の輸出・生産の回復基調を後押しし、企業収益を高めます。

 2.基調的なリスクオンの継続と米国長期金利の緩やかな上昇により、さらには日本銀行の強力な緩和策により、資産価格や為替レートを含む金融環境は緩和した状態がサポートされます。

 3.それらは企業の設備投資や構造変革など前向きな動きを後押しし、潜在成長率の緩やかな上昇をもたらします。

 4.持続的な景気回復期待のもと、家計の消費支出も堅調に推移し、需給ギャップの改善を伴いつつ物価は徐々に上昇します。

 5.この間、人々のインフレ予想も徐々に高まり、こうしたもとで、2014年度中には消費者物価上昇率は 1%程度を超えて高まっていきます。

 最初のポイントは、世界経済の安定化、それによる世界経済の回復基調をまず背景に上げている。二番目の基調的なリスクオンの継続という言葉からも読み取れるが、リーマン・ショックや欧州の信用不安という大きなショックの後退により、世界経済の回復が日本経済にも影響を与えるとしている。

 リスクオフからリスクオンの動きに変わって何が起きたかと言えば、円安である。もちろんイタリアやスペインの国債利回りの低下などもあるが、急激な円高の修正が入った。そこにタイミングよく、安倍政権の登場により円安の流れが加速させ、米国の株式市場の上昇などもあり、東京株式市場は大きく上昇した。積極的な金融緩和への期待が、資産バブルのような状況を生み出した結果、資産価格が上昇した。

 ここまでは確かに現在の動きの解説となる。問題は4月4日に異次元緩和と呼ばれた緩和を行って、企業の設備投資をどのようにしたら前向きにさせられるのか。人々のインフレ予想も徐々に高まり、こうしたもとで、2014年度中には消費者物価上昇率は 1%程度を超えて高まっていくとしているが、これは異次元緩和がなくても、世界的なリスクの後退での影響で、可能であったのではなかろうか。

 そもそも安倍首相や、岩田副総裁のこれまでのコメントを考えれば、特に海外要因等にたよらずとも、マネタリーベースを大胆に引き上げれば物価は上がると言っていなかったか。実際、すでに日銀の当座預金残高は岩田氏が2%の物価上昇に必要と言っていた70〜80兆円に届こうとしている。これですでに2%の物価上昇は可能となる状態にいるということになるのではなかろうか。

 少なくとも宮尾委員は世界経済を取り巻く環境の改善、日本の景気回復とともに物価上昇をもたらすことを可能にするとの認識と思われる。日銀の金融政策はこのように流れを押すことは可能かもしれない。しかし、岩田氏の過去の発言からは、日銀の当座預金残高を倍にすれば、物価を上げられるとしている。そのために日銀は発行額の7割もの国債を買い入れる結果となっている。何かおかしくはないだろうか。

 「先日の金融政策決定会合における議論を通じて、長期国債の大規模な買入れと年限長期化といった施策は、イールドカーブ全体に一段と強力な下押し圧力を掛けるという点で、これまでの私の提案を上回る強力な緩和効果が期待できると判断し、後述するコストやリスクも勘案したうえ、「量的・質的金融緩和」の導入に賛成することとしました。」(宮尾審議委員)

 確かに異次元緩和を受けてイールドカーブは一時大きく低下し、10年債利回りは0.315%、20年、30年の利回りは1%割れとなった。しかし、その後イールドカーブはそこから跳ね上がっている。日銀が国債を大量に買い入れることで国債市場の機能に影響を与えかねないとの懸念も出て、国債市場は乱高下した。長期金利は日銀が操作できるものではないことは、これを見ても明らかであろうし、ここからのイールドカーブの低下にどれほどの意味、というか効果があるのか。このあたりも説明していただきたい気がする。

 イールドカーブの低下により企業・家計の借入負担を軽減するとの説明はあったが、すでに長期金利は世界最低水準にまで沈んでおり、その恩恵はすでに十分に得ている。何といっても恩恵を受けているのは日本政府であろう。企業は借り入れどころか自己資金が豊富なところも多い。

 銀行や機関投資家などのポートフォリオ調整により、国債投資から銀行信用やリスク資産への投資にシフトする、との期待も述べているが国債とリスク資産での市場規模は桁が違う。日銀がそもそもリスク資産の買入額に比べて、国債買入額を極端に多くしたのはそのマーケット規模が大きな理由であったはずである。

 今回の措置は「期待」への働きかけを重視しています、とも宮尾委員は指摘している。「2%の消費者物価上昇率を目指すシナリオが道筋に沿って徐々に実現していくと、それを人々が実感して先行きの見通しに対する信頼を強めます」とあるが、その理論的な背景となっている日銀の当座預金残高と物価の上昇の関連性をどのように見たら良いのか。すでに70兆円に達しようとしている当座預金残高で、どのような働きかけが物価にされているのか。むしろここが聞きたいところである。そこをはっきり説明してくれなければ、その期待なるものはいずれ懸念に変化してくる可能性がある。

 「大規模な国債買入がもたらす金利を起点とした全般的な波及ルートと、通貨量のコントロールを新しく導入して、インフレ予想へ働きかけるルートを同時に追求することで、デフレ脱却に向けた強いメッセージを示し、政策効果をより高めようとする枠組みと理解できます」(宮尾審議委員)

 大規模な国債買入がもたらす財政ファイナンスへのリスク波及ルートと、通貨量のコントロールを導入しても効果なかった前回の量的緩和時と同様にインフレ予想に働きかけることはかなわず、資産バブルを促進し、それが崩壊してしまうという結果にはなるまいか。




2013.4.19「日銀の国債買入方式の修正」

 日銀は4日に決定した量的・質的金融緩和策(QQE)における国債の新たな買入について、市場参加者の意見を取り入れ、買入方式を一部修正し18日の夕方に発表された。

 量的・質的金融緩和策では、長期国債の保有残高が年間約50兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。毎月の長期国債のグロスの買入れ額は7兆円強となる(国債には償還があるため、その分も考慮しての買入額)。これにより日銀が保有する長期国債(残存1年以上の国債)は2012年末が89兆円となっていたが、それが2013年末に140兆円、2014年末に190兆円まで引き上げられる。

 長期国債の買入対象を40年債を含む全ゾーンとし、買入の平均残存年数を現状の3年弱から国債発行残高の平均並みの7年程度に延長する。この結果、毎月の長期国債のグロスの買入額は7.5兆円規模(これまでは3.8兆円程度、4月の買入予定額は6.2兆円)になる。2013年度の長期国債のカレンダーベースの発行予定額は126.6兆円となっており(年間発行額156.6兆円から短国の30兆円を差し引いたもの)、7.5兆円の12か月で88.7兆円をグロスで日銀が購入するとなれば、毎月の発行額の70%を買い入れることになる。

 この具体的な買入方式については、金融政策決定会合の公表文には書かれておらず、決定会合後の夕方に、「当面の長期国債買入れの運営について」が日銀金融市場局から発表された。まさに突貫工事で作成したとの印象である。

 4日の夕方にはエコノミストなどが日銀に集められたが、ここでは新政策への説明が中心となり、集まった市場参加者もこれにより具体的に市場にどのような影響があるのか、はかりあぐねていたのではなかろうか。その影響は翌5日に現れ、債券市場は史上まれにみる乱高下となったが、日銀が発行額の7割も買い入れることによる国債市場の機能低下への懸念が大きな要因となった。このあたりについて日銀も2009年のイングランド銀行による量的緩和時の英国債市場の混乱などから、ある程度の想定はあったのかもしれないが、あまり準備が進んでいたわけでもなさそうであった。

 11日にはあらためて市場参加者との対話の強化を図ることを目的に、「市場参加者との意見交換会」が開催された。しかし、参加予定者は金融調節取引対象先、機関投資家など市場参加者ではあったものの、初回ということもあってか役員クラスが集められた。5日以降の債券市場の混乱ぶりを見る限り、早めに実務者レベルでの会合をもつべきであったとは思うが、それが開催されたのは17日となった。

 4月17日に「市場調節取引実務担当者との意見交換会」が開催されたが、ここでは1回当たり1兆円程度で4月に5回、5月に6回実施する予定となっていた国債買入について、市場への影響が大きいため、出席者からは、金額を小さくして高い頻度にした方が良いとの意見が多かった(ブルームバーグ)。これを踏まえて18日に日銀はあらためて「当面の長期国債買入れの運営について」を発表したのである。

 ここでは4月と5月分について発表されたが、このうち5月分を見てみると、修正前は6回で合計7兆4400億円予定の国債買入であったものを、修正後は16回で7兆5000億円程度となった。修正後は原則として2つの残存期間区分を同時にオファーすることになり、つまり16回の半分の8回、オペが入ることになる。

 金額についても修正前に比べてそれぞれの年限に幅を持たせ、相場状況等に合わせて裁量の余地を持たせた格好となっている。たとえば残存期間1年超5年以下は修正前の5月合計3兆円が3〜3.5兆円に。残存期間5年超10年以下も修正前の3.4兆円が3〜3.5兆円に。残存期間10年超、つまり超長期債は当初の8000億円が、8000億円〜1兆2000億円に何げに上方修正されていた。

 残存期間1年超5年以下については、残存期間の区分を細分化して同時にオファーすることがあるとしており、これは2年債あたりに集中する可能性を配慮したようである。

 買入対象銘柄の残存期間が重複する利付国債の入札日(流動性供給入札を含む)には、原則オファーしないことも明記された。これはつまりカレント物の流動性に多少なり配慮するとともに、「財政ファイナンス」と受け止められることを防ぐ狙いがあるそうである(19日の日経新聞)。あまりしっかりとした歯止めのようには思われないが。

 日銀は大胆な緩和策を講じ、それによる国債市場の混乱を目の当たりにし、次々と手を打ち、債券市場もやや落ち着きを取り戻してきた。そんなところに、今回の国債買入方式の修正発表も市場は好感した格好となった。しかし、池のなかのクジラはクジラである。債券市場の混乱がこれで完全に払拭されるとも思えない。




2013.4.19「長期金利の変動リスク」

 日銀は「金融システムレポート(2013年4月号)」を公表した。ここでは金融機関による金利上昇に伴う債券時価損失のところが注目されていた。

 全年限にわたり金利が一定幅上振れるパラレルシフトの場合、金利が1%上昇した際、国際統一基準行で3.2兆円、国内基準行で3.4兆円の評価損が発生するとの試算があった。ちなみに2%の上昇となると、パラレルシフトの場合に国際統一基準行で6.2兆円、国内基準行で6.3兆円の評価損が発生する。

 日銀は大胆で異次元の緩和政策により、2年間でコアCPIを前年比2%とするのであれば、長期金利も当然ながら同様に上昇してくるはずである。その際の金融機関の評価損については、金利が1〜3%程度上昇するなどストレスが生じても、銀行の資本基盤が損なわれることは回避されると指摘もあった。

 このレポートには、長期金利の変動リスクについての項目もある。

 「長期金利の水準は、先行きの成長率予想やインフレ予想のほか、財政悪化懸念を含む各種のリスクプレミアムや金融政策に対する期待など、様々な要因に影響される。」とある。

 長期金利を見る際には、経済成長率や物価動向とともに、財政プレミアムがオンされてくるのかどうか、さらには金融政策による期待というか、不安も含めて影響が出る。ここで不安としたのは、今回の大胆な緩和政策にて、国債の流動性リスクが意識されるなどしたことで、債券市場は一時混乱しており、一概に期待ばかりではないようである。

 ソブリンCDSプレミアムからみての財政悪化懸念の高まりは特に窺われないとあるが、「ソブリンCDS市場の流動性が低く、同プレミアムが、必ずしもわが国の財政状況に対する市場の見方を正確に反映しているとは限らない点に留意が必要」ともあるようにあくまで参考指標でしかない。ただし、債券市場を見ても現状、財政悪化懸念が強まっている気配はないことは確かである。

 先行きの成長率予想は0.5〜1%程度、インフレ予想をみるとエコノミストによる長期物価予測はここ数年低下傾向にあるが、3月時点では、サーベイ調査によれば市場参加者の長期物価見通しが幾分上昇しているものの、まだあくまで幾分であった。

 「ゼロ・クーポン・インフレーション・スワップのレートや物価連動国債の利回りからみたBEI(ブレーク・イーブン・インフレ率)も、やや上昇している」とある。

 ゼロ・クーポン・インフレーション・スワップには解説もあり、ゼロ・クーポン・インフレーション・スワップ(ZCIS、インフレ・スワップ)とは、CPI の変化率を参照する変動金利と満期時一括払い固定金利(ゼロ・クーポン)を交換する金融派生商品とある。

 いずれにしても、物価連動国債は今年度から発行が再開されるが、5年前に発行が停止されており、流動性は極端に低いとみられるため。こちらもあくまで参考数値となろう。インフレ・スワップについても流動性は限定的のようである。

 日銀のレポートでは、別の手法を用いてわが国の長期金利の要因分解を試みている。概ね似通った動きをみせている日米英独4か国の長期金利の変動から、グローバルに共通な要因と考えられる「共通成分」を抽出し、長期金利を共通成分とその他(国内要因など)に分解すると、わが国の長期金利は、ごく足もとではその他(国内要因など)の縮小を主因に低下しているが、ここ数年の趨勢的な低下は、グローバルに共通な要因によることがわかる。

 たしかにこのような分析をしないと長期金利の理論的な背景が分析できないことはわかるが、これは市場の動向を見ていればある程度わかる。欧州リスクが日米欧独の長期金利の動向に大きく影響していたのが、アベノミクスの登場で足下では日銀の金融政策の動向に大きく影響を受けていた。それをこのレポートでは、数値化して見せている。このグラフを見ると、2006年3月のいわゆるVaRショック前には特異な動きをしていたことが見てとれる。今回の日銀の大胆な緩和以降の長期金利についても一時0.315%にまで低下したことで、2006年3月の時と同じような特異な動きになっていたと推測される。

 ここ数年の趨勢的な低下については、「金融規制の強化や有担保調達ニーズの強まりなどを背景とする安全資産としての国債需要の高まり、あるいは各国中央銀行による安全資産の買い入れなどが、国債需給のタイト化を通じて、長期金利の水準を押し下げているという可能性である」が指摘されている。

 安全資産としての国債需要については、欧州リスクが一時に比べて後退してきたことで、今後はむしろ後退してくる可能性がある。また各国中央銀行による安全資産の買い入れについてはFRBなどは出口政策を模索しつつある。それに対して日銀は発行される国債の7割も購入することで、国債需給のタイト化は今後も続く。これはむしろ超長期債を中心に国債市場の流動化を阻害しかねない。このあたりの分析も今後は必要となりそうである。

 「わが国の財政悪化懸念による金利上昇リスクに加えて、例えば、今後、非伝統的金融政策の巻き戻しを巡る思惑などを契機に海外長期金利が上昇する場合には、わが国の長期金利も上昇する可能性がある点にも留意しておく必要がある。」と今回のレポートではまとめられている。

 それとともに本当に2年で2%の物価上昇が可能であるとするのであれば、それによる影響も意識する必要がある。反対に国債市場の機能にまで影響を及ぼしかねない大胆な金融政策を打っても、物価への影響が限定的となった場合の長期金利の動きについても、今後は考慮しておく必要もあろう。




2013.4.18「日銀の当座預金残高が70兆円規模に」

 日銀の当座預金残高が17日の速報ベースで69兆7200億円となり、過去最高を記録し約70兆円近くとなった。下記データもどうやら毎日チェックしておく必要がありそうである。

資料、日銀当座預金増減要因と金融調節(毎営業日更新) http://www3.boj.or.jp/market/jp/menu.htm

 2001年3月から2006年3月まで続いた前回の量的緩和の際には、この日銀の当座預金残高が目標とされ、最終的には30〜35兆円が目標とされていた。当時のこの目標に比べて、すでに倍の規模になっている。そういえば岩田規久男日銀副総裁は、就任前のどこかのサイトのインタビューにて、「インフレ率を2%にするためには、日銀当座預金を昨年末の約40兆円の倍、70〜80兆円にすべきだ」と述べていた。日銀の大胆な異次元緩和で、すでにその目標値はほぼ達成されているようなのだが。それはさておき、ここにきて当座預金残高が大きく伸びた要因は、4月4日の日銀の量的・質的金融緩和の導入による効果、というよりも、それ以降の債券相場の乱高下が影響していたと思われる。

 5日の債券相場の乱高下にはこのコラムでも、また拙著「アベクロ政策と国債問題[Kindle版]」でも触れていたので、そちらを読んでいただきたいが、債券先物市場では5回に及ぶサーキット・ブレーカーの発動があった(5日に売りで2度、8日に買いで一度、10日のイブニング・セッションで売りで一度、12日のイブニング・セッションで売りで一度)。

 これに対して日銀が取った手段は、オペによりまず中短期の金利の跳ね上がりを抑えようとするものであった。

 中短期ゾーンの利回り上昇に歯止めを掛けるべく、11日の午前中に「初の」1年物の共通担保資金供給(全店、固定金利)オペ1.5兆円をオファーした。これはいわゆる「シグナルオペ」であった。「10時10分に打つのは普通は先日付本店オペなので、つまりは通常のタイムスケジュールを逸脱したオペという意思を示すオペ」(ベテラン市場参加者談)で、これは10年前のVaRショック、つまり国債の急落時にも実施されていた。2003年8月27日にオファーされた「手形オペ9か月」がそれであった。

 シグナルオペとは聞き慣れない用語であったかもしれないが、これは日銀がシグナルオペだと言っているわけではなく、短期市場での参加者が、何かしら日銀の意思を感じるオペであると思われるのでシグナルオペと呼んでいるものである。

 実は12日金曜日にも日銀は共通担保資金供給(全店、固定金利)を1.5兆円打ってきた。つまりシグナルオペを打ってきたのだが、この際には黒田日銀総裁の講演内容に目が向いて、債券市場では何となくスルーされていた感があった。

 シグナルオペは15日、16日も続くなど連日、日銀は積極的な資金供給を行った結果、16日までに合計11兆円以上の供給(日経新聞)を行ったのである。これにより、日銀の当座預金残高が予想以上のピッチで増加したのである。

 それで何か物価に影響を与えるような結果が出ている気配はあるのであろうか。17日の日経新聞のやさしい経済学では「期待や予想に働きかける政策の効果をどこまで理論的に示せるかは難しい課題」として、「どんな効果が出るのかは、実行してみないとわからない面が強い」と結んでいる。

 いわゆるブタ積みと呼ばれる、現金を見せてやる気を起こさせる作戦については、過去に経験済みながら、その額を極端に大きくさせるのが、今回の異次元緩和である。それでさっそく債券市場には動揺が入るなど、日銀が予想していなかったであろう事態が早速発生している。日銀がリフレ的な政策にこれまで踏み込まなかったのは、それによるトランスミッション・チャンネルがはっきりしなかった事に加え、その副作用についても考慮していたためと思われる。今後はそのあたりが試されることにもなる。とにかく実行してみないとわからない政策なのだから。

 今後の国債の動きには債券市場関係者ぱかりでなく、幅広く関心が高まる可能性がある。日銀の異次元緩和による国債市場の混乱を理解するには、国債そのものの理解も必要になる。そのためにはぜひ、出版された拙著「アベクロ政策と国債問題 [Kindle版]」をぜひダウンロードしていただけるうれしい。前作「アベノミクスを理解するための日銀入門[Kindle版]」と同様に牛さん熊さんの会話形式で読みやすくなっている。ぜひご一読を。




2013.4.17「2013年2月の米国債の国別保有残高」

 米財務省が発表している米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES、http://www.ustreas.gov/tic/mfh.txt)によると、2013年2月の日本の米国債(短期債含む)保有残高は1兆971億ドルとなり、1月の1兆1039億ドルからさらに減少した。日本の米国債保有額は2012年10月まで増加し、1兆1319億ドルまで増加していたが、11月以降は減少傾向にある。

 これに対してトップの中国は1兆2229億ドルと、1月の1兆2142億円からさらに増加させている。これは1年以上ぶりの高水準となるようである。中国による米国債保有額は昨年頭打ちとなっていたが、昨年10月あたりから再び増加傾向となり、昨年12月以降は1兆2000億ドル台で推移している。この結果、保有額ではトップの中国と2位の日本の差が拡大している。

 上位10か国は次の通り(単位、10億ドル)。中国(China, Mainland)1222.9 、日本(Japan)1097.1、カリブ海の金融センター(Carib Bnkng Ctrs)286.7、ブラジル(Brazil)260.0、石油輸出国(Oil Exporters)257.2、台湾(Taiwan)188.2、スイス(Switzerland)185.8、ベルギー(Belgium )184.9、ロシア(Russia)162.1、香港(Hong Kong)143.2。

 米国債は米景気の改善も意識され、昨年12月上旬あたりから2月上旬まで下落基調となっていたが、2月は底堅い動きとなり、後半にかけては切り返してきている。米10年債利回りは2月に入り一時2%台に上昇する場面もあったが、その後1.9%割れとなった。

 米債3月にかけて再び下落し、10年債利回りは再び2%台をつけた。しかし、キプロスへの懸念の強まりなどを背景に、その後切り返してきた。4月に入ると日銀は大胆な金融緩和策を決定し、日銀は大量の自国の国債を買い入れる。この決定後の日本の債券市場は不安定な動きを見せてきている。またFRBは出口を探る動きを見せ始めてきており、このあたりの動向も米国債投資に多少なり影響を与えてくる可能性はある。

 今後の国債の動きには債券市場関係者ぱかりでなく、幅広く関心が高まる可能性がある。日銀の異次元緩和による国債市場の混乱を理解するには、国債そのものの理解も必要になる。そのためにはぜひ、本日出版された拙著「アベクロ政策と国債問題 [Kindle版]」をぜひダウンロードしていただけるうれしい。前作「アベノミクスを理解するための日銀入門[Kindle版]」と同様に牛さん熊さんの会話形式で読みやすくなっている。ぜひご一読を。




2013.4.16「日銀は物価見通しを1.5%以上に上方修正だとか」

 12日のブルームバーグによると、日銀は26日に公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、2014年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く)前年比上昇率の見通し(中央値)を0.9%から1.5%以上に上方修正することを検討していると伝えられた。

 以前にも指摘したが、日銀がコアCPI見通しを上方修正することを「検討している」という表現はおかしい。

 日銀は、4月および10月の政策委員会・金融政策決定会合において、先行きの経済・物価見通しや上振れ・下振れ要因を詳しく点検し、そのもとでの金融政策運営の考え方を整理した「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)を決定し、公表している。1月および7月の金融政策決定会合では、その直前に公表された「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)以降の情勢の変化を踏まえたうえで、先行きの経済・物価見通しを評価した「中間評価」を公表している。(日銀のサイトより)

 この展望レポートでは、政策委員の大勢見通しが発表される。実質GDP、国内企業物価指数、消費者物価指数(除く生鮮食品)の予想数値が「各委員から出され」、それを集計したものが発表されている。新聞などで日銀の見通しとして発表される数値は、この予想値の中での政策委員見通しの中央値となる。

 日銀の政策委員(総裁・副総裁・審議委員)がそれぞれ予想値を出すわけであり、それが「検討」されることは形式上はありえない。政策委員も他の委員がどのような数値を出すのかを事前に知らされるようなことは、ないはずである。

 とはいえ、政策委員を含めて、コアCPI見通しを上方修正することを検討せざるを得ない状況にあるのは確かである。

 日銀は2%という物価目標を設定したが、この2%とは消費者物価の前年比上昇率となる。もちろんこれはコアCPIとも呼ばれる消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年同月比の数値である。

 1月に公表された展望レポートの中間評価では、2013年度と2014年度の見通しがすでに示されている。コアCPIについて2013年度は+0.3〜+0.6<+0.4>、2014年度は+2.5〜+3.0<+2.9>となっている。

 2014年度の数値については消費税率が2014年4月に8%、2015年10月に10%に引き上げられることを織り込んでいる。消費税率引き上げが現行の課税品目すべてにフル転嫁されることを前提に、物価の押し上げ寄与を機械的に計算した数値、消費者物価では2.0%を加えたものを出している。そこで、各政策委員は消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースの計数を作成しており、それは+0.5〜+1.0<+0.9>となっている。

 日銀が決定した物価目標の2%には、当然ながら消費税率引き上げの直接的な影響は加味していない。そうでなければ消費増税だけでそれが簡単にクリアーされてしまうことになる。

 4日の予想を超えた大胆な金融緩和、「量的・質的金融緩和」が全員一致で決定されたのをみると、政策委員は10月から上乗せした数値を示す可能性は十分ありうる。さらにメンバーも9人中、3人が入れ替わるため、その分、予想数値に変動も起きよう。その結果、2014年度の消費増税の影響を除いた数値が、どこまで引き上げられるのかが焦点となる。

 そこで日銀は、2014年度のコアCPIの見通し(中央値)を1月の0.9%から1.5%以上に上方修正することを検討するそうである。しかし、足下の2月のコアCPIは前年比マイナスの0.3%であった。これをどのようにして上昇させるのか。繰り返しとなってしまうが、その経路がかなり不透明である。

 4日に量的・質的金融緩和の導入し、コアCPIの2%という物価目標に対しては、2年程度の期間を念頭に置いて、早期に実現するため、マネタリーベース(現金通貨プラス日銀当座預金)および長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍程度とし、長期国債の平均残存年数を現行の2倍以上にする。

 それは良いがそれによりどのような経路を通じて、CPIが上昇するのか。国債のイールドカーブの低下を促すのも目的のはずだが、5日以降の国債市場ではいったん低下したイールドカーブは長いところを中心に上昇している。いっときの債券市場の混乱との見方もできるかもしれないが、日銀の国債買入は国債の流動性にマイナスの影響をもたらす懸念もある。国債に日銀が購入し、金融機関はその資金を0.1%のつく当座預金に積み上げるとして、それで実態経済にどのように波及するのか。その実験は2001年から2006年の量的緩和である程度実証済みではなかろうか。

 新たにメンバー入りした総裁と副総裁はさておき、4日の異次元緩和は全員一致であり、その流れからは審議委員も予想の修正をしてくることが予想される。これまでの予想から情報修正するとなれば6人の審議委員はどのような説明をするのか。たしかに1月に比べてさらに円安や株高は進み、ムードは変わってきているのは事実ではあるが、それで2年後にコアCPIの2%にするのは可能なのか、消費税の影響を加えれば4%もの上昇となってしまうが、このあたり詳しい説明を聞いてみたい気がする。

 今後の国債の動きには債券市場関係者ぱかりでなく、幅広く関心が高まる可能性がある。日銀の異次元緩和による国債市場の混乱を理解するには、国債そのものの理解も必要になる。そのためにはぜひ、本日出版された拙著「アベクロ政策と国債問題 [Kindle版]」をぜひダウンロードしていただけるうれしい。前作「アベノミクスを理解するための日銀入門[Kindle版]」と同様に牛さん熊さんの会話形式で読みやすくなっている。ぜひご一読を。




2013.4.15「日銀の異次緩和による国債市場への影響」

 4月4日に新体制となった黒田日銀が打ち出した大胆で次元の異なる緩和策は、コアCPIの2%という物価目標に対して、2年程度の期間を念頭に置いて、早期に実現するため、マネタリーベース(現金通貨と日銀の当座預金残高)および長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍程度とし、長期国債の平均残存年数を現行の2倍以上にするというものである。つまり、その中心となるのが大規模な国債の買入によるマネタリーベースの倍増であり、またイールドカーブ全体にわたって引き下げようというのが中間的な目標(総裁会見より)となっている。

 国債のイールドカーブ全体の低下を促すことを目的に、長期国債の保有残高が年間50兆円に相当するペースで増加するよう買入を行う。長期国債の買入対象を40年債を含む全ゾーンとし、買入の平均残存年数を現状の3年弱から国債発行残高の平均並みの7年程度に延長する。この結果、毎月の長期国債のグロスの買入額は7.5兆円規模(これまでは3.8兆円程度、4月の買入予定額は6.2兆円)になる。2013年度の長期国債のカレンダーベースの発行予定額は126.6兆円となっており(年間発行額156.6兆円から短国の30兆円を差し引いたもの)、7.5兆円の12か月で88.7兆円をグロスで日銀が購入するとなれば、毎月の発行額の70%を買い入れることになる。

これについては総裁会見の際に記者から日銀が「池の中の鯨」となる懸念が示されていた。それに対して黒田総裁は次のように答えている。

 「国債の価格形成に一番重要なのは、おそらくストックの話だと思います。ストックでは、7割などということには到底なりません。従って、市場に大きな歪みを生じることにはならないと思います。」

 これは少し違うのではなかろうか。国債価格の形成には流通している国債の金額が大きく影響している。

「これまでのいわゆる資産買入等の基金では、残存期間 1〜3 年の国債を買ってきましたが、その際も、実は、グロスの買入れ額は発行額の7割に達していました。今回やろうとしていることは、いわば全てのゾーンに拡げてやっていこうということであって、これまで以上に市場金利の形成をそれぞれのゾーンでやり難くすることは意図していません。」

 ほとんど現金に近い状態となっていた1〜3年債と長期債、さらには超長期債の流動性にはあきらかに違いがある。現実に日銀が超長期債も購入するのではとの観測が出てからの超長期債の値動きは不安定となり、4日以降も一時20年債、30年債が1%を割り込んでから、急落するなど流動性がかなり意識された動きとなった。いわゆる流動性リスクプレミアムがオンされたような状態となった。

 その反対にこれまで日銀が大量に購入していたことで、市場機能が低下して利回りが低位安定していた中短期債については、一部期待のあった超過準備の付利が撤廃されなかった事に加え、今後の日銀の短期債の購入額が不透明となったこともあり、これまで市場機能(価格発見機能)が低下していた中短期債の市場機能がいきなり回復し、2年債や5年債の利回りが大きく上昇した。

 大手銀行による5年債を中心とした売りが5日と10日に入ったとみられ、それがさらに相場の変動幅を大きくする結果となった。この売りの理由は推測する他はないが、歴史的水準にまで利回り低下したことや、期初というタイミングなど含めて、中期ゾーン主体に銀行あたりからとみられる利益確定売りが入ったと思われること。さらに短期債含めて、超過準備の付利が温存されたことで、引き下げもしくは撤廃を意識されて利回りが低下していた分が戻されたこと。これまでは基金による買入などは中短期債主体に行われ、市場機能が低下していたところ、買入の主体がもう少し長めの期間のものに移った結果、中短期債の価格発見機能が息を吹き返して上昇した面もあったとみられる。10日の中期債の売りについては、リスク管理手法の影響なども指摘されていた。

 この動きに対しては日銀は、11日に対策を講じた。午前中に初の1年物の共通担保資金供給(全店、固定金利)オペ1.5兆円をオファー。午後にも1年物2兆円と、1か月物8000億円の計2.8兆円をオファーし、1日の供給額としてはオファーベースで4.3兆円と、震災後の2011年3月23日の計5兆円の規模に迫った。期間や金額を見てもいかに日銀が危機感を抱いていたかがわかる。

 さらに市場参加者からの要望もあった長期国債買入れのオファー日程も公開した。あくまで11日の発表分は翌日の分だけではあったが、これで買入のスケジュールが読めないことによる不安定さはなくなるかもしれないが、事前の価格操作への懸念も残ることになる。

 4日にはエコノミストを集め、11日には市場参加者との意見交換会も開催された。11日は初回という意味合いもあってか銀行や生損保、証券会社などの役員または執行役員が対象となるそうである。その後、現場担当者との会合が開催されるであろうことが予想されるが、今後の鍵ともなるのが市場との対話となる。

 大胆な金融緩和により債券市場では流動性リスクを意識した動きが出た。これが信用リスクに波及することはなかったものの、将来はそのリスクが顕在化する可能性がないとは言えない。

 4月4日の日銀による量的・質的金融緩和の導入に際しては、政府の意向を強く反映したものではあったが、目的は当然ながら財政ファイナンスではなくデフレの脱却であった。ところが、打ち出した政策を見ると、これまでフィスカル・ドミナンス(財政従属)ではないことを示すために設けていた自らの制限を取り除いていた。

 すでに形骸化はされてはいたが、日銀保有の国債残高が日銀券の発行額を上回らないという銀行券ルールがそのひとつであった。さらに資金供給のための通常の国債買入(通称、輪番オペ)は発行年限別の直近発行2銘柄を除いていたが、そのルールも撤廃した。基金による国債買入はこれが適用されていなかったが、今後は2年債だけでなく、5年債、10年債などもこの制限なしに買入が可能になる。

 4月4日の決定会合後の公表文では、わざわざ「長期国債の買入れは、金融政策目的で行うものであり、財政ファイナンスではない」と明記している。明記することで財政ファイナンスではないことを示したとの見方ができる一方、明記せねばならないぐらい危ない橋を渡っていることの現れとの見方も一部にあった。

 今後もし日銀が財政ファイナンスを行っていると捉えられてしまうと、今度は流動性リスクプレミアムだけでなく、財政プレミアムがオンされてしまう懸念があり、日銀はそれに対してもはっきりとした歯止めを見せることも必要となってくると思われる。

 今後の国債の動きには債券市場関係者ぱかりでなく、幅広く関心が高まる可能性がある。日銀の異次元緩和による国債市場の混乱を理解するには、国債そのものの理解も必要になる。そのためにはぜひ、本日出版された拙著「アベクロ政策と国債問題 [Kindle版]」をぜひダウンロードしていただけるうれしい。前作「アベノミクスを理解するための日銀入門[Kindle版]」と同様に牛さん熊さんの会話形式で読みやすくなっている。ぜひご一読を。




2013.4.13「債券市場の混乱にやっと手を打ってきた日銀だが」

 債券市場の混乱は4月11日も続いたが、ここでやっと日銀は手を打ってきた。

 10日の債券先物は引け後、イブニング・セッションでサーキットブレーカーが発動された。9日の先物の清算値から1円安となり、取引再開後143円37銭まで下落した。昨日は超長期債も引き続き売られたが、引け際に5年債あたりの中期ゾーンに、銀行からとみられるまとまった売りが持ち込まれ、その5年債は引け後に0.305%と0.3%台をつけ、10年債利回りも0.635%まで上昇した。この売りはリスク管理上など何かしらの理由でのポジション調整的な売りかとの観測もあった。

 11日に入り債券先物は、30年国債の入札も控え、前日比40銭安の143円76銭で寄り付きに。その後は非常に値動きの荒い展開となり、ジェットコースターのような相場展開となった。こんな相場に誰がした、と聞かれたら日銀です、と答えざるを得ない状況であったことで、その日銀はこの金利上昇に対し、やっと積極的な手を打って出た。

 中短期ゾーンの利回り上昇に歯止めを掛けるべく、午前中に「初の」1年物の共通担保資金供給(全店、固定金利)オペ1.5兆円をオファーした。これはいわゆる「シグナルオペ」であった。「10時10分に打つのは普通は先日付本店オペなので、つまりは通常のタイムスケジュールを逸脱したオペという意思を示すオペ」(ベテラン市場参加者談)で、これは10年前のVaRショック、つまり国債の急落時にも実施されていた。2003年8月27日にオファーされた「手形オペ9か月」がそれであった。

 午後にも1年物2兆円と、1か月物8000億円の計2.8兆円をオファーしたが、これもシグナルオペとなる。こうして1日の供給額としてはオファー・ベースで4.3兆円と、震災後の2011年3月23日の計5兆円の規模に迫るものとなり、債券市場の変動を抑えるという明確な意図のもとのオペレーションを実施してきたのである。

 さらに市場参加者からの要望もあったようである長期国債買入れのオファー日程も公開した。あくまで翌日の実施分だけではあったが、8日の第2回に続き2回目となる残存期間5年超10年以下および残存期間10年超に加え、第3回目となる残存期間1年以下および残存期間1年超5年以下も同時にオファーするという、いわば予想の倍、バイバイ供給を実施することになる。さらに国庫短期証券買入れもあわせてオファーすることも表明し、とにかく中長期ゾーンの相場下落への対応を講じてきた。

 これを受けて債券先物は前場143円40銭まで下落していたが、後場は144円台を回復した。この日は30年国債入札が実施されており、その結果次第ではさらに下げ足を速めかねないとの懸念もあった。その30年国債の入札では、最低落札価格は予想を下回り、テールも1円16銭と前回の16銭から大きく流れるなど低調な結果となったものの、日銀の対応策が効果を発揮したのか、この結果を見ての相場下落は一時的なものとなった。

 5年債は一時0.320%まで利回りが上昇していたが、日銀が対策を講じてきたことで、0.190%まで切り返し0.2%割れに。10年債も0.630%から0.550%と大きく値を戻してきたことで、債券先物もじりじりと買われ、144円77銭を高値に大引けは144円73銭となった。

 30年国債の入札日というぎりぎりのところで、日銀はVaRショック以来で、規模は震災直後のオペに相当するというシグナルオペを通じて債券相場の下落を抑えにかかった。これはこれで多少なり効果はあるかもしれない。しかし、異次元緩和による影響はこれからが本番となる。日銀は短期市場に対する精鋭達は揃っているかもしれないが、長期・超長期債市場はある意味未体験ゾーンとも言える。もちろん金融政策そのものもこれまでと180度変わってしまって現場はかなり混乱していることも想定される。過去にはシグナルオペにより効果は出たかもしれないが、既存の手段では対応に限界も出てくる。異次元の金融政策には、あらたな次元での債券市場対策も求められる。ただし、ここまで次元が異なってしまうと、日銀の対応にも限界が出てくることも確かである。




2013.4.12「日銀の異次元緩和で混乱の度が増した国債市場」

 4月4日の日銀の量的・質的金融緩和の導入以降、債券相場は乱高下し、波乱含みの展開となっている。日銀の異次元緩和が今回の債券市場の混乱を招いたことは間違いない。どのような状況となっていたのか、あらためて振り返ってみたい。

 4日の債券相場は日銀の量的・質的金融緩和の導入を受けて上昇してはいたが、高値をつけたのは引け後である(決定そのものは昼過ぎ)。10年債利回りが0.425%まで低下して2003年6月の長期金利の世界最低記録を更新した。その際にイブニング・セッションでつけた146円44銭が現在のところ、長期国債先物の過去最高値として記録されている。

 5日に10年債利回りはさらに低下し、0.4%を割り込み一時0.315%に低下した。超長期債も20年債、30年債とも1%割れに。20年債利回りは0.845%に低下、30年債利回りは0.925%に低下した。これがそれぞれの最低利回りとして記録されている。ところが、中期ゾーンには銀行からとみられる戻り売りも入ったことで、債券先物は146円41銭から下落基調となり、高値警戒も手伝ってか下げ足を速めた結果、債券先物は2度のサーキット・ブレーカーが発動。143円10銭まで急落した。0.315%まで利回りが低下していた10年債は0.620%に上昇。ただし、押し目買いも入り債券先物は145円台に戻すなど板が薄い中、乱高下する展開となった。

 8日の債券先物は買いが先行し、前日比89銭高の144円91銭で寄り付いた。日銀は4日に決定したあらたな国債買入を本日から実施、その結果も好感されてか、債券先物の後場に入り一時145円02銭と5日の清算値から1円高となったことで、本日もサーキット・ブレーカー制度が発動した。その後145円25銭まで買われたが、戻り売りも入り144円57銭まで急落するなど荒れた動きとなった。この日の現物債は中長期債はしっかりながら、超長期はさらに下落し20年債利回りは1.2%台、30年債利回りは1.3%台に上昇した。

 9日には債券先物や10年債あたりはしっかりとなっていたが、2年債利回りが0.1%台に乗せ、超長期債は20年債が1.300%に、30年債が1.385%まで利回りが上昇した。

 10日の債券市場では、4年から5年債ゾーンにそこそこまとまった売りが持ち込まれたとみられ、債券先物は引けにかけて下げ足早め、前日比51銭安の144円16銭で引けた。10年債利回りも一時0.580%に上昇。中期債は2年債利回りが0.125%に上昇し、5年債利回りも0.245%と5日の急落時につけた利回りを抜いてきた(15時頃の状況)。

 引けあとに債券相場はさらに下げ足を速め、債券先物はイブニング・セッションでサーキット・ブレーカーが発動された。つまり9日の先物の清算値から1円安となり、取引再開後143円37銭まで下落した。5年債は引け後に0.305%をつけ、10年債利回りも0.635%まで上昇したのである。

ここで簡単に整理してみると、

2年債 4日0.060% 10日0.130% (0.070%)
5年債 4日0.125% 10日0.305% (0.180%)
10年債 5日0.315% 10日0.635%(0.320%)
20年債 5日0.845% 10日1.365%(0.520%)
30年債 5日0.925% 10日1.450%(0.525%)

 利回りの変動幅からみて、超長期債のほうが大きいものの、2年債、5年債、10年債はそれぞれ最低利回りから2倍を超える上昇となっている。これは1年以下の短期債も同様となっており、超過準備の付利0.1%を超えてきている。

 なぜ日銀は国債発行額の7割も購入するのに、国債は売られたのか。これは市場参加者以外の人には皆目わからないかもしれないが、市場参加者も理解しづらい面もあったのも事実である。ただし、日銀の黒田総裁は10日の会見で、「こうした市場の動きはある程度、あり得る動きだと思っている」と語ったそうで、予見していたそうである。本当だろうか。たしか異次元緩和はイールドカーブを押しつぶすのがひとつの目的ではなかったか。

 今回の債券相場の乱高下についてはいくつかの要因が重なっている。ひとつは歴史的水準にまで利回り低下したことや、期初というタイミングなど含めて、中期ゾーン主体に銀行あたりからとみられる利益確定売りが入ったと思われること。さらに短期債含めて、超過準備の付利が温存されたことで、引き下げもしくは撤廃を意識されて利回りが低下していた分が戻されたこと。また、これまでは基金による買入などは中短期債主体に行われ、市場機能が低下していたところ、買入の主体がもう少し長めの期間のものに移った結果、中短期債の価格発見機能が息を吹き返して上昇した面もあったとみられる。10日の中期債の売りについては、リスク管理手法の影響なども指摘されていた。

 これに対して超長期債の利回り上昇は、日銀がその超長期債も購入するにもかかわらず、大きく売られたのは理解に苦しむかもしれない。下落要因としてあげられるのは20年債、30年債の利回りが1%割れとなっていたことがある。2003年6月と同様にこの水準では逆ざやとなるなど、生保などが購入を手控えることが予想された面もあった。さらに日銀が中長期債に比較して流動性の薄い超長期債に入り込むことで、市場に流動する国債が減少してしまう懸念も出てきた。以前の中短期債のごとく市場機能(価格発見機能)の低下への懸念とともに、売り買いがしづらくなるという流動性リスクが意識されたことが考えられる。つまり超長期債の利回りには、流動性リスクプレミアムがオンされているとの見方もできる。もちろん価格変動リスクも意識されたと思われる。

 今回の日銀の大胆な政策があまり時間を置かずに、とにかく大胆さとスピードを意識しすぎた分、必要な調整がなされていなかったことも影響していると思われる。特に気になるのが市場との対話である。これだけ大胆なことをする以上、日銀の相手側となる金融機関との議論等がなされていた気配はない。国債発行額の7割も日銀が買うためには、当たり前だが売り手も必要となり、また財務省の国債管理政策にも係わることであるが、どうやらその準備は前もって進んでいたわけではなさそうである。




2013.4.11「フィスカル・ドミナンス」

 3月6日、7日に開催された日銀金融政策決定会合議事要旨が発表された。3月の会合の時点ではすでに次期日銀総裁と副総裁候補が発表されており、あらたな執行部を中心に大胆な金融政策を4月の決定会合で行うであろうことは予想されていた。その意味では、その大胆な政策への橋渡しとともに、リスクへの忠告も組み入れられたものになっていたように思われる。

 「何人かの委員は、長期国債の買入れ方法を検討するに当たっては、中央銀行による大量の国債買入れが財政従属(fiscal dominance)ではないという信認を市場から得ることが重要であり、具体的な制度を設計する際には、こうした点に細心の注意を払う必要があると付け加えた。」(日銀金融政策決定会合議事要旨より)

 これも忠告のひとつであろう。この何人かの委員には、当然、白川前総裁が含まれているはずである。白川総裁は2月の講演で次のような発言をしている。

「政府にも日本銀行にも規律、ディシプリンが求められます。日本銀行の規律を規定するのは、物価の安定と金融システムの安定を通じて持続的な成長に貢献するという中央銀行に課せられた目的です。政府に求められるのは財政規律です。この点、政府は「財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に推進する」方針を明確にしています。一旦信認が低下し経済が混乱してしまうと、その時点では、中央銀行の採り得る政策の余地は限られてきます。エコノミストはそのような状態をフィスカル・ドミナンスという言葉で表現していますが、そうした事態を未然に防ぐためには、財政改革に取り組み、中長期的な財政規律を維持することが重要です。」

 白川前日銀総裁は著作でもフィスカル・ドミナンスに触れており、財政が金融政策を左右し物価に影響を与える状況をフィスカル・ドミナンスと呼ぶと指摘している。東短リサーチの加藤出氏もコラムで、「フィスカル・ドミナンス」(財政による支配)と超金融緩和策の関係に関する議論が海外のエコノミストの間で活発になっていることを指摘している。

 4月4日の日銀による量的・質的金融緩和の導入に際しては、政府の意向を強く反映したものではあったが、目的は当然ながら財政ファイナンスではなくデフレの脱却であった。ところが、打ち出した政策を見ると、これまでフィスカル・ドミナンスではないことを示すために設けていた自らの制限を取り除いていた。

 すでに形骸化はされてはいたが、日銀保有の国債残高が日銀券の発行額を上回らないという銀行券ルールがそのひとつであった。さらに資金供給のための通常の国債買入(通称、輪番オペ)は発行年限別の直近発行2銘柄を除いていたが、そのルールも撤廃した。基金による国債買入はこれが適用されていなかったが、今後は2年債だけでなく、5年債、10年債などもこの制限なしに買入が可能になる。

 4月4日の決定会合後の公表文では、わざわざ「長期国債の買入れは、金融政策目的で行うものであり、財政ファイナンスではない」と明記している。明記することで財政ファイナンスではないことを示したとの見方ができる一方、明記せねばならないぐらい危ない橋を渡っていることの現れとの見方も一部にあった。

 輪番オペでは、直近発行2銘柄を除くにしたのかという理由は、取引が活発でペンチマークを形成している発行直後の銘柄を対象銘柄から除けば、ベンチマーク銘柄について市場での価格形成を歪める惧れはないと考えられるとしていた。裏を返せば、その適用を除いたことで、今後は日銀の買入により、ベンチマーク銘柄について市場での価格形成を歪める可能性があるということにもなる。さらに直近発行2銘柄を除くということで国債引受との見方も排除することも意識されたものと思われた。

 フィスカル・ドミナンスというのは、あくまで政府側の態度次第ということになる。政府が財政規律を重んじている間は、日銀による大胆な国債買入がフィスカル・ドミナンスだと認識されることはないであろう。それでも、国債発行額の7割も中央銀行が買い入れるというのは、日本の財政問題を見えにくくさせ、仮に今後物価が上昇してこない際には、積極的な財政政策が用意されることも想定される。そうなればフィスカル・ドミナンスとの認識が広まる懸念がある。いったんそのような認識が広まれば、国債や通貨に対する信認の問題となりかねない。今回の異次元緩和は大規模な実験とおっしゃった方がいたそうだが、かなりの劇薬を使用したものであり、実験がもし失敗に終わると被害は広範囲に及びかねないものだとの認識も、政府・日銀には持っていただきたい。やってしまった以上は成功を祈るほかはない。




2013.4.10「バイバイ緩和の弊害」

 黒田日銀のキーナンバーは「2」であり、コアCPIの「2%」という物価目標に対しては「2年」程度の期間を念頭に置いて、マネタリーベースおよび長期国債・ETFの保有額を「2年間」で「2倍」程度とし、長期国債の平均残存年数を現行の「2倍」以上にする。つまり倍にするということで、その倍がたくさんあるのでバイバイ緩和と勝手に名付けてみた。目的がデフレからのバイバイでもある。

 そのバイバイ緩和で、日銀とすれば余計なものまで倍になった。5日の10年国債の利回り、つまり長期金利は過去最低、世界でもギネス級の記録になりうる0.315%まで低下後、急上昇し0.620%に上昇した。5年債利回りも0.135%から0.210%に上昇、5年債は以前に0.1%近辺まで低下していたので、そこからはまさに倍。8日の6か月物国庫短期証券入札結果は、最高落札利回りが0.0997%と前回の0.0478%からやはり倍近い上昇となった。

 さらにさすがに倍とまではいかないが、超長期債の利回りも8日から9日にかけて急ピッチで上昇していた。日銀が発行額の7割も買うのに、何故、債券は売られるのか。もちろん歴史的な超低金利となったことで、4月ということもあり、噂で買って事実で売るという、利益確定売りを優先させた面も、5年債や10年債にはあったのかもしれないが、短期市場や超長期市場には別な要因も存在している。

 短期債の利回りが大きく上昇(0.05%でも短期債にすれば大きい)した理由は、日銀の超過準備の付利撤廃への期待が残っていたことがまずある。マネタリーベースというか日銀の当座預金残高を増やすには付利の撤廃は難しい。現実にそれは温存されたことで、1年以下の金利も付利の0.1%近辺に戻ったということになる。1年以上の国債の買入は明らかになったものの、1年以下の国庫短期証券の買入予定などがはっきりしておらず、短期債の利回り上昇(価格は下落)要因となっている。

 それよりも問題が深刻なのは、超長期国債の値動きである。日銀が40年債まで購入すると言っているのに、何故、超長期債も売られているのか。それは超長期債を購入する投資家としては、一時1%割れとなった20年債や30年債の利回りは、運用を考えれば逆ざやとなりかねず、手が出しづらい面がまずある。2003年6月のVARショックと呼ばれた国債の急落の要因は、1%割れの超長期国債は購入しないとの大手生保の意向が新聞に大きく取り上げられ、実際に入札においても買いが控えられたことによる。

 利回りは低下する上に、それでなくても中長期債に比べて流動性が低い超長期債市場で新発債を含めて日銀の購入割合が高まってしまうと、市場で取引される国債の量そのものが減少してしまう。つまり流動性リスクが高まってしまうことになる。その兆候はすでに現れており、ここにきて超長期債のオファーとビッドは大きく離れてきている。業者も流動性リスクを抱えた買いや、あとで手当てを考えての売りもしにくい。投資家にとっても実勢に見えるものより、高いところで買ったり、安いところで売らざるを得ず、手が出しにくい。さらに今回のバイバイ緩和により、生保などは今年度の運用計画を白紙にせざるを得ず、あらためて練り直しているところも多いとみられ、その分、あらたな超長期債への買いが手控えられている面もあるかもしれない。このような板付きの中、超長期債は業者などのポジション調整などで下落していると思われる。将来の金利上昇を見越した海外投資家の売りが控えているとの声も出ている。

 毎月の国債発行額の7割を買って、保有する長期国債の平均残存年数を現行の2倍以上とする今回の異次元の日銀の金融緩和は決して国債市場にとって良い状況をもたらすとは言い切れない。この緩和策は財政ファイナンスではないと日銀は宣言したが、銀行券ルールは外し、5年債や10年債などの新発債も購入する。政府の動向次第では、財政ファイナンスへの懸念を強めさせかねないというリスクも孕む。市場が荒れて市場参加者に不安心が募ると、国債に対する信認・信用にヒビが入りかねないことにも注意する必要があろう。




2013.4.9「4月5日の債券相場の乱高下の要因」

 4月4日の日銀による異次元の大胆な金融緩和は、円安・株高・債券高を演出したものの、5日の債券市場はいったん高値をつけながら急落するなど、非常に荒れた展開となった。長らく債券市場を見てきたが、これほどの値動きはあまり記憶にはない。この動きを見る限り、日銀の大胆な金融政策の影響により、今後の国債市場への流動性や市場機能(価格発見機能)の低下への懸念も出てきているように思われる。

 債券市場は他市場に比べて、いわゆる手口情報が表に出ることはない。債券市場の取引は債券先物などを除いて、業者と投資家が直接売買する店頭取引が中心である。その際、いわゆる業者と呼ばれるプライマリー・ディーラーを中心とした証券会社などは、投資家との具体的な取引を口外してはいけない、いわゆる守秘義務を負っている。このため、ある程度はそれぞれの債券の値動きなどからそれを推測しなければいけないが、それを前提の上で5日の債券市場の動きを再確認してみたい。

 4日決定された日銀の量的・質的金融緩和の導入を受けて、4日の引けあと10年債利回りは0.425%と2003年6月以来の過去最低利回りを更新した。これまでの10年債利回り、つまり長期金利の最低は2003年6月11日につけた0.430%であった。この日に30年債利回りは0.960%、20年債利回りも0.745%に低下しており、これがそれぞれの過去最低利回りだと思われる(私の手元の記録上)。

 日銀は4日の夕方に具体的な国債買入の方法も発表し、超長期債も含めて大量の国債買入の構図がはっきりした。基金による国債買入は残存1年から3年までのもので毎月2兆円程度を購入していたが、それを加味しても、大きく増えるのが1年から10年までのところであり、超長期債についても発行規模を考慮すると日銀による購入の影響は大きくなる。ただし、1年以下の部分についてはさほど大きくはなかった。

 4日の東証でのイブニング・セッションでは146円44銭の高値引けとなり、LIFFEの円債先物の清算値も146円44銭と買い進まれていた。このため5日の債券先物は買いが先行し、4日の15時の引けからは34銭高の146円38銭で寄り付いた。10年債も0.375%と4日に記録した過去最低水準0.425%を大きく更新しての出合いとなった。

 寄り付き後、債券先物は146円41銭まで買われたが、4日のイブニング・セッションでつけた146円44銭には届かなかった。イブニング・セッションは形式上は翌営業日の約定分に加わるため、5日の高値は146円44銭となり、これが過去最高値として記録に残るのかもしれない。

 10年債利回りも急低下し、0.4%を割り込み一時0.315%まで低下した。超長期債もショートカバーなどの動きも入ったのか、20年債、30年債ともに1%割れに。20年債利回りは0.845%に低下、30年債利回りは0.925%に低下した。これまでの記録は2003年6月11日につけた30年0.960%、20年0.745%であれば、30年債は過去最低利回りを記録したことになる。

 黒田東彦日銀総裁は5日午前の衆議院議運委員会で行われた所信聴取で、金融緩和策の出口戦略について語るのは時期尚早だが、出口のリスクについても検討したい、と述べた。これについては、ほとんど相場には影響はなかったと思われる。

 債券相場は次第に上値が重くなった。円安・株高の進行もあったが、買われた要因が同じである以上は、この株高が影響したことも考えづらい。このタイミングで債券が売られた最大の要因は、あたりまえではあるが、高値にあったための利益確定売りであったとみられる。

 債券先物は10時頃には146円を割り込み、5年債は0.140%、10年債は押し戻されて0.4%台に。1%を割った超長期ゾーンも戻り売りに押され、1%近辺に。この下落のひとつのきっかけとして、10時10分にオファーされるとみられた日銀による新方式の国債買入がなかったためとの見方がある。これはきっかけにはされた可能性はあるが、主因ではないと思われる。オペがないとの理由でその後の暴落を招いたならば、今後の債券相場は日銀のオペの有無で乱高下しかねない。新方式が前日夕方発表されたばかりで、翌日にそれを期待して買い込むような投資家がいるとは思えない。ただし、このあたりは日銀も神経質になったとみられ、7日の日経新聞一面には、日銀の新方式の国債買入は今週スタートするとの記事が掲載されていた。

 後場の債券先物は145円65銭で寄り付き、その後に相場が急落したわけだが、その要因として12時45分に発表された流動性供給入札結果が低調であったためとの見方もある。たしかに市場実勢に比べて低調な結果であったかもしれないが、5日の債券相場の急落は値動きや出来高を見る限り、超長期債主導ではない。ちなみに今回の流動性供給入札は対象が20年債、30年債であった。つまりこれも高値警戒が強まっていたところでのひとつの不安要因にされたに過ぎない。

 それではなぜその後の債券先物は2度のサーキットブレーカーが発動されて、2円94銭安の143円10銭まで下落し、10年債利回りも0.620%まで急落したのか。ここで注意すべきは、ここにきてほとんど動きをみせていなかった中期ゾーンの動きであった。特に5年債利回りが0.210%まで上昇していたのである。ここを最も注目すべきかと思われる。

 4日の日銀の異次元緩和では、超過準備への0.1%の付利は温存された。これは当座預金残高を維持というか増加させるためには必要であるためと思われる。つまりここが中短期ゾーンの利回りのひとつの下限となりうる。このため5年債はその0.1%近くで張り付いていたのだが、それが何故0.2%台にまで利回りが上昇したのか。

 ここで考えられるのは、日銀の大胆緩和を期待して、いわゆる噂で買って事実で売るというスタンスで望んでいたと思われる投資家の存在である。さらに10年債や30年債の利回りは2003年6月の水準以下に低下していたことで、その後のVARショックの経験者であれば、ここはいったん売っておきたい水準ともなりうる。

 超過準備の付利撤廃がなかったことや、短期債の日銀の購入額は減少することで、ある程度のポジション調整を行わざるを得なくなったところが、期初の売りなど伴って、中期ゾーンあたりまで入ったとの観測もあった。どうやらその売りは、日本相互証券の出来高などを見る限り、10年債あたりまで入っていたとみられる。

 そこそこまとまった売りが5年債を主体とした中期ゾーンから、10年債に入り、その結果、7年債に連動する債券先物も急落したものと考えられる。もちろん先物にはヘッジ売りも入った結果、サーキットブレーカーが発動したと思われる。ただし、一部投資家の押し目買いも入ったことで、引けにかけて買い戻され、債券先物は144円02銭で引けており、10年債利回りも0.5%台に低下した。

 5日の債券相場の乱高下で注意すべきは、さすがに高値警戒が出たこともあるが、今後は日銀が国債発行額の7割を購入し、それが長期債や超長期債にも波及することで、量的緩和政策時代には短期市場で、基金による国債買入の影響で2年債あたりまでの市場で起きていたような、市場機能の低下が起こりうることである。つまり流動性が低下し、その分、価格の振れが大きくなる懸念があることを、5日の債券相場は示していたように思われる。それとともにここからのさらなる利回り低下にも限度があることを暗示させるような動きであった。




2013.4.8「債券先物のサーキット・ブレーカー制度」

 4月5日の債券先物取引では、債券相場の急落により2度のサーキット・ブレーカー制度が発動された。8日にも債券先物中心限月の6月限は5日の清算値144円02銭から1円上昇したことで、サーキット・ブレーカー制度が発動された。

 サーキットブレーカー制度は一定の値幅で動いた際にアイロンが過熱を防ぐために自動的に電源を切るように、先物の売買を一時中断する仕組みである。債券先物の中心限月が発動基準に該当した場合に、中心限月だけでなく他の限月も含むすべての限月取引において、取引が一時中断される。この場合の値幅制限の基準値段は、前場からイブニング・セッションまで前営業日の清算値となる。第一次値幅は上下1円、第二次値幅は上下2円となり、最大値幅は上下3円となる

 サーキットブレーカーによる一時中断は、14時35分以降(半休日は10時35分以降)には行われない。また、一時中断を実施した限月で、同じ基準に再度値が付いた場合もサーキットブレーカーは実行されない。

東京証券取引所「サーキット・ブレーカー制度」
http://www.tse.or.jp/rules/tdex_plus/circuit-breaker.html


2013.4.7「日銀の異次元の緩和策、量的・質的金融緩和」

 日銀は4月3日、4日の金融政策決定会合で、「量的・質的金融緩和」の導入を決めた。コアCPIの2%という物価目標に対しては2年程度の期間を念頭に置いて、早期に実現するため、マネタリーベース(現金通貨と日銀の当座預金残高)および長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍程度とし、長期国債の平均残存年数を現行の2倍以上にするなど、量・質ともに次元の違う金融緩和を行う。

 金融市場調節の操作目標も現行の無担保コールレート(オーバーナイト物)からマネタリーベースに変更する。このため金融市場調節方針は「マネタリーベースが、年間60〜70兆円に相当するベースで増加するよう金融市場調節を行う」に変更された。年間60〜70兆円というのはマネタリーベースの増加ベースとなり、2012年度末のマネタリーベースの実績138兆円規模が、2013年度末が200兆円、2014年度末が270兆円となる見込み。

 国債のイールドカーブ全体の低下を促すことを目的に、長期国債の保有残高が年間50兆円に相当するペースで増加するよう買入を行う。長期国債の買入対象を40年債を含む全ゾーンとし、買入の平均残存年数を現状の3年弱から国債発行残高の平均並みの7年程度に延長する。この結果、毎月の長期国債のグロスの買入額は7.5兆円規模(これまでは3.8兆円程度、4月の買入予定額は6.2兆円)になる。2013年度の長期国債のカレンダーベースの発行予定額は126.6兆円となっており(年間発行額156.6兆円から短国の30兆円を差し引いたもの)、7.5兆円の12か月で88.7兆円をグロスで日銀が購入するとなれば、毎月の発行額の70%を買い入れることになる。

 新方式の国債買い入れは新発債も対象となるそうである。これまでの輪番オペは財政ファイナンスと意識されないために、発行年限別の直近発行2銘柄を除いていたが、それを行うと流通玉が不足しかねず、新方式ではその制限も外す。2002年1月に日銀は国債買い入れオペ(輪番オペ)の対象を、それまでの発行後1年以内のもの(1年ルール)から、発行年限別の直近発行2銘柄を除くに拡大した。「新たなルールとして、発行年限別の直近発行2銘柄を除くものにしたいと考えている」(和田企画参事官)とあるが、なぜ直近発行2銘柄を除くにしたいのかという理由としては、「取引が活発でペンチマークを形成している発行直後の銘柄を、対象銘柄から除けば、ベンチマーク銘柄について市場での価格形成を歪める惧れはないと考えられる」としている。つまり、なるべく対象銘柄を拡大したいが、カレント物とも呼ばれる直近発行銘柄への影響を考慮するとともに、直近発行2銘柄を除くということで国債引受との見方も排除することも意識されたものと思われた。ただし、基金による国債買入ではこの制限はなかったことで、2年債の新発債は買入可能となっていた。今回の措置により、今後は5年債、10年債、さらに超長期債の新発債の日銀による購入が可能となる。

 さらに質的緩和強化の意味合いから、ETF及びJ-REITの保有残高がそれぞれ年間1兆円、年間300億円に相当するベースで増加するよう買入を行う。

 「量的・質的緩和」は2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に維持するために必要な時点まで継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。これに対しては木内委員が文章の変更を求める意見が出されていた。このほかについては全員一致。準備期間が短かった割には、審議委員への説得も密かに進められていたとみられる。

 資産買入等の基金は廃止され、金融調節上の必要から行う国債買入は既存の残高を含め、国債買入に吸収する。つまり基金と輪番の統合となる。この国債買入は金融政策目的で行うものであり、財政ファイナンスではない、と公表文に明記。銀行券ルールは一時停止。特にそれに変わるルールについての言及はない。

 巨額な国債買入と大規模なマネタリーベースの供給を円滑に行うために、市場参加者との間で、金融市場調節や市場取引全般に関してこれまで以上に密接な意見交換の場を設ける。さしあたり、市場の国債の流動性に支障が生じないように、国債補完供給制度の要件を緩和する。早速、4日の夜にエコノミストが日銀に集められたようである。

 被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーションおよび被災地企業等にかかる担保要件の緩和措置を1年延長する。

 今回の政策により、国債への需給には大きな影響を与えようが、国債の買い手として日銀の存在が大きくなる。これが国債市場にはひとつの不安要因にもなりかねない。さらにある程度イールドカーブが潰れてしまうと、今回は超過準備の付利撤廃はなかったことで、中期から長期ゾーンについては利回りの低下にも限界が出てくる。

 いずれ前回の量的緩和時代に短期金融市場が機能不全に陥ったように、中期ゾーンを主体に債券市場も同様の状態となる懸念が生じよう。超長期債については、利回りの低下余地がある分、それでなくても中長期債に比べて流動性が低いこともあり、日銀の買入による需給逼迫も相まって、ボラタイルな動きがさらに加速される懸念がある。カーブが潰れるとともに、7年債に連動する長期国債先物はヘッジ手段としては使いづらくなる懸念があり、日本証券取引所が再開しようとしている超長期国債先物への期待も強まるかもしれない。

 結果として、すでに時代遅れの理論ともされたマネタリーベースと物価との関係を試す、壮大な実験が日本で行われようとしている。民間銀行にとり日銀に国債を売った資金は、現金の伸びが予想されていないなか、ある程度日銀の当座預金口座に留め置かないと、マネタリーベースを倍に増やすことなど難しい。日銀の当座預金に巨額資金を積み上げることで、どのような経路を通じて、CPIが前年比2%になるのであろうか。始まってしまった以上は、この壮大な実験がうまく行くことを祈るほかない。失敗したら副総裁の辞任どころでは済まなくなる。




2013.4.6「日銀の新次元の金融政策と今後の国債市場への不安」

 日銀は4月4日の金融政策決定会合で「量的・質的金融緩和の導入」を決めた。コアCPIの2%という物価目標に対しては、2年程度の期間を念頭に置いて、早期に実現するため、マネタリーベース(現金通貨プラス日銀当座預金)および長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍程度とし、長期国債の平均残存年数を現行の2倍以上にするなど、量・質ともに次元の違う金融緩和を行うことになる。

 金融市場調節の操作目標も、現行の無担保コールレート(オーバーナイト物)からマネタリーベースに変更する。このため金融市場調節方針は「マネタリーベースが、年間60〜70兆円に相当するベースで増加するよう金融市場調節を行う」に変更された。

 年間60〜70兆円というのはマネタリーベースの増加ベースとなり、2012年度末のマネタリーベースの実績138兆円規模が、2013年度末が200兆円、2014年度末が270兆円となる見込み。

 国債のイールドカーブ全体の低下を促す(つまり短期から超長期と呼ばれる20、30、40年の金利全体の低下を促す)ことを目的に、長期国債の保有残高が年間50兆円に相当するペースで増加するよう買入を行う。長期国債の買入対象を40年債を含む全ゾーンとし、買入の平均残存年数を現状の3年弱から国債発行残高の平均並みの7年程度に延長する。

 輪番と基金を統合したあらたな国債買入では、毎月の長期国債のグロスの買入額は7.5兆円規模(これまでは3.8兆円程度)になる見込み。2013年度の長期国債のカレンダーベースの発行予定額は126.6兆円となっており(年間発行額156.6兆円から短国の30兆円を差し引いたもの)、4月は6.2兆円、それ以降7.5兆円を11か月で購入となれば、年間合計88.7兆円となり、計算上は毎月の発行額の70%を買い入れることになる。

 新方式の国債買い入れは、基金による国債買入と同様に新発債も対象となる。これまでの輪番オペでは財政ファイナンスと意識されないために、発行年限別の直近発行2銘柄を除いていたが、それを行うと流通玉が不足しかねず、新方式ではその制限も外す。

 輪番オペでの買入額は「残存1年以下」が年間で7兆4400億円、「1年超10年以下」が12兆円、「10年超30年以下」が1兆2000億円、変動利付債が7200億円、物価連動債が2400億円となっていた。

 それに対して新たな国債買入ではその区分が少し細分化され、こちらは月額での購入額が示され、残存期間1年以下が0.22兆円(年間2.64兆円)、1年超5年以下が3兆円(同36兆円)、5年超10年以下が3.4兆円(同40.8兆円)、10年超が0.8兆円(9.6兆円)、変動利付債が隔月で0.14兆円、物価連動債が隔月で0.02兆円となっている。

 基金による国債買入は残存1年から3年までのもので毎月2兆円程度を購入していたが、それを加味しても、大きく増えるのが1年から10年までのところであり、超長期債についても発行規模を考慮すると日銀による購入の影響は大きくなる。

 国債買入は金融政策目的で行うものであり、財政ファイナンスではない、と4日の金融政策決定会合後に発表された公表文に明記された。しかし、銀行券ルールは一時停止される。特にそれに変わるルールについての言及はない。

 政府が財政規律を重視する姿勢を貫いていれば、これだけ大胆な国債買入を日銀が行っても、日銀券ルールを停止しても、基金による買入ですでに行っていたとはいえ5年債や10年債の新発債も買入対象になるとはいえ、財政ファイナンスと市場で認識されることはない、のかもしれない。しかし、今後、物価が思うように上がらず、政府が積極的な財政政策等を打って出てくるようなことがあると、そのような認識にぶれが生じる可能性はある。

 5日の東京市場は今回の日銀による大胆な金融緩和策を好感し、日経平均は13000円台を回復し、ドル円は97円台をつけてきた。そして債券市場では、10年債利回りが0.4%を大きく割り込み0.3%前半に、20年債と30年債利回りは1%を割れてきた。ところが、さすがに急ピッチの相場上昇となっていたこともあり、中期債にまとまった売りも入ったことで、債券先物は146円41銭から下落基調となり、高値警戒も手伝ってか下げ足を速めた結果、2度のサーキットブレーカーが発動され。これは2008年10月14日ぶり、一時143円10銭まで急落した。現物債も下落し0.315%まで利回りが低下していた10年債は0.620%に上昇。しかし、押し目買いも入り債券先物は145円台に戻すなど板が薄い中、値動きの激しい展開となった。

 今回の金融緩和策では日銀の超過準備の付利については温存した。これは金融政策の目標がマネタリーベースとした以上、それを維持するためには必要であるからであろう。そうなるとその付利の0.1%が目先の下限金利となり、すでに10年債を含めて利回りの低下余地は限られる。これにより7年債に連動する債券先物の上値も頭打ちになることが予想される。また、超長期債の1%割れでは生保などの投資家にとって運用利回りが稼げず、これが一つの要因となって2003年6月のVARショックを招いている。

 5日の債券相場の急落のきっかけとなった5年債主体の中期ゾーンの売りは、超過準備の付利撤廃がなかったことや、短期債の日銀の購入額は減少することで、ある程度のポジション調整を行わざるを得なくなったところが、期初の売りなど伴って、中期ゾーンあたりまで入ったとの観測もあった。流動性供給入札の結果や一部予想のあった日銀による国債買入が見送られたためとの見方もあったが、きっかけは5年債への売りであったと思われる。さらに債券先物には仕掛け的な動きが出ていた可能性も指摘されており、大胆な金融政策の結果を確認後、仕掛け的な売りを行おうとしていた一部投資家が存在していた可能性もある。私は1985年の上場以来、債券先物の動きを見てきたが、5日のような大きな価格変動はそう何度も起きたことはない。

 今後の日銀による国債の大量購入により、国債市場は量的緩和政策時代の短期金融市場のように市場機能(価格発見機能)が失われる懸念も出てきた。業者にとり、国債は入札してそれを日銀に売るという単純な仕事となりかねない。国債発行額の7割も中央銀行が購入するとなれば、残り3割の部分で利回りのつかない国債を売買せざるを得ない日々が訪れることにもなりかねない。このように日銀の大胆な政策は、国債の流通市場には良からぬ影響を与えかねない。5日の債券相場の値動きの荒さは、次元の違う日銀の政策による今後の国債市場への警戒感を示していたと言えるのかも知れない。




2013.4.5「注目すべきは26日の展望レポートかもしれない」

 黒田日銀総裁は大胆な金融政策に打って出たが、今月は26日にも金融政策決定会合が開催される。この26日の決定会合も今回同様かそれ以上に注目を浴びることが予想される。特に注目すべきものに展望レポートがある。

 日銀は、4月および10月の政策委員会・金融政策決定会合において、先行きの経済・物価見通しや上振れ・下振れ要因を詳しく点検し、そのもとでの金融政策運営の考え方を整理した「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)を決定し、公表している。1月および7月の金融政策決定会合では、その直前に公表された「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)以降の情勢の変化を踏まえたうえで、先行きの経済・物価見通しを評価した「中間評価」を公表している。(日銀のサイトより)

 2005年4月からは、対象とする期間について、当該年度に加え、翌年度を含めることになった。つまり4月26日に発表される展望レポートの対象期間は、2012年度の確認とともに、2013年度と2014年度の見通しが発表される。

 この展望レポートでは、政策委員の大勢見通しが発表される。実質GDP、国内企業物価指数、消費者物価指数(除く生鮮食品)の予想数値が各委員から出され、それを集計したものが発表されている。新聞などで日銀の見通しとして発表される数値は、この予想値の中での政策委員見通しの中央値となる。

 日銀は今年1月の決定会合で2%という物価目標を設定したが、この2%とは消費者物価の前年比上昇率となる。もちろんこれはコアCPIとも呼ばれる消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年同月比の数値である。

 昨年10月に公表された展望レポートには、2013年度と2014年度の見通しがすでに示されている。コアCPIについて2013年度は+0.2〜+0.6<+0.4>、2014年度は+2.4〜+3.0<+2.8>となっている。

 ただし、2014年度の数値については消費税率が2014年4月に8%、2015年10月に10%に引き上げられることを織り込んでいる。各政策委員は消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースの計数を作成しており、それは+0.4〜+1.0<+0.8>となっており、ここに日銀が消費税率引き上げが現行の課税品目すべてにフル転嫁されることを前提に、物価の押し上げ寄与を機械的に計算した数値、消費者物価では2.0%を加えたものを出している。

 今年1月に日銀が決定した物価目標の2%には、当然ながら消費税率引き上げの直接的な影響は加味していない。そうでなければ消費増税だけでそれが簡単にクリアーされてしまうことになる。

 昨年10月から最近にかけて物価予想に対する何か大きく変化させる出来事があったであろうか。国内ではこの2%の物価目標導入の大きな要因となったアベノミクスの影響も手伝い、円安・株高が進み、物価上昇への期待も高まってきたことは確かである。また米国を中心に景気回復への期待も強まり、米国株式市場ではダウ平均やS&P総合指数は過去最高値を更新中である。ただし、足下のコアCPIをみると2月は前年同月比マイナス0.3%となっていた。これが果たして期待感だけで上昇すると見込めるのか。

 4日の予想を超えた大胆な金融緩和、「量的・質的金融緩和」が全員一致で決定されたのをみると、政策委員は多少なり10月から上乗せした数値を示す可能性は十分ありうる。さらにメンバーも9人中、3人が入れ替わるため、その分、予想数値に変動も起きよう。その結果、2014年度の消費増税の影響を除いた数値が、どこまで引き上げられるのかが焦点となる。もちろんこれは年度を通じてのものであり、日銀の目標はあくまで2年以内、つまり2015年4月にコアCPIの前年比がプラス2%にするというものである。ちなみに、岩田副総裁は遅くとも2年で達成しなければならないとし、最高の責任の取り方は「辞職」することだと述べていた。  つまり4月26日のコアCPIの2014年度の予想値が2%には届かなくても、2015年4月に2%になることを予想されるような数値が置かれなければ、目標達成は無理ということにもなりかねない。つまり副総裁が辞任してしまう可能性が強まってしまうことになる(?)。

 その際に、10月に予想した審議委員6名が、仮に予想値を大きく引き上げたとして、その理由をはっきりさせることも必要になる。本当に金融政策でコアCPIを引き上げられるとしているのか、政策委員の考え方が数値で示されることになる。

 さらに、2014年度のコアCPI見通しが2%に近い数値に引き上げられたとして、そこに消費増税の影響も加味すれば、コアCPIは4%に近い数字となる。長期にわたりゼロ近傍での物価上昇しか経験していない日本経済にとり、2%どころか4%もの物価上昇に果たして耐えうるのかという問題も出てこよう。もちろん景気回復、雇用の改善と賃金の上昇が伴ってというか、それが前提の物価上昇であれば良いが、そうではなく金融政策で物価だけを上げようとしてしまうと、かなりのひずみを生じさせかねない。そもそも金融政策で健全な物価上昇を引き起こせるのかという問題が依然として残るのだが。




2013.4.4「日銀による国債買入はどうなるのか」

 注目の金融政策決定会合、本日二日目の開催となり結果が発表される。黒田総裁は2日にも国会に呼ばれ、ブラックアウト期間中ながら金融政策に関わる発言をしていた。

 ちなみにブラックアウト・ルールとは、「各金融政策決定会合の2営業日前(会合が2営業日以上にわたる場合には会合開始日の2営業日前)から会合終了当日の総裁記者会見終了時刻までの期間は、国会において発言する場合等を除き、金融政策及び金融経済情勢に関し、外部に対して発言しない。」(日銀のサイトより)というルールであり、国会では発言は認められている(とは言っても、あまりしゃべりすぎるとサプライズ効果はなくなってしまう懸念はあるが)。

 この黒田発言から、新体制となった日銀のあらたな政策について、特に国債買入がどうなるかについて整理してみたい。

 日銀は資金供給策の一環として市場から国債を買い入れるオペレーションを行っている。昔は輪番制だったので「輪番オペ」と呼ばれるが、いまは輪番制ではない。具体的には毎月1.8兆円、年間で21.6兆円の買入を行っている。買い入れるにあたり年限別に金額が定められており、現在は「残存1年以下」が年間で7兆4400億円、「1年超10年以下」が12兆円、「10年超30年以下」が1兆2000億円、変動利付債が7200億円、物価連動債が2400億円となっている。この買入れによる国債の残高は日銀券残高を超えないとする、銀行券ルールが自主的に設けられている。

 さらに日銀は2010年10月に導入した包括緩和政策により、物価安定のもとでの持続的成長を促す目的で、国債を中心とした資産買入を別枠で設けた基金で行っている。これによる国債の買入は残存1年から3年の国債に限られるが、銀行券ルールの適用外である。基金による国債の買入は、年末の残高を目標とするものとなっているが、長期国債(この場合の長期国債とは残存1年を越える期間の国債のこと)については2013年12月末に44兆円規模が目標となっている。国債には償還があるため、それを加味して最終的な残高を積み上げる必要があり、それを考慮すると現在は毎月2兆円規模の国債を買い入れている。

 日銀は今年1月に2014年からは基金による買入について、毎月の買入額を示すことにし、その期限は設けず無期限緩和とすることを決定した。これは米国のFRBによる買入が無期限としてアピールしていたことを取り入れたものと思われる。その毎月の国債の買入額は2兆円としている。

 基金は結果として解体されることになるとみられるが、その基金で買い入れている国債は輪番に統合され、その結果、日銀は国債買入をひとつの方式にし、輪番での年限別の買入方式は残すと予想される。残存1年以下、1年超10年以下、10年超30年以下との区分けが、たぶん残ると思われるが、このうちの「1年超10年以下」の部分が基金の分の組み入れで大きく膨らむ。

 日銀の国債買入のターゲットが毎月の購入額の数値となれば、現行の2方式でのトータル1.8兆円プラス2兆円の3.8兆円程度から、それを5兆円程度に引き上げることが予想される。引き上げ分の増額対象は、5年債や10年債との黒田総裁の発言もあったため、1年超10年以下の部分となることが予想される。10年超30年以下の部分への期待もあるが、発行額や残存額、さらに最近の超長期債のボラタイルな相場を見ても、ここを増やすことは当面は控えるのではないかと予想される。

 ただし、4日のNHKニュースによると「大がかりな枠組みの変更が実施に移されるまでの間、今ある金融緩和のための基金の規模を拡大する案も検討対象」とあった。技術的な問題を含めて、輪番と基金の国債買入統合はすぐには行えない可能性もある。今回はその方針を打ち出し、実際にそれを施行するまで時間を置く可能性はありうる。

 基金では国債、CP、社債、ETF、J-REITなど多様な金融資産の買入とともに固定金利方式・共通担保資金供給オペを行っている。基金の解体により、国庫短期証券の買入分、固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションの取り扱いをどうするのかとの問題もあるが、このあたりも通常のオペレーションとして組み入れられることになると予想される。

 日本の国債買入が統合されることで、銀行券ルールが意味をなさなくなる。このために別途、ルールを設けることも予想される。これがどのようなルールになるのかは定かではないが、個人的には国債残高に占める日銀のシェアを数値目標とするなどの方式もありうるかとみている。いずれにしても財政ファイナンスではないと明確化させるためのルールは作らざるを得ないのではなかろうか。

 新体制となった日銀の国債の買入統合等によりあらたな政策を行うことになるが、その目標が何になるのかも注目される。すでに量的緩和政策への回帰とも報じられ、特に岩田副総裁がマネタリーベース(現金通貨プラス日銀当座預金)を重視していることで、日銀の当座預金残高が目標とされる可能性がある。そうなれば超過準備への付利撤廃はしづらくなる。付利がなければ民間銀行は当座預金に現金を残す大きなインセンティブがなくなるためである。超過準備の部分は強制ではない。このため現在の付利はそのまま残される可能性が高い。

 日銀の当座預金残高は3月末で58兆円規模となっているが、すでに現在の政策でも今年末には80〜90兆円程度に当座預金残高は積み上がることが想定されている。その金額をひとつの目標値に据えて、その金額を100兆円程度かそれ以上に引き上げることも予想される。




2013.4.3「ここにきての円高回帰の要因」

 新年度入りしてからの東京株式市場は大きく下落し、4月1日に日経平均は262円安となり、2日には一時12000円割れとなっていた。この下落の背景には、期初の売りとかが指摘されている。当然その影響も大きいと思うが、それだけではないと思われる。

 そのひとつの要因として、1日に発表された日銀短観がある。この日銀短観によると、大企業の製造業DIはマイナス8ポイントとなり、前回の調査を4ポイント上回り、3期ぶりの改善となった。海外経済の回復や、円安により輸出関連企業の業績改善などが背景にある。アベノミクスの影響も少なからずあったとみられ、3か月後の先行きについても、大企業の製造業で7ポイント改善しマイナス1ポイントとなっていた。

 ところがNHKなどでも報じられたが、大企業の経常利益は、今年度、3年ぶりに増加に転じる見通しとなった一方で、設備投資計画は4年ぶりの大きな減少となり、景気の先行きにまだ慎重な企業の姿勢が反映される格好となった。さらに大企業の製造業が想定する為替レートの平均は今年度は85円22銭で、昨年度に比べて5円近く円安になっているものの、93円近辺にいる現在の水準からみて、かなり抑え気味の予想となっている。

 今後は再び円高に振れることも視野に入れている可能性がある。現実に外為市場の動きをみると、円安の動きはすでにブレーキが掛かり、円高が進みそうな地合になりつつある。

 2012年7月にECBのドラギ総裁はユーロ存続のために必要ないかなる措置を取る用意があると表明し、欧州の信用不安を後退させようとした。9月のECB理事会では、市場から国債を買い取る新たな対策を打ち出し、これをきっかけに欧州の信用不安が後退した。償還期間が1〜3年の国債を無制限で買い入れるとしたのだが、実際には買入はされずその期待感だけで市場は反応した。

 このようにして、昨年の9月あたりから外為市場では円高調整が始まった。その後、11月あたりから円安の速度が加速したのは、アベノミクスをきっかけとしてヘッジファンドなどが円売りを仕掛け、流れが一気に加速したことによる。ところが、この円安の流れはユーロ円でみると今年2月上旬、ドル円でみると3月半ばあたりでいったんピークアウトした。

 これには2月12日にG7が緊急共同声明を発表し、為替レートを政策の目標にはしないと明記したことがひとつのきっかけになったと思われる。少なくとも日銀による外債購入というかたちでの円安誘導は封印された。そして、3月に入るとギリシャ財政危機の影響でキプロスの金融危機が深刻化した。キプロス政府は3月16日に全銀行口座からの引き出しを制限する預金封鎖を開始したことなどがきっかけとなり、一時不安感も強まった。つまりアベノミクスの手段のひとつが封じられ、さらに円安の根本的な要因となっていた欧州の信用不安が再燃したことで、円安にブレーキが掛かり、再び円高の動きが出てきたといえる。

 もうひとつ、アベノミクスへの過度の期待が剥がれてきたことも、要因としてあげられよう。アベノミクスは三本の矢というが、一本目の次元の違う大胆な金融緩和という期待に負うところが大きい。実際、日銀総裁・副総裁人事では安倍首相の意向に沿う人物が選ばれた。ところが、新体制となって初の金融政策決定会合を控え、出てきた観測は次元はあまり違わず、これまでの路線の延長上にあるものばかりとなった。むろん、あまり大胆なことをすると財政ファイナンスと市場で認識されかねず、このあたりのバランスを取るのが難しく、現実にはあまり大胆な政策は困難であったはずで、このあたりも認識されての円高の動きの可能性もある。

 期待で動いた相場は、期待が後退してしまうと当然反動がくる。その期待感を維持させるにはどうしたら良いのか。そもそも期待だけでデフレが解消、というよりは成長率が上がり、雇用も回復し、賃金も上昇し、その結果として物価が上がるとの考え方そのものに、やはり無理があるとの認識も次第に出てくるのではないかと思われる。




2013.4.2「期待先行の日銀への注意点」

 4月3日、4日の金融政策決定会合が新体制となる日銀にとっての初会合となる。すでにマスコミ等では、次元の異なる大胆な金融政策の内容がいろいろと報じられているが、特に目新しいものはない。つまりは次元の異なるという掛け声は勇ましいが、政策そのものはこれまでの金融政策の延長線上にしかないことになる。もちろんサプライズが用意されているかもしれないが、あまりに極端な政策を行うと財政ファイナンスとの認識が強まりかねず、そのあたりのバランスの取り方も難しい。

 難しい金融政策が迫られる中、黒田日銀総裁は就任早々に忙しい日々を過ごしているのではないかと予想される。3月26日、28日と国会での半期報告と質疑応答を無難にこなした。そして4月2日には衆院予算委員会に黒田日銀総裁も呼ばれ、7時間の集中審議を行うとか。与党側は5日にするよう主張したものの、民主党は8日に黒田氏がいったん任期切れになることを理由に譲らなかったそうである。黒田総裁にとっての初会合なのだが、ブラックアウト期間中に呼び出してどうしようと言うのか。とにかく、この質疑に向けた準備にもかなりの時間を要するはずで、金融政策をしっかり詰める時間は果たしてあったのかどうか。

 半期報告には総裁だけではなく、副総裁も呼ばれており、中曽副総裁はとにかくも岩田副総裁も準備に追われた可能性はある。そんな中での4月3日、4日にどのような格好で新たな金融政策を打ち出せるのか。六人の審議委員は果たして新体制となった執行部に対してどのような見方をするのか。結局、具体的な政策決定は持ち越すのではないかとの見方もあるようだが、銀行券ルールにかわるルール作り等も必要となれば、大枠だけを決定し細かい政策は事務方に預け、今月2回目の26日の会合であらためて詰めるといったことも考えられる。

 新体制となった日銀にとって、最も意識しているのがコミットメントの強化と思われる。コミットメント効果とは、将来の金融政策を現時点で約束するという政策運営の方式であり、つまり物価が目標とする2%となるまで金融政策を継続するというものである。これは時間軸政策とも呼ばれる。このコミットメントメントに信認を得られれば、長期金利は低下し、それにより経済活動を刺激する、というものである。

 たしかにイールドカーブの形状をみると、比較的割安となっていた超長期債に買いが入り、カーブはフラットニングしており、一見すると日銀の政策を先取りした動きにも見える。しかし、ここには円安・株高の影響による年金のリバランスの動きなどもかなり影響したと思われ、日銀の政策期待だけで動いたわけではない。

 そもそもイールドカーブを動かして、長い金利を低下するとしても例えば10年債利回りはすでに0.5%近辺に低下しており、仮に過去最低利回りを更新するとしてもあとわずかに0.1%程度しかない。超長期債の利回りにはまだ低下余地はありそうだが、それで何かしら経済活動に刺激を与えることができるとは考えづらい。

 そもそも長めの金利を低下させれば、物価が上昇するということは実証されていない。つまりコミットするのは良いが、その約束を果たす手段と結果が繋がっているのかが、かなり疑わしい。そこで出てくるのが期待に働きかけるというものであるが、これもまた心許ない。タイミングのよかったアベノミクスの登場でたしかに期待は強まった。それを新体制となった日銀は政策で実行に移そうとしている。しかし、その政策そのものが結果をもたらすことができるのかと疑問視されれば、期待が剥げ落ちてくる可能性は十分にある。このあたりのことも注意しておく必要があろう。




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